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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1277665 |
審判番号 | 不服2012-24638 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-12 |
確定日 | 2013-08-08 |
事件の表示 | 特願2007-157360「溝ゲート型SiC半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月25日出願公開,特開2008-311406〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,平成19年6月14日の出願であって,平成24年8月10日付けで拒絶の理由が通知され,同年8月29日に意見書が提出されたが,同年11月7日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年12月12日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「六方晶SiCの(0001)Si面に形成した溝ゲート型SiC半導体装置の製造方法において, ゲート絶縁膜を形成する処理が,下記の工程: SiC基板のSi面に形成した溝の底面および側面を含む上記SiC基板面に,堆積法によりSiO_(2)層を形成する工程,および 1000?1300℃での熱酸化により上記SiO_(2)層を成長させることにより,上記ゲート絶縁膜を形成する工程 を含むことを特徴とする溝ゲート型SiC半導体装置の製造方法。」 3 引用例に記載された発明 (1)本願の出願前に日本国内において頒布され,原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された特開平11-330464号公報(以下「引用例」という。)には,「炭化珪素半導体装置及びその製造方法」(発明の名称)に関して,図1?5とともに以下の記載がある(なお,下線は当合議体にて付加したものである。)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,炭化珪素半導体装置及びその製造方法に関し,特に絶縁ゲート型電界効果トランジスタ,とりわけ大電力用の縦型パワーMOSFETに関するものである。」 イ 「【0020】次に,図1に示す縦型パワーMOSFETの製造工程を,図2?図4を用いて説明する。 〔図2(a)に示す工程〕まず,n型4Hまたは6Hまたは3C-SiC基板,すなわちn^(+) 型半導体基板1を用意する。ここで,n^(+) 型半導体基板1はその厚さが400μmであり,主表面1aが(0001)Si面,又は,(112-0)a面である。この基板1の主表面1aに厚さ5μmのn^(-) 型エピ層2をエピタキシャル成長する。本例では,n^(-) 型エピ層2は下地の基板1と同様の結晶が得られ,n型4Hまたは6Hまたは3C-SiC層となる。」 ウ 「【0031】〔図4(a)に示す工程〕LTO膜22を除去した後,基板の上にウェット酸化(H_(2) +O_(2) によるパイロジェニック法を含む)によりゲート酸化膜7を形成する。このとき,雰囲気温度は1080℃とする。ここで,上述したように,ゲート酸化膜7の下部に位置する表面チャネル層5がN(窒素)を含んでいないもので構成されているため,熱酸化によってゲート酸化膜7を形成しても窒化珪素(SiN)が形成される可能性が極めて小さくなる。但し,ウェット酸化を行う際に用いられる酸化装置内部の残留窒素や炭化珪素に拡散した珪素等によって窒化珪素が形成される可能性があるが,ほとんど無視できる程度とすることが可能である。」 エ 「【0042】また,上記実施形態では,表面チャネル層5をエピタキシャル成長によって形成したものを示したが,エピタキシャル成長ではなく,p型ベース領域3a,3bに元素の周期表に示される第15族の元素のうち窒素以外のものをイオン注入することで形成してもよい。また,上記実施形態では,プレーナ型のMOSFETにおいて,元素の周期表に示す第15族の元素のうちN(窒素)以外のものをドーパントとして,ソース領域4a,4b及び表面チャネル層5を形成するものを示したが,いわゆる溝ゲート型のMOSFETやラテラルMOSFETに適用してもよい。 【0043】図5に溝ゲート型のMOSFETを示す。溝ゲート型のMOSFETには,例えばn^(+) 型半導体基板21上に,n^(-) 型エピ層22とp型ベース層23とが積層されたものが基板24として用いられる。そして,この基板24表面から,p型ベース層23の表層部に位置するソース領域25と共にp型ベース層23を貫通する溝27が形成されており,この溝27の側面27aに表面チャネル層28が形成されている。