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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1277328
審判番号 不服2012-19233  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-02 
確定日 2013-08-01 
事件の表示 特願2005-374889「SOIウエーハの製造方法及びSOIウェーハ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日出願公開、特開2006-210899〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年12月27日(優先権主張平成16年12月28日)の出願であって、平成24年4月5日付けの拒絶理由通知に対して、同年6月8日に手続補正書及び意見書が提出されたが、同年6月29日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年6月8日になされた手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。

「単結晶シリコンウェーハと透明絶縁性基板とを接合後、前記単結晶シリコンウェーハを薄膜化することにより前記透明絶縁性基板上にSOI層を形成してSOIウェーハを製造する方法において、少なくとも、
単結晶シリコンウェーハの表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一方を、イオン注入線量が、8×10^(16)/cm^(2)より大きく1×10^(17)/cm^(2)以下となるよう注入し、ウェーハ中にイオン注入層を形成する工程、
該単結晶シリコンウェーハのイオン注入面及び/又は前記透明絶縁性基板の表面を、プラズマ及び/又はオゾンで処理する工程
前記単結晶シリコンウェーハのイオン注入面と前記透明絶縁性基板の表面とを、前記処理をした表面を接合面として室温で密着させて接合する工程、
前記イオン注入層に衝撃を与えて単結晶シリコンウェーハを機械的に剥離し、前記透明絶縁性基板上にSOI層を形成し、SOIウェーハを得る工程、
前記得られたSOIウェーハに、不活性ガス、水素ガス、あるいはこれらの混合ガス雰囲気下でSOI層表面を平坦化する熱処理を施す工程、
を行なうことを特徴とするSOIウエーハの製造方法。」

3.引用刊行物に記載された発明
(3-1)特表2001-511608号公報
(3-1-1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前である平成13年8月14日に日本国内において頒布された特表2001-511608号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図1、4?9及び16?21とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線“ ”は、当審において付与したものである。以下、同じ。)。

