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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1277211 |
審判番号 | 不服2012-5124 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-03-19 |
確定日 | 2013-07-24 |
事件の表示 | 特願2006-287623「表示素子モジュール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日出願公開、特開2007-298938〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年10月23日(優先権主張2006年4月28日、韓国)を出願日とする出願であって、平成23年11月8日付けで手続補正がなされた後に、平成24年1月31日付けで拒絶査定がなされた。 本件は、これを不服として、同年3月19日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において同年10月30日付けで審尋を行ったところ、平成25年1月23日付けで回答書が提出された。 第2 平成24年3月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年3月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、そのうち特許請求の範囲の請求項14の補正は、補正前(平成23年11月8日付けで補正、以下同様。)の 「【請求項14】 基板上に形成され、第1電極及び第2電極の交差領域に形成された少なくとも一つの発光領域を含むピクセル回路部と、 前記第1電極の第1終端に接続された少なくとも一つの第1配線と、 前記第1電極の第2終端に接続された少なくとも一つの第1補助配線と、 終端に連結棒が形成された少なくとも一つの第2補助配線と、 前記ピクセル回路部の第2電極に接続された少なくとも一つの第2配線と、 ピクセル回路部及び他の配線と接触しないように配置され、終端に連結棒が形成された少なくとも一つのダミー配線と を含み、 前記少なくとも一つの第2補助配線は、前記第2補助配線の連結棒から延長され、隣接するパネルの第1電極に接続する むことを特徴とする表示素子モジュール。」を 「【請求項14】 基板上に形成され、第1電極及び第2電極の交差領域に形成された少なくとも一つの発光領域を含むピクセル回路部と、 前記第1電極の第1終端に接続された少なくとも一つの第1配線と、 前記第1電極の第2終端に接続された少なくとも一つの第1補助配線と、 前記仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内において、終端に1つの連結棒だけが形成された少なくとも一つの第2補助配線と、 前記ピクセル回路部の第2電極に接続された少なくとも一つの第2配線と、 前記仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内において、ピクセル回路部及び他の配線と接触しないように配置され、終端に連結棒が形成された少なくとも一つのダミー配線と を含み、 前記少なくとも一つの第2補助配線は、前記第2補助配線の連結棒から延長され、隣接するパネルの第1電極に接続する ことを特徴とする表示素子モジュール。」と補正するものである。 2 補正の目的についての検討 上記本件補正は、補正前の請求項14に係る発明の発明特定事項である「少なくとも一つの第2補助配線」の「終端に連結棒が形成された」箇所が、「仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内」とする補正、補正前の請求項14に係る発明の発明特定事項である「少なくとも一つの第2補助配線」の「終端に」「形成された」「連結棒」が「1つ」「だけ」とする補正、補正前の請求項14に係る発明の発明特定事項である「少なくとも一つのダミー配線」が「配置され、」かつ、その「終端に連結棒が形成され」る箇所が「仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内」とする補正である。 そして、これらの補正事項は、明らかに特許請求の範囲を限定して減縮するものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。 そこで、本件補正後の請求項14に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。 3 本件補正発明 本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項14に記載された上記のとおりのものである。 