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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1277305
審判番号 不服2012-3931  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-29 
確定日 2013-08-01 
事件の表示 特願2006-140766「インターホンシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月29日出願公開、特開2007-312242〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成18年5月19日の出願であって、平成23年11月30日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年2月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされたが、当審において平成25年2月18日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年4月22日付けで手続補正がなされたものであって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年4月22日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
住戸の屋外に設置されるドアホン子器と、住戸の屋内に設置されるとともに信号線を介してドアホン子器と接続されるインターホン親機とを備え、信号線を介して音声信号を授受することによりインターホン親機とドアホン子器との間でインターホン通話が可能なインターホンシステムにおいて、
インターホン親機は、マイクロホン及びスピーカと、音声スイッチ又はエコーキャンセラの少なくとも一方を具備して拡声通話を行うものであり、
インターネットに接続する回線とインターホン親機とをインタフェースするネットワークインタフェース手段と、前記回線よりインターネットを介して通話するIP電話機能並びに無線LANに関する規格に準拠して無線通信する無線通信機能を有する携帯型IP電話端末に対してインターホン親機と携帯型IP電話端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース手段とを具備する通信装置を備え、無線インタフェース手段を介して携帯型IP電話端末とドアホン子器との間で音声信号を授受するものであって、
来訪者を撮像する撮像手段をドアホン子器に具備し、撮像手段で撮像された映像が信号線を介してインターホン親機に伝送され、ドアホン子器から受け取った映像をインターホン親機が具備する表示手段に表示するとともに、無線インタフェース手段を介してインターホン親機から携帯型IP電話端末へ前記映像を伝送することを特徴とするインターホンシステム。」

2.引用発明
(1)当審の拒絶の理由に引用された特開2004-336267号公報(以下、「引用例1」という。)には、「呼び出し応対装置、インターホン装置および電話装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0044】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の呼び出し応対装置は、来訪者が操作するインターホン子機21と、インターホン子機21に接続され、来訪者の訪問を被訪問者に通知するインターホン親機23と、インターホン親機23との間で無線通信または公衆電話回線による通信を行う複数の携帯無線端末27と、公衆電話回線網25を介してインターホン親機23に接続される無線基地局29とを備えたインターホンシステムである。
【0045】
インターホン親機23および携帯無線端末27は、無線LAN機能を有する。これにより、インターホン親機23は、住居内などで各携帯無線端末27と無線通信を行い、または、公衆電話回線網25を介して無線基地局29に接続し、外出先の各携帯無線端末27と通信を行うものである。」(8頁34行?44行)

