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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C09D 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する C09D 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C09D 審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正する C09D |
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管理番号 | 1277996 |
審判番号 | 訂正2013-390083 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2013-05-29 |
確定日 | 2013-07-11 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第4426564号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第4426564号に係る明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める。 |
理由 |
1.事件の経緯 本件訂正審判に係る特許第4426564号の経緯は次のとおりである。平成18年12月27日 特願2006-353111号の出願 平成20年 7月17日 出願公開(特開2008-163147号) 平成21年11月26日 特許査定 平成21年12月18日 本件特許権の設定登録 平成22年 3月 3日 特許掲載公報発行(特許第4426564号) 平成25年 5月29日 本件訂正審判の請求 2.請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4426564号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。そして、その訂正の内容は、特許請求の範囲を以下の訂正事項1?5のとおりに訂正するものである。 訂正事項1: 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2記載の水消去性書画用墨汁組成物」とあるのを、「請求項1記載の水消去性書画用墨汁組成物」に訂正する。 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3いずれか記載の水消去性書画用墨汁組成物」とあるのを、「請求項1または3記載の水消去性書画用墨汁組成物」に訂正する。 訂正事項2: 特許請求の範囲の請求項2に「…(略)…請求項1記載の水消去性書画用墨汁組成物。」とあるのを、「酸性染料および水媒体を含み、前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合され、…(略)…水消去性書画用墨汁組成物。」に訂正する。 訂正事項3: 特許請求の範囲の請求項3について、「請求項1または2記載の水消去性書画用墨汁組成物」とあるのを、「請求項2記載の水消去性書画用墨汁組成物」と訂正したものを、訂正後の請求項9とする。 特許請求の範囲の請求項4について、「請求項1?3いずれか記載の水消去性書画用墨汁組成物」とあるのを、「請求項2または9記載の水消去性書画用墨汁組成物」と訂正したものを、訂正後の請求項10とする。 特許請求の範囲の請求項5について、「請求項4記載の水消去性書画用墨汁組成物」とあるのを、「請求項10記載の水消去性書画用墨汁組成物」と訂正したものを、訂正後の請求項11とする。 特許請求の範囲の請求項6について、「請求項4記載の水消去性書画用墨汁組成物」とあるのを、「請求項10記載の水消去性書画用墨汁組成物」と訂正したものを、訂正後の請求項12とする。 訂正事項4: 上記訂正事項2を含む特許請求の範囲の請求項2に「赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなり」とあるのを、「赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種からなり」と訂正する。 特許請求の範囲の請求項2に「前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩、アンモニウム塩およびアルキルアンモニウム塩の群から選ばれる少なくとも1つである」とあるのを、「前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、前記赤色系染料が下記構造式(D)で表され、前記黄色系染料が下記構造式(B)で表され、かつ前記青色系染料が下記構造式(E)で表される 」と訂正する。 特許請求の範囲の請求項2に「水消去性書画用墨汁組成物」とあるのを、「繊維集合体に対する水消去性を有する水消去性書画用墨汁組成物」と訂正する。 訂正事項5: 上記訂正事項3により訂正した訂正後の請求項9について、「前記黄色系染料はアゾ系の食用黄色4号(タートラジン、C.I.19140)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)から選ばれ、前記赤色系染料はアゾ系の食用赤色2号(アマランス、C.I.16185)、食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)から選ばれ、」とあるのを、「前記黄色系染料はアゾ系の食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)、前記赤色系染料はアゾ系の食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)、」と訂正する。 3.当審の判断 以下、訂正事項1?5について、訂正の目的、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更、独立特許要件(特許法第126条第1項ただし書、同条第5?7項)について判断する。なお、独立特許要件については、各訂正事項ごとにではなく、訂正事項1?5によって訂正された請求項について検討する。 (1)訂正の目的、新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更について ア.訂正事項1?3について (ア)訂正の目的 訂正事項1?3は、訂正後の特許請求の範囲を「請求項1を含む一群の請求項」と「請求項2を含む一群の請求項」という互いに独立した一群の請求項を含むものとするために、訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式であったところを請求項1を引用しない形式に書き下し(訂正事項2)たうえで、訂正後の請求項1、3?6を「請求項1を含む一群の請求項」となるようにし(訂正事項1)、訂正後の請求項2、9?12を「請求項2を含む一群の請求項」となるようにする(訂正事項3)訂正を行うものである。 以上の訂正事項のうち、訂正事項2は、訂正前の請求項2が引用形式で記載された請求項であったところを、引用する請求項の記載を書き下して独立形式で記載された請求項とするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 また、訂正事項1及び3は、訂正事項2によって請求項2が独立形式請求項になることに伴い、訂正後の上記2つの一群の請求項に属する各請求項の引用関係を明瞭にするためのものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加及び特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項1?3は、引用形式で記載された訂正前の請求項2について独立形式で記載すること及びそれに伴って他の請求項について必要となる形式的な訂正をおこなうことを内容とするものであって、当該訂正によって、各請求項に係る発明に何ら変更をもたらすものはない。 したがって、訂正事項1?3は、本件出願の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 イ.訂正事項4について (ア)訂正の目的 訂正事項4は、請求項2について、 a.使用する染料の種類を「3種以上」から「3種」に限定する訂正、 b.酸性染料のスルホン酸塩基を「ナトリウム塩、アンモニウム塩およびアルキルアンモニウム塩の群から選ばれる少なくとも1つ」から「ナトリウム塩」に限定する訂正、 c.赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を特定の構造式(B)、(D)、(E)の染料に限定する訂正、 d.