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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01K
管理番号 1277194
審判番号 不服2011-9812  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-11 
確定日 2013-07-24 
事件の表示 特願2000-355155「コンバインドサイクル発電装置においてガスタービン冷却蒸気及び高圧蒸気タービン排気蒸気を再熱する装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 5日出願公開、特開2001-271612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成12年11月22日(パリ条約による優先権主張2000年3月23日 米国)の出願であって、平成22年1月13日付けで拒絶理由が通知され、平成22年7月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成23年1月5日付けで拒絶査定がなされ、平成23年5月11日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に、同日付けの手続補正書により特許請求の範囲の請求項の削除を目的とする手続補正がなされ、当審における平成23年11月21日付けの書面による審尋に対して、平成24年5月22日付けで回答書が提出され、その後、当審において平成24年6月19日付けで拒絶理由が通知され、平成24年12月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成24年12月25日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】 ガスタービン(14)の排気を排熱回収ボイラ(30)で蒸気タービン用蒸気の加熱に利用するガスタービン(14)と蒸気タービン(18)と排熱回収ボイラ(30)とを含んでいて、ガスタービン(14)を出た使用済冷却蒸気と排熱回収ボイラ(30)を出た再熱蒸気との混合蒸気の温度が中圧蒸気タービン入口での最適蒸気温度よりも低いコンバインドサイクル装置において、該コンバインドサイクル装置を運転する方法であって、
ガスタービン部品を冷却するため、排熱回収ボイラ(30)の中圧部(44)からガスタービン(14)に蒸気(78)を供給する段階、
ガスタービン部品を冷却するため、蒸気タービン(18)の高圧部(20)からの蒸気の第1部分(102)をガスタービン(14)に供給することによって、排熱回収ボイラ(30)の中圧部(44)からの蒸気に補充する段階、
ガスタービンからの使用済冷却蒸気(94)と蒸気タービン高圧部(20)からの蒸気の第2部分(104)とを合流させる段階、
合流した使用済冷却蒸気(94)と蒸気の第2部分(104)を排熱回収ボイラ(30)で再熱(50)する段階、及び
合流し再熱した使用済冷却蒸気(94)と蒸気の第2部分(104)を蒸気タービン(18)の中圧部(22)へと流す段階、
を含んでおり、蒸気タービン(18)の高圧部(20)から共通の導管(96)を介してそれぞれ導管(102)及び導管(104)に供給される蒸気の第1部分(102)と第2部分(104)とが互いに連通していて、蒸気の第1部分(102)の流れをバイパス制御弁(103)で制御する段階をさらに含む、方法。」

2.引用文献に記載された発明
(1)引用文献
当審における拒絶理由に引用された文献である特開平11-148315号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。

ア.「【0009】
【発明が解決しようとする課題】コンバインドサイクル発電プラントにおいて、ガスタービン高温部に冷却媒体として蒸気を供給する場合、その蒸気は、ガスタービン高温部を冷却後、蒸気タービンに回収されるが、その回収温度はガスタービンの冷却性能から制約されてしまい、再熱蒸気温度(中圧タービン入口温度)が制約を受ける。
【0010】本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、ガスタービン側の制約によらず、ガスタービン冷却後の蒸気を再熱し、所望する再熱蒸気温度を効率よく有効的に得ることができるコンバインドサイクル発電プラントを提供することを目的とする。
【0011】本発明の他の目的は、ガスタービンの冷却性能を向上させるとともに、ガスタービン冷却後の蒸気を再熱して所望の再熱蒸気温度を得、タービン出力制御を容易にしたコンバインドサイクル発電プラントを提供にある。」(段落【0009】ないし【0011】)

