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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12P
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C12P
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12P
管理番号 1277431
審判番号 不服2010-6943  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-02 
確定日 2013-07-30 
事件の表示 特願2004-556289「ウレタン基を有する(メト)アクリル酸エステルの酵素的製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年6月17日国際公開、WO2004/050888、平成18年3月16日国内公表、特表2006-508657〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年12月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成14年12月5日 ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成21年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年4月2日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成22年4月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
c)ウレタン基含有アルコール(C)
【化1】



[式中、R^(3)、R^(4)は互いに独立して水素またはC_(1)?C_(18)-アルキルであり、
Yは、C_(2)?C_(20)-アルキレンである]
を(メト)アクリル酸または(メト)アクリル酸と飽和アルコールとのエステル(D)と反応させ、かつ、
d)場合により、c)からの反応混合物を後処理することによって、ウレタン基含有(メト)アクリル酸エステル(F)を製造する方法において、
反応c)を酵素リパーゼ(E)の存在下で実施することを特徴とする、ウレタン基含有(メト)アクリル酸エステル(F)を製造する方法。」(下線は、補正箇所を示す。)
と補正され、以下の請求項2及び3が追加された。
「【請求項2】
R^(3)およびR^(4)が水素である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(D)が、(メト)アクリル酸と飽和アルコールとのエステルである、請求項1または2に記載の方法。」

2 補正の目的
本件補正は、(1)補正前の請求項1のR^(3)、R^(4)及びYについての選択肢の中から、R^(3)、R^(4)については「水素またはC_(1)?C_(18)-アルキル」に限定し、Yについては「C_(2)?C_(20)-アルキレン」に限定して補正後の請求項1とし、また、(2)新たに、補正後の請求項1を引用する請求項2及び補正後の請求項1または2を引用する請求項3を追加する補正を含むものである。
上記(1)については、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるが、上記(2)については、実質的に請求項を増加する補正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とすることはできない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。

3 独立特許要件について、
上記のとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないが、本件補正は請求項1についての補正に限れば、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるため、一応、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

4 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物1(原査定の引用文献2)、刊行物2(同引用文献3)、刊行物3(同引用文献5)及び刊行物4(同引用文献6)には以下の事項がそれぞれ記載されている。下線は当審で付加した。

(1)刊行物1:Makromol.Chem.,Vol.177,1976,p.2681-2695 の記載事項の当審抄訳
「N,N-ジ置換カルバモイルオキシアルキルアクリル酸エステル及びN,N-ジ置換カルバモイルオキシメタクリル酸エステルの単及び共重合」と題する論文であって
(1a)2681頁 要約欄
「2-ヒドロキシアルキルカルバメート(2)のメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル(3a-i)が合成され、ラジカル単及び共重合された。単重合は、通常の反応速度の法則に従うことが分かった。重合体の物理化学的特徴は、粘度、GPC、X線、DTA、及びNMRの測定により明らかになる、嵩高い及び極性のある側鎖により決まる。一連のコモノマーを用いたラジカル共重合におけるメタクリル酸エステルの挙動は、メタクリル酸メチルのものと類似する。しかしながら、共重合体へ新たなモノマーを組み込む傾向は、メタクリル酸メチルよりも劣る。この事実は、またも、異なる立体効果によるものである。」

(1b)2682頁6?9行
「この実験の主題は、N,N-ジ置換カルバモイルオキシアルキルアクリル酸エステル及びN,N-ジ置換カルバモイルオキシメタクリル酸エステルの単及び共重合、この単及び共重合挙動、及び物理的、化学的特徴の記述である。」

