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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1277667
審判番号 不服2013-7489  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-23 
確定日 2013-08-08 
事件の表示 特願2008- 84717「光学積層体」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月 4日出願公開、特開2008-292987〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成20年3月27日(優先権主張平成19年4月24日)の出願であって、平成24年6月11日及び平成25年1月24日に手続補正がなされ、同年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月23日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成25年1月24日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、平成25年1月24日付け補正後の明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、少なくとも透光性微粒子を含有する光学機能層を設けた光学積層体において、
前記光学機能層が、少なくとも放射線硬化型樹脂と、1種又は複数種の低屈折性透光性微粒子及び1種又は複数種の高屈折性透光性微粒子とを含有し、
前記放射線硬化型樹脂と前記低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.01以下の範囲にあり、且つ、前記放射線硬化型樹脂と前記高屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.05以上の範囲にあり、
その個数の95%以上の透光性微粒子の粒径と前記光学機能層の膜厚とが、次式を充足することを特徴とする光学積層体。
3.6ln(X)-0.70≧Y≧3.6ln(X)-4.7
(但し、4.5≦X≦15、1≦Y≦9)
X:光学機能層の膜厚(μm)
Y:透光性微粒子の電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)」(以下「本願発明」という。)

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-113561号公報(以下「引用例」という。)」には、図とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に光散乱層を有する光散乱性フィルムの製造方法において、
透光性微粒子、透光性樹脂、および溶媒を含有する該光散乱層用の塗布組成物であって、式(1)を満たすことによって該透光性微粒子の沈降速度が制御された該塗布組成物を、バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面にスロットダイの先端リップのランドを近接させて該先端リップのスロットから塗布することにより、該透明支持体上に該光散乱層を塗工する工程
を含むことを特徴とする、光散乱性フィルムの製造方法。
式(1) (σ-ρ)×d^(2)≦1.5
(但し、σ:透光性微粒子の密度(g/cm^(2))、ρ:塗布組成物の密度(g/cm^(2))、d:透光性微粒子の平均粒径(μm))
【請求項2】
・・・(中略)・・・
【請求項3】
前記透光性微粒子の平均粒子径が0.5?5μmであり、該透光性微粒子と前記透光性樹脂との屈折率の差が0.01?0.2であり、該透光性微粒子が前記光散乱層の全固形分中3?30質量%含有されてなることを特徴とする、請求項1または2に記載の光散乱性フィルムの製造方法。」

(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱性フィルムの製造方法に関し、更に詳細には、透光性微粒子の沈降を制御した塗布組成物をダイコーターを用いて塗布することによって高い生産性が実現可能な、フィルム面内で均一な散乱性を有する光散乱性フィルムの製造方法に関する。また、該光散乱性フィルムを用いた偏光板、該偏光板を用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光散乱性フィルムは、大きくは表面散乱性を有する防眩性フィルムと、内部だけに散乱性を有する内部散乱性フィルムとに大別される。防眩性フィルムは一般に、CRT、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射による像の映り込みを防止するために、ディスプレイの最表面に配置される。また、特に近年表示装置の高精細化に伴い、防眩性フィルムによる微小な輝度ムラ(ギラツキと呼称する)の改良手段として、表面散乱に加えて内部散乱性を有する防眩性フィルムに関する技術が開示されている(特許文献1?5)。
【0003】
一方、表面散乱性はなく、内部散乱性のみを有することにより、LCDの視野角特性を向上する散乱性フィルムに関する技術が開示されている(特許文献6)。また、特許文献6、7等で開示されているように、光散乱性フィルムが表示装置の最表面に用いられる場合には、明室にて外光の表面反射を抑制する効果を有する、反射防止機能を併せ持つフィルムが好ましいことが知られている。
【0004】
以上のような光散乱性フィルムは、従来、バーコート法、グラビア法、マイクログラビア法等を用いて製造されていたが、近年、より高い生産性を達成することができる、比較的ウエット塗布量の少ない領域で好適に用いることができるダイコート法に関する技術が特許文献8等に開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献で開示されている光散乱層用の塗布組成物では、ダイコート法で塗布する際に、ダイコーター内部のポケットに透光性微粒子が溜まってしまったり、スロットの幅方向で吐出される塗布組成物中の透光性微粒子の密度が不均一になったりすることに起因する、光散乱性フィルム面内でのムラが問題になり、その対策は困難な課題であった。
【0006】
【特許文献1】特開2000-304648号公報
【特許文献2】特許第3507719号公報
【特許文献3】特開平11-3276608号公報
【特許文献4】特許第3515401号公報
【特許文献5】特許第3515426号公報
【特許文献6】特開2003-121606号公報
【特許文献7】特開2003-270409号公報
【特許文献8】特開2003-236434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上要するに、高い生産性を満たすダイコート法によりフィルム面内で均一な散乱性を有する光散乱性フィルムを製造する方法は提案されてないのが現状である。
従って、本発明の目的は、フィルム面内で均一な散乱性を有する光散乱性フィルム、更には反射防止フィルムを高い生産性で製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、課題の発生原因は透光性微粒子の沈降速度が速すぎるためであると考え、塗布組成物における透光性微粒子の沈降速度を透光性微粒子の密度、塗布組成物の密度、透光性微粒子の平均粒径のファクターに着目して調整することにより、前記課題を解決し目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の構成により、前記目的を達成したものである。
【0009】
[1]
透明支持体上に光散乱層を有する光散乱性フィルムの製造方法において、
透光性微粒子、透光性樹脂、および溶媒を含有する該光散乱層用の塗布組成物であって、式(1)を満たすことによって該透光性微粒子の沈降速度が制御された該塗布組成物を、バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面にスロットダイの先端リップのランドを近接させて該先端リップのスロットから塗布することにより、該透明支持体上に該光散乱層を塗工する工程を含むことを特徴とする、光散乱性フィルムの製造方法。
式(1) (σ-ρ)×d^(2)≦1.5(但し、σ:透光性微粒子の密度(g/cm^(2))、ρ:塗布組成物の密度(g/cm^(2))、d:透光性微粒子の平均粒径(μm))
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0010】
本発明の光散乱性フィルムの製造方法は、光散乱層用塗布組成物における透光性微粒子の沈降速度が速すぎることがないように、透光性微粒子の密度、塗布組成物の密度、透光性微粒子の平均粒径のファクターに着目して調整した、透光性微粒子、透光性樹脂、および溶媒を含有する塗布組成物を、透明支持体の表面にダイコート法で塗布することにより、高い生産性を満たすダイコート法によっても、光散乱性フィルム面内でのムラがなく、フィルム面内で均一な散乱性を有する光散乱性フィルムを製造する方法を提供することができた。」

