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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1277629
審判番号 不服2011-24122  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-08 
確定日 2013-08-08 
事件の表示 特願2001-235144「データ処理方法、プログラム、および、データ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月14日出願公開、特開2003- 44500〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成13年8月2日の出願であって、平成20年8月1日付けで審査請求がなされ、平成22年10月21日付けで拒絶理由通知(同年10月26日発送)がなされ、同年12月22日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成23年8月2日付けで拒絶査定(同年8月9日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、本件審判請求は、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成23年11月8日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成24年2月22日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年9月24日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年9月25日発送)がなされ、同年11月21日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成23年11月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年11月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成23年11月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成22年12月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8の記載

「【請求項1】
データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタンと1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示し、前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンが指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行し、前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の表示欄に表示するデータ処理方法。
【請求項2】
前記データベースを構成する複数の項目は、販売対象物品の識別情報が登録される項目と、その販売対象物品に関する情報が登録される項目とを含み、
前記抽出条件の実行によって抽出された販売対象物品の識別情報と、その販売対象物品に関する項目と、入金情報の入力欄とを同一画面に表示し、前記入金情報の入力欄に入金情報が入力された場合に、その入金情報を前記表示された販売対象物品の識別情報に対応づけて前記データベースに登録する、請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項3】
データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタンと1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示するステップと、
前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンが指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行するステップと、
前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の表示欄に表示するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項4】
前記データベースを構成する複数の項目は、販売対象物品の識別情報が登録される項目と、その販売対象物品に関する情報が登録される項目とを含み、
前記抽出条件の実行によって抽出された販売対象物品の識別情報と、その販売対象物品に関する項目と、入金情報の入力欄とを同一画面に表示するステップと、
前記入金情報の入力欄に入金情報が入力された場合に、その入金情報を前記表示された販売対象物品の識別情報に対応づけて前記データベースに登録するステップをコンピュータに実行させるための請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
データベースと、
前記データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタンと1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示する手段と、前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンを指定する指定手段と、
前記抽出条件入力欄に抽出条件を入力する入力手段と、
前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行する実行手段と、
前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の表示欄に表示する表示手段と、
を備える、データ処理装置。
【請求項6】
前記データベースを構成する複数の項目は、販売対象物品の識別情報が登録される項目と、その販売対象物品に関する情報が登録される項目とを含み、
前記抽出条件の実行によって抽出された販売対象物品の識別情報と、その販売対象物品に関する項目と、入金情報の入力欄とを同一画面に表示する手段と、
前記入金情報の入力欄に入金情報を入力する手段と、
前記入金情報が入力された場合に、その入金情報を前記表示された販売対象物品の識別情報に対応づけて前記データベースに登録する手段とを備える、請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
特定のクレジットカード会社による入金予定が登録されている販売先と、前記販売先のうち予定された入金があった販売先を指定するチェック欄と、前記予定された入金があった販売先ごとにその入金額を入力する入金額入力欄と、前記特定のクレジットカード会社を介して入金された入金総額を入力する入金総額入力欄と、前記入金総額から前記チェック欄によって指定された販売先の入金額を差し引いた額を表示する差引計表示欄とを表示する手段を備える、請求項5または6に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記チェック欄によって指定されていない販売先の電子メールアドレスに対して入金催促の電子メールを通知する、請求項7に記載のデータ処理装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「【請求項1】
データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタンと1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示し、前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンが指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行し、前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の前記抽出条件入力欄と同一のウィンドウの表示欄に表示するデータ処理方法。
【請求項2】
前記データベースを構成する複数の項目は、販売対象物品の識別情報が登録される項目と、その販売対象物品に関する情報が登録される項目とを含み、
前記抽出条件の実行によって抽出された販売対象物品の識別情報と、その販売対象物品に関する項目と、入金情報の入力欄とを同一画面に表示し、前記入金情報の入力欄に入金情報が入力された場合に、その入金情報を前記表示された販売対象物品の識別情報に対応づけて前記データベースに登録する、請求項1に記載のデータ処理方法。
【請求項3】
データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタンと1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示するステップと、
前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンが指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行するステップと、
前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の前記抽出条件入力欄と同一のウィンドウの表示欄に表示するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項4】
前記データベースを構成する複数の項目は、販売対象物品の識別情報が登録される項目と、その販売対象物品に関する情報が登録される項目とを含み、
前記抽出条件の実行によって抽出された販売対象物品の識別情報と、その販売対象物品に関する項目と、入金情報の入力欄とを同一画面に表示するステップと、
前記入金情報の入力欄に入金情報が入力された場合に、その入金情報を前記表示された販売対象物品の識別情報に対応づけて前記データベースに登録するステップをコンピュータに実行させるための請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
データベースと、
前記データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタンと1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示する手段と、前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンを指定する指定手段と、
前記抽出条件入力欄に抽出条件を入力する入力手段と、
前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行する実行手段と、
前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の前記抽出条件入力欄と同一のウィンドウの表示欄に表示する表示手段と、
を備える、データ処理装置。
【請求項6】
前記データベースを構成する複数の項目は、販売対象物品の識別情報が登録される項目と、その販売対象物品に関する情報が登録される項目とを含み、
前記抽出条件の実行によって抽出された販売対象物品の識別情報と、その販売対象物品に関する項目と、入金情報の入力欄とを同一画面に表示する手段と、
前記入金情報の入力欄に入金情報を入力する手段と、
前記入金情報が入力された場合に、その入金情報を前記表示された販売対象物品の識別情報に対応づけて前記データベースに登録する手段とを備える、請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
特定のクレジットカード会社による入金予定が登録されている販売先と、前記販売先のうち予定された入金があった販売先を指定するチェック欄と、前記予定された入金があった販売先ごとにその入金額を入力する入金額入力欄と、前記特定のクレジットカード会社を介して入金された入金総額を入力する入金総額入力欄と、前記入金総額から前記チェック欄によって指定された販売先の入金額を差し引いた額を表示する差引計表示欄とを表示する手段を備える、請求項5または6に記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記チェック欄によって指定されていない販売先の電子メールアドレスに対して入金催促の電子メールを通知する、請求項7に記載のデータ処理装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