(1c)2682頁10?最終行
「モノマーの記述は、反応式から歴然とする。




(1d)2683頁1?36行
「実験部分
N,N-ジ置換カルバモイルオキシアルキルアクリル酸エステル及びN,N-ジ置換カルバモイルオキシメタクリル酸エステル(3a-i)の記述
a)N,N-ジ置換2-ヒドロキシエチルまたは2-ヒドロキシ-1-メチルエチルカルバメート(2):
・・・
b)3a-iの記述
方法A:窒素流通下、約1.1?1.2モルの蒸留したてのメタクリル酸塩化物またはアクリル酸塩化物が、アセトン0.5リットルと、塩基性捕捉剤としてトリメチルピリジン1.5モルまたはジアザビシクロオクタン(Dabco)1モルを混合した、1モルの2-ヒドロキシアルキルカルバメート(2)に滴下された。重合を防止するために、1?2gのフェノチアジン溶液を追加する。約40℃で10時間ほど撹拌する。析出した塩酸塩(トリメチルピリジン塩酸塩、またはDabco塩酸塩)は濾過され、アセトンで洗浄される。濾過液は、回転蒸発器で濃縮され、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和される。有機相の分離と乾燥(硫酸ナトリウムで)の後、真空油圧ポンプで分別蒸留される。優れた純度のモノマーができる。しかしながら、副産物として、例えば、重合を妨げるメタクリル酸無水物のような、二官能性の不純物もできる。したがって、多くの場合、方法Bの方がよい。
方法B:この方法では、前記したようにアセトン0.5リットルと3 gのフェノチアジンの混合溶液の中に溶けている、1モルの 2-ヒドロキシアルキルカルバメート(2)の上へ、窒素環流の下で、大過剰のアクリル酸塩化物またはメタクリル酸塩化物(約1.5モル)が滴下されて添加される。約5?20℃の温度で、生じてくる塩酸は窒素で除去される。この反応が終わると、余分な酸クロライドと溶剤は回転式蒸留器で蒸留されながら取り除かれる。その後、真空油圧ポンプで分別蒸留される。2-(N,N-ジメチルカルバモイルオキシ)エチルメタクリル酸(3a)の記述では、この方法でN,N-ジメチル-(3-クロロ-2-メチル) プロピオンアミド(4)、2-メタクリルオキシ-エチル-(3-クロロ-2-メチル)プロピオネート(5)、2-(N,N-ジメチルカルバモイルオキシ) エチル-(3-クロロ-2-メチル)プロピオネート(6)、およびエチレンジメタクリレート(7)が副産物として得られ、これらはガスクロマトグラフィーと質量分析で証明された。説明したモノマーの性質付けには、元素分析が役立った。」

(2)刊行物2:特開2000-139488号公報
(2a)「【請求項1】エステル化またはエステル交換に触媒作用する酵素の存在で、一般式(I):
【化1】


[式中、R^(1)および/またはR^(7)はR^(2)と同じかまたは[R^(4)]_(w)-[R^(5)]_(x)-[R^(6)]_(y)-R^(8)を表し、・・・
R^(4)は式O、NH、NR^(2)、Sの二価の基または式(OSi(CH_(3))_(2))_(u)の基を表し、uは1?200であり、
R^(5)は1?24個の炭素原子を有する同じかまたは異なるアルキル基・・・
R^(6)はO_(e)-C_(h)H_(2h)-C_(i)H_(2i-j)R^(9)_(j)を表し、この場合にeは0または1であり、hは0?24であり、iは0?24であり、jは1?3であり、(w+e)の合計は0?1であり
R^(8)は・・・yが0である場合はR^(8)はOH基・・・]で表されるヒドロキシ官能性および/またはポリオキシアルキレン変性シロキサン誘導体を用いてアクリル酸および/またはメタクリル酸またはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをエステル化またはエステル交換する方法。
【請求項2】 酵素として、この種のエステル化およびエステル交換反応に触媒作用する、リパーゼ、エステラーゼまたはプロテアーゼから選択される、特に固定された形のヒドロラーゼを使用する請求項1記載の方法。」

(2b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の対象は、エステル化またはエステル交換に触媒作用する酵素の存在でヒドロキシ官能性および/またはポリオキシアルキレン変性シロキサン誘導体を用いてアクリル酸および/またはメタクリル酸またはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをエステル化またはエステル交換する方法およびこれらの酸またはエステルの使用である。」

