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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1277331
審判番号 不服2012-20587  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-19 
確定日 2013-08-01 
事件の表示 特願2008- 85327「化粧板」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日出願公開、特開2009-234142〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年3月28日の出願であって、平成24年2月22日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月20日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成24年7月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年10月19日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に同日付けで手続補正がなされ、当審における平成24年12月13日付けの審尋に対し、平成25年2月5日に回答書が提出されたものである。

2.平成24年10月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年10月19日付けの手続補正を却下する。
[理由]
2-1.本件補正
平成24年10月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、補正前の請求項1に記載された「合成樹脂製基材層」を「透明な二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる合成樹脂製基材層」とする補正、補正前の請求項1の「防湿化粧シートが、」の記載の後に「前記合成樹脂製基材層が表出するように」という記載を挿入する補正、及び補正前の請求項2を削除する補正を含んでいる。
上記の請求項1における補正は、「合成樹脂製基材層」の材料について及び「防湿化粧シート」の積層の態様について、さらに限定して特定するものと認められ、かつ、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められる。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正による補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「透明な二軸延伸ポリエチレンテレタレートフィルムからなる合成樹脂製基材層の一方の面側に透明蒸着層が積層された蒸着シートの蒸着層側の面に、紙層の一方の面に印刷層が形成されてなる印刷紙が、前記印刷層を前記蒸着層側に位置するようにして接着剤層を介して積層されている防湿化粧シートが、前記合成樹脂製基材層が表出するように木質系基材の一方の面に前記紙層を前記木質系基材側に位置するようにして木質系基材用接着剤層を介して積層されており、該木質系基材用接着剤層が着色されていることを特徴とする化粧板。」

2-3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された特開2006-123383号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【請求項1】
紙基材の上面に、絵柄模様層と透明酸化物蒸着薄膜及び/または透明無機物蒸着薄膜フィルムからなる防湿層とを、少なくともこの順に設けてなることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記化粧シートの最表面に透明保護層を設けてなることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。
【請求項3】
前記透明保護層が、グロス調及び/又はマット調を有する層であることを特徴とする請求項2記載の化粧シート。」
(イ)「【0001】
本発明は、室内扉、キッチン扉、収納扉、襖などの建具に用いられる化粧シートに関する。より詳しくは、化粧シートを貼り合わせた化粧板基材などが、湿度変化や温度変化等によって発生する反りを防止する為の、防湿機能等を有した化粧シートに関する。」
(ウ)「【0009】
請求項1記載の発明により、透明酸化物蒸着薄膜及び/または透明無機物蒸着薄膜フィルムからなる防湿層により、絵柄の意匠を妨げることなく表面耐磨耗性を発揮でき、かつ紙層上に設けられるので、耐油性を有するものとなる。
【0010】
また、請求項2記載の発明により、より表面の耐候性、耐磨耗性のあるものとすることができる。」
(エ)「【0012】
・・・(中略)・・・図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。紙基材1に絵柄模様層2が設けられ、接着剤層3を介して透明な無機酸化物蒸着薄膜フィルム4が設けられ、表面にグロスマット処理が施された透明保護層5が設けられてなる。」
(オ)「【0016】
本発明における透明な無機酸化物蒸着薄膜フィルム4としては、透明熱可塑性樹脂に透明酸化膜及び/または透明無機薄膜を蒸着してなるフィルムが適用可能である。
透明熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、セロファン、などが適用可能であるが、蒸着加工性、表面硬度の観点から、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。」
(カ)「【0018】
紙基材として30g/m^(2)の紙間強化紙を用い、絵柄層として硝化綿系インキをグラビア印刷にて木目柄印刷を行った。一方、透明酸化物蒸着薄膜及び/または透明無機物蒸着薄膜フィルムからなる防湿層として酸化ケイ素を真空蒸着法により厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)フィルムに蒸着したものを用いた。前記紙の印刷面と前記フィルムの蒸着面とを、ポリエステル系ドライラミ接着剤3g/m^(2)によりドライラミして接着した。さらに防湿層側の表面に表面保護層としてアクリルポリオールからなるウレタン系樹脂を乾燥後の塗布厚が7g/m^(2)となるように塗布、乾燥し、グロスマットの印刷を施し、図1に示す構成の化粧シートを得た。」