(3)「【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)?(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
【0012】
本発明の製造方法で作製した光散乱性フィルム(以下、「本発明の光散乱性フィルム」ともいう。)について好適な一実施形態の基本的な構成を図面を参照しながら説明する。
ここで、図1は、本発明の光散乱性フィルムの好ましい1実施形態を模式的に示す断面図である。図1は表面凹凸がある防眩性を有する例を示しているが、表面凹凸がない防眩性を有さない光散乱性フィルムも好ましく用いられる。
図1に示す本実施形態の光散乱性フィルム1は、透明支持体2と、透明支持体2上に形成された光散乱層3と、そして光散乱層3上に形成された低屈折率層4とからなる。光散乱層の上に低屈折率層を光の波長の1/4前後の膜厚で形成することにより、薄膜干渉の原理により表面反射を低減することができるため、より好ましい。
光散乱層3は、透光性樹脂と透光性樹脂中に分散された透光性微粒子5とからなる。
本発明における反射防止層を有する光散乱性フィルムを構成する各層の屈折率は以下の関係を満たすことが好ましい。
光散乱層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
本発明においては、光散乱層は、好ましくは防眩性および/またはハードコート性を兼ね備えており、本実施形態においては、1層で形成されたものを例示しているが、複数層、例えば2層?4層で構成されていてもよい。また、本実施形態のように透明支持体上に直接設けてもよいが、帯電防止層や防湿層等の他の層を介して設けてもよい。
【0013】
本発明の光散乱性フィルムに防眩性を付与する場合は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08?0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1?100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0?5度の面が10%以上となるように設計するのが、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成されるので、好ましい。
また、C光源下でのCIE1976L*a*b*色空間における反射光の色味がa*値-2?2、b*値-3?3、380nm?780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5?0.99とするのが、反射光の色味がニュートラルとなるので、好ましい。またC光源下での透過光のb*値を0?3とすると、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差を20以下とすると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
【0014】
一方、本発明の内部散乱性のみを有する光散乱性フィルムは、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.10以下であることが好ましく、実質上、防眩性は有さない。光散乱層の内部に屈折率の異なる領域が多数存在することにより、内部散乱性を有しており、液晶表示装置の最表面に適用した際の視野角特性の改良効果が得られるように、散乱特性を最適化するのが好ましい。
【0015】
また、本発明の反射防止層を有する光散乱性フィルムは、その光学特性を、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上とするのが、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため、好ましい。また、ヘイズは1%?60%が好ましく、20%?60%が更に好ましく、20%?50%が特に好ましい。内部ヘイズ/全ヘイズ値0.3?1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度10%?70%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5?5.0とするのが、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成されるので、好ましい。なお、防眩性の付与を目的にしない場合は、透過画像鮮明度は65?99%が好ましく用いられる。
【0016】
次に、光散乱層について以下に説明する。
<光散乱層>
光散乱層は、表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、好ましくはフィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、好ましくはハードコート性を付与することのできる透光性樹脂、光拡散性を付与するための透光性微粒子、および溶媒を必須成分として含有する。更に、上記式(1)を満たすことによって該透光性微粒子の沈降速度を制御することによって、高い生産性を有するダイコート法によって透明支持体上に、高い面内均一性をもって塗工することが可能となる。上記式(1)の左辺はStokes式より導出される流体中での粒子の沈降速度式(2)の透光性微粒子の密度、粒径と塗布組成物の密度に関する項であり、この値が1.5以下であると、ダイコート法による塗布工程において透光性微粒子の沈降速度が速すぎる事に起因する前述の種々のトラブルを回避しやすくなり、好ましく、1.0以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。この値が負になる場合は、透光性微粒子は長い時間が経つと浮遊物となるが、連続して送液される際には大きな問題とはならないが、ゼロに近い方が好ましい。
上記以外に透光性微粒子の沈降速度を制御する因子として塗布組成物の粘度が挙げられ、沈降速度の観点からは粘度が高い方がいいが、塗布組成物の粘度は高速塗布適性の観点から、20×10^(-3)(Pa・s)以下が好ましく、特に好ましくは15×10^(-3)(Pa・s)以下であり、10×10^(-3)(Pa・s)以下が更に好ましい。乾燥ムラ防止の観点から、1×10^(-3)(Pa・s)以上が好ましく、3×10^(-3)(Pa・s)以上が特に好ましく、5×10^(-3)(Pa・s)以上が特に好ましい。高速塗布適性と乾燥ムラを両立しながら、粒子沈降性を制御するためには、3?15×10^(-3)(Pa・s)が好ましく、5?10×10^(-3)(Pa・s)が特に好ましい。
【0017】
式(2) 沈降速度Vs=(1/18)×(σ-ρ)×(g/μ)×d^(2)(但し、σ:透光性微粒子の密度(g/cm^(2))、ρ:塗布組成物の密度(g/cm^(2))、g:重力加速度、d:透光性微粒子の平均粒径(μm)、μ:塗布組成物の粘度(Pa・s))
【0018】
本発明の光散乱性フィルムを形成するための塗布組成物中において、透光性微粒子が溶媒によってある程度膨潤すると、透光性微粒子の密度と塗布組成物の密度が見かけ上近くなり、前記式(1)中の(σ-ρ)の絶対値が小さくなるため沈降(浮上)速度が遅くなり、好ましい。透光性微粒子が溶媒によって膨潤しやすい組み合わせとして、透光性微粒子が架橋ポリスチレン、または架橋ポリ(アクリル-スチレン)、架橋ポリ((メタ)アクリレート)、またはそれらの混合物であり、溶媒がケトン類、トルエン、キシレン、エステル類から選ばれる少なくとも1種類の溶媒からなることが好ましい。透光性微粒子の膨潤は、粒子の架橋密度によっても制御可能であり、用いる溶媒との組み合わせで調整することもできる。
【0019】
<透光性微粒子>
透光性微粒子の平均粒径は0.5?5μmが好ましく、より好ましくは1.0?4.0μmである。平均粒径が0.5μm未満であると、光の散乱角度分布が広角にまで広がるため、ディスプレイの文字解像度の低下を引き起こしたりするため、好ましくない。一方、5μmを超えると、上記式(1)の絶対値が大きくなりすぎるために沈降速度が速くなる、光散乱層の膜厚を厚くする必要が生じ、カールが大きくなる、素材コストが上昇してしまう、等の問題が生じる。
前記透光性微粒子の具体例としては、式(1)の関係を満たす塗布組成物であれば特に限定は無く、例えばシリカ粒子、TiO_(2)粒子等の無機化合物の粒子;ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられるが、一般的に無機粒子は比重が大きいため、使用することは好ましくなく、樹脂粒子が好ましく用いられる。なかでも架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ((メタ)アクリレート)粒子、架橋ポリ(アクリル-スチレン)粒子が好ましい。
透光性微粒子の形状は、球状が好ましい。不定形のものでも使用できるが、沈降速度式における形状因子が球形と異なるため、式(1)の左辺の好ましい範囲は形状毎に異なる。
【0020】
また、粒子径の異なる2種以上の透光性微粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径の透光性微粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性微粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、上述したようなギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性微粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なる透光性微粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0021】
前記透光性微粒子は、形成された光散乱層中に、光散乱層全固形分中に3?30質量%含有されるように配合される。より好ましくは5?20質量%である。3質量%未満であると、光散乱効果が不足し、30質量%を超えると、像の解像度の低下や表面の白濁やギラツキ等の問題が生じる。
また、透光性微粒子の密度は、好ましくは10?1000mg/m^(2)、より好ましくは100?700mg/m^(2)である。
透光性微粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0022】
本発明における透光性樹脂と透光性微粒子との混合物のバルクの屈折率は、1.48?2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50?1.80である。屈折率を前記範囲とするには、透光性樹脂及び透光性微粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
また、本発明においては、透光性樹脂と透光性微粒子との屈折率の差(透光性微粒子の屈折率-透光性樹脂の屈折率)は、好ましくは0.01?0.2であり、より好ましくは0.02?0.2であり、更に好ましくは0.05?0.15である。この差が0.02未満であると、内部散乱の効果が不足するためギラツキが悪化し、0.2を超えると、フィルム表面の白濁の問題が生じる。
また、前記透光性樹脂の屈折率は、1.45?2.00であるのが好ましく、1.48?1.60であるのが更に好ましい。
また、前記透光性微粒子の屈折率は、1.40?1.80であるのが好ましく、1.48?1.70であるのが更に好ましい。
ここで、前記透光性樹脂の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
【0023】
光散乱層の膜厚は、1?10μmが好ましく、1.2?8μmがより好ましい。薄すぎるとハード性が不足し、厚すぎるとカールや脆性が悪化して加工適性が低下する場合があるので、前記範囲内とするのが好ましい。
【0024】
<透光性樹脂>
透光性樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含む高屈折率モノマーを選択することもできる。
【0025】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3-シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート〕、前記のエステルのエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体〔例、1,4-ジビニルベンゼン、4-ビニル安息香酸-2-アクリロイルエチルエステル、1,4-ジビニルシクロヘキサノン〕、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。前記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0026】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4-メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4-メタクリロキシフェニル-4'-メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0027】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、前記光散乱層は、上述のエチレン性不飽和モノマー等の透光性樹脂形成用のモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、透光性微粒子および必要に応じて後述するような無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化させることにより形成することができる。」