イ.「【0025】本実施形態は、排熱回収ボイラ1を別置きにし、ガスタービンプラント2と蒸気タービンプラント3と発電機4とを同一の回転軸5に直結した一軸型コンバインドサイクル発電プラントである。
【0026】ガスタービンプラント2は、空気圧縮機6、燃焼器7およびガスタービン8をそれぞれ備え、空気圧縮機6で吸込んだ大気を高圧化して燃焼器7に案内し、その高圧空気に燃料を加えて燃焼させて燃焼ガスを生成し、その燃焼ガスをガスタービン8に案内して膨張仕事をさせ、膨張仕事後の排ガス(排熱)を蒸気発生源としての排熱回収ボイラ1に供給するようになっている。
【0027】排熱回収ボイラ1は、軸方向に向かって延びるケーシング9を備え、このケーシング9内に燃焼排ガスの流れに沿って順に必要に応じて第2高圧過熱器10、第2再熱器11、第1再熱器12、第1高圧過熱器13、高圧蒸発器14、中圧過熱器15、第3高圧節炭器16、低圧過熱器17、中圧蒸発器18、第2中圧節炭器19、第2高圧節炭器20、低圧蒸発器21、第1高圧節炭器22および第1中圧節炭器23がそれぞれ設置される。また、高、中、低圧の各蒸発器14、18、21には、高圧ドラム24、中圧ドラム25および低圧ドラム26がそれぞれ接続され、蒸発器14、18、21で蒸発した飽和蒸気を、各ドラム24,25,26内で気液分離させている。
【0028】一方、蒸気タービンプラント3は、蒸気タービンが高圧タービン27、中圧タービン28および低圧タービン29にそれぞれ区分けされており、排熱回収ボイラ1の第2高圧過熱器10から高圧加減弁30を経て主蒸気(過熱蒸気)系統31を案内された過熱蒸気を、高圧タービン27に導き、この高圧タービン27で膨張仕事をさせている。高圧タービン27で膨張仕事をした後の排気蒸気は再熱蒸気系統32に案内され、その低温再熱蒸気管33を介して第1再熱器12、減温器34、第2再熱器11に順次導かれて再熱蒸気にし、その再熱蒸気を再熱蒸気系統32の高温再熱蒸気管35および再熱組合せ弁36を経て中圧タービン28に案内し、この中圧タービン28で膨張仕事をさせる。符号37は再熱蒸気系統32の低温再熱蒸気管33に設けられた再熱蒸気流量調節弁であり、この再熱蒸気流量調節弁37はガスタービン冷却蒸気流量調節弁を兼ねている。」(段落【0025】ないし【0028】)

ウ.「【0033】一方、冷却蒸気供給系統48は、高圧タービン27の低温再熱蒸気管33から、第1再熱器12に至る分岐点Aで分岐されて構成される。上記冷却蒸気供給系統48は逆止弁53を経由し、合流点Bにて中圧蒸気系統54と合流し、ガスタービン8の高温部46の入口に接続される。中圧蒸気系統54は、中圧過熱器15に接続されており、中圧ドラム25で発生した蒸気が全量供給される。」(段落【0033】)

エ.「【0039】ガスタービン冷却蒸気の流量は再熱蒸気系統32のガスタービン冷却蒸気流量調節弁37によって制御され、また、ガスタービン冷却蒸気の供給温度は、主蒸気の温度を減温器66によって制御することで行なう。」(段落【0039】)

オ.「【0043】ガスタービン8を駆動させることにより膨張した燃焼排ガスは、続いて排熱回収ボイラ1に案内され、この排熱回収ボイラ1にて蒸気タービンプラント3の蒸気タービン27,28,29を駆動させる蒸気を発生させる。
【0044】排熱回収ボイラ1の第2高圧過熱器10で過熱された過熱蒸気は、主蒸気系統(過熱蒸気系統)31を通って高圧タービン27に導かれ、この高圧タービン27を駆動させる。高圧タービン27を駆動させ、仕事をした蒸気は、膨張して再熱蒸気系統32に案内される。再熱蒸気系統32の低温再熱蒸気管33から第1再熱器12に導かれた高圧タービン排気蒸気はここで第1段の再熱作用を受け、この再熱後に第1再熱器12から再熱蒸気温度制御を行なう減温器34を経て第2再熱器11に案内される。第1再熱器12および第2再熱器11を通る間に再熱された再熱蒸気は、続いて高温再熱蒸気管35を通って中圧タービン28に導かれ、この中圧タービン28を駆動させる。中圧タービン28を駆動して膨張した蒸気は続いて低圧タービン29に案内され、ここで低圧タービン29を駆動させる。このように、高圧タービン27、中圧タービン28および低圧タービン29を駆動させることにより回転軸5が回転駆動せしめられ、発電機4にて発電が行われる。」(段落【0043】及び【0044】)

