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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A45C
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A45C
審判 全部無効 特174条1項  A45C
管理番号 1277069
審判番号 無効2012-800138  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-08-31 
確定日 2013-07-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第4929499号発明「拡張可能なポーチを有するベルト」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第4929499号(以下「本件特許」という。)は、パリ条約に基づく最先の優先日を平成19年2月13日とし、平成20年2月13日を国際出願日として出願された特願2009-549701号の特許出願に係り、平成24年2月24日に、請求項1ないし15に係る発明について設定登録されたものである。
本件無効審判は、本件特許について、平成24年8月31日(差出日)に、無効審判請求人 株式会社大雪屋(以下「請求人」という。)が、「本件特許の特許請求の範囲の請求項1から請求項15に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」として請求したものであって、被請求人 オーバートン エンタープライズィズ,エルエルシー(以下「被請求人」という。)は、平成25年1月11日付けで答弁書を提出している。その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
・平成25年4月 8日付け 請求人が口頭審理陳述要領書を提出
・ 同年4月 9日付け 被請求人が口頭審理陳述要領書を提出
・ 同年4月23日 第1回口頭審理
・ 同年5月 8日付け 被請求人が上申書を提出
・ 同年5月 9日付け 請求人が上申書を提出

第2 請求人の主張と証拠方法
1 請求人の主張の概要
本件特許について、請求人が主張する無効理由の概要は以下の(1)ないし(3)のとおりであって、請求人は、証拠方法として以下の甲第1号証ないし甲第16号証、及び、参考資料1を提出している。
(1)無効理由1(特許法第17条の2第3項違反)
本件特許の請求項1ないし15に記載されている「長手方向軸を有する第1の弾性材料」、「前記第1の弾性材料とは異なる1以上の弾性材料を有するポーチと;を有し」、「ポーチは、(i)内部容積を封入するよう、前記ベルトの背部において前記1以上の弾性材料を折り畳む」、及び、「(ii)前記ポーチの前記内部体積を封入するよう」という事項は、外国語出願の翻訳文に記載した事項の範囲内において補正したものではないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであり、本件特許の請求項1ないし15に係る発明についての特許は同法第123条第1項第1号の規定によって無効とすべきである。

(2)無効理由2(特許法第36条第6項第2号違反)
本件特許の請求項1ないし15に係る発明の「物品を格納する着用可能なベルトであって、長手方向軸を有する第1の弾性材料と;当該ベルトの両端部が解放可能に互いにつながり得るようにさせる第1のファスナと;前記第1の弾性材料とは異なる1以上の弾性材料を有するポーチと;を有し」との発明特定事項は、「第1の弾性材料」の機能、「第1のファスナ」や「ポーチ」との関係、及び、「前記第1の弾性材料とは異なる1以上の弾性材料を有するポーチ」についての具体例や意義が明らかでなく発明が明確でない。また、「該ポーチは、(i)内部体積を封入するよう、前記ベルトの背部において前記1以上の弾性材料を折り畳む」との発明特定事項は、「内部体積を封入」という事項と「ベルトの背部」の関係が明らかでなく、発明が明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、本件特許の請求項1ないし15に係る発明についての特許は同法第123条第1項第4号の規定によって無効とすべきである。

(3)無効理由3(特許法第29条第2項違反)
本件特許の請求項1ないし8,12,15に係る発明は、甲第1号証記載の発明に、甲第3ないし6号証及び甲第7号証に記載されている技術的事項を参考としつつ、また、甲第8ないし11号証の記載から明らかな事項を参酌して、甲第2号証記載の発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件特許の請求項1ないし8,12,15に係る発明についての特許は同法第123条第1項第2号の規定によって無効とすべきである。

2 証拠方法
請求人が証拠方法として提出した甲第1号証ないし甲第16号証、及び、参考資料1は以下のとおりである。
・甲第 1号証:実願昭62-9200号(実開昭63-117314号)のマイクロフィルム
・甲第 2号証:米国特許第5341928号明細書
・甲第 3号証:米国特許第5704531号明細書
・甲第 4号証:実用新案登録第3091895号公報
・甲第 5号証:特開2003-245113号公報
・甲第 6号証:米国特許第6698636号明細書
・甲第 7号証:米国特許第2672903号明細書
・甲第 8号証:特開昭63-294804号公報
・甲第 9号証:特公昭26-2382号公報
・甲第10号証:特開昭49-88645号公報
・甲第11号証:特開平11-266911号公報
・甲第12号証:本件特許の国内書面(外国語出願の翻訳文)
・甲第13号証:請求人が作成した甲第12号証の抜粋
・甲第14号証:国際公開第2008/101009号(本件特許の国際公開)
・甲第15号証:本件特許の平成23年10月19日付け手続補正書
・甲第16号証:本件特許の平成23年12月2日付け意見書
・参考資料1 :大木道則他編,化学辞典,株式会社東京化学同人,第997?998頁

第3 被請求人の主張と証拠方法
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」として、請求人の上記主張に対し、概略、以下の主張をしている。
1 無効理由1に対して
本件特許の翻訳文全体、特に【0032】や【0039】の記載からして、「第1の弾性材料からなる(狭義の)「ベルト」と、異なる弾性材料からなるポーチを有する(広義の)ベルト(装置)」が翻訳文に記載されていることは明らかであるし、【0026】、【0045】、【0046】の記載事項や【図5】?【図8】の図示内容を参酌すれば、「内部容積を封入するよう、ポーチの第2の材料をポーチの背部において折り畳むこと」が翻訳文に記載されていたことも明らかといえるから、補正が翻訳文の記載の範囲内で行われたことは明らかで、無効理由1には理由がない。

2 無効理由2に対して
ベルトについて、狭義のベルトと広義のベルトが混在して用いられているものの、請求項1の記載からして、「第1の弾性材料」が狭義のベルトを意味することは明らかであるし、【0025】や【0039】には、ポーチ材料の具体的例示もあり、また、ベルトの背面で1以上の弾性材料を折り畳んでポーチが形成されることも明細書に記載されているから、発明は明確であって無効理由2には理由がない。

3 無効理由3に対して
甲1発明はベルト付きバッグであるのに対し、甲2発明はゴルフバッグにコードを用いて付加的に取り付けるポケットであって、折り畳み構造の形成部位も相互に異なるから、組み合わせの動機付けがないとともに、分野の相違から適用の余地もない。また、他の甲号証を参酌しても、本件特許発明が、当業者が容易に発明することができたとはいえないから、無効理由3にも理由がない。