(4)「【実施例】
【0155】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
・・・(中略)・・・
【0160】
(光散乱層用塗布液Aの調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)50gをトルエン40gで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2g添加し、混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を1.7gおよび平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を13.3g加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP-149)0.75g、シランカップリング剤(KBM-5103、信越化学工業(株)製)を10gを加え、完成液とした。
前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光散乱層の塗布液Aを調製した。
本塗布組成物の液密度は0.99、透光性微粒子の密度は1.06であり、従って(σ-ρ)×d^(2)=0.86であった。
・・・(中略)・・・
【0168】
[実施例1]
(1)光散乱層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、下記の装置構成および塗布条件で示されるダイコート法によって光散乱層用塗布液Aを塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量90mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの防眩性を有する光散乱層を形成し、巻き取った。これを実施例1-1とする。
・・・(中略)・・・
【0169】
基本条件:スロットダイ13は、上流側リップランド長I_(UP)が0.5mm、下流側リップランド長I_(LO)が50μmで,スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウェブWの隙間を、下流側リップランド18bとウェブWの隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間G_(L)を50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブWとの隙間G_(S)、及びバックプレート40aとウェブWとの隙間G_(B)はともに200μmとした。それぞれの塗布液の液物性に合わせて、光散乱層:塗布速度=50m/分、ウエット塗布量=17ml/m^(2)で、低屈折率層:塗布速度=40m/分、ウエット塗布量=5ml/m^(2)で塗布を行った。なお、塗布幅:1300mm、有効幅:1280mmとした。」

