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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1277310
審判番号 不服2012-7464  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-23 
確定日 2013-08-01 
事件の表示 特願2007-118905「表面検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月13日出願公開,特開2008-275424〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年4月27日を出願日とする出願であって,平成23年10月31日付けで拒絶理由通知書が通知され,平成24年1月4日付けで手続補正がなされたが,同年2月7日付で拒絶査定がされた。これに対し,同年4月23日に拒絶査定不服の審判請求がされるとともに,同日付で手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされ,平成25年2月18日付けで審尋がなされ,同年4月19日に回答書が請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
鋼板表面に照明光を照射する光源と、前記鋼板表面での反射光を受光して画像信号を得る撮像装置と、この撮像装置で得られた画像信号に基づいて前記鋼板表面の表面欠陥を検出する画像処理装置とを具備してなる、大きさが0.5mm以下の凹凸欠陥を対象とする表面検査装置において、
前記撮像装置の空間分解能を0.2mm以下にするとともに、前記鋼板表面の法線に対して前記撮像装置を前記光源と同じ側に配置し、かつ前記光源から鋼板表面へ照射される照明光の入射角度αを60°?70°の間の角度に設定するとともに、前記撮像装置の受光角度を30°?60°の間の角度に設定することを特徴とする表面検査装置。」(下線は補正箇所を示す)と補正された。

