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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1277095
審判番号 不服2012-4693  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-12 
確定日 2013-07-25 
事件の表示 特願2006-162586「カップリングテープ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月27日出願公開、特開2007-330333〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年(2006年)6月12日の出願(特願2006-162586号)であって、平成23年9月2日付けで拒絶理由が通知され、同年11月7日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年12月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年3月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成25年2月18日付けで前置報告書の内容について請求人の意見を求める審尋がなされ、同年4月18日付けで回答書が提出された。

第2 本願の請求項1に係る発明
平成24年3月12日付けの手続補正による特許請求の範囲の補正は、請求項の削除を目的とする補正であり、適法な補正である。
よって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年3月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「帯状に形成されたシート本体と、
前記シート本体に所定間隔毎に設けられ、被検体に対して光を照射したときの前記被検体からの光に基づいて前記被検体内の物質を非侵襲的に計測する計測部から照射された前記光と前記被検体からの光とを透過する複数のカップリングシートと、
を具備し、
前記被検体と前記計測部との間に介在し、前記被検体と前記計測部との間をカップリングすることを特徴とするカップリングテープ。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-75349号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
本発明は、光により生体内部情報を非侵襲に計測する光計測に使用される光プローブ、光プローブに用いられる整合層及び生体光計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の内部を観察・診断するには様々な手法がある。その一つである光計測は、被爆の問題がなく、波長を選択することにより計測対象である化合物を選択できるという利点を有している。また装置の小型化・低価格化を実現する構成も可能である。これらの利点から、近年、他の診断装置が主として医療機関で使用されるのに対して、家庭や保健機関での使用も視野に入れた製品化が、進められている。」

「【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、光計測において、解析に耐える高品質の信号を取得することができ、有効な生体情報を計測可能な光プローブ、光プローブに用いられる整合層及び生体光計測装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0011】
本発明の第1の視点は、被検体に対して光を照射し、又は前記被検体内を透過若しくは前記被検体で反射した光を受光する光学的手段と、前記被検体に当接可能であって、且つ、前記光学的手段が照射する光又は受光する光を通過させる、デュロ硬度Aが40以下である光整合層と、を具備することを特徴とする光プローブである。
【0012】
本発明の第2の視点は、被検体に対して光を照射し、又は前記被検体内を透過若しくは前記被検体で反射した光を受光する光プローブに用いられる光整合層であって、前記光プローブの光照射面又は受光面に対応した形状及び大きさを有し、前記光照射面又は前記受光面に設けられると共に前記被検体との接触面を形成し、デュロ硬度Aが40以下であること、を特徴とする光整合層である。」

「【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る光生体記憶装置10のブロック構成図を示している。同図に示すように、本光生体記憶装置10は、照射用光プローブ11、受光用光プローブ13、距離調整機構15、レーザダイオード17、フォトダイオード(PD)19、入力部21、コントローラ23、アンプ25、A/D変換器27、解析部29、表示部31を具備している。なお、照射用光プローブ11、受光用光プローブ13、距離調整機構15によりプローブ部9を、入力部21、コントローラ23、アンプ25、A/D変換器27、解析部29、表示部31により装置本体8を構成する。
【0017】
照射用光プローブ11は、レーザダイオード17からの光を生体内に照射するための光路を形成する少なくとも一つの照射用光ファイバ111を有している。また、受光用光プローブ13は、生体内からの反射光(生体通過光)を集光するための少なくとも一つの受光用光ファイバ111を有している。各光ファイバの先端(光照射側又は光受光側)には、ガラス又はプラスチックレンズが設けられる場合もある。
【0018】
なお、各プローブの光ファイバが複数存在する場合には、当該複数の光ファイバは、所定の間隔及び形態によって配列される。係る場合、照射用光プローブ11の照射用光ファイバから照射された光は、生体内を通過し、照射用光プローブ11に近い受光用光プローブ13から順番に集光されることになる。
【0019】
また、照射用光プローブ11及び受光用光プローブ13は、各光プローブと被検体との間に設けられ、当該各プローブと被検体との接触状態を良好にするための光整合層110を具備している。この光整合層110の構成及びその機能については、後で詳しく説明する。
【0020】
距離調整機構15は、照射用光プローブ11と受光用光プローブ13との間の距離間隔を調整するための移動機構である。
【0021】
レーザダイオード(LD)17は、コントローラ23からの駆動電流に基づいて、例えば可視光領域から赤外線領域の波長領域にある複数波長の光を発光する光源である。本生体光計測装置10では、レーザダイオード17を用いる構成としたが、その他の光源、例えばガスレーザを利用することも可能である。
【0022】
フォトダイオード(PD)19は、生体内から受光した光信号を検出し、電気信号に変換する。なお、本実施形態では、光信号の検出として当該フォトダイオード19を用いた例を示しているが、これに限定する趣旨ではなく、例えば光電子増倍管その他の光電変換機能を有する検出手段を使用することも可能である。」

