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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1277693
審判番号 不服2011-14192  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-01 
確定日 2013-08-07 
事件の表示 特願2006-266850「通信ネットワークにおいて放送サービス情報を共有するための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月19日出願公開、特開2007-102782〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年9月29日(パリ条約による優先権主張2005年9月30日、欧州特許庁)の出願であって、平成21年1月29日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月3日付けで意見書並びに手続補正書が提出され、平成22年2月25日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年8月31日付けで意見書並びに手続補正書が提出され、平成23年2月18日付けで、補正却下の決定がなされるとともに、同日付で拒絶査定がなされたところ、これに対し、同年7月1日に拒絶査定に対する審判請求及び手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年7月1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項9に記載された発明を、
「複数の電子デバイスを含む通信ネットワークにおいて、第2の電子デバイスにより送信される放送サービス情報を第1の電子デバイス上で利用するための方法であって、
第1の電子デバイスが、放送サービス情報を含むサービス記述ファイルを検出するサービス記述ファイル検出工程と、
第1の電子デバイスが、デバイス性能を調査する性能調査工程と、デバイス性能は電子デバイスが放送サービスにアクセスする性能を含むことと、
第1の電子デバイスが、第2の電子デバイスのユーザプリファレンス及び第1の電子デバイスの性能に基づき放送サービス情報に対しアクションを実行するアクション実行工程と、前記ユーザプリファレンスは第1の電子デバイスの実行するアクションを指示するプリファレンスであり、第2の電子デバイスから第1の電子デバイスに与えられることと、からなる方法。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.補正の目的要件について
上記補正は、平成21年8月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項9に記載された「第2の電子デバイスにより送信される放送サービス情報を第1の電子デバイス上で利用するための方法」において、「第1の電子デバイスが、デバイス性能を調査する性能調査工程と、デバイス性能は電子デバイスが放送サービスにアクセスする性能を含むことと」との工程を追加し、また、「第2の電子デバイスのユーザプリファレンス」について、「ユーザプリファレンスは第1の電子デバイスの実行するアクションを指示するプリファレンスであり、第2の電子デバイスから第1の電子デバイスに与えられることと」と限定を行うもので、特許請求の範囲を減縮するものである。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

(2)引用発明及び公知技術
A.原査定の拒絶の理由で引用した特開2003-343427号公報(平成16年12月2日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【0015】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態は、それぞれがTV放送受信機能を有する2台の携帯電話機(以下端末と略称する)の間で、同じTV番組を視聴する例である。
【0016】
図1は、第1端末及び第2端末のブロック構成図である。
【0017】
まず、第1携帯通信端末としての第1端末100と第2携帯通信端末としての第2端末200の基本的な構成を説明する。
【0018】
