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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1277362
審判番号 無効2012-800157  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-09-27 
確定日 2013-07-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第3296405号発明「電子部品部材類の洗浄方法及び洗浄装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3296405号の請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1?10」という。)についての出願は、平成8年8月20日に特許出願され、平成14年4月12日にその発明についての特許権の設定登録がなされた。

以後の本件に係る手続の概要は以下のとおりである。

1.平成24年 9月27日 審判請求書
2.平成24年12月17日 審判事件答弁書
3.平成25年 1月31日 審理事項通知書
4.平成25年 3月 7日 口頭審理陳述要領書(請求人、被請求人ら)
5.平成25年 3月21日 口頭審理陳述要領の要点(請求人)
6.平成25年 3月21日 口頭審理
7.平成25年 4月10日 上申書(被請求人ら)
8.平成25年 5月30日 補正許否の決定

第2 本件発明
本件発明1?10は、以下のとおりである。
「【請求項1】 電子部品部材類を、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなり、負の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性である洗浄液により洗浄することを特徴とする電子部品部材類の洗浄方法。
【請求項2】 ガス透過膜により脱ガスすることを特徴とする請求項1記載の電子部品部材類の洗浄方法。
【請求項3】 洗浄液が、0.05ppm以上の水素ガスを溶解していることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品部材類の洗浄方法。
【請求項4】 洗浄液は、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスの溶存ガス濃度が10ppm未満となるように脱ガスされた超純水を用いるものである請求項1?3のいずれかに記載の電子部品部材類の洗浄方法。
【請求項5】 超音波を照射しながら洗浄することを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の電子部品部材類の洗浄方法。
【請求項6】 洗浄液が、更に稀ガスを溶解していることを特徴とする請求項5記載の電子部品部材類の洗浄方法。
【請求項7】 洗浄液の温度を、20℃?60℃に温度調節して洗浄することを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の電子部品部材類の洗浄方法。
【請求項8】 超純水製造装置と、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水中に水素ガスを溶解させるためのガス溶解手段と、アルカリを溶解させるためのpH調整手段と、超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなる、負の酸化還元電位を有し且つアルカリ性の洗浄液で電子部品部材類を洗浄する洗浄部とからなることを特徴とする電子部品部材類の洗浄装置。
【請求項9】 洗浄液中の溶存水素濃度及びpHをそれぞれ検知する溶存水素濃度検知手段、pH検知手段と、それらの溶存水素濃度及びpHの検知結果に基づき、洗浄液中の溶存水素濃度及びpHをそれぞれ制御する溶存水素濃度制御手段、pH制御手段を有することを特徴とする請求項8記載の電子部品部材類の洗浄装置。
【請求項10】 洗浄部に超音波を照射するための超音波照射手段を有することを特徴とする請求項8又は9記載の電子部品部材類の洗浄装置。」

第3 請求人主張の概要
1.請求人は、「特許第3296405号発明の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されて発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、本件発明1?10は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明に、甲第2、3、5?8号証に記載された発明を適用することにより当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、本件特許は同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものであると主張し、以下の証拠方法を提出した。

(1)証拠方法
甲第1号証 特開平7-263430号公報
甲第2号証 特開平4-58528号公報
甲第3号証 MARCEL POURBAIX,JAMES A.FRANKLIN“ATLAS OF
ELECTROCHEMICAL EQUILIBRIA”,PERGAMON
PRESS,1966,p.97-105
甲第3号証の1 甲第3号証を請求人が翻訳したもの
甲第5号証 特開平6-29271号公報
甲第6号証 特開平6-73578号公報
甲第7号証 特開平7-328314号公報
甲第8号証 特開平6-191591号公報

(2)理由
請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりである。

ア.本件発明1について
ア-1 本件発明1の構成要件を分節すると次のとおりである。
A 電子部品部材類を、
B 特定の洗浄液により
C 洗浄することを
D 特徴とする電子部品部材類の洗浄方法。
ここで、本件発明1における特定の洗浄液は、a.超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなり、負の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性である。そして、b.超純水は、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスしたものである。

ア-2 本件発明1は、洗浄液や超純水の使用量の低減化に寄与でき、しかも従来よりも低温でも確実な洗浄を行うことができる電子部品部材類の洗浄方法及び洗浄装置を提供することを目的とするものである。この目的を達成するための真に解決すべき重要な課題は、シリコンウエハの表面に付着した微粒子をどのようにしたら除去できるのかということである。
本件発明1は、半導体ウエハの洗浄液として、酸化還元電位が負で且つpHが7を越え11未満のアルカリ性の洗浄液を使用すれば、半導体ウエハ表面への付着粒子数が減少し且つ半導体ウエハ表面の粗度が少ないという効果を奏するので、結果として、洗浄に要する洗浄液や超純水の使用量の低減に寄与できる、というものである。
そして、本件発明1は、洗浄液の酸化還元電位を負にするために超純水に水素ガスを溶解し、また洗浄液のpHを7を越え11未満のアルカリ性にするためにアルカリを溶解させるという手段を採用しているに過ぎない。

イ.甲第1号証について
イ-1 甲第1号証に記載された発明を分節すると次のとおりである。
A 半導体ウエハを
B 電気分解により得られた陰極水により
C 洗浄することを
D 特徴とする半導体ウエハの洗浄方法。
電気分解により得られた陰極水は、負の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性である。また、この陰極水に水素ガスをバブリングすることが開示されている。

イ-2 酸化還元電位(ORP)が-500mV以下でpHが7を越える陰極水を用いることが有効であった。更に陰極水にH_(2) をバブリングさせて溶存させると、還元性が上昇し、無機パーティクルの除去効率が上がり、処理時間の短縮(図7参照)が図れ、自然酸化膜の再成長抑止時間も24時間以上となった。

ウ.本件発明1の容易想到性について
ウ-1 本件発明1における特定の洗浄液は、超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなり、負の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性であるが、本件発明1は、電気分解により得られた陰極水を積極的に排除していないから、甲第1号証に記載された電気分解により得られた陰極水を含んでいる。
そして、本件発明1は、電気分解を前提としない、外部から水素ガスを供給して溶解させる方法で得られた洗浄液であり、甲第1号証に記載に記載された発明は、電気分解により水中で水素ガスを生成して、その水素ガスを溶解する方法で得られた洗浄液であるが、いずれも水素ガスを溶解したアルカリ性の洗浄液であり、相違はない。

