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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08G
管理番号 1277677
審判番号 不服2009-23240  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-27 
確定日 2013-08-07 
事件の表示 特願2003-560064「超分子ポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月24日国際公開、WO2003/059964、平成17年 5月19日国内公表、特表2005-514498〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年 1月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年 1月17日(FR)フランス)を国際出願日とする出願であって、平成18年 8月 1日に手続補正書が提出され、平成20年 5月23日付けで拒絶理由が通知され、同年 9月 3日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成21年 7月17日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月27日に審判請求がされるとともに手続補正書が提出され、平成23年 8月19日付けで審尋がされ、同年11月22日に回答書が提出されたところ、平成24年 6月12日付けで、当審において平成21年11月17日付けの手続補正を却下するとともに拒絶理由を通知し、これに対して平成24年12月19日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたものである。


第2 本件発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成24年12月19日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の記載に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1には以下の事項が記載されている。

「下記の(1)および(3)の中から選択される少なくとも一つの基と、(1)?(5)の中から選択される第2の基とを有する化合物の、非共有結合による、上記の基の間に水素結合が形成される「超分子ポリマー」とよばれる結晶していないポリマーを形成するためのモノマーまたはプレポリマーとしての使用:

(ここで、Aは酸素、硫黄またはNHを表し、上記超分子ポリマー中の水素結合は(1)?(5)の基の中から選択される互いに同一または異なる2つの基の間で行われる)」


第3 当審の拒絶の理由の概要
当審において、平成24年 6月12日付けで通知した拒絶の理由は、理由3として、「この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備があるため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない」という理由を含むものである。


第4 当審の判断
当審は、依然として、この出願は、発明の詳細な説明の記載に不備があるため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない、と判断する。

以下、その理由を詳述する。

(1)平成24年12月19日付けの補正により、独立した請求項は請求項1のみで、他は請求項1を直接的にあるいは間接的に引用する従属請求項とされた。

その請求項1には上記第2に指摘したとおりの事項が記載されており、概略すれば、上に定義される化合物の、上に定義されるポリマーを形成するための、モノマーまたはプレポリマーとしての使用(方法)についての発明であるといえる。

本願の発明の詳細な説明は、本願の各請求項に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなくてはならない。
このことを、本願の請求項1に係る発明についていえば、本願の請求項1に係る発明について上記要件を満足することとは、発明の詳細な説明において、請求項1に定義された化合物を使用すれば、請求項1に定義されたポリマーを形成し得るかもしれないという可能性を示したり、その化合物を使用して、そのポリマーを形成しようとする意図を示すだけでは足らず、当業者の技術水準に立ったうえで、その化合物を使用して、そのポリマーを形成し得たと、当業者が認識するに足るように、発明の詳細な説明が記載されているといえて初めて、いわゆる実施可能要件は満足されるものである。

(2)そこで、本願の発明の詳細な説明の記載を検討する。
ア 発明の詳細な説明の段落0001?0030には、超分子ポリマーについての従来技術及び一般的な説明、特許請求の範囲のコピー、及び請求項1の(1)ないし(5)の基を有する化合物の仮想的な例が挙げられている。
請求項1に定義されるポリマーが形成されているかどうかについては、発明の詳細な説明段落0002に記載の定義も合わせみると、請求項1に定義される化合物を単位としてこれが複数水素結合しており、その水素結合体がポリマーといい得る程度の物質を形成している[※]ことについて、合理的な説明及び/又は具体的な確認がなされている必要がある。

[※ 例えば、一般に超分子ポリマーといわれるような重合度を有する等。 本願出願後の技術論文ではあるが、参考文献として、例えばNATURE2008年5月号[vol453(8)、pp.171?173]を挙げる。pp.171右欄には、"In most cases, only short chains of up to about 10 units are created, whereas useful supramolecular polymers require at least 100 to 1,000 monomers to be connected at any one time"(重合度10程度の短鎖のものも多いが、有用な超分子ポリマーとはモノマー単位が少なくとも100?1000以上の重合したものである)と記載されている。]

しかし、この発明の詳細な説明の前半の記載は、請求項1に定義される化合物の基(1)どうしが水素結合し得ること、請求項1に定義される化合物の(1)ないし(5)の基の部分の合成手法の示唆、及び請求項1に定義される化合物自体の参考例が示されるのみであり、請求項1に定義される化合物が請求項1に定義されるポリマーを形成し得る可能性についての指摘に止まる記載しかなされていない。
また、請求項1に定義される化合物が存在しさえすれば、請求項1に定義されるポリマーが形成されるとの技術常識も見あたらない。
そうすると、発明の詳細な説明の前半の記載は、上記の合理的な説明と、上記の具体的な確認について、いずれもこれを行ったものであるとはいえない。

イ 発明の詳細な説明の後半である段落0031ないし0089には、実施例が記載されている。
実施例1、3、4、5、7は、-HN-NH-部分構造を有する化合物の混合物に対して尿素を反応させて、請求項1に定義される化合物を含む混合物を得る例が記載されている。実施例2、3、4、6、7、9は、先に得た上記基を有する化合物の混合物を、樹脂に添加した例や、その混合物から溶剤を乾燥した物を得た例として記載されている。
しかし、実施例1、3、4、5、7で得られた化合物の混合物、及び実施例2、3、4、6、7、9で得られた樹脂や乾燥物において、いずれが、上に定義されるポリマーであるか、本願明細書には記載されておらず、いずれが、請求項1に定義される化合物を単位としてこれが複数水素結合しており、その結合体がポリマーと通常言われる程度にまで重合したものとして形成されているかについても、具体的な確認はなされていない。