「 【0005】
(発明の概要)
本発明によれば、SOI基板を生産するための装置及び方法を含む技術が提供される。詳述すれば、本発明は、プラズマ侵入型イオン注入システムと共に構成されたクラスタツールを使用して基板を処理するための方法、及びそれによって得られるデバイスを含むさまざまな技術を提供する。PIIIを有する本クラスタツール装置は、例えば、半導体集積回路のための絶縁体上のシリコン基板のようないろいろな基板を製造するために使用することができる。更に、本クラスタツール装置は、一般に、集積回路並びに他のデバイスの製造に使用することができる。」
「 【0008】
代替の特定の実施の形態においては、本発明は、新しいチャンバ構成並びに他の特色を使用する絶縁体上のシリコン基板を形成するための技術を提供する。本方法は、例えばシリコンウェーハのようなドナー基板を準備するステップを使用する。ドナー基板はPIIIチャンバのような第1のチャンバ内に配置される。第1のチャンバにおいては、イオン注入またはPIIIによって、ドナー基板の表面を通して該表面の下の選択された深さまで粒子が導入される。選択された深さにおける粒子の濃度が、その選択された深さから上の基板材料が除去されることを限定する。次に、ドナー基板は第2のチャンバ(第1のチャンバと同一であることもできる)に配置される。結合チャンバである第2のチャンバにおいて、ドナー基板はレセプタまたはターゲット基板に結合され、多層にされた基板が形成される。多層にされた基板はCCPチャンバのような第3のチャンバ内に配置され、基板の選択された領域にエネルギが供給されて基板の選択された深さにおいて、制御されたへき開(劈開:クリービング)動作が開始される。次いで、伝播へき開前端を使用してこのへき開動作が遂行され、基板材料の一部分を基板から除去する。好ましい実施の形態においては、結合ステップの前に、ドナー及びレセプタ基板の表面のプラズマクリーニングステップが遂行され、結合プロセスを強化する。若干の実施の形態においては、例えば、製造のコストを節約するためにドナー基板が再使用される。この場合、再使用されるドナー基板は材料として再度使用される。」
「 【0011】
(特定実施例の説明)
本発明は、クラスタツール配列に構成されている高容量PIIIツールを使用して基板を製造する技術を提供する。詳述すれば、本発明は、絶縁体上のシリコン基板を製造することができる単一の(または複数の)ツールを提供する。殆どの製造ステップが単一のツール上で行われるので、基板製造はより費用有効であり、また粒子汚染等も受けにくい。本発明についての特定の詳細は、以下のセクションにおいて説明する。読み易くするために、セクションを (1) PIIIを使用するクラスタツール、(2) 絶縁体上のシリコン基板に類別する。
【0012】
1.PIIIを使用するクラスタツール
図1は、本発明によるPIIIを使用するクラスタツール10の簡易図である。本図は単なる例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。当業者には他の変形、変更、及び代替が明白であろう。クラスタツール10は、円形、または丸くした環状形態に構成されている。即ち、ロボット20を含む転送チャンバ14が中央領域内に配置され、それを複数のチャンバ(少なくとも、番号12、22、24、26、28、及び32によって示されている)が取り巻いている。従ってロボット20は、1つまたは複数のウェーハ16を所望のアプリケーションに依存するチャンバの何れか1つへ挿入し、それから取り出すことができる。ロボット20は、ウェーハ16を保持するウェーハハンドラー18を含んでいる。
【0013】
アプリケーションに依存して、チャンバは特定のプロセスレシピのために選択される。詳述すれば、本クラスタツールは、例えば、SOIウェーハ並びに他の基板及び集積回路を形成するために組合わせて使用することができるプラズマ侵入型注入チャンバ12、制御されたへき開プロセスチャンバ22、プラズマクリーンチャンバ24、及び結合チャンバ26を含むチャンバの新しい配列を使用する。クラスタツール10は、処理中のウェーハをロードし、処理済みのウェーハをアンロードするために使用される入力/出力チャンバ28を更に含む。付加的なチャンバ32は、熱処理、化学蒸着(“CVD”)、物理蒸着(“PVD”)、プラズマまたは反応性イオンエッチング、その他のようなさまざまな他の処理を遂行することができる。勿論、本クラスタツールに使用されるチャンバの正確な構成はアプリケーションに依存する。」
「 【0020】
A.プラズマ侵入型イオン注入(“PIII”)チャンバ
PIIIチャンバは、プラズマ侵入型イオン注入プロセスを行うアセンブリである。単なる例としての図4は、クラスタツール内に統合することができる本発明によるPIIIシステム400の簡易図である。PIIIシステム400は、真空ポンプ(図示してない)に接続されている真空ポート418を有する真空チャンバ414を含んでいる。システム400は、一連の誘電体窓426を含んでおり、これらの窓はOリングによって真空封じされ、また取り外し可能なクランプによって真空チャンバ414の上面422に取付けられている。これらの誘電体窓426の若干には、高周波プラズマ源440が、外側シールド/接地内に配置されているヘリカルまたはパンケーキアンテナ446を有するシステム内に取り外し可能なように取付けられている。各アンテナの冷却は、アンテナを通して冷却流体を通過させることによって達成される。典型的には、より高い電力の場合にだけ冷却が要求される。高周波プラズマ源440が取付けられていない窓426は、チャンバ414内を覗くポートとして使用できる。各プラズマ源440が取り外し可能になっているために、システム内の真空を破らずに組合わされている誘電体窓426を掃除することも、またはプラズマ源440を取り外すこともできる。ガラス窓が使用されているが、石英またはポリエチレンのような他の誘電体材料も窓材料として使用することができる。」
「 【0023】
特定の実施の形態においては、本PIIIチャンバはいろいろな処理技術を遂行する。PIIIプロセスの1例が、図5の簡易断面図500に示されている。この図は単なる例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。当業者には他の変形、変更、及び代替が明白であろう。PIIIチャンバにおいては、材料の薄膜と名付けた材料領域503の厚みを限定する選択された深さまで、シリコンウェーハ501の上面502を通して選択されたエネルギを持った粒子509が注入される。図示のように、粒子は選択された深さ(z_(0))において所望の濃度511を有している。代替として、粒子は、例えばシリコンウェーハを通して分布させることができる。更にまた、粒子はドーピングの目的に使用される特定の濃度を有することができる。」
「 【0025】
B.制御されたへき開プロセス(“CCP”)チャンバ
CCPチャンバは、制御されたへき開プロセスを行うアセンブリである。CCPプロセスは、材料の膜を制御された技法でバルク基板から分離する。即ち、膜を切離す、即ち分離させるために使用されるエネルギは過大でなく、それによって実質的に滑らかな、そして均一に切離された膜が形成される。このプロセスは、材料の膜をバルク基板から切離すためのエネルギ(または応力)を供給できるアセンブリ内で行う。CCPプロセスの詳細に関しては、本明細書が参照しているHenleyらの暫定出願第60/046,276号(代理人ドケット第18419-000100)を参照されたい。
【0026】
特定の実施の形態においては、CCPチャンバは、膜の一部分をバルク基板から切離す、または分離させるために制御されたエネルギを使用する。図6-9は、本発明の実施の形態によるCCPチャンバの簡易図である。これらの図は単なる例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。当業者には他の変形、変更、及び代替が明白であろう。本チャンバの動作を説明するために、へき開エネルギの選択的位置決めを使用して注入された基板600の簡易断面図を例えば図6に示す。注入されたウェーハは、選択された深さ603において材料領域612の制御されたへき開動作を行うための選択的なエネルギの配置、または位置決め、またはターゲッティングのステップ601を受ける。好ましい実施の形態においては、選択されたエネルギ配置607は、基板の選択された深さ603の縁または隅領域付近で行われる。
【0027】
1つの、または複数のインパルスがエネルギ源611を使用して供給される。源の例は、いろいろな源の中でも特に、化学的な源、機械的な源、電気的な源、及び熱シンクまたは源を含む。化学的源は、粒子、流体、ガス、または液体のようなさまざまなものを含むことができる。これらの化学的な源は、材料領域内の応力を増加させるための化学反応を含むこともできる。化学的な源は、フラッド、時間的な変化、空間的に変化、または連続として導入される。他の実施の形態においては、機械的な源が、回転、並進、圧縮、膨張、または超音波エネルギから導出される。機械的な源は、フラッド、時間的な変化、空間的に変化、または連続として導入することができる。さらなる実施の形態においては、電気的な源は、フラッド、時間的な変化、空間的に変化、または連続として導入される印加電圧、または印加電磁場から選択される。更に別の実施の形態においては、熱源またはシンクが、放射、対流、または伝導から選択される。この熱源は、さまざまな熱源の中から特に、光子ビーム、流体ジェット、液体ジェット、ガスジェット、電/磁場、電子ビーム、熱電加熱、炉等から選択することができる。熱シンクは、流体ジェット、液体ジェット、ガスジェット、低温流体、過冷却液体、熱電冷却手段、電/磁場、その他から選択することができる。先行実施の形態と同様に、熱源はフラッド、時間的な変化、空間的に変化、または連続として印加される。更にまた、アプリケーションに依存して上述したどの実施の形態を組合わせることも、または分離することさえもできる。源の型に依存して、制御されたエネルギを基板に向けて望ましく導くように、源はチャンバ内、またはチャンバ外に選択的に配置される。若干の実施の形態においては、エネルギは基板に向かって空間的な技法、並びに絶対技法でも制御される。さらなる実施の形態においては、基板から材料の膜を自由にするのに単一のパルスで十分である。勿論、使用される源の型はアプリケーションに依存する。
【0028】
特定の実施の形態においては、エネルギ源は、本発明の実施の形態によって加圧された(例えば、圧縮された)流体ジェットであることができる。図7は、本発明の実施の形態による制御されたへき開プロセスを遂行するために使用される流体ノズル608からの流体ジェットの簡易断面図である。流体ジェット607(または、液体ジェットまたはガスジェット)は基板の縁領域に衝突して制御されたへき開プロセスを開始する。圧縮された、または加圧された流体源からの流体ジェットは、選択された深さ603におけるある領域に導かれ、例えば機械的な、化学的な、熱的な力を使用して基板からある厚みの材料領域612をへき開する。図示のように、流体ジェットは基板を、選択された深さ603において互いに他から分離した領域609及び領域611を含む2つの領域に分離する。流体ジェットは、基板600から材料612を分離させるための制御されたへき開プロセスを開始させ、維持するように調整することもできる。アプリケーションに依存して、所望の制御されたへき開プロセスを達成するように流体ジェットの方向、位置、及び大きさを調整することができる。流体ジェットは、液体ジェット、またはガスジェット、または液体及びガスの組合わせであることができる。更に、流体ジェットは、基板の周辺の周りに空間的に位置決めされている複数の流体ジェット源であることができる。複数の流体ジェット源は、その厚みの材料を制御された技法で除去するために、選択された技法でパルス化することができる。
【0029】