ウ-2 また、電気分解により、金属電極を使用すると電極物質が徐々に電解液中に溶出して電解液を汚染するが、非金属型の電極にすれば金属混入を避けることができる。非金属である炭素電極を使用すると電解液を汚染することはない。乙第1号証には、炭素電極は陽極として使用すると一部が酸化して炭酸ガスとなり消耗が速いという問題点が記載されているが、陰極として使用することによる消耗の記載はなく、炭素電極を陰極として用いた場合に消耗が激しいとは言い切れない。
このように、本件発明1の電気分解を前提としない洗浄液による洗浄は、汚染物質の混入を低減できるという点で、引用発明の純水を電気分解することにより得られた洗浄液による洗浄と比べて有利な効果を奏しえない。

ウ-3 本件発明1の効果として、酸化還元電位が負であり且つpHが7を越え11未満のアルカリ性の洗浄液でシリコンウエハを洗浄することにより、半導体ウエハ表面への付着粒子数が減少し且つウエハ表面の粗度が少ないことが読み取れるものの、電気分解を前提としない超純水に水素ガス、アルカリを溶解した洗浄液であるが故の特有の効果を読み取ることができない。

ウ-4 また、本件発明1の電気分解を前提としない超純水に水素ガスを溶解した洗浄液について、甲第2号証には、半導体ウエハの洗浄液として水素を溶解させた純水又は超純水が記載されているものの、その洗浄液が負の酸化還元電位を有することは記載されていない。
しかし、この洗浄液が負の酸化還元電位を有することは、甲第3号証に記載されていることより明らかであり、電気分解を前提としない超純水に水素ガスを溶解した処理液としたことに技術的特徴は存在しないので、甲第2号証、甲第3号証を甲第1号証記載の発明にともに適用することに困難性は存在しない。
甲第1号証に記載された発明は、純水を電気分解して得られた処理液を用いることを前提としているが、水を電気分解することで陰極水にH_(2)ガスが放出され、陰極水に水素を溶解させ、水中で水素ガスを生成して溶解することが開示されているので、水中で水素ガスを生成して溶解することに代えて、甲第2号証の半導体ウエハの洗浄液として水素を溶解させた純水又は超純水を用いることは、両者が水素ガスを溶解する点で共通していることから、適用に困難性は存在しない。

ウ-5 本件発明1の半導体ウエハの洗浄液をアルカリ性にすることは、技術常識であり、甲第5号証、甲第6号証に記載されている。

ウ-6 本件発明1の特許出願時に、半導体ウエハの洗浄液として超純水を使用することは技術常識である。
また、本件発明1のb.超純水は、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去したものであるという要件は、甲第7号証、甲第8号証に記載されている。甲第7号証には、超純水中から溶存酸素、溶存窒素等を除去することが記載され、甲第8号証には、純水中に不活性気体が溶存することを防止することが記載されている。

ウ-7 よって、本件発明1と甲第1号証に記載された発明はともに、水素ガス、アルカリを溶解した洗浄液である点で相違はなく、本件発明1が電気分解を前提としない酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスした超純水に水素ガス、アルカリを溶解した処理液を用いているとしても、甲第2号証には、半導体ウエハの洗浄液として水素を溶解させた純水又は超純水が記載され、超純水に水素ガスを溶解した状態では負の酸化還元電位を有することが甲第3号証に記載され、さらに半導体ウエハの洗浄液として超純水を使用することは技術常識であり、甲第1号証における処理液を電気分解を前提としない処理液とすることに阻害要因はなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証に記載された発明を適用して当業者が容易に想到し得たものである。

エ.下位の請求項について
エ-1 本件発明2について
甲第7号証の【構成】には、脱気部20に、閉鎖循環流路10の周壁の一部または全部を構成する気体透過膜21を設け、この気体透過膜21の外部空間22を排気23するか、あるいは除去すべき溶存気体以外の気体を圧気24することが記載されている。

エ-2 本件発明3について
甲第1号証の段落番号【0026】には、1分程度水素バブリングを行った状態で溶存水素量を測定したところ、室温での飽和値に近い1.3ppm程度が溶存していることが明らかとなった、と記載されている。

エ-3 本件発明4について
甲第8号証の実施例において、窒素ガス濃度は、1.1mgN/lであることが記載されている。

エ-4 本件発明5について
甲第8号証の段落番号【0003】には、超音波を利用した洗浄装置の記載がある。

エ-5 本件発明6について
表面にパーティクル(微粒子)を除去する洗浄処理を行う際に、洗浄液に希ガスを溶解することは周知技術である。

エ-6 本件発明7について
甲第1号証の段落番号【0025】には、ORP=-500mV以下、pH=7?8のきわめて中性に近い陰極水を約50℃に温めて基板を処理すればよい、と記載されている。

エ-7 本件発明8について
上記「ウ.本件発明1の容易想到性について」で述べたように、甲第1号証?甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証の記載から当業者が容易に想到し得たものである。

エ-8 本件発明9について
溶存水素濃度及びpHの検知結果に基づき、洗浄液中の溶存水素濃度及びpHをそれぞれ制御することは、上記「ウ.本件発明1の容易想到性について」で述べたように、甲第1号証?甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証の記載から容易に想到し得たものである。

エ-9 本件発明10について
洗浄部に超音波を照射するための超音波照射手段を有することは、上記「エ-4 本件発明5について」で述べたように、容易に想到し得たものである。

第4 被請求人主張の概要
1.被請求人は、「本件請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、概略、請求人の主張は、本件発明の構成要件の一体性を無視したものであり、本件発明の認定を明らかに誤るものであり、また、甲第1号証記載の発明は陰極水を必須の要件とするものであって、甲第2号証ないし甲第8号証に記載された発明をどのように組み合わせたとしても、陰極水を使用しない本件発明1を想到することは当業者が容易になし得たものではない、と主張し、証拠方法として、乙第1号証 特開平11-269685号公報と提出している。

さらに、以下のように主張する。

(1)本件発明1について
請求人は、あたかも機械分野の発明における部品のように、本件発明1の洗浄液の要件を恣意的に分解し、独自の見解に基づいて並び替えているが、本件特許発明の「洗浄液」の要件は、「酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなり、負の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性である洗浄液」と有機的に結合した一体不可分のものである。

(2)甲第1号証について
甲第1号証記載の発明は、「水の電気分解により生成した電気分解水である陽極水及び陰極水」を処理液として使用した半導体ウエハの処理方法に関するものであり、専ら電気分解水の性質を利用したものである。
そして、甲第1号証には、以下のような処理方法が開示されている。

「Si表面を、純水に電解質を添加した水溶液を電気分解することによって生成された陰極水にH_(2)をバブリングさせて溶存させ、酸化還元電位(ORP)が-500mV以下でpHが7を越える陰極水によって処理する半導体ウエーハの処理方法。」(「甲第1号証記載の発明」という。)