(2c)従来技術とその問題点について
「【0007】この場合に通常の方法はヒドロキシ官能性前駆物質から出発し、相当するアクリル酸および/またはメタクリル酸またはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルから出発してエステル化法またはエステル交換法によりアクリロイル基および/またはメタクリロイル基を導入する。通常の場合にはそのために触媒の存在は不可欠である。米国特許第4777265号明細書においては、例えばこれらの反応のための触媒としてチタン、ジルコン、鉄および亜鉛と1、3-ジカルボニル化合物のキレート錯体が記載される。例えば米国特許第5091440号明細書におけるように相当するエステル化反応に触媒作用する酸も頻繁に用いられる。
【0008】これらの方法は、通常の場合は80℃より高い温度、しばしば100℃より高い温度で進行し、この温度でアクリレートおよび/またはメタクリレートの好ましくない重合を確実に抑えるために、ラジカル捕捉剤(例えばメチルヒドロキノン)による反応混合物の付加的な安定化が必要である。引き続き好ましくない後続反応を避けるために、多くの使用分野のために触媒を除去するかまたは少なくとも中和しなければならない。これは、金属酸化物、金属水酸化物または相当する金属の塩または触媒として使用される酸の塩を形成し、引き続き一般に濾過することにより、費用のかかる処理工程を必要とする。アクリロイルおよび/またはメタクリロイル含有反応混合物のこの種の濾過は技術的および作業安全技術的に費用がかかり、これによりしばしば長い時間がかかる。高い反応温度に起因してこうして製造されるアクリロイルおよび/またはメタクリロイル官能性化合物はしばしば強く着色される(黄色から褐色、黒にまで)。これはしばしばこれらのアクリロイルおよび/またはメタクリロイル化合物を使用される原料の着色に関して高い要求を有する使用に直接使用することを妨げる。この場合に、例えば放射線硬化被覆、特にクリアーラッカー中の添加物としての使用が挙げられる。」

(2d)「【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、アクリル酸および/またはメタクリル酸またはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルをヒドロキシ官能性シロキサンおよび/またはポリオキシアルキレン変性シロキサンを用いてエステル化またはエステル交換する簡略化された方法を提供することである。このような製造方法は、特に反応生成物の明らかに明るい色を可能にし、(非選択的触媒作用による)副生成物の形成を回避し、生成物から酵素触媒の複雑でない除去を可能にし、好ましくない、制御されないアクリレートおよび/またはメタクリレート誘導体のラジカル重合を回避するべきである。」

(2e)「【0018】本発明により、酵素触媒作用されるアクリル酸および/またはメタクリル酸またはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルのエステル化またはエステル交換により反応することができるシロキサン誘導体の例は以下のとおりである。
・・・
【0025】
【化10】
・・・



(2f)「【0026】低い温度、有利には20?100℃、特に40?70℃および穏和な条件での前記化合物を用いるアクリル酸および/またはメタクリル酸またはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの酵素によるエステル化またはエステル交換は、生成物の明るい色、他の場合には例えば化学触媒から生じることがある副生成物の形成の回避、生成物からの酵素触媒の複雑でない除去およびアクリロイルおよび/またはメタクリロイル化合物の好ましくないおよび制御されないラジカル重合の回避にもとづき有利である。」

(2g)「【0029】触媒として有利に使用される酵素はヒドロラーゼ、特にエステラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼである。酵素は純粋な形でまたは化学的にまたは物理的に結合している担体に固定化された形で使用することができる。」

(2h)「【0038】
【実施例】例
・・・ポリオキシアルキレン変性シロキサン408gを、ブチルアクリレート123gおよび酵素Novozym(R)435 10.8gと混合し、70℃に加熱した。真空下(20?40ミリバール)で遊離したブタノールを蒸留した。反応時間8時間後、触媒を濾過し、残りのブチルアクリレートを100?110℃で蒸留した。ヒドロキシ基の65%がアクリル化した(ヒドロキシ価により決定)。」

(3)刊行物3:Biotechnology Letters,Vol.12,No.11,1990,p.825-830 の記載事項の当審抄訳
「有機溶媒中でのエステル交換を触媒するリパーゼを用たアクリル酸モノエステル中間体の調製」と題する論文であって
(3a)825頁下から19?14行
「より高い水準の(メタ)アクリル酸エステル合成のための従来の化学的経路は、直接的な酸触媒エステル化反応、または、エステル交換(Nemec and Bauer,1978; Nemec and Kirch)であって、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルの合成にあたり、未反応のアルコール、部分及び完全置換エステル生産物の複合混合物を生産するため、効率的でない。」

