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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1277612
審判番号 不服2011-27038  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-14 
確定日 2013-08-05 
事件の表示 特願2001- 33249「液晶表示装置及びその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月23日出願公開、特開2002-236474〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成13年2月9日の出願であって、平成23年4月5日付けで手続補正がなされ、同年8月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月14日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成23年4月5日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成23年4月5日付け補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「複数の走査線及び複数の信号線を有する液晶パネルと、複数の基準電圧を出力する基準電圧発生回路と、前記液晶パネルの走査線を順次走査する垂直ドライバと、前記基準電圧発生回路からの複数の基準電圧を受けて前記液晶パネルの信号線に階調電圧を供給する水平ドライバと、入力データを1水平同期期間ごとに極性反転して階調データを作成しこの階調データに対応した基準電圧を液晶パネルに印加するように水平ドライバを制御する制御回路とを有し、前記制御回路が階調表示に用いる階調-γ補正電圧特性は、最上位階調と最下位階調との中心と中心電位との交点で点対称の関係となっており、
前記階調-γ補正電圧特性が非直線形状をなしており、この特性を満たすように、前記入力データの階調に応じて、前記水平ドライバから前記液晶パネルにγ補正電圧を印加することを特徴とする液晶表示装置。」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭62-3394号(実開昭63-113196号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。
(1)「この考案は多階調デジタル映像信号を入力して液晶表示素子にその映像を表示する液晶駆動装置に関し、特に液晶表示素子を交流駆動する…略…ものである。」(1頁最下行?2頁8行)

(2)「液晶表示素子においては、その液晶の寿命を長くする点から、同一個所に駆動電圧を印加する場合に、その部分の液晶に対し、印加方向を交互に反転させながら印加する、いわゆる交流駆動が行われている。」(2頁10?14行)

(3)「以下この考案を図面を参照して詳細に説明しよう。
1画素信号がmビットの信号(データ)A_(0)?A_(m-1)、つまり2^(m)階調の場合、いま第1図に示すようにその各ビットごとに端子61の交流化指令FRとの排他的論理和を回路62_(0)?62_(m-1)でそれぞれとることを考える。画素信号がA_(0)?A_(2)の3ビットの場合、これが2進数で順次変化した時の各階調レベルと対応した電圧V_(0)?V_(7)との関係は第2図に示すようになる。点線63は交流化指令FRが“0”(低レベル)のままの場合であり、実線64が交流化指令FRを“1”(高レベル)とした時の対応関係である。交流化指令FRは入力画像信号のフレームごとに“1”と“0”をとる。
この第1図に示す回路によれば交流化指令FRの制御により簡単に画像信号の階調レベルを反転させることができる。この階調レベルの反転を利用して液晶表示素子の液晶に印加する電圧の方向を同一階調レベルで反転させるには、第3図に示すように共通電極(各画素電極と液晶を介して対向する液晶内の電極)に対する印加電圧を曲線65のようにする。すなわち、共通電極に対する印加電圧65としては0Vと+V_(7)とを、交流化指令FR(審決注:「交流化用指令FR」は「交流化指令FR」の明らかな誤記なので訂正して摘記した。)と同期して画像信号フレームごとに交互に取る。
また、通常、アクティブ液晶表示素子の場合において、その素子に加える電圧に対して、液晶の画素電極に加わる電圧が、いくらかの電位の変化をともなう場合には、その電極において、バランスよく交流化されるように、印加電圧65も同量の電位変化をもたせることは言うまでもない。また、後述する対向電極電圧のすべてについてこのことはあてはまる。」(4頁19行?6頁12行)