好ましい実施の形態においては、エネルギ源は、例えば圧縮された静的な流体のような圧縮源であることができる。図8は、本発明の実施の形態による圧縮された流体源607の簡易断面図である。圧縮された流体源607(例えば、加圧液体、加圧ガス)は、基板600の周辺または周囲を取り囲んでいるシールされたチャンバ621に印加される。図示のようにチャンバは、例えばOリング625等によってシールされ、基板の外縁を取り囲んでいるデバイス623によって外囲されている。チャンバは、注入される材料の選択された深さにおいて制御されたへき開プロセスを開始させるために基板600の縁領域に加えられるP_(C)に維持された圧力を有している。基板の外面または面は、例えば1気圧またはそれ以下の周囲圧力であることができる圧力P_(A)に維持されている。より高いチャンバ内の圧力と、周囲圧力との間には圧力差が存在する。この圧力差が、選択された深さ603における注入される領域に力を加える。選択された領域における注入済みの領域は、どの結合された領域をも含む取り囲み領域よりも構造的に弱い。力は、制御されたへき開プロセスが開始されるまで、圧力差を介して加えられる。制御されたへき開プロセスは、その厚みの材料609を基板材料611から分離させ、選択された深さにおいてその厚みの材料609を基板材料611から分割する。更に、圧力P_(C)は、基板611からの“てこの作用”によって材料領域612を分離させる。へき開プロセス中、チャンバ内の圧力は、制御されたへき開プロセスを開始させ、維持して材料612を基板600から分離させるように調整することもできる。アプリケーションに依存して、所望の制御されたへき開プロセスを達成するために圧力の大きさを調整することができる。流体圧は、液体、またはガス、または液体とガスとの組合わせから導出することができる。更に、流体ジェットは基板の周縁の周りに空間的に位置決めされている複数の流体ジェット源であることができる。複数の流体ジェット源は、その厚みの材料を制御された技法で除去するために選択された技法でパルス化することができる。」
「 【0046】
2.絶縁体上のシリコン基板
本発明による絶縁体上のシリコン基板の製造プロセスを要約すれば、以下の通りである。
1. クラスタツール内にドナー基板を準備し、
2. ドナー基板を熱処理炉チャンバ内に配置し、
3. ドナー基板の表面を覆う酸化物層を形成させ、
4. ドナー基板をPIIIチャンバ内へ移動させ、
5. PIIIチャンバにおける膜の厚みを限定するために、選択された深さまでドナー基板内に粒子を導入し、
6. クラスタツール内にレセプタ基板を準備し、
7. レセプタ基板を熱処理炉チャンバ内に配置し、
8. レセプタ基板の表面を覆う酸化物層を形成させ、
9. 酸化物層を有するドナー基板及びレセプタ基板をクリーニングチャンバ内に配置し、
10. 基板のプラズマクリーニングを一緒に、または別個に遂行し、
11. 板を結合チャンバ内に配置し、
12. 注入済みの面をレセプタ基板に接合させることによってドナー基板をレセプタ基板に結合し、
13. 基板をCCPチャンバ内に配置し、
14. へき開動作を開始させることなく、選択された深さにおける注入済みの領域のグローバル応力(または、エネルギ)を増加させ(オプション)、
15. 結合された基板の選択された領域に応力(または、エネルギ)を与え、その選択された深さにおいて制御されたへき開動作を開始させ、
16. 結合された基板に付加的なエネルギを与えて制御されたへき開動作を持続させ、その厚みのシリコン膜をシリコンウェーハから自由にし、
17. 制御されたへき開プロセスにより分離された材料の膜を除去し、ドナー基板及びレセプタ基板からの膜を含む多層にされた基板を残し、
18. 多層にされた基板を最終結合チャンバ内に配置し、
19. 結合を完了させ、
20. もし必要ならば、多層にされた基板上のその厚みの膜の表面を研磨し、
そして
21. その厚みの膜上にエピタキシャル層を形成する(オプション)。
上記ステップのシーケンスは、多層にされた基板構造の1つまたは複数の選択された領域に加えられるエネルギを使用して制御されたへき開動作を開始させ、本クラスタツール装置による1つまたは複数のへき開前端を形成させるステップを提供する。この開始ステップは、基板に加えられるエネルギの量を制限することによって、へき開プロセスを制御された手法で開始させる。基板の選択された領域に付加的なエネルギを加えてへき開動作を持続させ、へき開動作のさらなる伝播を発生させることも、または開始ステップからのエネルギを使用してへき開動作のさらなる伝播を発生させることもできる。ステップのこのシーケンスは単なる例示であり、特許請求の範囲を限定するものではない。上記ステップのシーケンスに関するさらなる詳細を、図面を参照して以下に説明する。
【0047】
図16-21は、本発明による絶縁体上のシリコン基板のための製造プロセスを受けている基板の簡易断面図である。図16に示すように、プロセスはシリコンウェーハ2100のような半導体基板を準備することから開始される。基板、またはドナーは除去される材料領域2101を含み、この領域は材料から導出される薄い比較的均一な膜である。シリコンウェーハは、上面2103、下面2105、及び厚み2107を含む。材料領域は、シリコンウェーハの厚み2107内に厚み(z_(0))を含んでいる。オプションとして、基板の上面を誘電体層2102(例えば、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン)で覆う。このプロセスは、本クラスタツール装置において絶縁体上のシリコンウェーハを製造するための以下のステップのシーケンスを使用して、材料領域2101を除去するための新しい技術を提供する。
【0048】
PIIIチャンバにおいて、シリコンウェーハの上面を通して選択された深さまで選択されたエネルギを持った粒子2109を注入し、材料の薄膜と名付けた材料領域の厚みを限定する。図示のように、粒子は選択された深さ(z_(0))において所望の濃度2111を有している。エネルギを持った粒子をシリコンウェーハ内に注入するために、いろいろな技術を使用することができる。これらの技術は、例えばApplied Materials、Eaton Corporation、Varian、その他の会社が製造しているビームラインイオン注入装置を使用するイオン注入を含む。好ましくは、注入は、PIIIチャンバにおけるプラズマ侵入型イオン注入技術を使用して行う。勿論、使用される技術はアプリケーションに依存する。
【0049】
アプリケーションに依存して、材料領域の損傷の可能性を減少させるために、一般的には小質量の粒子が選択される。即ち、小質量の粒子は、選択された深さまで基板材料を通って容易に走行し、粒子が横切る材料領域を実質的に損傷させることがない。例えば、小質量の粒子(即ち、エネルギを持った粒子)は、殆どどのような帯電した(例えば、正または負)、及び/または中性の原子または分子、または電子等であることができる。特定の実施の形態においては、粒子は、水素及びその同位元素のイオン、ヘリウム及びその同位元素及びネオンのような希ガスイオンを含む中性の、及び/または帯電した粒子であることができる。粒子は、ガス(例えば、水素ガス、水蒸気、メタン、及び他の水素化合物)のような化合物から導出した粒子、及び他の軽い原子質量粒子であることもできる。代替として、粒子は、上述した粒子、及び/またはイオン、及び/または分子種、及び/または原子種のどのような組合わせであることもできる。」
「 【0051】
プロセスは、図17に示すように、注入済みのシリコンウェーハを、加工片即ちターゲットウェーハに接合するステップを使用する。加工片は、誘電体材料(例えば、石英、ガラス、窒化シリコン、二酸化シリコン)、導電性材料(シリコン、ポリシリコン、III/V族材料、金属)、及びプラスチック(例えば、ポリイミドをベースとする材料)で作られているようなさまざまな他の型の基板であることもできる。しかしながら、この例では加工片はシリコンウェーハである。
【0052】
特定の実施の形態においては、シリコンウェーハは、結合チャンバにおいて低温熱ステップを使用して互いに接合、または融合させる。低温熱処理は、一般的に注入された粒子が過大な応力を材料領域に加えないようにする(過大な応力が加わるとへき開動作は制御できなくなる)。1つの面においては、低温結合プロセスは、自己結合プロセスによって遂行される。詳述すれば、一方のウェーハが剥がされてそれから酸化が除かれる(または、一方のウェーハは酸化されない)。ウェーハ表面上にO-H結合を形成させるために、クリーニング溶液でウェーハの表面を処理する。ウェーハを清潔にするために使用される溶液の例は、H_(2)O_(2)-H_(2)SO_(4)の混合体である。ドライヤーがウェーハ表面を乾燥させ、残留液体または粒子をウェーハ表面から除去する。清潔にしたウェーハの面を酸化したウェーハの面に対して配置することによって、自己結合が発生する。
【0053】
好ましくは、自己結合プロセスは、プラズマクリーニングチャンバにおけるプラズマクリーニングにより、結合されるウェーハ表面の一方を活性化することによって発生させる。詳述すれば、プラズマクリーニングは、アルゴン、アンモニア、ネオン、水蒸気、及び酸素のようなガスから導出したプラズマを使用してウェーハの表面を活性化する。活性化されたウェーハ表面2203は、酸化物のコート2205をその上に有している他方のウェーハの面に対して配置される。これらのウェーハは、露出したウェーハ面を有するサンドイッチされた構造になる。一方のウェーハを他方に自己結合させるために、選択された量の力がウェーハの各露出面に加えられる。」
「 【0056】
ウェーハを図18に示すようにサンドイッチ構造2300に結合した後に、本方法は、基板材料を除去して絶縁体2305及びターゲットシリコンウェーハ2201の上を覆う基板材料の薄膜2101を得るための制御されたへき開動作を含む。制御されたへき開は、CCPチャンバにおいてエネルギ源によってドナー及び/またはターゲットウェーハ上に選択的にエネルギ2301、2303を加える、または位置決めする、またはターゲットにすることによって行われる。例えば、1つまたは複数のエネルギインパルスを使用してへき開動作を開始させることができる。1つまたは複数のインパルスは、いろいろなエネルギ源の中でも特に、機械的源、化学的源、熱シンクまたは源、及び電気的源を含むエネルギ源を使用して供給される。」
「 【0063】
これもまた図19に示すように、ウェーハを結合した後の絶縁体上のシリコンはターゲット基板を有し、その基板をシリコン材料の薄膜が覆っており、またターゲット基板とシリコン薄膜との間にはサンドイッチされた酸化物層を有している。シリコン材料の薄膜の切離された表面は粗く(2404)、仕上げが必要であることが多い。仕上げは、研削及び/または研磨技術の組合わせを使用して行われる。若干の実施の形態においては、切離された表面を覆う例えば研磨材料を回転させ、該表面から不完全性または表面粗さを除去するような技術を使用して、切離された表面を研削するステップを遂行する。Discoと呼ばれる会社製の“バックグラインダ”のような機械をこの技術に使用することができる。」
「 【0067】
以上にシリコンウェーハについて説明したが、他の基板も使用することができる。例えば、基板は殆どどのような単結晶質、多結晶質であることも、または非晶質型基板であることさえできる。更に、基板は砒化ガリウム、窒化ガリウム(GaN)、その他のようなIII/V属材料製であることができる。多層にされた基板を、本発明により使用することもできる。多層にされた基板は、絶縁体上のシリコン基板、半導体基板上のいろいろなサンドイッチされた層、及び他の多くの型の基板を含む。更に、上述した実施の形態は、概ね、CCPチャンバ内において制御されたへき開動作を開始させるためにエネルギのパルスを供給するものとしている。このパルスは、制御されたへき開動作を開始させるために基板の選択された領域を横切って走査されるエネルギによって置換することができる。エネルギは、制御されたへき開動作を持続、または維持するために基板の選択された領域を横切って走査させることもできる。当業者ならば、本発明によって使用することができるさまざまな代替、変更、及び変化を容易に理解することができよう。」

