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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1277678
審判番号 不服2010-16593  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-23 
確定日 2013-08-07 
事件の表示 特願2004-565081「ホスト型電子取引サービスシステムにおけるカスタム戦略指定」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月22日国際公開、WO2004/061563、平成18年 4月 6日国内公表、特表2006-511883〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成15年11月21日(優先権主張 平成14年12月23日 米国)を国際出願日とする特許出願であって,平成21年5月21日付けの拒絶理由通知に対して,平成21年10月26日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成22年3月18日付けの拒絶査定に対して平成22年7月23日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成23年8月31日付けで当審の審尋がなされ,平成24年5月14日付けで当審より拒絶理由を通知したところ,平成24年11月15日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。(なお,当審の審尋に対する回答はなかった。)


第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年11月15日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。
「ホスト型電子取引サービスシステムにおいてカスタム戦略に基づき取引を処理するための方法において,当該方法が,
前記ホスト型電子取引サービスシステムのホストが,商人のマシンから戦略を受信し戦略ライブラリに格納する工程であって,当該戦略が,前記商人に関係する商品またはサービスの交換のための電子取引を実行することに関連して前記電子取引サービスシステムにより実施される1つまたはそれより多くのサービスを指定し,前記戦略が,処理の順序をプログラム上で決定することができる論理階層を有するルールの流れを表し,前記ルールは,ブール値及び当該ブール値に応じて実行されるアクションを評価するものである工程,
前記ホストが,前記商人のマシンから,実時間電子取引に関係する取引情報を受信する工程,及び
前記ホストが,前記取引情報に基づいて,前記戦略にしたがい,実時間電子取引を実施する工程,
を有してなることを特徴とする方法。」


第3 当審における拒絶の理由について
当審における平成24年5月14日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。
『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
・引用例1:国際公開第02/37219号
(特表2004-524599号公報参照)
・引用例2:”サイバーソース株式会社 世界有数の大手マーチャントから圧倒的な支持を獲得し,決済から物流までの信頼性高いe-ビジネスを実現。”,日経ネットビジネス No.74,日経BP社,2001年5月10日,p.92-93
・引用例3:特開2001-331591号公報
(1)引用例1?3について
(途中略)
(2-1)引用例1発明と請求項1に係る発明との一致点と相違点について
(途中略)
(2-2)判断
(途中略)
(2-3)結論
したがって,本願発明は,引用例1発明,及び引用例2,3開示事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。』


第4 当審の判断
1.各引用例について

ア 《引用例1について》
当審の拒絶理由の通知で引用した引用例1には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例1摘記事項」という。)
(ア)「FIELD OF INVENTION
The present invention generally relates to electronic commerce transaction processing. The invention relates more specifically to a method and apparatus for evaluating fraud risk in an electromc commerce transaction.」
(1ページ1行?4行)
(当審仮訳:発明の技術分野
本発明は全般的には電子商取引処理に関する。さらに詳しくは,本発明は電子商取引における不正取引リスクを評価するための方法及び装置に関する。)
(イ)「FIG. 5 A is a block diagram showing a fraud screening system including the context in which it may operate.
A merchant 501 sends a request for service 503 through one or more networks 504 to a merchant service provider 502, and receives a response 505 that contains a risk score for a particular transaction. Merchant 501, in FIG. 5 A, may comprise one or more software elements that are associated with an online merchant, such as computer programs, Web application programs, CGI or Perl scripts, etc.
Merchant service provider 502 is an entity that provides electronic commerce services to online merchants. Such services may include, for example, payment services, tax computation services, fulfillment management, distribution control, etc. Merchant service provider 502 provides such services by or through one or more software elements that communicate through network 504. For example, the Internet Commerce Suite of CyberSource Corporation may provide such services. The foregoing information about merchant service provider 502 is provided only to illustrate an example operational context of the invention and does not constitute a required element of the invention.」
(9ページ下から16行?下から4行)
(当審仮訳:図5Aは,システムが動作し得る状況を含む,不正取引選別システムを示すブロック図である。
販売業者501が,1つまたはそれより多くのネットワーク504を介して,販売業者サービスプロバイダ502にサービス503に対するリクエストを送り,特定の取引に対するリスク採点値を含む応答505を受け取る。図5Aにおいて,販売業者501には,コンピュータプログラム,ウエッブアプリケーションプログラム,CGI(共通ゲートウエイインターフェース)またはパール(Perl)スクリプト等のような,オンライン販売業者に関係付けられた1つまたはそれより多くのソフトウエア要素を含めることができる。
販売業者サービスプロバイダ502は,電子商取引サービスをオンライン販売業者に提供するエンティティである。そのようなサービスには,例えば,支払サービス,税金計算サービス,達成度管理,配送管理等を含めることができる。販売業者サービスプロバイダ502は,ネットワーク504を通じて交信する1つまたはそれより多くのソフトウエア要素により,またはそれらを介して,そのようなサービスを提供する。例えば,サイバーソース・コーポレーション(CyberSource Corporation)のインターネット・コマース・スート(Internet Commerce Suite)が,そのようなサービスを提供できる。販売業者サービスプロバイダ502に関する上述の情報は,本発明の動作状況の例を示すためだけに提供され,本発明の必須要素を構成するものではない。)

