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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1277416
審判番号 不服2012-6177  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-06 
確定日 2013-08-12 
事件の表示 特願2008-215599号「生活排水の総合的活用システム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年3月4日出願公開、特開2010-48527号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年8月25日の出願であって、平成24年3月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 平成24年4月6日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月6日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項3は、
「(21E)水と「圧縮性流体である冷媒2」とを熱交換させる湯沸熱交換器と、
(21T)前記湯沸熱交換器で前記冷媒2との熱交換によって生成した湯を貯留する貯湯槽と、
(22W)前記冷媒2と「水、水溶液又はその他の不凍液である熱源媒体2」とを熱交換させる室外熱交換器W2と、
(3)人が個人又は集団で生活する建屋(以下、「人が個人又は集団で生活する建屋」を「生活建屋」と略記する)のうち高汚濁排水発生箇所以外の箇所から排出される生活排水(以下、「生活建屋のうち高汚濁排水発生箇所以外の箇所から排出される生活排水」を「低汚濁生活排水」と略記する)を収集して後記貯留水槽に供給する低汚濁生活排水収集供給系統と、
(4’)前記低汚濁生活排水収集供給系統から供給される低汚濁生活排水、又は、該低汚濁生活排水と水道水や井戸水等の生活用水(以下、「水道水や井戸水等の生活用水」を「生活用水」と略記する)とを受け入れて貯留する貯留水槽であって、
前記低汚濁生活排水、又は、前記低汚濁生活排水と前記生活用水との混合水(以下、「前記低汚濁生活排水と前記生活用水との混合水」を「低汚濁生活排水用水混合水」と略記する)と前記熱源媒体2とを熱交換させる槽内熱交換器2と;
「前記低汚濁生活排水又は前記低汚濁生活排水用水混合水」を生活建屋内の前記高汚濁排水発生箇所に供給するための低汚濁生活排水供給手段と;
「前記低汚濁生活排水又は前記低汚濁生活排水用水混合水」を下水道配管に放流するための放流手段と;
を備える貯留水槽と、
(25)循環経路中に圧縮機構と膨張機構を備え、前記冷媒2を「圧縮機構→湯沸熱交換器→膨張機構→室外熱交換器W2」の経路で循環させる冷媒循環系統2と、
(26)前記熱源媒体2を前記室外熱交換器W2と前記槽内熱交換器2との間で循環させる熱源媒体循環系統2と、
を備えることを特徴とする生活排水の総合的活用システム。」と補正されて、請求項1とされた。
上記補正は、補正前の請求項3における発明を特定するための事項である、
「低汚濁生活排雨水」を「人が個人又は集団で生活する建屋(以下、「人が個人又は集団で生活する建屋」を「生活建屋」と略記する)のうち高汚濁排水発生箇所以外の箇所から排出される生活排水(以下、「生活建屋のうち高汚濁排水発生箇所以外の箇所から排出される生活排水」を「低汚濁生活排水」と略記する) 」又は「低汚濁生活排水」と補正し、
「排雨水収集供給系統」を「低汚濁生活排水収集供給系統」と補正し、
「該低汚濁生活排雨水と生活用水」を「該低汚濁生活排水と水道水や井戸水等の生活用水(以下、「水道水や井戸水等の生活用水」を「生活用水」と略記する) 」と補正し、
「生活排水・雨水」を「生活排水 」と補正して、利用する水について生活排水及び/又は雨水を生活排水に限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2003-214722号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図1とともに以下の事項が記載されている。
(1)「本発明は、個別住宅あるいは集合住宅で発生する排水を、住宅あるいは各種熱消費設備の空調および給湯熱源として利用する、高効率・省エネルギー空調・給湯方法およびその装置についての提案である。」(段落【0001】)
(2)「住宅排水(浴槽、台所、洗面所、トイレなどの排水)からの抽排熱は、排水を一時的に蓄える貯水槽を設け、これに熱交換器を設置することにより行う。」(段落【0013】)
(3)「次に、図1を用いて、本発明にかかる具体的な運転方法の好適実施例を説明する。ヒートポンプはA、Bは、圧縮機、膨張弁および3つの熱交換器より構成されている。なお、熱交換器は、それぞれ、生活排水槽1との循環媒体9a、9b、蓄熱槽4との循環媒体11a、11b、および貯湯槽7との循環媒体12a、12bにより接続されている。
(暖房運転時)循環媒体9a、9bを、生活排水槽1の熱を利用し、この槽内に設置した熱交換器2a、2bを介して昇温(30?35℃)させ、ヒートポンプ3a、3bに導く。生活排水から回収した熱は、ヒートポンプ3a、3b内にて循環媒体9a、9bを介して循環媒体10a、10bを昇温(50?60℃)して、循環媒体11a、11bを介して蓄熱槽4内に蓄積する。・・・(中略)・・・
なお、本発明においては、前記ヒートポンプ3a、3bに付帯させて、前記蓄熱槽4とは別に、バッファ機能をもつと同時に循環媒体を供給するための貯湯槽7が配管接続されている。この貯湯槽7内の媒体もまた、上述したように、ヒートポンプ3a、3bによって50?60℃程度まで昇温されるが、この昇温された熱水は、住宅等の給湯熱源として利用することができる。」(段落【0017】?【0019】)
(4)図1には、生活排水槽1から外に出る矢印及びその先に「排水(下水)」との文字が図示される。
また、熱交換器2bとヒートポンプB3b内の熱交換器との間でポンプの記号を介して循環する矢印で接続されて循環媒体9bが循環する様子、ヒートポンプB3b内では「暖房時」とする矢印の方向で、上記熱交換器2bに接続される熱交換器から、圧縮機、蓄熱槽に接続される熱交換器、貯湯槽7に接続される熱交換器、膨張弁の順に循環媒体10bの線で結ばれる様子、貯湯槽7とヒートポンプB3b内の熱交換器との間でポンプの記号を介して循環する矢印で接続されて循環媒体12bが循環する様子、及び、貯湯槽7から「浴槽・洗面 キッチン」へポンプの記号を介しての矢印が図示される。