(3-1-2)引用刊行物1における段落【0008】の「本方法は、例えばシリコンウェーハのようなドナー基板を準備するステップを使用する。ドナー基板はPIIIチャンバのような第1のチャンバ内に配置される。第1のチャンバにおいては、イオン注入またはPIIIによって、ドナー基板の表面を通して該表面の下の選択された深さまで粒子が導入される。」、段落【0049】の「粒子は、水素及びその同位元素のイオン、ヘリウム及びその同位元素及びネオンのような希ガスイオンを含む中性の、及び/または帯電した粒子であることができる。」及び段落【0067】の「以上にシリコンウェーハについて説明したが、他の基板も使用することができる。例えば、基板は殆どどのような単結晶質、多結晶質であることも、または非晶質型基板であることさえできる。」という記載から、引用刊行物1には、「単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の表面を通して該表面の下の選択された深さまで、水素、希ガスイオンからなる粒子をイオン注入によって導入する」ことが記載されているものと認められる。

(3-1-3)引用刊行物1における段落【0008】の「結合チャンバである第2のチャンバにおいて、ドナー基板はレセプタまたはターゲット基板に結合され、多層にされた基板が形成される。」、段落【0046】の「9. 酸化物層を有するドナー基板及びレセプタ基板をクリーニングチャンバ内に配置し、 10. 基板のプラズマクリーニングを一緒に、または別個に遂行し、 11. 板を結合チャンバ内に配置し、 12. 注入済みの面をレセプタ基板に接合させることによってドナー基板をレセプタ基板に結合し、」、段落【0051】の「プロセスは、図17に示すように、注入済みのシリコンウェーハを、加工片即ちターゲットウェーハに接合するステップを使用する。加工片は、誘電体材料(例えば、石英、ガラス、窒化シリコン、二酸化シリコン)・・・で作られているようなさまざまな他の型の基板であることもできる。」、段落【0052】の「シリコンウェーハは、結合チャンバにおいて低温熱ステップを使用して互いに接合、または融合させる。・・・1つの面においては、低温結合プロセスは、自己結合プロセスによって遂行される。」、段落【0053】の「自己結合プロセスは、プラズマクリーニングチャンバにおけるプラズマクリーニングにより、結合されるウェーハ表面の一方を活性化することによって発生させる。・・・活性化されたウェーハ表面2203は、酸化物のコート2205をその上に有している他方のウェーハの面に対して配置される。これらのウェーハは、露出したウェーハ面を有するサンドイッチされた構造になる。一方のウェーハを他方に自己結合させるために、選択された量の力がウェーハの各露出面に加えられる。」及び段落【0067】の「以上にシリコンウェーハについて説明したが、他の基板も使用することができる。例えば、基板は殆どどのような単結晶質、多結晶質であることも、または非晶質型基板であることさえできる。」という記載から、引用刊行物1には、「単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の注入済みの面及び石英からなるレセプタ基板の表面を、プラズマクリーニングする」こと、及び「単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の注入済みの面を石英からなるレセプタ基板に接合させる」ことが記載されているものと認められる。