イ 《引用例1発明について》
上記(ア)?(イ)の各摘記事項,及び各摘記事項で参照される各図面の記載によれば,引用例1には,以下の発明が記載されている。
(以下「引用例1発明」という。)
「販売業者サービスプロバイダであり,電子商取引サービスをオンライン販売業者に提供するエンティティである,サイバーソース・コーポレーション(CyberSource Corporation)のインターネット・コマース・スート(Internet Commerce Suite)が提供する電子商取引のサービスであって,
提供するサービスは,不正取引選別システムサービスに,支払サービス,税金計算サービス,達成度管理,配送管理等を含めることができ,
販売業者501が電子商取引における不正取引リスクを評価する祭,販売業者サービスプロバイダ502の不正取引選別システムサービスの提供を受けること,
その際,販売業者501が,ネットワーク504を介して,販売業者サービスプロバイダ502にサービス503に対するリクエストを送り,特定の取引に対するリスク採点値を含む応答505を受け取ることにより不正取引リスクを評価すること。」

ウ 《引用例2について》
当審の拒絶理由の通知で引用した引用例2には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例2摘記事項」という。)
(ア)「急速な勢いで成長を続けているe-ビジネスだが,実際の立ち上げとなると,様々な課題が待ち構えている。たとえば,BtoCにおける決済手段をどうするか。クレジットカードの不正使用などに関してどうセキュリティを確保するのか。また,24時間365日の安定稼動という信頼性や,フロントとバックオフイスとの連携なども大きな問題である。
こうしたECトランザクシヨンサービスにおいて,世界でもトップクラスの実績を誇っているのが,サイバーソースである。
「まず言っておきたいのは,サイバーソースはひとつの機能だけを提供している企業ではなく,6つの複合的なサービスを,“スイート・サービス”として提供している企業であるということです。それにより,サイバーソースに依頼すれば,決済から物流マネジメントまでのeビジネスをワンストップサービスで実現できるのです」(マッキャナン氏)。
6つの機能とは,クレジット決済代行などの「ペイメント」,クレジットカードの不正使用チェックなどの「リスクマネジメント」,MP3やPCソフトウエアなどのデジタルコンテンツのダウンロードサービスである「デジタルデリバリ」,電子商品券サービスの「ストアド・バリュー」,税金計算サービスなどの「タックス」,インターネットマーチャント指定の倉庫や配送業者に対して発送指示を行い,配送状況を管理する「フルフィルメント」である。
確かに,日本でもクレジット決済の代行サービスを行っている企業は多くある。しかし,eビジネス全体ということを考えた時には,クレジットの決済があれば,その不正チェック,売買が成立すれば実際に商品の配送というところにもつながっていく。それらを個々に頼むのではなく,ひとつの企業で完結できる。そこに同社の強みがあるのである。」
(92ページ中欄3行?右欄18行)