これらの記載事項(1)?(3)及び(4)の図示内容を総合すると、上記引用刊行物1には、「下水へ排水し、生活排水槽1の生活排水からの熱により循環媒体9bを昇温する熱交換器2bを槽内に設置した、住宅排水(浴槽、台所、洗面所、トイレなどの排水)である生活排水を一時的に蓄える生活排水槽1と、
熱交換器2bとの間で循環媒体9bが循環され、循環媒体9bが生活排水から回収した熱でヒートポンプB3b内の循環媒体10bを昇温するヒートポンプB3b内の熱交換器と、
昇温したヒートポンプB3b内の循環媒体10bの熱により貯湯槽7内の循環媒体12bを昇温するヒートポンプB3b内の他の熱交換器と、
昇温された循環媒体12bである熱水を内に蓄え、住宅等の給湯熱源として利用される貯湯槽7と、
暖房運転時、熱交換器2bに接続される熱交換器から、圧縮機、貯湯槽7に接続される熱交換器、膨張弁の順に循環する循環媒体10bを有する、ヒートポンプB3bと、
を備える生活排水を給湯熱源として利用する給湯装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「住宅排水(浴槽、台所、洗面所、トイレなどの排水)である生活排水」と、前者の「人が個人又は集団で生活する建屋(以下、「人が個人又は集団で生活する建屋」を「生活建屋」と略記する)のうち高汚濁排水発生箇所以外の箇所から排出される生活排水(以下、「生活建屋のうち高汚濁排水発生箇所以外の箇所から排出される生活排水」を「低汚濁生活排水」と略記する)」及び「低汚濁生活排水」とは、人が個人又は集団で生活する建屋から排出される生活排水である限りにおいて共通する。
後者の「住宅排水(浴槽、台所、洗面所、トイレなどの排水)である生活排水を一時的に蓄える生活排水槽1」と前者の「低汚濁生活排水、又は、該低汚濁生活排水と水道水や井戸水等の生活用水(以下、「水道水や井戸水等の生活用水」を「生活用水」と略記する)とを受け入れて貯留する貯留水槽」とは生活排水を受け入れて貯留する貯留水槽である点で共通する。
後者の生活排水槽1に設置された「生活排水槽1の生活排水からの熱により循環媒体9bを昇温する熱交換器2b」と前者の「低汚濁生活排水、又は、前記低汚濁生活排水と前記生活用水との混合水(以下、「前記低汚濁生活排水と前記生活用水との混合水」を「低汚濁生活排水用水混合水」と略記する)と前記熱源媒体2とを熱交換させる槽内熱交換器2」とは、生活排水と熱源媒体2とを熱交換させる槽内熱交換器2である点で共通し、後者の「循環媒体9b」は前者の「熱源媒体2」に相当する。
後者は生活排水槽1について「下水へ排水」するものであるから、そのための手段を有することが自明であり、後者の上記手段と、前者の「「前記低汚濁生活排水又は前記低汚濁生活排水用水混合水」を下水道配管に放流するための放流手段」は、生活排水を下水道に放流するための放流手段の点で共通する。
後者の「ヒートポンプB3b内の循環媒体10b」はその機能・構成からみて前者の「冷媒2」に相当し、後者の「熱交換器2bとの間で循環媒体9bが循環され、循環媒体9bが生活排水から回収した熱でヒートポンプB3b内の循環媒体10bを昇温するヒートポンプB3b内の熱交換器」と前者の「前記冷媒2と「水、水溶液又はその他の不凍液である熱源媒体2」とを熱交換させる室外熱交換器W2」とは、冷媒2と熱源媒体2とを熱交換させる熱交換器W2である点で共通する。
後者の「昇温したヒートポンプB3b内の循環媒体10bの熱により貯湯槽7内の循環媒体12bを昇温するヒートポンプB3b内の他の熱交換器」と前者の「水と「圧縮性流体である冷媒2」とを熱交換させる湯沸熱交換器」とは、後者の「昇温された循環媒体12b」が「熱水」であることを合わせ考慮すると、水と冷媒2とを熱交換させる湯沸熱交換器である点で共通し、後者の「昇温された循環媒体12bである熱水を内に蓄え、住宅等の給湯熱源として利用される貯湯槽7」は前者の「湯沸熱交換器で前記冷媒2との熱交換によって生成した湯を貯留する貯湯槽」に相当する。
後者のヒートポンプB3bは「暖房運転時、熱交換器2bに接続される熱交換器から、圧縮機、貯湯槽7に接続される熱交換器、膨張弁の順に循環する循環媒体10bを有する」ものであるから、循環媒体10bが循環するための系統を有するものであって、その系統は、前者の「循環経路中に圧縮機構と膨張機構を備え、前記冷媒2を「圧縮機構→湯沸熱交換器→膨張機構→」「熱交換器W2」の経路で循環させる冷媒循環系統2」に相当する。そして後者の「循環媒体10b」は前者の「冷媒2」と同様に「圧縮性流体」であるといえる。
後者の循環媒体9bは「ヒートポンプB3b内の熱交換器」と「熱交換器2bとの間で」「循環され」るから、後者はそのための系統を有するといえ、その系統は前者の「熱源媒体2を前記」「熱交換器W2と前記槽内熱交換器2との間で循環させる熱源媒体循環系統2」に相当する。
そして、後者の「生活排水を給湯熱源として利用する給湯装置」は前者の「生活排水の総合的活用システム」に相当する。
そうすると、両者は、「(21E)水と「圧縮性流体である冷媒2」とを熱交換させる湯沸熱交換器と、
(21T)前記湯沸熱交換器で前記冷媒2との熱交換によって生成した湯を貯留する貯湯槽と、
(22W)前記冷媒2と熱源媒体2とを熱交換させる熱交換器W2と、
(4’)人が個人又は集団で生活する建屋から排出される生活排水を受け入れて貯留する貯留水槽であって、
前記生活排水と前記熱源媒体2とを熱交換させる槽内熱交換器2と;
生活排水を下水道に放流するための放流手段と;
を備える貯留水槽と、
(25)循環経路中に圧縮機構と膨張機構を備え、前記冷媒2を「圧縮機構→湯沸熱交換器→膨張機構→熱交換器W2」の経路で循環させる冷媒循環系統2と、
(26)前記熱源媒体2を前記熱交換器W2と前記槽内熱交換器2との間で循環させる熱源媒体循環系統2と、
を備える生活排水の総合的活用システム。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。

