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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1277322 |
審判番号 | 不服2012-14719 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-08-01 |
確定日 | 2013-08-01 |
事件の表示 | 特願2007-265429「光ファイバートレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月30日出願公開、特開2009- 93060〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、平成19年10月11日に出願されたものであって、平成22年10月1日付け、及び平成24年2月20日付けで手続補正がなされ、同年4月24日付けで拒絶の査定(以下「原査定」という。)がなされ、同年8月1日に拒絶査定に対する審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲、及び明細書を補正する手続補正がなされ、これらに対し、同年12月14日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるために審尋を行ったところ、平成25年2月18日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成24年8月1日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)から、下記(2)へと補正しようとするものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 光ファイバーをループ状に巻装して収容可能な光ファイバートレイにおいて、 機器ユニットから取り外した中継用コネクタを嵌脱可能に保持する保持手段を設け、 前記保持手段を、光ファイバートレイにおける前記中継用コネクタの挿入口の近傍に、前記光ファイバートレイの下方に装入される前記機器ユニットの中継用コネクタの接続部の上方で、かつ、前記光ファイバーが巻装されるガイド部の外側に配置したことを特徴とする光ファイバートレイ。 【請求項2】 前記保持手段は、あらかじめトレイの基板上に立設された光ファイバーの巻き付け用ガイド枠との間で、前記中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設したリブであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバートレイ。 【請求項3】 前記保持手段は、トレイの基板から前記中継用コネクタの挿入口の上方に張り出させた部分基板上に、前記中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設した一対の挟持部材からなることを特徴とする請求項1記載の光ファイバートレイ。 【請求項4】 前記部分基板は、前記光ファイバートレイの下方に装入される機器ユニットの中継用コネクタの接続部の上方に位置し、前記接続部に対する中継用コネクタの接 続方向と同一方向に嵌め込むことにより前記中継用コネクタを前記挟持部材間で挟持可能であることを特徴とする請求項3記載の光ファイバートレイ。 【請求項5】 前記保持手段は、トレイの基板上に一体に形成され、前記中継用コネクタを嵌脱可能な断面逆L字形部材もしくは角筒状の枠体からなることを特徴とする請求項1記載の光ファイバートレイ。 【請求項6】 前記中継用コネクタがその先端面の中央部に設けた開口内にフェルールを備え、前記保持手段は、トレイの基板上に一体に形成され、前記フェルールを挿脱可能な筒状体からなることを特徴とする請求項1記載の光ファイバートレイ。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 光送受信用機器に装填された機器ユニットの上に装着され、光ファイバーをループ状に巻装して収容可能な光ファイバートレイであって、 機器ユニットのメンテナンスや修理などにおいて機器ユニットの接続部から中継用コネクタを取り外した際に、中継用コネクタを嵌脱可能に保持する保持手段を設け、 前記保持手段は、前記中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設した可撓性に富みバネ機能を有する一対の樹脂性の挟持部材と、さらに、前記中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設したリブと、を備え、 前記保持手段によって、前記接続部から取り外した前記中継用コネクタを、光ファイバートレイ上の定位置に簡単かつ安定して保持できることを特徴とする光ファイバートレイ。 【請求項2】 光送受信用機器に装填された機器ユニットの上に装着され、光ファイバーをループ状に巻装して収容可能な光ファイバートレイであって、 機器ユニットのメンテナンスや修理などにおいて機器ユニットの接続部から中継用コネクタを取り外した際に、中継用コネクタを嵌脱可能に保持する保持手段を設け、 前記中継用コネクタは、直方体状本体と、その上面に突設された突起部とを備え、 前記保持手段は、トレイの基板上に形成され、前記中継用コネクタを嵌脱可能な筒状の枠体と、その上面に前記突起部を案内するガイド溝とを備え、 前記保持手段によって、前記接続部から取り外した前記中継用コネクタを、光ファイバートレイ上の定位置に簡単かつ安定して保持できることを特徴とする光ファイバートレイ。」(下線は審決で付した。以下同じ。) 2.新規事項の追加について (1)判断 本件補正により、本件補正後の請求項1に、保持手段は、「さらに、前記中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設したリブと、を備え、」との補正事項(以下「補正事項という。)が追加されて、保持手段が、中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設した可撓性に富みバネ機能を有する一対の樹脂性の挟持部材と前記中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設したリブとから構成されているものとされた。 