図1に示すように、第1端末100及び第2端末200は、それぞれTVアンテナ1,21と、TV放送受信部2,22と、携帯電話アンテナ3,23と、携帯電話送受信部4,24と、TV電話信号処理部5,25と、表示出力制御部6,26と、音声出力制御部7,27と、端末制御部8,28と、入力操作部9,29と、リンガー10,30と、表示部11,31と、スピーカー12,32と、カメラ13,33と、マイク14,34と、を備えている。第1端末100では、TV放送受信部2は第1受信手段として、携帯電話送受信部4は第1携帯電話送受信手段として、TV電話信号処理部5は第1信号処理手段及び第1TV電話信号処理手段として、端末制御部8は第1放送受信制御手段として、それぞれ機能する。第2端末200では、TV放送受信部22は第2受信手段として、携帯電話送受信部24は第2携帯電話送受信手段として、TV電話信号処理部25は第2信号処理手段及び第2TV電話信号処理手段として、端末制御部28は第2放送受信制御手段及び判断手段として、それぞれ機能する。
【0019】
次に、TV放送受信機能に関する第1端末100及び第2端末200の構成について説明する。
【0020】
本実施の形態では、テレビジョン放送の電波として地上デジタル放送を例にとって説明する。第1端末100及び第2端末200において、TVアンテナ1,21は、空中を伝搬するテレビジョン放送の電波(TV波)を受信する。TV放送受信部2,22は、いわゆるチューナとしての機能と復調器としての機能とを有し、所定の周波数チャンネルのテレビジョン放送電波信号(TV放送電波信号)を受信するように選局する。そして、TVアンテナ1,21にて受信された信号は、適正なレベルになるようにAGC(Automatic Gain Contorol(審決注:Controlの誤記と認める。))にて増幅及び調整され、IF周波数に周波数変換される。また、TV放送受信部2,22は、受信した信号から不要な電磁波を除くためにフィルタにて帯域制限する。さらに、TV放送受信部2,22は、IF信号をベースバンド信号に変換し、このベースバンド信号から映像信号と音声信号と放送番組に関するデータ情報とを取り出す。データ情報は、例えば文字放送のデータやEPG(番組ガイド)情報などの放送番組を表す情報である。
【0021】
表示出力制御部6,26は、映像信号に基づいたテレビ映像を表示部11,31に表示する。音声出力制御部7,27は、音声信号に基づいたテレビ音声をスピーカー12,32から放音する。
【0022】
入力操作部9,29は、テレビ番組局の周波数チャンネルの変更をユーザが入力指示するためのスイッチとして機能する。入力操作部9,29が操作されると、端末制御部8,28は、それを認識し、選局された番組局の周波数となるようにTV放送受信部2,22に対して周波数変更指示を行う。入力操作部9,29は、端末100,200のON/OFFスイッチとしても機能する。
【0023】
次に、携帯電話機能に関する第1端末100及び第2端末200の構成について説明する。
【0024】
携帯電話アンテナ3,23は、受信可能な基地局からの入力信号を受信する。携帯電話送受信部4,24は、携帯電話アンテナ3,23が受信した入力信号を復調し、現在地の基地局情報などを出力する。携帯電話送受信部4,24は、自局情報を出力信号にのせて携帯電話アンテナ3,23から基地局に向けて送出して位置登録を行う。
【0025】
待ち受け状態では、携帯電話送受信部4,24は、自局に対する着信がないかを調べるためのページングチャンネルを継続して携帯電話アンテナ3,23を介して受信する。自局に対する着信情報が発見されると、携帯電話送受信部4,24は、端末制御部8,28へ信号出力し、端末制御部8,28は、リンガー10,30を作動させて着信音を鳴らす等によって、ユーザに着信があることを知らせる。ユーザが着信を認識して入力操作部9,29に対して着信操作を行なうと、端末制御部8,28は、携帯電話送受信部4,24及び音声出力制御部7,27を制御して、端末100,200を通話状態に設定する。
【0026】
発信のためユーザが発信操作を入力操作部9,29に対して行なうと、端末制御部8,28は、携帯電話送受信部4,24及び音声出力制御部7,27を制御して、端末100,200を通話状態に設定する。
【0027】
受話時には、携帯電話アンテナ3,23からの受話信号に基づいて、音声出力制御部7,27が受話音声をスピーカー12,32から放音する。送話時には、マイク14,34からの音声信号に基づいて、携帯電話送受信部4,24が送話信号を携帯電話アンテナ3,23から発信させる。
【0028】
TV電話通話を行う場合は、ユーザは入力操作部9,29に対してTV電話通話への切換操作を行なう。TV電話通話時には、端末制御部8,28は、携帯電話送受信部4,24及び音声出力制御部7,27に加えて、TV電話信号処理部5,25及び表示出力制御部6,26を制御する。受話時には、TV電話信号処理部5,25は、携帯電話アンテナ3,23からの受信信号から映像信号及び音声信号を取り出して表示出力制御部6,26及び音声出力制御部7,27へそれぞれ送出する。これらの映像信号及び音声信号に基づいて、表示出力制御部6,26は表示部11,31に映像を表示し、音声出力制御部7,27はスピーカー12,32から放音する。送話時には、TV電話信号処理部5,25は、カメラ13,33からの映像信号とマイク14,34からの音声信号とに基づいて送信信号を生成する。携帯電話送受信部4,24は、この送信信号を携帯電話アンテナ3,23から発信させる。