水消去性書画用墨汁組成物を「繊維集合体に対する水消去性を有する」ものに限定する訂正、 を行うものであって、これらのうち、a、cの訂正は上位概念から下位概念への変更、bの訂正は択一的記載要素の削除、dの訂正は構成要件の直列的付加にあたるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を行うものである。 よって、訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加 訂正事項4に係る事項は、いずれも訂正前の本件の特許請求の範囲ないし明細書に記載された事項の範囲内で行われるものであり(事項cは訂正前の請求項3等に記載された事項であり、事項dは発明の詳細な説明の段落【0001】等に記載された事項である。)、訂正の前後で請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、新規事項を追加するものではない。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項4は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリー、対象、目的の変更等をするものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ.訂正事項5について (ア)訂正の目的 訂正事項5は、上記訂正事項3により訂正された訂正後の請求項9に記載された黄色系染料、赤色系染料の選択肢の一部を削除するものであって、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (イ)新規事項の追加 訂正事項5は、訂正後の請求項9に記載された発明特定事項の選択肢の一部を削除するものであり、訂正の前後で請求項に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、新規事項を追加するものではない。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項5は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリー、対象、目的の変更等をするものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)独立特許要件について 訂正事項4及び5は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであるから、当該訂正事項に係る訂正後の請求項2、9?12に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 ア.訂正後の請求項2、9?12に記載された発明 訂正後の請求項2、9?12に記載された発明は次のとおりである。 【請求項2】 酸性染料および水媒体を含み、 前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合され、 前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、 前記赤色系染料が下記構造式(D)で表され、前記黄色系染料が下記構造式(B)で表され、前記青色系染料が下記構造式(E)で表されることを特徴とする繊維集合体に対する水消去性を有する水消去性書画用墨汁組成物。 … 【請求項9】 前記黄色系染料はアゾ系の食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)、前記赤色系染料はアゾ系の食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)、前記青色系染料はトリフェニルメタン系の食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.42090)であることを特徴とする請求項2記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項10】 デンプン糖類および砂糖から選ばれる少なくとも1つの保湿剤および/または天然ガム類からなる滲み改善剤がさらに含有されることを特徴とする請求項2または9記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項11】 前記デンプン糖類がマルチトール、ソルビトールおよび水飴の群から選択される1種または2種以上である請求項10記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項12】 前記天然ガム類がキサンタンガム、アラビアガムおよびローカストビーンガムの群から選択される1種または2種以上である請求項10記載の水消去性書画用墨汁組成物。 イ.甲第1?3号証に記載された事項 甲第1?3号証(以下、「刊行物1?3」という。)は、次のとおりであり、それぞれ以下のとおりの事項が記載されている。 刊行物1:実願昭52-133439号(実開昭54-60531号)のマイクロフィルム 刊行物2:特開平9-316379号公報 刊行物3:特開平11-130906号公報 (ア)刊行物1の記載事項 (アa)「色素たる食用青1号,食用赤102号,及び食用黄4号と、界面活性剤と、ポリエチレングリコールとを含有する黒色水溶液をインキとするサインペン…」(実用新案登録請求の範囲) (アb)「本考案は実用新案登録請求の範囲に記載する構成とすることにより、完全な水溶性のインキであり…水を含んだ雑巾で拭き取るだけで簡単に消去することのできる水溶性インキによるサインペン玩具を提供するものである。」(第2頁第13行?第3頁第4行) (アc)「本項案においてインキとして使用される各色の水溶液中にポリエチレングリコールを添加するのは、インキ保溜材に含浸,貯留されているインキが蒸発するのを防ぐためであり、サインペンとしての保存性を得るものである。また、若干添加される界面活性剤は、インキの流れをよくするもので、インキが保溜材に滲み込むのを速進させ、インキ保溜材に含浸,貯留されるインキの量を多くするとともに、合成樹脂面等の撥水性の表面への筆記を可能とするものである。」(第6頁第5?15行) (アd)「本考案においてインキとして使用される黒色,赤色,および青色水溶液の好ましい組成例を例示すると次のようである。 黒色水溶液 水 85(重量部) ポリエチレングリコール 10( 〃 ) 界面活性剤 5( 〃 ) 色素 食用青 1号 4( 〃 ) 食用赤 102号 4( 〃 ) 食用黄 4号 4( 〃 ) …」(第7頁第7行?最下行) (イ)刊行物2の記載事項 (イa)「【請求項1】直染性の低い染料と水溶性樹脂を含有することを特徴とする消去性着色剤組成物。 … 【請求項11】請求項1乃至10のいずれかに記載の消去性着色剤組成物を含有する墨汁。」(【特許請求の範囲】) (イb)「【発明の属する技術分野】 本発明は、墨汁、絵具、マーキングペン用インキ等として用いることができ、布、不織布などの繊維集合体に付着した場合に水洗などにより簡単に消去できる水溶性の消去性着色剤組成物に関する。 【従来の技術】 従来、例えば墨汁や絵具は、誤って衣服などの布、不織布などの繊維集合体に付着し定着した場合、洗っても簡単にはとれないという問題があった。 一方、墨汁と絵具だけでなく、マーキングペン用インキ等を被服等の繊維集合体に積極的に描いて、簡単に消去できれば、新たな着色剤としての利用に供することもできる。 従来、特開平7-3197号は、染料を水不溶性の樹脂等と反応させて水不溶性の複合物とし、繊維集合体に染着しないようにして消去性を付与するか、又は水不溶性樹脂で染料を覆い水不溶性の複合物の粒子径を大きくさせ、染料の繊維の目に引っかかるのを防止して消去性を付与している。」(段落【0001】?【0004】) (イc)「本発明の着色剤組成物が消去性を持つ理由は、定かではないが、1つは直染性が低い染料、好ましくは酸性染料又は反応性染料の場合、混合物ではあるとはいうものの、その染料部が水溶性樹脂に包接されるような形で包み込まれるため、染料の見かけの大きさが大きくなり、繊維集合体の繊維の表面を通って繊維内に入り込むことができないためと考えられる。また、水溶性樹脂に直染性が低い染料が取り込まれているため染料の反応基が繊維と反応することを阻害しており、更に、水溶性樹脂が洗浄液と繊維に付着した染料のあいだの表面張力を下げ、湿潤、浸透作用により染料が繊維の表面から引き離されるのを助け、消去性を向上させる作用を有するためであると考えられる。」(段落【0013】) (イd)「直染性が低い染料として特に有効なものは、既述の通り、酸性染料又は反応性染料であるが、その中でも、特に有効なものを検討した結果、ジクロルトリアジン型、モノクロルトリアジン型、ビニールスルホン型、クロルピリミジン型、ジクロルキノキサジン型、モノクロルトリアジンとビニールスルホンの二官能基型が好ましいことが判明した。また中でも、モノクロルトリアジン型、ビニールスルホン型、特にモノクロルトリアジン型の反応性染料が最適である。請求項8の発明は、直染性の低い染料が、ジクロルトリアジン型、モノクロルトリアジン型、ビニールスルホン型、クロルピリミジン型、ジクロルキノキサジン型、モノクロルトリアジンとビニールスルホンの二官能基型のいずれかの反応性染料である請求項1乃至7記載の消去性着色剤組成物である。