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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1277706
審判番号 不服2012-3008  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-16 
確定日 2013-08-07 
事件の表示 特願2005-378950「患者体内の流体系の圧力測定システムおよび測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月20日出願公開,特開2006-187621〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年12月28日(パリ条約による優先権主張 平成16年12月29日,米国(US))を出願日とする特許出願であって,平成23年10月17日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。そして,同年10月15日付けで審尋がなされ,回答書が平成25年1月10日付けで請求人より提出された。


第2 平成24年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年2月16日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1について,

「【請求項1】
圧力検出装置であって、
圧力検出ポート、前記圧力検出ポート内の流体の圧力を検出するための圧力センサー、および、検出された流体の圧力を含む計算を実行するための前記圧力センサーとの通信を行うデジタルプロセッサー、を備えた、圧力センサーコンポーネントと、
前記圧力検出ポートに流体接触した第1のチャンバと、
患者の脳脊髄液系と流体結合可能な第2のチャンバと、
前記第2のチャンバから前記第1のチャンバへ流体の圧力を伝達するように前記第1および第2のチャンバの間に配置された隔膜と、を具備し、
前記圧力センサーコンポーネントが、ディスプレイを含み、
前記圧力センサーコンポーネントが、ある期間に亘って検出された流体の圧力のグラフを表示するように構成されており、
前記圧力検出ポート、前記圧力センサー、前記デジタルプロセッサー、及び、前記ディスプレイを備えた前記圧力センサーコンポーネントは、一体的なハンドヘルドコンポーネントであり、かつ患者の脳脊髄液系との接触から切り離すように構成された非滅菌部分である、
圧力検出装置。」とするものである。

2 本件補正の目的
(1)特許請求の範囲についての本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「圧力センサーコンポーネント」について,さらに「前記圧力検出ポート、前記圧力センサー、前記デジタルプロセッサー、及び、前記ディスプレイを備えた前記圧力センサーコンポーネントは、一体的なハンドヘルドコンポーネントであり、かつ患者の脳脊髄液系との接触から切り離すように構成された非滅菌部分である」と限定する補正を含むもので,補正前の請求項1に係る発明を特定する事項を減縮することを目的とするものであるということができる。

(2)そうしてみると,特許請求の範囲についての本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的するものに該当するといえる。

3 独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか,すなわち,本件の特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)引用刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用され,本願優先日前に頒布された刊行物である,米国特許第2396351号明細書(以下,「引用刊行物ア」という。)には,図面の図示と共に,次の事項が記載されている(下線は当審が付与したもの)。

(ア-1)「My invention relates to apparatus suitable for use in obtaining samples of spinal fluid and in measuring the pressure of spinal fluid.」
(1頁左欄1行?3行,当審仮訳「私の発明は脊髄液のサンプルを取得するに際しての及び脊髄液の圧力を測定するに際しての使用に適した装置に関する。」)

(ア-2)「This conventional method is accompanied by danger to the patient. ... For example, a tumor or abscess of the brain may be accompanied by a high fluid pressure within both the spinal column and cranium; and the uncontrolled release of a large quantity of spinal fluid upon withdrawal of the stylet from the spinal-puncture needle may cause such an abrupt drop in pressure within the column that brain tissue is displaced causing death of the patient. Even when the outer end of the needle is promptly connected to fluid-pressure indicating apparatus, some fluid may be lost in the interval between withdrawal of the stylet and the effecting of the connection to the pressure-indicating apparatus; and, moreover, the amount of fluid which is necessarily displaced from the spinal column in the operation of a manometer or other conventional pressure-indicating device represents a loss which may be undesirably excessive.」
(1頁左欄20行?49行,当審仮訳「この従来の方法は患者への危険を伴う。…例えば,脳の腫瘍又は膿瘍は,脊柱及び頭蓋の双方の中の高い液体圧力を伴うかもしれない。そして,探り針の脊椎穿刺針からの引き抜きに際する脊髄液の制御されない大量放出は,脳組織が変位して患者に死をもたらす程,脊柱内の圧力の突然の減少を引き起こすかもしれない。(脊椎穿刺)針の終端が速やかに液体圧力測定装置に接続された場合においても,探り針の引き抜きと液体圧力測定装置への接続との間にいくらかの液体が失われるかもしれず,それに加えて,圧力計又はその他従来の圧力測定装置の作動に際して脊柱から必然的に変位する(脊髄)液の量は,望ましくないほど過剰かもしれない損失となる。」)

(ア-3)「It is the object of my invention to produce apparatus by which samples of spinal fluid may be obtained and spinal-fluid pressure measured without the danger of large spinal-fluid losses and without the necessity for the displacement of a relatively large quantity of the spinal fluid to effect operation of the pressure-indicating device.」
(1頁左欄50行?右欄1行,当審仮訳「私の発明の目的は,精髄液の大量損失の危険がなく,かつ,圧力計装置の作動のために比較的大量の脊髄液の変位が必要とされずに,脊髄液のサンプルが取得できるとともに脊髄液圧力が測定できる装置を提供することである。」)