第4 無効理由1,2についての当審の判断
1 無効理由1について
(1)当初明細書等の記載事項
本件特許の、特許法第36条の2第6項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第2項に規定する外国語書面の翻訳文(以下「当初明細書等」という。)には、以下の記載ないし図示がある。
(1a)「【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ベルトバックルが共に取り付けられたポーチの正面を示す、本発明の一実施例の前面図である。
【図2】図1中の実施例の背面図である。
…(中略)…
【図4】本発明に従った空のプリーツ付きポーチの背面図である。
【図5】プリーツ付きのポーチ材料の重なりを示す図4中のポーチの断面図である。
【図6】比較的小さな物品を含有する本発明に従ったプリーツ付きポーチの背面図である。
【図7】ポーチにおける物品によって分けられたプリーツを示す図6中のポーチの断面図である。
…(以下略)」
(1b)「【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の望ましい実施例は、最も激しい活動中でも着用者の身体の周囲にぴんと張って留まる、小型であり且つ拡張可能な単一ポーチウエストベルトを与え、該ポーチは、1つの物品(鍵等)又は複数の物品(複数の鍵、携帯電話、mp3プレイヤ、及び/又は現金等)を保持する。ポーチは、空のとき、望ましくはポーチを適所に保持するベルトと略同一の幅及び厚さである。本願に記載される新規性のある構造及び設計により、ポーチの内部体積は、より大きな物品又は多数の小さな物品を保持するよう300-400%まで拡張し得る。
…(中略)…
【0018】
本発明の望ましい実施例において、ポーチは、可撓性/弾性ベルトによって適所に保持されるか、あるいは、メインウエストストラップは、典型的にはユーザのウエストの周囲であるユーザの周囲にぴったりと適合する(fits snuggly)。ポーチは望ましくは、ベルトの構造の一部を形成する。即ち当該ポーチは、ベルト材料からつり下がるポーチを有してユーザの周囲に延在する単一のベルト材料を備えることとは対照的に、ポーチの対向する側部上にあるベルトの端部間において引張力を有する。…(以下略)」
(1c)「【0021】
しかしながら、本発明の設計は、ベルトに一体にされると同時に拡張可能であるポーチを与え、更に着用者の身体の周囲におけるぴったりとした適合を与える。これは、従来技術におけるようにコンパートメントを作るよう共に縫われた複数片の材料を使用することよりも、ポーチを作るよう一個構成のファブリックを使用する新規性のある設計を有して達成される。以下に記載される非対称的弾性ファブリック及び/又はジッパーファスナ設計の使用により、ポーチは、横断方向には伸張し得るが、ベルトの長手方向軸に沿って伸張し得ない。…(以下略)」
(1d)「【0024】
ポーチ材料11は望ましくは、弾性/拡張可能ファブリック又はポリエステル等である他の材料を有し、空で伸張されていないときには、ポーチを担持する弾性ベルト20と望ましくは略同一の幅であり、実施例を僅かな物品のみを携行する個人にとって理想的なものとする。…(中略)…
【0025】
…(中略)…ポーチを形成するファブリックはまた、望ましくは大変弾性があり、全体的な材料の破裂を有することなく250%又はそれ以上まで伸張することができる(しかし、個別の長繊維、層、又は接着剤は全体的材料の破裂を有することなく切断し得る)。例えば、適切な可撓性ファブリックは、80%ナイロン、20%LYCRA Tricotファブリックである。適切なファブリックは、例えばカリフォルニア州ロサンゼルス在、B.N.B International Textiles社から入手可能である。」
(1e)「【0026】
ポーチ自体は、1つのシームレス片材料から容易に構成され得る。例えば、一般的に矩形のファブリック片は、内部体積を封入するよう折り重ねられる(そのため、上方エッジは下方エッジまでもたらされる)。当業者は、異なる形状のファブリック片が同一の目的を達成するよう使用され得る、ことを認識する。側部は、ベルトセクションの近位端部(ポーチに向かってバックルから離れる)の周囲に集められ得、縫い付けられるかあるいは取り付けられ得る。以下に記載される通り、ポーチの背面におけるファブリック/材料は
、プリーツを形成するよう縫い付けられる前に重なり合わせられ得る。…(以下略)」
(1f)「【0031】
複数の実施例において、ポーチはまた、非対称的弾性を有する。即ちポーチは、長手方向軸に沿った方向よりもベルトの長手方向軸に対して横断する方向においてより容易に伸張することができる。ベルトの長手方向におけるより低い弾性によりポーチは、別個のベルト部分間においてベルトの引張力を有することができ、またユーザにおいてぴったりとした適合を保持することができる一方、横断方向における高められた弾性によりポーチは、長手方向軸に対して横断する方向においてより容易に拡張し得るため、ポーチは、1つ又はそれより多くの物品を保持するよう容易に拡張することができる。かかる長手方向弾性における制限を有さずに、ベルトと連続的であるポーチ(本発明の通り)は、ベルトが着用者の身体の周囲において締められる際にそれ自体が伸張される。これは結果として、ポーチが事前に伸張されるため、ポーチに対する使用可能である拡張性能を少なくする。その結果もたらされるポーチにおける増大された引張力はまた、物品を追加又は除去することをより困難にする。
【0032】
複数の実施例において、ポーチを形成するよう使用されるファブリック又は他の材料は、非対称的に拡張可能な材料であり、ファブリック/材料が(ベルトの軸100に沿って)長手方向において実質的に非弾性であり得るが、ベルト軸に対して半径方向又は横断方向(例えば方向200及び300)において実質的により弾性であるよう配置される。望ましいファブリック/材料は、例えばポリエステル又は他の同様の材料から作られ得る。…(以下略)」
(1g)「【0034】
本発明の望ましい一実施例において、ポーチは、横断方向においてのみ大幅な可撓性を可能にする一方向伸縮可能なファブリック又は材料を有して構成される。ポーチ材料11は、ベルトの軸に沿って大幅に伸張しないが、ベルト20の軸に対して半径方向又は横断方向により弾性である。図1を参照すると、ポーチ10は、(矢印200及び300によって示される方向において伸張することによって)より幅が広く且つより深くなるよう拡張することができるが、(矢印100によって示される長手方向において)より長くなるよう伸張しない。…(以下略)」
(1h)「【0037】
本発明の望ましい一実施例において、ポーチ10を形成する材料11はまた、ポーチのより大きな拡張性能を可能にするようプリーツを付けられ得る。例えば、図4,5,6及び7において示されるポーチの背部において使用されるプリーツ12は、更なるファブリック又は他の材料がポーチに対して使用されるようにする一方、依然として空のときには小さな寸法までポーチが圧縮し得るか、あるいは潰れ得るようにする。望ましくは空のポーチは、ベルトと実質的に同一の幅である。空のときには、プリーツによって作られる材料の襞は、図5に示される通り材料が重なるようにする。しかしながら、より大きな物体がポーチに配置されるとき、材料は、より大きな物体を保持するよう(特にはポーチの中心部において)展開し得る。」
(1i)「【0039】
ポーチは、典型的にはユーザのウエストの周囲であるユーザの周囲にぴったりと適合する可撓性/弾性ベルト又はメインウエストストラップによって適所に保持される。ぴったりとした適合を維持する一方でユーザの動作を可能にするために、ベルトは、望ましくは長手方向に拡張する長手方向に弾性的な材料を有して作られ、ユーザにおいてぴったりとベルトを保持するよう張力を有して収縮する(contracts in tension)。メインウエストストラップは、望ましくは、サスペンダストラップ、ストレッチウエストバンド等において使用される通気性のあるナイロンストレッチ材料等の伸縮性のある/柔らかい材料から作られるが、多くの他の材料が使用されてもよい…(以下略)。」
(1j)「【0046】
図5は、図4中の線A-Aに沿ったポーチの断面を示す。ポーチが空のとき、ポーチの側部におけるプリーツ12は、ポーチの中心においても(線AAに沿って)、材料の襞44を下にあるポーチ材料46に重なるようにする。図6は、ポーチにおいて配置される比較的小さな物品を有するプリーツ付きのポーチ10の背部(着用者の身体に向かう側)を示す。図7は、ポーチ内部に配置された比較的小さな物品を有するプリーツ付きポーチ10の断面を示す。図6に示される通り、ポーチ材料は、ポーチにおいて配置される物体を収容するよう展開され始めるか、あるいは伸ばされ始めるが、外側の襞44は、依然として内側襞45の上方に折り畳まれている。図7において、なんらかのより大きな物体50は、ポーチにおいて配置されている。この物品は、ポーチ材料上を押しており、プリーツ44及び45は、もはや重なっていない。図8は、ポーチにおいて配置された複数のより大きな物品を有するプリーツ付きポーチ10の背部を示す。図9は、ポーチ10内部に配置される物体51及び52を有する線B-Bに沿った図8中のポーチの断面を示す。図9に示される通り、ポーチ材料11は、物体51及び52を収容するよう半径方向に伸張されている。
【0047】
望ましくは、図1に示される通り、ポーチ10の前部は、プリーツ12を有さず、平らなママである。図2に示される通り、プリーツ12を作るようポーチ10の背部が層状にされ、重ねられ、あるいは「縮められる(“pinched-in”)」とき、より審美的に好ましい外観にするために、重なりは望ましくは、図4中に示される通りベルトの背部において発生するのみである。」
(1k)「【図1】 【図2】