請求項9の発明は、直染性の低い染料が、モノクロルトリアジン型、ビニールスルホン型のいずれかの反応性染料である請求項1乃至8記載の消去性着色剤組成物である。請求項10の発明は、直染性の低い染料がモノクロルトリアジン型の反応性染料である請求項1乃至8記載の消去性着色剤組成物である。 … 【発明の実施の形態】 直染性が低い染料としては、限定されるものではないが、例えば、商品名Cibacron Black P-SG(チバガイギー社製)、Cibacron Black P-2PD(チバガイギー社製)、Cibacron Black F-2B(チバガイギー社製)、Cibacron GrayG-R-01(チバガイギー社製)、Cibacron Blue P-B (チバガイギー社製)、Cibacron Navy GR-E-01(チバガイギー社製)、Cibacron Blue F-R(チバガイギー社製)、Cibacron Red P-B(チバガイギー社製)、Cibacron Red 4G-E-N(チバガイギー社製)、Cibacron Red F-B(チバガイギー社製)、Cibacron Yellow P-6GS(チバガイギー社製)、Cibacron Yellow 2G-E(チバガイギー社製)、Cibacron Yellow F-3R(チバガイギー社製)等のモノクロルトリアジン型反応性染料、商品名 Cibacron Black C-N(チバガイギー社製)、Cibacron Blue C-R(チバガイギー社製)、Cibacron Red C-R(チバガイギー社製)、Cibacron Yellow C-R-1(チバガイギー社製)等のモノクロルトリアジン-ビニルスルホン二官能基型反応性染料、Remazol Black DEN Hi-Gran(ダイスター社製)、Remazol Blue RU-N(ダイスター社製)、Remazol Red RU-N(ダイスター社製)、Remazol Yellow RU-N(ダイスター社製)等のビニルスルホン型反応性染料、商品名 Levafix Navy Blue E-BNA GRAN(ダイスター社製)、Levafix BR.Red E-RN(ダイスター社製)、Levafix G Yellow E-G(ダイスター社製)等のジクロルキノキサジン型反応性染料を用いることができる。また、C.I.番号 A.Bk.2(商品名 Water Black R-455)、C.I.番号 A.Bk.119(商品名 Opal Black new conc 保土谷社製)、C.I.番号 A.R.87(商品名 エオシン)、C.I.番号 A.B.9(商品名 Water Blue #9)等の酸性染料を用いることができる。」(段落【0014】、【0016】) (イe)「水溶性樹脂は、着色剤の消去性を向上させるために添加するものであり、…ポリエチレングリコールが最適である。 着色剤に加える水溶性樹脂の割合が低い場合は樹脂が前記染料を取り込むことができす、染料の一部が繊維に入り込んでしまうため消去性が悪くなる。従って、既述の通り、水溶性樹脂の含有量は少なくとも10重量パーセントであることが好ましい。」(段落【0018】?【0019】) (イf)「本発明の消去性着色剤組成物は、例えば必須成分として直染性の低い染料及び水溶性樹脂を含有し、これらを水と混合、撹拌により溶解させることによって得られる。」(段落【0021】) (ウ)刊行物3の記載事項 (ウa)「水と架橋型ポリN-ビニルカルボン酸アミドと水溶性多糖類とを少なくとも含み、水溶性多糖類の含有量が架橋型ポリN-ビニルカルボン酸アミドの含有量の1/4以下であることを特徴とした液状組成物。」(【特許請求の範囲】【請求項1】) (ウb)「【発明の属する技術分野】 本発明は、アイライナー、マスカラ、皮膚の汚れを除去するためのパック剤等の化粧料、絵の具、ポスターカラー、墨汁等の描画材、ボールペン、修正液等の筆記具、インキ内蔵方式スタンプ用インキ、スタンプパッド用インキ、印刷インキ、塗料等の液状の水性組成物に関し、チキソ性を利用することにより、液状組成物の流動性やレベリング性等の取り扱い性を考慮し、同時に低反応性を維持することにより液状組成物の経時安定性を考慮した液状組成物に関するものである。」(段落【0001】) ウ.刊行物1を主引用例とした場合についての検討 (ア)刊行物1に記載された発明 刊行物1には、色素たる食用青1号、食用赤102号、及び食用黄4号と、界面活性剤と、ポリエチレングリコールとを含有するサインペンに用いられる黒色水溶液インキが記載され(摘記(アa))、当該インキが、水を含んだ雑巾で拭き取るだけで簡単に消去することのできる水溶性のものであることが記載されている(摘記(アb))。 また、刊行物1には、水を含有し、食用青1号、食用赤102号、食用黄4号をそれぞれ4重量部使用する例が記載されており(摘記(アd))、これは、水を含有し、各色素を33.3重量%の割合で配合することを意味するものと解される。 よって、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「水、色素たる食用青1号、食用赤102号、及び食用黄4号と、界面活性剤と、ポリエチレングリコールとを含有し、食用青1号33.3重量%、食用赤102号33.3重量%、食用黄4号33.3重量%の割合で配合された、水を含んだ雑巾で拭き取るだけで簡単に消去することのできるサインペンに用いられる黒色水溶液インキ」 (イ)対比 訂正後の請求項2に記載された発明(以下、「本件訂正後発明2」という。)と引用発明1とを対比する(なお、以下の対比おいて、構造式(A)、(B)、(D)、(E)の掲載は省略する。)。 引用発明1における「食用青1号」、「食用赤102号」、「食用黄4号」は、それぞれブリリアントブルーFCF、ニューコクシン、タートラジンと呼ばれる色素、染料であって、それらの構造式は、それぞれ本件訂正明細書の段落【0020】の式(E)、段落【0019】の式(D)、段落【0016】の式(A)で表されるものであることは、当業者に周知のことである。そして、「食用青1号」、「食用赤102号」、「食用黄4号」が酸性染料であることは、それらの構造式からみて明らかである。 そうすると、引用発明1の「水」、「食用青1号」及び「食用赤102号」は、それぞれ本件訂正後発明2の「水媒体」、「酸性染料…、前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、…トリフェニルメタン系の…青色系染料…からなり、…、前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、…前記青色系染料が下記構造式(E)で表される」及び「酸性染料…、前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)…の赤色系染料…からなり、…、前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、…前記赤色系染料が下記構造式(D)で表され」に相当する(なお、引用発明1の「食用黄4号」は、その構造式からみて、本件訂正後発明2の「酸性染料…、前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)…の…黄色系染料…からなり、…、前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、…『前記黄色系染料が下記構造式(B)で表され』」るものとは相違するものである。)。 また、引用発明1が、「色素たる食用青1号、食用赤102号、及び食用黄4号」を含有する点は、本件訂正後発明2における「赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種からなり」に相当する。 そして、引用発明1の「食用青1号33.3重量%、食用赤102号33.3重量%、食用黄4号33.3重量%の割合で配合された」は、本件訂正後発明2の「赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合され」と各染料の配合割合について重複する。 引用発明1の「水を含んだ雑巾で拭き取るだけで簡単に消去することのできる」は、本件訂正後発明2の「水消去性」に相当し、引用発明1の「黒色水溶液インキ」が「組成物」であることは明らかである。 以上を総合すると、両者は、 「酸性染料および水媒体を含み、 前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合され、 前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、 前記赤色系染料が下記構造式(D)で表され、前記青色系染料が下記構造式(E)で表される水消去性組成物。」 