(ア-4)「In carrying out my invention, I employ a needle provided with a valve. ... For measuring the pressure of the spinal fluid, I employ a sealed housing divided by a flexible diaphragm into two chambers, one of which is adapted for connection to the needle-lumen and the other of which is connected to a pressure-indicating device and to a means for supplying fluid under pressure.」
(1頁右欄7行?18行,当審仮訳「私の発明を実施するに際して,私はバルブが付いている針を用いた。…脊髄液の圧力を測定するために,一方のチャンバは針内腔への接続のために適応され,他方のチャンバは圧力測定装置及び流体に圧力をかけるための手段に接続される,2つのチャンバに柔軟な隔膜によって分割された密封ハウジングを用いた。」)

(ア-5)「When spinal-fluid pressure is to be measured, apparatus similar to that of Fig. 2 may be employed. … An elastic diaphragm 27 extends transversely of the casing 25 dividing it interiorly into two chambers 28 and 29. The chamber 28, …, communicates with the needle-lumen through a passage 30.
The other chamber 29 of the casing 25 is adapted for connection to a device by which any desired fluid-pressure can be created within the chamber 29. As shown, the chamber 29 has a lateral outlet in the form of a short tube 32 which is adapted to be received within one end of a flexible rubber tube 33 extending to an air-pump 34. The air-pump shown is of the rubber-bulb type commonly used in sphygmomanometers, but any suitable means for building up a controlled pressure within the chamber 29 may be used.
The diaphragm 27 is operably connected as by means of a rod 35, with a movable hand 36 adapted to swing over a fixed scale 37. … As the diaphragm 27 is elastic, it has a definite normal position which it occupies when the respective fluid-pressures on its opposite faces are equal. Such normal position of the diaphragm is indicated by suitable indicia on the scale 37.
For the purpose of determining fluid-pressure existing within the chamber 29, that chamber is connected to a manometer or other pressure-indicating device 41. Conveniently, this connection is effected through the medium of a flexible tube 42 connected to the tube 33 between the bulb 34 and the casing 25.
When the pressure-indicating apparatus is to be used, the needle-point 11 is inserted into the spinal column and the stylet 12 withdrawn as above described. The boss 26 is then inserted into the recess 13 in the outer end of the needle-body 10. If the plunger 16 is then moved to bring the valve passage 17 into alignment with the needle-lumen, communication between the interior of the spinal column and the chamber 28 will be established, and the fluid pressure existing within the spinal column will be transmitted to the chamber 28 to displace the diaphragm 27 and move the hand 36 from their respective normal positions. … The bulb 34 is now operated to force air into the chamber 29 and to build up therein a fluid pressure tending to restore the diaphragm 27 to its normal position. … When the diaphragm is returned to its normal position as indicated by the position of the hand 36 on the scale 37, fluid-pressure within the chamber 29 will equal that within the chamber 28; and since the latter pressure is equal to that within the spinal column, the pressure within the chamber 28, which may be determined by observation of the pressure-indicating device 41, will equal the fluid pressure in the spinal column.
If it is desired to study the dynamics of spinal-fluid pressure, movements of the hand 36 along the scale 37 may be observed to indicate at least qualitatively the character of the changes which are produced in spinal-fluid pressure as a result of the manipulation of the patient. A quantitative indication of such pressure changes may be obtained by varying the amount of air in the chamber 29 and observing the pressure indicated by the device 41 at the moment the hand 36 passes through its normal position.」
(2頁左欄22行?右欄34行,当審仮訳「脊髄液圧力が測定される場合には,図2の装置に類似した装置を用いることができる。…弾力性のある隔膜27が,ケーシング25を2つのチャンバ28及び29に内部的に分割するように,横切って延びる。チャンバ28は,通路30を介して針内腔と連通する。
ケーシング25の他方のチャンバ29は,チャンバ29内に所望の流体圧力が作り出せる装置への接続のために適応される。図示のように,チャンバ29は,空気ポンプ34に延びる柔軟なゴムチューブ33の一端の中に受け入れられるのに適した短いチューブ32という形で側面出口を有する。図示の空気ポンプは血圧計においてよく用いられるゴム・バルブ型のものであるが,チャンバ29内において制御された圧力を形成するのに適したあらゆる手段が使用されうる。
隔膜27は,ロッド35を介して,固定目盛り37上を揺動するに適した移動可能な腕36に作動可能に接続される。…隔膜37は弾力性があるので,対抗する面の両側の流体圧力が等しいときの位置である,明確な標準位置を有する。そのような隔膜の標準位置は,目盛り37上に適当な印で示される。
チャンバ29内の流体圧力を決定するために,そのチャンバは圧力計又はその他圧力測定装置41に接続される。都合の良いことに,この接続は,バルブ34とケーシング25との間でチューブ33と接続された柔軟なチューブ42を通じて行われる。
圧力測定装置が用いられる場合,針の先端11は脊柱に挿入され,探り針12が上述のように引き抜かれる。その後,突出部26が針本体10の外端の凹部13に挿入される。そして,プランジャー16が移動して,バルブ通路17が針内腔と位置合わせされると,脊柱内部とチャンバ28との間の連通が形成され,脊柱内に存在する流体圧力がチャンバ28に伝達されて,それぞれの標準位置から隔膜27を変位させるとともに腕36を移動する。…バルブ34がここで,チャンバ29内に空気を押し込み,隔膜27がその標準位置に復帰するよう内部の流体圧力を高めるために,作動される。…隔膜が目盛り37上の腕36の位置によって示される標準位置に復帰したとき,チャンバ29内の流体圧力はチャンバ28の圧力と等しくなる。そして後者の圧力は脊柱内の圧力と等しいので,チャンバ28の圧力は,圧力測定装置41の観測によって決定することができ,脊柱内の流体圧力と等しくる。
脊髄液圧力の動力学を調べたい場合には,患者への処置の結果として作り出された脊髄液圧力の変化の性格を少なくとも定性的に指し示すために,目盛り37に沿った腕36の移動を観測することができる。そのような圧力変化の定量的兆候は,チャンバ29内の空気の量を変化させ,腕36が標準位置を通過する時に装置41によって示される圧力を観測することによって得ることができる。」)