(3-1-4)引用刊行物1における段落【0026】の「CCPチャンバは、膜の一部分をバルク基板から切離す、または分離させるために制御されたエネルギを使用する。」、段落【0027】の「1つの、または複数のインパルスがエネルギ源611を使用して供給される。源の例は、いろいろな源の中でも特に、化学的な源、機械的な源、電気的な源、及び熱シンクまたは源を含む。・・・他の実施の形態においては、機械的な源が、回転、並進、圧縮、膨張、または超音波エネルギから導出される。」、段落【0028】の「エネルギ源は、本発明の実施の形態によって加圧された(例えば、圧縮された)流体ジェットであることができる。」、段落【0029】の「好ましい実施の形態においては、エネルギ源は、例えば圧縮された静的な流体のような圧縮源であることができる。・・・制御されたへき開プロセスは、その厚みの材料609を基板材料611から分離させ、選択された深さにおいてその厚みの材料609を基板材料611から分割する。」、段落【0046】の「14. へき開動作を開始させることなく、選択された深さにおける注入済みの領域のグローバル応力(または、エネルギ)を増加させ(オプション)、 15. 結合された基板の選択された領域に応力(または、エネルギ)を与え、その選択された深さにおいて制御されたへき開動作を開始させ、 16. 結合された基板に付加的なエネルギを与えて制御されたへき開動作を持続させ、その厚みのシリコン膜をシリコンウェーハから自由にし、 17. 制御されたへき開プロセスにより分離された材料の膜を除去し、ドナー基板及びレセプタ基板からの膜を含む多層にされた基板を残し、」、段落【0056】の「ウェーハを図18に示すようにサンドイッチ構造2300に結合した後に、本方法は、基板材料を除去して絶縁体2305及びターゲットシリコンウェーハ2201の上を覆う基板材料の薄膜2101を得るための制御されたへき開動作を含む。制御されたへき開は、CCPチャンバにおいてエネルギ源によってドナー及び/またはターゲットウェーハ上に選択的にエネルギ2301、2303を加える、または位置決めする、またはターゲットにすることによって行われる。」及び段落【0067】の「以上にシリコンウェーハについて説明したが、他の基板も使用することができる。例えば、基板は殆どどのような単結晶質、多結晶質であることも、または非晶質型基板であることさえできる。」という記載から、引用刊行物1には、「機械的なエネルギ源を使用して、制御されたへき開動作により、選択された深さにおいて、単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板のその厚みの材料を除去して、石英からなるレセプタ基板の上を覆う単結晶シリコンの薄膜を得る」ことが記載されているものと認められる。