の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1-1:黄色系染料が、本件訂正後発明2は構造式(B)で表されるものであるのに対して、引用発明1は食用黄4号である点 相違点1-2:水消去性組成物の用途が、本件訂正後発明2は繊維集合体に対する水消去性を有する書画用墨汁」であるのに対して、引用発明1は「サインペンに用いられる黒色水溶液インキ」である点 相違点1-3:引用発明1は、界面活性剤とポリエチレングリコールとを含有するものであるのに対して、本件訂正後発明2はそれらを必須とするものでない点 (ウ)判断 上記相違点1-1?1-3について検討する。 a.相違点1-1 引用発明1で用いられる食用黄4号は、本件訂正明細書において構造式(A) で表されるものであって、これが本件訂正後発明2の前記構造式(B)で表される黄色系染料と別異の化合物からなるものであることは明らかである。 そして、刊行物1には、前記構造式(B)で表される化合物からなる黄色系染料については何ら記載されていない。 また、刊行物2、3の記載事項を参照しても(摘記(イa)?(イc)、(ウa)?(ウb))、水消去性組成物において、前記構造式(B)で表される黄色系染料を用いることについては何ら記載されていないものと認められる。 そして、構造式(A)で表される化合物からなる食用黄4号と、前記構造式(B)で表される化合物からなる黄色系染料とが、前記構造式(D)で表される赤色系染料及び前記構造式(E)で表される青色系染料を含む水消去性組成物において、黄色系染料として同様の作用をするものであるという技術常識が存在するものとは認められない。 そうすると、引用発明1において、食用黄4号の代わりに構造式(B)で表される黄色系染料を用いることは、当業者が容易になし得たこととは認められない。 b.相違点1-2、1-3 相違点1-3は、引用発明1が界面活性剤とポリエチレングリコールとを含有するものである点に係る相違点であるが、引用発明1においてそれらの成分を用いる目的をみると、界面活性剤は「インキの流れをよくするもので、インキが保溜材に滲み込むのを速進させ、インキ保溜材に含浸,貯留されるインキの量を多くするとともに、合成樹脂面等の撥水性の表面への筆記を可能とする」ためであり、ポリエチレングリコールについては「インキ保溜材に含浸,貯留されているインキが蒸発するのを防ぐためであり、サインペンとしての保存性を得る」ためであって(摘記(アc))、いずれも、引用発明1が墨汁組成物としてではなく、サインペンの水溶性インキとして用いられることを前提としたものであるから、相違点1-3については、相違点1-2についての検討、具体的には、引用発明1のサインペンに用いられる水消去性の黒色水溶液インキを墨汁組成物に転用することを当業者が容易に想到し得たものであるか否かについて検討すれば足りるものといえる(すなわち、墨汁組成物への転用が容易であれば、引用発明1から界面活性剤とポリ墨汁組成物を除くのは容易であり、転用が容易でなければ、それらを除くのは容易でないものと認められる。)。 そこで、相違点1-2について検討する。 刊行物2、3には、墨汁やペン類のインキとして使用できる組成物が記載されている(摘記(イb)、(ウb))。 しかしながら、刊行物2は赤色系染料、黄色系染料、青色系染料を含む水消去性組成物によって水消去性を発現させるものではないし、刊行物3は水消去性組成物に係るものですらないから、刊行物2、3には、各刊行物に記載された特定の組成物がペン類のインキや墨汁として使用できることは記載されていたとしても、水消去性を発現する構成(特定の黄色系染料、赤色系染料、青色系染料を含む構成)の点で全く相違する引用発明1のサインペンの水消去性インキ組成物を墨汁とすることが、刊行物2、3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、刊行物2、3に記載された技術的事項を考慮しても、引用発明1をあえて墨汁に転用し、繊維集合体に対する水消去性を有する水消去性の墨汁組成物とすることを当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 さらに、相違点1-3に係る点、すなわち、引用発明1が界面活性剤とポリエチレングリコールとを含有する点については、引用発明1のサインペンの水消去性インキ組成物を墨汁とすることを当業者が容易に想到し得たものといえない以上、引用発明1がサインペンとして用いられることを前提とした成分である界面活性剤及びポリエチレングリコールを引用発明1から除くことも当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 以上のとおりであって、相違点1-1?1-3に係る本件訂正後発明2の構成の点はいずれも、当業者が容易になし得たものとはいえないから、本件訂正後発明2は、本件審判請求書に添付された刊行物1に記載された発明であるとは認められないし、刊行物1を主引用例として、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。 そして、訂正後の請求項2を直接的又は間接的に引用して記載された訂正後の請求項9?12に記載された発明についても同様に、刊行物1に記載された発明であるとは認められないし、刊行物1を主引用例として、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。 エ.刊行物2を主引用例とした場合についての検討 (ア)刊行物2に記載された発明 刊行物2の「【請求項1】直染性の低い染料と水溶性樹脂を含有することを特徴とする消去性着色剤組成物。…【請求項11】請求項1乃至10のいずれかに記載の消去性着色剤組成物を含有する墨汁。」(摘記イa)、「本発明は…布、不織布などの繊維集合体に付着した場合に水洗などにより簡単に消去できる…」(摘記イb)、及び、「本発明の消去性着色剤組成物は、例えば必須成分として直染性の低い染料及び水溶性樹脂を含有し、これらを水と混合…させることによって得られる。」(摘記イf)との記載からみて、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「直染性の低い染料と水溶性樹脂と水とを含有する消去性着色剤組成物、を含有する、繊維集合体に付着した場合に水洗などにより簡単に消去できる墨汁。」 (イ)対比 本件訂正後発明2と引用発明2とを対比する(なお、以下の対比おいて、構造式(B)、(D)、(E)の掲載は省略する。)。 引用発明2の「…染料と…水とを含有する」は、本件訂正後発明2の「…染料および水媒体を含み」に相当する。 引用発明2の「消去性着色剤組成物、を含有する…墨汁。」は、本件訂正後発明2の「水消去性書画用墨汁組成物」に相当する。 引用発明2の「繊維集合体に付着した場合に水洗などにより簡単に消去できる」は、本件訂正後発明2の「繊維集合体に対する水消去性を有する」に相当する。 以上を総合すると、両者は、 「染料および水媒体を含み 繊維集合体に対する水消去性を有する水消去性書画用墨汁組成物。」 の点で一致し、次の点で相違する。 相違点2-1:染料が、本件訂正後発明2は「構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合され、前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、前記赤色系染料が構造式(D)で表され、前記黄色系染料が構造式(B)で表され、前記青色系染料が構造式(E)で表される酸性」染料であるのに対して、引用発明2は「直染性の低い」染料である点 相違点2-2:引用発明2は、水溶性樹脂を含有するものであるのに対して、本件訂正後発明2は水溶性樹脂を含有することを発明特定事項とするものでない点 (ウ)判断 上記相違点2-1、2-2について検討する。 a.相違点2-1 引用発明2で用いられる直染性の低い染料として、本件訂正後発明2において特定されるような染料、すなわち、赤色系染料、黄色系染料、青色系染料の3種を所定の割合で配合した染料を用いることが当業者が容易になし得たことであるか否かについて検討する。 そこで、刊行物2の記載をみると、直染性の低い染料として使用される染料として酸性染料又は反応性染料が有効であることが記載され、そのような染料として、黒色系染料、赤色系染料、青色系染料等の染料が例示されていると認められる(摘記イd.なお、酸性染料については「C.I.番号 A.Bk.2(商品名 Water Black R-455)、C.I.番号 A.Bk.119(商品名 Opal Black new conc 保土谷社製)、C.I.番号 A.R.87(商品名 エオシン)、C.I.番号 A.B.9(商品名 Water Blue #9)等の酸性染料」と、黒色系染料、赤色系染料、青色系染料が例示されている。)。 