そして、本件補正は、補正前の請求項1、3、5に記載した発明を特定するために必要な事項である「同一画面上の表示欄」を「同一画面上の前記抽出条件入力欄と同一のウィンドウの表示欄」に限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項1に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年10月21日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平11-219371号公報(平成11年8月10日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、データベースが構築されているコンピュータにおいて、データ検索に際して検索条件の作成を容易に進められるデータ検索条件作成方法、並びに当該方法を用いるデータ検索条件作成装置に関する。」

B 「【0021】
【本発明の実施の形態】(本発明の第1の実施形態)以下、本発明の第1の実施の形態を図1?図5に基づいて説明する。この図1は本実施の形態に係るデータ検索条件作成装置の検索条件作成フローチャート、図2は本実施の形態に係るデータ検索条件作成装置における表示手段の表示画面説明図、図3は本実施の形態に係るデータ検索条件作成装置の単1条件式作成状態及び確定状態における表示手段の表示状態説明図、図4は本実施の形態に係るデータ検索条件作成装置の全条件式確定状態及び条件式選択状態における表示手段の表示状態説明図、図5は本実施の形態に係るデータ検索条件作成装置の条件式結合状態及び検索条件確定状態における表示手段の表示状態説明図である。
【0022】前記各図において本実施の形態に係るデータ検索条件作成装置は、前記図9に記載の従来装置と同様に演算制御部11、入力手段12、記憶装置13、及び表示手段14を備え、前記演算制御部11が複数の表示領域を同一画面内に配置した状態のGUI(Graphical User Interface)を表示手段14に表示し、入力手段12からの入力に基づいて前記表示手段14への表示内容を制御する構成である。
【0023】前記表示手段14に表示されるGUIとしては、検索項目として指定可能な項目名を一覧表示する領域である検索項目一覧表示域41と、検索キー値を入力する領域である値入力域42と、検索項目と検索キー値との関係を規定する比較演算子を選択するアイコン群である演算子選択域43と、前記検索項目一覧表示域41で検索項目を選択し、前記値入力域42で検索キー値を入力し、演算子選択域43の比較演算子で結んだ条件を文字列として表した形式で表現する領域である条件式表示域44と、条件式表示域44に表示された条件式の利用を確定するアイコンである追加ボタン45と、追加した条件を一覧表示する領域である条件一覧表示域46と、結合された条件の内訳を詳細に表示する領域である条件詳細表示域47と、条件一覧表示域46で選択した複数の条件を所定の論理結合関係で結合するアイコン群である論理結合関係選択域48とを備える構成である。」