2 補正事項について
(1)補正事項1
補正前の「被検査表面」を「鋼板表面」と補正した点については,検査される表面を「鋼板」の表面に限定したものである。
(2)補正事項2
「大きさが0.5mm以下の凹凸欠陥を対象とする」との発明特定事項を追加する補正をした点については,対象とする表面欠陥を「大きさが0.5mm以下の凹凸欠陥」に限定したものである。
してみると,上記補正事項(1)及び(2)による請求項1についての補正は,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 引用刊行物及びその記載事項
(1)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-183396号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。なお,以下において下線は当審において付与したものである。
(1-ア)「【0017】次に、上述した発明の動作原理を図面を用いて説明する。まず、本発明の表面疵検査装置が検査対象とする鋼板表面の光学的反射の形態を鋼板表面のミクロな凹凸形状と関連づけて説明する。」
(1-イ)「【0033】ヘゲ部角度分布11aと母材部角度分布12aとでテンパ部6の面積率に違いがない場合には図10(c)に示すように、正反射方向からの単なる受光強度の差を観察するのみではヘゲ部11の存在を観察できない。しかし、鏡面拡散反射成分の拡散性(角度分布)に違いがあるときには図10(c)に示すように正反射方向以外の拡散方向から欠陥が観察される。」
(1-ウ)「【0040】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1(a)は本発明の一実施形態の表面疵検査方法が採用された表面疵検査装置の側面図であり、図1(b)は同表面疵検査装置の上面図である。
【0041】この実施形態の表面疵検査装置は製鉄工場における合金化亜鉛メッキ鋼板の品質検査ラインに設置されている。図中矢印方向に搬送状態の鋼板21の搬送路の上方位置に、この帯状の鋼板21の幅方向に線状拡散光源22が配設されている。この線状拡散光源22は、一部に拡散反射塗料を塗布した透明導光棒の両端から内部へメタルハライド光源の光を投光することによって、幅方向に一様の出射光を得る。
【0042】線状拡散光源22の各位置から出射された鋼板21に対する入射光23は、シリンドリカルレンズ24を介して走行状態の鋼板21の全幅に対して例えば60°の入射角θで照射する。
【0043】鋼板21で反射された正反射光25は鋼板正反射方向、すなわち鋼板21の法線方向に対して受光角γ=60°方向に配置された第1の受光カメラ26に入射する。また、鋼板21の法線方向に対して受光角γ=25°の受光角度方向に第2の受光カメラ27が配設されている。この第2の受光カメラ27は、鋼板21で種々の方向に拡散反射された拡散反射光のうち、受光角γ=25°方向の拡散反射光28を入射する。
【0044】さらに、鋼板21の法線方向に対して受光角γ=-25°の受光角度方向に第3の受光カメラ29が配設されている。この第3の受光カメラ29は、鋼板21で種々の方向に拡散反射された拡散反射光のうち、受光角γ=-25°方向の拡散反射光30を入射する。
【0045】すなわち、第1の受光カメラ26は反射光のうちの受光角γ=60°方向の鏡面反射成分を受光し、第2の受光カメラ27は反射光のうちの受光角γ=25°方向の鏡面拡散反射成分を受光し、第3の受光カメラ29は反射光のうちの受光角γ=-25°方向の鏡面拡散反射成分を受光する。
・・・・・
【0049】各受光カメラ26,27,29で受光された正反射光26及び各拡散反射光28,30における鋼板21の幅方向の1ライン分の各画素毎の光強度はそれぞれ光強度信号a,b,cに変換されて判定処理部としての信号処理部31へ送信される。
【0050】図2は信号処理部31の概略構成を示すブロック図である。鋼板21の法線方向に対して受光角γ=60°方向の鏡面反射成分を受光する第1の受光カメラ26、鋼板21の法線方向に対して受光角γ=25°方向の鏡面拡散反射成分を受光する第2の受光カメラ27、鋼板21の法線方向に対して受光角γ=-25°方向の鏡面拡散反射成分を受光する第3の受光カメラ29から出力された各光強度信号a,b,cはそれぞれ平均値間引き部32a,32b,32cへ入力される。
・・・・・
【0053】各平均値間引き部32a,32b,32で信号処理された各光強度信号a,b,cは次の各前処理部33a,33b,33cへ入力される。各前処理部33a,33b,33bは、1ラインの信号の輝度ムラを補正する。ここでいう輝度ムラには、光学系に起因するムラも鋼板21の反射率に起因するムラも含まれる。また、各前処理部33a,33b,33cは、鋼板21の両側のエッジ位置も検出し、エッジにおける急激な光強度信号a,b,cの変化を疵と誤認識することを防ぐ処理も実施する。各前処理部33a,33b,33cで信号処理された各光強度信号a,b,cは次の各2値化処理部34a,34b,34cへ入力される。
【0054】各2値化処理部34a,34b,34cは、各光強度信号a,b,cに含まれる各画素のデータを予め決められたしきい値と比較し、疵候補点を抽出して、次の特徴量算出部35a,35b,35cへ送出する。
【0055】特徴量抽出部35a,35b,35cは、一続きとなっている疵候補点をーつの疵候補領域と判定し、例えばスタートアドレス、エンドアドレスなどの位置特徴量や、ピーク値などの濃度特徴量などを算出する。
【0056】鏡面性疵判定部36及び鏡面拡散性疵判定部37では、各受光カメラ26,27,29に対応する各特徴量抽出部35a,35b,35cにより算出された特徴量に基づいて、疵の種類、程度を判定する。
【0057】そして、疵総合判定部38では、鏡面性疵判定部36及び鏡面拡散性疵判定部37での判定結果及び特徴量により、検査対象としての鋼板21に対する最終的な疵種及びその程度を判定する。」
(なお,【0049】段落の「正反射光26」は「正反射光25」の誤記と認められる。)
(1-エ)【図1】(a)(下図参照)には,鋼板21の法線方向に対して60°の入射角θで照射する線状拡散光源22と,その光源と同じ側に鋼板21の法線方向に対して25°の受光角度方向に第3の受光カメラ29,その光源と反対側に鋼板21の法線方向に対して25°,60°の受光角度方向に第2の受光カメラ27,第1の受光カメラ26を配置することが記載されている。