カ.「【0052】この冷却蒸気は、ガスタービン8の高温部46に導かれてガスタービン高温部46を冷却する。冷却後の蒸気は冷却蒸気回収系統49にて回収される。」(段落【0052】)

キ.「【0057】第2実施形態に示されたコンバインドサイクル発電プラントにおいて、ガスタービン8の冷却蒸気系統47を構成する冷却蒸気供給系統48は第1実施形態に示されたものと同様であるが、その冷却蒸気回収系統49は異にする。冷却蒸気回収系統70は蒸気タービンプラント3の再熱蒸気系統32の低温側である低温再熱蒸気管33に、ガスタービン冷却蒸気流量調節弁を兼ねる再熱蒸気流量調節弁37の下流の合流点C2 で接続される。この冷却蒸気回収系統70によりガスタービン高温部46を冷却した蒸気を、再熱蒸気系統32に回収させるようになっている。
【0058】この冷却蒸気回収系統70は、ガスタービン8の高温部46を冷却した冷却蒸気を回収するようになっており、ガスタービン冷却後の蒸気は、冷却蒸気回収系統70を通って再熱蒸気系統32の低温再熱蒸気管33に導かれて高圧タービン排気蒸気である低温再熱蒸気と合流する。合流した冷却後の蒸気は低温再熱蒸気と混合して第1再熱器12から減温器34を経て第2再熱器11に導かれ、両再熱器11,12で加熱されて再熱蒸気となる。この再熱蒸気は、再熱蒸気系統32の高温再熱蒸気管35より、再熱組合せ弁36を経て蒸気タービンの中圧タービン28に供給され、この中圧タービン28を駆動させて膨張仕事をする。
【0059】このコンバインドサイクル発電プラントにおいては、ガスタービン8の高温部46を冷却した後の冷却蒸気を冷却蒸気回収系統70により再熱蒸気系統32の低温側に導いて回収し、高圧タービン27からの排気蒸気である低温再熱蒸気と合流させる。
【0060】低温再熱蒸気に合流せしめられたガスタービン冷却後の蒸気は混合蒸気となって排熱回収ボイラ1に案内され、排熱回収ボイラ1内に設置された第1再熱器12と第2再熱器11で再熱され、再熱蒸気となる。再熱蒸気は、両再熱器12,11の間に減温器34を設置することで、再熱蒸気の温度制御が可能となり、中圧タービン28に案内される再熱蒸気温度を所望の温度にすることができる。
【0061】なお、排熱回収ボイラ1内に第1再熱器12と第2再熱器11をセパレートさせ必要は必ずしもなく、1つの再熱器を設置するものであってもよい。この場合には、再熱器の下流側に再熱蒸気温度を制御する減温器が設けられる。」(段落【0057】ないし【0061】)

ク.「【0101】
【発明の効果】以上に述べたように本発明に係るコンバインドサイクル発電プラントにおいては、ガスタービン高温部に冷却蒸気供給系統により蒸気タービンの排気蒸気(一部)を案内し、ガスタービンを蒸気冷却により有効的かつ効率よく冷却する一方、ガスタービン冷却後の蒸気を排熱回収ボイラ内で再熱し、蒸気タービンプラントの再熱蒸気系統に回収するようしたので、ガスタービン冷却蒸気の回収温度如何によらず、所望する再熱蒸気温度に調整して蒸気タービンの中圧タービンに供給することができ、タービン出力制御が容易になる。」(段落【0101】)

(2)引用文献に記載された発明
以上(1)ア.ないしク.の記載及び図面を参酌すると、引用文献には以下の事項が記載されていることが分かる。

ケ.ガスタービン8の排気を排熱回収ボイラ1で蒸気タービン用蒸気の加熱に利用するガスタービン8と蒸気タービンプラント3と排熱回収ボイラ1とを含んでいて、ガスタービン8冷却後の蒸気と排熱回収ボイラ1を出た再熱蒸気との温度を中圧タービン28入口での所望する再熱蒸気温度とするコンバインドサイクル発電プラントにおいて、該コンバインドサイクル発電プラントを運転する方法であることが分かる。