(1m)「【図4】 【図5】


(1n)「【図6】 【図7】


(2)当審の判断
ア 当初明細書等の記載から把握できる技術的事項
上記の当初明細書等の記載事項または図示内容を総合すると、本件特許の当初明細書等から、以下の技術的事項を導くことができる。
(ア)「可撓性/弾性ベルトと、内部体積の拡張性能をより大きくするようにプリーツを付けられた弾性材料からなるポーチであって、前記弾性材料のプリーツは、当該ポーチが空のとき、当該ポーチの背部に、重なりが当該ポーチの背部においてのみ発生するように層状に重ねられて、前記可撓性/弾性ベルトと略同一の幅及び厚さとされたポーチと、からなり、
当該ポーチの対向する側部は前記可撓性/弾性ベルトの端部に縫い付けられるかあるいは取り付けられて保持され、ユーザのウエスト周囲にぴったりと適合する、拡張可能な単一ポーチウエストベルト。」
(イ)「望ましくは、弾性/拡張可能ファブリック又はポリエステル等である他の材料を有し、適切な可撓性ファブリックが、例えばカリフォルニア州ロサンゼルス在、B.N.B International Textiles社から入手可能なLYCRA Tricotファブリックであるポーチは、ユーザのウエスト周囲にぴったりと適合する可撓性/弾性ベルト又はメインウエストストラップによって適所に保持され、ぴったりとした適合を維持する一方でユーザの動作を可能にするために、ベルトは、望ましくは長手方向に拡張する長手方向に弾性的な材料を有して作られ、ユーザにおいてぴったりとベルトを保持するよう張力を有して収縮し、メインウエストストラップは、望ましくは、サスペンダストラップ、ストレッチウエストバンド等において使用される通気性のあるナイロンストレッチ材料等の伸縮性のある/柔らかい材料から作られ、多くの他の材料が使用されてもよい。」

イ 本件特許明細書等に記載されている事項
本件特許の願書に添付した発明の詳細な説明、及び、特許請求の範囲(以下「本件特許明細書」という。)には、「長手方向軸を有する第1の弾性材料」、「前記第1の弾性材料とは異なる1以上の弾性材料を有するポーチと;を有し」、「ポーチは、(i)内部容積を封入するよう、前記ベルトの背部において前記1以上の弾性材料を折り畳む」、及び、「(ii)前記ポーチの前記内部体積を封入するよう」なる記載がある。

ウ 検討・判断
(ア)本件特許明細書に記載された「長手方向軸を有する第1の弾性材料」は、「物品を格納する着用可能なベルト」の部材として記載されたものであって、前記「長手方向軸を有する第1の弾性材料」がベルトの部材であることは明らかである。そうすると、「長手方向軸を有する第1の弾性材料」がベルト形状であることを特定していないとしても、ベルトの部材である以上、ベルト状であることは明らかであるといえるし、上記アで述べた技術的事項からして、可撓性/弾性ベルトは、ポーチの端部に縫い付けられるかあるいは取り付けられてユーザのウエスト周囲にぴったりと適合するためのものであるから、その可撓性/弾性ベルトが、必ずしもベルト形状であることを要求していないともいえる。
そうすると、「長手方向軸を有する第1の弾性材料」との記載が、明細書の記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるということはできない。
(イ)次に、本件特許明細書に記載された「前記第1の弾性材料とは異なる1以上の弾性材料を有するポーチと;を有し」なる記載を検討するに、上記ア(イ)で述べたとおり、当初明細書等の記載を総合することにより、ポーチと弾性材料に異なる材料を用いるという技術的事項を導くことができるし、第1の弾性材料とポーチ材料、あるいは、その両者の弾性率は、求められる機能に応じて、同じであっても異なっていても良いといえるから、その選択肢の一つを記載したにすぎないということもできる。
したがって、上記記載についても、明細書の記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるということはできない。
(ウ)最後に、「ポーチは、(i)内部容積を封入するよう、前記ベルトの背部において前記1以上の弾性材料を折り畳む」、及び、「(ii)前記ポーチの前記内部体積を封入するよう」という記載事項について検討すると、「重なりが」「層状に重ねられ」ることは、「折り畳む」ことと同義であるといえるから、上記記載事項は、上記ア(ア)で述べたとおりの技術的事項と何ら相違するものではない。
そうすると、上記記載事項についても、明細書の記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるということはできない。
(エ)したがって、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものとはいえない。

2 無効理由2について
本件特許の請求項1,15の記載からして、本件特許に係る「物品を格納する着用可能なベルト」は、「第1の弾性材料」、「第1のファスナ」及び「ポーチ」を有するものであり、それら部材が具備すべき機能あるいは特性は明確に記載されているといえる。
また、「内部体積を封入」という事項と「ベルトの背部」の関係についても、ポーチを「折り畳むこと」によって、「ベルトの背部」に「内部体積を封入」することは明らかであるといえるし、上記1(2)ア(ア)で述べた技術的事項を参酌すれば、当業者は、その構造を正確に理解することができるといえる。
したがって、本件特許に係る請求項1ないし15に係る発明は明確であるから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえない。

3 小括
以上のとおり、請求人の主張する無効理由1,2には理由がないから、本件特許を、特許法第123条第1項第1号もしくは第4号の規定によって無効とすることはできない。