(5)上記(1)ないし(4)から、引用例には、
「透光性微粒子、透光性樹脂及び溶媒を含有し、(σ-ρ)×d^(2)≦1.5(但し、σ:透光性微粒子の密度(g/cm^(2))、ρ:塗布組成物の密度(g/cm^(2))、d:透光性微粒子の平均粒径(μm))なる式(1)を満たすことによって透光性微粒子の沈降速度が制御された光散乱層用の塗布組成物を、バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面にスロットダイの先端リップのランドを近接させて先端リップのスロットから塗布することにより、透明支持体上に光散乱層を塗工する工程を含む製造方法で作製した光散乱性フィルムであって、
フィルム面内で均一な散乱性を有し、高い生産性で製造することができるものであり、
前記光散乱層は、表面散乱及び/又は内部散乱による光拡散性と、好ましくはフィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成されるものであり、その膜厚は、1?10μmが好ましく、より好ましくは1.2?8μmであり、
前記透光性微粒子の平均粒径は0.5?5μmが好ましく、より好ましくは1.0?4.0μmであり、
前記透光性樹脂と前記透光性微粒子との屈折率の差は、好ましくは0.01?0.2であり、より好ましくは0.02?0.2であり、更に好ましくは0.05?0.15であり、
前記透光性樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましく、前記バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有しかつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましく、
前記エチレン性不飽和基を有するモノマーは、光ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射による重合反応により硬化させることができるものであり、
具体的には、
前記二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーであるペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)50gをトルエン40gで希釈し、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2g添加し、混合攪拌して、紫外線硬化により得られる塗膜の屈折率が1.51となる溶液を得、この溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した前記透光性微粒子である平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液1.7g及び前記透光性微粒子である平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液13.3gを加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP-149)0.75g及びシランカップリング剤(KBM-5103、信越化学工業(株)製)10gを加え、当該混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、(σ-ρ)×d^(2)が0.86となる光散乱層用塗布液Aを調整し、
前記透明支持体である80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、
装置構成が、上流側リップランド長I_(UP)0.5mm、下流側リップランド長I_(LO)50μm、スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さ150μm、スロット16の長さ50mmのスロットダイ13を使用して、上流側リップランド18aとウェブWの隙間を、下流側リップランド18bとウェブWの隙間よりも50μm長くし、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間G_(L)を50μmに設定し、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブWとの隙間G_(S)及びバックプレート40aとウェブWとの隙間G_(B)をともに200μmとしたものであり、塗布条件が、塗布速度=50m/分、ウエット塗布量=17ml/m^(2)、塗布幅:1300mm、有効幅:1280mmであるダイコート法によって、前記トリアセチルセルロースフィルムに前記光散乱層用塗布液Aを塗布し、
30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量90mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの防眩性を有する光散乱層を形成し、巻き取ることによって作製した
光散乱性フィルム。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

4 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「『透明支持体』、具体的には『80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)』」、「『透光性微粒子』、具体的には『平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製)』及び『平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)』」、「『光散乱層』、具体的には『厚さ6μmの防眩性を有する光散乱層』」、「透明支持体上に光散乱層を塗工する工程を含む製造方法で作製した光散乱性フィルム」、「『光ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射による重合反応により硬化させる』ことができる『二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー』の(共)重合体、具体的には『ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)』を紫外線の照射による重合反応により硬化させたもの」、「平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)」及び「平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製)」は、それぞれ、本願発明の「透光性基体」、「透光性微粒子」、「光学機能層」、「光学積層体」、「放射線硬化型樹脂」、「低屈折性透光性微粒子」及び「高屈折性透光性微粒子」に相当する。