これらの記載事項を総合すると,引用例1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「鋼板21の法線方向に対して60°の入射角で照射する線状拡散光源22と,
該光源22と反対側に鋼板21の法線方向に対して60°,25°の受光角度方向に第1の受光カメラ26,第2の受光カメラ27を,
該光源22と同じ側に鋼板21の法線方向に対して25°の受光角度方向に第3の受光カメラ29を配置し,
各受光カメラ26,27,29で受光された正反射光25及び各拡散反射光28,30の各画素毎の光強度がそれぞれ光強度信号a,b,cに変換されて送信され,疵種及びその程度を判定する信号処理部を有する,
鋼板表面のミクロな凹凸形状の表面疵検査装置。」(以下,「引用発明」という。)

(2)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-5845号公報(以下,「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
(2-ア)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図6の正反射光学系と図7の散乱反射光学系では、いずれも撮像装置の受光方向が被検査物からの反射光のうち正反射光が反射する方向あるいはその近傍に設置されていたため、地合のあるアルミ板等の表面に存在する微細な疵欠陥等が十分検出できない場合しばしばがあった。この理由として、地合の凹凸に対して、微細な凹凸の疵のS/N(Signal to Noise Ratio)が小さく、疵欠陥の信号光が地合の光量に埋もれてしまうためであった。そのため、従来の表面欠陥検査装置においては、地合のある被対象物に対して微細な凹凸の疵を検出できないという問題点を有していた。
・・・・・
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の欠陥検査装置は、被検査物を照明する照明装置と、被検査物からの反射光を受光する撮像装置と、該撮像装置の出力信号を処理して前記被検査物の欠陥を検出する画像処理装置を備えた欠陥検査装置であって、前記撮像装置の受光方向と前記照明装置の照射方向が前記被検査物の法線方向に対して同じ側であることを特徴としている。
【0007】
このように構成された装置において、撮像装置の受光方向と照明装置の照射方向が被検査物の法線方向に対して同じ側の斜め方向に配置し、被検査物の正常部である地合の反射光量を正反射成分として逃し、凹凸の浅い微細欠陥を散乱成分として撮像装置で受光する。これにより、本発明の欠陥検査装置は微細欠陥を検出することができる。」

(3)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平9-89800号公報(以下,「引用例3」という。)には,次の事項が記載されている。
(3-ア)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】鋼材、アルミ材などの表面品質に対する要求は、近年ますます厳しくなってきており、検出すべき表面欠陥の寸法も小さくなってきている。一般に、小さい寸法の表面欠陥を検出するためには、表面欠陥検査装置の受光器の空間検出分解能を、検出すべき表面欠陥寸法と同程度以下に高める必要がある。例えば、直径0.3mmの円状の表面欠陥を検出するには、受光器の空間分解能は0.3mmよりも高い必要がある。」


4 対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「鋼板21の法線方向に対して60°の入射角で照射する線状拡散光源22」は,引用例1の【図1】に鋼板表面に照明光を照射していることが示されていることから,本願補正発明における「鋼板表面に照明光を照射する光源」に相当し,引用発明の「第1の受光カメラ26,第2の受光カメラ27,第3の受光カメラ29」は,引用例1の【図1】に鋼板表面での反射光を受光していることが示されていることから,本願補正発明における「鋼板表面での反射光を受光して画像信号を得る撮像装置」に相当している。

イ 引用発明の「各受光カメラ26,27,29で受光された正反射光25及び各拡散反射光28,30の各画素毎の光強度がそれぞれ光強度信号a,b,cに変換されて送信され,疵種及びその程度を判定する信号処理部」は,各受光カメラ26,27,29は「鋼板表面での反射光を受光して画像信号を得る撮像装置」に相当するから,本願補正発明における「撮像装置で得られた画像信号に基づいて前記鋼板表面の表面欠陥を検出する画像処理装置」に相当し,引用発明の「表面疵検査装置」は,本願補正発明における「表面検査装置」に相当している。