上記の記載事項(ア-1)?(ア-5)と図面(特に図2)を総合すると,引用刊行物アには,以下の発明が記載されていると認められる。

「一端に患者の脊柱に挿入される先端(11)を備え,他端に凹部(13)を備えた針本体(10)と,
前記針本体(10)の前記凹部(13)に挿入される突出部(26)を備えたケーシング(25)と,
圧力測定装置(41)とを備えた,患者の脊髄液の圧力を測定するための装置であって,
前記ケーシング(25)は,弾力性のある隔膜(27)によって2つのチャンバ(28,29)に分割され,
前記2つのチャンバのうちの一方のチャンバ(28)は前記針本体(10)の針内腔と連通し,脊柱内に存在する流体圧力がチャンバ(28)に伝達され,
前記2つのチャンバのうちの他方のチャンバ(29)はチューブ(33,42)を介して前記圧力測定装置(41)に接続され,前記チャンバ(29)内の流体圧力を測定することによって,患者の脊髄液の圧力を測定する装置。」(以下,「引用発明」という。)

イ 原査定において引用され,本願優先日前に頒布された刊行物である,国際公開第2002/087435号(以下,「引用刊行物イ」という。)には,図面の図示とともに,次の記載がある(対応する特表2004-528104号公報から抜粋。なお,下線は当審が付与したもの)。

(イ-1)「【0001】本発明は、患者の腔内の圧力を監視して分析するための装置とシステムとコンピュータ・プログラム製品に関するものであって、より詳しくは、頭蓋内圧や血圧やその他の体腔(例えば、脳脊髄液空間)内の圧力を監視して分析するための装置と方法とシステムに関するものであるが、これに制限されるものではない。本発明は、圧力測定値をサンプリングし、記録し、記憶し、処理するための装置と、圧力を定量的に分析するための方法とシステムとコンピュータ・ソフトウエアとを含む。本発明は、自由に動ける患者のディジタル圧力監視を行う技術的方法だけでなく、患者間および患者内で連続記録された圧力を比較する技術的方法を提供することを目的とする。コンピュータ・ソフトウエアはここに説明する携帯用装置内で用いてよく、または種々のコンピュータ・システムまたは生命徴候モニタ内に一体化してよい。

【0003】頭蓋内圧は別の方法で測定してよい。固体または光ファイバ変換器を硬膜外または硬膜下の空間内に導入し、または脳の実質組織内に導入してよい。また頭蓋内圧は脳脊髄液内の圧力を測定することにより直接記録してよいが、これにはカテーテルを脳脊髄液空間内(一般には脳室内または腰椎腔内)に挿入する必要がある。注入テスト中は脳脊髄液内の圧力を記録する。」

(イ-2)「【0015】このような背景から、本出願者は圧力記録の正確なディジタル・サンプリングと分析を行うための自由に動ける患者の圧力を監視する技術的方法と、個人内または個人間の圧力記録を比較する技術的方法とを開発した。
【0016】圧力変換器とコンピュータ(すなわち、医療装置コンピュータなどのコンピュータの付加装置、生命徴候患者モニタ、圧力記録のサンプリングのための自立システム)の間で直接通信することのできる装置を開発した。また、圧力記録をサンプリングし、分析し、表示するための新しいアルゴリズムを開発してコンピュータ・ソフトウエアに組み込んだ。このコンピュータ・ソフトウエアは圧力記録を記録し、サンプリングし、分析し、種々の出力を与える。この技術的方法は、頭蓋内圧(または脳脊髄液圧)や、血圧や、その他の体腔圧などの種々の圧力に適用することができる。侵襲的または非侵襲的なセンサで圧力を記録してよい。」

(イ-3)「【0024】本発明は、人体腔内の圧力の記録(侵襲的または非侵襲的)、記録した圧力信号のサンプリングと処理、数学的分析の実行、記録し分析したデータの表示(モニタ、平面スクリーン、コンピュータ・システムへの組込みなどにより)のための方法と、装置と、システムと、コンピュータ・プログラム製品とに関するものである。本発明の1つの目的は、ベッドに横になっていない、自由に動ける人の頭蓋内圧などの体腔内の圧力を、血圧測定を同時に行いまたは行わずに、連続的にディジタル・サンプリングを行うための技術的方法を提供することである。したがって装置は小型であり、再充電可能な電池で駆動してよい。

