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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1277610
審判番号 不服2011-25191  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-22 
確定日 2013-08-05 
事件の表示 特願2000-283831号「ボール・グリッド・アレイパッケージのフットプリントから、はんだボールのポピュレーションを選択的に減らすことにより、デバイスの信頼性を高める方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月11日出願公開、特開2001-127203号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年9月19日(パリ条約による優先権主張 1999年9月20日,アメリカ合衆国)の出願であって、平成23年7月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成23年11月22日に審判請求がなされた後、当審において平成24年8月16日付けで拒絶理由の通知がされ、それに対する手続補正が平成24年12月17日付けでなされたものである。
そして、本願請求項に係る発明は、平成24年12月17日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1ないし請求項25に記載された事項によって特定されるものと認められ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「ボール接合疲労を低減させることによってボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージの信頼性を高める方法であって、
前記パッケージのフットプリントから、はんだボール及びそれに対応するはんだボール・パッド、バイア、並びにトレース又は線の選択的な削減の結果空けられた空間を介して、複数のトレース又は線が配路され、前記フットプリントが複数の行のボール・グリッド・マトリクスを含み、前記選択的な削減が、設計規則に従った最大の可能性の数を有する前記複数の行のボール・グリッド・マトリクスに対して行われ、前記複数の行の1つの行の少なくとも1つの辺が、前記最大の可能性の数に匹敵するピッチに等しい第1のボール・ピッチと、1つ又は複数のボール及びそれに対応するはんだボール・パッド、バイア、並びにトレース又は線の選択的な削減の結果のピッチに匹敵する第2のボール・ピッチとを有し、前記ボール接合疲労が前記選択的な削減により低減される、
方法。」

2.当審で通知した拒絶理由
平成24年8月16日付けで通知した拒絶理由は,以下のとおりである。
「本件出願の請求項1?8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:1998年5月28日 日刊工業新聞社 初版1刷発行 春日壽夫編著 「表面実装ポケットブック 超小型パッケージCSP/BGA技術」83?85頁 6-3CSPの標準化(3)パッケージ外形と端子配置

刊行物2:特開平9-172105号公報 」

3.当審での拒絶の理由に引用した文献等の開示事項
(1)本願の優先権主張日の前に頒布された上記刊行物1(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次のアの事項が記載されている。 なお、下線部は当審において付与したものである。

ア「(3)パッケージ外形と端子配置《中略》
また、市場での実績がある0.8mmピッチと0.5mmピッチについては,各社がバリエーションを絞り込んでいけるような標準的な端子配列を決めてある。(ハーフピッチずれが発生しないように,1つのパッケージ外形に対してオーバーハング寸法を固定して端子配列を決めてある.オーバーハング量は、各社の構造と製造方法によって異なるが,実績における最小値を採用し,各社それに合わせて技術開発を合意したものである).
また,最外周を除いてデポピュレーション(ピンを省くこと)は自由になっている(最外周を全てデポピュレーションするとオーバーハングの寸法が変わってしまうので対象外としている)」

・上記アには、「パッケージ外形と端子配置に関して、デポピュレーション(ピンを省くこと)による選択的な削減の方法」が記載されていることが明らかである。

《引用発明》
上記引用例1の記載事項ア及び図に示された内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「パッケージ外形と端子配置に関する技術で、
1つのパッケージから、デポピュレーション(ピンを省くこと)による、端子配列を含み、前記デポピュレーションが、オーバーハング量は実績における最小値を採用した、0.8mmピッチと0.5mmピッチの標準的な端子配列に対して行われ、最外周を全てデポピュレーションするとオーバーハングの寸法が変わってしまうので対象外としている選択的な削減の方法。」

(2)本願の出願前に頒布された上記刊行物2(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次のイの事項が記載されている。

イ 【図4】には、「一定の大きさ以上の空間に、複数のトレース又は線を配路する」例が示されている。

(3)また、周知な事項として、上記刊行物1(「表面実装ポケットブック 超小型パッケージCSP/BGA技術」)、149?150頁の(1)Micro Star BGAの概要の図7.1には、

ウ 「二種類のボールピッチを有するフットプリント」が示されている。

(4)同様に、上記刊行物1の第193?196頁の「8-3実装後のはんだ接続信頼性」の項の「はんだボールの径が小さくなると共に,単位面積当たりの応力が大きくなり弱い部分に破断が生じるのである(図8.3)」(193頁)の記載及び「表8.1 FBGAのはんだ接続信頼性のピッチ欄と実装信頼性」(195頁)の表から、

