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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24C
管理番号 1277333
審判番号 不服2012-21078  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-25 
確定日 2013-08-01 
事件の表示 特願2009-257086号「加熱調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 5月26日出願公開、特開2011-102661号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成21年11月10日の出願であって、平成24年7月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成24年10月25日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成24年10月25日付け手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成24年10月25日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

【理由】
2-1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1に、
「被加熱物を収納する加熱室と、
前記被加熱物を輻射又は熱風によって加熱する加熱手段と、
前記被加熱物を高周波発生器で発生させたマイクロ波で加熱する高周波発生部と、
前記加熱室、前記加熱手段、及び前記高周波発生部を収納する加熱調理機の本体と、
を備え、
前記加熱室の内部高さを、135?160mmにし、
前記加熱調理機の本体の高さを230?315mmにし、
前記加熱室の前面には、前記加熱調理器本体に対して縦開きに開ける扉が設けられ、
前記加熱手段と前記高周波発生部とを同時に駆動し、前記被加熱物を調理することを特徴とする加熱調理器。」
とあるのを、
「被加熱物を収納する加熱室と、
前記被加熱物を輻射又は熱風によって加熱する加熱手段と、
前記被加熱物を高周波発生器で発生させたマイクロ波で加熱する高周波発生部と、
前記加熱室、前記加熱手段、及び前記高周波発生部を収納する加熱調理機の本体と、
を備え、
前記加熱室の内部高さを、135?160mmにし、
前記加熱調理機の本体の高さを230?315mmにし、
前記加熱室の前面には、前記加熱調理器本体に対して縦開きに開ける扉が設けられ、
前記加熱手段と前記高周波発生部とを同時に駆動し、前記被加熱物を調理し、
前記加熱調理器の運転を操作する操作部の自動メニューに応じて、前記マイクロ波高周波発生部による加熱と、前記加熱手段による加熱の加熱比率を変化させて加熱を行なうことを特徴とする加熱調理器。」
とする補正を含むものである。

本件補正後の請求項1は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項について、「加熱調理器の運転を操作する操作部の自動メニューに応じて、マイクロ波高周波発生部による加熱と、加熱手段による加熱の加熱比率を変化させて加熱を行なうこと」の限定を付加するものである。また、この補正により、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-2.本願補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されたとおりのものと認める。
なお、本願補正発明の「加熱調理機」は、「加熱調理器」と同一のものと認められることから、以下「加熱調理器」に用語を統一して記載する。

2-3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭57-188940号公報(以下「引用例1」という。)及び特開2005-19197号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の各事項が記載されている。

[引用例1について]
(1a)「(1) 被加熱物を収納する加熱室と、この加熱室の被加熱物を加熱する高周波加熱手段と、前記加熱室の被加熱物を加熱する電熱加熱手段と、前記高周波加熱手段および電熱加熱手段を同時に動作させるスイッチとを備えた複合加熱調理器。」(特許請求の範囲参照)

(1b)「以上の構成によりこの複合加熱調理器を用いると使用者は、被加熱物2に対し輻射加熱、熱風による加熱、高周波加熱のそれぞれ単独加熱に加え輻射加熱と高周波加熱、熱風加熱と高周波加熱の同時加熱を行うことができる。」(第4頁左上欄11?15行参照)

以上の記載によると、引用例1には、
「被加熱物を収納する加熱室と、この加熱室の被加熱物を加熱する高周波加熱手段と、前記加熱室の被加熱物を加熱する電熱加熱手段と、前記高周波加熱手段および電熱加熱手段を同時に動作させるスイッチとを備え、
被加熱物に対し輻射加熱と高周波加熱または熱風加熱と高周波加熱の同時加熱を行うことができる複合加熱調理器。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

[引用例2について]
(2a)「【請求項1】
複数の金属製壁面部材を互いに機械的かつ電気導通的に接合した筐体からなる加熱室と、前記加熱室の壁面の外側に機械的かつ電気導通的に接合した導波管と、マグネトロンから放射されるマイクロ波を前記導波管により前記加熱室内に導き被加熱物を加熱する高周波加熱装置において、前記加熱室は、天井壁面部材の端面に導波管の一部が重なった端面重なり部Aと、前記端面重なり部Aの終端をL字状にした終端部Aと、かつ前記終端部Aと対向する終端部Bを除く側壁面部材の端面をL字状にして、前記天井壁面部材と前記側壁面部材とを互いに機械的かつ電気導通的に接合する構成とした高周波加熱装置。
【請求項2】
加熱室の高さを150mm以下とした請求項1記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
加熱室の天井壁面と底壁面のそれぞれに発熱体を有する構成とした請求項2記載の高周波加熱装置。
・・・」(特許請求の範囲参照)