【0027】本発明の別の目的は、頭蓋内圧のオンライン監視を行うための患者とモニタ/ネットワーク・ステーションとの間のインターフェースとして作用する装置を提供することである。本発明の別の目的は、頭蓋内圧や血圧や脳潅流圧などの圧力サンプルを分析するための、種々の圧力曲線の定量的表示を含む新しい方法を提供することである。異なる圧力を同時に監視してよい。
【0028】本発明の更に別の目的は、例えば頭蓋内圧や血圧や脳潅流圧などを表す連続圧力記録を定量的に分析し表示するためのソフトウエアを提供することである。このソフトウエアは、種々のレベルと継続時間の圧力の高さのマトリクスや、種々のレベルと継続時間の圧力変化のマトリクスや、選択された特性を持つ単一脈圧波のパラメータの数のマトリクスの計算を含む、データを定量的に記述するための複数の選択肢を有する。本発明の主な目的は頭蓋内圧と血圧とに関係するが、これは本発明の範囲を制限するものではない。本発明は他の体腔(例えば、脳脊髄液腔)内の圧力を測定する圧力センサに関連して用いることもできる。
【0029】上に述べた種々の目的を考慮して、患者内の圧力を測定して分析する方法を開発した。この方法では、1つまたは複数のセンサを患者に取り付け、センサからの圧力信号を選択された間隔でサンプリングする。サンプリングした信号をディジタル形式に変換し、圧力の時間的変化を評価するために時間基準と共に記憶する。時間基準はディジタル値の一部として記憶してもよいし、圧力値を記憶しているメモリ位置すなわちメモリ・アドレスに関連づけてもよい。本発明のこの実施の形態では、記憶したサンプル値を分析して以下の少なくとも1つの表示を生成する。すなわち、レベルと継続時間との任意の選択された組合わせを持つ圧力の高さの数と、レベル差と変化の継続時間との任意の選択された組合わせを持つ圧力変化の数と、最小値、最大値、振幅、潜伏時間、立上がり時間に関する所定の特性を持つ脈圧波の数とである。この方法では、種々のサンプリング速度と測定期間の長さとを用いることができる。…」

(イ-4)「【0036】図1は、患者の体腔内の圧力を測定するためのシステムのブロック図を示す。このシステムの主な構成要素は、圧力センサ16と、圧力変換器2と、圧力値を測定して記憶するための携帯用装置1と、登録された圧力値を受けて処理するためのパーソナル・コンピュータ6などのネットワーク・ステーションとを含む。装置1は、頭蓋内圧、血圧、他の体腔内の圧力すなわち血圧などの、患者内の圧力測定値をサンプリングして記憶するための中央処理ユニット8を備えるディジタル・システムである。以下の例では頭蓋内圧を測定するための実施の形態を説明するが、理解されるように、これは本発明の範囲を制限するものではない。
【0037】小型で軽量なので、患者は装置1を容易に携行することができる。装置1は患者のベルトに固定してもよいし、紐のついた携帯ポーチに納めてもよい。または、装置1はネットワーク・ステーションまたはパーソナル・コンピュータ6と圧力センサ2とを接続するためのインターフェースとして用いてよい。これにより、圧力を実時間でオンライン監視を行った圧力曲線をディスプレイ上に表示することができる。装置1の種々の応用と装置1の構造の変形については更に図11に示す。

【0041】装置1の主な構成要素は、…好ましくは、この装置は患者を装置の電気回路から保護する電気要素3と、アナログ・ディジタル変換器7の入力または出力に接続する信号調整器5と、装置の動作と設定の調整を制御する入力コントローラ10と、ディスプレイ・ユニット12と、警報ユニット13とを含む。入力コントローラ10とディスプレイ12と警報ユニット13とは、中央処理ユニット8および装置またはいずれかの他の部分(ASIC、ディスプレイ・ドライバ、電力センサ(図示しない)などに接続し、またこれらと通信する。」

(イ-5)「【0046】…ディスプレイ12はディジタル圧力信号と実時間とをオンラインで示す。好ましくは、ディスプレイ12は中央処理ユニット8で制御する。…

【0048】前に述べたように、装置1はシリアル・ポート11を介してパーソナル・コンピュータ6に接続してよい。または、装置1はネットワーク・ステーションなどの別のディジタル・コンピュータ・ベースの監視システム6に接続してよい。これにより、圧力をオンラインで実時間監視して、記録を図で実時間表示することができる。この場合、装置1は据付け型のパーソナル・コンピュータのまたは平面スクリーンのインターフェースとして機能する。種々の応用を図11に示す。」

(イ-6)「【0065】図2のグラフィカル・インターフェースは種々の機能を提示/表示する一例を表す。種々の変形が可能である。種々の圧力(例えば、頭蓋内圧、血圧、脳潅流圧)の連続圧力記録曲線を同じ窓に同時に表示してよい。連続記録を実時間で表示するので種々の圧力を比較することができる。圧力監視がオンライン監視用かオフライン監視用かに従ってグラフィカル・インターフェースを変更してよい。オンライン監視中は、統計的分析を繰り返し計算することにより、種々の時間間隔のものの比較を行うことができる。実時間の連続圧力曲線を1つの窓に示し、絶対圧力のパラメータ(平均圧力、標準偏差、範囲など)を別の窓に示し、単一波を更に別の窓に示してよい。…
【0066】次に図3は、頭蓋内圧曲線、または血圧曲線、または人体腔内の他の圧力を分析するためのソフトウエア・モジュールのグラフィカル・ユーザ・インターフェースを示す。頭蓋内圧曲線34の選択された窓が、本発明の分析方法により得られた種々の量のチャートまたはマトリクス35として示されている。窓で表される任意の大きさの記録期間33を定量的な分析のために選択してよい。測定する圧力の種類に関係なく、同様のユーザ・インターフェースが用いられる。」