ロ.「【0047】
図2に示すように、インターホン子機21は、来訪者が押下して被訪問者を呼び出す呼び出しボタン31と、来訪者の映像を撮像する撮像部33と、撮像部33からの出力信号を処理して映像信号を得る画像処理部34と、音声を入力するマイク35と、音声を出力す
るスピーカ36と、音声の入出力処理を行う音声処理部37と、インターホン子機21の各ブロック間の信号の処理や制御を行う制御部38と、インターホン親機23と通信を行うインターホン送受信部39とを有する。
【0048】
インターホン子機21の呼び出しボタン31は、居室の外に設けられ、来訪者が操作して被訪問者を呼び出すものであり、例えば、押しボタンスイッチ、シートキー、タッチセンサなどである。インターホン子機21の呼び出しボタン31が来訪者によって操作されると、呼び出し信号がインターホン子機21の制御部38に出力される。あるいは、他の実施の形態において、インターホン子機21の呼び出しボタン31は、不審者などの進入を含む来訪者を検知し、検知信号を出力する赤外線センサ、温度差センサなどであっても良い。
【0049】
インターホン子機21の撮像部33は、居室の外に設けられ、来訪者の映像を撮像するものであり、例えば、監視カメラである。本実施の形態において、インターホン子機21の撮像部33は、来訪者の顔の画像を撮影し、インターホン子機21の画像処理部34にて処理された画像をインターホン子機21の制御部38およびインターホン子機21のインターホン送受信部39を介してインターホン親機23に来訪者の画像を送信するものである。これらの画像は、インターホン親機23において、後述するように、モニタ画面に表示されるとともに、来訪者の特徴情報として来訪者の認識処理に使用される。尚、インターホン子機21の撮像部33によって撮影される画像は、静止画でも、動画であっても良い。
【0050】
インターホン子機21のマイク35は、来訪者の会話音声などを集音するものである。インターホン子機21のスピーカ36は、被訪問者の会話音声を出力するものである。
【0051】
インターホン子機21の音声処理部37は、インターホン子機21のマイク35、インターホン子機21のスピーカ36およびインターホン子機21の制御部38に電気的に接続され、インターホン子機21のマイク35で集音された来訪者の会話音声を処理して、インターホン子機21の制御部38およびインターホン子機21のインターホン送受信部39を介してインターホン親機23に音声信号を送信するとともに、インターホン親機23からインターホン子機21のインターホン送受信部39を介して送信された被訪問者の会話音声などの音声信号をインターホン子機21の制御部38を介して受信して処理し、インターホン子機21のスピーカ36から出力するものである。これにより、インターホン子機21とインターホン親機23間で、来訪者と応対者が会話できることとなる。
【0052】
インターホン子機21の制御部38は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびMPU(Micro Processing Unit)などからなり、予めプログラムされた処理手順で動作し、各ブロックを制御するものである。
【0053】
インターホン子機21のインターホン送受信部39は、インターホン子機21の制御部38およびインターホン親機23に電気的に接続され、インターホン子機21の制御部38の指示に従って、インターホン親機23と映像信号、音声信号および制御信号を送受信するものである。本実施の形態において、インターホン子機21のインターホン送受信部39とインターホン親機23は、有線通信であるが、これに限定されるものではなく、無線通信であっても良い。」(8頁47行?9頁46行)

ハ.「【0054】
また、図2において、インターホン親機23は、インターホン子機21と電気的に接続され、インターホン子機21と通信を行うインターホン送受信部41と、複数の人物の特徴情報および、対応する複数の被訪問者の情報を関連付けて予め格納する人物情報データベ
ース43(図中、「データベース」と示される。)と、インターホン子機21から送信された来訪者の特徴情報を示す顔の画像をインターホン送受信部41を介して入力し、この来訪者の特徴情報に基づいて、人物情報データベース43に格納された複数の人物の特徴情報の中から来訪者に該当する人物を認識するとともに、認識された人物の情報に基づいて、人物情報データベース43により関連付けられている少なくとも一人の被訪問者を特定する認識部45と、認識部45によって特定された被訪問者に呼び出しを通知する処理を行うとともに、インターホン親機23の各ブロック間の信号の処理や制御を行う制御部47とを備えている。
【0055】
さらに、インターホン親機23は、各種操作ボタンを有する操作部51と、インターホン子機21からインターホン送受信部41および制御部47を介して入力された映像信号を処理する画像処理部53と、画像処理部53から出力された映像を表示する表示部54と、来訪者との会話音声や呼び出し音などの音声信号を処理する音声処理部57と、音声処理部57で処理された呼び出し音や会話音声などを出力するスピーカ56と、会話音声などを集音するマイク55と、無線LAN機能を有し、受信者が携行する携帯無線端末27との通信を行う無線送受信部58と、公衆電話回線網25を通じて携帯無線端末27との通信を行う公衆電話回線送受信部59(図中、「公衆電話線送受信部」と示される。)とをさらに備えている。
【0056】
インターホン親機23のインターホン送受信部41は、インターホン子機21のインターホン送受信部39とインターホン親機23の制御部47に電気的に接続され、インターホン子機21から来訪者の顔の画像を含む特徴情報、来訪者との会話音声信号、各種制御信号などが送受信される。
【0057】?【0061】 (略)
【0062】
インターホン親機23の画像処理部53は、インターホン親機23の制御部47に電気的に接続され、インターホン親機23の制御部47の指示に従って、インターホン子機21からインターホン親機23のインターホン送受信部41を介して入力された映像信号を処理して来訪者の画像をインターホン親機23の表示部54に表示させるものである。
【0063】
インターホン親機23の表示部54は、インターホン親機23の画像処理部53に電気的に接続され、少なくとも一つの表示画面を有し、インターホン親機23の画像処理部53にて処理された画像、例えば、インターホン子機21の撮像部33で撮影された映像などをモニタ画面に表示するものである。インターホン親機23の表示部54は、例えば、液晶表示パネル、プラズマ表示パネルなどである。
【0064】
インターホン親機23の音声処理部57は、インターホン親機23のスピーカ56、インターホン親機23のマイク55およびインターホン親機23の制御部47に電気的に接続され、インターホン親機23の制御部47の指示に従って、インターホン親機23のスピーカ56に出力する呼び出し音や通話などの音声データを処理するとともに、インターホン親機23のマイク55から集音された会話音声などの音声データを処理するものである。
【0065】
インターホン親機23の公衆電話回線送受信部59は、インターホン親機23の制御部47に電気的に接続され、インターホン親機23の制御部47の指示に従って、公衆電話回線網25を介して無線基地局29に接続し、外出先の携帯無線端末27と通信を行うものである。
【0066】
インターホン親機23の無線送受信部58は、インターホン親機23の制御部47に電気的に接続され、インターホン親機23の制御部47の指示に従って、居室内の携帯無線端末27と通信を行うものである。本実施の形態において、インターホン親機23の無線送受信部58は、無線LANであるが、これに限定されるものではなく、Bluetoothなど無線伝送方式を用いたものであっても良い。また、無線LANによる音声および映像の通信方法については、公知の技術を使用するものとする。」(9頁47行?11頁25行)

