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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1277099 |
審判番号 | 不服2012-8755 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-14 |
確定日 | 2013-07-25 |
事件の表示 | 特願2007- 98533「携帯端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月23日出願公開、特開2008-258906〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成19年4月4日の出願であって、平成24年2月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年5月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付で手続補正がなされたが、その後当審において、平成25年2月15日付けで平成24年5月14日付け手続補正が却下されるとともに同日付で最初の拒絶理由が通知され、平成25年4月22日付けで手続補正がなされたものである。 そして、その請求項1ないし3に係る発明は、平成25年4月22日付けの手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。 「入力部が設けられた第一の筐体と、 前記第一の筐体に対して開閉可能に軸支された第二の筐体と、 前記第二の筐体に対して回動可能に軸支された第三の筐体と、 を備える携帯端末装置であって、 前記第三の筐体に設けられた表示部と、 前記第二の筐体の、前記表示部が面する側と同じ面に設けられた第一の撮像手段と、を備え、 前記第二の筺体が開かれた場合に、前記第三の筐体が回動された場合であっても、前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向と前記第一の撮像手段が向く方向とがほぼ一致するとともに、前記入力部の全部、前記表示部の全部、および前記第一の撮像手段の全部のいずれもが前記第三の筺体により覆われないことを特徴とする、携帯端末装置。」 2.刊行物 (1)刊行物の記載事項 これに対して、当審における、平成25年2月15日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開2006-211576号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに、以下のアないしウの事項が記載されている。 ア.「【0048】 図1は、折畳み状態にある本発明の実施形態にかかる折畳み式携帯電話を示す斜視図である。図2は、開いた状態で液晶表示部が縦長状態における折畳み式携帯電話を示す斜視図である。図3は、液晶表示部を縦長状態又は横長状態に切り換える途中の折畳み式携帯電話を示す斜視図である。図4は、開いた状態で液晶表示部が横長状態のとき折畳み式携帯電話を示す斜視図である。 【0049】 本実施形態の折畳み式携帯電話1は、表面に液晶表示部2が設けられた第1の筐体3と、表面に操作部4を有する第2の筐体5と、これら第1の筐体3と第2の筐体5とを折畳み開閉自在に連結するヒンジ部6とを備えている。第1の筐体3と第2の筐体5とは、図示しない接続手段により、このヒンジ部6において電気的に接続されている。このことで、折畳み式携帯電話1は、図1に示す折畳み状態又は図2に示す開き状態の2通りの状態に折畳み可能となっている。 【0050】 上記第2の筐体5の操作部4には、複数の操作キー7が設けられている。この操作キー7は、折畳み式携帯電話1全体を縦長に持ったときにキー入力できるように配置され、かつその表面に表示が付されている。この操作キー7を操作することで、折畳み式携帯電話1の多数の機能が利用されるようになっている。また、第2の筐体5には、図示しない会話用のマイク部が設けられている。 【0051】 図5?図10に示すように、上記第1の筐体3には、略矩形板状の液晶表示部2を縦長状態又は横長状態とに切換操作可能に支持する支持機構としてのカム機構10が設けられている。