上記補正事項を検討すると、願書に最初に添付した図面(以下「当初図面」という。)の図4には、「一対の挟持部材16と共に、その後方に一対のリブを備えているもの」が開示されているが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)の「図面の簡単な説明」には、「図4(c)は図4(b)において中継用コネクタを保持した状態を表している。」と記載されているように、図4(c)には、中継用コネクタを一対の挟持部材16のみで保持し、その後方に一対のリブは、単に光ファイバートレイから立設されているものであって、中継用コネクタを挟持や保持しておらず、保持手段として機能していないものが開示されている。そして、図4に示されている「リブ」に関して、当初明細書等にはそれ以上に具体的な記載や示唆はされていない。また、当初明細書等には、「図1(b)に示すように、機器ユニット10のソケット12の上方(ほぼ真上)で挿入口3aに隣接する位置において、上記挟持手段36・37・41の一部を構成する一直線状ガイド壁37に対し中継用コネクタ11の本体11aに対応する間隔をあけて、細長い板状片からなるリブ13が基板3b上に垂直に立設されている。このリブ13は一直線状ガイド壁37とで、中継用コネクタ11の保持手段20Aを構成しており、図1(c)のように中継用コネクタ11をリブ13とガイド壁37間で挟持し保持することができる。本実施例の保持手段20Aは、機器ユニット10の接続用ソケット12の上方にあるため、接続用ソケット12から引き抜いた中継用コネクタ11をリブ13とガイド壁37間に嵌め込むだけで瞬時にかつ簡単に保持でき、また中継用コネクタ11に接続されている光ファイバーに緩みを生じさせることもない。」(段落【0031】)と記載されているように、中継用コネクタ11の保持手段20Aは、リブ13と一直線状ガイド壁37とにより構成されていることが記載されてはいるが、上記補正事項の保持手段は、中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設した可撓性に富みバネ機能を有する一対の樹脂性の挟持部材と前記中継用コネクタを挟持可能な間隔をあけて立設したリブとから構成されているものであるから、当初明細書等に記載された上記の「リブ13と一直線状ガイド壁37とにより構成されている保持手段20A」とは異なるものである。そして、上記補正事項の「リブ」に関して、当初明細書等、または当初図面には、他に具体的な記載や示唆はなく、また上記「リブ」自体が自明の事項ともいえない。 したがって、上記補正事項は、当初明細書等、または当初図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等、または当初図面に記載した事項の範囲内でなされたものではない。 (2)むすび 以上のとおりであって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.特許請求の範囲の減縮等について (1)判断 補正後の請求項1、及び2に係る発明は、保持手段の配置に関して、何ら特定されておらず、本件補正は、補正前の請求項1?6に係る発明の「前記保持手段を、光ファイバートレイにおける前記中継用コネクタの挿入口の近傍に、前記光ファイバートレイの下方に装入される前記機器ユニットの中継用コネクタの接続部の上方で、かつ、前記光ファイバーが巻装されるガイド部の外側に配置した」との発明特定事項を削除しているものである。 したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものではない。 また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的としたものともいえない。 (2)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願の発明について 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年2月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2.1.(1)本件補正前の特許請求の範囲 」に記載したとおりのものである。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された「特開2006-235081号公報 」(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (ア)「外部から引き込まれた第一の光ファイバと、前記第一の光ファイバに接続される第二の光ファイバと、前記第一の光ファイバと前記第二の光ファイバとを中継する中継手段と、を収納する光ファイバトレイにおいて、前記第一の光ファイバ又は前記第二の光ファイバの最小許容半径以上の内径を有する略ループ状の収納通路と、 前記収納通路からの前記第一の光ファイバ又は前記第二の光ファイバのはみ出しを防止するため、前記収納通路の内壁及び外壁の上方から相対する壁に向かって、当該収納通路の下面と略平行に延出したファイバ押さえ手段とを備え、前記ファイバ押さえ手段を、少なくとも、前記収納通路における外壁の角部に設けたこと、 を特徴とする光ファイバトレイ。」(【請求項3】) (イ)「光受信機1は、屋外の光ケーブル(図示せず)から受信した光信号データを、そのまま他の光ケーブル(図示せず)を介して屋内へ送信し、あるいは、電気信号データに変換した上で同軸ケーブル(図示せず)を介して屋内へ送信する。この光受信機1は、概略的に、筐体2、光電変換部3、及び、光ファイバトレイ4を備えて構成されている。」(段落【0037】) (ウ)「また、光電変換部3は、屋外の光ケーブル(図示せず)から受光コネクタ(図示せず)を介して受信した光信号データを電気信号データに変換する光電変換手段であり、筐体2の内部に配置される。」(段落【0040】) (エ)「また、収容部10は、第一の光ファイバ15aと第二の光ファイバ15bとを収容する。この収容部10は、これらの光ファイバが通る第一の通路16a、第二の通路16b、第三の通路16c、及び、第四の通路16dで構成されており、詳細については後述する。ここで、収容部10は、特許請求の範囲における収納通路に対応する。」