コ.ガスタービン8の高温部46の各部分を冷却するため、排熱回収ボイラ1の中圧過熱器15からガスタービン8に中圧蒸気系統54を通して中圧過熱蒸気を供給する段階があることが分かる。

サ.ガスタービン8の高温部46の各部分を冷却するため、蒸気タービンプラント3の高圧タービン27 からの蒸気が低温再熱蒸気管33を通して、分岐点A、交流点Bを経由してガスタービン8に供給することによって、排熱回収ボイラ1の中圧過熱器15からの蒸気に補充する段階があり、このとき分岐点Aからガスタービン8までの冷却蒸気供給系統48(以下、「K部分」という。)に蒸気があることが分かる。

シ.ガスタービン8からの冷却蒸気回収系統70の蒸気と蒸気タービンプラント3の高圧タービン27からの蒸気をC2にて合流させる段階があり、このとき分岐点Aから合流点C2までの低温再熱蒸気管33(以下、「L部分」という。)に蒸気があることが分かる。
合流した冷却蒸気回収系統70の蒸気とL部分の蒸気とを排熱回収ボイラ1の再熱器11,12で再熱する段階、及び
合流し再熱した冷却蒸気回収系統70の蒸気とL部分の蒸気とを蒸気タービンプラント3の中圧タービン28へと流す段階があることが分かる。

ス.蒸気タービンプラント3の高圧タービン27から分岐点Aまでの低温再熱蒸気管33(以下、「蒸気管M」という。)を介してそれぞれK部分及びL部分に供給される蒸気のK部分とL部分とが互いに連通していて、蒸気のK部分の流れをガスタービン冷却蒸気流量調節弁を兼ねる再熱蒸気流量調節弁37で制御する段階があることが分かる。