4 引用刊行物 (1)引用刊行物1 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成17年6月23日に頒布された「特開2005-164679号公報 」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(引用例1記載の発明の認定に関係する箇所に、当審で下線を付した。) a 発明の詳細な説明の記載 「【技術分野】 【0001】 本発明は、効率的なエージング処理を行うことができる有機EL表示装置に関する。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0026】 以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の有機EL表示装置100を示す平面図である。図2は、1枚のガラス基板上に形成されている複数の有機EL表示装置を示す平面図である。なお、本実施の形態では、陽極配線をデータ電極とし、陰極配線を走査電極とするが、陰極配線をデータ電極とし、陽極配線を走査電極としてもよい。 【0027】 図1に示すように、有機EL表示装置100には、有機EL表示素子7と1チップLSIであるドライバIC8とが実装されている。ドライバIC8には、走査電極2を駆動する走査電極駆動回路と、データ電極1を駆動するデータ電極駆動回路とが内蔵されている。ドライバIC8のデータ出力端子と各データ電極(本実施の形態では陽極配線)1とはデータ電極引き回し配線(本実施の形態では陽極配線引き回し配線)10で接続されている。ドライバIC8の走査出力端子と各走査電極(本実施の形態では陰極配線)2とは走査電極引き回し配線(本実施の形態では陰極配線引き回し配線)11で接続されている。また、ドライバIC8には、有機EL表示装置100の外から、有機EL表示装置100の下辺(四辺のうち図1において下側に図示されている辺)の近傍に形成されている入力信号線9によって、表示データに応じた信号や電力が供給される。 【0028】 有機EL表示装置を作製するときに、図2に示すように、1枚のガラス基板上に複数の有機EL表示装置が形成される。また、ガラス基板上に、データ電極用のエージング用共通配線としての第1の共通配線3の配線パターンと、走査電極用のエージング用共通配線としての第2の共通配線4の配線パターンとが形成される。 【0029】 有機EL表示装置100における各データ電極1は、エージング接続用配線としてのデータ電極接続配線5によって、有機EL表示装置100の上辺(四辺のうち入力信号線9の端部が存在する辺と反対側の辺)を介して第1の共通配線3に接続される。全ての第1の共通配線3は、ガラス基板上の図2の図示範囲外の部分で電気的に接続される。また、各有機EL表示素子における各走査電極2は、エージング接続用配線としての走査電極接続配線6によって、有機EL表示装置100の左右両辺を介して第2の共通配線4に接続される。全ての第2の共通配線4は、ガラス基板上の図2の図示範囲外の部分で電気的に接続される。従って、切断工程前において、全ての有機EL表示装置100における各走査電極2に、第2の共通配線4から同じ信号を供給することができる。また、切断工程前において、全ての有機EL表示装置100における各データ電極1に、第1の共通配線3から同じ信号を供給することができる。その結果、多数の有機EL表示装置100に対して一括してエージング処理を実施することができる。 【0030】 なお、図1に示すように、それぞれの走査電極接続配線6は、走査電極2に直接接続されるのではなく、走査電極引き回し配線11に接続されている。すなわち、走査電極接続配線6は、走査電極引き回し配線11を介して走査電極2に電気的に接続される。 【0031】 第1の共通配線3とデータ電極接続配線5との接続は、切断工程において分断される。また、第2の共通配線4と走査電極接続配線6の接続も、切断工程において分断される。 【0032】 なお、図2では、走査電極引き回し配線11は記載省略されている。また、記載が煩雑になることを避けるために、図1および図2において、データ電極、走査電極、データ電極接続配線、走査電極接続配線およびデータ電極引き回し配線について、多数存在するうちの1つまたは2つにのみ符号が付されている。 【0033】 図7を参照して説明したように、ガラス基板上における切断工程後に廃棄される部位で、すなわち最終的に得られる有機EL表示装置100の外部で、走査電極接続配線6を介して全ての走査電極引き回し配線11を電気的に接続することを意図した場合に、有機EL表示装置100において内側(有機EL表示装置100の四辺よりも中央側)に配線されている走査電極引き回し配線11からの走査電極接続配線6は、外側に配線されている走査電極引き回し配線11に阻止されて有機EL表示装置100の左右の辺まで延びることができない。」 