(段落【0044】) (オ)「また、コネクタ収納部13は、第二の光ファイバ15bと接続した受光コネクタ20を、受光部(図示せず)と接続する前に一時的に保持するために、第四の通路16dの近傍に設けられた専用の空間である。このため、後述する光ファイバの収容の際に、受光コネクタ20の光ファイバトレイ4への仮固定が可能となる。」(段落【0048】) また、上記(イ)、(ウ)に照らして図2をみると、以下の事項が看取できる。 (カ)光電変換部は、光ファイバトレイの下方に装入されている。 また、上記(ア)、(エ)に照らして図3をみると、以下の事項が看取できる。 (キ)コネクタ収納部は、第一の光ファイバと第二の光ファイバが収容される収容通路の外側に配置されている。 また、図7から、以下の事項が看取できる。 (ク)コネクタ収納部は、光ファイバトレイにおける縁部の近傍に配置されている。 これらの記載事項、及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「外部から引き込まれた第一の光ファイバと、前記第一の光ファイバに接続される第二の光ファイバとを収納する光ファイバトレイにおいて、 前記第一の光ファイバ又は前記第二の光ファイバの最小許容半径以上の内径を有する略ループ状の収納通路を備え、 コネクタ収納部は、受光コネクタを、光電変換部の受光部と接続する前に一時的に保持し、受光コネクタの光ファイバトレイへの仮固定を可能とするものであって、光ファイバトレイにおける縁部の近傍に、かつ、第一の光ファイバと第二の光ファイバに収容される収容通路の外側に配置されており、 光電変換部は、光ファイバトレイの下方に装入されている光ファイバトレイ。」 (3)対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 後者における「『第一の光ファイバ』及び『第二の光ファイバ』」は、その構造、機能、作用等からみて、いずれも前者における「光ファイバー」に相当し、以下同様に、「光ファイバトレイ」は「光ファイバートレイ」に、「収納通路」は「ガイド部」に、「コネクタ収納部」は「保持手段」に、「受光コネクタ」は「中継用コネクタ」に、「光電変換部」は「機器ユニット」に、「光電変換部の受光部」は「機器ユニットの中継用コネクタの接続部」に、それぞれ相当する。 また、後者における「光ファイバトレイ」は、第一の光ファイバ、及び第二の光ファイバを光ファイバトレイの略ループ状の収納通路に収納するから、「第一の光ファイバ、及び第二の光ファイバをループ状に巻装して収容可能なもの」といえる。 また、後者における「コネクタ収納部」は、受光コネクタを、光電変換部の受光部と接続する前に一時的に保持し、受光コネクタの光ファイバトレイへの仮固定が可能となるものであるから、受光コネクタを光電変換部の受光部から取り外した後に再びコネクタ収納部に保持できることは技術的に明らかであり、「光電変換部から取り外した受光コネクタを嵌脱可能に保持するもの」といえる。 また、後者における「受光コネクタ」は、光ファイバトレイに設けられ、その光ファイバトレイの下方に光電変換部が装入されているから、「光ファイバトレイの下方に装入される光電変換部の受光部の上方に配置した」といえると共に、第一の光ファイバと第二の光ファイバとが略ループ状に収容される光ファイバトレイの収容通路の外側に配置されているから、「第一の光ファイバと第二の光ファイバとが巻装される収容通路の外側に配置した」といえる。 したがって、両者は、 「光ファイバーをループ状に巻装して収容可能な光ファイバートレイにおいて、 機器ユニットから取り外した中継用コネクタを嵌脱可能に保持する保持手段を設け、 前記保持手段を、前記光ファイバートレイの下方に装入される前記機器ユニットの中継用コネクタの接続部の上方で、かつ、前記光ファイバーが巻装されるガイド部の外側に配置した光ファイバートレイ。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 保持手段の配置に関して、本願発明は、保持手段を、「光ファイバートレイにおける中継用コネクタの挿入口の近傍に、」配置したのに対し、引用発明は、コネクタ収納部を、「光ファイバトレイにおける縁部の近傍に、」配置した点。 (4)判断 上記相違点について以下検討する。 引用例の「受光コネクタ20は、受光部(図示せず)と接続する前は、専用のコネクタ収納部13に一時的に保持され、光ファイバトレイ4が筐体内部に装着された後に、受光部(図示せず)と接続される。」(段落【0064】)との記載、並びに図2、3、及び7をみると、受光コネクタを、光ファイバトレイに設けられたコネクタ収納部に一時的に保持し、光ファイバトレイの下方に装入された光電変換部の受光部に接続するために、光ファイバトレイにおける縁部と筐体のベース部とで囲まれた空間を形成して、受光コネクタを光ファイバトレイの下方へ挿入できるように構成されているといえるから、光ファイバトレイにおける縁部と筐体のベース部とで囲まれて構成された空間は、受光コネクタが出入りするところ、つまり受光コネクタの挿入口ということができる。してみると、引用発明の「コネクタ収納部」は、「光ファイバトレイにおける縁部の近傍に、」配置されているから、受光コネクタの挿入口を構成する光ファイバトレイにおける縁部の近傍に配置されているということができる。 また、本願発明において、保持手段を、光ファイバートレイにおける中継用コネクタの挿入口の近傍に、配置した点に、格別の技術的意義はない。 したがって、これらのことから、引用発明において、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-29 |
結審通知日 | 2013-06-04 |
審決日 | 2013-06-17 |
出願番号 | 特願2007-265429(P2007-265429) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
P 1 8・ 572- Z (G02B) P 1 8・ 561- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 奥村 政人 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
吉野 公夫 鈴木 秀幹 |
発明の名称 | 光ファイバートレイ |
代理人 | 中嶋 慎一 |
代理人 | 鳥巣 実 |