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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1277202
審判番号 不服2011-21048  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-29 
確定日 2013-07-24 
事件の表示 特願2001-542404「超薄電気化学エネルギー蓄積装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 7日国際公開、WO01/41232、平成15年10月28日国内公表、特表2003-532277〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2000年11月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年12月6日、米国、2000年11月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年4月23日付けで通知した拒絶理由に対して、同年7月26日付けで手続補正がなされ、同年11月9日付けで通知した最後の拒絶理由に対して、平成23年2月8日付けで手続補正がなされたが、同年6月13日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされた。

その後、当審において、平成24年5月10日付けで、前置報告書(特許法第164条第3項)を利用した審尋を行ったところ、回答書が提出されなかったものである。


第2.平成23年9月29日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年9月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.補正の内容

本件補正は、補正前の平成22年7月26日付け手続補正書の特許請求の範囲について、
(a)
「 【請求項1】 少なくとも1つの開口をそれぞれ有し、互いに平行に積層された複数のフレームと、
前記開口を覆うように前記複数のフレームに固定された複数の集電体と、
前記複数のフレームの前記少なくとも1つの開口内に固定された複数の電極と、
複数のプロトン伝導膜とを含み、該プロトン伝導膜が、それぞれ対向する一対の前記電極間に設けられ、前記対向する電極対を構成する前記複数のプロトン伝導膜とで複数の単位セルを構成し、
前記複数の集電体によって前記複数の単位セルを結合して直列接続された複数のスタックを構成することを特徴とする電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項2】 前記複数のフレームが、それぞれ複数の開口を形成することを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項3】 前記少なくとも1つの開口が、それぞれ隣接する個々のフレーム内に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
(中略)
【請求項6】 前記複数の集電体が、装置内部にある少なくとも1つのバイポーラ集電体と、同一平面にあるセル間の外部の長手方向電気的接続をもたらす少なくとも1つの共通集電体と、装置を外部回路に電気的に接続するための外部端子集電体とを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項7】 前記少なくとも1つの共通集電体が、一体延長タブ構造をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
(中略)
【請求項9】 前記少なくとも1つの共通集電体および前記外部端子集電体が、多層構造であることを特徴とする請求項6に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項10】 前記少なくとも1つの共通集電体および前記外部端子集電体が、前記フレームに固定されたときに前記複数の電極と隣接する導電性ポリマー層と、前記導電性ポリマー層の前記複数の電極とは反対側の側面にある第2の導電性構造とを含むことを特徴とする請求項9に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
(中略)
【請求項28】 少なくとも1つの開口をそれぞれ有し、互いに平行に積層された複数のフレームを提供するステップと、
該複数のフレームのそれぞれの前記少なくとも1つの開口内に複数の電極を固定するステップと、
前記開口を覆うように前記複数のフレームに固定された複数の集電体を提供するステップと、
複数のプロトン伝導膜を提供するステップであり、該プロトン伝導膜が、それぞれ対向する一対の前記電極間に形成され、前記対向する電極対を形成する前記複数のプロトン伝導膜とが複数の単位セルを形成するステップと、
前記複数の集電体によって前記複数の単位セルを結合して直列接続された複数のスタックとして前記装置を形成するステップとを有することを特徴とする電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
【請求項29】 前記複数のフレームがそれぞれ複数の開口を形成することを特徴とする請求項28に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
【請求項30】 前記少なくとも1つの開口がそれぞれ、隣接する個々のフレーム内に形成されることを特徴とする請求項28に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
(中略)
【請求項33】 前記複数の集電体が、装置内部にある少なくとも1つのバイポーラ集電体と、同一平面にあるセル間の外部の長手方向電気的接続をもたらす少なくとも1つの共通集電体と、装置を外部回路に電気的に接続するための外部端子集電体とを含むことを特徴とする請求項28に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
【請求項34】 前記少なくとも1つの共通集電体が、一体延長タブ構造をさらに含むことを特徴とする請求項33に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
(中略)
【請求項36】 前記少なくとも1つの共通集電体および前記外部端子集電体が多層構造であることを特徴とする請求項33に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
【請求項37】 前記少なくとも1つの共通集電体および前記外部端子集電体が、前記フレームに固定されたときに前記複数の電極と隣接する導電性ポリマー層と、前記導電性ポリマー層の前記複数の電極とは反対側の側面にある第2の導電性構造とを含むことを特徴とする請求項36に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
(中略)
【請求項55】 少なくとも1つの開口をそれぞれ有し、互いに平行に積層された複数の非導電性フレームと、
該複数の非導電性フレームのそれぞれ前記少なくとも1つの開口内に固定された、複数の大表面積炭素/酸水溶液の電極と、
前記複数の平面フレームに固定された複数の多層集電体と、
複数のプロトン伝導膜であり、前記プロトン伝導膜が、それぞれ対向する一対の前記複数の電極間に設けられ、前記対向する電極対を構成する前記複数のプロトン伝導膜とで複数の単位セルを構成し、
前記多層集電体に電気的に接続された少なくとも一対のタブ構造を備え、
前記複数の集電体によって前記複数の単位セルを結合して直列接続された複数のスタックを構成することを特徴とする電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項56】 前記複数の集電体が、前記平面フレームに固定されたときに前記複数の前記電極と隣接する導電性ポリマー層と、前記導電性ポリマー層の前記複数の電極とは反対側の側面にある第2の導電性構造とを含むことを特徴とする請求項55に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項57】 前記複数の集電体が、装置内部にある少なくとも1つのバイポーラ集電体と、同一平面にあるセル間の外部の長手方向電気的接続をもたらす少なくとも1つの共通集電体と、前記タブ構造を介して装置を外部回路に電気的に接続するための外部端子集電体とを含むことを特徴とする請求項56に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。」とあったものを、