「【0060】 さらに、図5のレイアウト図に示すように、データ電極接続配線部31および走査電極接続配線部32をITOで形成することが好ましい。切断される前のガラス基板上において、図5に示す有機EL表示装置100を含む部分の下に位置する部分(図5において図示せず。非図示部分という。)に形成されているデータ電極(図5において図示せず)は、非図示部分におけるデータ電極接続配線と図4に示すデータ電極接続部31とを介して第1の共通配線3に接続される。また、図5に示す部分における走査電極は、走査電極引き回し配線11、配線クロスオーバ部12、走査電極接続配線部32および走査電極接続配線6を介して第2の共通配線4に接続される。そのような構成によれば、第1の共通配線3および第2の共通配線4の抵抗値を相対的により小さくすることができる。その結果、第1の共通配線3および第2の共通配線4によって、全ての有機EL表示素子に対して、より均一に近い電圧を印加することができる。 【0061】 なお、図5は、切断後の1つの有機EL表示装置100内のレイアウトを示しているが、図5の記載からわかるように、有機EL表示装置100に残る第1の共通配線3の部分および第2の共通配線4の部分は、有機EL表示装置100内において、データ電極接続配線5および走査電極接続配線6から分離する。また、図5では、データ電極接続配線5、走査電極接続配線6、入力信号線9、データ電極引き回し配線10、走査電極引き回し配線11、走査電極接続配線部31およびデータ電極接続配線部32は、それぞれ、領域として図示されている。」 「【0074】 【図1】本発明の有機EL表示装置を示す平面図。 【図2】1枚のガラス基板上に形成されている複数の有機EL表示装置を示す平面図。 ・・・(略)・・・ 【図5】有機EL表示装置における配線を示すレイアウト図。」 b 図面の記載 「【図1】 」 「【図2】 」 「【図5】 」 引用例1の図2に開示された有機EL表示装置100の内容からして、有機EL表示素子7の領域において、データ電極1及び走査電極2が交差することが記載されている。 また、引用例1の図5に開示された有機EL表示装置100における配線を示すレイアウト図の内容からして、有機EL表示装置100の領域において、第1の共通配線3とデータ電極接続配線部31が接続されている。 c 発明の詳細な説明及び図面の記載の考察 (ア)引用例1の【0029】には、「データ電極1は、・・・・・データ電極接続配線5によって、有機EL表示装置100の上辺・・・・を介して第1の共通配線3に接続される」ことが、同【0060】には、「データ電極・・・・・は、・・・・・データ電極接続配線と・・・・データ電極接続部31とを介して第1の共通配線3に接続される」(この記載中、「データ電極接続部31」は「データ電極接続配線部31」の誤記であると認められる。)ことが記載されている。 一方、引用例1の図2には4つの有機EL表示装置が記載されているにすぎないが、技術常識を考慮すると、この有機EL表示装置は、1枚のガラス基板上に同じ配線レイアウトの有機EL表示装置が多数形成されていると認められる。 そうすると、上記【0029】及び【0060】の記載は、当該「有機EL表示装置100の上辺」箇所のみならず、当該有機EL表示装置100の下辺箇所においても同様の接続となっていると認められるから、引用例1には、第1の共通配線3は有機EL表示装置100の下辺を介して、データ電極接続配線5及びデータ電極接続配線部31によってデータ電極1に接続されることが記載されているといえる。 (イ)引用例1の図5の有機EL表示装置100のレイアウト図において、有機EL表示装置100の左端の第1の共通配線3及び第2の共通配線4よりも左側に示された細い線、及び、有機EL表示装置100の右側の第1の共通配線3及び第2の共通配線4の間に示された細い線が、技術常識からみて、有機EL表示装置100の切断線であると認められる。 また、図5の有機EL表示装置100の右端の上記切断線の外側で、第2の共通配線4と走査電極接続配線6が接続されているが、有機EL表示装置100が上記切断線で切断されることを考慮すると、この接続箇所は、当該有機EL表示装置100の領域内のものではなく、当該有機EL表示装置100の右隣の有機EL表示装置の領域内のものであると認められる。 そうすると、図5の有機EL表示装置100の左端には、図5で示された走査電極接続配線6の下に、当該有機EL表示装置100の左隣の有機EL表示装置から伸び、各有機EL表示装置100の切断により切断され、当該有機EL表示装置100の領域内に残る走査電極接続配線6が第2の共通配線4に接続されていると認められる。 