ウ 引用発明の「鋼板21の法線方向に対して60°の入射角で照射する線状拡散光源22」における「60°の入射角」は,入射角度が「60°?70°」に含まれるから,本願補正発明の「光源から鋼板表面へ照射される照明光の入射角度αを60°?70°の間の角度に設定する」を満たすものである。

エ 本願補正発明では,鋼板表面の法線に対して光源と反対側に撮像装置があるどうかについては特定されていないが,本願明細書に
「【0018】・・・・・
同図に示されるように、鋼板1の表面に発生した欠陥がある特定の欠陥B(凹状の点状欠陥の一種)である場合は欠陥を検出できないことがわかる。したがって、このような欠陥も検査対象に含まれる場合は、第1の実施形態の構成に加えて、図6に示す第2の実施形態のように、光源2から鋼板1の表面に照射された照明光の反射光を受光して鋼板表面の画像信号を得る第2の撮像装置5を照射位置での鋼板1の法線方向1aを基準として光源2と反対側で、前方散乱光を受光するように配置し、撮像装置の受光角度β2を鋼板1の法線方向1aに対して0°以上(α-10°)以下とすることが好ましい。ただし、β2は鋼板表面の法線方向に対して光源とは反対側の方向を正として扱う。」と記載されているように,鋼板表面の法線に対して光源と反対側に撮像装置があることを否定するものではなく,むしろ,鋼板表面の法線に対して光源と反対側にも撮像装置がある方が好ましいことが示されている。してれみば,本願補正発明には、引用発明にのように鋼板表面の法線に対して光源と反対側に撮像装置があることも技術的に含んでいることである。

してみれば,本願補正発明と引用発明とは,
(一致点)
「鋼板表面に照明光を照射する光源と,前記鋼板表面での反射光を受光して画像信号を得る撮像装置と,この撮像装置で得られた画像信号に基づいて前記鋼板表面の表面欠陥を検出する画像処理装置とを具備してなる,表面検査装置において,
前記鋼板表面の法線に対して前記撮像装置を前記光源と同じ側に配置し,かつ前記光源から鋼板表面へ照射される照明光の入射角度αを60°?70°の間の角度に設定する,表面検査装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では,「大きさが0.5mm以下の凹凸欠陥を対象とする」もので,「撮像装置の空間分解能を0.2mm以下」にしているが,引用発明では、「鋼板表面のミクロな凹凸形状」を対象とし,受光カメラの空間分解能については不明である点。
(相違点2)
本願補正発明においては,「撮像装置の受光角度を30°?60°の間の角度に設定」しているが,引用発明においては,受光カメラ29の受光角度が「25°」となっている点。

(2)当審の判断
(相違点1)について
引用例3の摘記事項(3-ア)には,鋼材などの表面品質に対する要求は厳しくなってきており,検出すべき表面欠陥の寸法も小さくなってきていることが記載されており,その具体的な表面欠陥の大きさとして0.3mmのものが記載されている。してみれば,引用発明での「鋼板表面のミクロな凹凸形状」における「ミクロな」は「0.5mm以下」を含んでいることは明らかであることから,引用発明において「大きさが0.5mm以下の凹凸欠陥を対象とする」ことは当業者において適宜設定し得ることである。そして,引用例3の摘記事項(3-ア)に記載されているように,鋼材の表面欠陥を検出するためには,表面欠陥検査装置の受光器の空間検出分解能を検出すべき表面欠陥寸法と同程度以下に高める必要があることは技術常識であるから,引用発明において「ミクロな凹凸形状」として「大きさが0.5mm以下の凹凸欠陥」を検出するために,受光カメラすなわち撮像装置の「空間分解能を0.2mm以下」とすることも,当業者が適宜設定し得ることである。