(3b)825頁下から3行?826頁10行
「リパーゼは、様々なエステル交換反応を、ほぼ無水有機溶媒中で触媒することが最近示され(Klibanov,1986)、豚膵臓のリパーゼを用いて、ジオールの立体選択的モノアクリル化反応も含まれている(Cesti et.al.,1985)。より最近、酵素的エステル交換反応は、30%以下の水の存在下で安定化され固定化した豚肝臓エステラーゼを用いたヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルの合成に採用されている(Tor et.al.,1990)。
この論文では、我々は、一連のジオールからヒドロキシルアルキルアクリル酸エステル(モノエステル)を合成するにあたり、市販のクロモバクテリウム ビスコサム由来のリパーゼを用い、ほぼ無水の有機溶媒中で酵素的エステル交換反応による、Cestii et.al.(1985)の一般的手順を採用した。」

(3c)826頁12?17行
「酵素
クロモバクテリウム ビスコサム(L-050、53,000オリーブオイル単位/g固形分)由来の天然の市販のリパーゼ(グリセロールエステルヒドロラーゼ、E.C.3.1.1.3)を、バイオキャトリスト社、Pontypridd,Walesから購入した。カールフィッシャー滴定法(Scholz,1984)で2.1%w/wの水分を含有すると測定された酵素粉末は、反応混合物に直接添加された。」

(3d)826頁34?38行
「反応条件
エステル交換は、10mlエチルアクリレート中の5mmol(500mM)のジオールを入れたコック付25mlコニカルフラスコ内で行われ、排気口付軌道インキュベータ(Gallenkamp)で、200rpm、30℃で撹拌された。反応は、100mgの酵素を反応混合物に添加して開始された。」

(3e)827頁9?12行
「望まれる反応は、位置選択的、酵素的エステル交換反応であり、以下のものである。

リパーゼ
ジオール+エチルアクリレート → アクリルモノエステル+エタノール」

(3f)827頁26?27行、Table I.
「反応は、表1に示すように、直鎖状、分岐及びその他のジオールで行われた。




(4)刊行物4:Biotechnology Techniques,Vol.10,No.4,1996,p.283-286 の記載事項の当審抄訳
「リパーゼを触媒とした効果的なアクリル及びメタクリル酸エステルの調製」と題する論文であって
(4a)284頁5?30行
「材料と方法
材料:固定化リパーゼ Candida antarctica由来のNovozym435は、Novo Nordisk Biotechnologic GmbH(Mainz,Germany)から寄贈された。・・・
生物変換:a)103mg(1.2mmol)メチルアクリレート及び138mg(0.8mmol)1-ウンデカノールが、6mlの有機溶媒中(表1)に溶解された。次に、60mgのNovozym435が、撹拌された反応溶液中に室温で添加された。反応後、リパーゼは濾過により除かれ、液体サンプルは、GC(HP-Ultra2,25m)で、ラウリル酸メチルエステルを内部標準として分析された。
b)102mgのNovozym435が、8.3ml(92.2mmol)メチルアクリレート及び172mg(1.0mmol)1-ウンデカノールそれぞれの撹拌溶液中に30℃で与えられた。2時間後触媒が濾過により除去されa)で記載した分析が行われた。この工程が,同じ生物触媒サンプルで18サイクル繰り返された。
c)100mgのNovozym435が、90.0mmolのアクリルまたはメタクリルメチルエステル及び1.0mmolのアルコールの撹拌溶液(表2)に30℃で添加された。分析はa)と同様に行われた。
d)35.8ml(397.6mmol)のメタクリル酸及び769mg(4.5mmol)の1-ウンデカノールの撹拌溶液に、443mgのNovozym435が添加された。40℃1日後、触媒は濾過で除かれた。反応混合物から生成物が、過剰のメチルアクリレートを油圧ポンプ(5×10^(-2)mbar)により蒸発させて、単離された。
化学的エステル交換:8滴のH_(2)SO_(4)(98%)が8.3ml(92.2mmol)のメチルアクリレートと780mg(4.5mmol)の1-ウンデカノールに添加された。40℃24時間後、濾過により全ての固形物(ポリマー)が除かれ、反応混合物は、濃縮NaHCO_(3)-溶液で振とうされ、ジエチルエーテルで抽出された。NaSO_(4)上の有機相を乾燥させた後、過剰なメチルアクリレートを油ポンプ(5×10^(-2)mbar)により蒸発させて、反応混合物から生成物が単離された。
化学的及び酵素的エステル交換で調製された生成物の試料が、GC/MSにより同定された。」