(3)本件発明1と甲第1号証記載の発明との対比
本件発明1では、「酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなり、負の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性である洗浄液」を使用しているのに対し、甲第1号証記載の発明では、「純水に電解質を添加した水溶液を電気分解することによって生成された陰極水にH_(2)をバブリングさせて溶存させ、酸化還元電位(ORP)が-500mV以下でpHが7を越える陰極水」使用している点で相違している(以下「相違点」という。)。

(4)甲第2号証について
紫外線照射によって活性化された活性化水素によってシリコン表面を終端するものであるから、洗浄には紫外線照射が必須であり、紫外線が照射される前の「水素を溶解させた純水又は超純水」では洗浄水として機能せず、紫外線を照射して活性化水素を存在させて初めて洗浄水となる。
溶存酸素を減少させることについての開示はあるものの、これは、自然酸化膜を防止するためであり、酸素ガス以外の窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去することは一切記載されていない。アルカリを溶解させることも記載はなく、pHについての開示も存在しない。活性化水素の存在によって還元性雰囲気になることは開示されているが、これは紫外線照射後の雰囲気であって、紫外線を照射する前の「水素を溶解させた水」の酸化還元電位については全く開示されていない。

(5)甲第3号証について
プールベダイヤグラムは、熱力学的データ(平衡論)に基づいて、水中における化学種(特に金属)の存在領域を電極電位とpHの2次元座標上に図示したものであり、単にある電位及びpHのときに熱力学的に安定な状態を示すものに過ぎない。図5のrHは、水素濃度ではなく、水素分圧を示すものであり、rH=0からrH=20に応じた直線が引かれているが、これは溶液中の水素分圧によって水が安定に存在できる領域が変化することを示している。

(6)甲第5号証について
「アルカリ溶液による主にパーティクルを除去する洗浄」に用いられる洗浄液は、従来技術の「NH_(4)OH、H_(2)O_(2)、H_(2)Oの混液」であり、相違点に係る構成は一切開示されていない。

(7)甲第6号証について
超硬チップやHDDのベースプレート等のワークの表層の不要な成分やバリ等の異物を酸或いはアルカリの水溶液と反応させて溶解、除去する表面処理方法に関するものであり、本件特許発明のように、電子部品部材類の洗浄方法に関するものではなく、技術分野が異なっている。
ワークの表層の不要な成分やバリ等の異物を除去するための「酸或はアルカリの処理液」中の溶存気体を脱気しただけであり、電子部品部材類の洗浄方法において、「酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水に水素ガスを溶解するもの」ではなく、相違点に係る構成は開示されていない。

(8)甲第7号証について
電気化学の実験現場において、目的とする反応に対し、ある場合には溶存窒素が活性反応種となり、これが邪魔になるから脱気することを意味しているだけであり、電子部品部材類の洗浄液として、「酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水」を用いることを示唆するものではない。
「例えば上述のように酸素を除去する必要があるがアルゴンや窒素等は溶存させても構わない場合には、それらアルゴンや窒素で充填しておくと良い。」(【0031】)、「タンク40の空き空間は高純度の窒素で満たすようにした。」(【0032】)という記載があり、窒素を格別除去を必要とするものとは認められていなかった。

(9)甲第8号証について
脱ガスした純水中への気体の再溶解を防止することが開示されているだけである。その純水が半導体ウエハー等の洗浄に使用可能であるとしても、特定の洗浄方法について言及するものではなく、本件特許発明とは技術分野が異なるものである。
さらに、「【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、純水貯槽内は窒素ガスのような不活性ガスによってシールされた状態となっているので、当該貯槽内で酸素や炭酸ガス等が純水中に再溶解するのを防止することができる。しかしながら、当該貯槽内の純水の上面には窒素ガス、アルゴン、ヘリウム、ネオンのような不活性ガスが圧入されており、しかも純水の水面と当該不活性ガスは接触状態であるため、当該不活性ガスが純水中に溶解するという問題点がある。窒素ガスのような不活性ガスの場合には、酸素や炭酸ガスが溶解した場合と較べて半導体ウエハー等の洗浄に不都合を来すことが本来少ないのであるが、超音波を利用した洗浄装置では、純水中に不活性ガスが溶解していると超音波発振時に発泡するという問題点があり、超音波洗浄時に発泡が起きると、気泡がウエハーの表面に付着し、当該付着部分に洗浄用の純水が届かず洗浄されない部分が生じてしまうという重大な欠点がある。」と記載され、当該記載によれば、純水中の溶存窒素は、通常の半導体ウエハ-等の洗浄に不都合を来すことが本来少ないことが開示されており、特定の超音波を利用した洗浄装置では超音波発振時に発泡するという問題点が生じることが明らかとされている。甲第8号証は、純水中の溶存気体を脱気しただけであり、電子部品部材類の洗浄方法において、「酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水に水素ガスを溶解するもの」ではなく、相違点に係る構成を開示するものではない。

(10)相違点に係る構成の想到容易性
甲第1号証記載の発明では、「純水に電解質を添加した水溶液を電気分解することによって生成された陰極水」を使用しているが、甲第1号証記載の発明は、添加する電解質に依存する陽極水と陰極水の性質を利用したものであり、特に、従来の薬液の組み合わせでは得られない特性を呈する電気分解水の特異な効果を期待して陰極水を半導体ウエーハ処理に利用していることから、甲第1号証記載の発明において陰極水ではなく超純水を採用することは、甲第1号証記載の発明が目的とする電気分解水の特異な効果が得られなくなるものであり、当業者が通常想到できる事項ではない。
甲第1号証記載の発明は、陰極水を必須の要件とするものであり、陰極水を使用しない相違点に係る構成を採用することについての阻害要因が明確に存在する。
かかる阻害要因が存在する以上、相違点に係るその他の構成を議論するまでもなく、甲第1号証記載の発明に、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証ないし甲第8号証に記載された発明をどのように組み合わせたとしても本件発明1に想到することは当業者が容易になし得るものではない。
さらに、甲第1号証記載の発明の洗浄液は、生成過程において、電気分解槽内において水溶液に直接電極を接触させており(【0013】及び図4)、電極を構成する物質などが洗浄液に混入する虞がある。電気分解の問題点について、乙1号証には、電極として金属電極を使用すると電極物質が徐々に電解液中に溶出して電解液を汚染するため、電極として非金属にすればよく、非金属として使用可能な物質として炭素がある。炭素電極は通常多孔質であるため電解の進行とともに破壊や溶解が起こり易く、また陽極として使用すると一部が参加して炭酸ガスとなり消耗が早いという問題点がある。また陰極として使用する場合でも炭酸ガスとしての揮発はないものの、生成する水素の気泡が陽極側酸素より小さく電極の破壊が進みやすいという問題点がある。
これに対して、本件発明1では、電気分解を前提としない洗浄液を用いており、洗浄液と調整するにあたり電極と直接接触させる必要はなく、甲第1号証記載の発明の洗浄液と比較して汚染物質の混入を低減できる。
甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証ないし甲第8号証に記載の発明は、何れも「酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなり、負の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性である洗浄液」を使用するものではなく、相違点に係る構成は開示されていない。
さらに、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証ないし甲第8号証に記載の発明には、甲第1号証記載の発明において、相違点に係る構成を採用する動機付けとなる記載も示唆も特に存在していない。