(3-1-5)そうすると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。

「単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の表面を通して該表面の下の選択された深さまで、水素、希ガスイオンからなる粒子をイオン注入によって導入し、
前記単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の注入済みの面及び石英からなるレセプタ基板の表面を、プラズマクリーニングし、
前記単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の注入済みの面を、前記石英からなるレセプタ基板に接合させ、
機械的なエネルギ源を使用して、制御されたへき開動作により、前記選択された深さにおいて、前記単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板のその厚みの材料を除去して、前記石英からなるレセプタ基板の上を覆う単結晶シリコンの薄膜を得る
SOI基板を生産するための方法。」

(3-2)特開2000-36583号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前である平成12年2月2日に日本国内において頒布された特開2000-36583号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図1とともに、以下の事項が記載されている。

「【0096】本発明において、低欠陥層12内部に、イオン注入の投影飛程R_(p )(注入深さ)があるようイオン注入を行なうことが、均一な注入深さを得るという点でも好ましいものである。SOI層16の厚さは、一般的には、数nm?5μmである。
【0097】イオン注入により形成される分離層14の層厚は、一般的には0.5ミクロン以下、特に第2の基板15上に移設される薄膜12を均質な厚さに形成するためにも数千Å以下であることがより好ましい。分離層14は、その一例としてイオン注入の投影飛程を含むものである。
【0098】注入線量は、1.0×10^(15)/cm^(2 )?1.0×10^(18)/cm^(2 )の間で、より好ましくは1.0×10^(16)/cm^(2 )?2.0×10^(17)/cm^(2 )行なうことが可能である。」
「【0266】(実施例4)CZ法により作製した第1の単結晶Si基板(8インチ)を用意し、以下に示す条件下で熱処理を行い表面層の高品質化を行った。
【0267】H_(2 )ガス100%で、1100℃、4時間水素アニールを行った。
【0268】さらに、基板表面に熱酸化により200nmのSiO_(2 )層を形成した。表面のSiO_(2 )層を通してH^(+ )を40keVで5×10^(16)cm^(-2)イオンを注入した。
【0269】各基板のSiO_(2 )層表面と別に用意した溶融石英基板(第2の基板)の表面をプラズマ処理し、水洗した後、重ね合わせ、接触させた。600℃でアニールしたところ、イオン注入の投影飛程付近で2枚に分離された。イオン注入層は多孔質状になっているため、分離した表面は荒れている。第2の基板側の表面は、49%弗酸と30%過酸化水素水と水との混合液で撹はんしながら選択エッチングする。単結晶Siはエッチングされずに残り、単結晶Siをエッチ・ストップの材料として、イオン注入層は選択エッチングされ、完全に除去された。非多孔質Si単結晶の該エッチング液に対するエッチング速度は、極めて低く、そのエッチング量(数十オングストローム程度)は実用上無視できる膜厚減少である。
【0270】イオン注入層は、この選択エッチングの他に非選択エッチングや研磨によっても除去できる。研磨の場合、水素中での熱処理による平坦化は行なわなくてもよい。ただし、研磨ダメージが残る場合は熱処理や表面層除去した方が好ましい。
【0271】すなわち、透明な石英基板上に0.2μmの厚みを持った単結晶Si層が形成できた。形成された単結晶Si層の膜厚を面内全面について100点を測定したところ、膜厚の均一性は201nm±6nmであった。単結晶Si層表面のCOPの数を測定したところ、およそ80個/wであった。
【0272】さらに水素中で1100℃で熱処理を1時間施した。表面粗さを原子間力顕微鏡で評価したところ、50μm角の領域での平均2乗粗さ(Rrms)は、およそ0.2nmで通常市販されているSiウエハと同等であった。
【0273】イオン注入層の除去を行なわず、そのまま水素中で熱処理してもSiのマイグレーションにより微小孔や欠陥の排除と平坦化が同時に起こり結果としてイオン注入層が消滅する。」

4.対比
(4-1)刊行物発明の「単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板」は、本願発明の「単結晶シリコンウェーハ」に相当するから、刊行物発明の「単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の表面を通して該表面の下の選択された深さまで、水素、希ガスイオンからなる粒子をイオン注入によって導入」することと、本願発明の「単結晶シリコンウェーハの表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一方を、イオン注入線量が、8×10^(16)/cm^(2)より大きく1×10^(17)/cm^(2)以下となるよう注入し、ウェーハ中にイオン注入層を形成する工程」とは、「単結晶シリコンウェーハの表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一方を注入し、ウェーハ中にイオン注入層を形成する工程」という点で共通する。

(4-2)刊行物発明の「石英からなるレセプタ基板」は、本願発明の「透明絶縁性基板」に相当し、刊行物発明の「プラズマクリーニング」することは、本願発明の「プラズマ」「で処理する」ことに相当するから、刊行物発明の「前記単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の注入済みの面及び石英からなるレセプタ基板の表面を、プラズマクリーニング」することは、本願発明の「該単結晶シリコンウェーハのイオン注入面及び/又は前記透明絶縁性基板の表面を、プラズマ」「で処理する工程」に相当する。

(4-3)引用刊行物1における段落【0052】の「シリコンウェーハは、結合チャンバにおいて低温熱ステップを使用して互いに接合、または融合させる。低温熱処理は、一般的に注入された粒子が過大な応力を材料領域に加えないようにする(過大な応力が加わるとへき開動作は制御できなくなる)。」及び段落【0053】の「活性化されたウェーハ表面2203は、酸化物のコート2205をその上に有している他方のウェーハの面に対して配置される。これらのウェーハは、露出したウェーハ面を有するサンドイッチされた構造になる。一方のウェーハを他方に自己結合させるために、選択された量の力がウェーハの各露出面に加えられる。」という記載から、刊行物発明の「前記単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の注入済みの面を、前記石英からなるレセプタ基板に接合させ」る処理は、特に熱を加えない状態、すなわち、室温で行われていることが明らかであり、刊行物発明の「前記単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板の注入済みの面を、前記石英からなるレセプタ基板に接合させ」ることは、本願発明の「前記単結晶シリコンウェーハのイオン注入面と前記透明絶縁性基板の表面とを、前記処理をした表面を接合面として室温で密着させて接合する工程」に相当する。