(4b)285頁右欄下から6?1行
「もし、ウンデシルアクリレートの、Novozym435により触媒された予備合成と硫酸触媒による予備合成を比較すると、酵素触媒は、優位性がある方法である。化学触媒反応の場合、重合が起こるために、収率が酵素触媒よりも劣る。」

(4c)285頁反応式




(4d)286頁表2



5 対比・判断
上記刊行物1の記載事項(特に上記(1c)(1d))から、刊行物1には、
「下記の反応式で示される、N,N-ジ置換2-ヒドロキシエチルカルバメート及びN,N-ジ置換2-ヒドロキシ-1-メチルエチルカルバメート(2) と、アクリル酸塩化物及びメタクリル酸塩化物(1)を、塩基存在下または窒素環流下で反応させ、蒸留等の後処理をして、N,N-ジ置換カルバモイルオキシアルキルアクリル酸エステル及びN,N-ジ置換カルバモイルオキシメタクリル酸エステル(3a-i)を製造する方法


R^(1)ないしR^(4)は、上記(1c)の表に示すとおりである。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「N,N-ジ置換2-ヒドロキシエチルカルバメート及びN,N-ジ置換2-ヒドロキシ-1-メチルエチルカルバメート(2)」は、本願補正発明の「c)ウレタン基含有アルコール(C)
【化1】



[式中、R^(3)、R^(4)は互いに独立して水素またはC_(1)?C_(18)-アルキルであり、
Yは、C_(2)?C_(20)-アルキレンである]」で、R^(3)、R^(4)が水素またはアルキルであり、YがC_(2)?C_(3)のアルキレンであるものに該当する。
(イ)刊行物1発明の「アクリル酸塩化物及びメタクリル酸塩化物(1)」と本願補正発明の「(メト)アクリル酸または(メト)アクリル酸と飽和アルコールとのエステル(D)」とは、(メト)アクリル酸化合物である点で共通する。
(ウ)刊行物1発明の「N,N-ジ置換カルバモイルオキシアルキルアクリル酸ステル及びN,N-ジ置換カルバモイルオキシメタクリル酸エステル(3a-i)」の内、(3a)、(3b)、(3f)、(3g)、及び(3i)は、その化学構造(上記(1c))から、本願補正発明の【化1】の「ウレタン基含有(メト)アクリル酸エステル(F)」に該当する。
(エ)刊行物1発明の「塩基存在下または窒素環流下で反応させ」ることと、本願補正発明の「反応c)を酵素リパーゼ(E)の存在下で実施すること」とは、反応促進条件下で反応を実施する点で共通する。

したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
c)ウレタン基含有アルコール(C)
【化1】



[式中、R^(3)、R^(4)は互いに独立して水素またはC_(1)?C_(18)-アルキルであり、
Yは、C_(2)?C_(20)-アルキレンである]
を(メト)アクリル酸化合物と反応させ、かつ、
d)場合により、c)からの反応混合物を後処理することによって、ウレタン基含有(メト)アクリル酸エステル(F)を製造する方法において、
反応c)を反応促進条件下で実施する、ウレタン基含有(メト)アクリル酸エステル(F)を製造する方法である点。

(相違点1)
(メト)アクリル酸化合物が、本願補正発明では、(メト)アクリル酸またはその飽和アルコールエステルであるのに対して、刊行物1発明では、アクリル酸またはメタクリル酸塩化物である点。