(キ)図1に、絵柄模様層2が設けられた紙基材1と、透明無機物蒸着薄膜フィルム4とが、接着剤層3を介して積層されていることが図示されている。

(ク)上記(ウ)の「請求項2記載の発明により、より表面の耐候性、耐磨耗性のあるものとすることができる」との記載から、上記(ア)の請求項1に記載された化粧シートは、「透明保護層」を必須のものとしておらず、「「透明保護層」を備えていない化粧シートが含まれていること、すなわち、引用文献1には、絵柄模様層が設けられた紙基材と、透明無機物蒸着薄膜フィルムとが、接着剤層を介して積層されてなる化粧シートが記載されていることは明らかである。

上記(ア)?(ク)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「紙基材の上面に印刷によって設けた絵柄模様層と、透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに透明無機薄膜を蒸着してなる透明無機物蒸着薄膜フィルムからなる防湿層とが、透明無機物蒸着薄膜フィルムの蒸着面と紙の印刷面とを接着剤層を介して積層されてなる防湿機能を有した化粧シートを化粧板基材に貼り合わせた化粧板。」

2-4.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明における「化粧シート」は、防湿機能を有している点で、本願補正発明における「防湿化粧シート」と共通する。
引用発明における「紙基材」は、本願補正発明おける「紙層」に、引用発明における「透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本願補正発明における「合成樹脂製基材層」に、引用発明における「透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに透明無機薄膜を蒸着してなる透明無機物蒸着薄膜フィルム」は、本願補正発明における「合成樹脂製基材層の一方の面側に透明蒸着層が積層された蒸着シート」にそれぞれ相当し、引用発明における「紙基材」及びその上面に印刷によって設けられた「絵柄模様層」は、本願補正発明における「紙層の一方の面に印刷層が形成されてなる印刷紙」に相当する。
引用発明における「化粧板基材」は、化粧板の基材である点で、本願補正発明における「木質系基材」と共通する。
引用発明において、透明無機物蒸着薄膜フィルムの蒸着面と紙の印刷面とが接着剤層を介して積層されているから、絵柄模様層が印刷された紙基材は、透明無機物蒸着薄膜フィルムの蒸着層側の面に積層されていることは明らかである。
引用発明において、化粧シートは、上面に絵柄模様層が設けられた紙基材と、透明無機物蒸着薄膜フィルムとが、接着剤層を介して積層されてなるものであり、透明無機物蒸着薄膜フィルムにおける透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの透明無機薄膜が蒸着された面とは反対側の面には、何ら他の層は設けられていない。そして、引用発明において、絵柄模様層は透明無機物蒸着薄膜フィルムを通して外部から視認可能であるべき層であるから、化粧シートを化粧板基材に貼り合わせる際には、絵柄模様層が透明無機物蒸着薄膜フィルムを通して外部から視認可能なように、紙基材が化粧板基材側に位置するようにして積層されることは明らかである。してみると、引用発明において、透明無機物蒸着薄膜フィルムにおける透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは化粧板の最外表面に位置していることになるから、引用発明において、化粧シートは前記透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが「表出するように」化粧板基材に積層されているといえる。

したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
「透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる合成樹脂製基材層の一方の面側に透明蒸着層が積層された蒸着シートの蒸着層側の面に、紙層の一方の面に印刷層が形成されてなる印刷紙が、前記印刷層を前記蒸着層側に位置するようにして接着剤層を介して積層されている防湿化粧シートが、前記合成樹脂製基材層が表出するように基材に前記紙層を基材側に位置するようにして積層されている化粧板。」

[相違点1]
蒸着シートの合成樹脂製基材層が、本願補正発明においては、「透明な二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」からなると限定されているのに対し、引用発明においては、「透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」であり、フィルムの延伸について「二軸延伸」という限定がされていない点。

[相違点2]
本願補正発明においては、防湿化粧シートが積層される基材が「木質系基材」と限定され、さらに、防湿化粧シートの積層について、「木質系基材の一方の面に」「木質系基材用接着剤層を介して積層されており、該木質系基材用接着剤層が着色されている」という限定がされているのに対し、引用発明においてはそれらの限定がされていない点。