(イ-7)「【0105】図9は、液を脳脊髄空間内に注入している間の頭蓋内圧(頭蓋内腔の区画の1つを表す脳脊髄液)34の記録を示す。圧力はY軸21に絶対値mmHgで表し、時間はX軸に秒で表す。頭蓋内圧34は生理食塩水を腰椎空間内に注入しながら同時に測定する。これを注入テストと呼ぶ。液を注入するに従って頭蓋内圧曲線34が上昇する様子を示す。…」

(イ-8)「【0110】図11は本発明に係る装置の種々の応用を示す。前に述べたように、本発明は圧力記録を記録し、サンプリングし、分析し、表示するためのシステムと方法とを含む。また本発明は圧力記録の高周波サンプリングのための装置を内蔵する。理解されるように、ここに述べるシステムには多数の異なる形態が可能である。本発明は圧力信号をサンプリングして記録するための携帯用装置1(図1参照)を含むが、コンピュータ・ベースの方法を図11に示す多数のシステムや装置に組み込んでよい。
【0111】まず、圧力信号は種々の圧力センサ16と変換器2(侵襲的または非侵襲的なシステム)から得てよい。頭蓋内圧については、多数の圧力センサ16が市販されている。頭蓋内圧は硬膜外空間、硬膜下空間、脳実質組織から、または脳脊髄液空間から評価してよい。…
【0112】コンピュータ・ソフトウエアは、携帯用装置1だけでなく、ネットワーク・ステーション、パーソナル・コンピュータ、医療装置コンピュータ6、生命徴候モニタに接続するコンピュータ・サーバ6などの中に一体化してもよいし、生命徴候モニタ内に直接組み込んでもよい。定量的分析の結果はモニタ・スクリーン、平面スクリーン、その他の公知の装置に表示してよい。装置1は種々に変更することが可能である。装置1の構成要素は、圧力変換器2の中に、または医療装置コンピュータ6を含む種々のコンピュータの中に一体化してよい。
【0113】(I) 或る場合には、圧力信号は市販の圧力センサ16と変換器2から市販の生命徴候モニタに送信する。この場合、本発明1を生命徴候患者モニタに、または生命徴候患者モニタに例えばネットワークを介して接続するコンピュータ・サーバに組み込んでよい。データ処理の結果は平面スクリーンまたは生命徴候患者モニタに表示してよい。
【0114】(II) 別の場合には、装置1を別の市販の装置の中に一体化する。かかる場合は後で述べるが、かかる例は装置を他のシステムの中に一体化することを制限するものではない。市販の圧力センサ16を頭蓋内圧の評価に(例えば、Codman ICPエキスプレス に結合するマイクロセンサICP変換器、 Codman & Shurtlef Inc., Randolph, MA)、または脳脊髄液圧の評価に(Baxter 監視キット)用いてよい。かかる圧力変換器2は携帯用装置1を介して医療装置コンピュータ6に直接接続する。この場合、変換器2の代わりに市販の設備を用いるように携帯用装置1を変更してよい。…
【0115】(III) 更に別の場合には、選択された期間に圧力信号を装置1で監視してサンプリングする。この場合、装置1は多くの方法で、しかも小型で軽量に構築し、患者が自分のポケット内に装置を入れて持ち運びできるようにしてよい。監視の期間が終わった後で装置をコンピュータに接続し、信号を分析して表示する。」

上記の記載事項(イ-1)?(イ-8)と図面(特に図1?3,図9,図11)を総合すると,引用刊行物イには,以下の発明が記載されていると認められる。

「患者の頭蓋内圧又は脳脊髄液圧を測定するためのシステムにおいて,
中央処理ユニット(8)とディスプレイ・ユニット(12)とを備えたディジタル・システムであって,小型軽量で患者が容易に携行することができる携帯用装置(1)を利用して,圧力センサ(16)及び圧力変換器(2)からの圧力測定値を所定期間連続的にサンプリングして記録し,
前記ディスプレイ(12)にディジタル圧力信号と実時間とをオンラインで表示し,
圧力をオンラインで実時間監視して,圧力曲線をディスプレイ上に実時間表示する技術。」

ウ 本願優先日前に頒布された刊行物である特開2003-227773号公報(以下,「引用刊行物ウ」という。)には,図面の図示とともに,以下の記述がある(下線は当審で付与したもの)。

(ウ-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、気体又は液体を供給する配管の状態を診断するために用いられる、配管内部の圧力を計測するための圧力計測方法及び装置に関し、特に、気体又は液体の配管からの漏洩を検知するための圧力計測方法及び装置に関する。」