各実施例についての記載から、請求項1に定義される化合物を単位として、これが複数水素結合しており、その結合体がポリマーと通常言われる程度にまで重合したものである、請求項1に定義されるポリマーが形成されていることが明らかであるかについて、以下検討する。

実施例1,3,4では、その記載より、化合物Aを含む混合物が得られていると認める。
しかし、実施例1、3、4ではその混合物が請求項1に定義されるポリマーであるとは記載されず、その混合物が請求項1に定義されるポリマーであることを実験的に裏付ける事項も記載されていない。
上記の混合物は、本願の請求項1に定義される化合物である化合物Aを含むが、化合物Aのほかに、化合物BないしD(実施例1、3、4)、BisAEP及びBPE(実施例3)などを含み、これらの化合物もまた、水素結合を形成することの可能な化合物である。すなわち、混合物のなかで化合物Aが水素結合で結合し得る相手化合物は、化合物Aに限られない。化合物Bないし化合物D、BisAEP及びBPEなど相手化合物となり得るものであり、化合物Aが、化合物A以外のこれら化合物とも水素結合を形成した物質は、請求項1に定義されるポリマーにはあたらない。
また、化合物Aを含む混合物であれば、他に水素結合を形成することが可能な基を有する物質が混在していても、化合物Aが請求項1に定義されるポリマーを形成することが技術常識であるともいえない。
そうすると、実施例1、3、4の記載からは、各実施例において化合物Aが含まれる混合物を得たからといって、その混合物が、化合物Aを単位として、これが複数水素結合しており、その結合体がポリマーと通常言われる程度に重合した、請求項1に定義されるポリマーが形成しているとまでいうことはできない。

実施例5、7は、その記載より、-NH-NH-基と尿素とが反応して、請求項1に定義される基(1)が合成されることは推認できるので、請求項1に定義される基(1)を含む化合物の混合物が得られたとはいえる。また実施例6、9は混合物から溶媒を蒸発させ蒸発乾固物を得ている。
しかしながら、実施例5で請求項1に定義される化合物が得られたかどうか、さらに実施例5及び実施例6で請求項1に定義される化合物により請求項1に定義されるポリマーが形成されたかについて、確認されておらず、何らの同定資料も付されておらず、この点について技術常識が存在するともいえない。
そうすると、実施例5、7の記載からは、各実施例において化合物Aが含まれる混合物を得られたかどうか、またたとえ得られたからといって、実施例5ないし7及び9において化合物Aを含む混合物が、化合物Aを単位として、これが複数水素結合しており、その結合体がポリマーと通常言われる大きさの、請求項1に定義されるポリマーが形成しているとまでいうことはできない。

なお、実施例8が本願発明の具体例に該当しないことは、当審が拒絶理由で指摘し、また、意見書において請求人も認めているとおりである。

(3)以上のとおりであるので、本願の発明の詳細な説明は、本願の請求項1に係る発明について、請求項1に定義される化合物を使用すれば、請求項1に定義されるポリマーを形成し得るかもしれないという可能性を示したり、その化合物を使用して、そのポリマーを形成しようとする意図を示す程度の記載しかなされておらず、実施例を参照しても、請求項1に定義される化合物により請求項1に定義されるポリマーが形成されたかについて、確認されておらず、何らの同定資料も付されておらず、この点について技術常識が存在するものでもない。
してみると、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(4)請求人の主張について
平成24年12月19日付けの意見書において、請求人は概略、本願明細書には、そこに記載される実施例で得られたもののどれが超分子ポリマーであるかについて明確には記載されていないが、実施例で得られた混合物は、請求項1に定義される化合物を含むことは明らかであることを理由に、請求項1の発明である「使用」は実施例に記載されていると考える旨の主張をする。
しかしながら、実施例で得られた混合物は、請求項1に定義される化合物を含むことは明らかであったとしても、その化合物が含まれていさえすれば、それが請求項1に定義されるポリマーを形成するとまではいえないことは、上記(2)において指摘したとおりである。
また、同意見書において、請求人は、実施例で得られた混合物の具体的化学構造、物性、その他同定事項等は、請求項1に定義の「使用」の実施に当たっては不要と考える旨の主張もする。
確かに、どのように混合物自体を得るか、という観点からは、そのような事項は必要ではないかもしれない。しかし問題は、請求項1に定義された化合物を使用することにより、目的物である請求項1に定義されたポリマーを形成し得たと当業者が認識するかどうか、という点であり、単に「不要と考える」という主張だけでは、この点について、何らの実質的な反論がなされたとはいえない。
そうすると、請求人の主張は、本願明細書はいわゆる実施可能要件を満たしていないという当審の見解を左右するに至るものではなく、採用することはできない。


第5 むすび
以上のとおり、本願は明細書の発明の詳細な説明が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、同法第49条第4号に該当し、その余について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-07 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2003-560064(P2003-560064)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新留 素子  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
東 裕子
発明の名称 超分子ポリマー  
代理人 越場 隆  
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