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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1277190
審判番号 不服2010-27554  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-06 
確定日 2013-08-05 
事件の表示 特願2006-317644「有機電界発光表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月 3日出願公開、特開2008- 77032〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願の手続の経緯は、概要次のとおりである。
特許出願 :平成18年11月24日
拒絶理由通知(最初):平成21年 3月 5日(起案日)
意見書 :平成21年 6月24日
手続補正 :平成21年 6月24日
拒絶理由通知(最後):平成21年 7月28日(起案日)
意見書 :平成21年11月 4日
手続補正 :平成21年11月 4日
補正の却下の決定 :平成22年 8月 3日(起案日)
拒絶査定 :平成22年 8月 3日(起案日)
拒絶査定不服審判請求:平成22年12月 6日
手続補正 :平成22年12月 6日
審尋 :平成23年 7月14日(起案日)
回答書 :平成23年10月19日

第2 本願発明
平成22年12月6日付けの手続補正による特許請求の範囲の補正は、請求項1についてみると、平成21年6月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1を削除して、当該請求項1を引用する請求項5を新たな請求項1とするものであるから、請求項の削除を目的とするものであり、適法なものである。よって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年12月 6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
有機電界発光素子が形成される第1基板と、
前記第1基板上部に配置される第2基板と、
前記第1基板と第2基板を合着させるための封止材を含む表示パネルと、
下部面及び前記下部面の端から延長される複数の側壁を有し、前記下部面と前記側壁によって前記表示パネルが収容される空間が定義されるベゼルと、
前記表示パネルと前記ベゼルとの間に配置される補強トラスを含み、
前記ベゼルの側壁は、二重構造として形成され、
前記補強トラスは、ステンレススチール、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、ポリエチレン、プロトアクチニウム、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、LCP、ポリカーボネート及びポリウレタンのうちいずれか一つに形成されることを特徴とすることを特徴とする有機電界発光表示装置。」

なお、本件出願においては、パリ条約に基づく優先権主張(優先権主張番号10-2006-0091834号、優先権主張の日:平成18年9月21日、韓国)がなされているが、優先権主張の基礎となった出願の明細書を参照すると、少なくとも、本願発明の「表示パネルとベゼルとの間に配置される補強トラス」が記載されておらず、本願発明について優先権主張の効果を認めることはできない。ただし、以下の引用例は、いずれも優先権主張の日よりも前に公開されたものであるので、優先権主張の効果の有無にかかわらず、引用例としての適格性を有するものである。

第3 引用例
1 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前、かつ、優先権主張の日前に頒布された刊行物である、特開2005-141194号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の技術的事項の記載がある(下線部は、当審で付した。)。

(1a)「【背景技術】
【0002】
画素を有機電界発光素子(有機エレクトロルミネセンス素子;有機EL素子)により構成した有機ELディスプレイは、バックライトが不要で非常に薄いフラットパネルディスプレイとして開発、商品化が進められている。このような有機ELディスプレイの用途としてテレビあるいは映像モニタを想定した場合には、その画面サイズは20インチ(対角線長さが約51cm)を超え、50インチ(対角線長さが約127cm)程度になると予想される。一方、有機ELディスプレイのパネル厚さは約2mm程度であり、例えば50インチの有機ELディスプレイを製造した場合には、パネル単体では平面を保つことができず、何ら対策を講じないとすれば、パネルの湾曲や変形、場合によっては破損を生じる可能性もある。
そこで、画面サイズの大型化に対応できる補強構造を備えたフラットパネルディスプレイが、例えば特許文献1にて開示されている。
【特許文献1】特開2002-216948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、有機EL素子は、電流によって発光する素子であり、配線等で生じるジュール熱によってディスプレイの温度が上昇する。特に大画面のパネルでは温度の上昇が顕著になるため、積極的な放熱も行う必要が生じると考えられるが、先の特許文献1では、パネルで発生する熱に関しては考慮されていない。」