ニ.「【0071】
図4は、本発明の第1の実施の形態の呼び出し応対装置の携帯無線端末の概略構成ブロック図を示す。図4に示すように、携帯無線端末27は、無線LAN機能を有し、インター
ホン親機23の無線送受信部58および無線基地局29との間で無線信号の送受信を行う無線送受信部71と、各種操作ボタンを有する操作部72と、インターホン親機23から無線送受信部71を介して入力された映像信号を処理する画像処理部73と、画像処理部73から出力された映像を表示する表示部74と、会話音声や呼び出し音などの音声信号を処理する音声処理部77と、会話音声などを集音するマイク75と、呼び出し音や会話音声などを出力するスピーカ76と、携帯無線端末27の各ブロック間の信号の処理や制御を行う制御部79とをさらに備えている。
【0072】
携帯無線端末27の無線送受信部71は、携帯無線端末27の制御部79に電気的に接続され、携帯無線端末27の制御部79の指示に従って、居室内のインターホン親機23と、または外出先で無線基地局29に公衆電話回線網25を介して接続されたインターホン親機23と通信を行うものである。本実施の形態において、携帯無線端末27の無線送受信部71は、無線LANであるが、これに限定されるものではなく、Bluetoothなど無線伝送方式を用いたものであっても良い。また、無線LANによる音声および映像の通信方法については、公知の技術を使用するものとする。
【0073】
携帯無線端末27の操作部72は、携帯無線端末27の制御部79に電気的に接続され、図示されない操作スイッチ、操作ボタンを含み、使用者に携帯無線端末27の操作を行わせるものである。
【0074】
携帯無線端末27の画像処理部73は、携帯無線端末27の制御部79に電気的に接続され、インターホン子機21からインターホン親機23を介して入力された映像信号を処理して来訪者の映像などを含む画像を携帯無線端末27の表示部74に表示されるものである。
【0075】
携帯無線端末27の表示部74は、携帯無線端末27の画像処理部73に電気的に接続され、少なくとも一つの表示画面を有し、携帯無線端末27の画像処理部73にて処理された画像、例えば、インターホン子機21の撮像部33で撮影された来訪者の映像などをモニタ画面に表示するものである。携帯無線端末27の表示部74は、例えば、液晶表示パネル、プラズマ表示パネルなどである。
【0076】
携帯無線端末27の音声処理部77は、携帯無線端末27のスピーカ76、携帯無線端末27のマイク75および携帯無線端末27の制御部79に電気的に接続され、携帯無線端末27の制御部79の指示に従って、携帯無線端末27のスピーカ76に出力する呼び出し音や通話などの音声データを処理するとともに、携帯無線端末27のマイク75から集音された会話音声などの音声データを処理するものである。
【0077】
携帯無線端末27の制御部79は、例えば、CPUおよびMPUなどからなり、予めプログラムされた処理手順で動作し、各ブロックを制御するものである。」(11頁48行?12頁39行)