(2)引用発明の「光学積層体(光散乱性フィルム)」は、「透光性基体(透明支持体)」上に「光学機能層(光散乱層)」を塗工する工程を含む製造方法で作製したもの、具体的には、「透光性基体(80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)」をロール形態で巻き出し、光散乱層用塗布液Aを塗布し、紫外線を照射して塗布層を硬化させて、「光学機能層(厚さ6μmの防眩性を有する光散乱層)」を形成し、巻き取ることによって作製したものであり、「光学機能層」を形成するための塗布組成物、具体的には光散乱層用塗布液Aには、「透光性微粒子(『透光性微粒子』、具体的には『平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製)』及び『平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)』)」が含有されているから、本願発明の「透光性基体の片面又は両面に、直接又は他の層を介して、少なくとも透光性微粒子を含有する光学機能層を設けた光学積層体」と、「透光性基体の片面に、直接、少なくとも透光性微粒子を含有する光学機能層を設けた」点で一致する。

(3)引用発明の「光学機能層(光散乱層)」は、具体的には、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)50gをトルエン40gで希釈し、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2g添加し、平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液1.7g及び平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液13.3gを加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP-149)0.75g及びシランカップリング剤(KBM-5103、信越化学工業(株)製)10gを加え、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して調整した、(σ-ρ)×d^(2)が0.86となる光散乱層用塗布液Aを、「透光性基体(80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製))」に塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm^(2)、照射量90mJ/cm^(2)の紫外線を照射して塗布層を硬化させることによって形成した厚さ6μmの防眩性を有する光散乱層であって、硬化後の「光学機能層」には、「放射線硬化型樹脂(『ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)』を紫外線の照射による重合反応により硬化させたもの)」と「低屈折性透光性微粒子(平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製))」と「高屈折性透光性微粒子(平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製))」とが含有されるから、本願発明の「『少なくとも放射線硬化型樹脂と、1種又は複数種の低屈折性透光性微粒子及び1種又は複数種の高屈折性透光性微粒子とを含有』する『光学機能層』」と、「少なくとも放射線硬化型樹脂と、1種の低屈折性透光性微粒子及び1種の高屈折性透光性微粒子とを含有」する点で一致する。

(4)引用発明の「放射線硬化型樹脂(『光ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射による重合反応により硬化させる』ことができる『二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー』の『(共)重合体』)」は、具体的には、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)に、照度400mW/cm^(2)、照射量90mJ/cm^(2)の紫外線を照射することによる重合反応により硬化させたものであって、その屈折率は1.51であり、引用発明の「高屈折性透光性微粒子(平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製))」の屈折率は1.61であるから、放射線硬化型樹脂と高屈折性透光性微粒子の屈折率差は0.10である。
よって、引用発明の「放射線硬化型樹脂と高屈折性透光性微粒子の屈折率差」と本願発明の「放射線硬化型樹脂と高屈折性透光性微粒子の屈折率差」とは「0.05以上の範囲にあ」る点で一致する。

(5)引用発明の「光学機能層(光散乱層)」は、具体的には、厚さ6μmの防眩性を有する光散乱層であるところ、その膜厚(μm)をXとすると、当該Xは「4.5≦X≦15」という範囲にある。
よって、引用発明は、本願発明の「4.5≦X≦15 X:光学機能層の膜厚(μm)」との発明特定事項を備えている。

(6)ア 本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.01以下の範囲にある」点について、次の記載がある。

「低屈折性透光性微粒子」は、放射線硬化型樹脂マトリックス層との屈折率の差が、0.05以下であることが好適であり、0.03以下であることがより好適であり、0.01以下であることが特に好適である。放射線硬化型樹脂マトリックス層と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.05より大きい場合は、光散乱の度合いが大きくなりすぎ、高コントラストへの寄与が低下する。低屈折性透光性微粒子の屈折率は、好ましくは1.45?1.55であり、より好ましくは1.49?1.55である。(【0027】参照。)

イ 上記アからみて、本願発明の「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.01以下の範囲にある」事項の技術上の意義は、放射線硬化型樹脂マトリックス層と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.05より大きい場合は、光散乱の度合いが大きくなりすぎ、高コントラストへの寄与が低下するので、放射線硬化型樹脂マトリックス層と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.05以下である範囲内にしたことにあるものと解される。

ウ 引用発明では、「低屈折性透光性微粒子(平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製))」の屈折率は1.55であって、「放射線硬化型樹脂(『ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET-30、日本化薬(株)製)』を紫外線の照射による重合反応により硬化させたもの)」の屈折率は1.51であるから、引用発明の「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差」は0.04であり、0.05以下であるから、光散乱の度合いが大きくなりすぎず、高コントラストへの寄与が低下することがない範囲内の値である。

エ 上記アないしウからして、引用発明の「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差」0.04と本願発明の「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差」0.01以下とは、「光散乱の度合いが大きくなりすぎず、高コントラストへの寄与が低下することがない0.05以下の範囲内」である点で一致する。