C 「【0025】次に、前記構成に基づく検索条件作成装置の検索条件作成及び表示動作について説明する。前提としてデータベースを構成する検索プログラムが記憶装置13に格納されているものとし、利用者が入力手段12を操作して演算制御部11に起動指令を入力すると、演算制御部11が前記記憶装置13から検索プログラムを読出して起動させる。この状態において利用者が入力手段12を操作して検索条件設定を指令すると、前記演算制御部11が記憶装置13に格納された検索プログラムのうちの検索条件作成プログラムを読出し、データの各選択項目一覧が画面内に配置された初期画面を表示手段14の表示画面14aに表示する。
【0026】利用者の検索条件作成操作は、まず、この表示手段14の表示画面14aに表示された各表示領域の内、検索項目が表示された検索項目一覧表示域41において、入力手段12のキー操作、又はマウス操作により、表示された検索項目のうち検索条件として用いたいいずれかの検索項目を一つ選択、指定する(ステップ1)。
【0027】次に、この指定した選択した検索項目に対応させて、検索キー値を入力手段12のキー操作により値入力域42に入力する(ステップ2)。そして、検索対象が前記検索キー値に対しどのような関係となるかを規定する比較演算子を、演算子選択域43の各比較演算子のうち、検索項目一覧表示域41で選択中の検索項目の型(文字型、又は数字型)に応じて使用可能な比較演算子の中から選択する(ステップ3)。この選択により、条件式表示域44において検索項目と検索キー値の関係が比較演算子で規定された単1条件式が表示される(図3(A)参照)。
・・・(中略)・・・
【0035】前記ステップ11で全ての条件式間の結合関係を定義し終えたと判断した場合には、条件一覧表示域46に条件名が一つ表示された状態であり、この唯一の条件名が示す条件式が最終的な検索条件となるので、そのまま検索を開始して(ステップ12)、一連の条件作成処理手続きを終える。」

D 「本発明の第1の実施の形態に係るデータ検索条件作成装置における表示手段の表示画面説明図」である図2には、“「検索項目一覧表示域41」と「値入力域42」が同一画面に表示される態様”が記載されている。

ここで、上記引用文献に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「本発明は、データベースが構築されているコンピュータにおいて、データ検索に際して検索条件の作成を容易に進められるデータ検索条件作成方法、並びに当該方法を用いるデータ検索条件作成装置に関する」との記載、上記Bの「図2は本実施の形態に係るデータ検索条件作成装置における表示手段の表示画面説明図」、「本実施の形態に係るデータ検索条件作成装置は・・・表示手段14を備え・・・前記表示手段14に表示されるGUIとしては、検索項目として指定可能な項目名を一覧表示する領域である検索項目一覧表示域41と、検索キー値を入力する領域である値入力域42」との記載、上記Dの“「検索項目一覧表示域41」と「値入力域42」が同一画面に表示される態様”からすると、引用文献には、
「データベースのデータ検索に際して検索項目として指定可能な項目名一覧と検索キー値を入力する領域である値入力域とを同一画面に表示」
する態様が記載されている。

(イ)上記Cの「検索条件作成装置の検索条件作成及び表示動作について説明する・・・利用者の検索条件作成操作は・・・表示手段14の表示画面14aに表示された各表示領域の内、検索項目が表示された検索項目一覧表示域41において・・・表示された検索項目のうち検索条件として用いたいいずれかの検索項目を一つ選択、指定する・・・次に、この指定した選択した検索項目に対応させて、検索キー値を・・・値入力域42に入力する・・・検索を開始」との記載からすると、引用文献には、
「検索項目として指定可能な項目名一覧に表示された項目名のうち検索条件としていずれかの検索項目を一つ選択、指定し、この選択、指定した検索項目に対応させて値入力域に検索キー値を入力し、検索を開始」
する態様が記載されている。

以上、(ア)及び(イ)で指摘した事項を踏まえると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

データベースのデータ検索に際して検索項目として指定可能な項目名一覧と検索キー値を入力する領域である値入力域とを同一画面に表示し、前記検索項目として指定可能な項目名一覧に表示された項目名のうち検索条件としていずれかの検索項目を一つ選択、指定し、この選択、指定した検索項目に対応させて前記値入力域に検索キー値を入力し、検索を開始するデータ検索方法。

(3)参考文献に記載されている技術的事項

(3-1)参考文献1

上記平成23年8月2日付けの原審の拒絶査定において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平5-28190号公報(平成5年2月5日出願公開。以下、「参考文献1」という。)には、図面(特に、図24)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

E 「【0043】以上各ウィンドウ制御プログラムが持つ詳細な機能と、本実施例での検索処理の流れを説明した。これらのウィンドウは、使用者からウィンドウ破棄ボタンがクリックされない限り保存され、表示されて、各ウィンドウの制御プログラムがそれぞれ独立して各々の処理メニューの要求待ちとなっている。このため、例えば検索履歴表示ウィンドウから何時でも一覧表示の指定ができ、その度に一覧表示ウィンドウ制御プログラムが起動して、別々のウィンドウへそれぞれの検索結果の検索結果一覧表示を行うため、複数件の検索結果に対して、図24のように何枚でも一覧表示ウィンドウを開いて結果を見ることができる。」