(b)
「 【請求項1】 複数の開口をそれぞれ有し、互いに平行に積層された複数のフレームと、
前記開口を覆うように前記複数のフレームに固定された複数の集電体と、
前記複数のフレームの前記開口内に固定された複数の電極と、
複数のプロトン伝導膜とを含み、該プロトン伝導膜が、それぞれ対向する一対の前記電極間に設けられ、前記対向する電極対を構成する前記複数のプロトン伝導膜とで第1乃至第6の単位セルを構成し、
前記複数の集電体によって前記単位セルを結合して直列接続された第1乃至第3のスタックを構成し、
前記複数の集電体が、前記単位セルの増設を可能とする内部にある複数のバイポーラ集電体と、該バイポーラ集電体を挟むように同一平面にある前記単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす第1及び第2の共通集電体と、外部回路に電気的に接続するための前記共通集電体と各々同一平面にある第1及び第2の外部端子集電体とを備え、
前記第1の外部端子集電体が前記第1及び第2の単位セルを介して前記第1の共通集電体に接続されて前記第1のスタックを構成し、前記第1の共通集電体が前記第3及び第4の単位セルを介して前記第2の共通集電体に接続されて前記第2のスタックを構成し、前記第2の共通集電体が、前記第5及び第6の単位セルを介して前記第2の外部端子集電体に接続されて前記第3のスタックを構成することを特徴とする電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項2】 前記開口が、それぞれ隣接する個々のフレーム内に形成されることを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
(中略)
【請求項5】 前記共通集電体が、一体延長タブ構造をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
(中略)
【請求項7】 前記共通集電体および前記外部端子集電体が、多層構造であることを特徴とする請求項1に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項8】 前記共通集電体および前記外部端子集電体が、前記フレームに固定されたときに前記複数の電極と隣接する導電性ポリマー層と、前記導電性ポリマー層の前記複数の電極とは反対側の側面にある第2の導電性構造とを含むことを特徴とする請求項7に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。
(中略)
【請求項26】 複数の開口をそれぞれ有し、互いに平行に積層された複数のフレームを提供するステップと、
該複数のフレームのそれぞれの前記開口内に複数の電極を固定するステップと、
前記開口を覆うように前記複数のフレームに固定された複数の集電体を提供するステップと、
複数のプロトン伝導膜を提供するステップであり、該プロトン伝導膜が、それぞれ対向する一対の前記電極間に形成され、前記対向する電極対を形成する前記複数のプロトン伝導膜とが第1乃至第6の単位セルを形成するステップと、
前記複数の集電体によって前記単位セルを結合して直列接続された第1乃至第3のスタックとして前記装置を形成するステップとを有し、
前記複数の集電体が、前記単位セルの増設を可能とする内部にある複数のバイポーラ集電体と、該バイポーラ集電体を挟むように同一平面にある前記単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす第1及び第2の共通集電体と、外部回路に電気的に接続するための前記共通集電体と各々同一平面にある第1及び第2の外部端子集電体とを含み、