しかしながら、直染性の低い染料として複数の染料を併せて用いること、とりわけ、赤色系染料、黄色系染料、青色系染料の3種を併せて用いることについては刊行物2には何ら記載されていないことを考慮すると、たとえ、サインペンの水性インキ等の別異の組成物において赤色系染料、黄色系染料、青色系染料の3種を併せて用いる例があったとしても(摘記アa?d)、引用発明2において、直染性の低い染料として、黒色系染料を用いるのでなく、赤色系染料、黄色系染料、青色系染料の3種からそれぞれ特定の染料を選択し所定の割合で併せて配合して用いることを当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 そうすると、引用発明2において、直染性の低い染料として「構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合され、前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、前記赤色系染料が構造式(D)で表され、前記黄色系染料が構造式(B)で表され、前記青色系染料が構造式(E)で表される酸性」染料を用いることは、当業者が容易になし得たこととは認められない。 b.相違点2-2 刊行物2の「本発明の着色剤組成物が消去性を持つ理由は、定かではないが、…その染料部が水溶性樹脂に包接されるような形で包み込まれるため…考えられる。また、水溶性樹脂に直染性が低い染料が取り込まれているため染料の反応基が繊維と反応することを阻害しており、更に、水溶性樹脂が洗浄液と繊維に付着した染料のあいだの表面張力を下げ、湿潤、浸透作用により染料が繊維の表面から引き離されるのを助け、消去性を向上させる作用を有するためであると考えられる。」(摘記イc)、「水溶性樹脂は、着色剤の消去性を向上させるために添加するものであり、…少なくとも10重量パーセントであることが好ましい。」(摘記イe)との記載等を考慮すると、引用発明2において、繊維集合体に付着した場合に水洗などによって簡単に消去できるようなものにするため、すなわち、繊維集合体に対する水消去性を有するものとするために、水溶性樹脂は必須の成分と解されるから、引用発明2において水溶性樹脂を任意の成分として、使用しなくともよいものとすることは当業者が容易になし得たこととは認められない。 以上のとおりであって、相違点2-1、2-2に係る本件訂正後発明2の構成の点はいずれも、当業者が容易になし得たものとはいえないから、本件訂正後発明2は、本件審判請求書に添付された刊行物2を主引用例として、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 そして、訂正後の請求項2を直接的又は間接的に引用して記載された訂正後の請求項9?12に記載された発明についても同様に、刊行物2を主引用例として、刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 エ.独立特許要件についてのまとめ よって、訂正事項4及び5によって訂正された訂正後の請求項2、9?12に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものと認められる。 4.むすび 以上のとおり、本件訂正審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第1ないし4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5ないし7項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 水消去性書画用墨汁組成物 【技術分野】 【0001】 本発明は、水消去性書画用墨汁組成物に関し、詳しくは書画用の墨汁として用いることができ、誤って服などの繊維集合体に付着した場合にも水洗または洗濯により容易に消去することが可能な水消去性書画用墨汁組成物に係わる。 【背景技術】 【0002】 従来の墨汁はカーボンブラックを主体とした膠および/または合成樹脂からなる組成物であるため、一旦布や不織布などの繊維集合体に付着した場合、水洗または洗剤を用いた洗濯では簡単に消去することができない問題があった。 【0003】 また市販品の消去性書道液でも、最も多用されている繊維である木綿に対しては容易に消去することは困難であった。 【0004】 特許文献1には、樹脂と染料や顔料を混練し微粉末に加工したり、水不溶性の無機物の微粒子の表面に水不溶性の染料や顔料を混合し、機械的な衝撃力で付着させたもの、染料等と反応させ微粉末にし、染料等の粒子の大きさを大きくすることにより、繊維集合体の繊維間に入り込むことを防止したり、染料が有する繊維との反応基を封鎖し、洗濯などで色材を洗い落とす方法が提案されている。 【0005】 しかしながら、前記方法は樹脂と染料等を混練し、微粉末に加工する工程、樹脂表面に機械的衝撃力で染料などを付着させる工程、染料と樹脂とを反応させる工程等が必要となり、樹脂及び加工する設備、工程が必要であった。 【0006】 また、洗濯により容易に消去できる墨汁として、水溶性の化合物、すなわちヨウ素でんぷんを用いた墨汁が既に提案されている。しかしながら、この墨汁は半紙に書いた後の色が黒色から褐色に変化し、黒色を維持させることが必要な墨汁として満足するものではなかった。 【特許文献1】特開平7-3197号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、従来のような煩雑な工程を必要とすることなく、誤って衣服に付着しても、洗濯により容易に消去でき、さらに半紙に書いた後の色が黒色を維持させることが可能な水消去性書画用墨汁組成物を提供する。 【0008】 また、本発明は従来のような煩雑な工程を必要とすることなく、誤って衣服に付着しても、洗濯により容易に消去でき、かつ市販の墨汁と遜色のない黒色性、耐光性、滲み防止性、筆記性等の性能を有し、さらに誤って口に入れても安全な水消去性書画用墨汁組成物を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明の第1態様によると、酸性染料および水媒体を含み、 前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合されることを特徴とする水消去性書画用墨汁組成物が提供される。 【0010】 本発明の第2態様によると、アゾ系の食用赤色2号(アマランス、C.I.16185)、食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する赤色染料29?60質量%と、アゾ系の食用黄色4号(タートラジン、C.I.19140)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する黄色系染料13?45質量%と、トリフェニルメタン系の食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.42090)である構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する青色系染料17?38質量%との割合で配合される酸性染料1?40質量%; デンプン糖類または砂糖5?40質量%; 天然ガム類0.01?1質量%;および 残部が実質的に水媒体; の組成を有し、粘度が1?100mPa・s/20℃の範囲であることを特徴とする水消去性書画用墨汁組成物が提供される。 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、従来のような煩雑な工程を必要とすることなく、誤って衣服に付着しても、洗濯により容易に消去でき、さらに半紙に書いた後の色が黒色を維持させることが可能な水消去性書画用墨汁組成物を提供できる。 【0012】 本発明によれば、従来のような煩雑な工程を必要とすることなく、誤って衣服に付着しても、洗濯により容易に消去でき、かつ通常のカーボンブラックおよび膠または合成樹脂を主体とした組成物である墨汁と遜色のない黒色性、耐光性、滲み防止性、筆記性等の性能を有し、さらに誤って口に入れても安全な水消去性書画用墨汁組成物を提供できる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、本発明の実施形態に係る水消去性書画用墨汁組成物を詳細に説明する。 【0014】 実施形態に係る水消去性書画用墨汁組成物は、酸性染料および水媒体を含有する。この酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料、すなわち黒色化のための三原色、を含む3種以上からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合される。 【0015】 前記構造中のスルホン酸塩基はアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびアルキルアンモニウム塩の群から選ぶことが好ましい。特に、ナトリウム塩はその高い水消去性効果を示す。 【0016】 前記黄色系染料は、アゾ系の食用黄色4号(下記化1の構造式(A)を持つタートラジン、C.I.19140)、食用黄色5号(下記化2の構造式(B)を持つサンセットイエローFCF、C.I.15985)から選択することが好ましい。前記赤色系染料は、アゾ系の食用赤色2号(下記化3の構造式(C)を持つアマランス、C.I.16185)、食用赤色102号(下記化4の構造式(D)を持つニューコクシン、C.I.16255)から選択することが好ましい。