(相違点2)について
本願の出願前に頒布され刊行物である特開昭60-228943号公報に,第1図(鋼板表面の法線に対して入射角をθとする照明用光線3を照射する光源2に対し,そのθより小さい角度で受光する光検出器を4を光源と同じ側に設置することが示されている。)とともに,「ヘゲ状疵を持つ恐れのあるステンレス鋼板の被検査表面に大きな入射角で照明用光線を照射し、該被検査表面で反射する反射光のうち照明用光線の入射側へ戻る反射光を光検出器により受光し、該被検査表面に対応する該光検出器の出力中の輝点の数により鋼板表面状態の良否を検査することを特徴とするステンレス鋼板の表面状態検査方法。」(特許請求の範囲(1)参照),「好ましい入射角θは60度以上90度未満の範囲であり、これは光源2をそのようにセットすれば後は固定でよい。」(3頁左上欄13?15行参照),「入射方向と観測方向は近い程、疵からの拡散反射光に対する検出感度が高くなるが、入射角が大きいことにより疵部以外からの拡散反射が極めて少ないので、30度程度ずれても十分な検出能が得られる。」(3頁左下欄1?5行参照),「本発明では大きな入射角度で光を入射させ、その方向とほぼ同じ方向から被測定面を観測するので、不必要な反射光が除去され、疵による散乱光のみを検出する即ちS/Nの高い検査出力を得ることができ、複雑な信号処理を不要とすることができる。」(4頁左下欄1?6行参照)ことが記載されているように,
鋼板の被検査表面に鋼板表面の法線に対して60度以上90度未満の入射角度で照明用光源を照射し,該被検査表面で反射する反射光のうち照明用光源の入射側へ戻る反射光を光検出器により受光すべく,該入射角度と該入射角度から30度程度小さい角度までの間,すなわち,90度未満?30度に光検出器を設置することにより,不必要な反射光が除去され,疵による散乱光のみを検出する即ちS/Nの高い検出力をうることができ,複雑な信号処理を不要とすることができることは,当業者において本出願前,周知のことといえる。
上記周知技術における,光源からの入射角度と受光する光検出器の設置する角度のとの関係は,本願補正発明における「前記光源から鋼板表面へ照射される照明光の入射角度αを60°?70°の間の角度に設定するとともに、前記撮像装置の受光角度を30°?60°の間の角度に設定する」との関係を満たすものである。
引用発明において,鋼板表面の法線に対して光源と同じ側に配置している受光カメラ29は拡散反射光を受光するためのものであり,引用例1の摘記事項(1-イ)によると,その拡散反射光の受光により欠陥を観察するというものである。したがって,その拡散反射光を受光する際には,高いS/Nでもって受光する方が好ましいことは当業者において自明のことであるから,引用発明における入射角と光源と同じ側に配置している受光カメラ29の受光角度との関係を,上記周知技術における入射角度と受光する光検出器の設置する角度のとの関係にする,すなわち,受光カメラ29の設置する角度を「30°?60°の間の角度」を満たすような角度とすることは,高いS/Nでもって受光するという点において十分に動機付けのあることであり,また,引用発明における受光カメラ29の25°の受光角度も,引用例1の摘記事項(1-ウ)に記載されているように,入射角として「例えば60°」に対応する一例であり,25°に固定しなければならないものでもないことから,受光カメラ29の受光角度を25°から「30°?60°の間の角度」を満たすような角度とすることは単なる設計的事項である。