(3-2)参考文献2

上記平成24年9月24日付けの審尋で援用した上記平成24年2月22日付けの前置報告において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平11-31184号公報(平成11年2月2日出願公開。以下、「参考文献2」という。)には、図面(特に、図16)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0044】商品カテゴリ検索画面1500では、ユーザーが図15に示すように大きく分類された商品カテゴリ欄1501に示されたカテゴリを選んで、徐々に小さなカテゴリ欄1502、1503に遷移させていくことにより所望商品をユーザー別商品データnに登録してある商品の中から検索できる。商品条件検索画面1600では、図16に示すように商品条件を特定する商品名欄1601、メーカー品番欄1602、メーカー名欄1603、仕様欄1604および内容入力欄1605に入力する2つの項目欄1609、1610が設けてあり、この2つの項目欄1609、1610のAND条件で特定した所望の商品をユーザー別商品データnに登録してある商品の中から絞り込むことができる。そして、該当商品は結果欄1611に表示されるので、ユーザーはその中から所望の商品を検索できる。」

(3-3)参考文献3

本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2001-46574号公報(平成13年2月20日出願公開。以下、「参考文献3」という。)には、図面(特に、図8)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0028】図8は、本発明であるゴルフ場の予約管理システムのゴルフ練習場における予約確認画面である。この予約確認画面34には、検索項目欄35、検索項目入力欄34a及び予約確認欄37が表示される。この予約確認画面34により各ゴルフ練習場における提携ゴルフ場の予約状況の確認をすることができる。
【0029】検索項目欄35には、申込日で検索ボタン35a、月間集計ボタン35b、年間集計ボタン35cがあり、前記各検索項目ボタンを選択実行することにより、申込日からの検索、月間集計の検索、年間集計の検索ができる。図8に示した予約確認画面34は、申込日で検索ボタン35aを選択実行した画面である。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「検索項目として指定可能な項目名一覧」とは、検索項目が対応付けられている項目名を指定する選択領域が列挙されたものであるといえるから、引用発明の「データベースのデータ検索に際して検索項目として指定可能な項目名一覧」は、データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数の選択領域であるといえる。そして、本願補正発明の「ボタン」も、抽出で用いる項目を選択するものであることから、選択領域といえるものである。
してみると、引用発明の「データベースのデータ検索に際して検索項目として指定可能な項目名一覧」と、本願補正発明の「データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタン」とは、ともに、“データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数の選択領域”である点で共通する。

(4-2)引用発明の「検索キー値を入力する領域である値入力域」は、本願補正発明の「1つの抽出条件入力欄」に相当する。

(4-3)上記(4-1)の検討内容から、引用発明の「検索項目として指定可能な項目名一覧に表示された検索名のうち検索条件としていずれかの検索項目を一つ選択、指定」することは、複数の選択領域から(検索で用いる項目を特定するための)いずれかの選択領域を指定することに他ならない。また、本願補正発明の「複数のボタンのうちのいずれかのボタンが指定」されることは、複数の選択領域から(抽出で用いる項目を特定するための)いずれかの選択領域が指定されることに他ならない。
そして、引用発明は、選択された検索項目に対して値入力値に検索キー値が入力された場合に検索を開始(本願補正発明の「抽出条件を実行」に相当)するものである。
してみると、引用発明の「前記検索項目として指定可能な項目名一覧に表示された検索項目のうち検索条件としていずれかの検索項目を一つ選択、指定し、この選択、指定した検索項目に対応させて前記値入力域に検索キー値を入力し、検索を開始」することと、本願補正発明の「前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンが指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行」することとは、ともに、“前記複数の選択領域からいずれかの選択領域が指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定された選択領域に対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行”することである点で共通する。

(4-4)引用発明の「データ検索方法」は、指定された検索項目と入力された検索キー値を用いてデータ検索を行う方法であるから、データ処理を行う方法といえるものである。
してみると、引用発明の「データ検索方法」は、本願補正発明の「データ処理方法」に相当するといえる。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数の選択領域と1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示し、前記複数の選択領域からいずれかの選択領域が指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定された選択領域に対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行するデータ処理方法。

(相違点1)

選択領域に関して、本願補正発明が、「ボタン」であるのに対して、引用発明は、(一覧中に列挙され検索項目として指定可能な個々の)「項目名」である点。

(相違点2)