(ウ-2)「【0022】
【発明の実施の形態】本発明の好適な実施例について、ガス配管の漏洩検査のための圧力計測装置を中心に説明する。図1は、本発明の圧力計測装置の機械的構成の概念を示した概略図である。圧力計測装置内には、配管内に空気を供給するための電動ポンプ5、配管内の圧力を検査するための圧力センサ4、配管内への空気の供給量を制御するためのバルブ又は逆止弁3、配管内の圧力を大気圧と等しくするためのバルブ7が、図1のような配管の接続構造にて相互に接続配置されている。圧力計測装置からは検知ホース2が延出しており、接続部1に示すように、検査時においては、検査対象のガス配管に設けられたガス栓の排出口に検知ホース2の先端を接続する。…
【0024】図2は、圧力計測装置の外観を示す。…圧力計測装置全体の大きさは、点検事業者が取り扱い易いように片手で持てるサイズに設定されている。表側には、計測値や算出値、計測結果のグラフ、操作手順などが表示される液晶表示部8、…が設けられている。…液晶表示部8は、暗所での点検作業に備えて、バックライト付き液晶表示や、有機エレクトロルミネッセンス表示など、自己発光型の表示装置とすることも可能である。…
【0025】圧力計測装置の上側からは、検査対象の配管に接続される接続部1が、検知ホース2を介して装置外に突出している。…
【0026】図3は、圧力計測装置内の電子回路のブロック図である。…CPU6’には電源ユニット13を介して電池から電力が供給され、CPU6’の指示により、ポンプ5やバルブ(弁)3,7に必要なタイミングで駆動信号や電力が供給される。…圧力センサ4からの検知信号は、A/D変換器を介してデジタル化処理を行い、CPU6’に入力される。また、図3には図示されていないが、配管内に流入した気体や配管から排出される気体などの配管内の気体の温度、あるいは、配管自体の温度を測定するための温度センサからの検知信号も、A/D変換器を介してデジタル処理を行い、CPU6’に入力される。」

(ウ-3)「【0035】次に、バルブ7を開放し、配管内の圧力を管外の大気圧と同じにする。このバルブ7に代えて、検知ホース2や接続部1の一部に外部に連通したT字状の配管を設け、該T字状配管の一部に外部との連通状態を制御する手動バルブを備えることにより、この手動バルブを開放することにより、検査対象の配管の内圧を大気圧と同じにすることもできる。次に、バルブ7を閉止し、配管内を閉塞状態に保持する。約60秒程度の時間をかけて、配管内の圧力変化を計測する。計測時間中は、表示部に「温度変化の計測中」などの操作状態の表示や、圧力値の数値又はグラフの表示を行う。計測時間終了後、圧力変化の測定値から、単位時間当りの圧力変化量を算出する。該圧力変化量が所定値範囲内である場合は、温度変化の影響(計測中の温度変化による配管内の圧力変化)が無しと判断し、次の検査工程へと進む。該圧力変化量の絶対値が所定値以上に大きく変化している場合には、温度変化による影響ありと判断し、併せて圧力が上昇中であるか減少中であるかを記憶する。そして、次の検査工程に進む。」

上記の記載事項(ウ-1)?(ウ-3)と図面(特に図2)を総合すると,引用刊行物ウには,以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「検査対象に接続される接続部(1)及び検知ホース(2)と,接続された配管内の圧力を検査するための圧力センサ(4)と,前記圧力センサー(4)と接続され,測定値に基づく演算等を行うCPU(6’)と,計測結果のグラフ等を表示する液晶表示部(8)とを備えたものであって,取り扱い易いように片手で持てるサイズに設定された圧力測定装置。」

エ 本願優先日前に頒布された刊行物である,日本水頭症協会編「水頭症ガイドブック2002」,25頁?35頁(2002年3月25日発行,ウェブサイト参照。)(以下,「引用刊行物エ」という。)には,図面の図示(特に28頁図1参照)とともに,以下の記述がある(下線は当審で付与したもの)。

(エ-1)「正常圧水頭症とは、
(1)脳室の拡大がある
(2)にもかかわらず、頭蓋内圧あるいは脊髄腔圧は正常範囲を示している
(3)精神症状(痴呆)、歩行障害、尿失禁の三つの症候(三徴候)をもつ
(4)シャント術により、これらの症候が改善する
以上の4つの条件を満たした疾患群をさしており、小児によくみられる、頭蓋内圧の高い高圧性水頭症とは、性質を異とするものです。
これは、1965 年に、Adams1) とHakim2) が唱えた疾患概念で、Normal Pressure Hydrocephalus(NPHと略します)と呼ばれています。」(25頁5行?17行。なお,上記のうち括弧内の数字は,原文では丸数字で記載されている。)

(エ-2)「NPH では頭蓋内圧あるいは脊髄腔圧が正常圧なのにどうして脳室が拡がっていくのでしょうか?
ふだんは正常圧なのですが、脳室壁にかかる拍動圧(血管が脈打つときにかかる圧)が正常脳より強いため、脳室の拡がりが進行すると説明されています。事実、昼夜、持続的に頭蓋内圧あるいは脊髄腔圧を測定しますと、睡眠中に圧波が多く出現したり(図1)、基礎圧が高い症例に出会います。このような圧の上昇が脳室を拡げるわけですから、シャント術によってこうした圧上昇が解消されれば、症状の改善が期待され得るのです。」(27頁下から9行?最終行)