(1b)「【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、表示パネルを大型化した場合にも、良好に表示パネルを支持でき、かつ表示パネルにて生じる熱を良好に放散させることが可能な、信頼性に優れる表示装置を提供することを目的としている。また本発明は、大型の表示パネルに用いて好適な補強構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、表示パネルと、該表示パネルの背面側に設けられた補強構造体とを備えた表示装置であって、前記補強構造体は、前記表示パネル背面との接着部を成す支持基板と、該支持基板上に設けられた放熱部材とを備えていることを特徴とする表示装置を提供する。
この表示装置によれば、表示パネルの背面に補強構造体を備えていることで、薄型の基板(例えば2mm厚程度のガラス基板)を用いて構成されている表示パネルを良好に支持することができ、映像ディスプレイ等の大画面のものでも良好に垂直支持できる。そして、前記放熱部材により、表示パネルの発生熱を放散させることができるため、発熱量の多い大画面の表示装置に用いた場合にも、過熱による信頼性の低下を効果的に防止することができる。」

(1c)「【0006】
本発明の表示装置では、前記放熱部材は、互いに交差して前記支持基板上に配設された複数の梁部材を備えることが好ましい。この構成によれば、前記複数の梁部材が互いに交差して配置されるため、支持基板の面方向で優れた変形耐性を奏し、さらに優れた表示パネルの支持構造を実現できる。また、放熱部材の表面積拡大にも寄与し、優れた放熱特性を得ることもできる。
【0007】
本発明の表示装置では、前記複数の梁部材は、平面視略井桁状を成して前記支持基板上に配設されている構成とすることができる。
また本発明の表示装置では、前記複数の梁部材は、平面視略三角形状、又は略ハニカム形状を成して前記支持基板上に配設されている構成とすることができる。
これらの構成によれば、簡素な構成でありながら表示パネルの支持強度に優れた放熱部材を有する補強構造体を具備した表示装置が提供される。」

(1d)「【0010】
本発明の表示装置では、前記放熱部材を構成する複数の梁部材に、該梁部材の側面を貫通する放熱孔が設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、前記放熱孔を介して前記梁部材に囲まれる空間の暖気を排出可能になり、優れた放熱特性を有する放熱部材を具備し、信頼性に優れた表示装置を提供することできる。
【0011】
本発明の表示装置では、前記放熱孔は、前記複数の梁部材により区画された前記支持基板上の複数の領域を連通するように複数設けられていることが好ましい。この構成によれば、前記放熱部材の背面側(表示パネルと反対側)が電子機器の筐体等により閉塞されている場合にも、前記梁部材に囲まれる領域の暖気を、前記放熱孔を介して放熱部材の外側に排出でき、優れた放熱特性が得られる。」

(1e)「【0017】
本発明の表示装置では、前記複数の梁部材は、前記表示パネル周縁部に対応する前記支持基板上に、より密に配置されている構成としても良い。このような構成とすれば、梁部材の数を増加させることなく補強構造体によるパネル支持強度を向上させることができる。
・・・(中略)・・・
【0019】
本発明の表示装置では、前記放熱部材は、金属からなることが好ましい。金属製の放熱部材を備えることで、表示パネルの支持強度と放熱性のいずれにも優れた補強構造体が得られる。
・・・(中略)・・・
【0021】
本発明の表示装置では、前記表示パネルは、有機電界発光素子を備える表示パネルである構成とすることができる。この構成によれば、パネルの支持強度、並びに放熱性に優れた有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置が提供される。」