第1の筐体3は、下端部両側に上記ヒンジ部6の軸部(図示せず)が挿通されるボス部3aが形成された第1の筐体本体3bと、この第1の筐体本体3bを覆う矩形皿状の背面カバー3c(図2?図7では説明のため省略)とを備えている。 【0052】 上記液晶表示部2は、縦長状態における下端部が直線状に形成され、液晶表示部2の表面の大部分を占めるように、矩形状の液晶ディスプレイ2aが設けられている。液晶表示部2が縦長状態における上端側に会話用のスピーカ部8が設けられている。なお、液晶表示部2の各角部は下端側コーナー部2bを含め、デザイン上又は安全上の観点から丸面取りされている。」 イ.「【0054】 上記液晶表示部2及び操作部4は、第1の筐体3を第2の筐体5に対して折畳み状態から開いたときに現出するように構成されている。したがって、この折畳み式携帯電話1では、液晶表示部2が縦長状態と横長状態とのいずれにおいても、ユーザは液晶表示部2の液晶ディスプレイ2aを見ながら同じ配置の操作部4の操作キー7を操作できるようになっている。」 ウ.「【0084】 上記実施形態では、カム機構10によって、液晶表示部2を、その下端側コーナー部2bがヒンジ部6に沿った直線状の軌跡L2でもって移動するように案内支持しているが、曲線的な軌跡でもって移動するようにしてもよい。この場合には、左右方向ガイド溝12の形状で液晶表示部2の下端側コーナー部2bの軌跡L2を調整すればよい。このことで、第1の筐体3の下端部におけるヒンジ部6との間の膨出部にカメラなどを設けることも可能となり、この場合にも膨出部に液晶表示部2の下端側コーナー部2bが干渉するのを防ぐことができる。」 (2)引用発明 上記アの記載によると、刊行物1の折り畳み携帯電話1は、ヒンジ部6により折畳み開閉自在に連結された第1の筐体3と第2の筐体5を備えており(段落【0049】)、第1の筐体3には、液晶表示部2がカム機構10により縦長状態又は横長状態とに切換操作可能に支持され(段落【0051】)、液晶表示部2には矩形状の液晶ディスプレイ2aが設けられている(段落【0052】)。 また、第2の筐体5は、複数の操作キー7が設けられた操作部4を有している(段落【0049】、【0050】)。 上記ウの記載によると、刊行物1の折り畳み携帯電話1は、第1の筐体3の下端部におけるヒンジ部6との間の膨出部にカメラが設けられている。この膨出部については、液晶表示部2の下端側コーナー部2bが曲線的な軌跡でもって移動するようにしたことで、カメラを設けることが可能となる膨出部が形成されるものであり、下端側コーナー部2bが干渉するのを防ぐことができるものとなっている。 すなわち、刊行物1の折り畳み携帯電話1は、第1の筐体3の下端部におけるヒンジ部6との間の膨出部であって、液晶表示部2が曲線的な軌跡でもって移動する際に、液晶表示部2の下端側コーナー部2bが干渉するのを防ぐように形成されている膨出部に設けられたカメラを備えている。 上記イの記載によると、刊行物1の折り畳み携帯電話1は、液晶表示部2及び操作部4は、第1の筐体3を第2の筐体5に対して折畳み状態から開いたときに現出するように構成され、液晶表示部2が縦長状態と横長状態とのいずれにおいても、ユーザは液晶表示部2の液晶ディスプレイ2aを見ながら同じ配置の操作部4の操作キー7を操作できるようになっている。 以上によれば、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。 「複数の操作キー7が設けられた操作部4を有する第2の筐体5と、 第2の筐体5にヒンジ部6により折畳み開閉自在に連結された第1の筐体3と、 第1の筐体3にカム機構10により縦長状態又は横長状態とに切換操作可能に支持された液晶表示部2と、 を備える折畳み式携帯電話1であって、 液晶表示部2に設けられた矩形状の液晶ディスプレイ2aと、 第1の筐体3の下端部におけるヒンジ部6との間の膨出部であって、液晶表示部2の下端側コーナー部2bが曲線的な軌跡でもって移動する際に、下端側コーナー部2bが干渉するのを防ぐように形成されている膨出部に設けられたカメラと、を備え、 液晶表示部2及び操作部4は、第1の筐体3を第2の筐体5に対して折畳み状態から開いたときに現出するように構成され、液晶表示部2が縦長状態と横長状態とのいずれにおいても、ユーザは液晶表示部2の液晶ディスプレイ2aを見ながら同じ配置の操作部4の操作キー7を操作できるようになっている、折畳み式携帯電話1」 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)「入力部が設けられた第一の筐体」について 引用発明の「複数の操作キー7が設けられた操作部4を有する第2の筐体5」は、本願発明の「入力部が設けられた第一の筐体」に相当する。 (2)「前記第一の筐体に対して開閉可能に軸支された第二の筐体」について 引用発明の「第2の筐体5にヒンジ部6により折畳み開閉自在に連結された第1の筐体3」は、第1の筐体3が第2の筐体5(本願発明の「第一の筐体」に相当。以下、同様に記す。)に対してヒンジ部6を回転軸として開閉自在に連結されており、この構造は軸支であるといえるから、本願発明の「前記第一の筐体に対して開閉可能に軸支された第二の筐体」に相当する。 (3)「前記第二の筐体に対して回動可能に軸支された第三の筐体」について 引用発明の「液晶表示部2」は、第1の筐体3(本願発明の「第二の筐体」に相当。以下、同様に記す。)にカム機構10により縦長状態又は横長状態とに切換操作可能に支持され、かつ、矩形状の液晶ディスプレイ2aが設けられている。 この「液晶表示部2」は、第1の筐体3(第二の筐体)に対してカム機構10により支持されており、軸支されているものではない点で本願発明と相違するものの、第1の筐体3(第二の筐体)に対して回動可能に支持されているものである点では本願発明と同じものである。 したがって、引用発明の「第1の筐体3にカム機構10により縦長状態又は横長状態とに切換操作可能に支持された液晶表示部2」は、本願発明と「前記第二の筐体に対して回動可能に支持された第三の筐体」である点で一致し、本願発明は、第三の筐体が「前記第二の筐体に対して軸支されている」のに対し、引用発明では、液晶表示部2(本願発明の「第三の筐体」に相当。以下、同様に記す。)が「前記第二の筐体に対してカム機構により支持されている」点で相違する。 (4)「携帯端末装置」について 引用発明の「折畳み式携帯電話1」は、本願発明の「第一の筐体」、「第二の筐体」、及び「第三の筐体」に相当する「第2の筐体5」、「第1の筐体3」、及び「液晶表示部2」を備えており、一般に携帯電話は携帯端末装置の技術的範疇に含まれるものといえるから、引用発明の「折畳み式携帯電話1」は、本願発明の「携帯端末装置」に相当する。 (5)「前記第三の筐体に設けられた表示部」について 引用発明の「液晶表示部2に設けられた矩形状の液晶ディスプレイ2a」は、本願発明の「前記第三の筐体に設けられた表示部」に相当する。 (6)「前記第二の筐体の、前記表示部が面する側と同じ面に設けられた第一の撮像手段」について 引用発明の「第1の筐体3の下端部におけるヒンジ部6との間の膨出部であって、液晶表示部2の下端側コーナー部2bが曲線的な軌跡でもって移動する際に、下端側コーナー部2bが干渉するのを防ぐように形成されている膨出部に設けられたカメラ」は、第1の筐体3(第二の筐体)の下端部に形成された膨出部に、どの向きでどのように設けられているのか明確ではなく、本願発明のように、「前記第二の筐体の、前記表示部が面する側と同じ面に設けられた」ものであるか不明であるが、少なくとも第1の筐体3(第二の筐体)に設けられているものである。 したがって、引用発明の「第1の筐体3の下端部におけるヒンジ部6との間の膨出部であって、液晶表示部2の下端側コーナー部2bが曲線的な軌跡でもって移動する際に、下端側コーナー部2bが干渉するのを防ぐように形成されている膨出部に設けられたカメラ」は、本願発明と「前記第二の筐体に設けられた第一の撮像手段」である点で一致し、本願発明は、第一の撮像手段が「前記第二の筐体の、前記表示部が面する側と同じ面に設けられている」のに対し、引用発明では、カメラ(本願発明の「第一の撮像手段」に相当。以下、同様に記す。)が「前記第二の筐体にどのように設けられているのか明確でない」点で相違する。 (7)「前記第二の筺体が開かれた場合に、前記第三の筐体が回動された場合であっても、前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向と前記第一の撮像手段が向く方向とがほぼ一致するとともに、前記入力部の全部、前記表示部の全部、および前記第一の撮像手段の全部のいずれもが前記第三の筺体により覆われないこと」について 引用発明は「液晶表示部2及び操作部4は、第1の筐体3を第2の筐体5に対して折畳み状態から開いたときに現出するように構成され、液晶表示部2が縦長状態と横長状態とのいずれにおいても、ユーザは液晶表示部2の液晶ディスプレイ2aを見ながら同じ配置の操作部4の操作キー7を操作できるようになっている」ことから、第1の筐体3(第二の筐体)が開かれ、液晶表示部2(第三の筐体)が縦長状態と横長状態に回動された場合であっても、液晶表示部2(第三の筐体)及び操作部4(本願発明の「入力部」に相当。