ホ.「【0084】
図6は、図5に示された本発明の第1の実施の形態の呼び出し応対装置における呼び出し通知処理の詳細を示す動作フロー図である。
【0085】
図6に示すように、インターホン親機23の制御部47において、被訪問者が携行する携帯無線端末27の位置を検出する処理が行われ(ステップS21)、被訪問者が携行する携帯無線端末27が、無線LANの通信可能エリア内かエリア外かが判定される(ステップS22)。
【0086】
具体的には、例えば、インターホン親機23の制御部47により、インターホン親機23の無線送受信部58を介して、先に特定された被訪問者の携行する携帯無線端末27の電話番号に対して、ICMP(Internet Control Message Protocol)パケットを送信し、応答を待つ。被訪問者の携帯無線端末27からの応答が正常であれば、被訪問者の携帯無線端末27は、インターホン親機23との無線LANの通信可能エリア内であると判断される。一方、被訪問者の携帯無線端末27から応答がエラーであった場合、被訪問者の携帯無線端末27との無線LANの通信可能エリア外であると判断される。応答のエラーは、例えば、所定の応答待ち時間を予め設定しておき、応答待ち時間以上応答が無かった場合、応答エラーとする。
【0087】
このようにして、被訪問者が携行する携帯無線端末27が、無線LANの通信可能エリア内であると判断された場合(ステップS22:YES)、インターホン親機23の制御部
47により、伝送路が無線LAN通信に決定され、インターホン親機23の無線送受信部58を介して、携帯無線端末27の呼び出しが行われる(ステップS23)。一方、被訪問者が携行する携帯無線端末27が、無線LANの通信可能エリア外であると判断された場合(ステップS22:NO)、インターホン親機23の制御部47により、伝送路が公衆電話回線に決定され、インターホン親機23の公衆電話回線送受信部59を介して携帯無線端末27の呼び出しが行われる(ステップS24)。
【0088】
以上のように、本発明の第1の実施の形態の呼び出し応対装置は、来訪者が被訪問者を呼び出す呼び出しボタン31と、来訪者の特徴情報として来訪者の映像を撮像する撮像部33と、複数の人物の特徴情報および、対応する複数の被訪問者の情報を関連付けて予め格納する人物情報データベース43と、来訪者の映像に基づいて、来訪者の特徴情報を取得し、得られた来訪者の特徴情報に基づいて、人物情報データベース43に格納された複数の人物の特徴情報の中から来訪者に該当する人物を認識するとともに、認識された人物の情報に基づいて、人物情報データベース43により関連付けられている少なくとも一人の被訪問者を特定する認識部45と、認識部45により特定された被訪問者に呼び出しを通知する制御部47とを備えているので、来訪者は、単一の呼び出しボタンを押すだけで目当ての被訪問者との直接対話が可能であるため、複数の被訪問者に対応した複数の個別呼び出しボタンが不要であり、そのため、来訪者が呼び出しボタンを押し間違えて誤った被訪問者を呼び出すことを防止できる。
【0089】
また、本実施の形態において、被訪問者が携行する携帯無線端末27を備えるとともに、インターホン親機23の制御部47が、インターホン親機23の認識部45により特定された被訪問者の携帯無線端末27に接続を切り替えるので、被訪問者が携行する無線通信機能を備えた携帯無線端末27に、自動的にインターホン子機21を接続可能であり、インターホン親機23から離れた場所や外出先でも来訪者に対応した被訪問者の応対が可能となる。
【0090】
また、本実施の形態において、インターホン親機23は、携帯無線端末27と無線通信する無線送受信部58と、携帯無線端末27と公衆電話回線網25を介して通信する公衆電話回線送受信部59とを有し、インターホン親機23の制御部47は、インターホン親機23の認識部45により特定された被訪問者の携帯無線端末27の現在位置が、インターホン親機23の無線送受信部58の無線通信可能エリアの範囲内か否かを判定し、判定により被訪問者の携帯無線端末27の現在位置がインターホン親機23の無線送受信部58の無線通信可能エリアの範囲内と判定された場合は、インターホン親機23の無線送受信部58を介して携帯無線端末27に接続し、判定により被訪問者の携帯無線端末27の現在位置がインターホン親機23の無線送受信部58の無線通信可能エリアの範囲外と判定された場合は、インターホン親機23の公衆電話回線送受信部59を介して携帯無線端末27に接続し、インターホン子機21の撮像部33により得られた来訪者の顔の画像を接続された被訪問者の携帯無線端末27に送信するので、インターホン親機23においては、無線LANなどの無線送受信部58を介して携帯無線端末27と通信が可能なため、このような帯域の広い無線通信網を使用した場合において、圧縮率を抑え、かつ、高いフレームレートの映像を送信することが可能となり、被訪問者がどこに居ても、携帯無線端末27で、きれいな映像を見ることが可能となる。
【0091】
尚、上記実施の形態では、インターホン親機23に認識部45を設け、インターホン親機23の制御部47において、携帯無線端末27との伝送路の決定を行う場合について説明したが、インターホン子機21に認識部を設け、インターホン子機21の制御部38において、携帯無線端末27との伝送路の決定を行っても良い。」(13頁30行?14頁48行)