(1f)「【0027】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係る表示装置の一実施形態である有機EL表示装置の斜視構成図であり、図2は、図1のA-A’線に沿う断面構成図である。図1及び図2に示す有機EL表示装置100は、表示パネルである有機電界発光パネル(有機ELパネル)150と、その背面側(図示手前側)に配設された補強構造体160とを主体として構成されている。
有機ELパネル150は、透光性を有する基板110と、この基板110上に形成された複数の有機EL素子(発光素子)120…と、これらの有機EL素子120…を覆って披着され、基板110と封止材141を介して気密に接着された封止部材130とを主体として構成されている。本実施形態に係る有機ELパネル150は、発光した光を基板110側から放射する、いわゆるボトムエミッション型となっている。
【0028】
補強構造体160は、有機ELパネル150の背面側に接着される金属製のベースプレート(支持基板)161と、ベースプレート161の外面(図2上面)に一体的に形成された金属製の放熱部材170とを備えて構成されている。放熱部材170は、図示x方向に延在する複数(図示では3本)の第1の梁部材171と、図示y方向に延在する複数(図示では4本)の第2の梁部材172とが、平面視井桁状に一体に形成された構成を備える。上記第1の梁部材171…と第2の梁部材172…は、略長方形状の板状部材であり、ベースプレート161の面に対してほぼ垂直に立設されている。
そして、図2に示すように、有機ELパネル150の封止部材130と接着層142を介して接着されて有機ELパネル150を支持するようになっている。上記接着層142としては、両面に粘着材を塗布された熱伝導性シートを用いることもできる。また、ベースプレート161と封止部材130とを接着した後、ベースプレート161の外周部をかしめる等して両者の接合部を補強することもできる。
【0029】
本実施形態の場合、有機ELパネル150の画面サイズは、対角30インチ(約762mm)であり、外形寸法は約610mm(x方向)×約460mm(y方向)である。ベースプレート161の平面寸法は670mm(x方向)×520mm(y方向)であり、放熱部材170を構成する梁部材171,172の高さは15mm、厚さは2mmであり、隣接する梁部材171,171間の距離、及び梁部材172,172間の距離はいずれも30mmである。従って、図1では第1の梁部材171…を3本、第2の梁部材172…を4本のみ図示しているが、実際には、第1の梁部材171は17本、第2の梁部材172は21本設けられている。
【0030】
上記構成を備えた本実施形態の有機EL表示装置100では、有機ELパネル150を支持する補強構造体160が、平面井桁状に組まれた第1の梁部材171…と第2の梁部材172…とからなる放熱部材170を備えているので、図示x方向、及びy方向のいずれにも変形し難く、優れたパネル支持構造を実現できる。これにより、有機ELパネル150の画面サイズを50インチ程度まで大型化したとしても、有機ELパネル150に湾曲や変形を生じることが無く、優れた耐久性と信頼性とを備えた有機EL表示装置を提供することができる。また、本実施形態では、井桁状に組まれた梁部材171…、172…により構成された放熱部材170を備えているので、有機ELパネル150にて生じた熱を効果的に放散させることができ、パネルの過熱による有機EL素子120…や駆動制御回路(図示略)等の動作不良を効果的に防止することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係る補強構造体160を備えることで、薄型の基板110を用いた有機ELパネル150を良好に支持し、かつ有機ELパネル150の発生熱を高効率に放散することができるので、構造耐久性及び信頼性に優れ、画面サイズの大型化にも容易に対応可能な有機EL表示装置100を安価に提供することができる。
【0032】
尚、本実施形態では、補強構造体160のベースプレート161と放熱部材170とが一体に形成されている構成としたが、ベースプレート161と、放熱部材170とを別体で用意し、両者を接合して補強構造体160を作製しても良いのは勿論である。本実施形態に係るベースプレート161及び放熱部材170は、いずれも金属製となっており、例えばアルミニウムや銅等を好適な構成材料としてあげることができるが、熱が加わったときに熱膨張係数の違いでELパネル150と補強構造体160が剥離することを防ぐために、熱膨張係数が小さい金属材料あるいは合金材料を用いることも好適である。また、金属製に限られることなく、良好な熱伝導性(放熱特性)、及びパネル支持強度を得られる範囲において種々の材料にて構成することが可能である。
【0033】
また、本実施形態では放熱部材170の梁部材171…、172…を等間隔に、かつ両者が直交するように配列した構成としたが、梁部材171…、172…は、ベースプレート161上で偏在させることもできる。例えば、ベースプレート161面の周縁部にて梁部材171…、172…を比較的密に配置し、同中心部で粗に配置すれば、多くの梁部材を設けることなく良好な支持強度を有する補強構造体160が得られる。また、放熱部材170の排熱特性を重視する場合には、発熱量が比較的多くなるパネル中央部に梁部材171…、172…を密に配置すればよい。
【0034】
また本実施形態では、梁部材171…、172…により区画されるベースプレート161上の領域175…が、平面視矩形状となるように梁部材171…、172…を配置しているが、例えば、前記領域175の平面形状が、三角形状やハニカム形状(六角形状)、あるいはそれ以外の多角形状となるように複数の梁部材をベースプレート161上に配設することもできる。いずれの形状とした場合にも、ベースプレート161上で互いに交差して延在する梁部材により放熱部材170が構成されるため、図示x方向及びy方向のいずれにおいても変形し難く、大画面の有機ELパネル150であっても良好に支持することが可能である。
【0035】
以下、有機ELパネル150の構成について詳細に説明する。
基板110上に配列された各有機EL素子120は、図2に示すように、陽極121と、正孔注入層122と、発光層123と、陰極124とを基板110側から順次積層した構成を備えており、基板110上に配列された有機EL素子120…の発光層123は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の発光層により構成されている。そして、これら赤緑青の3色の有機EL素子120(ドット)が、有機EL表示装置100の1画素を構成している。
【0036】
各有機EL素子120に対応して、TFT(薄膜トランジスタ)等のスイッチング素子(図示略)が設けられており、このスイッチング素子により各ドット(有機EL素子120)が、アクティブマトリクス駆動されるようになっている。
尚、図2では、有機EL素子120…が、互いに平面的に離間された配置としているが、これらの有機EL素子120同士を区画する隔壁を有機EL素子120,120間に設けた構成としてもよい。また、各画素を構成する有機EL素子120…は、単純マトリクス方式により駆動してもよい。
【0037】
基板110は、発光した光を透過して放射するべく、透明ガラスや石英等の透光性の基板となっている。
陽極121も、後述するように発光層123で発光した光を透過させるため、透明導電材料によって形成されたものとなっている。透明導電材料としてはITOを好適に使用できる。また、このITO(陽極121)の表面には必要に応じてO_(2)プラズマ処理が施されるようになっており、これによって電極表面の洗浄、及び仕事関数の調整がなされ、さらに親液性が付与されるようになっている。
【0038】
この陽極121上に形成された正孔注入層122は、例えばポリチオフェン誘導体にポリスチレンスルフォン酸が添加されてなるものから形成される。すなわち、正孔注入層122の形成材料として具体的には、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸などが好適に用いられる。
【0039】
尚、正孔注入層122の形成材料については、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、前記のポリスチレンスルフォン酸とともに適宜な分散媒に分散させたものなどが使用可能である。
【0040】
発光層123は、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の高分子発光材料によって形成される。
発光材料として高分子材料を用いる場合、前記正孔注入層122を再溶解しない溶媒を用いて溶液化し、スピンコート法やインクジェット法等の液滴吐出法によって製膜する。
また、発光層123の形成材料としては、低分子材料からなる発光材料を用いてもよい。ただし、低分子材料によって発光層123を形成する場合には、有機EL素子120を、陽極121側から低分子材料から成る正孔輸送層、発光層、電子輸送層をこの順に積層し、形成する。
陰極124は、カルシウムやマグネシウム等からなる金属電極により構成することができる。
【0041】
このようにして基板110上に積層された各層の上には、これら各層からなる有機EL素子120…を覆う封止部材130が設けられ、封止部材130は、封止材141を介して基板110と接着されている。この封止部材130としては、例えば電気絶縁性を有する板状の封止基板が用いられる。封止基板を用いた場合、この封止基板は前記の有機EL素子120を覆った状態で封止樹脂により基板110に固定される。封止樹脂としては、例えば熱硬化樹脂や紫外線硬化樹脂が用いられる。また、封止基板を用いずに封止樹脂のみを用い、有機EL素子を覆ってこれを封止するようにしてもよい。」