(2b)「【0012】
本発明はこれらの課題を解決するもので、マイクロ波による均一加熱性能を満足しつつ、庫内高さを低くしてヒータ性能を向上させることで焼き時間を短縮でき、部品配置を効率的に行なえてコンパクトな構成を実現できる高周波加熱装置を提供することを目的としている。」

(2c)「【0042】
(実施例1)
図1?図4は、本発明の実施例1における高周波加熱装置の構成図である。・・・
【0043】
・・・各壁面を形成する左側壁面18、後壁面19、右側壁面20、底壁面21、天井壁面24と、導波管27、開口面29を、電気抵抗溶接(プロジェクション溶接、スポット溶接)やカシメにより機械的かつ電気導通的に接合している。またドア30は、開口面29に対向して装着され開閉自在に構成される。マグネトロン31は、アンテナ32からマイクロ波を発生するもので、マイクロ波は導波管27、給電口28を介して、天井壁面24の中央後方から庫内に伝送され、庫内に配置された被加熱物(図示せず)を加熱する構成である。ここで5つの壁面(左側壁面18、後壁面19、右側壁面20、底壁面21、天井壁面24)により形成される空間を、被加熱物を加熱するための空間ということで加熱室33と呼ぶことにする。
【0044】
・・・
【0045】
・・・また、マグネトロン31を右側壁面20側に配置しつつも、天井壁面24がわからマイクロ波を加熱室33内に導いているので、庫内高さHaを低くしてターンテーブルや回転アンテナを持たない構成としても、マイクロ波による加熱分布を充分に均一にすることができる。またマグネトロン31を右側壁面20側に配置すると、従来と同様に右側壁面20側にまとめて部品を配置できるので、効率的な部品配置ができる。それとともに天井壁面24側にはマグネトロン31を配置しなくて良いので、天井壁面24側のデッドスペースを少なくすることができ、特に上下方向にコンパクトな構成を実現できる。以上により庫内高さHaを低くしても弊害が無く、庫内高さHaの小型化によるヒータ性能の向上でトーストなどの焼き時間を短縮することが容易である。本実施例では、上側のヒータである管ヒータ26に対してはしぼり25形状を最適化し、下側のヒータである管ヒータ22に対しては反射板23を最適化するなどにより、上下ともヒータ分布を良くしつつ、庫内高さを145mmにまで小さくして効率向上を実現している(ちなみに庫内幅は285mm、奥行きは270mm)。・・・」

(2d)図1

上記図1の「開口面29」の右側部に開口があることから、実施例1の高周波加熱装置は、本体前面の側部に操作部を備えるものであると認められる。

以上の記載より、引用例2には、
「マグネトロンから放射されるマイクロ波を導波管により加熱室内に導き被加熱物を加熱する高周波加熱装置において、
ドアは、開口面に対向して装着され開閉自在に構成され、
本体前面の側部に操作部を備え、
前記加熱室の高さを145mmとし、
前記加熱室の天井壁面と底壁面のそれぞれに発熱体を有する構成とした高周波加熱装置。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

2-4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の「複合加熱調理器」は、本願補正発明の「加熱調理器」に相当し、
引用発明1の「被加熱物を加熱する電熱加熱手段」は、被加熱物に対し輻射加熱または熱風加熱するものであることから、本願補正発明の「被加熱物を輻射又は熱風によって加熱する加熱手段」に相当し、
引用発明1の「被加熱物を加熱する高周波加熱手段」は、本願補正発明の「被加熱物を高周波発生器で発生させたマイクロ波で加熱する高周波発生部」を備えることは明らかであり、
引用発明1の加熱室、電熱加熱手段、及び高周波加熱手段は、複合加熱調理器の本願補正発明でいう「本体」に収納されていることは明らかであり、
引用発明1の「高周波加熱手段および電熱加熱手段を同時に動作させる」ことは、本願補正発明の「加熱手段と高周波発生部とを同時に駆動」することを意味し、
また、引用発明1の複合加熱調理器において、加熱室の前面に扉が設けられることは自明な事項であることから、両者は、
「被加熱物を収納する加熱室と、
前記被加熱物を輻射又は熱風によって加熱する加熱手段と、
前記被加熱物を高周波発生器で発生させたマイクロ波で加熱する高周波発生部と、
前記加熱室、前記加熱手段、及び前記高周波発生部を収納する加熱調理器の本体と、
を備え、
前記加熱室の前面には、扉が設けられ、
前記加熱手段と前記高周波発生部とを同時に駆動し、前記被加熱物を調理する加熱調理器。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;本願補正発明では、加熱室の内部高さを、135?160mmにし、加熱調理器の本体の高さを230?315mmにし、また、扉が、加熱調理器本体に対して縦開きに開けるとされているのに対し、引用発明1では、加熱室の内部高さ及び複合加熱調理器の本体の高さ、並びに、扉の開く方向が特定されていない点。