以下、同様に記す。)はユーザに面した同じ配置をしており、液晶表示部2(第三の筐体)の液晶ディスプレイ2a(本願発明の「表示部」に相当。以下、同様に記す。)を見ることが可能であり、操作部4(入力部)の操作キー7を操作することが可能であるものである。 ここで、本願発明の「前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向と前記第一の撮像手段が向く方向とがほぼ一致する」という技術的事項を確認する。 この技術的事項の明細書の根拠箇所としては、平成25年4月22日付けの意見書の「(2)特許請求の範囲の補正について」の欄において、「(特に、図4、段落[0021]等)」であるとしている。 段落[0021]には、「また、第二の筐体20の面と第三の筐体30の面とは、ほぼ面一となるように配置されている。つまり、自分撮りカメラ22が向く方向と、表示部31が向く方向とがほぼ一致しているため、表示部31に対する視線と自分撮りカメラ22に対する視線とがほぼ同一の向きとなり、話者を撮影する際の自分撮りカメラ22の位置合わせが行いやすくなっている。」と記載されており、表示部が向く方向と第1の撮像手段の向く方向はほぼ一致していることが確認できる。 一方、入力部が向く方向と、表示部及び第一の撮像手段の向く方向との関係については、図4と明細書のその他の箇所の記載、例えば、段落[0011]の「第一の筐体110に対して第二の筐体120がある程度の角度を持って開くように構成され、第一の筐体110の面と第二の筐体の面とが同一平面上に配置されるようには構成されていない」という記載などから、ある程度の角度の相違があり、少なくとも使用者が入力部と表示部を同時に利用可能な程度に一致してれば良いものと認められる。 引用発明の「液晶表示部2及び操作部4は、第1の筐体3を第2の筐体5に対して折畳み状態から開いたときに現出するように構成され、液晶表示部2が縦長状態と横長状態とのいずれにおいても、ユーザは液晶表示部2の液晶ディスプレイ2aを見ながら同じ配置の操作部4の操作キー7を操作できるようになっている」は、第1の筐体3(第二の筐体)が開かれ、液晶表示部2(第三の筐体)が縦長状態と横長状態に回動された場合であっても、液晶表示部2(第三の筐体)及び操作部4(入力部)はユーザに面した同じ配置をしており、液晶表示部2(第三の筐体)の液晶ディスプレイ2a(表示部)を見ることが可能であり、操作部4(入力部)の操作キー7を操作することが可能であることから、上記の本願発明の「前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向と前記第一の撮像手段が向く方向とがほぼ一致する」という技術的事項の意味を考慮すると、本願発明とは「前記第二の筺体が開かれた場合に、前記第三の筐体が回動された場合であっても、前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向とがほぼ一致する」ものである点で一致する。 また、同時に、引用発明は、第1の筐体3(第二の筐体)が開かれ、液晶表示部2(第三の筐体)が縦長状態と横長状態に回動された場合であっても、液晶表示部2(第三の筐体)の液晶ディスプレイ2a(表示部)を見ることが可能であり、操作部4(入力部)の操作キー7を操作することが可能であることから、本願発明とは「前記第二の筺体が開かれた場合に、前記第三の筐体が回動された場合であっても、前記入力部の全部、前記表示部の全部のいずれもが前記第三の筺体により覆われないこと」である点で一致する。 ただし、引用発明のカメラ(第一の撮像手段)は、第1の筐体3(第二の筐体)の下端部に形成された膨出部に、どの向きでどのように設けられているのか明確ではないため、カメラ(第一の撮像手段)の向く方向と、液晶ディスプレイ2a(表示部)及び操作部4(入力部)の向く方向との関係が不明であり、また、カメラ(第一の撮像手段)が液晶表示部2(第三の筐体)に覆われないものであるかが明確でなく、本願発明とは「前記第一の撮像手段が向く方向と、前記入力部が向く方向及び前記表示部が向く方向との関係が不明であり、前記第一の撮像手段の全部が前記第三の筺体により覆われないものであるかが明確でない」点において相違する。 (8)まとめ 上記(1)ないし(7)をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次の通りである。 [一致点] 入力部が設けられた第一の筐体と、 前記第一の筐体に対して開閉可能に軸支された第二の筐体と、 前記第二の筐体に対して回動可能に支持された第三の筐体と、 を備える携帯端末装置であって、 前記第三の筐体に設けられた表示部と、 前記第二の筐体に設けられた第一の撮像手段と、を備え、 前記第二の筺体が開かれた場合に、前記第三の筐体が回動された場合であっても、前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向とがほぼ一致するとともに、前記入力部の全部、前記表示部の全部のいずれもが前記第三の筺体により覆われないことを特徴とする、携帯端末装置。 [相違点1] 本願発明は、第三の筐体が「第二の筐体に対して軸支されている」のに対し、引用発明では、第三の筐体が「第二の筐体に対してカム機構により支持されている」点。 [相違点2] 本願発明は、第一の撮像手段が「前記第二の筐体の、前記表示部が面する側と同じ面に設けられている」のに対し、引用発明では、第一の撮像手段が「前記第二の筐体にどのように設けられているのか明確でない」点。 [相違点3] 本願発明は、「前記第二の筺体が開かれた場合に、前記第三の筐体が回動された場合であっても、前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向と前記第一の撮像手段が向く方向とがほぼ一致するとともに、前記入力部の全部、前記表示部の全部、および前記第一の撮像手段の全部のいずれもが前記第三の筺体により覆われない」ものであるのに対し、引用発明では、「前記第二の筺体が開かれた場合に、前記第三の筐体が回動された場合であっても、前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向とがほぼ一致するとともに、前記入力部の全部、前記表示部の全部のいずれもが前記第三の筺体により覆われない」ものであるが、「前記第一の撮像手段が向く方向と、前記入力部が向く方向及び前記表示部が向く方向との関係が不明であり、前記第一の撮像手段の全部が前記第三の筺体により覆われないものであるかが明確でない」点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 折畳み式携帯電話のような携帯端末装置において、表示部を支持部に対して縦長状態又は横長状態に90°回動可能とする技術は、当審における平成25年2月15日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開2003-319043号公報(以下、「刊行物2」という)、特開2006-313533号公報(以下、「刊行物3」という)、特開2001-156893号公報(以下、「刊行物4」という)に記載されているように周知技術であり、その回動機構として、表示部と支持部を回転軸により結合し、表示部をその回転軸を中心に回動させる機構、すなわち軸支する回動機構が一般的である(刊行物2の段落[0032]?[0035]、刊行物3の段落[0039]?[0041]、刊行物4の段落[0014]?[0018]を参照のこと)。 引用発明は、第1の筐体3(第二の筐体)の下端部におけるヒンジ部6との間の膨出部であって、液晶表示部2(第三の筐体)の下端側コーナー部2bが曲線的な軌跡でもって移動する際に、下端側コーナー部2bが干渉するのを防ぐように形成されている膨出部にカメラ(第一の撮像手段)が設けられたものである。 また、上述した表示部を支持部に対して軸支する回動機構も、表示部の端部が回転軸を中心とした円弧状の軌跡でもって移動するため、支持部の下端部に膨出部を形成することが可能な構造である。 