(1g)「【0047】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態の有機EL表示装置(表示装置)300の斜視構成図である。有機EL表示装置300は、有機ELパネル150と、その背面側に配設された補強構造体360とを主体として構成されている。有機ELパネル150は、先の第1実施形態に係る有機ELパネルと同様の構成であり、以下ではその説明は省略する。
【0048】
補強構造体360は、有機ELパネル150の背面側に接着される平板状の金属製のベースプレート(支持基板)361と、ベースプレート361の外面側(図示手前側)に一体的に形成された金属製の放熱部材370とを主体として構成されている。放熱部材370は、図示x方向に延在する複数(図示では3本)の第1の梁部材371と、図示y方向に延在する複数(図示では4本)の第2の梁部材372とが、平面視井桁状に一体に形成された構成を備える。上記第1の梁部材371…と第2の梁部材372…は、略長方形状の板状部材であり、ベースプレート361の外面に対してほぼ垂直に立設されている。そして、本実施形態の場合、x方向に延在する梁部材371を貫通する放熱孔371aが、梁部材371…、372…により区画された領域375…を、図示y方向で連通するように設けられている。すなわち、平面視矩形状の領域375の上下に配置された梁部材371、371に、円形状の放熱孔371aがそれぞれ貫設されている。
【0049】
上記構成のもと本実施形態に係る補強構造体360は、先の第1実施形態の有機EL表示装置と同様に、図2に示した如く有機ELパネル150の封止部材130と接着層142を介して接着されて有機ELパネル150を支持するようになっている。
【0050】
上記構成を備えた本実施形態の有機EL表示装置300では、補強構造体360の第1の梁部材371を貫通する放熱孔371aが、図示y方向に連設されていることで、有機ELパネル150の発生熱をより効果的に放散させることができるようになっている。図4では、放熱部材370の背面側は開口しているが、実際に電子機器等の表示部に搭載されると、放熱部材370は筐体と近接又は当接した状態となり筐体により塞がれてしまうため、梁部材により区画された領域375…内での気流はほぼ停止することになる。そこで本実施形態のように、領域375…を区画する梁部材371…に放熱孔371a…を設けて領域375…が連通された構成とすることで、図示y方向で隣接する領域375、375間を連通し、有機ELパネル150の発生熱で加熱された空気を、放熱部材370の外側に排出することができる。また、パネルの発生熱で暖められた空気(暖気)は、図示y方向上側に上昇するので、図4に示すように図示y方向で放熱孔371a…を連設することで、暖気の排出効率をより高めることが可能である。」