上記イ.ないし上記ホ.の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、
a)引用例1には、上記イ.にあるように、居室の外に設けられるインターホン子機21と、居室内に設けられたインターホン親機23と、無線携帯端末からなるインターホンシステムについて記載がある。
上記ロ.の記載によれば、インターホン子機21はインターホン親機23とそれぞれの送受信部を介して映像信号、音声信号等を送受信する有線通信を行っているから、インターホン子機21とインターホン親機23は信号線で接続されているといえる。

b)上記ハ.の段落【0055】、【0065】の記載によれば、インターホン親機23には公衆電話回線送受信部59が設けられており、公衆電話回線送受信部59により公衆電話回線網を通じて携帯無線端末との通信を行えるようになっているので、公衆電話回線送受信部59は、公衆電話回線とインターホン親機23とを接続するものといえる。
上記ハ.の段落【0055】、【0066】の記載によれば、インターホン親機23には、無線送受信部58が設けられている。無線送受信部58は無線LAN機能を有しており、携帯無線端末との間で無線LANによる音声信号、映像信号の無線通信を行えるようになっている。ここで、携帯無線端末については上記ニ.に記載があり、段落【0071】?【0072】の記載によれば、携帯無線端末27は、無線送受信部71を介してインターホン親機23と無線LANによる音声信号、映像信号の無線通信を行える「無線LAN機能」を有している。このことから、無線送受信部58は、携帯無線端末27の無線LAN機能とインターホン親機23とを無線接続するものといえる。

c)上記ロ.の段落【0049】及び上記ハ.の段落【0062】によれば、インターホン子機21には来訪者の映像を撮像する撮像部33が設けられており、そして、来訪者の映像はインターホン親機23に送信されてインターホン親機23に設けられた表示部54で表示されている。
また、上記ニ.の段落【0074】によれば、インターホン子機21からインターホン親機23に送信された映像信号は、携帯無線端末27の表示部74に表示されると記載されており、携帯無線端末27が無線LANの通信可能エリア内にあるときに、インターホン子機21からの映像は、インターホン親機23の無線送受信部58を介して携帯無線端末27に送信されることになる。
d)上記ホ.の段落【0089】には、「被訪問者が携行する無線通信機能を備えた携帯無線端末27に、自動的にインターホン子機21を接続可能であり、インターホン親機23から離れた場所や外出先でも来訪者に対応した被訪問者の応対が可能となる。」との記載がある。このように、インターホン子機21と携帯無線端末27間ではインターホン親機23を介した「応対」が可能となることから、インターホン子機21と携帯無線端末27間で音声信号による送受信が行われているのは自明のことである。