(本願補正発明の効果について)
本願明細書で本願補正発明の効果を以下のように記載している。
「【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明に係る表面検査装置では、撮像装置の空間分解能を0.2mm以下にし、かつ撮像装置を光源と同じ側に配置し、後方散乱光を受光する配置とすることで、欠陥の大きさが0.5mm以下の場合でも、被検査面の地合部の画像輝度分散値が小さくなるので、地合ノイズを抑制できると共に、微小な欠陥を高コントラストで撮像することが可能となる。これにより、被検査面の表面欠陥があるか否かを正確に検査することができる。さらに、光源から被検査面への入射角度αを60°?80°の間の角度に設定するとともに、撮像装置の受光角度を20°?αの間の角度に設定することで、被検査面に発生した微小な凹凸欠陥の陰影が現われ易くなるので、被検査面に微小な凹凸欠陥があるか否かを正確に検査することができる。」
引用例2における摘記事項(2-ア)を参照するに,撮像装置を光源と同じ側に配置し,後方散乱光を受光する配置とすることで,被検査面の地合部の画像輝度分散値が小さくなるので,地合ノイズを抑制できると共に,微小な欠陥を高コントラストで撮像することが可能となるという本願補正発明の効果は,当業者において予測の範囲内の効果といえ,さらに,本願補正発明における照明光の入射角度αが60°?70°及び撮像装置の受光角度が30°?60°という限定された範囲において,当該範囲を満たさない角度の場合と比較して,特に顕著な効果があるともいえない。

したがって,本願補正発明は,引用発明並びに引用例2,3の記載事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項に係る発明は,平成24年1月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
被検査面に照明光を照射する光源と、前記被検査面での反射光を受光して画像信号を得る撮像装置と、この撮像装置で得られた画像信号に基づいて前記被検査面の表面欠陥を検出する画像処理装置とを具備してなる表面検査装置において、
前記撮像装置の空間分解能を0.2mm以下にするとともに、前記被検査面の法線に対して前記撮像装置を前記光源と同じ側に配置し、かつ前記光源から被検査面へ照射される照明光の入射角度αを60°?70°の間の角度に設定するとともに、前記撮像装置の受光角度を30°?60°の間の角度に設定することを特徴とする表面検査装置。」

2 引用刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である上記引用例1?3の記載事項は,上記「第2」「3 引用刊行物及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2」「2 補正事項について」に記載したとおり,本願補正発明は,本願発明にさらに限定事項を追加したものであるから,本願発明は,本願補正発明から限定事項を省いた発明といえる。その本願補正発明が,前記「第2」「4 対比・判断」に記載したとおり,引用発明並びに引用例2,3の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものである以上,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。


なお,請求人は,審尋に対する回答書で,本願補正発明に対して,光源を「欠陥検出のための光源としての線状光源」とし,検出欠陥対象を「溶融亜鉛鍍金鋼板の表面の0.2mm?0.5mm程度、深さ数十μmのサイズの凹凸欠陥」とする補正案を提示している。
前者について,引用発明において「線状拡散光源22」を用いており,これは「欠陥検出のための光源としての線状光源」に他ならない。
後者について,引用例1の摘記事項(1-ア)には,鋼板が「合金化亜鉛メッキ鋼板」であることが記載されており,合金化亜鉛メッキ鋼板とは,溶融亜鉛メッキした鋼板に,さらに熱処理を施し鋼板の鉄と亜鉛とを合金化したもので,「溶融亜鉛鍍金鋼板」の範疇に入るものである。さらに,引用発明における「鋼板表面のミクロな凹凸形状」について,「ミクロな凹凸形状」は深さ方向のミクロな凹凸欠陥ともいえ,引用例3の摘記事項(3-ア)には鋼材の具体的な表面欠陥の大きさとして0.3mmのものが記載されていることから,引用発明において検出欠陥対象を「溶融亜鉛鍍金鋼板の表面の0.2mm?0.5mm程度、深さ数十μmのサイズの凹凸欠陥」とすることは当業者において適宜設定し得ることである。
したがって,請求人の提示した補正案における請求項1に係る発明も,引用発明並びに引用例2,3の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから,当該補正案を採用できない。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2013-05-24 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-14 
出願番号 特願2007-118905(P2007-118905)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 淳史樋口 宗彦  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 三崎 仁
森林 克郎
発明の名称 表面検査装置  
代理人 小西 恵  
代理人 宮坂 徹  
代理人 森 哲也  
代理人 廣瀬 一  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
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