(相違点2)
反応促進条件が、本願補正発明では、「酵素リパーゼ(E)の存在下」であるのに対して、刊行物1発明では「塩基存在下または窒素環流下」である点。

そこで、上記相違点について検討するが、両相違点は相互に関連するのでまとめて検討する。また、以下、メタクリル酸およびアクリル酸をまとめて、本願明細書の表記に合わせて、「(メト)アクリル酸」という。
刊行物2には、触媒として酵素Novozym(R)435の存在下で、シロキサン誘導体と(メト)アクリル酸またはそのエステルと、エステル化またはエステル交換反応を行い、シロキサン誘導体の(メト)アクリル酸エステルを製造する方法が記載されている(上記(2a)(2h))。そして、従来技術と発明の課題として、触媒としてチタン、ジルコン、鉄、亜鉛等が用いられたり、酸触媒が用いられており、高温で反応させるため、重合を抑えるためにラジカル捕捉剤による安定化が必要であったこと、反応後触媒を除去する必要があり、費用と時間がかかかること、また、高温の反応で製造されたものが着色される問題が有ることが記載され(上記(2c))、酵素触媒を用いることで、これらの課題が解決することが記載されている。
刊行物3には、リパーゼ(グリセロールエステルヒドラーゼ、E.C.3.1.1.3)の存在下に、各種ジオールとエチルアクリレートを反応させて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸モノエステルを製造することが記載されている(上記(3c)?(3f))。そして、従来の化学的経路は、直接的な酸触媒エステル化反応またはエステル交換であって、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルの合成は、未反応のアルコール、部分及び完全置換エステル生産物の複合混合物を生産するため効率的でないことが記載されている(上記(3a))。
刊行物4には、Candida antarctica由来のNovozym435の存在下に、(メト)アクリル酸エステルと各種アルコールを反応させて、(メト)アクリル酸エステルを製造する方法、及び硫酸を酸触媒として用いた化学的方法による(メト)アクリル酸エステルの製造方法が記載されている(上記(4a))。そして、酵素触媒は、優位性があり、化学触媒反応の場合、重合が起こるために、収率が酵素触媒よりも劣ることが記載されている(上記(4b))。
上記刊行物2ないし4の記載事項から、(メト)アクリル酸またはそのエステルと各種化学構造のアルコール基含有化合物とのエステル化反応またはエステル交換反応を、化学的な触媒を用いて行った場合、高温の反応のため重合反応が起き、また、副生成物が生成され、製造したものが着色してしまうこと、費用や時間がかかること、収率が悪いこと等の問題点があることは、本願優先日前の周知の課題であり、これを解決するために、市販のNovozym435等のリパーゼを酵素触媒として用いることは、本願優先日前の周知技術であったといえる。
そして、刊行物1(上記(1d))には、塩基触媒を用いる方法Aでは、重合防止剤を用いる必要があり、また、副産物として重合を妨げるメタクリル酸無水物のような二官能性の不純物もできることが記載され、この方法より好ましいとされる窒素環流を用いる方法Bでも、副生成物ができることが記載されており、(メト)アクリル酸の塩化物を用いた化学的なエステル化方法には、問題点があることが記載されているといえる。
エステル化反応にアクリル酸の塩化物を用いることは、刊行物2ないし4には記載されていないが、一般にエステル化方法として、カルボン酸エステルとアルコールとのエステル交換反応、カルボン酸塩化物や無水カルボン酸とアルコールとの反応、または、カルボン酸とアルコールを酵素触媒を用いる方法等は、本願優先日前の周知技術であり(例えば、国際公開第01/28961号1頁下から13?9行の従来技術、及び化学的方法については、「化学大辞典1 縮刷版 1993年縮刷版第34刷発行 共立出版(株)p.873-875のエステル化の項目」参照。)、カルボン酸塩化物を用いる方法を酵素触媒を用いた方法とする場合、カルボン酸塩化物を、リパーゼ等の酵素による反応が可能な、カルボン酸やそのエステルとすることは、当業者が当然に行うことといえる。
そうすると、重合防止剤が必要であったり、副生成物ができるという問題点がある刊行物1発明において、これらの問題を解決することが期待できる、刊行物2ないし4記載の上記周知技術である、エステル化またはエステル交換をNovozym435等のリパーゼを触媒として用いる方法を採用し、その際に(メト)アクリル酸の塩化物を(メト)アクリル酸またはそのエステルとすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
また、酵素反応には、基質特異性があることは技術常識であるが、上記のとおり、リパーゼNovozym435は、アルキレン側鎖の長さが種々のアルコールと(メト)アクリル酸またはそのエステルとのエステル化またはエステル交換反応を触媒することから、刊行物1発明の(2)のカルバメート基(ウレタン基)含有アルコールにも、この酵素を適用することを阻害するものではない。