したがって、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されている。

(引用発明1)
「居室の外に設けられるインターホン子機21と、居室内に設けられるとともに信号線を介してインターホン子機21と接続されるインターホン親機23とを備え、信号線を介して音声信号を送受信することによりインターホン親機23とインターホン子機21との間で通信が可能なインターホンシステムにおいて、
公衆電話回線とインターホン親機23とを接続する公衆電話線送受信部59と、無線LAN機能を有する携帯無線端末27に対してインターホン親機23と携帯無線端末27の無線通信機能とを無線接続する無線送受信部58とを具備するインターホン親機23を備え、無線送受信部58を介して携帯無線端末27とインターホン子機との間で音声信号を送受信するものであって、
来訪者を撮像する撮像部33をインターホン子機21に具備し、撮像部33で撮像された映像が信号線によりインターホン親機23に送信され、インターホン子機21から受信した映像をインターホン親機23が具備する表示部54に表示するとともに、無線送受信部58を介してインターホン親機23から携帯無線端末27へ前記映像を伝送するインターホン装置。」

(2)当審の拒絶の理由に引用された特開2003-333199号公報(以下、「引用例2」という。)には、「インタホンシステム」として図面とともに以下の事項が記載されている。

ヘ.「【0015】本発明による別のインタホンシステムは、上記の構成のほかに、前記管理サーバを外部IPネットワークに接続する手段と、前記接続先機器管理テーブルに外部接続機器を登録する手段とを具備している。
【0016】すなわち、本発明の本発明によるインタホンシステムは、IPネットワークを使用したインタホンシステムにおけるドアホンと室内ホン及び管理サーバとの間を接続するインタフェースをEthernet(R)(IEEE802.3/Ethernet(R)II)または無線LAN(802. 11b)のLAN接続としている。」(3頁3欄5行?15行)

ト.「【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例によるインタホンシステムの構成を示すブロック図である。図1において、インタホンシステム1は来客者が扱うドアホン11と、室内で応対する室内ホン12と、室内ホン12と同等の機能を有するソフトウェアを搭載したPC(Personal Computer)13と、各機器の接続を管理する管理サーバ14とから構成されている。
【0024】インタホンシステム1において、ドアホン11、室内ホン12、PC13はそれぞれLAN(Local Area Network)(IPネットワーク)110を介して管理サーバ14に接続されている。管理サーバ14はSIP(Session Initiation Protocol:RFC2543)プロトコルにおいてSIPプロキシサーバとして動作する。
【0025】また、インタホンシステム1は外部IPネットワーク100を介して外部機器(PC,IP電話)2に接続され、外部IPネットワーク100及びVoIP(Voice over Internet Protocol)機器4を介して外部機器(電話)3に接続されている。この場合、管理サーバ14は外部IPネットワーク100に接続され、外部機器2,3との接続も管理する。
【0026】ここで、外部機器2は外部ネットワーク100に接続される外部機器で、SIP及びRTP(Real-time Transport Protocol:RFC1889)での接続が可能なPCあるいはIP電話である。外部機器3は通常の電話機で、VoIP機器4はVoIP業者等でSIP及びRTPから通常の電話機への変換接続あるいはその逆変換を行う。
【0027】図2は図1のドアホン11の構成を示すブロック図である。図2おいて、ドアホン11は来客者が押すボタン111と、SIPによる登録あるいは接続のプロトコル制御を司るSIP制御部112と、音声あるいは映像のエンコーディング・デコーディングとそのパケット化とを行うRTP制御部113と、SIPあるいはRTP等をIPパケットにてLAN110を介して送受信するためのLAN制御部114と、来客者の音声を拾うマイク115と、来客者の映像をキャッチするためのカメラ116と、対向接続機器からの音声を再生するためのスピーカ117とから構成されている。LAN制御部114にはEthernet(R)(IEEE802.3/Ethernet(R)II)または無線LAN(802.11b)が接続されている。
【0028】図3は図1の室内ホン12の構成を示すブロック図である。図3において、室内ホン12は応対者が応対する際に押す応対ボタン121と、SIPによる登録あるいは接続のプロトコル制御を司るSIP制御部122と、音声あるいは映像のエンコーディング・デコーディングとそのパケット化とを行うRTP制御部123と、SIPあるいはRTP等をIPパケットにてLAN110を介して送受信するためのLAN制御部124と、応対者の音声を拾うマイク125と、ドアホン11からの映像を表示するためのモニタ126と、ドアホン11からの音声を再生するためのスピーカ127とから構成されている。」(3頁4欄9行-4頁5欄16行)