「【0029】
(光整合層)
次に、照射用光プローブ11及び受光用光プローブ13の光整合層が有する種々の機能について説明する。図2は、光整合層110の一例を示した図である。光整合層110は、図1に示した様に、被検体Pと各光ファイバ111との間に設けられており、光の集光性を向上させるための光学的レンズ、及び光プローブと被検体Pとの間に空気を介在させないためのカップラントの役割を果たす。また、光整合層110は、縁部110aを有している。この縁部110aは、光整合層110を光ファイバ111に装着するため、及び余分な光(例えば、被検体外から受光用光プローブ13の光ファイバ111に入射する光)を遮断する。これは、少なくとも縁部110aに、光反射のための金属薄膜、赤外線吸収色素等の光遮断部材を含ませることで実現できる。
【0030】
さらに、光整合層110は、次の様な種々の機能を有している。
【0031】
まず、光整合層110は、弾性体(例えば、主成分をゴム、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムその他の弾性を有する樹脂等)によって構成されている。従って、当該照射用光ブローブ11等を皮膚に押し付けた場合、光整合層110は皮膚の形状に沿って変形するため、より密着させた形態にて照射用光ブローブ11等を安定した状態で設定することができる。これにより、体表面に凹凸がある場合であっても、光ファイバ111と被検体Pとの間に空気を介在させずに、照射用光ブローブ11等を被検体皮膚に接触させることができ、好適な光計測を実行することができる。
【0032】
また、光整合層110は、当該照射用光ブローブ11等を皮膚に押し付けた場合、各光プローブによって加えられる皮膚への圧力を緩和する役割を果たす。そのため、照射用光ブローブ11等を皮膚に押し付けた場合であっても、皮下組織等の位置変化を引き起こすことなく、好適な光計測を実行することができる。」

「【0066】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態で示した光整合層119と同様の構成・機能を有し、被検体に貼付可能なシール(以下、光整合シール)に関するものである。
【0067】
図10(a)は、本実施形態に係る光整合シール30を示した図である。また、図10(b)は、本実施形態に係る共通型光整合シール31を示した図である。各図に示す光整合シール30は、縁部110aと同様の機能を有する(すなわち、光プローブの光照射面又は受光面に対応した形状・大きさを有すると共に、光プローブを装着するため、及び余分な光を遮断するための機能を有する)縁部301を有している。
【0068】
光整合シール30は、自身の弾性及び縁部301によりキャップ機能を有する。各光整合シール30に光プローブを装着すると、例えば図2乃至図4のいずれかの状態となる。また、第1の実施形態にて説明したように、縁部301により、生体外から受光用光プローブ13の受光面に入射する可能性のある光を遮断することができる。
【0069】
なお、光整合シール30は、衛生上等の観点から、使い捨てとする構成であってもよい。また、光計測においては、被検体の体格や体質、計測条件等に応じて、照射用光プローブ11と受光用光プローブ13との間の距離は、距離調整機構15によって適宜調整される。従って、光整合シール30を図10(b)の様に一体型とする場合には、照射用光プローブ11と受光用光プローブ13との間の各距離に応じた複数種類の光整合シール30が必要となる。
【0070】
また、光整合シール30は、当該シール30が例えばソフトコンタクトレンズの素材によって生成されており、既述の様に計測時には含水状態で使用される。そのため、被検体との浸透圧の差異等により、光整合シール30は被検体への貼付機能を持つ。しかしながら、別途生体適合性のよい貼付材を付加して使用する構成であってもよい。
【0071】
さらに、光プローブ自体にレンズが設けられている場合には、本光整合シール30にレンズ機能を持たせる必要はない。係る場合には、本光整合シール30の少なくとも屈折率、透過率、レンズ機能から要請される中心厚変化等の特性については、既述の内容に限定する必要はない。また、本光整合シール30にレンズ機能を持たせない場合には、必ずしもキャップ構造を持つ必要はない。
【0072】
以上述べた構成によれば、第1の実施形態と同様の効果に加えて、使い捨てコンタクトレンズと同様に管理が簡便な光整合シール30を実現することができる。また、光プローブ自体にレンズが設けられている場合には、本光整合シール30にレンズ機能を持たせる必要はないため、光整合層110に比して低価格化を実現することができる。」

「【図2】



「【図4】



「【図10】



2 引用例1に記載された発明の認定
上記記載(図面の記載も含む)を総合すれば、引用例1には、
「光により生体内部情報を非侵襲に計測する光計測に使用される生体光計測装置が備える照射用光プローブ11及び受光用光プローブ13に用いられる光整合シール30であって、
照射用光プローブ11及び受光用光プローブ13と被検体との接触状態を良好にするため、照射用光プローブ11及び受光用光プローブ13と被検体との間に設けられ、照射用光プローブ11が被検体に対して照射する光を通過させ、また、被検体内を透過若しくは被検体で反射した光受光用光プローブ13が受光する光を通過させる光整合シール30。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-254732号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「〔産業上の利用分野〕
本発明は、低周波治療、心電図測定、脳波測定などの治療、検診に用いられる導子電極の生体電極と、人体表面の皮膚とを電気的に接続するための導電性粘着パッドの改良に関するものである。」(第1ページ左下欄第12?15行)