相違点A:熱源媒体2に関して、本願補正発明が「水、水溶液又はその他の不凍液」であるのに対して引用発明はその材質が不明である点。
相違点B:熱交換器W2に関し、本願補正発明が「室外熱交換器W2」であるのに対し引用発明は「ヒートポンプB3b内の熱交換器」である点。
相違点C:貯留する貯留水槽に受け入れる生活排水に関して、本願補正発明が「人が個人又は集団で生活する建屋(以下、「人が個人又は集団で生活する建屋」を「生活建屋」と略記する)のうち高汚濁排水発生箇所以外の箇所から排出される生活排水(以下、「生活建屋のうち高汚濁排水発生箇所以外の箇所から排出される生活排水」を「低汚濁生活排水」と略記する)」であるのに対して引用発明は「住宅排水(浴槽、台所、洗面所、トイレなどの排水)である生活排水」である点。
相違点D:貯留水槽への生活排水の供給について、本願補正発明が生活排水を収集して供給する収集供給系統を有するのに対して引用発明は収集供給系統を有するのか否か不明である点。
相違点E:貯留水槽に関して、本願発明が貯留する「生活排水」「を生活建屋内の高汚濁排水発生箇所に供給するための低汚濁生活排水供給手段」を備えているのに対して引用発明は備えていない点。
相違点F:放流手段に関し、本願補正発明が「下水道配管に放流」するのに対し、引用発明は「下水へ排水」するものの下水道配管か否か不明である点。

そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
熱交換器に用いる媒体を水や不凍液とすることは、例えば車両の冷却液等において従来より周知のことにすぎず、単に上記周知の事項に倣って、引用発明の循環媒体9bを水や不凍液とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。そしてそのことによる格別の効果もない。

(2)相違点Dについて
引用発明は住宅排水(浴槽、台所、洗面所、トイレなどの排水)である生活排水を生活排水槽1に蓄えるものである。そして多数の個所から排水を貯留水槽に供給する、管等により収集するような収集供給系統とすることは、例えば、実願昭55-54859号(実開昭56-155229号)のマイクロフイルムや特開2008-64330号公報等にも示されているように、当業者にとって従来より慣用される手段であるといえるから、管等により収集するような収集供給系統を設けて生活排水槽1に供給するようなすことは、当業者が適宜なし得た設計的事項であり、そのことによる格別の効果もない。

(3)相違点Bについて
生活排水を収集・貯留するのに、その生活排水を発生する室外へ管により導出することは上記(2)述べたように従来より慣用されたことであるとともに、その排水の熱を再利用するための装置を室外に設置することも、上記実願昭55-54859号(実開昭56-155229号)のマイクロフイルムや上記特開2008-64330号公報、特開2003-42539号公報に示されるように、従来より周知であって、当該周知の事項に倣って、引用発明のヒートポンプB3b内の熱交換器を室外に設けることは当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。そしてそのことによる格別の効果もない。

(4)相違点Fについて
下水道管を用いた下水は、従来より周知のことであって、単に当該周知の下水道管に流すようなすことは、設置場所に応じて、当業者が適宜なし得た設計的事項といわざるを得ない。そしてそのことによる格別の効果もない。

(5)相違点C及びEについて
ア 排水を加熱源として利用するにあたり、収集する排水として、温水を用いる浴室、洗面所及び台所等の温排水を用いることは、例えば、上記特開2008-64330号公報や上記実願昭55-54859号(実開昭56-155229号)のマイクロフイルム、上記特開2003-42539号公報、特開昭57-55333号公報等に示されるように、従来周知のことである。
引用発明のヒートポンプB3bは住宅等の給湯熱源として利用される貯湯槽7の熱水を作るものであり、そのための加熱源として用いる、生活排水槽1の生活排水を、より効率的となるように、上記周知の事項に倣って、温水を用いる浴室、洗面所及び台所等の温排水を用いるようなすことは、当業者が格別の困難性を要することなくなし得たことといえる。そしてその場合、温排水ではないトイレの水洗の排水を用いることはない。
引用発明には生活排水の例としてトイレの排水が例示されるものの、一例として示されるにすぎず、上記したように排水を加熱源として利用するべく、トイレの排水を用いないことは当業者が容易に想到し得たことである。
さらに、特に上記特開昭57-55333号公報には収集されて貯留された排水の熱源としての利用とともにトイレの水洗用として再利用することも示されており、上記の様に判断することができないということもない。