また、図5の記載からみて、当該有機EL表示装置100の領域内に残る走査電極接続配線6は、有機EL表示素子7及び他の配線と接触しないのは明らかである。 d 引用例1記載の発明 上記a及びbの記載事項及び上記cの考察によると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「1枚のガラス基板上形成される複数の有機EL表示装置であって、 有機EL表示素子7の領域において、データ電極1及び走査電極2が交差し、 ドライバIC8のデータ出力端子と各データ電極1とはデータ電極引き回し配線10で接続され、 データ電極1は、データ電極接続配線5によって、有機EL表示装置100の上辺を介して第1の共通配線3に接続され、 有機EL表示装置100の領域において、第1の共通配線3とデータ電極接続配線部31が接続され、 ドライバIC8の走査出力端子と各走査電極2とは走査電極引き回し配線11で接続され、 有機EL表示装置100の領域内に残る走査電極接続配線6が、第2の共通配線4に接続され、有機EL表示素子7及び他の配線と接触せず、 第1の共通配線3は有機EL表示装置100の下辺を介して、データ電極接続配線5及びデータ電極接続配線部31によってデータ電極1に接続される 有機EL表示装置。」 (2)引用刊行物2 また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である平成17年6月30日に頒布された「特開2005-173299号公報 」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 a 発明の詳細な説明の記載 「【技術分野】 【0001】 本発明は、効率的なエージング処理を行うことができる有機EL表示装置に関する。」 「【0025】 図1に示すように、有機EL表示装置100の矩形の基板には、有機EL表示素子(表示面)7と1チップLSIであるドライバIC8とが実装されている。すなわち、本実施の形態の有機EL表示装置100は、矩形の基板上に、有機EL表示素子7と駆動回路とが実装されるCOG(チップ・オン・グラス)実装によって作製されるものである。 【0026】 ドライバIC8には、走査電極2を駆動する走査電極駆動回路と、データ電極1を駆動するデータ電極駆動回路とが内蔵されている。ドライバIC8のデータ出力端子と各データ電極(本実施の形態では陽極配線)1とはデータ電極引き回し配線(本実施の形態では陽極配線引き回し配線)10で接続されている。ドライバIC8の走査出力端子と各走査電極(本実施の形態では陰極配線)2とは走査電極引き回し配線(本実施の形態では陰極配線引き回し配線)11で接続されている。 【0027】 ドライバIC8には、有機EL表示装置100の外から、有機EL表示装置100の下辺(四辺のうち図1において下側に図示されている辺)の近傍に形成されている入力信号線9によって、表示データに応じた信号や電力が供給される。また、ドライバIC8の裏面における左辺の近傍に、走査電極引き回し配線11を接続するための接続用パッド(図示せず)が設けられ、ドライバIC8の裏面における上辺(四辺のうち図1において上側に図示されている辺)の近傍に、データ電極引き回し配線を接続するための接続用パッド(図示せず)が設けらている。すなわち、ドライバIC8は表面実装型のICである。 【0028】 有機EL表示装置を作製するときに、図2に示すように、1枚のガラス基板上に複数の有機EL表示装置が形成される。また、ガラス基板上に、データ電極用のエージング用共通配線としての第1の共通配線3の配線パターンと、走査電極用のエージング用共通配線としての第2の共通配線4の配線パターンとが形成される。 【0029】 有機EL表示装置100における各データ電極1は、第1のエージング接続用配線としてのデータ電極接続配線5によって、有機EL表示装置100の上辺(四辺のうち入力信号線9の端部が存在する辺と反対側の辺)を介して第1の共通配線3に接続される。全ての第1の共通配線3は、ガラス基板上の図2の図示範囲外の部分で電気的に接続される。また、各有機EL表示素子における各走査電極2は、第2のエージング接続用配線としての走査電極接続配線6によって、有機EL表示装置100の右辺(ガラス基板において、有機EL表示素子7に対して、走査電極引き回し配線11が形成される領域とは反対側の領域の辺)を介して第2の共通配線4に接続される。全ての第2の共通配線4は、ガラス基板上の図2の図示範囲外の部分で電気的に接続される。 【0030】 従って、1枚の大型のガラス基板上で、全ての矩形の基板における第1のエージング用配線としてのデータ電極接続配線5が第1の共通配線3を介して電気的に接続され、全ての矩形の基板における第2のエージング用配線としての走査電極接続配線6が第2の共通配線4を介して電気的に接続される。