そして、第二の筐体の下端部に第一の撮像手段を設けるための膨出部を有する回動機構として、引用発明の第三の筐体が第二の筐体に対してカム機構により支持される構造に代えて、上記の一般的な表示部(本願発明の「第三の筐体」に相当)を支持部(本願発明の「第二の筐体」に相当)に対して軸支する回動機構を採用し、第三の筐体が第二の筐体に対して軸支される構造とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)相違点2について 折畳み式携帯電話において、テレビ電話用の自分撮りカメラを表示部が面する側と同じ面に設けることは、刊行物2の段落[0054]、[0078]、特開2004-15703号公報(「刊行物5」とする)の段落[0002]?[0006]、[0027]、[0034]に記載されているように周知技術である。 ここで、引用発明のカメラ(第一の撮像手段)を検討すると、このカメラ(第一の撮像手段)は第1の筐体3(第二の筐体)の下端部に形成された膨出部に液晶表示部2(第三の筐体)と干渉しないように設けられたものである。 例えば、このカメラが自分以外の対象を撮影するカメラであれば、液晶表示部2の液晶ディスプレイ2aが向く方向と反対の方向を撮影するものとするのが普通であるため、カメラの設置位置は、液晶表示部2と干渉しない位置に必ずしも限定されず、液晶表示部2の背面側の第1の筐体3の背面側のどこに設けても問題にならないが、引用発明のカメラをテレビ電話用の自分撮りカメラとするのであれば、自身の撮影と同時に、撮影される自身の画像やテレビ電話の相手の画像を視認する必要があり、液晶表示部2の液晶ディスプレイ2aとカメラを同時に使用者に対向させなければならず、カメラの設置位置を液晶表示部2と干渉しない位置とすることが必須となる。 したがって、上述したようにカメラを表示部が面する側と同じ面に設けることが周知技術であることを考慮すると、引用発明の、第1の筐体3の下端部に形成された膨出部に設けられるカメラとして、液晶表示部2の液晶ディスプレイ2aが向く方向に設けられる自分撮りカメラとすることが自然に想起される。 よって、引用発明のカメラ(第一の撮像手段)を、第1の筐体3(第二の筐体)の下端部に形成された膨出部における液晶ディスプレイ2a(表示部)が面する側と同じ面に設けるものとすること、すなわち、第一の撮像手段を、前記第二の筐体の、前記表示部が面する側と同じ面に設けるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (3)相違点3について 上記相違点2に関する検討において述べたように、折畳み式携帯電話においてテレビ電話用の自分撮りカメラを表示部が面する側と同じ面に設けることは周知技術であり、その際に、カメラの向く方向を表示部の向く方向と一致させることは、当該カメラの用途から考えれば当然想到することである。 また、引用発明のカメラ(第一の撮像手段)は、第1の筐体3(第二の筐体)の下端部に形成された膨出部に液晶表示部2(第三の筐体)と干渉しないように設けられたものであるから、このカメラ(第一の撮像手段)を膨出部の液晶表示部2(第三の筐体)が面する側と同じ面に設けた際には、液晶表示部2(第三の筐体)に覆われない構造となる。 したがって、引用発明において、前記第二の筺体が開かれた場合に、前記第三の筐体が回動された場合であっても、前記入力部が向く方向と前記表示部が向く方向と前記第一の撮像手段が向く方向とがほぼ一致するとともに、前記入力部の全部、前記表示部の全部、および前記第一の撮像手段の全部のいずれもが前記第三の筺体により覆われないものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (4)効果等について 本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できるものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものでもない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-22 |
結審通知日 | 2013-05-28 |
審決日 | 2013-06-10 |
出願番号 | 特願2007-98533(P2007-98533) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田村 誠治、木方 庸輔 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 奥村 元宏 |
発明の名称 | 携帯端末装置 |
代理人 | 横山 淳一 |