(4-4)刊行物発明の「機械的なエネルギ源を使用して、制御されたへき開動作により、」「前記単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板のその厚みの材料を除去」することは、本願発明の「前記イオン注入層に衝撃を与えて単結晶シリコンウェーハを機械的に剥離」に相当し、刊行物発明の「単結晶シリコンの薄膜」は、本願発明の「SOI層」に相当するから、刊行物発明の「機械的なエネルギ源を使用して、制御されたへき開動作により、前記選択された深さにおいて、前記単結晶シリコンウェーハからなるドナー基板のその厚みの材料を除去して、前記石英からなるレセプタ基板の上を覆う単結晶シリコンの薄膜を得る」ことは、本願発明の「前記イオン注入層に衝撃を与えて単結晶シリコンウェーハを機械的に剥離し、前記透明絶縁性基板上にSOI層を形成し、SOIウェーハを得る工程、
」に相当する。

(4-5)刊行物発明の「SOI基板を生産するための方法」は、本願発明の「SOIウエーハの製造方法」に相当する。

(4-6)そうすると、本願発明と刊行物発明とは、
「単結晶シリコンウェーハと透明絶縁性基板とを接合後、前記単結晶シリコンウェーハを薄膜化することにより前記透明絶縁性基板上にSOI層を形成してSOIウェーハを製造する方法において、少なくとも、
単結晶シリコンウェーハの表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一方を注入し、ウェーハ中にイオン注入層を形成する工程、
該単結晶シリコンウェーハのイオン注入面及び/又は前記透明絶縁性基板の表面を、プラズマで処理する工程
前記単結晶シリコンウェーハのイオン注入面と前記透明絶縁性基板の表面とを、前記処理をした表面を接合面として室温で密着させて接合する工程、
前記イオン注入層に衝撃を与えて単結晶シリコンウェーハを機械的に剥離し、前記透明絶縁性基板上にSOI層を形成し、SOIウェーハを得る工程、
を行なうことを特徴とするSOIウエーハの製造方法。」
である点で一致し、次の2点で相違する。

(相違点1)本願発明では、「単結晶シリコンウェーハの表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一方を、イオン注入線量が、8×10^(16)/cm^(2)より大きく1×10^(17)/cm^(2)以下となるよう注入」するのに対して、刊行物発明では、「水素、希ガスイオンからなる粒子をイオン注入によって導入」する際の、イオン注入量について、特定がなされていない点。
(相違点2)本願発明では、「前記得られたSOIウェーハに、不活性ガス、水素ガス、あるいはこれらの混合ガス雰囲気下でSOI層表面を平坦化する熱処理を施す工程」を有するのに対し、刊行物発明では、「前記石英からなるレセプタ基板の上を覆う単結晶シリコンの薄膜を得」た後に,そのような工程が特定されていない点。

5.判断
以下、上記相違点について、検討する。
(5-1)相違点1について
引用刊行物1の段落【0023】に「PIIIチャンバにおいては、材料の薄膜と名付けた材料領域503の厚みを限定する選択された深さまで、シリコンウェーハ501の上面502を通して選択されたエネルギを持った粒子509が注入される。・・・粒子はドーピングの目的に使用される特定の濃度を有することができる。」と記載されているように、刊行物発明において、「水素、希ガスイオンからなる粒子をイオン注入によって導入」する際に、イオン注入量をどのような値に設定するかは、当業者が必要に応じて、適宜設定し得る設計的事項である。そして、刊行物発明のような、いわゆる「スマートカット法」によるSOIウェーハの製造方法において、イオン注入量を「10^(16)?10^(17)/cm^(2)」程度とすることは、引用刊行物2及び以下の周知例1、2にも記載されているように、通常行われることである。

(周知例1)特開2004-296487号公報には、図1?10とともに、以下の事項が記載されている。
「【0023】
[電気光学装置の製造方法]
次に、本発明の電気光学装置の製造方法の一例として、図1,図2に示した液晶パネルを製造する方法を、図3?図10を参照して説明する。
まず、図3(a)に示すように、単結晶シリコン基板206の表面に、熱酸化により酸化膜206bを形成する。なお、単結晶シリコン基板206には、予め水素イオン(H^(+))が打ち込まれており、水素イオンが注入された部分(図3(a)の点線で示す位置)において表層部の半導体が基板から剥離し易くなっている。水素イオンは例えば加速電圧100keV、ドーズ量10×10^(16)/cm^(2)にて注入されている。」
「【0027】
一方、図4(a)に示すように、TFTアレイ基板10の基板本体となる石英基板10Aを用意し、この基板10Aの表面に、Ti、Cr、W、Ta、Mo及びPbのうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド等を、スパッタリング法、CVD法、電子ビーム加熱蒸着法などにより、例えば150?200nmの膜厚に堆積することにより、遮光層11を形成する。
次に、基板本体10Aの表面上の全面にフォトレジストを形成し、最終的に形成する第1遮光膜11aのパターンを有するフォトマスクを用いてフォトレジストを露光する。その後、フォトレジストを現像することにより、図4(b)に示すように、最終的に形成する第1遮光膜11aのパターンを有するフォトレジスト301を形成する。」
「【0030】
次に、図5(a)に示すように、単結晶シリコン基板206の酸化膜206bを介して、基板本体10Aと単結晶シリコン基板206とを貼り合わせる。この貼り合わせ工程は、例えば300℃で2時間熱処理することにより2枚の基板10A,206を直接貼り合わせる方法を採用することができる。なお、図5(a)では、図4(e)の基板本体10Aの一部を取り出して異なる尺度で示している。
【0031】
なお、貼り合わせ強度をさらに高めるためには、熱処理温度を上げて450℃程度にする必要があるが、石英などからなる基板本体10Aの熱膨張係数と単結晶シリコン基板206の熱膨張係数とには大きな差があるため、このまま加熱すると単結晶シリコン層にクラックなどの欠陥が発生し、製造されるTFTアレイ基板10の品質が劣化する恐れがある。クラックなどの欠陥の発生を抑制するためには、一度300℃にて貼り合わせのための熱処理を行った単結晶シリコン基板206を、ウエットエッチングまたはCMPによって100?150μm程度まで薄くし、その後、さらに高温の熱処理を行うことが望ましい。例えば、80℃のKOH水溶液を用いて単結晶シリコン基板206の厚さが150μmとなるようにエッチングし、その後、基板本体10Aとの貼り合わせを行い、さらに450℃にて再び熱処理することにより貼り合わせ強度を高めることが望ましい。
【0032】
次に、図5(b)に示すように、貼り合わせた単結晶シリコン基板206の貼り合わせ面側の酸化膜206bと、埋め込み絶縁層207,208及びこれらの絶縁層を介して積層された半導体膜206c、206dとを残したまま、単結晶シリコン基板206を基板本体10Aから剥離(分離)するための熱処理を行なう。
この基板の剥離現象は、単結晶シリコン基板206中に導入された水素イオンによって、単結晶シリコン基板206の表面近傍のある層でシリコンの結合が分断されるために生じるものである。ここでの熱処理は、例えば、貼り合わせた2枚の基板を毎分20℃の昇温速度にて600℃まで加熱することにより行なうことができる。この熱処理によって、貼り合わせた単結晶シリコン基板206が基板本体10Aと分離し、基板本体10Aの表面上には埋め込み絶縁層206cにより絶縁された単結晶シリコンからなる半導体膜206c、206dの積層膜が形成される。」

