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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G |
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管理番号 | 1277379 |
審判番号 | 不服2011-25815 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-30 |
確定日 | 2013-07-31 |
事件の表示 | 特願2005-199246「ポリピロール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月25日出願公開、特開2007- 16133〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成17年7月7日を出願日とする特許出願であって、平成20年7月4日に手続補正書が提出され、平成22年10月21日付けで拒絶理由が通知され、同年12月22日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成23年8月26日付けで拒絶査定がなされ、同年11月30日に拒絶査定不服審判が請求され、平成24年1月11日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1?3に係る発明は、平成22年12月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書(以下、「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「水酸基含有ポリサッカライド水溶液にピロールを添加してピロールのエマルジョンを形成した後、化学酸化重合触媒を添加して0?20℃で重合する、ポリピロールの95%以上が球状粒子で且つ粒径1000nm以下であることを特徴とするポリピロールの製造方法によって得られるポリピロール。」 第3.原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その出願日前に日本国内において頒布された下記刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 刊行物A:特開平3-730号公報」 というものを含むものである。 第4.刊行物Aの記載事項 本願の出願日前に頒布された刊行物Aには、以下の事項が記載されている。 A1「 」(3頁左上欄1?6行目) A2「 」(第3頁右下欄10?19行目) A3「 」(第7頁右上欄4?11行目) A4「 」(第8頁左上欄1?下から2行目) A5「 」(第8頁左下欄下から5行目?右下欄2行目) 第5.刊行物Aに記載された発明 摘示A4及びA5の記載からみて、刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物A発明」という。)が記載されているといえる。 300mlの3ツロフラスコにヒドロキシエチルセルロース5g、3-メチルピロール12g及び蒸留水120mlをとり、窒素雰囲気下で攪拌しながら、室温でこの溶液に、蒸留水48mlに溶解した40.3gのFeCl_(3)・6H_(2)0を30分間にわたって滴下し、 滴下とともに発熱し、反応液は黒色に変化し、 さらに、2時間攪拌した後、透析を2日間行い(VISKASH SALES CORP CELLULOSE TUBING C-65三光純薬(株)製を使用)、ポリ(3-メチルピロール)の水分散液を得、 得られたポリ(3-メチルピロール)粒子の平均粒径は100nmであった(COULTER-N4型サブミクロン粒子分析装置(コールタ-エレクトロニクス(株))製で測定)、 ポリ(3-メチルピロール)。 第6.対比・判断 1.本願発明について 本願発明と刊行物A発明とを比較する。 刊行物A発明における「ヒドロキシエチルセルロース」「3-メチルピロール」「FeCl_(3)・6H_(2)0」「ポリ(3-メチルピロール)」は、本願発明における「水酸基含有ポリサッカライド」「ピロール」「化学酸化重合触媒」「ポリピロール」に相当する。 刊行物A発明における「ポリピロール粒子の平均粒径は100nm」は、本願発明における、「ポリピロールの95%以上が粒径1000nm以下」と重複一致する。 以上をまとめると、本願発明と刊行物A発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 〔一致点〕 ポリピロールの95%以上が粒径1000nm以下であることを特徴とする、ピロール含有水酸基含有ポリサッカライド水溶液中に、化学酸化重合触媒を添加して重合することを特徴とするポリピロールの製造方法によって得られるポリピロール。 〔相違点1〕 本願発明は、「水酸基含有ポリサッカライド水溶液にピロールを添加してピロールのエマルジョンを形成」すると特定しているのに対し、刊行物A発明は、蒸留水にヒドロキシエチルセルロースとピロールを配合しているものの、エマルジョンを形成しているとの特定を有していない点。 〔相違点2〕 本願発明は、「ポリピロールの95%以上が球状粒子」と特定しているのに対し、刊行物A発明はそのような特定を有していない点。 〔相違点3〕 本願発明は、「0?20℃で重合」すると特定しているのに対し、刊行物A発明はそのような特定を有していない点。 