(4)「前述した交流化とノーマルブラック及びノーマルホワイトとの切替えを設けたこの考案の液晶駆動装置を白黒映像に対し適用した例を第9図に第4図と対応する部分に同一符号を付けて示す。
シフトレジスタ12の初段データ端子に端子11より水平起動信号STHが入力される。またこのシフトレジスタ12は端子13よりの映像信号の画素クロック、つまりドットクロックCPHによってシフトされる。シフトレジスタ12はそれぞれシフト段12_(1)乃至12_(n)を有し、各シフト段12_(1)?12_(n)と対応して第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)が設けられている。これら第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)には端子22から、ノーマリブラック及びノーマリホワイトの切替えがされかつ交流化された多階調デジタル映像信号が入力されており、そのデジタル映像信号の階調情報はmビットA_(0)′A_(1)′…A_(m-1)′である。この端子22よりのデジタル映像信号は第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)のデータ端子にそれぞれ印加されており、各クロック端子にはシフトレジスタの各段12_(1)乃至12_(n)の出力が対応して与えられている。従って水平起動信号(パルス)STHの初めから順番に各画素データが第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)に順次ラッチされる。即ち各画素クロックごとにシフトレジスタ12内の信号STHはシフト段12_(1)乃至12_(n)を順次シフトし、その出力によって各画素データが第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)に順次ラッチされる。
この1ライン(1主走査線)分の画素データのラッチが終了すると、水平起動信号STHによって第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)に第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)の各画素データがそれぞれ一斉にラッチされる。この第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)の出力は必要に応じてレベルシフタ24_(1)乃至24_(n)によって電圧レベルが変換されてデコーダ25_(1)乃至25_(n)に供給されて、各mビットの画素データはデコードされ、その2^(m)の値の何れかに応じた一つの端子に出力される。
デコーダ25_(1)乃至25_(n)のそのデコード出力は選択回路26_(1)乃至26_(n)に供給され、選択回路26_(1)乃至26_(n)には共通に電圧値V_(0)乃至V_(S)が与えられている。V_(0)乃至V_(S)は入力映像信号のとり得る階調と対応して2^(m)の種類の値をとるものである。従って各選択回路26_(1)乃至26_(n)においては、デコーダ25_(1)乃至25_(n)においてデコードされた出力に応じて電圧V_(0)乃至V_(S)の何れか一つが選択されて出力端子27_(1)乃至27_(n)に出力され、この出力端子27_(1)乃至27_(n)は図に示していないが液晶表示素子の駆動端子、例えばソースバスに印加される。
1主走査線分のデータが第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)にラッチされると、これらデータは同時に第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)にラッチされ、また次の主走査線信号の画素データが第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)に順次ラッチされる。以上のことが繰返されることになる。なおレベルシフタ24_(1)乃至24_(n)は、その前段側はデジタル処理系であって、電源としてはいわゆるV_(DD),V_(SS)系が用いられているが、液晶表示素子側においてはこれと異なったその液晶表示素子に対応した適切な値がとるようになされており、このためにその電圧を変換する作用をするものである。各画素データはmビットであるから2^(m)個の輝度レベルをとるものであり、これに応じてその電圧V_(0)乃至V_(S)の何れかが選択されて出力されるが、時によるとV_(0)乃至V_(S)のどの電圧をも選ばないことができると便利な場合があり、このためにはいわゆるインヒビット機能をデコーダ25_(1)乃至25_(n)に持たせればよい。」(8頁15行?12頁4行)

(5)「以上述べたようにこの考案によれば液晶表示素子を交流駆動することが…略…できる。」(12頁6?9行)

(6)第2図及び第3図の記載から、1画素信号がmビットの2^(m)階調のデータA_(0)?A_(m-1)である入力画像信号そのままのmビットA_(0)′A_(1)′…A_(m-1)′である階調情報と、1画素信号がmビットの2^(m)階調のデータA_(0)?A_(m-1)である入力画像信号を反転したmビットA_(0)′A_(1)′…A_(m-1)′である階調情報とは、m=3のとき0から7までの8段階の階調を示し、各段階の階調にV_(0)からV_(7)までの電圧値が対応しており、入力画像信号そのままの階調情報と入力画像信号を反転した階調情報とは、各階調に対する電圧値の極性が逆で絶対値が同じであり、そのまま反転いずれの場合も、最上位階調と最下位階調との中心と中心電圧値との交点で点対称の関係となっている直線形状の階調-補正電圧特性となっていることが見て取れる。