第5 本件特許に係る発明
無効理由1,2に理由がないことは上述のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、本件特許の請求項1ないし15に係る発明を、それぞれ「特許発明1」ないし「特許発明15」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
物品を格納する着用可能なベルトであって、
長手方向軸を有する第1の弾性材料と;
当該ベルトの両端部が解放可能に互いにつながり得るようにさせる第1のファスナと;
前記第1の弾性材料とは異なる1以上の弾性材料を有するポーチと;
を有し、
該ポーチは、
(i)内部体積を封入するよう、前記ベルトの背部において前記1以上の弾性材料を折り畳むことと、
(ii)前記ポーチの前記内部体積を封入するよう、前記ポーチの前部の略中央に前記長手方向軸に平行に、第2のファスナを与えることと、
(iii)該第2のファスナによって、前記長手方向軸に平行な方向に前記ポーチの弾性が制限されることと、
を特徴とする、
着用可能なベルト。
【請求項2】
前記1以上の弾性材料は、前記長手方向軸の方向に対して平行な方向におけるよりも前記長手方向軸に対して横断する方向においてより弾性である、一方向伸縮性材料である、
請求項1記載の着用可能なベルト。
【請求項3】
前記第1又は第2のファスナは、ジッパーファスナである、
請求項1記載の着用可能なベルト。
【請求項4】
前記第1又は第2のファスナは、ヴェルクロ封鎖具である、
請求項1記載の着用可能なベルト。
【請求項5】
当該ベルトは、前記長手方向軸に対して垂直である幅を備え、
折り畳んだ前記ポーチの前記幅は、最小の前記幅の1.5倍より小さい、
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項6】
前記ポーチは、前記長手方向軸に対して横断する方向において少なくとも100パーセント拡張可能である、
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項7】
前記ポーチの前記内部体積は、少なくとも200パーセント拡張可能である、
請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項8】
前記ポーチは、前記長手方向軸において略中心に置かれる、
請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項9】
前記1以上の弾性材料は、逆反射材料である、
請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項10】
前記1以上の弾性材料は、逆反射材料を有する、
請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項11】
前記1以上の弾性材料は、前記長手方向軸に対して平行である方向においてよりも前記長手方向軸に対して横断する方向においてより弾性である非対称の拡張可能材料である、
請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項12】
前記ポーチは、1つ又はそれより多くの長手方向プリーツを備え、該プリーツは、前記長手方向軸に対して実質的に平行であり、また前記ポーチの前記内部体積が前記長手方向
軸に対して横断する方向において拡張するようにする、
請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項13】
前記ポーチは、前記ベルトからつり下がらない、
請求項1乃至12のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項14】
当該ベルトに対して取り付けられる1つ又はそれより多くのフックを更に有し、該1つ又はそれより多くのフックは、ランナーのレース番号を取り付けるのに適切である、
請求項1乃至13のうちいずれか一項記載の着用可能なベルト。
【請求項15】
物品を格納する着用可能なベルトを形成する方法であって、
長手方向軸を有する第1の弾性材料を与える段階と;
前記ベルトの両端部が解放可能に互いにつながり得るようにさせる第1のファスナを前記両端部に取り付ける段階と;
前記第1の弾性材料とは異なる1以上の弾性材料を有するポーチを形成する段階と;
を有し、
該ポーチは、
(i)内部体積を封入するよう、前記ベルトの背部において前記1以上の弾性材料を折り畳むことと、
(ii)前記ポーチの前記内部体積を封入するよう、前記ポーチの前部の略中央に前記長手方向軸に平行に、第2のファスナを与えることと、
(iii)該第2のファスナによって、前記長手方向軸に平行な方向に前記ポーチの弾性が制限されることと、
によって形成される、
方法。」

第6 無効理由3についての当審の判断
1 甲第1号証の記載事項および甲1発明
(1)甲第1号証には以下の記載ないし図示がある
(甲1a)明細書第1頁第4?19行
「2.実用新案登録請求の範囲
1.横楕円形の裏面材(1)と同形の横楕円形の包被体(4)とからなり、裏面材(1)の中央に裏面材(1)よりも剛性のある長方形の形状保持板(2)を設けることにより、該形状保持板(2)の平行する上辺及び下辺を挟んで上下に対称する1対の半月形の余白部(3)を形成すると共に、包被体(4)の正面に所定巾寸法で伸縮自在の蛇腹部(6)を設け、該蛇腹部(6)の上下縁と裏面材(1)の外周縁及び包被体(4)の外周縁とを一体的に縫合して成る容積可変ウエストバッグ。
2.蛇腹部(6)は、包被体(4)の中央から左右縦方向に所定巾寸法をもって重層的に立上がる左右1対のギャザー(5)及(5’)によって形成された実用新案登録請求の範囲第1項記載の容積可変ウエストバッグ。」
(甲1b)明細書第2頁第2?8行
「産業上の利用分野
本考案は、内容物が入っていないときは偏平となり、内容物が入っているときはその体積の多寡によって容量が自在に変るウエストバッグに関し、もってスキー、ハイキング、サイクリング等の携行に便利なウエストバッグを提供することを目的とするものである。」
(甲1c)明細書第3頁第12行?第5頁第1行
「考案の構成
手段
本考案は、前記問題点を解決する手段として、襠を全く用いずに包被袋を形成し、よってバッグ内に物品が入っていないときはバッグの表裏が重合してピッタリした偏平状態を維持し、又物品が入った状態においては、その物品の多寡に応じて形状が変化するバッグを構成せんとするために、次の技術的手段を用いる。
(1) ウエストバッグ全体を構成する包被体と裏面材とを夫々横長な楕円形状とし、体のウエスト部分に密着する裏面に裏面材の生地よりも剛性があり且つクッション材となる長方形の形状保持板を設けることにより、この形状保持板の上辺及び下辺の上下に1対の半月形の余白部を形成する。
(2) 前記包被体は前記裏面材と同形の楕円形を呈し、且つ中央縦方向に伸縮自在の蛇腹部を設ける。
(3) 前記蛇腹部は重層的に立上がる左右1対のギャザーによって構成され、且つ該蛇腹部の上下辺を含めて裏面材の外周縁と縫合されてバッグの包被体全体を構成する。
(4) 裏面材に設けた形状保持板の上辺にそって開閉部を設けて、この開閉部にスライドファスナーを取り付ける。
(5) 前記により横長の楕円形を呈する包被体の左右に1対の携帯用ウエストベルトを設ける。」
(甲1d)明細書第5頁第2行?第6頁第12行
「作用
ウエストベルトによってウエストバッグ本体を腰部に装着した場合、バッグ内に物品が全く入っていないか、又は少ししか入っていない状態のときは、中央縦方向に設けてある蛇腹部の左右1対のギャザーは全くふくらまないか、又は少ししかふくらまず、従ってバッグ全体が偏平な形状を維持する。これは蛇腹部の上下辺が夫々裏面材に縫着されているために、左右1対のギャザーは常に折畳まれた状態となっており、従って物品が全く入っていないときには、バッグ本体は全く表裏密着した偏平状となり、又物品が少ししか入っていないときには、折畳まれた左右1対のギャザーが少し伸びて、蛇腹部は内容物の量だけふくらむといった作用が働くことによる。又、多量の物品を詰め込んだときには、第3図及第4図に示すように裏面材に設けた形状保持板の上下に形成された1対の半月形の余白部が折れ曲がり、これが襠の役割を果たすことゝなり、蛇腹部のギャザーの伸びと相俟って、丁度襠付バッグと同じように縦横高さのある形状を呈し、よって多量の物品を収納することができる形状となる。これは裏面材に包被体の袋生地よりも剛性があり、且つクッション材となる形状保持板を設けることによって、つめ込んだ物品の重量による裏面材の形くずれを防止すると同時に、物品の内圧によって形状保持板の上辺及び下辺を境として半月形の余白部分が折れ曲がり、これが襠の役目を果たす作用が生じることによる。」
(甲1e)明細書第7頁第13行?第8頁第1行
「…Bはウエストベルトであって、該ウエストベルトBは右ウエストベルト(9)及び左ウエストベルト(10)とによって構成され、該右ウエストベルト(9)及び左ウエストベルト(10)は夫々楕円状を呈するバッグ本体の長径の延長線上の左右に設け、又右ウエストベルト(9)及び左ウエストベルト(10)の先端に互いに歯合する1対の尾錠(11)及び(12)を夫々設けたものである。」
(甲1f)明細書第8頁第15行?第9頁第4行
「4. 図面の簡単な説明
第1図は正面図、第2図は側面断面図、第3図は背面図、第4図は使用態様を示す斜視図である。
(A)…バッグ本体、(B)…ウエストベルト
(1)…裏面材、(2)…形状保持板、(3)…半月形の余白部、(4)…包被体、(5)…ギャザー、(5’)…ギャザー、(6)…蛇腹部、(7)…開閉部、(8)…スライドファスナー、(9)…右ウエストベルト、(10)…左ウエストベルト、(11)…尾錠、(12)…尾錠」
(甲1g)第2図 第3図