(本願補正発明の効果について)
本願明細書段落【0013】等に記載された、高い変換率及び高い純度で、簡単かつ毒性がないとされる出発材料から、低い色数つまり着色が無く、粘度が低いつまり重合が起こってない、ウレタン基含有(メト)アクリル酸エステルを製造できるという効果は、刊行物1ないし4の記載事項から予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年4月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年9月30日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
c)ウレタン基含有アルコール(C)
【化1】



[式中、R^(3)、R^(4)は互いに独立して水素、C_(1)?C_(18)-アルキル、場合によっては1個または複数個の酸素原子および/または硫黄原子および/または1個または複数個置換されたかまたは非置換のイミノ基によって中断されたC_(2)?C_(18)-アルキル、C_(2)?C_(18)-アルケニル、C_(6)?C_(12)-アリール、C_(5)?C_(12)-シクロアルキルまたは5?6員の酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子を有するヘテロ環基、その際、前記の基は、それぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子および/またはヘテロ環基によって置換されていてもよいか、あるいは式-[X_(i)]_(k)-Hの基であり、
Yは、C_(2)?C_(20)-アルキレン、C_(5)?C_(12)-シクロアルキレンまたは1個または複数個の酸素原子および/または硫黄原子および/または1個または複数個置換されたかまたは非置換のイミノ基によってか、および/または1個または複数個のシクロアルキル、-(CO)-、-O(CO)O-、-(NH)(CO)O-、-O(CO)(NH)-、-O(CO)-または-(CO)O-基によって中断されたC_(2)?C_(20)-アルキレン、その際、前記の基はそれぞれアリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ヘテロ原子および/またはヘテロ環基によって置換されていてもよく、
kは、1?50の数を示し、かつ、
X_(i)は、i=1?kであり、それぞれ、基-CH_(2)-CH_(2)-O-、-CH_(2)-CH_(2)-N(H)-、-CH_(2)-CH_(2)-CH_(2)-N(H)-、-CH_(2)-CH(NH_(2))-、-CH_(2)-CH(NHCHO)-、-CH_(2)-CH(CH_(3))-O-、-CH(CH_(3))-CH_(2)-O-、-CH_(2)-C(CH_(3))_(2)-O-、-C(CH_(3))_(2)-CH_(2)-O-、-CH_(2)-CH_(2)-CH_(2)-O-、-CH_(2)-CH_(2)-CH_(2)-CH_(2)-O-、-CH_(2)-CHVin-O-、-CHVin-CH_(2)-O-、-CH_(2)-CHPh-O-および-CHPh-CH_(2)-O-から成る群から選択されてもよく、その際、Phはフェニルであり、かつVinはビニルを示す]
を(メト)アクリル酸または(メト)アクリル酸と飽和アルコールとのエステル(D)と反応させ、かつ、
d)場合により、c)からの反応混合物を後処理することによって、ウレタン基含有(メト)アクリル酸エステル(F)を製造する方法において、
反応c)を酵素リパーゼ(E)の存在下で実施することを特徴とする、ウレタン基含有(メト)アクリル酸エステル(F)を製造する方法。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「第2 4」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明の、R^(3)、R^(4)及びYについての選択肢に、さらに選択肢を付加するをものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 5」に記載したとおり、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-28 
結審通知日 2013-03-06 
審決日 2013-03-19 
出願番号 特願2004-556289(P2004-556289)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12P)
P 1 8・ 572- Z (C12P)
P 1 8・ 575- Z (C12P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 知美伊藤 良子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 ▲高▼岡 裕美
関 美祝
発明の名称 ウレタン基を有する(メト)アクリル酸エステルの酵素的製造方法  
代理人 二宮 浩康  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
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