(7)上記(4)において、液晶駆動装置の選択回路26_(1)乃至26_(n)には電圧値V_(0)乃至V_(S)が与えられているから、液晶駆動装置は電圧値V_(0)乃至V_(S)を発生する電圧発生回路を備えていることが当業者に自明である。
上記(4)における主走査線信号は主走査線駆動回路により複数の主走査線に次々に印加されものであることが当業者に自明である。
上記(3)における交流化指令FRや入力画像信号、上記(4)における水平起動信号STHやドットクロックCPHなどを出力する回路が備わっていることは当業者に自明であり、該回路及び上記(3)の回路62_(0)?62_(m-1)はまとめて制御回路といえるものである。
したがって、上記(1)ないし(6)から、引用例には、
「複数の画素電極、各画素電極と液晶を介して対向する共通電極、ソースバス、複数の主走査線、及び、液晶を備えたアクティブ液晶表示素子と、
多階調デジタル映像信号を入力して前記液晶表示素子にその映像を表示する液晶駆動装置と、
複数の主走査線に主走査線信号を次々に印加する主走査線駆動回路と、
排他的論理和をとる回路62_(0)?62_(m-1)を備え、交流化指令FR、入力画像信号、水平起動信号STH、ドットクロックCPHなどを出力する制御回路とを有する装置であって、
前記液晶駆動装置は、
液晶の寿命を長くする点から、同一個所に駆動電圧を印加する場合に、その部分の液晶に対し、印加方向を交互に反転させながら印加する、いわゆる交流駆動を行うものであって、
シフト段12_(1)乃至12_(n)を有するシフトレジスタ12、各シフト段12_(1)?12_(n)と対応して設けられている第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)、第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)の各画素データをそれぞれ一斉にラッチする第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)、第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)の出力の電圧レベルを変換してデコーダ25_(1)乃至25_(n)に供給するレベルシフタ24_(1)乃至24_(n)、レベルシフタ24_(1)乃至24_(n)から供給された各mビットの画素データをデコードし、その2^(m)の値の何れかに応じた一つの端子に出力するデコーダ25_(1)乃至25_(n)、電圧値V_(0)乃至V_(S)を発生する電圧発生回路、及び、デコーダ25_(1)乃至25_(n)のデコード出力が供給されるとともに、電圧発生回路からの電圧値V_(0)乃至V_(S)が共通に与えられている選択回路26_(1)乃至26_(n)を有しており、
前記シフトレジスタ12は、初段データ端子に入力された水平起動信号パルスSTHを映像信号の画素クロックつまりドットクロックCPHによってシフトし、前記第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)は、mビットA_(0)′A_(1)′…A_(m-1)′である階調情報を有する交流化された多階調デジタル映像信号の各画素データを、水平起動信号パルスSTHがシフトする順番に順次ラッチし、1主走査線分の画素データのラッチが終了すると、水平起動信号STHによって前記第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)が第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)の各画素データをそれぞれ一斉にラッチし、第