エ 《引用例2開示事項について》
上記(ア)の摘記事項によれば,引用例2には,以下のことが開示されている。
(以下「引用例2開示事項」という。)
「サイバーソース社が提供する機能は,6つの複合的なサービスを,“スイート・サービス”として提供するものであり,決済から物流マネジメントまでのeビジネスをワンストップサービスで実現できるものであって,6つの機能とは,クレジット決済代行などの『ペイメント』,クレジットカードの不正使用チェックなどの『リスクマネジメント』,MP3やPCソフトウエアなどのデジタルコンテンツのダウンロードサービスである『デジタルデリバリ』,電子商品券サービスの『ストアド・バリュー』,税金計算サービスなどの『タックス』,インターネットマーチャント指定の倉庫や配送業者に対して発送指示を行い,配送状況を管理する『フルフィルメント』であること。」

オ 《引用例3について》
当審の拒絶理由の通知で引用した引用例3には,以下のことが記載されている。
(以下「引用例3摘記事項」という。)
(ア)「【要約】
【課題】 本発明は,電子商取引システムの構築や変更を,ビジネスプロセスを記述した「シナリオ」によって行うことによって,システム構築を柔軟かつ容易に行い得るようにすることを目的としている。
【解決手段】 例えばXMLでビジネスプロセスを記述した「シナリオ」と,その「シナリオ」を解釈し,「アプリケーションサーバ」上の「アプリケーション」を実行する「ビジネスプロセス制御処理装置」を利用することによって,ビジネスプロセスの開発と「アプリケーション」の開発を分離する。」
(イ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,電子商取引システム構築において,電子商取引システムのビジネスプロセスと実際に処理を行う「アプリケーション」の開発を分離し,電子商取引システムの構築を容易かつ柔軟に行うための構築方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電子商取引システム構築に当たって,対話形式でパラメータを入力することにより,その場で電子商取引システム構築を可能にするようにされているものがある。
【0003】また従来の他の電子商取引システム構築に当たって,各機能部品であるコンポーネントが予め用意されており,それらを組み合わせることにより電子商取引システム構築を可能にするものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の対話形式でパラメータを入力する電子商取引システム構築では,処理の流れや利用する機能などが限られているため,固定的なサービスしか構築できず,オリジナルの電子商取引システム構築ができなかった。
【0005】また,従来のコンポーネントの組み合わせによる電子商取引システム構築では,コンポーネントを組み合わせるための高度なプログラミングや,その組み合わせ方に知識や技術が必要であった。
【0006】また,従来のコンポーネントの組み合わせによって構築された電子商取引システムでは,システムの変更に際して,新たなコンポーネントの迫加のためやコンポーネント自身の改造のためのプログラミングなどが必要であった。
【0007】本発明は,電子商取引システムの構築や変更を,ビジネスプロセスを記述した「シナリオ」によって行うことによって,システム構築を柔軟かつ容易に行い得るようにすることを目的としている。」
(ウ)「【0008】
【課題を解決するための手段】従来のコンポーネントの組み合わせによる電子商取引システム構築では,ビジネスプロセスと実際に処理を行う「アプリケーションサーバ」上の「アプリケーション」とが一体化していたために,電子商取引システムの構築や変更を行うには,利用する「アプリケーション」に関する知識や,高度なプログラミングなどが必要であった。
【0009】そこで本発明では,電子商取引システム構築において,例えばXMLでビジネスプロセスを記述した「シナリオ」と,その「シナリオ」を解釈し,「アプリケーションサーバ」上の「アプリケーション」を実行する「ビジネスプロセス制御処理装置」を利用することによって,ビジネスプロセスの開発と「アプリケーション」の開発とを分離し,「アプリケーション」の開発を行う「一次サービス提供者」は,ビジネスプロセスを意識せずに「アプリケーション」の開発を行い,ビジネスプロセスの開発を行う「二次サービス提供者」は,「一次サービス提供者」が提供する「アプリケーション」を組み合わせた「シナリオ」を選択し又は記述するだけで,ネットワークを介した複数の「アプリケーションサーバ」上の「アプリケーション」が連携したサービスの提供が可能となる,容易かつ柔軟にカスタマイズ可能な電子商取引システムの構築が可能となるようにしている。」
(エ)「【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の概念図である。図中の符号10はサービス利用者,20は二次サービス提供者,30は一次サービス提供者,40はネットワーク,50はネットワーク,11ないし13は夫々トップページ,21はシステム構築部,22はシナリオリポジトリ,23はビジネスプロセス制御処理装置,24ないし26は夫々シナリオ,31ないし34はアプリケーションサーバを表している。
【0011】「一次サービス提供者」30は,「アプリケーションサーバ」31ないし34上へ,提供するサービスの「アプリケーション」を構築する。
【0012】「二次サービス提供者」20は,「システム構築部」21よりシナリオリポジトリ22へ「シナリオ」を登録,又はシナリオリポジトリ22に格納されている「シナリオ」をサービスヘ割り当てることにより,サービスを構築する。