(1h)「【0071】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図10を参照しつつ説明する。本実施形態は、先の第3?第6実施形態に係る有機EL表示装置とともに用いて好適な筐体を備えた構成である。
なお、本実施形態では有機EL表示装置700として、筐体710に有機EL表示装置600を収容した構成を図示しているが、有機EL表示装置600に代えて、先の第3実施形態から第5実施形態の有機EL表示装置を筐体710に収容した形態であってもよいのは勿論である。また、放熱孔ないし切欠部を有さない第1実施形態又は第2実施形態の有機EL表示装置を収容した場合にも、筐体と放熱部材とをある程度離間した状態にて両者を配置することで暖気の流路を確保できるので、相応の放熱効果を得ることができる。
【0072】
図10(a)は、本実施形態の有機EL表示装置700の側面図であり、有機EL表示装置600を筐体710に収容した状態を示す側断面図である。(b)は、同、背面図である。図10に示すように、筐体710は、前面側((a)図左側、(b)図背面側)に有機ELパネル150の表示面を露出可能な開口部を具備した概略箱形を成している。筐体710の背面には、複数のファン(吸気手段/排気手段)711が配設されるとともに、多数の貫通孔(排気手段/吸気手段)712が配列形成されている。
【0073】
筐体710に対して有機EL表示装置600は、図示の如く有機ELパネル150を外側に向け、補強構造体660をファン711側に向けた状態で収容される。そして、有機EL表示装置600の動作時に、ファン711を排気動作させることで、貫通孔712から外気を取り込み、表示装置背面の放熱部材670に連設された切欠部671a内を流動させてファン711から排出する図示のような気流Wを筐体内部に形成するようになっている。このようにして、放熱部材670の熱を効率的にファン711から外部へ放散させることができるようになっている。
また本実施形態の場合は、放熱部材670を構成する梁部材の縦横に切欠部671a、672aが設けられているので、暖気を(a)図左右方向((b)図紙面垂直方向)にも流すことができ、より効率的に排熱動作を行うことができるようになっている。」