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)の出力の電圧レベルを前記レベルシフタ24_(1)乃至24_(n)により変換して前記デコーダ25_(1)乃至25_(n)に供給し、各mビットの画素データをデコードして、その2^(m)の値の何れかに応じた一つの端子に出力して前記選択回路26_(1)乃至26_(n)に供給し、前記選択回路26_(1)乃至26_(n)は、入力映像信号のとり得る階調と対応して2^(m)の種類の値をとる前記電圧値V_(0)乃至V_(S)の何れか一つをデコードされた出力に応じて選択して出力端子27_(1)乃至27_(n)に出力することにより前記ソースバスに印加し、
1主走査線分のデータが第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)にラッチされると、これらデータは同時に第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)にラッチされ、また次の主走査線信号の画素データが第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)に順次ラッチされ、
以上のことを繰返すものであり、
mビットA_(0)′A_(1)′…A_(m-1)′である前記階調情報は、前記回路62_(0)?62_(m-1)で、1画素信号がmビットの2^(m)階調のデータA_(0)?A_(m-1)である入力画像信号の各ビットごとに、入力画像信号のフレームごとに“1”と“0”をとる交流化指令FRとの排他的論理和をそれぞれとることにより、画像信号の階調レベルを反転させたものであり、これにより、前記液晶表示素子の液晶に印加する電圧の方向が同一階調レベルで反転でき、
前記共通電極に対する印加電圧65は、交流化指令FRと同期して画像信号フレームごとに0Vと+V_(7)とを交互に取るものであり、
前記階調情報の各階調と前記電圧値V_(0)乃至V_(S)との対応関係である階調-補正電圧特性は、入力画像信号そのままの階調情報と入力画像信号を反転した階調情報とは各階調に対する電圧値の極性が逆で絶対値が同じであり、そのまま反転いずれの場合も、最上位階調と最下位階調との中心と前記電圧値V_(0)乃至V_(S)の中心電圧値との交点で点対称の関係となっている直線形状の特性となっている、
液晶表示素子と液晶駆動装置と主走査線駆動回路と制御回路とを有する装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「複数の主走査線」、「ソースバス」、「アクティブ液晶表示素子」、「電圧値V_(0)乃至V_(S)」、「電圧発生回路」、「複数の主走査線に主走査線信号を次々に印加する主走査線駆動回路」、「液晶駆動装置」、「1画素信号がmビットの2^(m)階調のデータA_(0)?A_(m-1)である入力画像信号」、「mビットA_(0)′A_(1)′…A_(m-1)′である階調情報を有する交流化された多階調デジタル映像信号の各画素データ」、「『デコードされた出力に応じて選択して出力端子27_(1)乃至27_(n)に出力することにより前記ソースバスに印加』する『入力映像信号のとり得る階調と対応して2^(m)の種類の値をとる前記電圧値V_(0)乃至V_(S)の何れか一つ』」、「制御回路」及び「液晶表示素子と液晶駆動装置と主走査線駆動回路と制御回路とを有する装置」は、それぞれ、本願発明の「複数の走査線」、「複数の信号線」、「液晶パネル」、「複数の基準電圧」、「基準電圧発生回路」、「液晶パネルの走査線を順次走査する垂直ドライバ」、「水平ドライバ」、「入力データ」、「階調データ」、「階調電圧」、「制御回路」及び「液晶表示装置」に相当する。