【0013】「システム構築部」21が,サービス起動のURLを複数のトップページ11ないし13に割り当てる。
【0014】「サービス利用者」10は,トップページより,起動したいサービスのURLを指定する。
【0015】「ビジネスプロセス制御処理装置」23が,サービスに対応する「シナリオ」をシナリオリポジトリ22から読み込む。
【0016】「ビジネスプロセス制御処理装置」23が,「シナリオ」に記述された「アプリケーションサーバ」31ないし34上の「アプリケーション」を順次実行する。」
(オ)「【0017】図2は電子モール上の店舗構築を例にした詳細を説明する図である。図中の符号200はシナリオ型モールサーバ,201はシステム構築部,202はビジネスプロセス制御処理装置,203はシステム実行部,204はアプリケーションサーバを表している。
【0018】以下アプリケーションサーバ204の下で処理を順次実行してゆく。即ち,システム構築部201に対して次の処理が行われる。
【0019】「二次サービス提供者」は,「店舗登録・サービスID発行アプリケーション」において,住所,氏名等の店舖登録情報を入力し,店舗管理DB210へ登録する。【0020】店舗管理DB210からサービスlDが割り当てられて発行される。
【0021】次に,「シナリオ選択・登録アプリケーション」において,提供したいサービスに対応する「シナリオ」をシナリオテンプレートDB211より検索・選択し,サービスIDをキーとして,「シナリオ」名をサービス別データDB213に登録する。
【0022】また,登録されていない「シナリオ」や,取得した「シナリオ」を変更して利用する場合には,シナリオテンプレートDB211へ一旦登録した後,サービスIDをキーとして,シナリオ名をサービス別データDB213に登録する。
【0023】次に,「画面雛型選択アプリケーション」において,提供するサービスにおける,「アプリケーション」の表示画面の「雛型」を画面雛型DB212より選択し,サービスlDをキーとして,「雛型」IDをサービス別データDB213に登録する。
【0024】次に,「サービス別データ設定アプリケーション」において,提供するサービスにおける,タイトルロゴなどの「サービス別データ」を入力・選択し,サービスIDをキーとして,「サービス別データ」をサービス別データDB213に登録する。
【0025】発行されたサービスlDと,選択した「シナリオ」名とを組み合わせた店舗起動用URLを生成し,サービス別データDB213に登録する。電子商取引システム構築が完成する。
【0026】システム実行部203とビジネスプロセス制御処理装置202とにおいて次の処理が行われる。
【0027】「サービス利用者」が「モールトップアプリケーション」のURLヘアクセスする。
【0028】「モールトップアプリケーション」はリダイレクションして,「ビジネスプロセス制御処理装置」202ヘ「モールシナリオ」起動要求を出す。
【0029】(10)「ビジネスプロセス制御処理装置」202は,シナリオテンプレートDB211より「モールシナリオ」を取得する。
【0030】(11)「ビジネスプロセス制御処理装置」202は,「モールシナリオ」を読み込み,「シナリオ」中に記述された「店舗選択アプリケーション」に対して処理開始命令を渡す。
【0031】(12)「店舗選択アプリケーション」は,サービス別データDB213より各店舗データを取得する。
【0032】(13)「店舗選択アプリケーション」は,店舗名とURLとから,各店舗へのリンクを生成し,表示する。
【0033】(14)「サービス利用者」は,表示された店舗一覧から利用したい店舗を選択し,クリックする。
【0034】(15)「店舗選択アプリケーション」はリダイレクションして,「ビジネズプロセス制御処理装置」202ヘサービスIDと「店舗シナリオ」起動要求とを出す。
【0035】(16)「ビジネスプロセス制御処理装置」202は,シナリオテンプレートDB211より「店舖シナリオ」を取得する。
【0036】(17)「ビジネスプロセス制御処理装置」202は,「店舗シナリオ」を読み込み,「シナリオ」中に記述された「店舗アプリケーション」に対してサービスIDと処理開始命令とを渡す。
【0037】(18)「店舗アプリケーション」は,サービス別データDB213より,「サービス別カスタマイズデータ」を取得する。
【0038】(19)「店舗アプリケーション」は,サービス別データDB213より取得した画面雛型IDをキーとし画面雛型DB212より「画面雛型」を取得する。
【0039】(20)「店舗アプリケーション」は,サービス別データDB213より取得したデータを加工し,「サービス利用者」に表示する。【0040】以下(15)?(20)の手順で,「サービス利用者」の要求に基づき,シナリオが随時実行される。」
(カ)ここで,【図2】の記載を参照すれば,シナリオ型モールサーバが,シナリオテンプレートDB211,サービス別データDB213を有し,ビジネスプロセス制御処理装置202がシナリオを取得する。
(キ)「【0049】【発明の効果】本発明を用いることにより,次の効果が得られる。電子商取引システムの構築を,「シナリオ」によるビジネスプロセスの記述と,実際の処理を行う「アプリケーションサーバ」上の「アプリケーション」の開発とに,分散することが可能となる。
【0050】電子商取引システムの提供者を,「アプリケーションサーバ」上の「アプリケーション」によって決済,配送,認証などの汎用的なサービスを提供する「一次サービス提供者」と,「シナリオ」によって汎用的なサービスを組み合わせ,オークションなどのオリジナルサービスを提供する「二次サービス提供者」とに分けることが可能となる。」