(1i)図2

(1j)図4

(1k)図10

〔引用例に記載された発明〕
これらの記載事項からして、引用例1には、
「有機EL素子(120)が配列された基板(110)と、
有機EL素子(120)を覆う封止基板からなる封止部材(130)と、
基板(110)と封止部材(130)とを接着する封止材(141)とを含む有機ELパネル(150)と、
前面側に有機ELパネル(150)の表示面を露出可能な開口部を具備した概略箱形の筐体(710)と、
平面視略井桁状を成して互いに交差してベースプレート(361)上に配設された複数の梁部材(371、372)を備え、複数の梁部材(371、372)が互いに交差して配置されるため、ベースプレート(361)の面方向で優れた変形耐性を奏し優れた表示パネルの支持構造を実現できる放熱部材(370)を有する補強構造体(360)とを含み、
補強構造体(360)は有機ELパネル(150)の背面側に接着され、補強構造体(360)の放熱部材(370)の背面側は開口しているが、実際に電子機器等の表示部に搭載されると、放熱部材(370)は筐体(710)と当接した状態となり筐体(710)により塞がれてしまうものであって、補強構造体(360)のベースプレート(361)と放熱部材(370)とはアルミニウムが好適な構成材料である有機EL表示装置」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

2 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前、かつ、優先権主張の日前に頒布された刊行物である、特開2002-215051号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の技術的事項の記載がある。

(2a)「【0013】
【発明の実施の形態】図4は、請求の範囲に記載されている発明の第一の好適な実施例によるフラットパネルディスプレイ用の構造の強化されたベゼルの斜視図である。示しているように、構造の強化されたベゼル1は、ベゼル本体11を有する。ベゼル本体11は、対向した二つの第一側部12、12と対向した二つの第二側部13、13とによって連続的に形成されている。第一側部12は第二側部13よりも長く、ベゼル本体11はほぼ矩形である。第一側部12の各々は、第一端壁121と、第一端壁121とほぼ直角でありかつ第一端壁121から延びている第一側壁122とを有する。さらに、第二側部13の各々は、第二端壁131と、第二端壁131とほぼ直角でありかつ第二端壁131から延びている第二側壁132とを有する。さらに、第一側壁122と第二側壁132は同じ方向に延びている。
【0014】さらに、第一側壁122の一つは、内側に折り曲げられた形状に構成され、外側壁123と、外側壁123とほぼ平行でありかつ外側壁123に対向している内側壁124とを形成している(図5(a)及び図5(b)参照)。さらに、内側壁124と外側壁123は間隙部によって互いに離間している。
【0015】図6は、請求の範囲に記載されている発明の第二の好適な実施例によるフラットパネルディスプレイ用の構造の強化されたベゼルの断面図を示している。示しているように、この実施例では、構造の強化されたベゼル2は、第一の好適な実施例の構造の強化されたベゼル1と構造がほぼ同じである。しかしながら、内側壁224は、対応した内側壁224に対向した外側壁223と接触しており、それにより、ベゼル2を用いてディスプレイモジュールの内部の構成要素を受容するのに役立つ空間が増加する。
【0016】いくつかの用途において、ベゼル本体に穴を有する必要がある。図7及び8は、請求の範囲に記載されている発明による第三及び第四の好適な実施例を示している。第三及び第四の好適な実施例では、構造の強化されたベゼル3及び4は、それぞれ、第一の好適な実施例の構造の強化されたベゼル1と構造がほぼ同じである。
【0017】図7に示すように、少なくとも一つの矩形の穴325がベゼル本体31の内側壁324に形成されている。図8では、少なくとも一つの矩形の凹所425は、ベゼル本体4の内側壁424上に形成されており、この凹所425は、ベゼル本体41の内側壁424の縁部において開放している。」

(2b)図4

(2c)図5

(2d)図6

(2e)図7

(2f)図8

第4 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

<対応関係A>
引用発明の「有機EL素子(120)」、「基板(110)」、「封止基板からなる封止部材(130)」、「封止材(141)」、「有機ELパネル(150)」及び「有機EL表示装置」は、本願発明の「有機電界発光素子」、「第1基板」、「第2基板」、「封止材」、「表示パネル」及び「有機電界発光表示装置」に相当する。