(甲1h)第4図




(2)甲1発明
上記記載事項および図示内容からして、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「内容物が入っていないときは表裏が重合してピッタリした偏平状態となり、内容物が入っているときはその体積の多寡によって容量が自在に変る、襠を用いない容積可変ウエストバッグであって、
横楕円形の裏面材(1)と同形の横楕円形の包被体(4)とからなり、裏面材(1)の中央に裏面材(1)よりも剛性のある長方形の形状保持板(2)を設けることにより、該形状保持板(2)の平行する上辺及び下辺を挟んで上下に対称する1対の半月形の余白部(3)を形成し、当該余白部(3)に形状保持板の上辺にそってスライドファスナー(8)を取り付けた開閉部を設けると共に、包被体(4)の正面に所定巾寸法で伸縮自在の蛇腹部(6)を設け、該蛇腹部(6)の上下縁と裏面材(1)の外周縁及び包被体(4)の外周縁とを一体的に縫合してバッグ本体を形成し、
前記横楕円形を呈するバッグ本体の長径の延長線上の左右に、先端に尾錠(11),(12)を有する1対のウエストベルト(9),(10)を設けて成る、
容積可変ウエストバッグ。」

2 甲第2号証の記載事項
(1)甲第2号証には以下の記載ないし図示がある。なお、下記の摘記は、請求人の提出した翻訳文を援用したものであるが、その翻訳について被請求人と争いがある単語については、原文のままとした。
(甲2a)第1頁の「ABSTRACT」の項
「1枚の一つの柔軟なファブリックは、折り畳みかつ折り目を付することで、ゴルフ・バッグに対して着脱自在なコンパクトなポーチ或いはポケットに形成することができる。このポケットは、当該ポケットの両側に付設したフックを用いてゴルフバッグに連結させることができる。上記ポケットは、その表部に、長く中央に位置するジッパー付きの開口部を有し、かつプリーツを付設した背部を有している。当該ポケットは、空のときにはゴルフバッグに対して平らに横たわるように形成されている。」
(甲2b)明細書第1欄の「FIELD OF THE INVENTION」の項
「本発明は、ゴルフバッグに取り付けることができ、ゴルフ用品、衣類、或いはそれ以外の物品を収納するための特別なポーチ又はポケットに関する。」
(甲2c)明細書第1欄の「SUMMARY OF THE INVENTION」の項
「本発明は、キャリヤーに対して迅速かつ容易に着脱可能なコンパクトなポーチ或いはポケットを提供する。なお、上述のキャリヤーとは、特にスポーツ装置のためのキャリヤーと、より詳しくは、異なるデザインのゴルフ・バッグをいうものとする。好ましい実施例において、ポケットの本体は、柔軟な、しかし保形性を担保できるsufficiently stiffな、1枚のファブリックによって作られる。ポケットは、長方形に形成され、かつ、前部側に、長く中央に位置するジッパー付きの開口部を有しており、この開口部を通じて内部にアクセスすることができる。上記ポケットの背部は、折り曲げられてなる一つのプリーツを有する。こうすることにより、ジャケットまたはセーターのような大きな物品を収納するときには、当該ポケットの内部容積は増大する。しかしながら、空にしたポケットは、ゴルフバッグに平らに横たわり、或いは、バッグから分離された場合には、コンパクトな形態で横たわる。当該ポケットは、その形態よりもさらにコンパクトに折り畳み、或いは丸めることもできる。上記ポケットは、望ましくは、フックによりゴルフバッグに連結される。ポケットは、ゴルフバッグに接続しているときに、一定の長さを有する、弾力があるコードによって保持される。」
(甲2d)明細書第2?3欄の「DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENT」の項
「図1、図2及び図3に関して、本発明に従う装着用ポケット1は、長く形成した本体2を有している。この本体2は、柔軟な材料、例えば耐候性のナイロンのようなファブリックである単一のシートから形成される。図3に最も良く示すように、ポケットの本体は長方形の前面パネル2および長方形の後面パネル4を含んでいる。ポケットの空の状態を示す図1、図2、および図3において、上記後面パネルは、前面パネルに対してほぼフラットに配置されている。前面パネル及び後面パネルの各側端は、これらと一体的なプリーツパネルであって前面パネル及び後面パネルから後方乃至内方へ折り曲げられたものによって、連結されている。プリーツパネルは、前面パネル3の側端から内方へ折った後方ハーフパネル5と、後方パネル6の側端から内方へ折った前側ハーフパネル6とを含む。
各後側ハーフパネル5は、折り目7において前面パネル3の縦方向の縁と連続する。後側ハーフパネル5は、図1、図2及び図3に示す空の状態において、上記折り目7からポケットの中心線へ内方に延びている。また後側ハーフパネル5は、折り目8において前側ハーフパネル6に連続している。前側ハーフパネル6は、上記折り目8から折り目9へ外方に延び、かつ、この折り目9において、後面パネル4の縦方向の縁に連結している。
上記ポケットが空であるとき、ポケットの両側に位置する前方パネル及び後側ハーフパネルは、後面パネルの中心線付近で2つの折り目8の間僅かな隙間を存して、当該後面パネルにフラットに折り重ねられる。ポケットの両端部は、前面パネル3、後面パネル4、及びハーフパネル5、の端側のマージンを相互に連結するように縫合される。ポケットの本体に使用されるファブリックは、上記各折り目が恒常的なものとなり、かつ上記本体が図1、図2、及び図3に示すフラットに折り重ねられた状態に復帰する傾向を呈するようにstiff enoughな材料とすることが好ましい。
上記前面パネル3は、ジッパー10を構成するために、当該前面パネルのほぼ全長に亘って延びる長いスリットを有する。ポケットの端部は、ポケットの内側から外側への方向で縫合させることができ、これにより、上記各パネルがジッパー付き開口部を介して引き戻されるときに、その端継ぎ目が露出しないようにすることができる。
上記ポケットの両側には、剛性を有するフック12および13の形態のファスナーを連結するために、ファブリックのエンドループ11が設けられている。一方のフック、すなわち図1及び図2に説明されるような上フック12は、エンドループ11に直接繋がれており、他方のフック13は、短い、弾力のあるコード14を介して他方のエンドループ11に繋がれている。
本発明のポケットは、ゴルフバッグBに容易に装着することができる。すなわち、ゴルフバッグの上側の縁に上側のフック12を、バッグのリング或いはループLに下側のフック13をそれぞれ嵌めればよい。…(中略)…
上記ポケットは、図1、図2及び図3に示す空の状態で、ゴルフバッグBの外面に沿って、ポケットの後方ハーフパネル6をバッグに対向させてほぼフラットな形で係止されている。このポケットの内部へアクセスしようとするときには、ポケットの前面パネル3のジッパーを開けばよい。ポケットのプリーツは、側部に露出しておらず、単に折り目7が見えるだけである。しかしながら、ポケットの後部のプリーツ付きの構造は、ポケットの中央部の容積が大きく広がることを可能とする。セーターやジャケットのような嵩張る物品をポケットの内部に入れて運ぶことができる。図4、図5及び図6は、上記ポケットが拡張した様子を示しており、この状態でポケットの後面パネル4が前面パネル3から強制的に離間させられており、かつハーフパネル5及び6は、折り畳み状態を解消されている。…(以下略)」
(甲2e)Fig.1及び3