前記青色系染料はトリフェニルメタン系の食用青色1号(下記化5の構造式(E)を持つブリリアントブルーFCF、C.I.42090)が好ましい。これらの酸性染料は、下記の構造式から明らかなように全て構造中に2つ以上のスルホン酸ナトリウム塩を有する。 【化1】 【0017】 【化2】 【0018】 【化3】 【0019】 【化4】 【0020】 【化5】 【0021】 前記各食用の染料を組み合わせにおいて、アゾ系の食用赤色2号(アマランス、C.I.16185)、食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する赤色染料を29?60質量%、アゾ系の食用黄色4号(タートラジン、C.I.19140)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する黄色系染料を13?45質量%、およびトリフェニルメタン系の食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.42090)である構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する青色系染料を17?38質量%の割合で配合することが好ましい。このように特定の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を特定の割合で配合することによって、誤って衣服に付着したときに優れた水消去性を示すと共に、耐光性、水溶液状態で安定性に優れ、墨汁に近似した黒色性を示し、さらに仮に誤って口に入れても高い安全性を有する水消去性書画用墨汁組成物を実現することができる。 【0022】 また、各食用の染料を用いて好ましい黒色の墨汁組成物にするには、 (1)タートラジン(アゾ系の食用黄色4号)、アマランス(アゾ系の食用赤色2号)およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号)の組合せ、 (2)サンセットイエローFCF(アゾ系の食用黄色5号)、アマランス(アゾ系の食用赤色2号)およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号)の組合せ、 (3)サンセットイエローFCF(アゾ系の食用黄色5号)、ニューコクシン(アゾ系の食用赤色102号)およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号)の組合せ、 (4)タートラジン(アゾ系の食用黄色4号)、ニューコクシン(アゾ系の食用赤色102号)およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号)の組合せ、 を挙げることができる。 【0023】 前記(1)?(4)の墨汁組成物において、各染料は以下の割合で配合することが好ましい。 【0024】 墨汁組成物(1)の配合組成 タートラジン(アゾ系の食用黄色4号);19?32質量%、アマランス(アゾ系の食用赤色2号);46?60質量%およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号);17?26質量%。 【0025】 墨汁組成物(2)の配合組成 サンセットイエローFCF(アゾ系の食用黄色5号);26?45質量%、アマランス(アゾ系の食用赤色2号);29?43質量%およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号);22?33質量%。 【0026】 墨汁組成物(3)の配合組成 サンセットイエローFCF(アゾ系の食用黄色5号);22?40質量%、ニューコクシン(アゾ系の食用赤色102号);30?44質量%およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号);26?38質量%。 【0027】 墨汁組成物(4)の配合組成 タートラジン(アゾ系の食用黄色4号);13?26質量%、ニューコクシン(アゾ系の食用赤色102号);43?57質量%およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号);24?35質量%。 【0028】 前記(1)?(4)の特定の食用の染料の組み合わせにおいて、(3)の三原色の組合せが水消去性および耐光性をバランス良く発現できるために、墨汁組成物の酸性染料成分として好ましい。特に、前記(3)の組合せで、配合組成を規定することによって、水消去性および耐光性をより一層バランス良く発現できる。 【0029】 前記三原色の酸性染料は、墨汁組成物中に1?40質量%含有することが好ましい。より好ましい三原色の酸性染料の含有量は、3?5質量%である。 【0030】 実施形態に係る水消去性書画用墨汁組成物において、デンプン糖類、砂糖およびエチレングリコール等から選ばれる少なくとも1つの保湿剤および/または天然ガム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等から選ばれる少なくとも1つの滲み改善剤をさらに含有することが好ましい。これらの保湿剤、滲み改善剤は運筆性、滲み防止、墨色化に寄与し、書道液としての適正化を維持することが可能になる。特に、保湿剤であるデンプン糖類、砂糖は保湿性に加えて水消去性の向上に寄与する。 【0031】 保湿剤の中でデンプン糖類が有効であり、例えばマルチトール、ソルビトール、水飴、マルトース、ブドウ糖、デキストリンを挙げられる。特に、マルチトール、ソルビトール、水飴は保湿剤無添加の墨汁組成物と比較して布または不織布などの繊維集合体に対する水消去性の効果は大きい。 【0032】 滲み改善剤の中で天然ガム類が有効であり、具体的にはキサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、グアーガム、トラガントガムなどが挙げられる。特に、キサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガムは滲み改善効果が高く、少量添加で墨汁組成物の粘性を筆記性に適した範囲内に調整することが可能になる。 【0033】 保湿剤は、墨汁組成物中に5?40質量%含まれることが好ましい。保湿剤の配合量を5質量%未満にすると、その配合効果を十分に発揮することが困難になる虞がある。一方、保湿剤の配合量が40質量%を超えると、墨汁組成物の粘度が高くなり過ぎて、筆記性を低下させる虞がある。 【0034】 滲み改善剤は、墨汁組成物中に0.01?1質量%含まれることが好ましい。滲み改善剤の配合量を0.01質量%未満にすると、その配合効果を十分に発揮することが困難になる虞がある。一方、滲み改善剤の配合量が1質量%を超えると、筆運びが重くなって墨汁、例えば学童用書道液としての適切性が損なわれる虞がある。 【0035】 実施形態に係る水消去性書画用墨汁組成物において、防腐剤、消泡剤等をさらに含有することを許容する。 【0036】 本発明者らは、酸性染料の中で、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、かつアゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなる特定の酸性染料を選択し、さらに各色系染料を特定の配合割合で水媒体に含有させることによって、従来のような煩雑な工程を必要とすることなく、誤って衣服に付着しても、洗濯により容易に消去でき、さらに半紙に書いた後の色が黒色を維持することが可能な水消去性書画用墨汁組成物を見出した。 【0037】 実施形態に係る水消去性書画用墨汁組成物において、以下の成分組成を有することが最も好適である。 【0038】 アゾ系の食用赤色2号(アマランス、C.I.16185)、食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する赤色染料29?60質量%と、アゾ系の食用黄色4号(タートラジン、C.I.19140)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する黄色系染料13?45質量%と、トリフェニルメタン系の食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.42090)である構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する青色系染料17?38質量%との割合で配合される酸性染料1?40質量%; デンプン糖類または砂糖5?40質量%; 天然ガム類0.01?1質量%;および 残部が実質的に水媒体; の組成を有し、粘度が1?100mPa・s/20℃の範囲である水消去性書画用墨汁組成物。 【0039】 前記三原色の酸性染料は、前述した(1)?(4)の組合せで、かつ前述した前記配合組成にすることが好ましい。特に(3)のサンセットイエローFCF(アゾ系の食用黄色5号)、ニューコクシン(アゾ系の食用赤色102号)およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号)の組合せは、墨汁組成物の水消去性および耐光性がバランス良く発現できるために最も好ましい。 