カ 《引用例3開示事項について》
上記(ア)?(キ)の各摘記事項によれば,引用例3には,以下のことが開示されている。
(以下「引用例3開示事項」という。)
「店舗が,
提供したいサービスに対応する『シナリオ』をモールサーバのシナリオテンプレートDB211より検索・選択し,サービスIDをキーとして,『シナリオ』名をモールサーバのサービス別データDB213に登録し,
店舗が,
『登録されていないシナリオ』や,『取得したシナリオを変更』して『利用』する場合には,モールサーバのシナリオテンプレートDB211へ一旦登録した後,サービスIDをキーとして,シナリオ名をサービス別データDB213に登録すると,
モールサーバのビジネスプロセス制御処理装置は,モールシナリオを読み込み,シナリオを随時実行することにより電子商取引を実行する。」

2.対比
(1)引用例1発明と,本願発明とを対比する。
(ア)引用例1発明の,販売業者サービスプロバイダは,電子商取引に必要なサービスをネットワークを介して販売業者に提供し,販売業者はサービスを利用して電子商取引をするものであるから,引用例1発明と本願発明とは,「ホスト型電子取引サービスシステムにおいて取引を処理するための方法」である点で共通する。
(イ)引用例1発明の販売業者サービスプロバイダが提供するサービスは,不正取引選別システムサービスに,支払サービス,税金計算サービス,達成度管理,配送管理等を含めることができ,販売業者が,電子商取引における不正取引リスクを評価する祭,販売業者サービスプロバイダの不正取引選別システムサービスの提供を受けることができる。
引用例1発明のサービスは,不正取引選別,支払,税金計算,達成度管理,配送管理などである。
他方,本願発明のサービスは,特許請求の範囲の記載では特定されておらず,必ずしも明確ではないものの,発明の詳細な説明の記載や図面の記載によれば,支払サービス,預価値サービス,リスク管理サービス,満足度管理サービス,配送制御サービスであったり,国,出荷リスクなどのルールであったり,ホットリスト試験,ベロシティ試験などであったり,クレジットカード認証や高度詐欺鑑別であったりする。
これらのサービスは,いずれも,電子商取引に必要なサービスである点で共通する。
してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「ホスト型電子取引サービスシステムのホストには,商人に関係する商品又はサービスの交換のための電子取引を実行することに関連して,電子取引サービスシステムにより実施されるサービスがある」という点で共通する。
(ウ)引用例1発明は,販売業者が電子商取引における不正取引リスクを評価する祭,販売業者サービスプロバイダの不正取引選別システムサービスの提供を受けるものであり,販売業者が,ネットワークを介して,販売業者サービスプロバイダにサービスに対するリクエストを送り,特定の取引に対するリスク採点値を含む応答を受け取ることにより不正取引リスクを評価する。
してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「ホストが,商人のマシンから,実時間電子取引に関係する取引情報を受信する工程,及び,ホストが,取引情報に基づいてサービスを遂行する工程」とを有する点で共通する。