(2)引用発明の「液晶パネル(アクティブ液晶表示素子)」は、「複数の信号線(ソースバス)」及び「複数の走査線(複数の主走査線)」を備えているから、本願発明の「液晶パネル」と、「複数の走査線及び複数の信号線を有する」点で一致する。

(3)引用発明の「基準電圧発生回路(電圧発生回路)」は、「複数の基準電圧(電圧値V_(0)乃至V_(S))」を発生するから、本願発明の「基準電圧発生回路」と、「複数の基準電圧を出力する」点で一致する。

(4)引用発明の「制御回路」は、排他的論理和をとる回路62_(0)?62_(m-1)を備え、交流化指令FR、入力画像信号、水平起動信号STH、ドットクロックCPHなどを出力するものであり、引用発明の「水平ドライバ(液晶駆動装置)」は、液晶の寿命を長くする点から、同一個所に駆動電圧を印加する場合に、その部分の液晶に対し、印加方向を交互に反転させながら印加する、いわゆる交流駆動を行うものであって、シフト段12_(1)乃至12_(n)を有するシフトレジスタ12、各シフト段12_(1)?12_(n)と対応して設けられている第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)、第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)の各画素データをそれぞれ一斉にラッチする第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)、第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)の出力の電圧レベルを変換してデコーダ25_(1)乃至25_(n)に供給するレベルシフタ24_(1)乃至24_(n)、レベルシフタ24_(1)乃至24_(n)から供給された各mビットの画素データをデコードし、その2^(m)の値の何れかに応じた一つの端子に出力するデコーダ25_(1)乃至25_(n)、「複数の基準電圧(電圧値V_(0)乃至V_(S))」を発生する「基準電圧発生回路(電圧発生回路)」、及び、デコーダ25_(1)乃至25_(n)のデコード出力が供給されるとともに、「基準電圧発生回路」からの「複数の基準電圧」が共通に与えられている選択回路26_(1)乃至26_(n)を有しており、前記シフトレジスタ12は、初段データ端子に入力された水平起動信号パルスSTHを映像信号の画素クロックつまりドットクロックCPHによってシフトし、前記第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)は、「階調データ(mビットA_(0)′A_(1)′…A_(m-1)′である階調情報を有する交流化された多階調デジタル映像信号の各画素データ)」を、水平起動信号パルスSTHがシフトする順番に順次ラッチし、1主走査線分の「階調データ」のラッチが終了すると、水平起動信号STHによって前記第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)が第1ラッチ回路21_(1)乃至21_(n)の各「階調データ」をそれぞれ一斉にラッチし、第2ラッチ回路23_(1)乃至23_(n)の出力の電圧レベルを前記レベルシフタ24_(1)乃至24_(n)により変換して前記デコーダ25_(1)乃至25_(n)に供給し、各mビットの「階調データ」をデコードして、その2^(m)の値の何れかに応じた一つの端子に出力して前記選択回路26_(1)乃至26_(n)に供給し、前記選択回路26_(1)乃至26_(n)は、入力映像信号のとり得る階調と対応して2^(m)の種類の値をとる前記「複数の基準電圧(電圧値V_(0)乃至V_(S))」の何れか一つである「階調電圧」をデコードされた出力に応じて、すなわち「階調データ」に応じて、選択して、出力端子27_(1)乃至27_(n)に出力することにより「液晶パネルの信号線(前記ソースバス)」に印加するものであり、「階調データ」は、前記回路62_(0)?62_(m-1)で、「入力データ(1画素信号がmビットの2^(m)階調のデータA_(0)?A_(m-1)である入力画像信号)」の各ビットごとに、「入力データ」のフレームごとに“1”と“0”をとる交流化指令FRとの排他的論理和をそれぞれとることにより、「入力データ」の階調レベルを反転させたものであり、これにより、前記「液晶パネル(液晶表示素子)」の液晶に印加する電圧の方向が同一階調レベルで反転でき、前記共通電極に対する印加電圧65は、交流化指令FRと同期して画像信号フレームごとに0Vと+V_(7)とを交互に取るものであるから、引用発明の「水平ドライバ」と本願発明の「水平ドライバ」とは、「基準電圧発生回路からの複数の基準電圧を受けて液晶パネルの信号線に階調電圧を供給する」点で一致し、引用発明の「制御回路」と本願発明の「入力データを1水平同期期間ごとに極性反転して階調データを作成しこの階調データに対応した基準電圧を液晶パネルに印加するように水平ドライバを制御する制御回路」とは、「入力データを一定期間ごとに極性反転して階調データを作成しこの階調データに対応した基準電圧を液晶パネルに印加するように水平ドライバを制御する」点で一致し、引用発明の「液晶表示装置(液晶表示素子と液晶駆動装置と主走査線駆動回路と制御回路とを有する装置)」と本願発明の「前記入力データの階調に応じて、前記水平ドライバから前記液晶パネルにγ補正電圧を印加する液晶表示装置」とは、「前記入力データの階調に応じて、前記水平ドライバから前記液晶パネルに補正電圧を印加する」点で一致し、かつ、「液晶パネルと、基準電圧発生回路と、垂直ドライバと、水平ドライバと、制御回路とを有」する点でも一致する。