前記第1の外部端子集電体が前記第1及び第2の単位セルを介して前記第1の共通集電体に接続されて前記第1のスタックを形成し、前記第1の共通集電体が前記第3及び第4の単位セルを介して前記第2の共通集電体に接続されて前記第2のスタックを形成し、前記第2の共通集電体が、前記第5及び第6の単位セルを介して前記第2の外部端子集電体に接続されて前記第3のスタックを形成することを特徴とする電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
【請求項27】 前記開口がそれぞれ、隣接する個々のフレーム内に形成されることを特徴とする請求項26に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
(中略)
【請求項30】 前記共通集電体が、一体延長タブ構造をさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
(中略)
【請求項32】 前記共通集電体および前記外部端子集電体が多層構造であることを特徴とする請求項26に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
【請求項33】 前記共通集電体および前記外部端子集電体が、前記フレームに固定されたときに前記複数の電極と隣接する導電性ポリマー層と、前記導電性ポリマー層の前記複数の電極とは反対側の側面にある第2の導電性構造とを含むことを特徴とする請求項32に記載の電気化学エネルギー蓄積装置の製造方法。
(中略)
【請求項51】 複数の開口をそれぞれ有し、互いに平行に積層された複数の非導電性フレームと、
該複数の非導電性フレームのそれぞれ前記開口内に固定された、複数の大表面積炭素/酸水溶液の電極と、
前記複数の平面フレームに固定された複数の多層集電体と、
複数のプロトン伝導膜とを含み、前記プロトン伝導膜が、それぞれ対向する一対の前記複数の電極間に設けられ、前記対向する電極対を構成する前記複数のプロトン伝導膜とで第1乃至第6の単位セルを構成し、
前記多層集電体に電気的に接続された少なくとも一対のタブ構造を備え、
前記複数の多層集電体によって前記単位セルを結合して直列接続された第1乃至第3のスタックを構成し、
前記複数の多層集電体が、前記単位セルの増設を可能とする内部にある複数のバイポーラ集電体と、該バイポーラ集電体を挟むように同一平面にある単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす第1及び第2の共通集電体と、前記タブ構造を介して外部回路に電気的に接続するための第1及び第2の外部端子集電体とを備え、
前記第1の外部端子集電体が前記第1及び第2の単位セルを介して前記第1の共通集電体に接続されて前記第1のスタックを構成し、前記第1の共通集電体が前記第3及び第4の単位セルを介して前記第2の共通集電体に接続されて前記第2のスタックを構成し、前記第2の共通集電体が、前記第5及び第6の単位セルを介して前記第2の外部端子集電体に接続されて前記第3のスタックを構成することを特徴とする電気化学エネルギー蓄積装置。
【請求項52】 前記複数の多層集電体が、前記平面フレームに固定されたときに前記複数の前記電極と隣接する導電性ポリマー層と、前記導電性ポリマー層の前記複数の電極とは反対側の側面にある第2の導電性構造とを含むことを特徴とする請求項51に記載の電気化学エネルギー蓄積装置。」と補正するものである(当審注:補正の前後で、記載内容に変更はなく、請求項の削除に伴い項番を形式的に変更した請求項については摘記を省略した。)。