【0029】
次に、第1端末100と第2端末200とで同じ番組を視聴させる機能及び動作について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0030】
このフローチャートは、例えば、第1端末100のユーザAの要求により、ユーザAと第2端末200のユーザBとが同じTV番組を視聴しながら会話(通話)する場合の第1端末100及び第2端末200の制御を示す。
【0031】
ユーザAが所望のTV番組を視聴するため入力操作部9を操作すると、TVアンテナ1がユーザAの要求に応じたTV波を受信して、これをTV放送受信部2に入力する。TV放送受信部2は、受信したTV波を復調/復号して映像信号と音声信号とEPG情報とを取り出す。映像信号は、表示出力制御部6を介して表示部11で表示され、音声信号は、音声出力制御部7を介してスピーカー12に送られる。EPG情報は、端末制御部8に入力される。
【0032】
ユーザAがTV番組をユーザBと一緒に視聴しながら会話(通話)をしたいと考えた場合、ユーザAは、第1端末100のTV受信を継続した状態のまま、通常の携帯電話発信手順に従って第1端末100の入力操作部9を操作し、ユーザBに対して発信を行う。
【0033】
ユーザAが第1端末100の入力操作部9に対して発信操作を行い、これに応じてユーザBが第2端末200の入力操作部29に対して受信操作を行うと、第1端末100及び第2端末200では、それぞれ端末制御部8,28が携帯電話送受信部4,24及び音声出力制御部7,27を制御して、第1端末100と第2端末200とが通話状態となる。
【0034】
続いて、ユーザAは、入力操作部9に対してTV番組を共有するための所定の操作(TV番組共有操作)を行う。
【0035】
ステップS1において、ユーザAからTV番組共有要求を受けた第1端末100では、端末制御部8は、取得したEPG情報から、共有したい番組を特定する情報(番組特定情報)を抽出する。共有したい番組は、例えばTV番組共有操作を行った時に第1端末100が受信している番組である。番組特定情報は、例えば番組を特定するために割り振られた固有の番号などである。端末制御部8は、携帯電話送受信部4を制御し、携帯電話アンテナ3を通じて、第2端末200に対して、TV番組の共有が要求されたことを通知する信号(共有要求信号)と、EPG情報から得た番組特定情報と、を送信する。
【0036】
ステップS2において、第2端末200では、携帯電話アンテナ23が第1端末100からの信号を受信する。携帯電話送受信部24は、携帯電話アンテナ23が受信した信号を復調/復号して、共有要求信号と番組特定情報とを取り出して端末制御部28へ入力する。このとき、端末制御部28は、表示出力制御部26及び/又は音声出力制御部27を制御し、表示部31での表示及び/又はスピーカー32からの音声によって、ユーザBに対し、ユーザAからTV番組共有要求がされたことを知らせても良い。さらに、ユーザBがユーザAとのTV番組の共有を拒否する場合には、入力操作部29に対して所定の操作を行うことにより、第1端末100に対してその旨を通知すると共に、これ以降の制御を行わないようにしても良い。また、端末制御部28は、携帯電話送受信部24を制御して、TV番組共有要求信号を受理したことを通知する信号(受理通知信号)を第1端末100に対して返信しても良い。
【0037】
ステップS3及びS4では、第2端末200の端末制御部28が、TV放送受信部22を制御して、TVアンテナ21が受信したTV波を復調/復号してEPG情報とを取り出す。そして、第1端末100のユーザAによって特定されたTV番組を第2端末200が受信可能かどうかを、第2端末200の端末制御部28が判断する。係る判断は、TVアンテナ21がTV波を受信してTV放送受信部22がEPG情報を出力可能であること、第2端末200が受信可能なTV番組の中に番組特定情報で特定される番組が含まれている(第2端末200が受信可能なTV番組の中に第1端末100が受信している番組と同じ内容の番組が含まれている)こと、及び番組特定情報で特定される番組を第2端末200が実際に受信可能であること、という条件が全て満たされることが必要となる。第2端末200が受信可能なTV番組の中に番組特定情報で特定される番組が含まれているか否かの判断は、取り出したEPG情報と第1端末100から送られてきた番組特定情報とを照合し、一致する番組を探すことにより行う。また、EPG情報を受信可能であるかを判断した後に再度実際に受信可能であるかを判断するのは、ユーザBが移動中であり電波環境が悪くなって受信できなくなる可能性があるためである。判断の結果、受信可能のときはステップS5に進み、受信不可能のときはステップS6に進む。
【0038】