(2)補正発明と引用発明との対比
補正発明と引用発明とを対比すると,その構造および機能からみて,引用発明の「患者の脊髄液」,「圧力測定装置(41)」及び「圧力を測定する装置」は,それぞれ,補正発明の「患者の脳脊髄液」,「圧力センサーコンポーネント」及び「圧力検出装置」に相当する。
また,引用発明の「圧力測定装置(41)」は「チューブ(33,42)」を介して「チャンバ(29)」に接続されるものであるから,引用発明の「チューブ(33,42)」及び「チャンバ(29)」は,それぞれ,補正発明の「圧力検出ポート」及び「前記圧力検出ポートに流体接触した第1のチャンバ」に相当するといえる。
また,引用発明の「チャンバ(28)」は「前記針本体(10)の針内腔と連通し,脊柱内に存在する流体圧力がチャンバ(28)に伝達され」るものであるから,補正発明の「患者の脳脊髄液系と流体結合可能な第2のチャンバ」に相当し,引用発明の「弾力性のある隔膜(27)」は,「チャンバ(29)」及び「チャンバ(28)」に接触し,その構造および機能からみて,両チャンバ間の圧力を相互に伝達するものであることは明らかであるので,補正発明の「前記第2のチャンバから前記第1のチャンバへ流体の圧力を伝達するように前記第1および第2のチャンバの間に配置された隔膜」に相当するといえる。

そうすると,両者は,次の点で一致し,以下の点で相違するといえる。

[一致点]
「圧力検出装置であって,
圧力検出ポートを備えた圧力センサーコンポーネントと,
前記圧力検出ポートに流体接触した第1のチャンバと,
患者の脳脊髄液系と流体結合可能な第2のチャンバと,
前記第2のチャンバから前記第1のチャンバへ流体の圧力を伝達するように前記第1および第2のチャンバの間に配置された隔膜と,を具備した圧力検出装置。」

[相違点]
(相違点1)
「圧力センサーコンポーネント」に関し,補正発明においては,「前記圧力検出ポート内の流体の圧力を検出するための圧力センサー、および、検出された流体の圧力を含む計算を実行するための前記圧力センサーとの通信を行うデジタルプロセッサー」を備えるとともに「ディスプレイを含」むものであって,「前記圧力検出ポート、前記圧力センサー、前記デジタルプロセッサー、及び、前記ディスプレイを備えた前記圧力センサーコンポーネントは、一体的なハンドヘルドコンポーネントであ」るのに対して,引用発明の「圧力測定装置(41)」はこれらの点が特定されていない点。

(相違点2)
「圧力センサーコンポーネント」に関し,補正発明は,「ある期間に亘って検出された流体の圧力のグラフを表示するように構成されて」いるのに対して,引用発明の「圧力測定装置(41)」はこのような構成を有していない点。

(相違点3)
「圧力センサーコンポーネント」に関し,補正発明においては,「圧力センサーコンポーネントは、…患者の脳脊髄液系との接触から切り離すように構成された非滅菌部分である」とされているのに対して,引用発明の「圧力測定装置(41)」についてはこのような構成について明らかではない点。

(3)相違点についての検討・判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)
流体(液体又は気体)の圧力測定装置の技術分野において,圧力検出ポート,圧力センサー,デジタルプロセッサー及びディスプレイを備えた携帯型圧力測定装置は,例えば,上記引用刊行物ウに記載の技術的事項「検査対象に接続される接続部(1)及び検知ホース(2)と,接続された配管内の圧力を検査するための圧力センサ(4)と,前記圧力センサー(4)と接続され,測定値に基づく演算等を行うCPU(6’)と,計測結果のグラフ等を表示する液晶表示部(8)とを備えたものであって,取り扱い易いように片手で持てるサイズに設定された圧力測定装置。」に照らし,本願優先日前に従前周知の技術であったと認められる。
なおここで,当該周知技術に係る圧力測定装置の「接続部(1)及び検知ホース(2)」,「接続された配管内の圧力を検査するための圧力センサ(4)」,「前記圧力センサー(4)と接続され,測定値に基づく演算等を行うCPU(6’)」及び「計測結果のグラフ等を表示する液晶表示部(8)」は,それぞれ,補正発明の「圧力検出ポート」,「前記圧力検出ポート内の流体の圧力を検出するための圧力センサー」,「検出された流体の圧力を含む計算を実行するための前記圧力センサーとの通信を行うデジタルプロセッサー」及び「ディスプレイ」に相当する。

この点,本願明細書には,「一体的なハンドヘルドコンポーネント」である「圧力センサーコンポーネント」に関し,以下の記述(下線は当審で付与したもの)があることからも裏付けられる。

「【0017】
本発明で用いるための圧力センサーコンポーネント12が、図3を参照してさらに記載される。圧力センサーコンポーネント12は、図1および図2の上記の記載に基づいて提供された圧力信号を分析するように構成されたデジタルプロセッサーを備えた、公知のハンドヘルドの完全に一体化された圧力センサーであってよい。そのような公知の圧力センサーには、例えば、アメリカ合衆国インディアナ州ミシガンシティー(Michigan City)のドゥヤー・インスツルメンツ・インコーポレーテッド(Dwyer Instruments, Inc.)から入手可能なドゥヤー・インスツルメンツ・シリーズ477ハンドヘルド・デジタル・モノメーター(Dwyer Instruments Series 477 handheld digital monometer)、または、アメリカ合衆国ワシントン州エバレット(Everett)のフルーク・コーポレーション(Fluke Corporation)から入手可能なフルーク・モデル717または718圧力キャリブレーター(Fluke Model 717 or 718 pressure calibrators)、などがある。圧力センサーコンポーネント12は、圧力差を測定するための、圧力検出ポート32、および、第2の圧力検出ポート64、を含んでいる。この第2の圧力検出ポート64は、その他の用途で使用されない場合には、大気に露出された状態に留められてよい。圧力センサーコンポーネント12は、圧力測定の結果および分析を表示するためのディスプレイ60、および、圧力センサーコンポーネント12を操作するための使用者入力要素すなわちボタン62、をさらに含んでいる。」