エ 「ボール径やピッチを小さくすることにより、ボール接合疲労が増加 すること」が周知な事項として明らかである。


4.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「パッケージ」は、引用例1の第83頁「表6.5 メモリ用のCSPの規格」パッケージ欄に見られるように、本願発明おける「パッケージのフットプリント」と同様な「パッケージのフットプリント」を意味している。
引用発明の「デポピュレーション(ピンを省くこと)」は、ピンの削減であり、削減されれば当然空間が出来、CSPでは其処に配線がなされるのが通常であるから、該「デポピュレーション(ピンを省くこと)」は、本願発明の「はんだボール及びそれに対応するはんだボール・パッド、バイア、並びにトレース又は線の選択的な削減の結果空けられた空間を介して、・・・トレース又は線が配路され、」を意味している。

引用発明の「端子配列」は、本願発明と同様な「前記パッケージ〈パッケージのフットプリント〉が複数の行のボール・グリッド・マトリクス」を意味している。

引用発明の「オーバーハング量は、実績における最小値を採用した・・・標準的な端子配列」は、本願発明の「設計規則に従った・・・数を有する前記複数の行のボール・グリッド・マトリクス」に相当する。

引用発明の「0.8mmピッチと0.5mmピッチ」は、本願発明の「複数の行の1つの行の少なくとも1つの辺(で)・・・第1のボール・ピッチ」に相当している。

引用発明の「最外周を全てデポピュレーションするとオーバーハングの寸法が変わってしまうので対象外としている」は、最外周でも選択的な削減が行われることを意味し、削減箇所には、第2のボール・ピッチが存在することになることが明らかであるから、該最外周のデポピュレーションは、「1つ又は複数のボール及びそれに対応するはんだボール・パッド、バイア、並びにトレース又は線の選択的な削減の結果のピッチに匹敵する第2のボール・ピッチを有する」ことになる。

なお、該「第1のボール・ピッチ」、「第2のボール・ピッチ」に関しては、前記3.(3)ウに周知な事項として「二種類のボールピッチを有するフットプリント」が示されている。

そうすると、両者は次の点で一致し、
「パッケージのフットプリントから、はんだボール及びそれに対応するはんだボール・パッド、バイア、並びにトレース又は線の選択的な削減の結果空けられた空間を介して、トレース又は線が配路され、前記フットプリントが複数の行のボール・グリッド・マトリクスを含み、前記選択的な削減が、設計規則に従った数を有する前記複数の行のボール・グリッド・マトリクスに対して行われ、前記複数の行の1つの行の少なくとも1つの辺が、前記第1のボール・ピッチと、1つ又は複数のボール及びそれに対応するはんだボール・パッド、バイア、並びにトレース又は線の選択的な削減の結果のピッチに匹敵する第2のボール・ピッチとを有する選択的な削減の方法。」

以下の点で相違する。
a:本願発明は、「ボール接合疲労を低減させることによってボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージの信頼性を高める方法」であるのに対し、引用発明には上記の点が不明な点。

b:本願発明では、空けられた空間に「複数の」トレース又は線が配路されるのに対し、引用発明には「複数」かどうか不明である点。

c:本願発明では、最大の可能性のボール数を有するマトリクスを対象としているのに対し、引用発明はそのようになっているのかどうか不明な点。

5.当審の判断
aの相違点に関して、
「ボール径やピッチを小さくすることにより、ボール接合疲労が増加すること」は当該分野の技術常識といえるくらい周知な事項(上記3.(4)エ参照)であることを勘案すると、引用発明のデポピュレーションは、ボール径やピッチを小さくすることなく端子配列する技術であるから、当然、ボール径やピッチを小さくすることによって生ずるボール接合疲労を低減させ、ボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージの信頼性を高める方法と言うことが出来る。
したがって、相違点aは、効果を記載したもので、実質的な相違点とはいえない。

bの相違点に関して、
一定の大きさ以上の空間に、複数のトレース又は線を配路することは、当該分野の慣用手段であって、引用例2にも示されている(上記3.(2)イ参照)ことであるから、相違点bについては、単に慣用手段を採用したに過ぎない。

cの相違点に関しては、「最大の可能性」の用語が具体的ではなく、明瞭な記載とはいえないが、それはさておいても、「デポピュレーション」は通常、空間が多くあるフットプリントで行うものではなく、最大の可能性のボール数を有するもので行うことを勘案すれば、引用発明の端子配列においても前提として配慮されていることと認められる。
したがって、相違点cは、引用発明に内包されていると言うことが出来るから実質上の相違点とはいえない。

よって、本願発明(本願請求項1に係る本願発明)は、引用発明及び引用例2に記載された事項と周知な事項や慣用手段から、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された事項と周知な事項や慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-06 
結審通知日 2013-03-08 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2000-283831(P2000-283831)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 薫昭  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
杉浦 貴之
発明の名称 ボール・グリッド・アレイパッケージのフットプリントから、はんだボールのポピュレーションを選択的に減らすことにより、デバイスの信頼性を高める方法  
代理人 浅村 肇  
代理人 林 鉐三  
代理人 浅村 皓  
代理人 清水 邦明  

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