よって、切断工程前において、全ての有機EL表示装置100における各走査電極2に、第2の共通配線4から同じ信号を供給することがで きる。また、切断工程前において、全ての有機EL表示装置100における各データ電極1に、第1の共通配線3から同じ信号を供給することができる。その結果、多数の有機EL表示装置100に対して一括してエージング処理を実施することができる。 【0031】 第1の共通配線3とデータ電極接続配線5との接続は、切断工程において分断される。また、第2の共通配線4と走査電極接続配線6の接続も、切断工程において分断される。」 b 図面の記載 「【図2】 」 図2の有機EL表示素子の記載からして、各有機EL表示素子7のデータ電極1に接続された各データ接続配線5が一つの第1共通配線3に接続されていることが記載されている。 5 対比 (1)引用発明における「ガラス基板」、「データ電極1」、「走査電極2」が、本件補正発明の「基板」、「第1電極」、「第2電極」にそれぞれ相当する。 そうすると、引用発明の「1枚のガラス基板上形成される複数の有機EL表示装置であって、有機EL表示素子7の領域において、データ電極1及び走査電極2が交差」した構成は、本件補正発明の「基板上に形成され、第1電極及び第2電極の交差領域に形成された少なくとも一つの発光領域を含むピクセル回路部」を含む構成に相当する。 (2)引用発明の「データ電極引き回し配線10」が、本件補正発明の「第1配線」に相当する。 そうすると、引用発明の「ドライバIC8のデータ出力端子と各データ電極1とはデータ電極引き回し配線10で接続され」た構成は、本件補正発明の「第1電極の第1終端に接続された少なくとも一つの第1配線」を含む構成に相当する。 (3)引用発明の「データ電極接続配線5」は、本件補正発明の「第1補助配線」に相当する。 引用発明の「データ電極1は、データ電極接続配線5によって、有機EL表示装置100の上辺を介して第1の共通配線3に接続され」る構成は、本件補正発明の「第1電極の第2終端に接続された少なくとも一つの第1補助配線」を含む構成に相当する。 (4)引用発明の「第1の共通配線3」、「データ電極接続配線部31」は、本件補正発明の「第2補助配線」の「終端に」「形成された」「連結棒」、「第2補助配線」に相当する。 そうすると、引用発明の「有機EL表示装置100の領域において、第1の共通配線3とデータ電極接続配線部31が接続され」る構成と、本件補正発明の「仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内において、終端に1つの連結棒だけが形成された少なくとも一つの第2補助配線」を含む構成とは、「仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内において、終端に連結棒が形成された少なくとも一つの第2補助配線」を含む構成で一致する。 (5)引用発明の「走査電極引き回し配線11」は、本件補正発明の「第2配線」に相当する。 そうすると、引用発明の「ドライバIC8の走査出力端子と各走査電極2とは走査電極引き回し配線11で接続され」る構成は、本件補正発明の「ピクセル回路部の第2電極に接続された少なくとも一つの第2配線」を含む構成に相当する。 (6)引用発明の「走査電極接続配線6」、「第2の共通配線4」が、本件補正発明の「ダミー配線」、「ダミー配線」の「終端に」「形成された」「連結棒」に相当する。 そうすると、引用発明の「有機EL表示装置100の領域内に残る走査電極接続配線6が、第2の共通配線4に接続され、有機EL表示素子7及び他の配線と接触」しない構成は、本件補正発明の「仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内において、ピクセル回路部及び他の配線と接触しないように配置され、終端に連結棒が形成された少なくとも一つのダミー配線」を含む構成に相当する。 (7)引用発明の「第1の共通配線3は有機EL表示装置100の下辺を介して、データ電極接続配線5及びデータ電極接続配線部31によってデータ電極1に接続され」る構成は、本件補正発明の「少なくとも一つの第2補助配線は、前記第2補助配線の連結棒から延長され、隣接するパネルの第1電極に接続する」構成に相当する。 (8)引用発明の「有機EL表示装置」が、本件補正発明の「表示素子モジュール」に相当する。 上記(1)?