2.補正の目的についての検討

(1)請求項1における「複数の開口」は、補正前の請求項1における「少なくとも1つの開口」を限定するものである。
請求項1における「第1乃至第6の単位セル」、「第1乃至第3のスタック」は、それぞれ、補正前の請求項1における「複数の単位セル」、「複数のスタック」を限定するものである。
請求項1における「前記複数の集電体が、前記単位セルの増設を可能とする内部にある複数のバイポーラ集電体と、該バイポーラ集電体を挟むように同一平面にある前記単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす第1及び第2の共通集電体と、外部回路に電気的に接続するための前記共通集電体と各々同一平面にある第1及び第2の外部端子集電体とを備え、前記第1の外部端子集電体が前記第1及び第2の単位セルを介して前記第1の共通集電体に接続されて前記第1のスタックを構成し、前記第1の共通集電体が前記第3及び第4の単位セルを介して前記第2の共通集電体に接続されて前記第2のスタックを構成し、前記第2の共通集電体が、前記第5及び第6の単位セルを介して前記第2の外部端子集電体に接続されて前記第3のスタックを構成する」は、補正前の請求項6に特定された事項を取り込むとともにさらに限定するものである。
よって、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)請求項26,51における補正は、請求項1における補正と同様であって、それぞれ、補正前の請求項33,57をさらに限定するものであり、上記(1)のとおりであるから、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)請求項2-52において、補正前の請求項2,6,29,33,57の削除に伴って、自身の請求項の項番、及び引用する請求項の項番を形式的に変更する補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものである。

3.独立特許要件についての検討

本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.補正の内容の(b)に記載したとおりのものである。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された本願優先件主張の日前に頒布された刊行物である実願昭58-70110号(実開昭59-176136号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、以下、摘記事項の下線は当審で付した。)

ア.「2.実用新案登録請求の範囲
(1)密閉された外装容器内に複数の電気二電層コンデンサ素子を平面状に配置するとともに、各電気二重層コンデンサ素子の対向する集電電極の一方を他方の集電電極間に跨って配置し、各電気二重層コンデンサ素子を直列に接続したことを特徴とする電気二重層コンデンサ。」

イ.「 この考案は、複数のユニットセルを平板状に配置し、小型化とともに偏平化した電気二重層コンデンサの提供を目的とする。」(2頁11-13行)

ウ.「 第1図及び第2図はこの考案の電気二重層コンデンサの実施例を示し、第1図はその分解斜視図、第2図はその組立断面図を示している。図において、電気二重層コンデンサ素子1を収納する外装容器2は絶縁性合成樹脂などで形成され、この外装容器2の開口部は蓋3で密閉される。この電気ニ重層コンデンサ素子1は複数の単位コンデンサ素子(ユニットセル)から構成され、前記外装容器2の内部に平板状に配置される。即ち、複数の集電電極4、5は一定の絶縁間隔を置いて配置され、これら集電電極4、5の間にはイオン透過性のセパレータ6を中心にしてその両面部に分極性電極7、8及び絶縁性ガスケット9、10を介在させてある。集電電極4、5はカーボン粉末と電解液及び少量のバインダーから構成されており、この実施例では、集電電極4の絶縁間隔と集電電極5の絶縁間隔とは互いの絶縁間隔が対向する集電電極4又は5の面内に位置するように構成されている。また、各絶縁性ガスケット9、10には前記分極性電極7、8を個別に保持するため複数の収納透孔11が一定の間隔をおいて形成されている。
集電電極4、5の背面部には、電子伝導性材料で形成された板または箔からなる導電板12、13が配設される。この導電板l2、13は前記集電電極4、5の導電性を補うために設置されているが、集電電極4、5で十分な導電性が得られる場合においては、必ずしも必要としない。
また、導電板l2の両側部に配置される導電板12A、12Bの中央には、電極を外部に取出すためのリード14、15が溶接などの固着手段により電気的に接続され、前記蓋3には、このリード14、15を引出すための透孔16、17が穿設されている。
そして、外装容器2は前記電気二重層コンデンサ素子1を収納した後、その開口部を蓋3で密封される。」(3頁2行-4頁18行)