(2)してみると,引用例1発明と本願発明とは,以下の点で一致する。
「ホスト型電子取引サービスシステムにおいて取引を処理するための方法において,当該方法が,
ホスト型電子取引サービスシステムのホストには,商人に関係する商品又はサービスの交換のための電子取引を実行することに関連して,電子取引サービスシステムにより実施されるサービスがあり,
ホストが,商人のマシンから,実時間電子取引に関係する取引情報を受信する工程,及び,
ホストが,取引情報に基づいてサービスを遂行する工程,
を有してなることを特徴とする方法。」

(3)そして引用例1発明と本願発明とは,以下の点で相違する。
[相違点1]
本願発明では,電子取引サービスシステムにより実施されるサービスが「1つまたはそれより多くのサービス」であり,「ホスト」が一連のサービスを遂行して「実時間電子取引を実施する」のに対し,引用例1発明では,支払,税金計算,達成度管理,配送管理等の各サービスが提供されるものの,不正取引選別システムのサービスとの関係でどのように実施されるのか明確ではなく,本願発明のように,「ホスト」が一連のサービスを遂行して「実時間電子取引を実施する」ものであるかどうか明確ではない点。
[相違点2]
本願発明では,「カスタム戦略」に基づき取引を処理するものであって,「ホスト型電子取引サービスシステムのホストが,商人のマシンから戦略を受信し戦略ライブラリに格納する工程」を有し,この工程の「戦略」が,「商人に関係する商品またはサービスの交換のための電子取引を実行することに関連して電子取引サービスシステムにより実施される1つまたはそれより多くのサービスを指定」すること,この工程の「戦略」が,「処理の順序をプログラム上で決定することができる論理階層を有するルールの流れを表し,ルールは,ブール値及び当該ブール値に応じて実行されるアクションを評価する」ものであること,ホストが「戦略」にしたがい,「実時間取引を実施」することが特定されるのに対して,引用例1発明では,そのような構成になっていない点。


3.判断
ア [相違点1]について。
(ア)引用例2開示事項によれば,引用例2には,「サイバーソース社が提供する機能は,6つの複合的なサービスを,“スイート・サービス”として提供するものであり,決済から物流マネジメントまでのeビジネスをワンストップサービスで実現できるものであって,6つの機能とは,クレジット決済代行などの『ペイメント』,クレジットカードの不正使用チェックなどの『リスクマネジメント』,MP3やPCソフトウエアなどのデジタルコンテンツのダウンロードサービスである『デジタルデリバリ』,電子商品券サービスの『ストアド・バリュー』,税金計算サービスなどの『タックス』,インターネットマーチャント指定の倉庫や配送業者に対して発送指示を行い,配送状況を管理する『フルフィイルメント』であること。」が開示されている。
(イ)してみると,引用例1発明に,引用例2開示事項を適用することにより,引用例1発明の,支払,税金計算,達成度管理,配送管理等の各サービスと,不正取引選別システムのサービスとを,ワンストップサービスで一連のサービスとして提供し,配送まで管理する構成とすることには何ら困難性がない。
(ウ)つまり,引用例1発明の,電子取引サービスシステムにより実施されるサービスを,「1つまたはそれより多くのサービス」とし,「ホスト」が一連のサービスを遂行して「実時間電子取引を実施する」よう構成することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。