(甲2f)Fig.4及び6




(2)甲第2号証の記載から把握できる発明
上記記載事項および図示内容からして、甲第2号証から、下記の発明(以下「甲2発明」という。)を把握することができる。
「ゴルフバッグに着脱自在で、ゴルフ用品、衣類、或いはそれ以外の物品を収納するためのコンパクトなポーチ或いはポケットであって、
ポーチ或いはポケットの本体は、柔軟な、例えば耐候性のナイロンのような1枚のファブリックであって、好ましくは、折り目が恒常的なものとなり、かつ前記本体に形成されたプリーツがフラットに折り重ねられた状態に復帰する傾向を呈するようにstiff enoughな材料によって長方形に形成され、
前部中央に、内部にアクセスするための長いジッパー付きの開口部を設けるとともに、背部に折り曲げられてなるプリーツを有するものであって、
前記プリーツは、ポーチ或いはポケットが空の状態において、前記長いジッパー付きの開口部を有する前面パネル及び、当該前面パネルに対してほぼフラットに配置される後面パネルの各側端と一体的なプリーツパネルであって、前面パネル及び後面パネルから後方乃至内方へ折り曲げられたものによって連結して形成することにより、
ジャケットまたはセーターのような大きな物品を収納するときには、前記ポーチ或いはポケットの内部容積が増大し、前記ポーチ或いはポケットが空の時には、当該ポーチ或いはポケットがゴルフバッグに平らに横たわることができるようにするとともに、
前記ポーチ或いはポケットをゴルフバッグに接続して保持し得るよう、当該ポーチ或いはポケットの一方には、一定の長さの弾力があるコードを介してフックを設け、他方には、エンドループを介してフックを直接設けた、
ポーチ或いはポケット。」

3 特許発明1について
(1)特許発明1と甲1発明の対比
ア 甲1発明の「ウエストバッグ」は、包被体内に内容物を入れることができ、また、人が腰部に巻き付けて使用することが明らかであるから、甲1発明の「物品を格納する着用可能なベルト」に相当する。
イ 甲1発明の「バッグ本体」は、特許発明1の「ポーチ」に対応する部材であって、当該「バッグ本体」あるいは「ポーチ」との関係及びその機能からして、甲1発明の「ウエストベルト(9),(10)」、及び「尾錠(11),(12)」は、それぞれ、特許発明1の「長手方向軸を有する」「材料」、及び「ベルトの両端部が解放可能に互いにつながり得るようにさせる第1のファスナ」に相当する部材であることは明らかである。
ウ ここで、甲1発明の「伸縮自在の蛇腹部(6)」(以下「前者」という。)及び「1対の半月状の余白部」(以下「後者」という。)について検討すると、前者は、「常に折畳まれた状態となっており、従って物品が全く入っていないときには、バッグ本体は全く表裏密着した偏平状となり、又物品が少ししか入っていないときには、折畳まれた左右1対のギャザーが少し伸びて、蛇腹部は内容物の量だけふくらむ」機能を果たし、後者は「多量の物品を詰め込んだときには、第3図及第4図に示すように裏面材に設けた形状保持板の上下に形成された1対の半月形の余白部が折れ曲がり、これが襠の役割を果たすことゝなり、蛇腹部のギャザーの伸びと相俟って、丁度襠付バッグと同じように縦横高さのある形状を呈し、よって多量の物品を収納することができる形状となる」ものである(上記1(1)(甲1d)参照)ことからして、甲1発明は、特許発明1のポーチについての(i)に係る「内部体積を封入するよう、」「材料を折り畳む」構成に相当する構成を具備しているといえる。
エ さらに、甲1発明の「スライドファスナー(8)」について検討すると、当該ファスナーは、バッグ本体内に物品を出し入れするために設けられているものであって、バッグ本体の容積を規定する役割を果たすことが明らかであり、「余白部(3)に形状保持板の上辺にそって」設けられているものであるから、特許発明1のポーチについての(ii)に係る「ポーチの前記内部体積を封入するよう、」「前記ポーチの」「前記長手方向軸に平行に」「与え」られている「第2のファスナ」に相当する。
オ 以上の対応及び相当関係から、特許発明1と甲1発明は、
「物品を格納する着用可能なベルトであって、
長手方向軸を有する材料と;
当該ベルトの両端部が解放可能に互いにつながり得るようにさせる第1のファスナと;
ポーチと;
を有し、
該ポーチは、
(i)内部体積を封入するよう、材料を折り畳むことと、
(ii)前記ポーチの前記内部体積を封入するよう、前記長手方向軸に平行に、第2のファスナを与える、
着用可能なベルト。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
長手方向軸を有する材料が、特許発明1は、「第1の弾性材料」であるのに対し、甲1発明は、弾性材料であるか否か明らかでない点。
〈相違点2〉
ポーチが、特許発明1は、「第1の弾性材料とは異なる1以上の弾性材料を有する」のに対し、甲1発明は、どのような材料であるか明らかでない点。
〈相違点3〉
内部体積を封入するための材料の折り畳みは、特許発明1は、「ベルトの背部において」なされているのに対し、甲1発明は、バッグ本体(ポーチ)の正面に設けられ、1対の半月状の余白部と相俟って内部体積を封入するよう機能している点。
〈相違点4〉
第2のファスナが、特許発明1は、「ポーチの前部の略中央」に設けられ、「(iii)該第2のファスナによって、前記長手方向軸に平行な方向に前記ポーチの弾性が制限される」のに対し、甲1発明は、形状保持板(2)の平行する上辺及び下辺を挟んで上下に対称する1対の半月形の余白部(3)に取り付けられているとともに、形状保持板(2)に平行する方向(長手方向軸)にポーチの弾性を制限するかどうか明らかでない点。