(11)本件発明2ないし10
本件発明2ないし7は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1が、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものではない以上、本件発明2ないし7についても当業者が容易に想到できたものではない。
本件発明8について、請求人は甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであると主張するだけであり、実質的な対比を行っていない。甲第1号証記載の発明は、陰極水を必須の要件としているため、陰極水を生成するための電気分解水生成装置が必要であり、甲第1号証記載の発明において、「酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水中に水素ガスを溶解させるためにガス溶解手段」を採用することは、当業者が容易に想到できたものではない。
さらに、本件発明9及び10は、本件発明8を引用するものであるから、本件発明8と同様に、甲第1号証ないし甲第3号証、甲第5号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。

第6 甲各号証について
1.甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)「【請求項1】 純水に塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、弗化アンモニウム、硝酸アンモニウム、臭化アンモニウム、沃化アンモニウム、硫酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、塩酸、アンモニア水の内より選定された少なくとも1種類よりなる電解質を8×10^(-2)モル/リットルから2×10^(-5)モル/リットルの範囲で添加した第1の水溶液を電気分解することによって生成された第2の水溶液を処理液としてこれに半導体ウエーハ被処理部を灌浸あるいは灌水する半導体ウエーハの処理方法。」(下線は、当審で付与。以下、同様。)

(2)「【0001】
【産業上の利用分野】情報社会を支える半導体産業にとってぜひとも克服しなければならない課題がある。半導体製造プロセスで用いられる多量な化学薬品の削減である。いわゆる重化学工業ほどに使用される化学薬品は多量とは言えないものの、エレクトロニクス産業の規模と将来性から考えて化学薬品の使用削減は環境問題のみならず、排出薬品の処理コスト削減という意味からも急務である。この発明は半導体プロセスにおける洗浄、エッチングあるいはリンスなどのいわゆるウエットプロセスにおける化学薬品の使用削減に寄与しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】半導体装置の製造プロセスでは洗浄、エッチングあるいはリンスといったいわゆる多くの湿式プロセスが存在する。」

(3)「【0005】一方、近代編集社より出版された『洗浄設計』誌の1987年春季号に掲載された澄田氏によって執筆された「レドックス式洗浄法 一電子工業における新しい洗浄法」(以後引用文献1とする。)において電気分解して水が独特の作用をもたらすことが示されている。水の電気分解は引用文献1の概念図(図2)が示されており、水槽101の中に設けられたイオン交換膜102を隔てて2つの電極103ならびに104が挿入され、103を陽極、104を陰極となるように直流電圧を加えることで得られることが示された。陽極側に生成する水(以下、陽極水と呼ぶ。)はH^(+) イオンが増加して酸性を呈し、一方陰極側の水(以下陰極水と呼ぶ。)ではOH- イオンが増加してアルカリ性を呈すると説明されている。」

(4)「【0006】この電気分解水の作用についてはまだ科学的には充分理解が進んでいないようであるが、これを半導体製造プロセスにおけるウエットプロセスへ適用すべく各種条件を模索した。引用文献1によれば純水を電気分解して得られる正負2室で生じる水がそれぞれ通常の純水とは異なる酸化還元電位(以後ORPと略記する。)や酸性、アルカリ性の程度を示す指標であるpH値を示すとともに、洗浄効果その他、特殊な作用を有することのことである。・・・」

(5)「【0006】・・・半導体プロセス用の電気分解水生成装置が提案され、純水201に微量の第4アルキルアンモニウムとハロゲン以外のカチオンの組み合わせからなる薬品を加えると、水の電気分解に都合がよいことが実施例で示された。こうした特定の薬品添加を行うことではじめて半導体のウエットプロセスに適用できることが実証された。図3に示された装置において、電解質添加量制御システム202は、生成された陽極水または陰極水のpH値を204aと204bのセンサにて測定し、pH値制御システム205からフィードバック制御されるため、本装置は精密なpH制御が可能なものである。」

(6)「【0013】
【実施例】まず、電気分解水の生成方法について述べよう。電気分解水を得るための生成装置としては、一般的に使用されている二層式電気分解方式、純水でも電気分解が可能な三層式電気分解方式のものがあることは、1985年発行の電気化学便覧第4版のp.277等にすでに紹介されている。ここでは二層式電気分解方式について図4の電解槽の概念図を用いて説明する。基本的には特願平5-105991号で示された図と同じで電気分解槽400には貯液槽(図4中に記載なし)より微量な支持塩を添加した水溶液401が送り込まれるようになっている。電気分解槽400には陽電極402と陰電極403が挿入され、弗素系のイオン交換膜407(カチオン膜)で隔てられている。イオン交換膜407で隔てられたそれぞれの水槽に設置された陽電極402と陰電極403の電極間隔は1cm以下で、直流電圧(2V?50V/cm)を印加した。この場合、純水の電気分解効率を高めるために、半導体素子に対して悪影響を及ぼさない種類の支持電解質を微量(8×10^(-2)モル/リットル?2×10^(-5)モル/リットル)添加する。この電解質は、微量の添加にて水溶液104の電気伝導度を著しく上昇し、電気分解の効率を高めるために重要である。」

(7)「【0017】電気分解が開始すると、陰電極403にH^(+)イオンが引き寄せられ、電極から電子を受け取りH_(2)ガスが放出され、結果的にH^(+) イオン数の減少に応じてOH^(-) イオンが残るために、陰電極403側の槽の水、陰極水405はアルカリ性を呈すると同時に、陰電極403から発生する活性基の水素の存在により還元性を持つことになる。・・・」

(8)「【0021】まず、電気分解によって得られる陽極水と陰極水の性質について述べる。電気分解によって得られる陽極水と陰極水の性質は、電気分解に先立って添加する電解質に依存する。添加する電解質は、電気分解における抵抗減少に有効であるばかりでなく、電解質を選ぶことによってORPを制御できることも明らかになっている。図1は、3種類の電解質(塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩酸)を0.05重量%含んだ純水のpH(縦軸)とORP(横軸)が電気分解によってどう変化するかを示している。電気分解は2槽式で行い、隔膜としては多孔膜を用いている。電気分解によって、陽極側には酸化性の高い水が生じ、陰極側には還元性の高い水が生じていることが判る。・・・」