イ [相違点2]について。
(ア)引用例3開示事項によれば,引用例3には,
「店舗が,提供したいサービスに対応する『シナリオ』をモールサーバのシナリオテンプレートDB211より検索・選択し,サービスIDをキーとして,『シナリオ』名をモールサーバのサービス別データDB213に登録し,店舗が,『登録されていないシナリオ』や,『取得したシナリオを変更』して『利用』する場合には,モールサーバのシナリオテンプレートDB211へ一旦登録した後,サービスIDをキーとして,シナリオ名をサービス別データDB213に登録すると,モールサーバのビジネスプロセス制御処理装置は,モールシナリオを読み込み,シナリオを随時実行することにより電子商取引を実行する。」
ことが開示される。
(イ)ここで,引用例3開示事項の,「店舗」は,本願発明の「商人」や「商人のマシン」に対応し,「モールサーバ」は,本願発明の「ホスト」に対応する。
(ウ)引用例3開示事項の,モールサーバのビジネスプロセス制御処理装置は,モールシナリオを読み込み,シナリオを随時実行することにより電子商取引を実施する。
してみると,引用例3開示事項の,
「店舗が,提供したいサービスに対応するシナリオをシナリオテンプレートDBより検索・選択し,サービスIDをキーとして,シナリオ名をサービス別データDBに登録」したり,「店舗が,登録されていないシナリオや,取得したシナリオを変更して利用するためにシナリオテンプレートDB211へ登録して,シナリオ名をサービス別データDB213に登録」したりすることは,本願発明の,「ホスト」が「商人のマシンから戦略を受信し戦略ライブラリに格納」することに対応する。
(エ)引用例3開示事項では,「DBに登録」する際,「店舗」が「提供したいサービスを選択」して登録する。
このサービスは,決済,配送,認証などの汎用的なサービスなども含まれる。
してみると,「店舗」が「提供したいサービスを選択」することは,本願発明の,「サービスを指定」することに対応する。
ここで,この「サービス」は,「商人に関係する商品またはサービスの交換のための電子取引を実行することに関連」するものであって,「電子取引サービスシステムにより実施される1つまたはそれより多くの」サービスである。
(オ)引用例3開示事項では,「ビジネスプロセス制御処理装置」は,「モールシナリオ」を読み込み,シナリオが随時実行」される。これは,本願発明の,「ホスト」が「戦略」にしたがい「実時間取引を実施」することに対応する。
(カ)以上(ア)?(オ)のことから,引用例1発明にさらに引用例3開示事項を適用することにより,引用例1発明の,「ホスト型電子取引サービスシステムにおいて取引を処理するための方法」の発明を,さらに,「カスタム戦略」に基づき取引を処理するよう構成し,「ホスト型電子取引サービスシステム」の「ホスト」を,「商人のマシンから戦略を受信し戦略ライブラリに格納する」よう構成すること,その際,「(商人に関係する商品またはサービスの交換のための電子取引を実行することに関連して)(電子取引サービスシステムにより実施される1つまたはそれより多くの)サービスを指定」するよう構成すること,ホストが,この「戦略」にしたがい「実時間取引を実施」するよう構成することには,なんら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。
(ここで,「カギ括弧」内の(括弧)は,当審の判断の理解を助けるため,当審で付したものである。)

(キ)さらに,「戦略」が,「処理の順序をプログラム上で決定することができる論理階層を有するルールの流れを表し,ルールは,ブール値及び当該ブール値に応じて実行されるアクションを評価する」との相違点について,以下に検討する。
(ク)発明の詳細な説明には,以下の記載がある。
「【0046】
戦略は一般に,1つまたはそれより多くの電子取引がサービスプロバイダ106によって処理され,サービス結果に応じて実施するためのアクションが生じる態様を表す。戦略には,与えられた商人に関係するか,または与えられた商人が元の,電子取引に与えられた商人が適用したいサービスの順序指定を含めることができる。戦略は,アクションを評価から弁別することができ,処理の順序をプログラム上で決定することができる,論理階層を有するルールの流れ図を表す。戦略のそれぞれの要素には,その要素を説明し,明細を提供する,その名称及びバージョンのような,情報を属性としてもたせることができる。戦略は異なる商人104毎に特有とすることができる。さらに,商人104は複数の戦
略を作成して使用することができ,さらに,複数の戦略の適用の態様,すなわちスケジュールを指定することができる。
【0047】
ルールは一般に,文字値及び変数値を,それらの値に適用できる算術及び論理演算子とともに含む。ルールはブール値,例えば真または偽,及びそのブール値に応じてとるためのそれぞれのアクションを評価する。アクションは,評価するための別のルール,判定終結点またはサービスをコールするための命令を含む。
【0048】
例えば,商人104は,特定の額より少ないドル額にかかわる取引に対して第1の戦略を用いることができ,特定の額より多いドル額にかかわる取引に対して第2の戦略を用いることができる。」
(ケ)つまり,発明の詳細な説明の記載を参酌しても,「戦略」が,「処理の順序をプログラム上で決定することができる論理階層を有するルールの流れを表し,ルールは,ブール値及び当該ブール値に応じて実行されるアクションを評価する」との事項は,「戦略」が,「(例えば金額の多寡により異なる処理をするなどの)ルールの一連の流れ」であることを特定するにとどまるものと理解される。
これは,電子商取引サービスシステムにかぎらず,コンピュータシステムにおいて普通になされていることである。(以下このことを「周知の事項」という。)
(コ)ここで,仮に,例えば「サービス」が,「金額の多寡により異なる処理をする」などのルールであり,商人がルールを定義しこれをつなげることにより,「ルールの流れ」をつくるものであり,それを簡略化するための「なんらかの仕組み」を特定するのであれば,さらに進んで進歩性の検討を要するものであるところ,本願発明はそのような事項が特定されるものではない。
(サ)以上,(カ)?(コ)のことから,引用例1発明に,さらに「周知の事項」を適用することにより,「戦略」を,「処理の順序をプログラム上で決定することができる論理階層を有するルールの流れを表し,ルールは,ブール値及び当該ブール値に応じて実行されるアクションを評価する」よう構成することにもなんら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。