エ.第1図及び第2図には、(a)各絶縁性ガスケット9、10が互いに平行に積層されたもの、(b)絶縁性ガスケットの収納透孔11を覆うように集電電極4、5が固定されたもの、(c)同一平面にある単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する集電電極とリードを介して外部に接続される集電電極とが各々同一平面にあるもの、が図示されている。

上記「ア.」ないし「エ.」によれば、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

複数の収納透孔が形成され、互いに平行に積層された複数の絶縁性ガスケットと、
前記収納透孔を覆うように前記複数の絶縁性ガスケットに固定された複数の集電電極と、
前記複数の絶縁性ガスケットの前記収納透孔内に保持された複数の分極性電極と、
複数のイオン透過性のセパレータを有し、イオン透過性のセパレータを中心にしてその両面部に分極性電極が設けられ、対向する分極性電極と複数のイオン透過性のセパレータとで、複数の単位コンデンサ素子(ユニットセル)を構成し、
前記複数の集電電極によって前記単位コンデンサ素子を直列に接続し、
前記複数の集電体が、同一平面にある前記単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する集電電極と、リードを介して外部に接続される、前記単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する集電電極と同一平面にある、集電電極とを備える、
電気二重層コンデンサ。

また、原査定の拒絶の理由で引用された本願優先件主張の日前に頒布された刊行物である実願昭61-176817号(実開昭63-82926号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

オ.「実用新案登録請求の範囲
単位コンデンサ素子あるいは積層されたコンデンサ素子を複数個同一平面上に配置し、前記単位あるいは積層されたコンデンサ素子の各々を電気的に直列接続したことを特徴とする電気二重層コンデンサ。」

カ.「第1図は本考案による第1の実施例の電気二重層コンデンサの断面図である。端子4,4′および単位コンデンサ素子2を電気的に直列接続するために必要な下部導体配線6を具備した絶縁板7に単位コンデンサ素子2を配置し、さらに単位素子2を電気的に直列接続するために必要な上部導体配線6′を具備した絶縁外装ケース8で覆うことにより構成する。
第2図は、本考案による第2の実施例の電気二重層コンデンサの断面図である。本実施例が第1の実施例と異なるところは、単位コンデンサ素子の代りに単位コンデンサ素子2をn個積層したものを絶縁板7上に配置している点である。その他の構成については第1の実施例と同様である。」(3頁7-20行)

キ.第2図には、一例として、縦に3つ直列に単位コンデンサ素子を積層したスタックが4つで合計12個の単位コンデンサ素子を有する電気二重層コンデンサが図示されている。

(3)対比
引用発明と本願補正発明とを対比する。

引用発明の「電気二重層コンデンサ」は、本願補正発明の「電気化学エネルギー蓄積装置」に相当する。

引用発明の「複数の収納透孔」は、本願補正発明の「複数の開口」に相当する。
引用発明の「複数の絶縁性ガスケット」は、「複数の収納透孔が形成され、互いに平行に積層された」ものであるから、本願補正発明の「複数の開口をそれぞれ有し、互いに平行に積層された複数のフレーム」に相当する。

引用発明の「複数の集電電極」は、「前記収納透孔を覆うように前記複数の絶縁性ガスケットに固定された」ものであるから、本願補正発明の「前記開口を覆うように前記複数のフレームに固定された複数の集電体」に相当する。

引用発明の「複数の分極性電極」は、「前記複数の絶縁性ガスケットの前記収納透孔内に保持された」ものであるから、本願補正発明の「前記複数のフレームの前記開口内に固定された複数の電極」に相当する。