(8)の点から、本件補正発明と引用発明は、 「基板上に形成され、第1電極及び第2電極の交差領域に形成された少なくとも一つの発光領域を含むピクセル回路部と、 前記第1電極の第1終端に接続された少なくとも一つの第1配線と、 前記第1電極の第2終端に接続された少なくとも一つの第1補助配線と、 前記仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内において、終端に連結棒が形成された少なくとも一つの第2補助配線と、 前記ピクセル回路部の第2電極に接続された少なくとも一つの第2配線と、 前記仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内において、ピクセル回路部及び他の配線と接触しないように配置され、終端に連結棒が形成された少なくとも一つのダミー配線と を含み、 前記少なくとも一つの第2補助配線は、前記第2補助配線の連結棒から延長され、隣接するパネルの第1電極に接続する ことを特徴とする表示素子モジュール。」 で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 仮想スクライブラインにより区分された母基板の各領域内において、第2補助配線の終端に形成されたものが、本件補正発明は、1つの連結棒だけであるのに対し、引用発明は、単に連結棒であると特定している点。 6 当審の判断 以下、上記相違点について検討する。 有機EL表示素子のデータ電極に接続された各データ電極接続配線を一つだけの第1共通配線に接続することが、引用例2(図2参照。)に記載されている。 そして、引用発明と引用例2記載の発明は、いずれも効率的なエージング処理を行う有機EL装置である点で共通する技術分野のものであるから、引用発明において、有機EL表示素子のデータ電極に接続されたデータ電極接続配線部を一つだけの第1の共通配線に接続することにより、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。 相違点については上記のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2に記載された発明から当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。 よって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 7 本件補正についての補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成24年3月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項14に係る発明は、平成23年11月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項14に記載されたとおりのものである。(上記「第2」[理由]「1」参照。) 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物及びその記載事項、ならびに引用発明は、上記「第2」[理由]「4」に記載したとおりである。 3 対比及び当審の判断 本願発明は、上記「第2」[理由]「1」及び「2」で検討したとおり、本件補正発明の構成要素である「少なくとも一つの第2補助配線」の「終端に連結棒が形成された」箇所が、「仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内」である構成を除き、本件補正発明の構成要素である「少なくとも一つの第2補助配線」の「終端に」「形成された」「連結棒」が、「1つ」「だけ」である構成を除き、本件補正発明の構成要素である「少なくとも一つのダミー配線」が「配置され、」かつ、その「終端に連結棒が形成され」る箇所が、「仮想スクライブラインにより区分された前記母基板の各領域内」である構成を除いたものである。 ここで、本願発明の発明特定事項を全て含み、上記構成要素で限定した本件補正発明が、上記「第2」[理由]「5」に記載した相違点でのみ引用発明と相違するものであり、さらに、本願発明は、本件補正発明における上記相違点に係る構成を含まないものであるから、本願発明と引用発明に相違点はない。 したがって、本願発明は引用発明である。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-02-22 |
結審通知日 | 2013-02-26 |
審決日 | 2013-03-11 |
出願番号 | 特願2006-287623(P2006-287623) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F) P 1 8・ 121- Z (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田井 伸幸 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | 表示素子モジュール及びその製造方法 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 上田 俊一 |
代理人 | 曾我 道治 |