ステップS5では、端末制御部28は、一致する番組のチャンネル周波数をEPG情報から取得し、TV放送受信部22を制御してそのチャンネル周波数のTV放送を受信し、表示出力制御部26を制御して表示部31にそのTV番組の映像を表示し、音声出力制御部27を制御してスピーカー32からそのTV番組の音声を放音する。端末制御部28は、携帯電話送受信部24を制御して、「TV放送受信により共有が可能である」旨を通知する信号(受信可能通知信号)を、携帯電話アンテナ23から第1端末100に発信する。
【0039】
ステップS6では、一致する番組が存在しないため、端末制御部28は、携帯電話送受信部24を制御して、「TV放送受信が不可能であるためTV番組の転送を要求する」旨を通知する信号(転送要求信号)を、携帯電話アンテナ23から第1端末100に発信した後、第1端末100からのTV電話着信を待つ。
【0040】
ステップS7において、第1端末100では、第2端末200からの受信可能通知信号又は転送要求信号の何れか一方が、携帯電話アンテナ3及び携帯電話送受信部4を通じて端末制御部8に入力される。そして、受信可能通知信号を受信したときはステップS8へ進み、転送要求信号を受信したときはステップS9へ進む。
【0041】
受信可能通知信号を受信したときには(ステップS8では)、端末制御部8は、表示出力制御部6及び/又は音声出力制御部7を制御し、表示部11での表示及び/又はスピーカー12からの音声によって、ユーザAに対し、TV番組共有が完了したこと、すなわち第2端末200でも第1端末100と同じTV番組が提供されていることを知らせる。
【0042】
転送要求信号を受信したときには(ステップS9では)、端末制御部8は、携帯電話送受信部4を制御して、第2端末200に対してTV電話開始信号を発信する。
【0043】
ステップS10において、第2端末200では、携帯電話送受信部24が第1端末100からのTV電話開始信号を受信すると、端末制御部28は、携帯電話送受信部24とTV電話信号処理部25と表示出力制御部26と音声出力制御部27とを制御して、第2端末200をTV電話通話状態に設定する。
【0044】
ステップS11において、第1端末100では、端末制御部8は、携帯電話送受信部4を制御して、第2端末200に対してTV電話信号を発信する。TV電話信号は、TV放送受信部2から出力される映像信号と音声信号とに基づいて、端末制御部8の制御によってTV電話信号処理部5が生成する。このとき、音声に関しては、TV放送受信部2から出力される音声信号とマイク14から入力される音声信号とが合成される。すなわち、TV電話信号処理部5は、TV放送受信部2から出力される映像信号を出力映像とし、TV放送受信部2から出力される音声信号とマイク14から入力される音声信号とをミックスした音声信号を出力音声とするTV電話信号を生成し、このTV電話信号が第2端末200に発信される。このように音声信号を合成することにより、音声のみによる通常の電話回線を閉じてもTV電話によって通話を行うことができ、通信コストを低く抑えることが可能なためである。従って、端末制御部8は、TV信号の発信と同時に、音声のみによる通常の電話回線を閉じる。
【0045】
ステップS12において、第2端末200では、携帯電話送受信部24が第1端末100からのTV電話信号を受信し、TV電話信号処理部25がTV電話信号から映像信号及び音声信号を取り出して表示出力制御部26及び音声出力制御部27へそれぞれ送出する。これらの映像信号及び音声信号に基づいて、表示出力制御部26は表示部31に映像を表示し、音声出力制御部27はスピーカー32から放音する。
【0046】
以上の処理が全て終了すると、最終的にステップS8及びステップS13に進み、第1端末100と第2端末200の間でTV番組の共有が完了する。なお、ユーザA又はユーザBが入力操作部9,29に対して所定の解除操作を行うことにより、TV番組の共有状態は解除される。
【0047】
このように本実施形態によれば、例えば、第1端末100を使用してTV放送番組を視聴しているユーザAが、第2端末200を使用するユーザBと同じTV放送番組を共有しながら会話しようとする場合、ユーザAは、第1端末100を操作し、TV放送受信部2が出力する放送番組に関するデータ情報のうち指定された番組(視聴又は聴いている番組)に関する番組特定情報を、携帯電話送受信部4から発信する。ユーザB側では、第2端末200のTV放送受信部22が、第1端末100から受信した番組特定情報に対応した番組の情報信号を出力する。すなわち、ユーザBは、第2端末200を操作して選局することなく、ユーザAと同じ番組を独自に受信することができる。従って、ユーザAは、自分が受信しているTV放送番組を通信相手であるユーザBと容易且つ安価に共有することができる。
【0048】