2-5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
樹脂フィルム層を備えた化粧シートにおいて、前記樹脂フィルム層の材料として「二軸延伸ポリエチレンテレフタレート」を用いることは、例えば、特開2000-296573号公報(段落0032)、特開2004-42343号公報(段落0027)に記載されており、周知の技術である。引用発明において、透明無機物蒸着薄膜フィルムにおける「透明な延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の延伸の態様は当業者が適宜に設定し得る事項であり、前記した周知の技術を考慮すると、引用発明において、前記延伸の態様を「二軸延伸」として、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2]について
引用発明において、化粧板基材の材料は当業者が適宜に選択し得る事項であり、引用文献1には化粧シートの用途として「室内扉、キッチン扉、収納扉、襖などの建具」(前記2-3.(イ)参照)が記載されているところ、それら建具の材料として木質系の材料は周知である。
また、化粧板において、化粧シートを基材の一方の面に積層するか両面に積層するかは、当業者が必要に応じて適宜に設定し得る設計的事項である。
さらに、化粧シートを木質系基材に積層するに際し木質系基材用接着剤層を介して積層すること、及び着色された木質系基材用接着剤を用いることにより木質系基材の色調や表面模様を隠蔽することは、例えば特開昭56-25446号公報(特許請求の範囲、第3頁右下欄下から第2行?第4頁左上欄第6行)及び特開平7-144308号公報(段落0006)に記載されており、いずれも周知の技術である。
以上のことから、引用発明において、化粧シートが積層される化粧板基材を木質系基材とし、化粧シートを木質系基材の一方の面に、着色された木質系基材用接着剤層を介して積層して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明によって、当業者が予期し得ない格別顕著な効果が奏されるとは認められない。

以上のことから、相違点1及び相違点2はいずれも当業者が容易に想到し得ることであり、相違点1及び相違点2について総合判断しても、本願補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものであるといわざるを得ない。

なお、請求人は、審判請求書及び平成25年2月5日提出の回答書において、「引用文献1には、実施例及び図面に、透明な無機酸化物蒸着フィルム4の表面に「透明保護層5」を設けることが記載されており、明細書に「透明保護層」を設けなくてもよいとは記載されていないので、本願補正発明の規定する「合成樹脂製基材層が表出」するものは示されておらず、この点で、本願補正発明と引用発明とは相違する。」旨主張しているが、上記したとおり(2-3.(ク)参照)、引用文献1において「透明保護層」は必須のものとされておらず、引用文献1の記載から、前記「透明保護層」が設けられていない態様を読み取ることができるのであり、請求人の主張は失当であるから採用できない。

以上のとおりであるので、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

2-6.むすび
上記のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることのできないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
3-1.本願発明
平成24年10月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成24年4月20日になされた手続補正によって補正された明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1の記載は以下のとおりである(以下、これによって特定される発明を「本願発明」という。)。
「合成樹脂製基材層の一方の面側に透明蒸着層が積層された蒸着シートの蒸着層側の面に、紙層の一方の面に印刷層が形成されてなる印刷紙が、前記印刷層を前記蒸着層側に位置するようにして接着剤層を介して積層されている防湿化粧シートが、木質系基材の一方の面に前記紙層を前記木質系基材側に位置するようにして木質系基材用接着剤層を介して積層されており、該木質系基材用接着剤層が着色されていることを特徴とする化粧板。」

3-2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-123383号公報(引用文献1)の記載事項は、前記「2-3.引用文献」に記載したとおりである。

3-3.対比・判断
本願発明は、前記「2-2.本願補正発明」に記載した本願補正発明を特定する事項のうち、平成24年10月19日付けの手続補正によって追加された、合成樹脂製基材層の材料についての限定及び防湿化粧シートの積層の態様についての限定を省いたものであり、他の構成については本願補正発明と差異がない。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、合成樹脂製基材層の材料について及び防湿化粧シートの積層の態様についてさらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記「2-4.対比」及び「2-5.判断」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


3-4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-30 
結審通知日 2013-06-04 
審決日 2013-06-17 
出願番号 特願2008-85327(P2008-85327)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
P 1 8・ 575- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 知也  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 栗林 敏彦
渡邊 真
発明の名称 化粧板  
代理人 金山 聡  

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