上記へ.ないし上記ト.の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、引用例2には以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が開示されている。

(引用発明2)
「管理サーバ14とドアホン11とを有するインターホンシステムにおいて、管理サーバ14と室内ホン12や室内ホンと同等の機能を有するPC13とを無線LANあるいは有線LANで接続することにより、インターホンシステムをIP化し、管理サーバ14を介してドアホン11と室内ホン12や室内ホンと同等の機能を有するPC13とを通話接続するとともに、外部IPネットワーク100を介してIP電話等の外部機器2,3に接続するようにしたインターホンシステム。」

3.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「居室の外に設けられるインターホン子機21」に関し、「居室の外」は本願発明の「住戸の屋外」に相当し、「インターホン子機」は本願発明の「ドアホン子器」に相当する。
引用発明1の「居室内」は、本願発明の「住戸の屋内」に相当する。
引用発明1の「音声信号の授受」は、本願発明の「音声信号の送受信」と同義である。
引用発明1の、インターホン親機23とインターホン子機との間での「通信」は、インターホンによる音声信号の送受信により行われるものであるから、本願発明の「インターホン通話」に相当する。

引用発明1の「公衆電話回線とインターホン親機23とを接続する公衆電話線送受信部59」に関し、「公衆電話回線」は、上記2.(1)の摘記事項ハ.の段落【0065】に記載されるように、公衆電話回路網に接続する回線であり、該公衆電話回路網は「ネットワーク」であるから、「公衆電話線送受信部59」は、ネットワークとインターホン親機23とをインタフェースするものといえる。したがって、引用発明1の「公衆電話回線とインターホン親機23とを接続する公衆電話線送受信部59」と、本願発明の「インターネットに接続する回線とインターホン親機とをインタフェースするネットワークインタフェース手段」とは、「特定のネットワークに接続する回線とインターホン親機とをインタフェースするネットワークインタフェース手段」である点で共通する。

引用発明1の「携帯無線端末27」は、上記2.(1)の摘記事項イ.の段落【0044】に「インターホン親機23との間で無線通信または公衆電話回線による通信を行う複数の携帯無線端末27」と記載されるように、電話機能を有するから、本願発明の「携帯型IP電話端末」と「携帯型電話端末」である点で共通する。
また、引用発明1の「無線LAN機能」は、本願発明の「無線LANに関する規格に準拠して無線通信する無線通信機能」に相当する。
また、引用発明1の「無線送受信部58」は、無線通信端末とインターホン親機23とを無線でインタフェースするものといえるので、本願発明の「無線インタフェース手段」に相当する。

引用発明1の「撮像部33」、「表示部54」は、明らかに本願発明の「撮像手段」、「表示手段」にそれぞれ相当する。また、引用発明1の「送信」は、本願発明の「伝送」と同義である。

したがって、本願発明と引用発明1は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「住戸の屋外に設置されるドアホン子器と、住戸の屋内に設置されるとともに信号線を介してドアホン子器と接続されるインターホン親機とを備え、信号線を介して音声信号を授受することによりインターホン親機とドアホン子器との間でインターホン通話が可能なインターホンシステムにおいて、
特定のネットワークに接続する回線とインターホン親機とをインタフェースするネットワークインタフェース手段と、無線LANに関する規格に準拠して無線通信する無線通信機能を有する携帯型電話端末に対してインターホン親機と携帯型電話端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース手段とを具備する特定の装置を備え、無線インタフェース手段を介して携帯型電話端末とドアホン子器との間で音声信号を授受するものであって、
来訪者を撮像する撮像手段をドアホン子器に具備し、撮像手段で撮像された映像が信号線を介してインターホン親機に伝送され、ドアホン子器から受け取った映像をインターホン親機が具備する表示手段に表示するとともに、無線インタフェース手段を介してインターホン親機から携帯型電話端末へ前記映像を伝送するインターホンシステム。」