第2端末200の端末制御部28は、ユーザBが受信可能な放送番組の中に、ユーザAが受信している番組と同じ内容の番組が存在するか否かを判断し、存在する場合には、その番組のチャンネル周波数を特定して出力する。TV放送受信部22は、特定されたチャンネル周波数の情報信号を出力する。従って、ユーザAの放送受信地域とユーザBの放送受信地域とが異なる場合であっても、ユーザAとユーザBとは、同じ放送番組を容易且つ安価に共有することができる。
【0049】
第2端末200の端末制御部28がユーザBにより受信可能な放送番組の中にユーザAが受信している番組と同じ内容の番組が存在しないと判断したとき、ユーザAが受信している番組の映像信号と音声信号に基づくTV電話信号が第1端末100から第2端末200へ発信され、第2端末200は第1端末100からのTV電話信号に基づいて第1端末100と同じ番組をユーザBへ提供する。従って、放送受信地域の相違からユーザBがユーザAと同じ内容の番組をTV放送電波信号から取得できない場合であっても、ユーザAとユーザBとは、同じ放送番組を容易に共有することができる。」(段落【0015】?【0049】の記載。下線は当審で付与。)

したがって、上記引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)は、以下のとおりのものである。
〈引用発明〉
「第1端末100と第2端末200とで同じ番組を視聴させる機能及び動作について、まず、第1端末100と第2端末200とが通話状態となり、
続いて、ユーザAは、入力操作部9に対してTV番組を共有するための所定の操作(TV番組共有操作)を行い、ステップS1において、ユーザAからTV番組共有要求を受けた第1端末100では、端末制御部8は、取得したEPG情報から、共有したい番組を特定する情報(番組特定情報)を抽出し、この番組特定情報は、例えば番組を特定するために割り振られた固有の番号などであり、
次に、端末制御部8は、携帯電話送受信部4を制御し、携帯電話アンテナ3を通じて、第2端末200に対して、TV番組の共有が要求されたことを通知する信号(共有要求信号)と、EPG情報から得た番組特定情報と、を送信し、
ステップS2において、第2端末200では、携帯電話アンテナ23が第1端末100からの信号を受信し、携帯電話送受信部24は、携帯電話アンテナ23が受信した信号を復調/復号して、共有要求信号と番組特定情報とを取り出して端末制御部28へ入力し、
ステップS3及びS4では、第2端末200の端末制御部28が、TV放送受信部22を制御して、TVアンテナ21が受信したTV波を復調/復号してEPG情報とを取り出し、そして、第1端末100のユーザAによって特定されたTV番組を第2端末200が受信可能かどうかを、第2端末200の端末制御部28が判断し、
ステップS5では、端末制御部28は、前記番組特定情報と一致する番組のチャンネル周波数をEPG情報から取得し、TV放送受信部22を制御してそのチャンネル周波数のTV放送を受信し、表示出力制御部26を制御して表示部31にそのTV番組の映像を表示し、音声出力制御部27を制御してスピーカー32からそのTV番組の音声を放音する、第1端末100と第2端末200とで同じ番組を視聴させる方法。」

B.原査定の拒絶の理由で引用した特開2003-309734号公報(平成15年10月31日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

b.「【0025】次に、この発明の特徴である家族や友人などのグループ間で簡単に同一番組を視聴できるようにする方法を説明する。ユーザは前述のとおりTV放送受信部20より入手した番組情報を表示部11で確認する。ここで予約を希望する番組情報を操作部13より選択して、電子メール作成の指示を行う。または、一旦予約情報として番組情報格納部22に記憶した番組情報を表示部11に表示して、表示された番組情報の中から所定の番組情報を操作部13を用いて指定してもかまわない。その後、電子メール作成の指示を操作部13から行う。電子メール作成の指示がされると、電子メール作成部31は前記選択されたTV番組の番組情報を電子メールのメッセージ情報に含んで番組情報付電子メールを作成する。作成された前記番組情報付電子メールは、インターネットへ接続可能な無線部30により相手側の携帯電話機50へ送信される。
【0026】ここで、相手側の携帯電話機50は、送信側の携帯電話機10と同一構成をとるため、同じ図2を用いて受信側の機能を説明する。携帯電話機50は、無線部30により送信側の携帯電話機10から送信された番組情報付電子メールを受信する。受信した番組情報付電子メールは、電子メール解析部32へ送られる。電子メール解析部32は、番組情報付電子メールを表示部11に表示するが、このとき、番組情報付電子メールに番組情報とともにメッセージが含まれている場合は、メッセージを番組情報とともに表示する。」(段落【0025】?【0026】の記載。)

したがって、上記引用文献2に記載された発明(以下、「公知技術」という。)は、以下のとおりのものである。