(2)検討・判断
請求人は、上記各相違点は、甲第3ないし6号証及び甲第7号証に記載されている技術的事項を参考としつつ、また、甲第8ないし11号証の記載から明らかな事項を参酌して、甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到することができた旨主張するから、当該主張について検討する。
ア 相違点1について
請求人が甲1発明に甲第2号証に記載された技術的事項を適用する際の参考とすべき証拠としての提示した甲第3及び6号証には以下の記載がある。なお、摘記箇所の邦訳は、請求人の提出した翻訳文を援用した。
(ア)甲第3号証の記載事項
(甲3ア)明細書第1欄「BACKGROUND OF THE INVENTION」の項の行番号52?57行
「本発明の主たる目的は複数のテニスボールを保持することができる、テニスボール保持具を提供することである。このテニスボール保持具は、使用者の腰の周りに着用され、テニス試合のプレーか練習の間に着用することができ、プレー中に邪魔になったり不快の念も引き起こすことがないように意図されている。」
(甲3イ)明細書第2欄「SUMMARY OF INVENTION」の項の行番号5?15及び36?38
「本発明は、ウエストのまわりで着用するためのテニスボール保持具であり、テニス試合のプレーか練習の間に複数のテニスボールへの便利なアクセスを提供するものである。このテニスボール保持具は、弾力のあるファブリックで形成した細長い一本のストリップと、これに対応する細長いストリップであって半透明の弾力のあるメッシュで形成してなるものとを有する。これらストリップは、細長い一端部を除く各周縁部に沿って、互いに接合するとともに、未接合の上記一端部に沿ってジッパーを沿って接合してなる。このジッパーは、2枚のストリップの間の空間へのアクセスを可能とし、或いは制限する手段を提供する。…(中略)…
上記ジッパー付きのコンパートメントの両側には、2本のストラップが付されている。各ストラップは、それぞれ固定具を有し、これにより本製品を腰回りへ着用することが可能となる。」
(甲3ウ)明細書第4欄の特許請求の範囲の第2項
「2.ジッパー付きのコンパートメントを含むテニスボール保持具であって、
…(中略)…
上記テニスボール保持具の一端部には第1ベルトストラップが、他方端部には第2ベルトストラップがそれぞれ固定され、これら第1ベルトストラップ及び第2ベルトストラップには、テニスボール保持具を腰に取り付けることができるように対応する固定手段を設けており、利用者の腰にきつくしっかりとフィットするように、上記第1ベルトストラップを弾性材料で形成したことを特徴とする、テニスボール保持部。」
(イ)甲第6号証の記載事項
(甲6ア)第1頁「ABSTRACT」の項
「本発明は、湿気/熱を導き/透過する、かつ水分を放出するウエストポーチ又はパックで、個人が着用したり、腰に巻くことで使用できるように形成したものである。このパックは、物品、例えば電子機器・携帯電話・音楽機器・その他の個人的物品を含み、携行するためのものである。このパックは、ポーチ構成要素の両端に取り付けられた2つのウエストストラップによって、腰に取り付けられる。パックは、周縁部を逢着したフロントパネル及びリアパネルと、再閉鎖可能な開口部及び/又は物品を収納すべき複数のポケットとを有する。上記フロントパネル及びリアパネルは、湿気を透過しかつ放出する強化された材料を用いて、互いに連結されており、蒸発用の溝を形成している。この溝は、利用者の身体からポーチのバックパネルを介して湿気を吸収・除去し、蒸発のためにポーチのうち利用者の身体が直接触れない場所へと導く。メイン容器又はポーチは、前面側或いはフロントパネルにおいて、平坦で垂直片である弾性織物又はストラップを有する。このストラップと容器のすきま又は凹部に物品を挿入することができ、これにより、物品を容器のフロントパネルに対してタイトに保持することができる。」
(甲6イ)明細書第12?13欄の特許請求の範囲(特に、1及び11)
「1.ウエストパネルと第1ストラップと第2ストラップとポーチを有するウエストパックであって、上記ウエストパネルは、水分透過材料から形成され、かつフロントサイドとバックサイドと第1端部と第2端部を有しており、上記第1ストラップは、上記ウエストパネルの第1端部に取り付けられ、かつ第1ファスナを有しており、上記第2ストラップは、上記ウエストパネルの第2端部に取り付けられ、かつ上記第1ファスナに対して着脱自在に設けた第2ファスナを有しており、上記ポーチは、上記ウエストパネルのフロントサイドに取り付けられるとともに、フロントポーチパネルと、バックポーチパネルと、バックポーチパネルに取り付けられたフラップとを有しており、このフラップは上記フロントポーチパネルに対して分離自在に固定することが可能であり、固定することでポーチを閉塞することができ、さらにフロントポーチパネルとバックポーチパネルとフラップとは、それぞれ耐水材料で形成されていることを特徴とする、ウエストパック。
…(中略)…
11.第1ストラップ及び第2ストラップは、調整可能であり、かつ弾性材料で形成されたことを特徴とする、請求項10記載のウエストパック。」
(ウ)甲第3及び6号証の記載事項の検討
上記した甲第3及び6号証の記載事項からして、物品の収納部を装置の前面に具備し、スポーツ中に腰部に巻き付けて用いられる装置において、腰部に巻き付け取り外し自在にピッタリと固定するため、ベルト様の部材(甲第3号証の「ストラップ」、甲第6号証の「第1ストラップ」及び「第2ストラップ」)を弾性材料で形成するとともに、その端部に、互いに連結・取り外し自在のファスナを設けることは、甲2発明のポーチ或いはポケットに取り付けられているコードやフックに係る技術を参照するまでもなく、当業者に周知の事項であるといえる。
そうすると、甲1発明に相違点1に係る構成を具備せしめることは、当業者に周知の事項に基いて、当業者が適宜なし得る事項である。