(9)「【0022】ORPが何によって決まっているかについては今のところ明らかになってはいない。しかし、陽極水に見られる高いORPや陰極水の低い(マイナスで大きい)ORPは電気分解なしでは得られていない。・・・」

(10)「【0024】エッチング速度が充分に遅い領域の陰極水はシリコン基板上の無機パーティクル除去に利用できる。例えばCMP(ケミカル メカニカル ポリッシング)を経たSi基板上に付着したコロイダルシリカの除去に利用した実施例を示す。5×10_(-5)モル/リットルの塩化アンモニウムを電解質として得られるORP=-720mV、pH=8.2の陰極水を用いて流水方式で10分間洗浄した結果を図6に示すが、洗浄処理前の2000個以上/ウエーハのコロイダルシリカが、80個/ウエーハとなった。従来のAPM液を用いた場合の100個/ウエーハを越える残留量に比べても優れた結果である。このように陰極水の採用により、薬品濃度を低減でき、作業の安全性も向上した。この無機パーティクル除去にはOPR-700mV以下で、pH8以上の陰極水が特に有効で塩化アンモニウムや酢酸アンモニウムを僅かに2×10_(-5)モル/リットル加えた電気分解水においても充分に効果がある。この陰極水処理ではシリコンを僅かにエッチングすることで無機パーティクルを除くものであるが、同時に陰極水中ではシリコン基板表面にパーティクルが再付着しにくいという効果も有している。」

(11)「【0026】以上、陰極水によるSi表面の処理について、0.1?2×10^(-5)モル/リットルの塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムを添加した水溶液を電気分解することで得られる陰極水について述べてきたが、ORPが-500mV以下でpHが7を越える陰極水を用いることが有効であった。更に陰極水にH_(2)をバブリングさせて溶存させると、還元性が上昇し、無機パーティクルの除去効率が上がり、処理時間の短縮(図7参照)が図れ、自然酸化膜の再成長抑止時間も24時間以上となった。1分程度水素バブリングを行った状態で溶存水素量を測定したところ、室温での飽和値に近い1.3ppm程度が溶存していることが明らかになった。シリコンのエッチングに陰極水を用いる場合、H_(2)バブリングを行うことでエッチングの均一性が向上し、その結果、エッチング後表面の凹凸に改善が見られた。これは、陰極水の還元力が水素バブリングによって向上した結果であると考えられる。」

(12)「【0029】次にやはり陰極水を半導体ウエーハ表面のパーティクル除去へ適用した場合の実施例を述べる。陰極水はアルカリ性かつ還元性を有し、メタル(シリサイド)系あるいは絶縁膜系を問わずエッチング作用を持ち、アルカリ中ではシリコンとパーティクルのゼータ電位が同符号(マイナス)となるためにシリコンとパーティクルとの間には反発力が働き、無機、有機を問わずパーティクルが付着しにくい特性を持つため、パーティクル除去に最適である。6.5×10^(-3)モル/リットルの酢酸アンモニウムを電解質としたORPが-820mV、pHが10.5の陰極水を用いれば、メタル(シリサイド)上および絶縁膜上に存在した3000個のポリスチレンパーティクルをそれぞれ100個以下に、またメタル(シリサイド)ならびに絶縁膜上のコロイダルシリカをそれぞれ30000個から100個以下にすることができた。この場合についてもH_(2)をバブリングして溶存させることが有効であった。図11ではメタル上のコロイダルシリカが短時間に効率良く除去できていることが判る。」

(13)「【0054】陽極水による有機物除去について述べてきたが、陰極水によっても有機物除去は可能である。有機物系の汚染やレジスト残渣の除去には酸化性をもたらせた陰極水を用いるのも有効である。シリコン基板、メタル上や絶縁膜上の有機物除去の場合に陰極水を用いるシリコン、メタルや絶縁膜はエッチングされ、かつ、シリコンとパーティクルのゼータ電位が同符号(マイナス)となるためにシリコンとパーティクルとの間に反発力が働き、パーティクルが再付着しにくいため除去効率がきわめて高くなる。こうした処理には例えば酢酸アンモニウムや塩化アンモニウム0.1モル/リットル?1×10^(-5)モル/リットル添加した水溶液を電気分解して得られたORP-700mV以下、pH7を越える陰極水を実施例では用いた。具体的には6.5×10^(-3)モル/リットルの酢酸アンモニウムを電解質として電気分解して得られるORPが-800mV、pHが10の陰極水を?70℃に加熱して用い、絶縁膜上やメタル(シリサイド)上(図21参照)のレジスト残渣を完全に除去することができた。これらの場合に水素をバブリングすることで還元性が増加し、絶縁膜上、メタル(シリサイド)上共に有機物除去の効率が2倍程度向上した。以上の有機物除去の陰極水の具備するアルカリ性と還元性を積極的に利用したものである。」

(14)「【0061】また、電気分解に先立って純水に加えておくべき電解質の添加量は0.08モル/リットル?2×10^(-5)モル/リットル程度の範囲が適当であった。ここに示した添加量の上限は、低濃度の電解質を含んだ水溶液の電気分解が行える装置で見られた電気分解の上限である。装置上の工夫によってはこの上限をあげることもできるが、装置のコストアップを行わずに電解質添加をこの上限を越えて添加した場合には電解質添加の効果が優先し、電気分解の効果が希薄になるし、薬品使用量の削減という本発明の目的にもそぐわない。従って技術的見地からの現実的な電解質濃度の上限は0.08モル/リットルであった。一方、電解質濃度の下限は、電解水の特性の安定性によって決まる。この下限についても装置上の工夫により下げることも可能であるし、処理工程によってはより低い電解質濃度でも効果が認められるものである。」

(15)「【0062】さらに半導体ウエーハを処理するためのORPとpHについてはpHが7を越えてORPが-120mV以下の領域と、pHが7未満でORPが+700mV以上の領域が特に効果の大きい範囲であった。この事実は電気分解水の特性上における大きな特長が単に電解質を添加しただけの水溶液に較べてORPの値における大きな差異となって現れることと符合する。このことから実験的に確認されたものではあるが、標準ORP値+220mVに対して-120mVを越え、+600mV未満のORP値を示す電気分解水が半導体ウエーハ処理に顕著な効果を示さなかった事実を裏づけるものである。」

(16)「【0063】さらに電気分解水の特異な性質を規定すると考えられる結果は、電気分解水のうち、塩素、臭素、沃素を含んだものでは10^(-3)モル/リットル程度のオキソ酸イオンが観測されたことである。このことは多量のオキソ酸イオンが効果的な半導体ウエーハ処理に関わりをもっていることを示している。」