また,溝27内にゲート酸化膜29を介してゲート電極30が形成されており,ゲート電極30上には,ソース領域25及びp型ベース層23に接続されるソース電極32が層間絶縁膜31を介して形成されている。さらに,基板24の裏面側にはドレイン電極33が備えられている。 【0044】このような構成を有する溝ゲート型のMOSFETの場合には,溝27内に形成されたゲート絶縁膜29の下部に配置される表面チャネル層28について,元素の周期表に示される第15族の元素のうち,窒素以外のもののみをドーピングして形成するようにすればよい。また,図6にラテラルMOSFETを示す。ラテラルMOSFETには,例えばp型半導体基板101を基板として用いている。この基板101の所定領域には,イオン注入等によって表面チャネル層102が形成されており,この表面チャネル層102の両側にはソース層103,ドレイン層104が形成されている。また,表面チャネル層102上にはゲート酸化膜105を介してゲート電極が備えられている。 【0045】このように構成されたラテラルMOSFETの場合には,ゲート酸化膜105の下部に配置される表面チャネル層102について,元素の周期表に示される第15族の元素のうち,窒素以外のもののみをドーピングして形成するようにすればよい。また,ゲート酸化膜7の形成は,気相成長法により酸化膜を堆積形成したのち熱酸化することで,堆積させた酸化膜と炭化珪素との界面に熱酸化膜を形成することで行ってもよい。」 <引用発明の認定> ここにおいて,段落【0042】の「溝ゲート型のMOSFETやラテラルMOSFETに適用してもよい。」という記載を参酌しつつ,以上の記載を総合すると,引用例には,図5の実施例に対応した以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「4Hまたは6HのSiC基板の主表面の(0001)Si面から溝27が形成された溝ゲート型のMOSFETの製造方法において, ゲート酸化膜29の形成は, 溝27内に気相成長法により酸化膜を堆積形成する工程,および 堆積させた酸化膜と炭化珪素との界面に熱酸化膜を形成する工程 を含む溝ゲート型のMOSFETの製造方法。」 4 対比 (1) 以下に,本願発明と引用発明とを対比する。 (2) 引用発明の「4Hまたは6HのSiC基板」は,本願発明の「六方晶SiC」「基板」に相当し,引用発明の「SiC基板の主表面の(0001)Si面から溝27が形成された溝ゲート型のMOSFET」は,本願発明の「SiCの(0001)Si面に形成した溝ゲート型SiC半導体装置」に相当する。 (3) 引用発明の「ゲート酸化膜29」は,本願発明の「ゲート絶縁膜」に相当する。 (4) 引用発明の「溝27内」は,本願発明の「SiC基板のSi面に形成した溝の底面および側面」に相当し,引用発明の「気相成長法」は,本願発明の「堆積法」のうちの1つであり,引用発明の「堆積形成」される「酸化膜」は,SiC基板上の酸化膜であって,SiO_(2)であることは明らかであるから,引用発明の「気相成長法により酸化膜を堆積形成」する工程は,本願発明の「堆積法によりSiO_(2)層を形成する工程」に相当する。 また,引用発明の気相成長法によれば,溝27内のみならずSiC基板全面に酸化膜が形成されることは当業者にとって明らかである。 したがって,引用発明の「溝27内に気相成長法により酸化膜を堆積形成する工程」は,本願発明の「SiC基板のSi面に形成した溝の底面および側面を含む上記SiC基板面に,堆積法によりSiO_(2)層を形成する工程」に相当する。 (5) 引用発明の「堆積させた酸化膜と炭化珪素との界面に熱酸化膜を形成する工程」は,本願発明の「熱酸化により」「SiO_(2)層を成長させることにより,」「ゲート絶縁膜を形成する工程」に相当する。 <一致点> したがって,本願発明と引用発明とは, 「六方晶SiCの(0001)Si面に形成した溝ゲート型SiC半導体装置の製造方法において, ゲート絶縁膜を形成する処理が,下記の工程: SiC基板のSi面に形成した溝の底面および側面を含む上記SiC基板面に,堆積法によりSiO_(2)層を形成する工程,および 熱酸化により上記SiO_(2)層を成長させることにより,上記ゲート絶縁膜を形成する工程 を含むことを特徴とする溝ゲート型SiC半導体装置の製造方法。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明は絶縁膜を熱酸化で形成する温度が「1000?1300℃」であるのに対し,引用発明は温度が特定されていない点。 5 判断 (1)相違点について ア 3(1)ウによれば,引用例の図2?4にかかる実施の形態においては,パイロジェニック法を含むウェット酸化が,雰囲気温度1080℃にて行われていることが分かる。