(相違点)
(1)本願発明では、「インターホン親機は、マイクロホン及びスピーカと、音声スイッチ又はエコーキャンセラの少なくとも一方を具備して拡声通話を行うもの」であるのに対し、引用発明1では、拡声通話について記載がない点。
(2)「特定のネットワークに接続する回線とインターホン親機とをインタフェースするネットワークインタフェース」手段について、本願発明では「インターネットに接続する回線とインターホン親機とをインタフェースするネットワークインタフェース手段」であるのに対し、引用発明1では、「公衆電話回線とインターホン親機23とを接続する公衆電話線送受信部59」である点。
(3)「携帯型電話端末」に関し、本願発明では、「前記回線よりインターネットを介して通話するIP電話機能」を有する「携帯型IP電話端末」であるのに対し、引用発明1では、IP電話機能については記載のない「携帯無線端末」である点。
(4)「ネットワークインタフェース手段」及び「無線インタフェース手段」と具備する「特定の装置」に関し、本願発明では、「通信装置」であるのに対し、引用発明1では、「インターホン親機」である点。

4.当審の判断
a)上記相違点(1)について検討する。
インターホン親機に、マイクロホン及びスピーカと、音声スイッチ又はエコーキャンセラの少なくとも一方を具備して拡声通話を行う構成は周知の構成にすぎず(必要があれば、特開2002-27130号公報の段落【0002】の記載、特開2000-261837号公報の段落【0010】の記載、特開2004-304551号公報の段落【0025】の記載を参照)、このような拡声通話のための周知の構成を引用発明1に付加することは当業者が適宜為し得ることにすぎない。

b)上記相違点(2)、(3)について検討する。
上記2.(2)に記載したように、引用例2には、「管理サーバ14とドアホン11とを有するインターホンシステムにおいて、管理サーバ14と室内ホン12や室内ホンと同等の機能を有するPC13とを無線LANあるいは有線LANで接続することにより、インターホンシステムをIP化し、管理サーバ14を介してドアホン11と室内ホン12や室内ホンと同等の機能を有するPC13とを通話接続するとともに、外部IPネットワーク100を介してIP電話等の外部機器2,3に接続するようにしたインターホンシステム。」という引用発明2が記載されている。
ここで、管理サーバ14は、引用発明の「インターンホン親機23」に相当する。

当業者であれば、引用発明2記載の構成を、引用発明1のインターホンシステムに適用して、引用発明1のインターホンシステムをIP化することにより、無線LANに関する規格に準拠して無線通信する無線通信機能を有する無線携帯端末を「携帯型IP電話端末」に、「公衆電話回路網」をIPネットワーク、すなわち「インターネット」に替えるとともに、携帯型IP電話端末で、インターネットに接続する回線よりインターネットを介して外部のIP電話等と「通話」するように為すことを容易に想到し得るものである。
そのように為せば、引用発明1の無線送受信部58は「前記回線よりインターネットを介して通話するIP電話機能並びに無線LANに関する規格に準拠して無線通信する無線通信機能を有する携帯型IP電話端末に対してインターホン親機と携帯型IP電話端末の無線通信機能とをインタフェースする無線インタフェース手段」となる。

c)上記相違点(4)について検討する。
当審の拒絶の理由にそれぞれ引用例3ないし5として引用された、特開2004-153418号公報(段落【0032】等参照)、特開2004-236278号公報(段落【0007】?【0010】、【図1】等参照)、特開2002-374359号公報(段落【0042】?【0046】等参照)に記載されているように、ネットワークインタフェース手段や無線インタフェース手段を通信装置本体と『別体』に構成することは周知の構成にすぎず、引用発明1においてインターホン親機23に一体に設けられている「ネットワークインタフェース手段」及び「無線インタフェース手段」を、通信装置として『別体』に設けるようにすることは、当業者が適宜為し得ることにすぎない。

このように上記各相違点は格別なものでない。そして、本願発明の作用効果は、引用発明1、2および各周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-28 
結審通知日 2013-06-04 
審決日 2013-06-18 
出願番号 特願2006-140766(P2006-140766)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山岸 登  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 山中 実
萩原 義則
発明の名称 インターホンシステム  
代理人 北出 英敏  
代理人 西川 惠清  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 坂口 武  

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