「即ち第1図に示すように、所定形状の凹部を一定間隔をおいて連続的に形成したプラスチックエンボスドテープ1の該凹部に上記高分子粘稠液を充填し、所定温度を一定時間かけることにより架橋型含水粘着バッドを得る。しかる後この表面にトップカバーフィルム2を被覆し該凹部周縁をシールし、該シール部外縁を打ち抜き加工して製品とする。エンドユーザーは、トップカバーフィルム2をプラスチックエンボスドテープlより剥離し、該粘着パッドを生体電極に貼付し、プラスチックエンボスドテープを粘着パッドから剥離して使用することができる。」(第4ページ右上欄下から第3行?左下欄第9行)

「機械的強度の評価は、プラスチックエンボスドテーブの凹部から導電性粘着パッド(A),(B),(C)を指先で取り出そうとしたところ、(A),(B)はシート状でつまみ出すことができたが、(C)は保形できず取り出せなかった。またゴム硬度針(JIS-A型)により粘着体の硬さを測定したところ、(C)は指針が微動もしないほど柔らかいが、(A),(B)は約5°Hsであった。」(第5ページ第左下欄第11?18行)









第4 本願発明と引用発明の対比、及び、当審の判断
1 ここで、本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「光により生体内部情報を非侵襲に計測する光計測に使用される生体光計測装置」に関して「照射用光プローブ11が被検体に対して照射する光を通過させ、また、被検体内を透過若しくは被検体で反射した光受光用光プローブ13が受光する光を通過させる」ことが、本願発明の「被検体に対して光を照射したときの前記被検体からの光に基づいて前記被検体内の物質を非侵襲的に計測する計測部から照射された前記光と前記被検体からの光とを透過する」ことに相当する。

(2)引用発明の「光整合シール30」が、本願発明の「複数のカップリングシート」に相当する。

(3)引用発明の「照射用光プローブ11及び受光用光プローブ13と被検体との接触状態を良好にするため、照射用光プローブ11及び受光用光プローブ13と被検体との間に設けられ」ることが、本願発明の「前記被検体と前記計測部との間に介在し、前記被検体と前記計測部との間をカップリングする」ことに相当する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明とは、
「被検体に対して光を照射したときの前記被検体からの光に基づいて前記被検体内の物質を非侵襲的に計測する計測部から照射された前記光と前記被検体からの光とを透過する複数のカップリングシートであって、
前記被検体と前記計測部との間に介在し、前記被検体と前記計測部との間をカップリングするカップリングシート。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

3 相違点
本願発明のカップリングシートにおいては「帯状に形成されたシート本体に所定間隔毎に設けられ」、「カップリングテープ」の状態で保管するのに対して、引用発明の整合シールにおいてはその点の特定がない点。

4 当審の判断
(1)相違点の検討
引用発明の整合シールについて、引用例1には、
「光整合シール30は、衛生上等の観点から、使い捨てとする構成であってもよい。」(【0069】)、「使い捨てコンタクトレンズと同様に管理が簡便な光整合シール30を実現することができる。」(【0072】)と記載されており、引用発明の整合シールは、使い捨て製品等の消耗品としてエンドユーザが管理し易く保管することが要請されているといえる。また、メーカー側からも、包装が容易であることは当然に求められていることであるといえる。
そして、パッド型の部材の消耗品の包装・保管方法において、エンドユーザ側において管理し易く、メーカー側が簡易に包装できる手法として、帯状シートに一定間隔毎に設けてテープ状として包装・保管することは、周知の技術である。
そして、引用例2の記載から、生体情報の計測において計測機器と人体の間に介在させるパッド状の部材という本願発明の整合シールと近接した技術分野においても、帯状シートに一定間隔毎に設けてテープ状として包装・保管することは、周知の技術であるといえる(引用例2の第1ページ左下欄第12?15行、第4ページ右上欄下から第3行?左下欄第9行、及び第1,2図参照)ことに鑑みれば、引用発明の整合シールの包装・保管方法として上記周知技術を適用し、「帯状に形成されたシート本体に所定間隔毎に設けられ」、「カップリングテープ」の状態で保管するとすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。

(2)そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 結言
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-16 
結審通知日 2013-05-21 
審決日 2013-06-11 
出願番号 特願2006-162586(P2006-162586)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮川 哲伸  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 三崎 仁
岡田 孝博
発明の名称 カップリングテープ  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 村松 貞男  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 中村 誠  

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