(7)上記(1)ないし(6)から、本願発明と引用発明とは、
「透光性基体の片面に、直接、少なくとも透光性微粒子を含有する光学機能層を設けた光学積層体において、
前記光学機能層が、少なくとも放射線硬化型樹脂と、1種の低屈折性透光性微粒子及び1種の高屈折性透光性微粒子とを含有し、
前記放射線硬化型樹脂と前記低屈折性透光性微粒子の屈折率差が、光散乱の度合いが大きくなりすぎず、高コントラストへの寄与が低下することがない0.05以下の範囲にあり、且つ、前記放射線硬化型樹脂と前記高屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.05以上の範囲にあり、
4.5≦X≦15
X:光学機能層の膜厚(μm)
を充足する光学積層体。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記放射線硬化型樹脂と前記低屈折性透光性微粒子の屈折率差が、本願発明では、「0.01以下の範囲」にあるのに対して、引用発明では、具体的には0.04である点。

相違点2:
その個数の95%以上の透光性微粒子の粒径と前記光学機能層の膜厚とが、
本願発明では、
「3.6ln(X)-0.70≧Y≧3.6ln(X)-4.7
(但し、1≦Y≦9)
X:光学機能層の膜厚
Y:透光性微粒子の電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)」
という式を充足するのに対して、
引用発明では、上記式を充足するのか否か明らかでない点。

5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
ア 本願発明の「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.01以下の範囲にある」点について、本願明細書の発明の詳細な説明には、次の(ア)ないし(ス)の記載がある。
(ア)「【0027】
ここで、光学機能層に含まれる透光性微粒子として、一種又は複数種の低屈折性透光性微粒子と、一種又は複数種の高屈折性透光性微粒子とを組み合わせて用いることが好適である。高屈折性透光性微粒子は、光学機能層内部の光散乱(内部光散乱)に作用し、画像のギラツキを防止する。低屈折性透光性樹脂は、光学機能層表面の光散乱(外部散乱)に作用し、外光の映り込みを防止する。尚、「低屈折性透光性微粒子」は、放射線硬化型樹脂マトリックス層との屈折率の差が、0.05以下であることが好適であり、0.03以下であることがより好適であり、0.01以下であることが特に好適である。放射線硬化型樹脂マトリックス層と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.05より大きい場合は、光散乱の度合いが大きくなりすぎ、高コントラストへの寄与が低下する。低屈折性透光性微粒子の屈折率は、好ましくは1.45?1.55であり、より好ましくは1.49?1.55である。また、「高屈折性透光性微粒子」は、放射線硬化型樹脂マトリックス層との屈折率の差が、0.05以上であることが好適であり、0.07以上であることがより好適である。上限は、特に限定されないが、例えば0.15以下である。放射線硬化型樹脂と高屈折性透光性微粒子の屈折率の差が0.05より小さい場合には、内部散乱の度合いが小さくなり、ギラツキ防止効果への寄与が低下する。高屈折性透光性微粒子の屈折率は、1.55?1.65が好ましく、1.58?1.63でより好ましい。」
(イ)【0055】に記載された、実施例1の樹脂層用塗料の成分を示す【表1】から、実施例1の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.50の多官能ウレタンアクリレートであるAH-600(共栄社化学社製)と、屈折率が1.49で粒径が5.0μmの架橋メタクリル酸メチルビーズであるGMDM-050L(ガンツ化成社製)とを含有することを見てとれる。
(ウ)【0057】に記載された、実施例2の樹脂層用塗料の成分を示す【表2】から、実施例2の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.50の多官能ウレタンアクリレートであるAH-600(共栄社化学社製)と、屈折率が1.49で粒径が5.0μmの架橋メタクリル酸メチルビーズであるGMDM-050L(ガンツ化成社製)及び屈折率が1.49で粒径が3.0μmの架橋メタクリル酸メチルビーズであるMX-300(綜研化学社製)を含有することを見てとれる。
(エ)【0059】に記載された、比較例1の樹脂層用塗料の成分を示す【表3】から、比較例1の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.49の多官能アクリレートであるライトアクリレートDPE-6A(共栄社化学社製)を含有するが、「低屈折性透光性微粒子」に該当する微粒子を含有しないことを見てとれる。
(オ)【0060】に記載された、比較例2の樹脂層用塗料の成分を示す【表4】から、比較例2の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.49の多官能ウレタンアクリレートであるU-6HA(新中村化学社製)と、屈折率が1.49で粒径が2.5μmの架橋メタクリル酸メチルビーズであるSSX-102(積水化成品工業社製)とを含有することを見てとれる。
(カ)【0063】に記載された、比較例3の樹脂層用塗料の成分を示す【表5】から、比較例3の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.49の多官能ウレタンアクリレートであるU-6HA(新中村化学社製)と、屈折率が1.49で粒径が10.0μmの架橋メタクリル酸メチルビーズであるGMDM-100M(ガンツ化成社製)とを含有することを見てとれる。
(キ)「【0064】
実施例3
樹脂層用塗料成分を表4の塗料成分とし、樹脂層の厚さを5μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光学機能層フィルムを得た。
【0065】
実施例4
樹脂層の厚さを6μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の光学機能層フィルムを得た。」
(ク)【0067】に記載された、実施例5の樹脂層用塗料の成分を示す【表6】から、実施例6の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.50の多官能ウレタンアクリレートであるAH-600(共栄社化学社製)と、屈折率が1.49で粒径が5.0μmの架橋メタクリル酸メチルビーズであるGMDM-050L(ガンツ化成社製)とを含有することを見てとれる。
(ケ)【0069】に記載された、実施例6の樹脂層用塗料の成分を示す【表7】から、実施例6の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.50の多官能ウレタンアクリレートであるAH-600(共栄社化学社製)と、屈折率が1.49で粒径が8.0μmの架橋メタクリル酸メチルビーズであるMBX-8(積水化成品社製)とを含有することを見てとれる。
(コ)「【0070】
比較例4
樹脂層用塗料成分を表4の塗料成分とし、樹脂層の厚さを4μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4の光学機能層フィルムを得た。」
(サ)【0072】に記載された、比較例5の樹脂層用塗料の成分を示す【表8】から、比較例5の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.49の多官能ウレタンアクリレートであるライトアクリレートDPE-6A(共栄社化学社製)を含有するが、「低屈折性透光性微粒子」に該当する微粒子を含有しないことを見てとれる。
(シ)「【0073】
比較例6
樹脂層用塗料成分を表5の塗料成分とし、樹脂層の厚さを15μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6の光学機能層フィルムを得た。
【0074】
比較例7
樹脂層の厚さを16μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例7の光学機能層フィルムを得た。」
(ス)【0076】に記載された、比較例8の樹脂層用塗料の成分を示す【表9】から、比較例8の光学機能層を形成する樹脂層用塗料が、屈折率が1.49の多官能ウレタンアクリレートであるライトアクリレートDPE-6A(共栄社化学社製)を含有するが、「低屈折性透光性微粒子」に該当する微粒子を含有しないことを見てとれる。