イ 相違点2ないし4について
相違点2ないし4は、特許発明1の「ポーチ」に係る相違点であるから、これらをまとめて検討する。
(ア)ポーチを形成する材料について
甲第3号証には「テニスボール保持具は、弾力のあるファブリックで形成した細長い一本のストリップと、これに対応する細長いストリップであって半透明の弾力のあるメッシュで形成してなる」と記載され(上記ア(ア)(甲3イ)参照)、甲第6号証には「メイン容器又はポーチは、前面側或いはフロントパネルにおいて、平坦で垂直片である弾性織物又はストラップを有する。このストラップと容器のすきま又は凹部に物品を挿入することができ、これにより、物品を容器のフロントパネルに対してタイトに保持することができる。」と記載されている(上記ア(イ)(甲6ア)参照)とおり、スポーツ中に腰部に巻き付けて用いられる装置の前面に設けた物品の収納部を弾性材料で形成することも当業者に周知の事項であるといえ、それらいずれの甲号証においても、物品の収納部を構成する弾性材料と、前記ベルト様の部材であるストラップや第1及び第2ストラップに用いる弾性材料の関係について、特段の明示がないことからして、物品の収納部を形成する弾性材料と、当該物品の収納部を腰部に巻き付け取り外し自在にピッタリと固定するためのベルト様の部材を形成する弾性材料それぞれに、如何なる弾性材料を用いるかは、それぞれの部材に必要とされる弾性に応じて当業者が適宜選定し得る事項であるといえる。
しかしながら、特許発明1は、上記相違点2,3を兼ね備えるものであるのに対し、甲第3,6号証は、前面に設けた物品の収納部を弾性材料で形成することを開示するにすぎないから、次に、弾性材料で形成された物品の収納部を、装置の背部に折り畳むことの容易想到性について検討する。
(イ)甲2発明のポーチ或いはポケットの材料について
甲第2号証は、ポーチ或いはポケットの内部容積が増大する要因について、「プリーツ付きの構造」を挙げるものの、甲第2号証は、ポーチ或いはポケットの材料が伸びることをその要因として挙げていないことに加え、内部容積が増大したり、増大した容積が原形状に復帰することをもって、必ずしも、ポーチ或いはポケットが弾性材料からなることを意味しているともいえない。また、甲第2号証に記載されている「stiff」が、「堅い」あるいは「硬い」等の意味であって、伸縮する弾性を有する材料の特性と整合しないと考えられることを勘案すると、例示されている材料である「ナイロン」自体が、物理的特性として「弾性」を有するとしても、甲2発明のポーチ或いはポケットの材料が、いわゆるゴム弾性のような伸縮性を有する「弾性材料」であると解することは相当でない。
そうすると、甲第2号証は、物品の収納部を弾性材料で形成することを示唆するものではない。
(ウ)甲2発明のポーチ或いはポケットの構造について
請求人の提出した甲第2号証に記載された事項から把握できる甲2発明は、既に上記アで述べたとおり、
a コンパクトなポーチ或いはポケットに大きな内部容積を封入できるようにするため、ポーチ或いはポケット本体を構成するstiff enoughな材料からなるファブリックに、その内部容積を背部に折り畳んでフラットな形状となるようプリーツを形成し、
b そのポーチ或いはポケットの前部中央部に、前記内部容積にアクセスするためのジッパー付きの開口部を設けたものであり、
c 甲第8?11号証の記載及び当業者の技術常識からして、前記ジッパーも弾性を有していないといえるから、甲2発明のポーチ或いはポケットの前部中央部にジッパーを設けることによって、前記ポーチ或いはポケットは、ジッパーの開閉方向の伸びが制限されている、
といえるから、甲2発明は、一応、上記相違点3,4に係る事項と類似する構造を含むものといえる。
(エ)甲1発明のバッグ本体の構造について
一方、甲1発明の物品収納部であるバッグ本体が、その容積を可変とするために具備する構成は、バッグ本体の前面の蛇腹部と、形状保持板の平行する上辺及び下辺を挟んで上下に対称する1対の半月形の余白部であって、それぞれの機能は、上記3(1)ウで既に述べたとおり、
a バッグ本体の前面の蛇腹部は、表裏が重合してピッタリした偏平状態を呈するバッグであっても、収納する物品が少しである場合に、当該蛇腹部が少し伸びることによって、バッグ本体がかさばることなく、その物品の容積を収納し得るようにする。
b 1対の半月形の余白部は、多量の物品を詰め込んだ場合に、1対の半月形の余白部が形状保持板の上辺及び下辺部分で折れ曲がることによって襠の役割を果たし、蛇腹部の伸びと相俟って、襠付バッグと同じように縦横高さのある形状を呈することができるようにする。
ものであって、
c さらに、甲1発明のバッグ本体の内部容積にアクセスするためのスライドファスナーは、上記a,bの機能を阻害しないよう、半月形の余白部の形状保持板の上辺にそって設けられたものであるといえる。
(オ)甲1発明に甲2発明を適用することに関する検討
甲2発明のポーチ或いはポケットが弾性材料か否かはさておき、上記した甲2発明が具備している相違点3に係る事項と類似する構造を甲1発明に適用して本件特許1の相違点3に係る構成を得るためには、甲1発明のバッグの前面の蛇腹部を背面に折り畳むことができないことは明らかであるから、甲1発明の「1対の半月形の余白部」を背部に折り畳む構成に変更する必要がある。
しかしながら、このような変更を行うと、バッグ本体の表裏が重合してピッタリした偏平状態を呈する状態では、甲1発明のスライドファスナーは、バッグ本体の背後に折り畳まれて、内部容積にアクセスできなくなることは明らかであり、バッグ本体の上記(イ)a,bの両機能を損なう変更といえる。そして、それを回避するため、甲2発明に倣ってスライドファスナーをバッグ本体の前部中央部に変更する、すなわち、相違点4のごとき構成に変更すると、甲1発明の蛇腹部は、スライドファスナーによって伸びが制限されることとなり、同様に、上記(イ)aの機能を損なうといえる。
してみると、甲2発明が、相違点3,4に係る事項と類似する構造を含むとしても、当該構造を甲1発明に適用することは、甲1発明の機能を損なうものであるから、甲2発明を甲1発明に適用することは阻害されているといえる。
そうすると、甲2発明のポーチ或いはポケットが弾性材料か否かにかかわらず、甲2発明を甲1発明に適用することはできない。
加えて、既に上記(イ)で述べたとおり、甲第2号証は、物品の収納部を弾性材料で形成することを示唆するものではないから、弾性材料で形成された物品の収納部を、装置の背部に折り畳むことが容易想到であるともいえない。
してみると、当業者といえども、甲2発明に基づいて本件発明1の「ポーチ」に係る相違点2ないし4を得ることはできない。
(カ)その他の証拠の検討
請求人の提示した、甲第1,2,3,6号証以外の甲号証のいずれにも、弾性材料で形成された物品の収納部を、装置の背部に折り畳むことに関する記載ないし示唆を見出すことはできない。

(3)特許発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、請求人の提示した証拠をもって、特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

4 特許発明2ないし8,12,15について
特許発明2ないし8及び12は、特許発明1を引用するものであるから、特許発明1と同様に、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、特許発明15は、実質的に、特許発明1のベルトを「形成する方法」として特定したものであって、甲1発明と、上記相違点1ないし4と同じ相違点を具備するものである。したがって、請求人の提示した証拠をもって、当業者が容易に発明をすることができたものといえないことは、特許発明1と同様である。

5 小括
以上のとおり、請求人の主張する無効理由3には理由がないから、本件特許に係る特許発明1ないし8,12,15を、特許法第123条第1項第2号の規定によって無効とすることはできない。

第7 むすび
以上の検討したとおり、請求人が申し立てた理由及び証拠方法によっては、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし15についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-27 
結審通知日 2013-05-30 
審決日 2013-06-11 
出願番号 特願2009-549701(P2009-549701)
審決分類 P 1 113・ 55- Y (A45C)
P 1 113・ 537- Y (A45C)
P 1 113・ 121- Y (A45C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川上 佳  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 蓮井 雅之
高木 彰
登録日 2012-02-24 
登録番号 特許第4929499号(P4929499)
発明の名称 拡張可能なポーチを有するベルト  
代理人 大貫 進介  
復代理人 鶴谷 裕二  
代理人 今岡 憲  
復代理人 佐々木 定雄  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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