〈公知技術〉
「グループ間で簡単に同一番組を視聴できるようにする方法において、電子メール作成部31は前記選択されたTV番組の番組情報を電子メールのメッセージ情報に含んで番組情報付電子メールを作成し、作成された前記番組情報付電子メールは、インターネットへ接続可能な無線部30により相手側の携帯電話機50へ送信され、 携帯電話機50は、無線部30により送信側の携帯電話機10から送信された番組情報付電子メールを受信し、受信した番組情報付電子メールは、電子メール解析部32へ送られ、電子メール解析部32は、番組情報付電子メールを表示部11に表示する、
番組情報の送信、解析技術」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
1) 引用発明の「第1端末100」と「第2端末200」は、通話可能であり、したがって、補正後の発明の「通信ネットワーク」で接続されている「電子デバイス」であり、それぞれ、「第2の電子デバイス」、「第1の電子デバイス」に相当する。
2) 引用発明の「番組特定情報」は、補正後の発明の「放送サービス情報」に相当する。
3) 引用発明では、「第1端末100」から、「番組特定情報」を「第2端末200」へ送信しており、「第2端末200」では、送信された「番組特定情報」を利用して特定される番組のTV放送を受信している。このことは、補正後の発明の「第2の電子デバイスにより送信される放送サービス情報を第1の電子デバイス上で利用する」ことに相当する。
4) 引用発明の「第2端末200」において、「携帯電話アンテナ23が第1端末100からの信号を受信し、携帯電話送受信部24は、携帯電話アンテナ23が受信した信号を復調/復号して、共有要求信号と番組特定情報とを取り出」すことは、補正後の発明の「第1の電子デバイスが、放送サービス情報を含むサービス記述ファイルを検出するサービス記述ファイル検出工程」と、「放送サービス情報」を検出している点で、共通している。
5) 引用発明は「ステップS3及びS4では、第2端末200の端末制御部28が、TV放送受信部22を制御して、TVアンテナ21が受信したTV波を復調/復号してEPG情報とを取り出し、そして、第1端末100のユーザAによって特定されたTV番組を第2端末200が受信可能かどうかを、第2端末200の端末制御部28が判断」をしており、「番組特定情報」により特定された放送番組にアクセスできるかどうかを判断しているものである。このことは、「第2端末200」が、特定の番組放送にアクセスできるかどうかの性能を調査するものと言える。したがって、引用発明は、補正後の発明の「第1の電子デバイスが、デバイス性能を調査する性能調査工程と、デバイス性能は電子デバイスが放送サービスにアクセスする性能を含むこと」との構成を備えるものである。
6) 引用発明の「端末制御部8は、携帯電話送受信部4を制御し、携帯電話アンテナ3を通じて、第2端末200に対して、TV番組の共有が要求されたことを通知する信号(共有要求信号)と、EPG情報から得た番組特定情報と、を送信し、 ステップS2において、第2端末200では、携帯電話アンテナ23が第1端末100からの信号を受信し、携帯電話送受信部24は、携帯電話アンテナ23が受信した信号を復調/復号して、共有要求信号と番組特定情報とを取り出して端末制御部28へ入力し」、「第1端末100のユーザAによって特定されたTV番組を第2端末200が受信可能かどうかを、第2端末200の端末制御部28が判断し」、「そのTV番組の映像を表示」するようにすることは、「第1端末100」から第2端末に対しての指示である「共有要求信号」及び当該番組が受信可能かどうかの性能調査結果に基づいて、「番組特定情報」に対する放送を受信するものであり、引用発明は、補正後の発明の「第1の電子デバイスが、第2の電子デバイスのユーザプリファレンス及び第1の電子デバイスの性能に基づき放送サービス情報に対しアクションを実行するアクション実行工程と、前記ユーザプリファレンスは第1の電子デバイスの実行するアクションを指示するプリファレンスであり、第2の電子デバイスから第1の電子デバイスに与えられることと」を備えるものである。
したがって、補正後の発明と引用発明とは、以下の一致点と相違点とを有する。
〈一致点〉
「複数の電子デバイスを含む通信ネットワークにおいて、第2の電子デバイスにより送信される放送サービス情報を第1の電子デバイス上で利用するための方法であって、
第1の電子デバイスが、放送サービス情報を検出する検出工程と、
第1の電子デバイスが、デバイス性能を調査する性能調査工程と、デバイス性能は電子デバイスが放送サービスにアクセスする性能を含むことと、
第1の電子デバイスが、第2の電子デバイスのユーザプリファレンス及び第1の電子デバイスの性能に基づき放送サービス情報に対しアクションを実行するアクション実行工程と、前記ユーザプリファレンスは第1の電子デバイスの実行するアクションを指示するプリファレンスであり、第2の電子デバイスから第1の電子デバイスに与えられることと、からなる方法。」