抽出条件を実行した後、本願補正発明が、「前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の前記抽出条件入力欄と同一のウィンドウの表示欄に表示する」ものであるのに対して、引用発明は、検索を開始した後の処理について、特に記載がない点。

(5)当審の判断

上記相違点1及び相違点2について検討する。

(5-1)相違点1について

一般に、画面上の複数の項目を選択するGUIとして、多様な周知技術(例えば、引用発明のように一覧から選択する技術、チェックボックスを用いて選択する技術(上記参考文献2の上記F及び図16等参照)、選択ボタンを用いて選択する技術(上記参考文献3の上記G参照)、等)が慣用的に用いられており、どのような選択手段を用いるかについては、当業者が必要に応じて適宜選択可能な設計的事項に過ぎない。
してみると、引用発明においても、当該周知技術を採用し、一覧に列挙された項目名から選択することに替えて、列挙された項目名ボタンから選択するように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(5-2)相違点2について

検索を実行した後に検索した結果を画面に表示することは、引用文献等を示すまでもなく、情報処理の技術分野における常とう手段である。
そして、検索結果の表示方法として、多様な周知技術(例えば、検索条件とは別のウインドウに表示させる技術(上記参考文献1の上記E及び図24等参照)、検索条件と同一のウインドウに表示させる技術(上記参考文献2の上記F及び図16、上記参考文献3の上記G及び図8、等参照)、等)が慣用的に用いられており、どのような表示方法を採用するかについては、当業者が必要に応じて適宜選択可能な設計的事項に過ぎない。
してみると、引用発明においても、当該周知技術を採用し、検索を開始した後の処理として、検索した結果を検索条件と同一のウインドウに表示させるように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(5-3)小括

上記で検討したごとく、相違点1及び相違点2は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび

以上のように、本件補正は、上記「2.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成23年11月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタンと1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示し、前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンが指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行し、前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の表示欄に表示するデータ処理方法。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成23年11月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成23年11月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」で検討した本願補正発明から「前記抽出条件入力欄と同一のウィンドウの」を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成23年11月8日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(3)参考文献に記載されている技術的事項」ないし「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.請求人の主張等について

なお、請求人は、上記平成24年11月21日付けの回答書において、

『1.前置報告書の内容
前置報告書では、下記の事項が報告されています。
この出願は原査定の理由(特許法第29条第2項違反)に示したとおり拒絶されるべきものである。
2.上記ご指摘に関して
審判請求人は、上記前置報告書の内容を熟慮した結果、各請求項について補正が必要であると考えます。そこで、以下では、本願特許請求の範囲の補正案、及び補正案の各請求項に係る発明についてご説明申し上げます。
3.補正案について
以下に示す補正案は、上記前置報告書の内容を審判請求人が熟慮した結果、審査官の指摘事項を解消するために必要と考える記載に改めるものです。なお、以下においては請求項1の補正案のみを示しておりますが、請求項3,5についても同様の補正が必要であると考えます。また、以下に示す補正案の下線は、変更箇所を示しております。
<<<請求項1の補正案>>>
[請求項1]
データベースを構成する複数の項目のうちの特定の項目が対応づけられた複数のボタンと1つの抽出条件入力欄とを同一画面に表示し、前記複数のボタンのうちのいずれかのボタンが指定され、かつ、前記抽出条件入力欄に抽出条件が入力された場合に、前記指定されたボタンに対応づけられた特定の項目に対して前記入力された抽出条件を実行し、前記データベースから抽出した情報を、前記複数のボタンおよび前記抽出条件入力欄と共に表示されている同一画面上の前記抽出条件入力欄と同一のウィンドウの表示欄に、前記抽出した情報に対応づけて登録する情報を入力するための情報入力欄と共に表示するデータ処理方法。』

と主張している。

しかしながら、データベースから抽出した情報に対して、変更や修正を行うことについても、当該技術分野において、慣用的に行われている技術(必要であれば、特開2000-76341号公報(特に、段落【0081】ないし【0131】、図11等)参照。)に過ぎず、引用発明においても、検索を開始した後の処理として、検索条件と同一のウインドウに表示させた検索結果に対応付けて、変更や修正を行えるような情報入力欄と共に表示する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

してみると、上記回答書における請求人の『本願は、特許請求の範囲を上述の補正案のように補正することで、十分に特許性があるものになると思料いたします。』という主張は、採用することができない。

5.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-05 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-25 
出願番号 特願2001-235144(P2001-235144)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 田中 秀人
仲間 晃
発明の名称 データ処理方法、プログラム、および、データ処理装置  
代理人 川口 嘉之  
代理人 和久田 純一  
代理人 今堀 克彦  
代理人 高田 大輔  
代理人 平川 明  

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