(17)図3には、浄水器(211)、イオン交換器(407)を通過した純水(201)に電解質添加システム(202)が接続され、多孔質膜で仕切られたそれぞれの室に陰極、陽極が配置された電気分解用水槽の上部に前記純水が供給され、その後、それぞれの室の水が、それぞれの処理水槽に供給され、電気分解された陰極水、陽極水が処理水槽に供給され、その後、廃液貯水槽に供給されて、浄水器(211)に戻る、電気分解水生成装置が記載されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本件発明1、8の記載ぶりに則って整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「引用発明1」、「引用発明2」という。)が記載されている。

引用発明1
「半導体ウエーハのSi表面を、0.1?2×10^(-5)モル/リットルの塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムを純水に添加し、電気分解し、陰電極からH_(2)ガスが放出され、結果的にH^(+)イオン数の減少に応じてOH^(-) イオンが残るために、陰電極側の槽の陰極水はアルカリ性を呈すると同時に、陰電極から発生する活性基の水素の存在により還元性を持たせ、酸化還元電位(ORP)が-500mV以下でpHが7を越える陰極水によって洗浄する半導体ウェーハの洗浄方法。」

引用発明2
「浄水器及びイオン交換器と、該浄水器及びイオン交換器を通過した純水に0.1?2×10^(-5)モル/リットルの塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムを加える電解質添加システムと、前記塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムが加えられた純水が供給されて電気分解され、陰電極からH_(2)ガスが放出される、多孔質膜で仕切られた電気分解用水槽と、前記電解質添加システムで純水に0.1?2×10^(-5)モル/リットルの塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムが添加され、前記電気分解水槽でH_(2)ガスが放出され、結果的にH^(+)イオン数の減少に応じてOH^(-) イオンが残るために、アルカリ性を呈すると同時に、陰電極から発生する活性基の水素の存在により-500mV以下の酸化還元電位を持つ陰極水で半導体ウエーハのSi表面を洗浄する処理水槽とからなる半導体ウェーハの洗浄装置。」

2.甲第2号証
甲第2号証には、次の事項が図面と共に記載されている。

(1)「1.被処理物質を、水素を溶解させた純水又は超純水中に浸漬し、紫外線照射することを特徴とする洗浄処理方法。」(特許請求の範囲)

(2)「ウェハの自然酸化膜を防止するためには、洗浄用の純水又は超純水中の溶存酸素を減少させることが重要であるとされている。
溶存酸素濃度数ppb程度の、現在の技術で極限まで溶存酸素を減少させた超純水であれば、シリコンの自然酸化は防止できることが確認されている。しかし、この場合でも、空気中にごく僅かな時間でも暴露した場合には、自然酸化膜が形成されることが認められ、ウェハを窒素ガスなどの不活性気体中、水蒸気中、あるいは溶剤蒸気中に保持することによって、空気には暴露しない等の対策が提案されている。
しかしこれらの場合、シリコン表面は依然として活性であり、ごく僅かな酸素の存在で、酸化される恐れがある。
また、現在の技術で極限まで溶存酸素を減少させた超純水であっても、ウェハ上に配線されるアルミニム等の金属はシリコンより活性が大きいため、これら金属の自然酸化を防止するためには不十分であると言われている。」(公報第1ページ右欄第10行?第2ページ左上欄第9行)

(3)「〔作 用〕
水素を溶解させた水に紫外線に照射することによって、水中の水素は光エネルギーを吸収し、活性化される。活性化された水素によって、半導体ウェハのシリコンは表面が水素で終端されて酸化を受けにくい状態となる。また溶存酸素が僅かに残存している場合であっても、活性化水素の存在によって還元性雰囲気になるため、ウェハ上のアルミニウムなどの金属の酸化は防止される。」(公報第2ページ右上欄第14行?左下欄第3行)

3.甲第3号証
甲第3号証には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1)「the acid,alkaline,oxidizing and reducing media(Fig.4) and the values of rH and rO for aqueous solutions(fig.5).」(第99ページ下から1行目?第100ページ第1行目)(参考訳:酸性、アルカリ性、酸化および還元媒体(図4)および水溶液のrHおよびrOの値(図5))

4.甲第5号証
甲第5号証には、次の事項が図面と共に記載されている。

(1)「【0002】
【従来の技術】一般に、研磨処理された半導体ウェーハは、表面にパーティクル(微粒子)や重金属元素が付着しており、これらのパーティクルや重金属元素を除去するために洗浄処理が行われている。洗浄処理は、従来においては、主にパーティクルを除去するためのアルカリ溶液による洗浄と、主に重金属元素を除去するための酸溶液による洗浄とを組合せて行われていた。そして、上記アルカリ溶液としては、例えば、NH_(4)OH、H_(2)O_(2)、H_(2)Oの混液が用いられ、上記酸溶液としては、例えば、HCl、H_(2)O_(2)、H_(2)Oの混液が用いられていた。」

5.甲第6号証
甲第6号証には、次の事項が図面と共に記載されている。

(1)「【0002】
【従来の技術】従来、ワークの表層の不要な成分やバリ等の異物を酸或はアルカリの水溶液と反応させて溶解、除去する表面処理方法が知られている。」

(2)「【0006】そこで、処理時間を短縮するために、上記超音波処理槽に酸或はアルカリの水溶液を供給し、上記超硬チップ等のワークを上記酸或はアルカリの水溶液に浸漬し、超音波振動子から該水溶液に超音波を放射して、該ワーク表層の異物を酸或はアルカリの水溶液と反応させて溶解、除去することが試みられている。このようにすることにより、上記ワーク表面に超音波が作用して上記異物やバリの一部を除去し、その残余と上記酸或はアルカリの水溶液とが反応するので、表面処理が促進されるものと考えられる。」

(3)「【0011】本発明のワークの表面処理方法では、上記反応性の処理液は溶存酸素量が0.01?5ppmになるように脱気されていることが好ましい。」

(4)「【0016】
【作用】本発明のワークの表面処理方法によれば、ワーク表層の異物と反応する処理液が脱気されているので、該処理液に超音波を放射したときに気泡の発生が抑制され、しかもキャビテーションの内部が殆ど真空であるので該キャビテーションが周囲の水圧により容易に圧壊され、強力な衝撃波を発生する。この結果、上記衝撃波により該ワーク表層の異物の大部分が除去され、残余の異物が上記処理液と反応して溶解、除去される。」