引用発明の「複数のイオン透過性のセパレータ」は、本願補正発明の「複数のプロトン伝導膜」に相当する。
引用発明の「複数の」「単位コンデンサ素子」(ユニットセル)は、「イオン透過性のセパレータを中心にしてその両面部に分極性電極が設けられ、対向する分極性電極と複数のイオン透過性のセパレータとで、」「構成」されるものであるから、本願補正発明の「該プロトン伝導膜が、それぞれ対向する一対の前記電極間に設けられ、前記対向する電極対を構成する前記複数のプロトン伝導膜とで」「構成」される複数の「単位セル」に相当する。

引用発明の「前記複数の集電電極によって前記単位コンデンサ素子を直列に接続」することは、本願補正発明の「前記複数の集電体によって前記単位セルを結合して直列接続され」ることに相当する。

引用発明の「同一平面にある前記単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する集電電極」が、本願補正発明の「同一平面にある前記単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす」「共通集電体」に相当する。
引用発明の「リードを介して外部に接続される」「集電電極」は、「外部」とは外部回路であることは明らかであるから、本願補正発明の「外部回路に電気的に接続するための」「外部端子集電体」に相当する。
すると、引用発明の「前記複数の集電体が、同一平面にある前記単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する集電電極と、リードを介して外部に接続される、前記単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する集電電極と同一平面にある、集電電極とを備える」ことは、本願補正発明の「前記複数の集電体が、」「同一平面にある前記単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす」「共通集電体と、外部回路に電気的に接続するための前記共通集電体と」「同一平面にある」「外部端子集電体とを備え」ることに相当する。

以上のことから、引用発明と本願補正発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 複数の開口をそれぞれ有し、互いに平行に積層された複数のフレームと、
前記開口を覆うように前記複数のフレームに固定された複数の集電体と、
前記複数のフレームの前記開口内に固定された複数の電極と、
複数のプロトン伝導膜とを含み、該プロトン伝導膜が、それぞれ対向する一対の前記電極間に設けられ、前記対向する電極対を構成する前記複数のプロトン伝導膜とで複数の単位セルを構成し、
前記複数の集電体によって前記単位セルを結合して直列接続され、
前記複数の集電体が、同一平面にある前記単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす共通集電体と、外部回路に電気的に接続するための前記共通集電体と同一平面にある外部端子集電体とを備える、
電気化学エネルギー蓄積装置。」である点。

[相違点]
「複数の単位セル」が、本願補正発明では、「第1乃至第6の単位セル」である(単位セルの数が6つである)のに対して、引用発明では、単位コンデンサ素子の個数は特定されていない点。
そして、本願補正発明では、「前記単位セルを結合して直列接続された第1乃至第3のスタックを構成」する(縦に2つ直列に単位セルを積層したスタックが3つである)のに対して、引用発明では、そのような特定がない点。
さらに、本願補正発明では、「前記複数の集電体が、前記単位セルの増設を可能とする内部にある複数のバイポーラ集電体と、該バイポーラ集電体を挟むように同一平面にある前記単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす第1及び第2の共通集電体と、外部回路に電気的に接続するための前記共通集電体と各々同一平面にある第1及び第2の外部端子集電体とを備え、」「前記第1の外部端子集電体が前記第1及び第2の単位セルを介して前記第1の共通集電体に接続されて前記第1のスタックを構成し、前記第1の共通集電体が前記第3及び第4の単位セルを介して前記第2の共通集電体に接続されて前記第2のスタックを構成し、前記第2の共通集電体が、前記第5及び第6の単位セルを介して前記第2の外部端子集電体に接続されて前記第3のスタックを構成する」のに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

引用発明において、単位コンデンサ素子の個数は、電気二重層コンデンサの仕様(コンデンサの大きさ、容量など)などを考慮して適宜設計されるものであるから、これを6つとすることは、適宜なし得る事項である。