〈相違点1〉
補正後の発明では、「第1の電子デバイスが、放送サービス情報を含むサービス記述ファイルを検出するサービス記述ファイル検出工程」を有するのに対し、引用発明では、「放送サービス情報」に相当する「番組特定情報」をどのような形態で送付され、検出するかについて記載がない点。

上記相違点につき検討する。
〈相違点1について〉
上記(2)のBに示したとおり、「グループ間で簡単に同一番組を視聴できるようにする方法において、電子メール作成部31は前記選択されたTV番組の番組情報を電子メールのメッセージ情報に含んで番組情報付電子メールを作成し、作成された前記番組情報付電子メールは、インターネットへ接続可能な無線部30により相手側の携帯電話機50へ送信され、携帯電話機50は、無線部30により送信側の携帯電話機10から送信された番組情報付電子メールを受信し、受信した番組情報付電子メールは、電子メール解析部32へ送られ、電子メール解析部32は、番組情報付電子メールを表示部11に表示する、番組情報の送信、解析技術」は公知の技術である。
そして、電子メールのメッセージ情報に含んで「情報」を送る場合に、MIMEタイプのファイルで当該情報を送付し、当該ファイルを検出することは、一般的に行われている周知の技術である。
したがって、引用発明において「番組特定情報」を送付し、検出する手段として、上記に示した公知の技術電子メールを利用した番組情報の送信、解析技術を適用し、番組情報をMIMEタイプのファイルとして、電子メールで送信、検出し、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得るものである。


また、補正後の発明の構成によって得られる作用効果は、引用発明、公知技術及び周知技術による構成によって得られる作用効果からみて格別のものであるともいえない。
以上のとおり、補正後の発明は、引用発明、公知技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明である。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成23年7月1日付けの手続補正を上記のとおり却下したので、本願の請求項9に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年8月3日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項9に記載された以下のとおりのものと認める。
〈本願発明〉
「複数の電子デバイスを含む通信ネットワークにおいて、第2の電子デバイスにより送信される放送サービス情報を第1の電子デバイス上で利用するための方法であって、
第1の電子デバイスが、放送サービス情報を含むサービス記述ファイルを検出するサービス記述ファイル検出工程と、
第1の電子デバイスが、第2の電子デバイスのユーザプリファレンス及び第1の電子デバイスの性能に基づき放送サービス情報に対しアクションを実行するアクション実行工程と、前記性能は放送サービスにアクセスする性能を含むことと、からなる方法。」

2.引用発明及び公知技術
引用発明、公知技術及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び公知技術」、「(3)対比・判断」の項に示したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明、公知技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できた発明であるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明できた発明である。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、公知技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-06 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2006-266850(P2006-266850)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺谷 大亮五十嵐 努  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 和田 志郎
大野 克人
発明の名称 通信ネットワークにおいて放送サービス情報を共有するための方法及びシステム  
代理人 本田 淳  

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