ここで,パイロジェニック法を含むウェット酸化が熱酸化であることは,当業者にとって明らかであり,また,引用例の図2?4に係る実施の形態の酸化温度である1080℃は,本願発明の熱酸化の温度の「1000?1300℃」の範囲に含まれる。さらに,SiCの熱酸化の温度として1000?1300℃程度の温度範囲は,例えば周知例1にも記載されているように,ごく一般的に用いられる温度範囲でもある。 したがって,引用発明において,気相成長法により酸化膜を堆積形成したのちの熱酸化を「1000?1300℃」で行うことは,当業者ならば容易になし得たことである。 (ア) 周知例1:特開2006-216918号公報 本願の出願前に日本国内において頒布された特開2006-216918号公報には,以下の記載がある。 a 「【0033】 ここで、上記(A)、(B)の方法が、SiCを熱酸化させない理由について説明する。SiCは結晶面によって熱酸化の速度および熱酸化が起こる温度が異なる。最もよく用いられる(0001)面では、約900℃以上の温度で熱酸化が始まることになる。また、(000-1)面、(11-20)面は酸化が進行しやすく、850℃程度から酸化されることになる。従って、上記SiCを熱酸化して、SiO_(2)膜を形成するには、上記以上の温度が必要となる。実際には、900℃では形成速度が遅すぎるので、実用上成膜速度の関係から、デバイス作製に必要な厚さ(40?80nm程度)のSiO_(2)膜(酸化膜)を形成するために、通常は1100?1200℃の高温が用いられる。」 (2)審判請求人の主張について ア なお,審判請求人は審判請求書において,六方晶SiC半導体においては,熱酸化による酸化速度が溝の底面〔(0001)Si面〕に対して側面〔(11-20)面,(1-100)面〕ではほぼ5倍と大差があり,酸化膜厚さが異なるという問題に対し,本願発明は,堆積法による酸化膜厚と熱酸化膜による酸化膜厚とを補完させることにより,溝の側面と底面の酸化膜の厚さを均一化が図れるという効果を奏しているものであり,当該効果は引用例の記載からは予期し得ないものである旨主張する。 イ しかしながら,一般に,熱酸化による酸化膜の形成において,結晶面方位によって酸化速度が異なることは,当業者における技術常識であり,また,堆積法により酸化膜を形成した後に熱酸化膜を形成することにより,酸化膜厚さが均一になることも,例えば以下の周知例2に記載されているように,当業者において知られていた事項であるから,請求人が主張する作用効果は,当業者が予測可能なものに過ぎない。 (ア) 周知例2:国際公開第2005/101518号 本願の出願前に外国において頒布された国際公開第2005/101518号には,以下の記載がある。 a 「[0052] このことから,トレンチゲート構造の場合には,Si基板が露出した状態で熱酸化を行う場合酸化速度が速いためにトレンチ内壁の様々な面方位による熱酸化膜の局所的な薄膜化が発生する。この後にHTOを堆積しても最初の熱酸化膜の膜厚不均一性を補うことができず,結果として局部的薄膜化によりゲート絶縁膜の寿命が短くなってしまうのに対し,HTO形成後に熱酸化を行う場合では酸化種がHTO中を拡散してHTOとSi基板の界面まで達してから酸化反応が生じるため,前者よりも酸化速度が低下してSi基板の面方位依存性が抑えられて局所的な薄膜化が発生し難く,ゲート絶縁膜の寿命が長くなるものと考えられる。従来特に薄膜化が著しいトレンチコーナーでは,この効果が大きく寄与するものと推察される。 [0053] したがって,トレンチゲート構造の半導体装置を製造する場合には,HTOの膜厚にも依るが,トレンチに熱酸化膜を形成した後にHTOを形成するよりも,トレンチにHTOを形成した後にこのHTOとSi基板の界面に熱酸化膜を形成した方が,膜厚の均一性が良く,また信頼性の高いゲート絶縁膜を形成することができる。」 (2)まとめ 以上検討したとおり,本願発明は,当業者における周知の技術を勘案することにより,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-04 |
結審通知日 | 2013-06-11 |
審決日 | 2013-06-24 |
出願番号 | 特願2007-157360(P2007-157360) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宇多川 勉 |
特許庁審判長 |
北島 健次 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 西脇 博志 |
発明の名称 | 溝ゲート型SiC半導体装置の製造方法 |
代理人 | 古賀 哲次 |
代理人 | 永坂 友康 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 亀松 宏 |