ここで、引用例2の「オ.」ないし「キ.」には、コンデンサ素子を直列接続した電気二重層コンデンサにおいて、積層されたコンデンサ素子(単位コンデンサ素子をn個積層したもの)の各々を直列接続することが記載されている。
そして、引用例1と引用例2とは、電気二重層キャパシタという同一の技術分野に属しており、ともに、コンデンサ素子を直列接続するものであるから、引用発明において、複数の単位コンデンサ素子を直列に接続するにあたり、引用例2に記載された積層されたコンデンサ素子の各々を直列接続する技術を適用することは、当業者にとって容易に想到し得たことであり、引用発明において、単位コンデンサ素子の個数をを6つとした際に、単位コンデンサ素子を2個積層したものを3つ直列接続することは、適宜なし得る事項である。

さらに、電気二重層キャパシタの技術分野において、単位コンデンサ素子を積層するにあたり、バイポーラ集電体を用いることは、例えば、特開平7-45483号公報(図9,10の導電性電極422,442など)、特開平11-251200号公報(【0015】,【0016】、図5の集電極1など)、特表平10-509560号公報(図2の電流コレクター板36,図3の電流コレクター板48など)、特開平11-274014号公報(【0013】、図1の集電極1など)、特開平9-293649号公報(【0032】、図1のバイポーラ箔5など)等に記載されるように、周知であり、単位コンデンサ素子を2個積層する際に、バイポーラ集電体を挟むように2つの単位コンデンサ素子を配置することは、当業者にとって容易である。
そして、単位コンデンサ素子をバイポーラ集電体を介して2個積層したものを3つ直列接続する際に、例えば、特開平7-45483号公報の図6-8でコンデンサセルC31,C32,C33をそれぞれ2個の積層したコンデンサセルとしたもの、実願平3-102851号(実開平5-46024号)のCD-ROMの図4で枠内空間A、B、Cにそれぞれ2個の積層したコンデンサ・セルを配置したもの、を想定するに、引用発明において、リードを介して外部に接続される第1の集電電極が第1及び第2の単位コンデンサ素子を介して同一平面にある単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する第1の集電電極に接続されて第1のスタックを構成し、同一平面にある単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する第1の集電電極が第3及び第4の単位コンデンサ素子を介して同一平面にある単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する第2の集電電極に接続されて第2のスタックを構成し、同一平面にある単位コンデンサ素子を長手方向に跨って接続する第2の集電電極が第5及び第6の単位コンデンサ素子を介してリードを介して外部に接続される第2の集電電極に接続されて第3のスタックを構成するようにすることは、当業者にとって容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明が奏する効果についても、格別なものがあるとはいえない。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)独立特許要件についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について

(1)本願発明
平成23年9月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし57に係る発明は、平成22年7月26日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし57に記載されたとおりのものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.の1.補正の内容の(a)に記載したとおりである。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2.の3.の(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記第2.の3.で検討した本願補正発明から、
(a)「複数の」開口を「少なくとも1つの」開口と、
(b)「第1乃至第6」の単位セルを「複数」の単位セルと、
(c)「第1乃至第3のスタックを構成し、
前記複数の集電体が、前記単位セルの増設を可能とする内部にある複数のバイポーラ集電体と、該バイポーラ集電体を挟むように同一平面にある前記単位セル間の外部の長手方向の電気的接続をもたらす第1及び第2の共通集電体と、外部回路に電気的に接続するための前記共通集電体と各々同一平面にある第1及び第2の外部端子集電体とを備え、
前記第1の外部端子集電体が前記第1及び第2の単位セルを介して前記第1の共通集電体に接続されて前記第1のスタックを構成し、前記第1の共通集電体が前記第3及び第4の単位セルを介して前記第2の共通集電体に接続されて前記第2のスタックを構成し、前記第2の共通集電体が、前記第5及び第6の単位セルを介して前記第2の外部端子集電体に接続されて前記第3のスタック」を単に「複数のスタック」と、
それぞれ限定を解除したものに相当する。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.の3.に記載したとおり、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-21 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-12 
出願番号 特願2001-542404(P2001-542404)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 弘亘佐久 聖子  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 馬場 慎
関谷 隆一
発明の名称 超薄電気化学エネルギー蓄積装置  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
復代理人 濱中 淳宏  

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