(3)引用文献に記載された発明
以上(1)ア.ないしク.、(2)ケ.ないしス.の記載及び図面を参酌すると、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。
「ガスタービン8の排気を排熱回収ボイラ1で蒸気タービンプラント3用蒸気の加熱に利用するガスタービン8と蒸気タービンプラント3と排熱回収ボイラ1とを含んでいて、ガスタービン8冷却後の蒸気と排熱回収ボイラ1を出た再熱蒸気との温度を中圧タービン28入口での所望する再熱蒸気温度とするコンバインドサイクル発電プラントにおいて、該コンバインドサイクル発電プラントを運転する方法であって、
ガスタービン8の高温部46の各部品を冷却するため、排熱回収ボイラ1の中圧過熱器15からガスタービン8に中圧蒸気系統54を通る中圧過熱蒸気を供給する段階、
ガスタービン8の高温部46の各部品を冷却するため、蒸気タービンプラント3の高圧タービン27 からの蒸気のK部分をガスタービン8に供給することによって、排熱回収ボイラ1の中圧過熱器15からの蒸気に補充する段階、
ガスタービン8からのガスタービン8冷却後の蒸気と蒸気タービンプラント3の高圧タービン27からの蒸気のL部分とを合流させる段階、
合流したガスタービン8冷却後の蒸気と蒸気のL部分とを排熱回収ボイラ1の再熱器11,12で再熱する段階、及び
合流し再熱した冷却蒸気回収系統70の蒸気と蒸気のL部分を蒸気タービンプラント3の中圧タービン28へと流す段階、
を含んでおり、蒸気タービンプラント3の高圧タービン27から蒸気管Mを介してそれぞれK部分及びL部分に供給される蒸気のK部分と蒸気のL部分とが互いに連通していて、蒸気のL部分の流れをガスタービン冷却蒸気流量調節弁を兼ねる再熱蒸気流量調節弁37で制御する段階をさらに含む、方法。」(以下、「引用文献に記載された発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献に記載された発明とを対比すると、引用文献に記載された発明における「ガスタービン8」は、その目的及び機能からみて、「ガスタービン(14)」に相当し、以下同様に、「排熱回収ボイラ1」は「排熱回収ボイラ(30)」に、「蒸気タービンプラント3」は「蒸気タービン(18)」に、「ガスタービン8冷却後の蒸気」は「使用済冷却蒸気(94)」に、「中圧タービン28」は「中圧蒸気タービン」に、「コンバインドサイクル発電プラント」は「コンバインドサイクル装置」に、「ガスタービン8の高温部46の各部品」は「ガスタービン部品」に、「中圧過熱器15」は「中圧部(44)」に、「中圧蒸気系統54を通る中圧過熱蒸気」は「蒸気(78)」に、「高圧タービン27」は「高圧部(20)」又は「蒸気タービン高圧部(20)」に、「蒸気のK部分」は「蒸気の第1部分(102)」に、「蒸気のL部分」は「蒸気の第2部分(104)」に、「再熱器11,12で再熱」は「再熱(50)」に、「蒸気管M」は「共通の導管(96)」に、「K部分」は「導管(102)」に、「L部分」は「導管(104)」に、「ガスタービン冷却蒸気流量調節弁を兼ねる再熱蒸気流量調節弁37」は「バイパス制御弁(103)」に各々相当する。また、引用文献に記載された発明における「ガスタービン8冷却後の蒸気と排熱回収ボイラ1を出た再熱蒸気温度」は、本願発明における「ガスタービン(14)を出た使用済冷却蒸気と排熱回収ボイラ(30)を出た再熱蒸気との混合蒸気の温度」に、同様に「中圧タービン入口での所望する再熱蒸気温度」は、最適蒸気温度を目標に設定することから「中圧蒸気タービン入口での最適蒸気温度」に相当することは明らかであるから、本願発明と引用文献に記載された発明とは
「ガスタービンの排気を排熱回収ボイラで蒸気タービン用蒸気の加熱に利用するガスタービンと蒸気タービンと排熱回収ボイラとを含んでいる、コンバインドサイクル装置において、該コンバインドサイクル装置を運転する方法であって、
ガスタービン部品を冷却するため、排熱回収ボイラの中圧部からガスタービンに蒸気を供給する段階、
ガスタービン部品を冷却するため、蒸気タービンの高圧部からの蒸気の第1部分をガスタービンに供給することによって、排熱回収ボイラの中圧部からの蒸気に補充する段階、
ガスタービンからの使用済冷却蒸気と蒸気タービン高圧部からの蒸気の第2部分とを合流させる段階、
合流した使用済冷却蒸気と蒸気の第2部分を排熱回収ボイラで再熱する段階、及び
合流し再熱した使用済冷却蒸気と蒸気の第2部分を蒸気タービンの中圧部へと流す段階、
を含んでおり、蒸気タービンの高圧部から共通の導管を介してそれぞれ導管(102)及び導管(104)に供給される蒸気の第1部分と第2部分とが互いに連通していて、蒸気の第1部分の流れをバイパス制御弁で制御する段階をさらに含む、方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点〉
本願発明においては、ガスタービンを出た使用済冷却蒸気と排熱回収ボイラを出た再熱蒸気との混合蒸気の温度が中圧蒸気タービン入口での最適蒸気温度よりも低いコンバインドサイクル装置であるのに対して、引用文献に記載された発明においては、そのような温度が「低い」ことに関する明確な記載がない点(以下、「相違点」という。)。

4.判断
相違点について検討する。
引用文献に記載された発明は、そもそも、引用文献の段落【0009】及び【0010】の記載にあるように、従来回収温度はガスタービンの冷却性能から制約されてしまい、再熱蒸気温度である中圧タービン入口温度が制約を受けるため、ガスタービン冷却後の蒸気を再熱して、所望する再熱蒸気温度、すなわち最適蒸気温度にしようとするものであって、引用文献の段落【0060】には、中圧タービンに案内される再熱蒸気温度を所望の温度にするよう温度制御していることが記載されていることからすれば、コンバインドサイクル装置を相違点に係る本願発明のようにガスタービンを出た使用済冷却蒸気と排熱回収ボイラを出た再熱蒸気との混合蒸気の温度が中圧蒸気タービン入口での最適蒸気温度よりも低い温度とすることに、格別困難性はない。
また、本願発明を全体として検討しても、引用文献に記載された発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-20 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-12 
出願番号 特願2000-355155(P2000-355155)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 弘  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 柳田 利夫
藤原 直欣
発明の名称 コンバインドサイクル発電装置においてガスタービン冷却蒸気及び高圧蒸気タービン排気蒸気を再熱する装置及び方法  
代理人 小倉 博  
代理人 黒川 俊久  
代理人 荒川 聡志  

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