イ 生活排水のトイレ以外の排水を貯留水槽に収集し、トイレに当該排水を供給することは、例えば、特開2001-56163号公報(段落【0015】参照)や特開2000-55413号公報、上記特開昭57-55333号公報等に示されるように、従来周知の事項である。
上記周知の事項は、水資源の再利用としてよく知られ、通常行われていることであるから、引用発明の生活排水槽1においても、上記周知の事項を適用し、生活排水槽1へ蓄えた生活排水をトイレの水洗用として供給して再利用することは当業者にとって容易である。
そして上記周知の事項は、生活排水のトイレ以外の排水を貯留水槽に収集することを同時に含むものであるから、生活排水の水資源としての再利用として上記周知の事項を適用するに際し、トイレ以外の、浴槽、台所、洗面所からの排水を蓄えるようなすことも容易である。

上記アで述べた生活排水を加熱源として用いる場合でも、上記イで述べたように生活排水を水資源の再利用のために用いる場合でも、トイレの排水を用いないことが一般的であり、引用発明の生活排水に一例としてトイレが例示されているとしても、収集する生活排水を、トイレの洗浄水以外の生活排水とすることが当業者にとって格別困難ということはない。

したがって、相違点C及びEに係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであり、そのことによる格別の効果もない。

(6)まとめ
以上のようであるから、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、相違点A?Fを合わせ考えても、その効果が格別とはいえない。

4.むすび
上記のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年2月18日に手続補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「(21E)水と「圧縮性流体である冷媒2」とを熱交換させる湯沸熱交換器と、
(21T)前記湯沸熱交換器で前記冷媒2との熱交換によって生成した湯を貯留する貯湯槽と、
(22W)前記冷媒2と「水、水溶液又はその他の不凍液である熱源媒体2」とを熱交換させる室外熱交換器W2と、
(3)低汚濁生活排雨水を収集して後記貯留水槽に供給する排雨水収集供給系統と、
(4’)前記排雨水収集供給系統から供給される低汚濁生活排雨水、又は、該低汚濁生活排雨水と生活用水とを受け入れて貯留する貯留水槽であって、
前記低汚濁生活排雨水、又は、前記低汚濁生活排雨水と前記生活用水との混合水(以下、「前記低汚濁生活排雨水と前記生活用水との混合水」を「低汚濁生活排雨水用水混合水」と略記する)と前記熱源媒体2とを熱交換させる槽内熱交換器2と;
「前記低汚濁生活排雨水又は前記低汚濁生活排雨水用水混合水」を生活建屋内の前記高汚濁排水発生箇所に供給するための低汚濁生活排雨水供給手段と;
「前記低汚濁生活排雨水又は前記低汚濁生活排雨水用水混合水」を下水道配管に放流するための放流手段と;
を備える貯留水槽と、
(25)循環経路中に圧縮機構と膨張機構を備え、前記冷媒2を「圧縮機構→湯沸熱交換器→膨張機構→室外熱交換器W2」の経路で循環させる冷媒循環系統2と、
(26)前記熱源媒体2を前記室外熱交換器W2と前記槽内熱交換器2との間で循環させる熱源媒体循環系統2と、
を備えることを特徴とする生活排水・雨水の総合的活用システム。」

1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、前記「第2の2.」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「第2の1.」で検討した本願補正発明を特定するための事項である、「低汚濁生活排水」を「低汚濁生活排雨水」と、「低汚濁生活排水収集供給系統」を「排雨水収集供給系統」と、「該低汚濁生活排水と水道水や井戸水等の生活用水(以下、「水道水や井戸水等の生活用水」を「生活用水」と略記する) 」を「該低汚濁生活排雨水と生活用水」と、「生活排水 」を「生活排水・雨水」としたものであって、利用する水について、生活排水だけとしていた限定を、雨水も含めるようにしたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項において、本願発明が複数の場合を含んでいるのに対して、その一つの場合に相当する本願補正発明が、前記「第2の3.」に記載したとおり、引用発明及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-23 
結審通知日 2012-08-14 
審決日 2012-08-28 
出願番号 特願2008-215599(P2008-215599)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 平上 悦司
亀田 貴志
発明の名称 生活排水の総合的活用システム  

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