そうすると,引用発明の「圧力測定装置(41)」として,従前周知の携帯型圧力測定装置を採用することに技術的困難性はなく,技術的な流れに鑑み,上記相違点1に係る補正発明のような構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

(相違点2について)
正常圧水頭症等の患者に対して,頭蓋内圧又は脳脊髄液圧について一定期間にわたる連続的な測定及び監視を行い,圧力の変化の様子をグラフで表示することは,例えば,引用刊行物イ及び引用刊行物エの上記記載に照らし,本願の優先日前に従前周知の技術的事項であったと認められる。
そうしてみると,患者の脊髄液の圧力を測定する引用発明に対して,上記相違点1について述べたように,従前周知のディスプレイを備えた携帯型圧力測定装置を適用するにあたり,所定期間にわたる圧力の変化の様子をグラフで表示するようになすことは,十分に動機付けがあるというべきであって,格別の技術的困難性はないといえる。実際,引用刊行物イ記載の技術的事項からみて,小型軽量で患者が容易に携行することができる携帯用装置(1)のディスプレイ(12)上に圧力曲線を実時間表示することも十分示唆されているといえ,また,引用刊行物ウの携帯型圧力測定装置の「液晶表示部(8)」は計測結果のグラフなどを表示することが想定されているものである。
そうしてみると,引用発明において,従前周知の技術的事項に基づいて,上記相違点2に係る補正発明のような構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(相違点3について)
引用発明においても,その構造及び機能からみて,ケーシング(25)内の弾力性のある隔膜(27)の存在によって,圧力測定装置(41)は患者の脊髄液と直接接触することがないことは,明らかである。すなわち,引用発明は,補正発明の上記相違点3に係る「圧力センサーコンポーネントは,…患者の脳脊髄液系との接触から切り離すように構成された」点を実質的に備えているものといえる。
してみると,相違点3は実質,補正発明の「圧力センサーコンポーネント」は「非滅菌部分である」とされるのに対して,引用発明の「圧力測定装置(41)」が「非滅菌部分」であるか否かについて,引用刊行物アには特段の記載がなく,明らかではないという点に帰着する。
しかしながら,上記のとおり,「圧力測定装置(41)」が患者の脳髄液系との接触から切り離されて構成されていることからみて,当業者にしてみれば滅菌の必要性が必ずしもないことは明らかであるから,上記相違点3に係る補正発明のような構成とすることは,当業者が適宜になし得る設計的事項程度のことに過ぎない。

そして,本願明細書に記載された補正発明の効果も,当業者であれば予測し得る範囲内のものであり,格別顕著なものとはいえない。

(4)小括
したがって,補正発明は,引用発明及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上を総合すると,補正発明は,特許法第29条第2項の規定によって特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,却下すべきものである。


第3 本願発明に対する判断
1 本願発明の認定
以上のとおり,平成24年2月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?15に係る発明は,平成23年9月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるものであると認められ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項1】
圧力検出装置であって、
圧力検出ポート、前記圧力検出ポート内の流体の圧力を検出するための圧力センサー、および、検出された流体の圧力を含む計算を実行するための前記圧力センサーとの通信を行うデジタルプロセッサー、を備えた、圧力センサーコンポーネントと、
前記圧力検出ポートに流体接触した第1のチャンバと、
患者の脳脊髄液系と流体結合可能な第2のチャンバと、
前記第2のチャンバから前記第1のチャンバへ流体の圧力を伝達するように前記第1および第2のチャンバの間に配置された隔膜と、を具備し、
前記圧力センサーコンポーネントが、ディスプレイを含み、
前記圧力センサーコンポーネントが、ある期間に亘って検出された流体の圧力のグラフを表示するように構成されている、
圧力検出装置。」

2 引用刊行物の記載事項
本願優先日前に頒布された刊行物である引用刊行物の記載事項は,前記「第2の3(1)引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。

3 判断
本願発明は,上記「第2の1 本件補正の内容」及び「第2の2 本件補正の目的」において検討したとおり,補正発明の一部限定を省略したもの,言い換えれば,補正発明は本願発明の構成要件をすべて含むものであるということができる。
しかるに,本願発明の構成要件をすべて含む補正発明が,上記「第2の3 独立特許要件」に記載した理由によって,許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるから,本願発明についても同様の理由により,特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるといえる。


第4 結び
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-07 
結審通知日 2013-03-12 
審決日 2013-03-25 
出願番号 特願2005-378950(P2005-378950)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多田 達也早川 貴之渡▲辺▼ 純也  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
福田 聡
発明の名称 患者体内の流体系の圧力測定システムおよび測定方法  
代理人 加藤 公延  

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