2.相違点について ○相違点1について 刊行物Aには、「本発明の製造方法には、ラテックスの製造に用いられる乳化重合と同様の公知の方法で行うことができる」との記載(摘示A1)があり、刊行物A発明において用いられているヒドロキシエチルセルロースは、分散剤である旨の記載(摘示A3)があることからすると、刊行物A発明において、エマルジョンを形成した状態で重合していることは明らかであり、本願発明も刊行物A発明も同じエマルジョン状態で重合していることからすると、この点は実質的な相違点とはいえない。 ○相違点2について 刊行物Aには、ポリピロール粒子の平均粒子径を「COULTER-N4型サブミクロン粒子分析装置(コールタ-エレクトロニクス(株))製で測定」する旨の記載がある。ここで、「COULTER-N4型サブミクロン粒子分析装置」は、ベックマン・コールター株式会社のホームページ(http://www.beckmancoulter.co.jp/product/product03/CoulterPrinciple.html)の記載から、コールター原理に基づいた粒子径測定方法を用いていると認められる。そして、コールター原理により、水溶液中にある粒子一つ一つについて正確な体積を計測可能であることから、コールター原理に基づいた粒子径測定方法で得られた粒子径は、その粒子と同じ体積の球の直径を意味すると認められる。 ここで、本願明細書中において粒径に関して記載のある本願実施例1,2及び比較例1における分散剤、ポリピロールの粒子径、粒子形状に関して以下に記載する。なお、参考までに刊行物A発明の対応する事項も記載する。 分散剤 分散剤の種類 粒子径(nm) 粒子形状 実施例1 ○ セルロース系 400?500 球状 実施例2 ○ セルロース系 150?200 球状 比較例1 × - - 連鎖状 刊行物A発明 ○ セルロース系 100 - 上記、本願実施例と比較例との比較から、ポリピロールを酸化重合する際に、分散剤を用いない場合には連鎖状粒子が得られること、セルロース系分散剤を用いることで、ポリピロールの粒子径は150?500nm程度となり、ポリピロールは連鎖のない一つ一つの粒子であること、さらには、その一つ一つの粒子が球状であること、が確認できる。 そうすると、刊行物A発明におけるポリピロール粒子はピロールを酸化重合する際に、分散剤を用いて重合していることから、本願比較例のような連鎖状粒子が得られているとは認められない。また、刊行物A発明におけるポリピロール粒子は、コールター原理に基づいて粒子径を測定していることから100nm程度の大きさの粒子が一つ一つとして存在していること、重合の際に本願実施例と同種の分散剤を用いて得られたものであること、本願実施例程度の粒子より小さい体積を有していること、を考え合わせると、刊行物A発明におけるポリピロール粒子として、100nmより小さい粒子が連鎖状の粒子形態をとることで100nm程度の粒子を形成しているとは認められないことから、刊行物A発明におけるポリピロール粒子は100nm程度の大きさの連鎖のない一つ一つの粒子からなるものと認められる。そして、刊行物A発明と本願発明とは、セルロース系分散剤を用いてピロールを酸化重合して得られた連鎖のない一つ一つの粒子である点において共通していることから、刊行物A発明におけるポリピロールの粒子の形態は本願発明同様に球状の形態を有している蓋然性が高いと認められることからすると、この点は実質的な相違点とはいえない。 (なお、上記分析装置の製造会社である「コールターエレクトロニクス株式会社」が「ベックマン・コールター株式会社」となっていることは、以下ホームページ参照のこと。http://www.beckmancoulter.co.jp/company/about.html) ○相違点3について 上記相違点1,2について で検討したとおり、刊行物A発明は、「ポリピロールの95%以上が球状粒子で且つ粒径1000nm以下」である点で一致していることから、最終的に得られたポリピロールが重合時の温度によりその形状が異なるものになるとは認められない。 また、請求人は、審判請求書において、刊行物Aに記載のように、室温を超えた温度下で重合した場合、球状の重合体粒子が得られるとは考えにくい旨の主張とともに、追試を行って、平成24年6月末までに実験結果を提出する旨の主張をしているが、追試の結果以外にかかる主張を合理的とする根拠も示されておらず、また、追試の結果が何ら示されていない。 従って、この点も実質的に相違点とはいえない。 第7.まとめ 以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとする原査定の理由は妥当なものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-30 |
結審通知日 | 2013-06-03 |
審決日 | 2013-06-17 |
出願番号 | 特願2005-199246(P2005-199246) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08G)
P 1 8・ 113- Z (C08G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阪野 誠司 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
田口 昌浩 加賀 直人 |
発明の名称 | ポリピロール及びその製造方法 |
代理人 | 廣田 雅紀 |