【0040】 前記三原色の酸性染料の配合割合を特定することによって、誤って衣服に付着したときに優れた水消去性を示すと共に、耐光性、水溶液状態で安定性に優れ、墨汁に近似した黒色性を発現できる。特に、前記(3)の酸性染料の組合せで、それらの配合割合をサンセットイエローFCF(アゾ系の食用黄色5号);22?40質量%、ニューコクシン(アゾ系の食用赤色102号);30?44質量%およびブリリアントブルーFCF(トリフェニルメタン系の食用青色1号);26?38質量%に規定することによって、水消去性および耐光性がバランス良く発現できると共に、墨汁により近似した黒色性を発現できる。 【0041】 前記三原色の酸性染料が墨汁組成物中に含有される量を1質量%未満にすると、所期の黒色性を発現することが困難になる虞がある。一方、三原色の酸性染料が墨汁組成物中に含有される量が40質量%を超えると、染料が析出する虞がある。より好ましい三原色の酸性染料の含有量は、3?5質量%である。 【0042】 前記デンプン糖類としては、例えばマルチトール、ソルビトール、水飴、マルトース、ブドウ糖、デキストリンを挙げられ、特にマルチトール、ソルビトール、水飴は保湿剤が無添加の墨汁組成物と比較して布または不織布などの繊維集合体に対する水消去性の効果は大きい。デンプン糖類または砂糖の配合量を5質量%未満にすると、その配合効果(保湿効果および水消去効果)を十分に発揮することが困難になる虞がある。一方、デンプン糖類または砂糖の配合量が40質量%を超えると、墨汁組成物の粘度が高くなり過ぎて、筆記性を低下させる虞がある。より好ましいデンプン糖類または砂糖の配合量は、5?40質量%である。 【0043】 前記天然ガム類としては、例えばキサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、グアーガム、トラガントガムなどが挙げられ、特にキサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガムは滲み改善効果が高く、少量添加で墨汁組成物の粘性を筆記性に適した範囲内に調整することが可能になる。天然ガムの配合量を0.01質量%未満にすると、その配合効果(滲み改善効果)を十分に発揮することが困難になる虞がある。一方、天然ガムの配合量が1質量%を超えると、滲み改善効果の向上化が望めないばかりか、水消去性(特に洗濯消去性)が低くなる虞がある。より好ましい天然ガムの配合量は、0.01?0.8質量%である。 【0044】 前記墨汁組成物において、粘度が100mPa・s/20℃を超えると、筆運びが重くなって墨汁、例えば学童用書道液としての適切性が損なわれる虞がある。より好ましい粘度は、4?10mPa・s/20℃である。 【0045】 最も好適な水消去性書画用墨汁組成物において、防腐剤、消泡剤等をさらに含有することを許容する。 【0046】 本発明者らは、酸性染料の中で、アゾ系の特定の食用赤色から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する赤色染料、アゾ系の特定の食用黄色から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する黄色系染料およびトリフェニルメタン系の特定の食用青色から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する青色系染料を特定の割合で配合した酸性染料と、主に保湿剤であるデンプン糖類または砂糖と、滲み改善剤である天然ガム類と、水媒体とを有し、さらに各成分を特定の割合で配合し、粘度を特定化することによって、従来のような煩雑な工程を必要とすることなく、誤って衣服に付着しても、洗濯により容易に消去でき、かつ市販の墨汁と遜色のない黒色性、耐光性、滲み防止性、筆記性等の性能を有し、さらに誤って口に入れても安全な水消去性書画用墨汁組成物を見出した。 【0047】 すなわち、前記特定の三原色の酸性染料の組合せの特定化により誤って衣服に付着しても水洗または洗剤を用いた洗濯で容易に消去することが可能で、特に木綿製やポリエステル製の衣服に対して優れた水消去性を示す。その結果、子供などが普段着用している綿ポリのシャツ等には高い消去性効果が発揮できる。 【0048】 また、三原色の酸性染料の組合せの特定化により水消去性に加えて、墨汁として要求される筆記後の耐光性、貯蔵時の溶液安定性が一層優れた水消去性書画用墨汁組成物を得ることができる。 【0049】 さらに、保湿剤および滲み改善剤の組合せの特定化と粘度の適正化より通常のカーボンブラックおよび膠または合成樹脂などを主体とした組成物である墨汁と比べても遜色のない文字の黒さ、優れた滲み防止性、筆記性を有する水消去性書画用墨汁組成物を得ることができる。 【0050】 その上、墨汁成分が食用の酸性染料、デンプン糖類または砂糖および天然ガム類のように全て食用に供されるものであるため、仮に誤って口に入れても安全である。 【0051】 したがって、誤って衣服に付着しても、洗濯により容易に消去でき、かつ通常のカーボンブラックを主体とした膠組成物である市販の墨汁と遜色のない黒色性、耐光性、滲み防止性、筆記性等の性能を有し、さらに誤って口に入れても安全な商品性、実用性の極めて高い水消去性書画用墨汁組成物を提供できる。 【0052】 以下、実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」はいずれも質量部を示す。 【0053】 (実施例1) 三原色の酸性染料を以下に示す配合割合で水にそれぞれ溶解して黒色の染料水溶液(墨汁組成物)を調製した。 【0054】 ・タートラジン(黄色染料) 0.80部 ・アマランス(赤色染料) 2.08部 ・ブリリアントブルーFCF(青色染料) 1.12部 ・水 96.00部 (実施例2?3) 下記表1に示す三原色の酸性染料を同表1示す配合割合で水にそれぞれ溶解して黒色の染料水溶液(墨汁組成物)を調製した。 【0055】 (比較例1?4) 下記表1に示す酸性染料を同表1示す配合割合で水にそれぞれ溶解して黒色の染料水溶液(黒色配合液)を調製した。 【0056】 なお、比較例1?4で使用したキサンテン系染料の赤色染料であるアシッドレッドは下記化6に示す構造式(F)、キサンテン系染料の赤色染料であるエリスロシンは下記化7に示す構造式(G)、キサンテン系染料の赤色染料であるローズベンガルは下記化8に示す構造式(H)、およびインジゴ系の青色染料であるインジゴカルミンは下記化9に示す構造式(I)、をそれぞれ有する。 【化6】 【0057】 【化7】 【0058】 【化8】 【0059】 【化9】 【0060】 得られた実施例1?3および比較例1?4の黒色の染料水溶液について、以下の方法により洗濯消去性(ΔE)、耐光性(ΔC)、色調目視判定および経日安定性を調べた。 【0061】 [洗濯消去性の評価方法] 黒色に調整した染料水溶液を幅5cm、長さ6cmの寸法を有する木綿(サテン)白布にスポイトで3滴滴下し、一夜風乾して水道水に30分漬け置き後、水洗した。つづいて、洗たく石鹸(ライオン製固形石鹸)で、20秒もみ洗いし水洗した。これを2回繰り返した。この洗濯した試験片と染料水溶液を滴下しないブランクである木綿(サテン)白布の色差(ΔE)を測定した。色差測定は、日本電色工業(株)製分光式色差計SE-2000を使用した。 【0062】 なお、色差ΔEが小さいほど色落ち性が良好であることを示す。 【0063】 [耐光性の評価方法] 黒色に調製した染料水溶液を書道半紙に塗布し風乾して2枚の試験半紙を用意した。一方の試験半紙に紫外線ロングライフフェードメーター(スガ試験機社製商品名;FAL-5H)により紫外線を40時間照射した。つづいて、紫外線を照射した試験半紙および紫外線未照射の試験半紙を日本電色工業(株)製分光式色差計SE-2000を用いてLab表色系のa値およびb値をそれぞれ測定し、下記式(1)に従って彩度を算出し、それらの差の絶対値を彩度差(ΔC)として算出した。なお、ΔCの絶対値が小さいほど、黒色としての色調ぶれがなく、墨汁として良好であることを示す。 【0064】 彩度(C)=(a^(2)+b^(2))の1/2乗 …(1) ここでaは、赤色と緑色の度合、bは黄色と青色の度合を示す。 【0065】 [色調目視判定] 前記耐光性試験で40時間紫外線を照射した試験半紙を目視により色調の変化を確認した。 【0066】 [安定性試験] 染料水溶液を50℃、1ヶ月間保存し、沈澱の有無を目視判定した。目視の結果、沈澱が認められなかったものは“○”(合格)、沈澱が確認できたものは“×”(不合格)とした。 【0067】 [総合判定] 総合判定は、洗濯消去性試験、耐光性試験、色調目視判定および安定性試験の結果から全ての試験項目が良好である場合を“○”(合格)、全ての試験項目の中で1つでも不良である場合を“×”(不合格)とした。 【0068】 これらの結果を下記表1に示す。表1には、各酸性染料の構造式(A)?(I)を併記する。 