イ 上記ア(ア)からは、本願発明の「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.01以下の範囲にある」点は、「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差」が、「光散乱の度合いが大きくなりすぎず、高コントラストへの寄与が低下することがない0.05以下の範囲」内の0.01以下の範囲にしたものであると解されるが、「0.05以下の範囲」内においてさらにその上限を0.01にしたことに設計事項を超える技術上の意義を見出せない。

ウ 上記ア(イ)ないし(ス)から、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された各実施例における「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差」が、0.01(実施例1、2、4ないし6)又は0(実施例3)であり、これに対する各比較例では、0.01(比較例7)又は0(比較例2ないし4、6)であるか、「低屈折性透光性微粒子」を含有していない(比較例1、5、8)ことが把握できるだけで、「放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差」が、0.05を超える比較例の記載がないばかりか、該屈折率差が0.05以下の範囲内のものにおいて、該屈折率差が0.01以下の範囲内のものと該屈折率差が0.01を超えるものとの比較もされていない。
したがって、上記ア(イ)ないし(ス)からは、本願発明で、放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差を、0.05以下の範囲内においてさらにその上限を0.01にしたことに設計事項を超える技術的上の意義を見出せない。

エ 上記アないしウのとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明の放射線硬化型樹脂と低屈折性透光性微粒子の屈折率差が0.05以下の範囲内においてさらにその上限を0.01にした点は設計上の事項にすぎない。

オ したがって、本願発明の上記相違点1に係る構成は当業者が適宜なし得た設計上の事項である。

(2)相違点2について
ア 引用発明において、「光学機能層(光散乱層)」は、具体的には、厚さ6μmの防眩性を有する光散乱層であるから、「光学機能層の膜厚」(X)は6μmであり、「ln(X)」は約1.79であり、「3.6ln(X)-0.70」は約5.75μmであり、「3.6ln(X)-4.7」は約1.75μmである。
したがって、引用発明において、電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)Yが約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲内の透光性微粒子の個数の透光性微粒子の全数に対する割合が95%以上であれば、引用発明は、その個数の95%以上の透光性微粒子の粒径と前記光学機能層の膜厚とが、
「3.6ln(X)-0.70≧Y≧3.6ln(X)-4.7
(但し、1≦Y≦9)
X:光学機能層の膜厚
Y:透光性微粒子の電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)」という式を充足することになる。

イ 以下の(ア)ないし(カ)のとおりであるから、引用発明の「高屈折性透光性微粒子(平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製))」は、その粒径が約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲内の個数の高屈折性透光性微粒子の全数に対する割合は99.9994%以上であるといえる。
(ア)引用発明の「高屈折性透光性微粒子」である架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX-350、綜研化学(株)製)は、粒度分布のばらつきの程度を表すCV値(=粒径の標準偏差(μm)/平均粒径(μm)×100)が9%であり(特開2007-249191号公報の【0196】、【0345】、【0357】、【0369】の【表1】の資料No.10の「粒子CV値(%)」の欄参照。)、平均粒径が3.5μmの微粒子である。
(イ)標準偏差はCV値から、「CV値÷100×平均粒径」の式で算出することができるから、上記(ア)のCV値から標準偏差を求めると、引用発明の「高屈折性透光性微粒子」の粒度分布における標準偏差は0.315μm(=9÷100×3.5)である。
(ウ)サンプルの値が「平均値-z×標準偏差」以上「平均値+z×標準偏差」以下の範囲内に存在する確率はzの値によって変化するものであり、当該確率が、例えば、z=1のときには68.26%、z=2のときには95.44%、z=3のときには99.74%、z=4のときには99.994%、z=5のときには99.9994%である、ことは技術常識である(標準正規分布表を用いて容易に求められる。)。
(エ)引用発明において、高屈折性透光性微粒子の粒度分布における標準偏差は0.315μmであり(上記(イ)参照。)、高屈折性透光性微粒子の平均粒径は3.5μmであるから、上記(ウ)に照らせば、高屈折性透光性微粒子の粒径が1.925μm(=3.5μm(平均値)-5(z)×0.315μm(標準偏差))以上5.075μm(=3.5μm(平均値)+5(z)×0.315μm(標準偏差))以下の範囲内に存在する確率は99.9994%である。
(オ)約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲は、上記(エ)の1.925μm以上5.075μm以下の範囲を含み、さらに広い範囲であるから、引用発明において、電子顕微鏡による高屈折性透光性微粒子の実測値(μm)Yが約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲内になる確率は99.9994%よりも高いといえる。
(カ)したがって、引用発明において、電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)Yが約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲内の高屈折性透光性微粒子の個数の高屈折性透光性微粒子の全数に対する割合は99.9994%以上であるといえる。