6.甲第7号証
甲第7号証には、次の事項が図面と共に記載されている。

(1)「【構成】 循環ポンプ15を稼働させることで流体Fを循環させる閉鎖循環流路10を設ける。閉鎖循環流路10の一部に脱気部20を設ける。脱気部20には、閉鎖循環流路10の周壁の一部または全部を構成する気体透過膜21を設け、この気体透過膜21の外部空間22を排気23するか、あるいは除去すべき溶存気体以外の気体を圧気24する。閉鎖循環流路10には、処理すべき流体Fを選択的に流入させるため、流路開閉弁13の設けられた流体流入路11を接続し、また、閉鎖循環流路10中から処理済の流体Fを選択的に取り出すため、流路開閉弁14の設けられた流体流出路12を接続する。」(公報第1ページの【要約】欄の【構成】の項)

7.甲第8号証
甲第8号証には、次の事項が図面と共に記載されている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶存ガスの除去された純水を貯溜する純水貯槽内で酸素や炭酸ガスが純水中に再溶解するのを防止するため当該貯槽内の純水の水面の上方部に窒素ガスのような不活性ガスを供給するようになした不活性ガスシール槽において、当該不活性ガスシール槽内の純水の水面を覆うように気液遮断体を浮設して前記不活性ガスが貯溜中の純水中に溶解するのを防止するようにしたことを特徴とする純水用不活性ガスシール槽。」

(2)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、純水貯槽内は窒素ガスのような不活性ガスによってシールされた状態となっているので、当該貯槽内で酸素や炭酸ガス等が純水中に再溶解するのを防止することができる。しかしながら、当該貯槽内の純水の上面には窒素ガス、アルゴン、ヘリウム、ネオンのような不活性ガスが圧入されており、しかも純水の水面と当該不活性ガスは接触状態であるため、当該不活性ガスが純水中に溶解するという問題点がある。窒素ガスのような不活性ガスの場合には、酸素や炭酸ガスが溶解した場合と較べて半導体ウエハー等の洗浄に不都合を来すことが本来少ないのであるが、超音波を利用した洗浄装置では、純水中に不活性ガスが溶解していると超音波発振時に発泡するという問題点があり、超音波洗浄時に発泡が起きると、気泡がウエハーの表面に付着し、当該付着部分に洗浄用の純水が届かず洗浄されない部分が生じてしまうという重大な欠点がある。」

(3)「【0009】このように、シール槽本体1内に貯溜されている純水5の水面の上方空間部には不活性ガス源3から供給される窒素ガスのような不活性ガスが圧入されるので、当該シール槽本体1内で酸素や炭酸ガスが純水5中に再溶解するのを防止することができるものである。ところが、純水5の水面は常に不活性ガスと接触状態にあるため、純水5中に窒素ガスのような不活性ガスが溶け込むという問題点があったのである。そこで、本発明においては、シール槽本体1内の純水5の水面を覆うように気液遮断体12を浮設して前記不活性ガスが貯溜中の純水5中に溶解するのを防止するようにしたものである。」

(4)「【0012】次に、合成樹脂発泡体13として独立気泡構造を有する厚さ約1cmの発泡ポリエチレン製の薄板を用い、これをEVA・ポリエステルの共重合体によって作成した袋14内に封入して気液遮断体12を構成し、当該気液遮断体12をシール槽本体1内の純水5の水面に浮設した場合(実施例)と、このような気液遮断体を用いず従来と同様に不活性ガスと接触状態のまま貯溜した場合(比較例)とにつき、純水送出管7を介して送出される純水中の溶存窒素ガス濃度と溶存酸素濃度を調べた結果を下記に示す。なお、この実験では純水供給管2より真空脱気装置によって溶存酸素、溶存炭酸ガスの除去された純水を3m^(3) /hの割合でシール槽本体1内に供給すると共に、不活性ガス供給管4より6Nl/minの割合で窒素ガスをシール槽本体1内の水面の上方部に供給した。比較例によった場合、送出された純水中の溶存窒素ガス濃度は1.1mgN/lであったが、実施例によった場合は全く検出できなかった。また、溶存酸素濃度は実施例によった場合22.0μgO/l、比較例によった場合22.4μgO/lで、実施例によった場合の方が幾分改善されていた。なお、前記溶存窒素ガス濃度の測定はガスクロマトグラフィー、溶存酸素濃度の測定は溶存酸素計によった。」

第7 当審の判断
1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明1とを対比すると、その用語の意味・内容・機能・構成からみて、後者の「半導体ウエーハのSi表面を」は、前者の「電子部品部材類を」に相当し、以下、同様に、
「0.1?2×10^(-5)モル/リットルの塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムを純水に添加し」は、「純水に」「アルカリを溶解し」に、
「電気分解し、陰電極からH_(2)ガスが放出され」は、H_(2)ガスの一部が純水中に溶解するので、「水素ガス」「を溶解し」に、
「陰極水」は、半導体ウエーハのSi表面を洗浄しているので、「洗浄液」に、
それぞれ相当する。
また、後者の「結果的にH^(+)イオン数の減少に応じてOH^(-)イオンが残るために、陰電極403側の槽の陰極水405はアルカリ性を呈すると同時に、陰電極403から発生する活性基の水素の存在により還元性を持たせ、酸化還元電位(ORP)が-500mV以下でpHが7を越える」は、前者の「負の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性である」と、-500mV以下の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満の範囲のアルカリ性である点で共通する。

そこで、本件発明1の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
電子部品部材類を、純水に水素ガス、アルカリを溶解し、-500mV以下の酸化還元電位を有し且つpHが7を越え11未満のアルカリ性である洗浄液により洗浄する電子部品部材類の洗浄方法である点。

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点)
洗浄液を得るための、水素ガス、アルカリを溶解することについて、本件発明1では、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水に水素ガス、アルカリを溶解しているのに対して、引用発明1では、脱ガスしたか否か不明な純水に水素ガス、アルカリを溶解している点。

(2)相違点の判断
ア.甲第1号証には、洗浄液を得るために、水素ガス、アルカリを溶解する前に、脱ガスすること、特に、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスの3種類のガスを脱ガスして除去することについては、何ら記載はなく、このことは、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証にも記載されていない。
また、洗浄液を得るため、水素ガス、アルカリを溶解する前に、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスの3種類のガスを脱ガスして除去することが、当業者において自明な事項であるともいえない。
そして、本件発明1の、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスの3種類のガスを脱ガスして除去した超純水は、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを含んでいないから、超純水に水素ガスを溶解した際の、水素ガスの占める分圧は必然的に高くなって、水素の溶解量が増した洗浄液を得ることができることは当業者にとって技術常識である。そして、その結果、「【発明の効果】本発明の洗浄方法によれば、従来法のような大量の洗浄液を使用せずとも、従来法と同等乃至はそれ以上の洗浄効果を得ることができるため、洗浄液に用いる原料や超純水にかかるコストの低減化を図ることができるとともに、使用済の洗浄液等を処理するためのコスト等も低減化でき、この結果、従来の洗浄法を採用した場合に比べ、製品コストの低減化に貢献できる。」(本件の詳細な説明【0036】段落。)との効果を奏すると認められる。