<対応関係B>
引用発明の「前面側に有機ELパネル(150)の表示面を露出可能な開口部を具備した概略箱形の筐体(710)」は、技術常識からして、前面を開口とし、背面及び側面は板材で構成された箱からなるものであり、当該箱内が有機ELパネルを収容する空間となっているものであるから、本願発明の「下部面及び前記下部面の端から延長される複数の側壁を有し、前記下部面と前記側壁によって前記表示パネルが収容される空間が定義されるベゼル」に相当する。

<対応関係C>
引用発明の「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材(371、372)」は、「複数の梁部材(371、372)が互いに交差して配置されるため、支持基板(361)の面方向で優れた変形耐性を奏し優れた表示パネルの支持構造を実現できる」「有機EL表示装置」の構造体を補強する部材であるといえる。
そうすると、引用発明の「有機ELパネル(150)の背面側に接着され」、「背面側」が「筐体(710)」と当接した状態となる、「補強構造体(360)」の「放熱部材(370)」を構成する「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材」と、本願発明の「表示パネルとベゼルとの間に配置される補強トラス」とは、「表示パネルとベゼルとの間に配置される補強部材」である点で共通する。

<対応関係D>
引用発明の「補強構造体(360)」の「放熱部材(370)」を構成する「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材」の「構成材料」として「アルミニウム」が好適であることと、本願発明の「補強トラスは、ステンレススチール、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、ポリエチレン、プロトアクチニウム、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、LCP、ポリカーボネート及びポリウレタンのうちいずれか一つに形成されること」とは、「補強部材は、ステンレススチール、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、ポリエチレン、プロトアクチニウム、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、LCP、ポリカーボネート及びポリウレタンのうちいずれか一つに形成される」点で共通する。

以上の対応関係からして、本願発明と引用発明とは、
「有機電界発光素子が形成される第1基板と、
前記第1基板上部に配置される第2基板と、
前記第1基板と第2基板を合着させるための封止材を含む表示パネルと、
下部面及び前記下部面の端から延長される複数の側壁を有し、前記下部面と前記側壁によって前記表示パネルが収容される空間が定義されるベゼルと、
前記表示パネルと前記ベゼルとの間に配置される補強部材を含み、
前記補強部材は、ステンレススチール、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、ポリエチレン、プロトアクチニウム、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、LCP、ポリカーボネート及びポリウレタンのうちいずれか一つに形成される有機電界発光表示装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「補強部材」に関して、本願発明は「補強トラス」としているのに対して、引用発明は「平面視略井桁状を成して互いに交差して支持基板(361)上に配設された複数の梁部材(371、372)」としている点。

(相違点2)
「ベゼルの側壁」に関して、本願発明は「ベゼルの側壁は、二重構造として形成」されるとしているのに対して、引用発明はそのような限定を有さない点。

第5 検討・判断
1 相違点の容易想到性
上記相違点について検討する。

(1)相違点1について
本願発明の「補強トラス」について、本願明細書の発明の詳細な説明に以下のとおりの記載がある。

「【0006】
本発明は、従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、表示パネルと表示パネルを収納するベゼルとの間に補強トラスを備え、表示パネルに加えられる衝撃を著しく減少させることができる有機電界発光表示装置を提供することである。」
「【0009】
本発明によれば、表示パネルと表示パネルを収納するベゼルとの間に補強トラスを配置して表示パネルを外部の衝撃から保護する。さらに、表示パネルに加えられる衝撃が著しく減少され、表示パネルの変形及び破損を防止するという効果がある。」
「【0019】
一方、表示パネル160及びベゼル110との間に補強トラス120が配置される。補強トラス120は、表示パネル160を収納するベゼル110の耐久力を向上させることで、補強トラス120は、複数個の横トラス122と縦トラス123がお互いに直交して格子形に形成される。補強トラス120は、複数個の横トラス122、横トラス122と垂直に交差する複数個の縦トラス123及び横トラス122と縦トラス123の縦断を連結するフレーム121に形成される。補強トラス120は、横トラス122と縦トラス123が一定間隔で離隔されて形成され、フレーム121は四角形に形成される。また、横トラス122、縦トラス123及びフレーム121は、四角断面を有するバー(bar)状に形成されることができる。」
「【0020】
このような、補強トラス120は、ステンレススチール(STS-国内KS規格:D3706)、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、ポリエチレン(PE:Polyethylene)、プロトアクチニウム(PA:protactinium)、ポリメチルメタクリレート(PMMA:polymethylmethacrylate)、ABS樹脂(acrylonitrile butadiene styrene copolymer)、LCP(Aromatic Liquid Crystal Polymer)、ポリカーボネート(PC:Poly Carbonate)及びポリウレタン(Poly Urethane)で形成される群のうち少なくとも一つで形成されることができる。また、補強トラス120は、0.03乃至0.15mmで形成されることに対して、その理由は補強トラス120の厚さが0.03mm未満の場合、外力から表示パネルを充分に保護できず、補強トラス120の厚さが0.15mmを超過する場合、有機電界発光表示装置100の厚さが厚くなってディスプレーの超薄型及び超軽量化の傾向に適しないことからである。」