(5)引用発明の「階調情報の各階調と電圧値V_(0)乃至V_(S)との対応関係である階調-補正電圧特性」は、入力画像信号そのままの階調情報と入力画像信号を反転した階調情報とは各階調に対する電圧値の極性が逆で絶対値が同じであり、そのまま反転いずれの場合も、最上位階調と最下位階調との中心と前記電圧値V_(0)乃至V_(S)の中心電圧値との交点で点対称の関係となっている直線形状の特性となっているから、本願発明の「最上位階調と最下位階調との中心と中心電位との交点で点対称の関係となっており、非直線形状をなしている、前記制御回路が階調表示に用いる階調-γ補正電圧特性」と、「最上位階調と最下位階調との中心と中心電位との交点で点対称の関係となっている、前記制御回路が階調表示に用いる階調-補正電圧特性」である点で一致するといえる。

(6)上記(1)ないし(5)から、本願発明と引用発明とは、
「複数の走査線及び複数の信号線を有する液晶パネルと、複数の基準電圧を出力する基準電圧発生回路と、前記液晶パネルの走査線を順次走査する垂直ドライバと、前記基準電圧発生回路からの複数の基準電圧を受けて前記液晶パネルの信号線に階調電圧を供給する水平ドライバと、入力データを一定期間ごとに極性反転して階調データを作成しこの階調データに対応した基準電圧を液晶パネルに印加するように水平ドライバを制御する制御回路とを有し、前記制御回路が階調表示に用いる階調-補正電圧特性は、最上位階調と最下位階調との中心と中心電位との交点で点対称の関係となっており、
前記階調-補正電圧特性を満たすように、前記入力データの階調に応じて、前記水平ドライバから前記液晶パネルに補正電圧を印加する液晶表示装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明では、前記階調-補正電圧特性が、非直線形状をなしている階調-γ補正電圧特性であり、前記補正電圧が、γ補正電圧であるのに対して、引用発明では、前記階調-補正電圧特性は直線形状の特性であり、ゆえに前記補正電圧はγ補正電圧ではない点。

相違点2:
前記一定期間が、本願発明では「1水平同期期間」であるのに対して、引用発明ではそうではない点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
ア 最上位階調と最下位階調との中心と中心電位との交点で点対称の関係となっている階調-補正電圧特性において、非直線形状をなしている階調-γ補正電圧特性であるものは、本願の出願前に周知であり(以下「周知技術」という。例.いずれも原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-296147号公報(【0007】、【0061】、図14参照。)、特開平10-319429号公報(【0054】、図15参照。)、特開平6-195046号公報(【0028】?【0032】、図2参照。))、周知技術の非直線形状の特性によるγ補正により、液晶材料の光学特性に合った補正電圧を印加できるようになることは当業者に知られていることである(上記特開平11-296147号公報の【0068】、上記特開平10-319429号公報の【0054】及び上記特開平6-195046号公報の【0003】?【0004】参照。)。

イ 上記アからみて、引用発明において、液晶の光学特性に合った補正電圧を印加できるようにするために、前記「最上位階調と最下位階調との中心と中心電位との交点で点対称の関係となっている階調-補正電圧特性」を、「非直線形状の階調-γ補正電圧特性」となすこと、すなわち、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(2)相違点2について
ア 交流駆動としてライン反転駆動は例示するまでもなく周知慣用手段である。

イ 上記アからみて、引用発明において、入力画像信号のフレームごとに“1”と“0”をとっている交流化指令FRを、「1水平同期期間」ごとに“1”と“0”をとるようにして、ライン反転駆動となすこと、すなわち、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知慣用手段に基づいて適宜なし得た程度のことである。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術の奏する効果及び周知慣用手段の奏する効果から当業者が予測することができた程度のことである。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術及び周知慣用手段に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明、周知技術及び周知慣用手段に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-13 
結審通知日 2013-03-15 
審決日 2013-03-26 
出願番号 特願2001-33249(P2001-33249)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奈良田 新一  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 住田 秀弘
西村 仁志
発明の名称 液晶表示装置及びその駆動方法  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 有原 幸一  

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