(周知例2)特開2000-183316号公報には、図1とともに、以下の事項が記載されている。
「【0021】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)以下、本発明の第1の実施形態について図1を参照して説明する。本実施形態における半導体基板1は、同図(h)に示すように、支持基板としての高融点金属板2上に絶縁膜としての酸化シリコン膜3および半導体層としてのシリコン単結晶薄膜4を積層するSOI(Silicon On Insulator)構造とされている。この構成において、支持基板としての高融点金属板2は、タンタルあるいはモリブデンなどを用いたもので、外周面にはこれらを熱酸化して得られる高融点金属酸化膜5が形成されている。」
「【0026】次に、上記した半導体基板1の製造方法について説明する。まず、シリコン単結晶薄膜4を形成するために用いるシリコン単結晶基板6(同図(a)参照)の表面にシリコン酸化膜3を形成する。シリコン酸化膜3は熱酸化法あるいはCVD法などによって形成する(同図(b)参照)。次に、イオン注入層形成工程では、シリコン酸化膜3を形成した側から水素イオンをイオン注入法により例えば1×10^(17) atoms/cm^(2)程度のドーズ量で注入し、イオン注入層7を所定深さの領域に形成する(同図(c)参照)。水素イオンの注入深さは、シリコン単結晶薄膜4の形成に必要な膜厚が得られるように設定する。
【0027】次に、支持基板としての高融点金属板2(同図(d)参照)を酸素雰囲気中あるいは水蒸気雰囲気中で熱処理し、表面を酸化させて所定膜厚の高融点金属酸化膜5を形成する(同図(e)参照)。この高融点金属酸化膜5は、CVD法やスパッタリング法などで形成することもできる。また、高融点金属板2と同種の高融点金属酸化膜5の形成に代えて、全く別の酸化膜たとえばシリコン酸化膜や窒化シリコン膜,アルミニウム酸化膜あるいはモリブデン酸化膜などを形成するようにしても良い。
【0028】続いて、イオン注入層7を形成したシリコン単結晶基板6と高融点金属板2とを、それぞれ洗浄処理を含めた所定の前処理を行なって貼り合わせ面を清浄な状態にしておき、この後、両者を貼り合わせて一体化させる(同図(f)参照)。この状態では、まだ両基板が確実に密着した状態とはなっていないが、熱処理を行なうことにより貼り合わせた界面部分の水分を除去して密着させることができる。そして、この熱処理を行なうことにより、前述したイオン注入層7部分でイオン注入されている高濃度の水素イオンの作用によりこの領域内で剥離現象が生じ、シリコン単結晶薄膜4に対応する部分を高融点金属板2側に残して分離するようになる(同図(g)参照)。」

そうすると、刊行物発明において、「水素、希ガスイオンからなる粒子をイオン注入によって導入」する際のイオン注入量を、いわゆる「スマートカット法」によるSOIウェーハの製造方法において、通常採用しうる値である「10^(16)?10^(17)/cm^(2)」程度とすることにより、本願発明のように、「単結晶シリコンウェーハの表面から水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一方を、イオン注入線量が、8×10^(16)/cm^(2)より大きく1×10^(17)/cm^(2)以下となるよう注入」する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点1は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。

(5-2)相違点2について
一般に、いわゆるスマートカット法によるSOIウェーハの製造方法において、分離したウェーハの表面が荒れており、平坦化が必要なことは、例えば、引用刊行物1の段落【0063】にも記載されているように、当業者における技術常識であるところ、平坦化の手法としては、引用刊行物1の段落【0063】に記載されている研削、研磨の他に、水素中の熱処理を用いても、優れた平坦化が行えることは、例えば、引用刊行物2の段落【0269】にも記載されているように、当業者において、一般に知られていたことである。
したがって、刊行物発明に接した当業者にとって、分離後のウェーハの表面を平坦化するに際し、引用刊行物2に記載された技術を適用して、「前記石英からなるレセプタ基板の上を覆う単結晶シリコンの薄膜を得」た後に,該「単結晶シリコンの薄膜」を水素中で熱処理して、その表面を平坦化することにより、本願発明のように、「前記得られたSOIウェーハに、不活性ガス、水素ガス、あるいはこれらの混合ガス雰囲気下でSOI層表面を平坦化する熱処理を施す工程」を有する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、上記相違点2は、当業者が容易になし得た範囲に含まれる程度のものである。

(5-3)まとめ
以上検討したとおり、本願発明と刊行物発明との相違点は、引用刊行物2に記載された技術を勘案することにより、当業者が容易に想到し得た範囲に含まれる程度のものにすぎず、本願発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-29 
結審通知日 2013-06-04 
審決日 2013-06-17 
出願番号 特願2005-374889(P2005-374889)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 俊哉  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 小野田 誠
近藤 幸浩
発明の名称 SOIウエーハの製造方法及びSOIウェーハ  
代理人 好宮 幹夫  
代理人 好宮 幹夫  
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