ウ 引用発明の「低屈折性透光性微粒子」の粒度分布について
(ア)CV値が10%以下の単分散性の高い微粒子は、本願優先日前に周知であり(以下「周知技術」という。例.特開2006-52128号公報(【0027】の「単分散性の指標となる粒子径の変動係数が10%以下のもの」、【0116】の【表1】の実施例1?7の「粒子径の変動係数」の欄、【0117】の【表2】の実施例8、10、11、13の「粒子径の変動係数」の欄参照。「変動係数」は「CV値」と同義である。)、特開2005-239837号公報(請求項2の「粒子径分布の変動係数が10%以下である」、【0028】の「粒子径分布の変動係数(CV値)は10%以下であることが好ましく、0.1?10%であることがより好ましい。」、【0049】の【表1】の合成例1?4の「変動係数(%)」の欄参照。)、特開2004-26974号公報(請求項4の「球状粒子の粒子径の均斉度を表すCv値が10%以下の単分散粒子」、【0055】の実施例2のCv値、【0056】の実施例3のCv値参照。))、防眩層に含有させる透光性微粒子として、周知技術のような単分散性の高いものを用いると、防眩性や内部散乱特性のばらつきが少なくなったり、防眩層の光学性能設計が容易になったりすることは、当業者に自明である(いずれも原査定で引用した国際公開第2005/033752号の17頁16?23行及び18頁26行?19頁3行の記載、特開2007-72100号公報の請求項1及び【0015】の記載、特開2006-184493号公報の【0016】及び【0064】の記載参照。)。
(イ)上記(ア)からみて、引用発明において、「低屈折性透光性微粒子(平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製))」を、CV値が10%以下の単分散性の高いものとすること(つまり、「低屈折性透光性微粒子」としてCV値が10%のものを用いたり、あるいは、引用例に記載の「平均粒径3.5μmの架橋アクリル-スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)」に適宜分級を施してCV値が10%以下となるように粒径を揃えたりすること)によって、防眩性や内部散乱特性のばらつきを少なくしたり、「光学機能層(光散乱層)」の光学性能設計を容易にしたりすることは、当業者が周知技術に基づいて適宜になし得たことである。
(ウ)引用発明において上記(イ)のとおりにした「低屈折性透光性微粒子」は、上記イと同様に計算すると、標準偏差は0.35μm(=10÷100×3.5)以下であり、上記イ(ウ)に照らせば、該低屈折性透光性微粒子の粒径が1.75μm(=3.5μm(平均値)-5(z)×0.35μm(標準偏差))以上5.25μm(=3.5μm(平均値)+5(z)×0.35μm(標準偏差))以下の範囲内に存在する確率は99.9994%以上であり、約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲は、この1.75μm以上5.25μm以下の範囲を含み、さらに広い範囲であるから、電子顕微鏡による前記低屈折性透光性微粒子の実測値(μm)Yが約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲内になる確率は99.9994%よりも高いといえる。
(エ)したがって、引用発明において、電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)Yが約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲内の低屈折性透光性微粒子の個数の低屈折性透光性微粒子の全数に対する割合を99.9994%よりも高い値となすことは、上記(イ)からみて、当業者が周知技術に基づいて適宜になし得たことである。

エ 上記イ及びウからみて、引用発明において、電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)Yが約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲内の「透光性微粒子(高屈折性透光性微粒子及び低屈折性透光性微粒子)」の個数の透光性微粒子の全数に対する割合を99.9994%よりも高い値となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜になし得たことである。
したがって、引用発明において、電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)Yが約1.75μm以上約5.75μm以下の範囲内の透光性微粒子の個数の透光性微粒子の全数に対する割合を95%以上となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜になし得たことであるから、
引用発明において、その個数の95%以上の透光性微粒子の粒径と前記光学機能層の膜厚とが、
「3.6ln(X)-0.70≧Y≧3.6ln(X)-4.7
(但し、1≦Y≦9)
X:光学機能層の膜厚
Y:透光性微粒子の電子顕微鏡による粒径の実測値(μm)」という式を充足するようにすることは、上記アからみて、当業者が周知技術に基づいて適宜になし得たことである。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効から当業者が予測することができた程度のものである。

(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-05 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-24 
出願番号 特願2008-84717(P2008-84717)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆後藤 慎平  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 西村 仁志
清水 康司
発明の名称 光学積層体  
代理人 伊藤 温  

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