相違点2;本願補正発明では、加熱調理器の運転を操作する操作部の自動メニューに応じて、マイクロ波高周波発生部による加熱と、加熱手段による加熱の加熱比率を変化させて加熱を行なうとされているのに対し、引用発明1では、そのような特定がない点。

2-5.判断
そこで、上記各相違点を検討すると、
・相違点1について
引用発明2の「発熱体」は、本願補正発明の「輻射によって加熱する加熱手段」に相当することから、引用発明2は、本願補正発明及び引用発明1と同様に、加熱室、加熱手段、及び前記高周波発生部を備えた加熱調理器といえる。そして、その加熱室の高さは145mmであり、これは本願補正発明において特定されている加熱室の内部高さの範囲内の値である。
本体の高さについては特定されていないものの、引用発明2はコンパクトな構成を実現することを課題としていること(記載事項(2b)参照)から、外形についてもコンパクト性が求められることは明らかであり、また、本体前面の側部に操作部を備えているオーブンレンジにおいて、本体の高さは、各社の取扱説明書等の仕様(例えば、2006年発売三菱RO-DL2、2007年発売日立MRO-CS7)を参酌すれば、加熱室の高さより120mm前後大きいものが一般的であることから、引用発明2においては、加熱室の高さは145mmであるので、本体の高さは265mm前後となり、十分に本願補正発明において特定された範囲内の高さとなる。
さらに、扉(ドア)を加熱調理器本体に対して縦開きに開けるようになすことは、例を挙げるまでもなく本願出願前周知の技術である。
そして、加熱調理器においてコンパクトな構成を実現することは、引用例2の記載事項(2b)にも示されているように使用者の多様な要望に応じるための一般的な課題であって、引用発明1の複合加熱調理器おいても、同様な課題があることは明らかであることより、
引用発明1において、引用発明2の高周波加熱装置の本体の構成を採用し、上記相違点1の本願補正発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

・相違点2について
高周波加熱と電熱(ヒータ)加熱との同時加熱が行える加熱調理器において、メニューに応じて高周波加熱と電熱加熱の加熱比率を変化させて加熱を行なうことは、本願出願前周知の技術(例えば、特開平3-20527号公報の第1表及び第2表参照)であり、また、加熱調理器においてメニューに応じて適切な加熱を行うことは一般的な課題であって、引用発明においても当然考慮される課題であるといえることより、
引用発明1において、上記周知の技術を採用し、上記相違点2の本願補正発明のようになすことは、当業者が容易になし得たものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-6.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成24年10月25日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年6月14日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された各引用例、その記載事項及び引用発明は、前記「2-3.引用例」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「加熱調理器の運転を操作する操作部の自動メニューに応じて、マイクロ波高周波発生部による加熱と、加熱手段による加熱の加熱比率を変化させて加熱を行なうこと」の限定を省いたものであるから、本願発明と引用発明1とを対比すると、前記「2-4.対比」において一致するとした点で一致し、相違点1で相違する。

そして、上記相違点1は、前記「2-5.判断」において述べたとおり、引用発明2の高周波加熱装置の本体の構成を採用することにより、当業者が容易になし得たものであることから、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-30 
結審通知日 2013-06-04 
審決日 2013-06-17 
出願番号 特願2009-257086(P2009-257086)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24C)
P 1 8・ 575- Z (F24C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 正志  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 小野 孝朗
平上 悦司
発明の名称 加熱調理器  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 村上 加奈子  
代理人 高橋 省吾  

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