上記記載から、本願発明の「補強トラス」とは、「表示パネル」と「ベゼル」との間に配置される構造体であって、「表示パネル」を外部から加えられる衝撃から保護するものであり、その構造の一形態として、複数個の横トラスと縦トラスがお互いに直交して格子形に形成される構造があることが把握される。
また、上記記載によれば、本願発明における「補強トラス」は、「表示パネル」と「ベゼル」との間に、特別な配置態様を採用することなく単に「配置」されることのみにより機能するものといえる。
そうすると、引用発明の「補強部材」である「平面視略井桁状を成して互いに交差してベースプレート(361)上に配設された複数の梁部材(371、372)」は、少なくとも背面側で「筐体(710)と当接した状態とな」るものであるから、本願発明の「補強トラス」と同様に「表示パネル」と「ベゼル」との間に配置される構造体であり、かつ、本願発明の「補強トラス」と同様の構造を有するものである。
さらに、引用発明の「複数の梁部材(371、372)」は、本願発明の「補強トラス」と同様の配置及び構造を有するものであるので、技術常識からして、本願発明の「補強トラス」と同様に、「有機ELパネル(150)」を外部から加えられる衝撃から保護する効果を奏することは明らかであるといえる。
そうすると、相違点1については、実質的な相違点ではなく、当業者であれば引用発明に基づいて容易に想到し得る構成である。

(2)相違点2について
引用例2には、上記摘記事項(2a)?(2f)に示されているように、ベゼルの側壁を内側に折り曲げられた形状に構成することでベゼルの構造を強化する技術が記載されている。
そして、表示パネルを保護する筐体・ベゼルを強固なものとすれば、表示パネルの保護を図ることができるのは明らかであるから、引用発明の「筐体」に引用例2に記載された技術を採用して、「筐体」の側面の板材を強化することは当業者であれば容易に想到することである。
よって、引用発明に引用例2に記載された技術を採用することで、相違点2に係る構成を得ることは、当業者であれば容易になし得ることである。

なお、筐体の側壁に二重壁構造を採用することは、電子装置の筐体の構造を強化するための周知技術に過ぎない(例えば、上記引用例2,実願昭57-198395号(実開昭59-104595号)のマイクロフィルムの明細書第8頁第18?20行及び第6図、特開2002-65945号公報、特開2004-41468号公報、特開2005-196084号公報等を参照されたい。)。

2 本願発明の作用効果
本願発明が奏する作用効果は、引用発明及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。

3 まとめ
よって、本願発明は、当業者が引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて容易に発明をすることができたものである。

なお、平成23年10月19日付けの回答書において、「補強トラスが、ベゼル下部面と表示パネルに接触される」点を明確化する補正案が提案されているが、引用発明の「放熱部材(370)」は「筐体(710)と当接した状態」となるものであるから、請求人の主張する点は実質的な相違点とはなり得ず、補正案についても進歩性は認められない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-02-10 
結審通知日 2012-02-14 
審決日 2012-02-28 
出願番号 特願2006-317644(P2006-317644)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 博之渡邊 吉喜  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 橋本 直明
森林 克郎
発明の名称 有機電界発光表示装置  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 佐伯 義文  

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