以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点1]?[相違点2]に係る発明特定事項は当業者が容易に想到することができたものであり,相違点を総合しても,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1発明,引用例2,3開示事項,及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用例1発明,引用例2,3開示事項,及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


4.審判請求人の主張について
審判請求人は,平成24年11月5日の意見書において,以下のとおり主張している。
(ア)「本願発明は,ホスト型電子取引サービスシステムにおいてカスタム戦略を指定する方法及び装置に関するものであり,商人が,電子取引に関連して実施するための1つまたはそれより多くのサービスを指定し,ホスト型電子取引サービスシステムが,電子取引に関係する取引情報を商人のマシンから受信して,戦略に従い,取引情報に基づいて,取引のサービスが提供されるものであります。
特に,商人のマシンから受信した「戦略」が,処理の順序をプログラム上で決定することができる論理階層を有するルールの流れを表し,そのルールがブール値及びそのブール値に応じて実行されるアクションを評価するものであることにより,戦略には条件付き表現を含ませることができ,商人は,戦略において実行されるルールの流れを指定することにより,提供されるサービスの内容及び順序を容易に所望の仕様に変更することができ,コンピュータプログラムの経験がない人でも容易にカスタム戦略を用いたサービスを提供できるという顕著な効果を奏するものであります。」
(第2ページ下から17行?下から6行)
(イ)「しかし,引用例3に記載された「シナリオ」には,論理階層を含むルールの流れを有し,かつ,そのようなルール及び関連するサービスを処理する順序をプログラム上で決定することができるという特徴を有するものについては,教示も示唆もありません。更に,引用例3には,「戦略」に論理階層として含まれるルールが,文字値或いは変数値を含み,それらの値をブール値として評価し,そのブール値に対応するアクションを評価すること,即ち,ブール値に応じて指定されるアクションを決定することについては,教示も示唆もありません。引用例3に記載された「シナリオ」は,取引において実行されるべきサービスを示すに過ぎません。」
(第3ページ14行?21行)

審判請求人の主張はつまり,本願発明は,「戦略」が,「処理の順序をプログラム上で決定することができる論理階層を有するルールの流れを表し,ルールは,ブール値及び当該ブール値に応じて実行されるアクションを評価する」との相違点に係る主張であるものと認められる。
しかし,当該相違点が当業者想到容易であったことは,前記「3.イ(キ)?(サ)」で判断したとおりであるから,審判請求人の主張を採用することはできない。
なお,審判請求人の,「商人は,戦略において実行されるルールの流れを指定することにより,提供されるサービスの内容及び順序を容易に所望の仕様に変更することができる」との主張は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり,採用することができない。


5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,引用例2,3開示事項,及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-05 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2004-565081(P2004-565081)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一小太刀 慶明  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 須田 勝巳
金子 幸一
発明の名称 ホスト型電子取引サービスシステムにおけるカスタム戦略指定  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  

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