イ.加えて、本件発明1は、本願の詳細な説明の「【0022】ガス溶解槽2において水素ガスを溶解せしめた洗浄液は、pH調整槽3においてpHを調整される。洗浄液のpHは7を越えるpHに調整することが好ましく、より好ましくは7を越え11未満、特に好ましくは8?10に調整する。pHを調整するためには、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)等のアルカリ水溶液や、アンモニアガス等の如きアルカリのガス等が用いられるが、アンモニア水やアンモニアガスを用いると、水酸イオン(OH- )の対イオンとして金属イオン、有機物イオンが存在せず、対イオンが揮発性であるため洗浄対象物に不純物が付着しない点で好ましい。・・・」との記載からみて、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水にアルカリを溶解して、pHが7を越え11未満のアルカリ性とするべく調整するものであり、甲第1号証には、添加する電解質の目的について、電気分解の抵抗を減少すること、酸化還元電位(ORP)を制御することについては記載があるものの(上記記載第6 1.(8)参照。)、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水にアルカリを溶解することによって、得られる洗浄水のpHを調整しようとする技術思想はない。このことは、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証にも記載されておらず、また、当業者において自明な事項であるともいえない。
また、引用発明1の目的が使用する化学薬品の削減にあり(第6 1.(2)参照。)、引用発明1において、電気分解した陰極水にpH調整のためのアルカリをさらに加えるということは、使用する化学薬品を増加させることになるから、むしろ阻害要因があるといえる。

ウ.以上のとおり、本件発明1は、「酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水に水素ガス、アルカリを溶解して」洗浄液を得る製造方法を採用することによりア.の効果を奏するのであるから、引用発明1に、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証を適用して、上記相違点に係る特定事項とすることは、当業者であっても容易になし得たものとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

2.本件特許発明2?7について
本件発明2?7は、いずれも本件発明1を直接ないし間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

3.本件発明8について
(1)対比
本件発明8と引用発明2とを対比すると、その用語の意味・内容・機能・構成からみて、後者の「浄水器及びイオン交換器」は、前者の「超純水製造装置」に、以下、同様に、
「該浄水器及びイオン交換器を通過した純水に0.1?2×10^(-5)モル/リットルの塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムを加える電解質添加システム」は、「アルカリを溶解させるための」「手段」に、
「前記塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムが加えられた純水が供給されて電気分解され、陰電極からH_(2)ガスが放出される、多孔質膜で仕切られた電気分解用水槽」は、H_(2)ガスの一部が純水中に溶解するので、「超純水に水素ガス」「を溶解するためのガス溶解手段」に、
「前記電解質添加システムで純水に0.1?2×10^(-5)モル/リットルの塩化アンモニウムあるいは酢酸アンモニウムが添加され、前記電気分解水槽でH_(2)ガスが放出され」は、「超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなる」に、
「半導体ウエーハのSi表面」は、「電子部品部材類」に、
「陰極水」は、半導体ウエーハのSi表面を洗浄しているので、「洗浄液」に、
「処理水槽」は、「洗浄部」に、
それぞれ相当する。
また、後者の「結果的にH^(+)イオン数の減少に応じてOH^(-) イオンが残るために、アルカリ性を呈すると同時に、陰電極から発生する活性基の水素の存在により-500mV以下の酸化還元電位を持つ」ことは、前者の「負の酸化還元電位を有し且つアルカリ性」であることと、-500mV以下の酸化還元電位を有し且つアルカリ性であるという点で共通する。

そこで、本件発明8の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。

(一致点)
超純水製造装置と、水素ガスを溶解させるためのガス溶解手段と、アルカリを溶解させるための手段と、超純水に水素ガス、アルカリを溶解してなる、-500mV以下の酸化還元電位を有し且つアルカリ性の洗浄液で電子部品部材類を洗浄する洗浄部とからなる電子部品部材類の洗浄装置。

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点1)
ガス溶解手段について、本件発明8は、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水中に、水素ガスを溶解させるためのものであるのに対して、引用発明2は、その点が不明である点。

(相違点2)
アルカリを溶解させるための手段について、本件発明8は、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水中に、アルカリを溶解させるためのpH調整手段であるのに対して、引用発明2は、その点不明である点。

(3)相違点1の判断
甲第1号証には、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスの3種類のガスを脱ガスして除去した超純水中に水素ガスを溶解させるためのガス溶解手段については何らの記載もない。その点について、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証において記載はなく、当業者において自明な事項であるともいえない。
そして、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスの3種類のガスを脱ガスして除去した超純水中に水素ガスを溶解することにより、1.(2)アで述べたとおりの効果を奏するのであるから、引用発明2に、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証を適用して、相違点1に係る特定事項とすることは、当業者であっても容易になし得たものとはいえない。

(4)相違点2の判断
引用発明2の調整手段がアルカリを純水に溶解する目的は、電気分解における抵抗の減少、酸化還元電位(ORP)の制御のためであり(上記記載第6 1.(8)参照。)、1.(2)イでも述べたとおり、引用発明2のアルカリを溶解するための手段が、酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガスを脱ガスして除去した超純水にアルカリを溶解することによりpH調整する機能を有しているとはいえない。
その点について、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証において記載はなく、当業者において自明な事項であるともいえない。
したがって、引用発明2に、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証を適用して、相違点2に係る特定事項とすることは、当業者であっても容易になし得たものとはいえない。

よって、本件発明8は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

4.本件特許発明9、10について
本件発明9、10は、いずれも本件発明8を直接ないし間接的に引用するものであるから、本件発明8と同様、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第8号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

第8 無効理由に対するまとめ

以上のように、本件発明1ないし7は、引用発明1並びに甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載の発明に基づいて、本件発明8ないし10は、引用発明2並びに甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1ないし10についての特許は同法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきであるとする請求人の主張には理由がない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1ないし10についての特許を無効とすることはできない。
また、他に本件発明1ないし10についての特許を無効とすべき理由を発見しない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-30 
結審通知日 2013-06-03 
審決日 2013-06-24 
出願番号 特願平8-237294
審決分類 P 1 113・ 121- Y (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 平上 悦司
山崎 勝司
登録日 2002-04-12 
登録番号 特許第3296405号(P3296405)
発明の名称 電子部品部材類の洗浄方法及び洗浄装置  
代理人 田中 二郎  
代理人 磯田 志郎  
代理人 磯田 志郎  
代理人 安國 忠彦  
代理人 安國 忠彦  
代理人 永島 孝明  
代理人 永島 孝明  
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