【表1】 【0069】 前記表1から明らかなように実施例1?3の黒色の染料水溶液(墨汁組成物)は、洗濯消去性(ΔE)、耐光性(ΔC)、色調および貯蔵時の経日安定性が良好であり、総合評価結果は○(合格)であることがわかる。 【0070】 特に、サンセットイエローFCF、ニューコクシンおよびブリリアントブルーFCFの三原色からなる酸性染料を水に溶解した実施例2の黒色の染料水溶液(墨汁組成物)は、洗濯消去性(ΔE)および耐光性(ΔC)をバランス良く発現でき、墨汁として一層優れた特性を有することがわかる。 【0071】 これに対し、同じ酸性染料に属し、2つのスルホン酸塩基を持つキサンテン系の食用赤色染料であるアシッドレッドを用いた比較例1の黒色の染料水溶液では、水消去性が良好であるものの、黒調色した場合の経日による色調退色が見られ、すなわち耐光性(彩度)の低下が生じ、総合評価が×(不合格)になった。 【0072】 また、同じ酸性染料に属し、キサンテン系の食用赤色染料であるエリスロシンを用いた比較例2およびキサンテン系の食用赤色染料であるローズベンガルを用いた比較例3の黒色の染料水溶液では、それらの赤色染料がいずれもスルホン酸塩基を持たないために水消去性が劣り、総合評価が×(不合格)になった。 【0073】 さらに、同じ酸性染料に属し、インジゴ系の青色染料であるインジゴカルミンは、水に対する溶解性が低く、析出し易いために墨汁の染料成分としては不適切で、総合評価が“×”(不合格)になった。 【0074】 (実施例4) 酸性染料等を以下に示す配合割合で水にそれぞれ溶解して墨汁組成物を調製した。 【0075】 ・サンセットイエローFCF 1.28部 ・ニューコクシン 1.52部 ・ブリリアントブルーFCF 1.20部 防腐剤(日本エンバイロケミカル(株)製;スラウト33) 0.10部 消泡剤(サンノブコ社製;8034L) 0.02部 水 95.88部 (実施例5?7) 下記表2に示すように実施例4の成分組成に加えて保湿剤であるマルチトール単独またはマルチトールと滲み改善剤であるキサンタンガムを同表2に示す配合割合で水にそれぞれ溶解して墨汁組成物を調製した。 【0076】 (実施例8?11) 下記表2に示すように実施例4の成分組成に加えて一定量の保湿剤であるマルチトールと種々の滲み改善剤であるアラビアガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製商品名;PVA-210)およびポリビニルピロリドン(アイエスピー・ジャパン社製商品名;PVP K-90)を同表2に示す配合割合で水にそれぞれ溶解して墨汁組成物を調製した。 【0077】 (実施例12?14) 下記表3に示すように実施例4の成分組成に加えて異なる量の保湿剤であるマルチトールと一定量の滲み改善剤であるキサンタンガムを同表3に示す配合割合で水にそれぞれ溶解して墨汁組成物を調製した。 【0078】 (実施例15,16) 下記表3に示すように実施例4の成分組成に加えて異なる量の保湿剤であるソルビトールと一定量の滲み改善剤であるキサンタンガムを同表3に示す配合割合で水にそれぞれ溶解して墨汁組成物を調製した。 【0079】 (実施例17,18) 下記表3に示すように実施例4の成分組成に加えて異なる量の保湿剤である水飴と一定量の滲み改善剤であるキサンタンガムを同表3に示す配合割合で水にそれぞれ溶解して墨汁組成物を調製した。 【0080】 (実施例19) 下記表3に示すように実施例4の成分組成に加えて保湿剤であるエチレングリコール(丸善ケミカル株式会社製商品名;エチレングリコール)と滲み改善剤であるキサンタンガムを同表3に示す配合割合で水に溶解して墨汁組成物を調製した。 【0081】 得られた実施例4?19の墨汁組成物および学童用書道液(株式会社呉竹;墨滴)[比較例5]について、以下の方法により洗濯消去性(ΔE1)、漂白消去性(ΔE2)、粘度および書道液の適正を調べた。なお、以下の試験では墨汁組成物および学童用書道液を黒色染料水溶液と称する。 【0082】 [洗濯消去性の評価方法] 黒色染料水溶液を幅5cm、長さ6cmの寸法を有する木綿(サテン)白布に幅1cmになるようにスポイトで適量滴下し、一夜風乾し、水道水に5分間漬け置きした後、軽く水洗した。つづいて、水洗後の白布を洗濯石鹸水溶液(ライオン製固形石鹸0.03質量%水溶液)が収容され、底にスターラーが配置されたビーカ内に入れ、スターラーを1秒当たり5回転させる条件で60秒間回転、撹拌した後、水洗したものを試験片とした。この試験片と黒色染料水溶液を滴下しないブランクである木綿(サテン)白布の色差(ΔE1)を測定した。色差測定は、色差計(Minolta製商品名;CM-2600d)を使用した。 【0083】 なお、色差(ΔE1)が小さいほど色落ち性が良好であることを示す。 【0084】 [漂白消去性の評価方法] 洗濯消去性評価に用いた試験片を、花王株式会社製商品名;ハイター(衣料用漂白剤)0.24%溶液に5分間浸漬した後、水洗いしたものを第2試験片とした。この第2試験片と黒色染料水溶液を滴下しないブランクである木綿(サテン)白布の色差(ΔE2)を測定した。色差測定は、色差計(Minolta製商品名;CM-2600d)を使用した。 【0085】 なお、色差(ΔE2)が小さいほど色落ち性が良好であることを示す。 【0086】 [消去性の総合評価] 洗濯消去性評価のΔE1値および漂白消去性のΔE2値の合計が、 ・19を超えるものを“×”、 ・10?19のものを“○”、 ・10未満のものを“◎” と判断して評価した。 【0087】 [粘度測定方法] 黒色試験染料水溶液を20℃±0.5℃の恒温槽に10時間以上静置した後、粘度計(TOKIMEC社製商品名;ViscometerTV-20型)を用いて、M1ローター6回転/60秒で粘度を測定した。 【0088】 [書道液適正 目視判定] 5名のパネラーにより黒色試験染料水溶液を筆を用いてパルプ半紙に筆記し、運筆を調べると共に、筆記後の滲み、墨色、乾燥性を目視により調べた。 【0089】 運筆、筆記後の滲み、墨色、乾燥性の判断基準は、以下のとおりである。 【0090】 ・運筆:市販学童用書道液と比較し、運筆が重いか否か ・滲み:市販学童用書道液と比べ、大きく滲んで文字が判読困難ではないか、 ・墨色:市販学童用書道液と比べ、乾燥後の筆記線を観察して筆の跡が残らないか ・乾燥性:市販学童用書道液と比べ、液の乾燥時間が極端に悪くないか、 このような運筆、筆記後の滲み、墨色、乾燥性を書道液適正とし、5名のパネラー中、4名以上のパネラーが書道液として適正であると判断した場合を“◎”、3名のパネラーが書道液として適正であると判断した場合を“○”、と評価した。 【0091】 [総合判定] 総合判定は、洗濯消去性試験、漂白消去性試験および書道液適正の結果から全ての試験項目が十分に良好である場合を“◎”(合格)、3つの項目が良好であるものの、消去性の総合評価が“○”である場合を“○”(合格)、全ての試験項目の中で1つでも不良である場合を×(不合格)とした。 【0092】 これらの結果を下記表2、表3に示す。 【表2】 【0093】 【表3】 【0094】 前記表2、表3から明らかなように実施例4?19の墨汁組成物は、市販の学童用書道液(比較例5)に比べて洗濯消去性、漂白消去性が格段に優れていることがわかる。中でも、保湿剤を配合した実施例5?19の墨汁組成物は保湿剤無配合の実施例4の墨汁組成物に比べて洗濯消去性がより優れていることがわかる。 【0095】 また、表2に示すように保湿剤である一定量のマルチトールに加えて滲み改善剤を配合した実施例6?11の墨汁組成物の中で、滲み改善剤として天然ガム(キサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガム)を選んだ実施例6,8,9の墨汁組成物は滲み改善剤として水溶性合成樹脂(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)を選んだ実施例10,11の墨汁組成物に比べたより一層優れた洗濯消去性および漂白消去性を有することがわかる。すなわち、滲み改善剤の中で天然ガムの配合は同じ滲み改善剤である水溶性合成樹脂(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)に比べて洗濯消去性および漂白消去性の改善にも寄与することがわかる。 【0096】 なお、2表に示す保湿剤としてマルチトール、滲み改善剤としてキサンタンガムを選び、かつキサンタンガムの量を変えて配合した実施例6,7の墨汁組成物を比較すると、両者は漂白消去性に関して優れた性質を有するものの、キサンタンガムの配合量が1質量%を超える(1.1質量%)実施例7の墨汁組成物はキサンタンガムの配合量が1質量%以下(0.05質量%)の実施例6の墨汁組成物に比べて洗濯消去の改善効果が低くなる。 【0097】 前記表3に示すように保湿剤としてマルチトール、滲み改善剤としてキサンタンガムを選び、かつマルチトールの量を変えて配合した実施例12?14の墨汁組成物を比較すると、マルチトールの配合量に比例して洗濯消去および漂白消去の改善効果が高くなることがわかる。特に、マルチトールの配合量が5質量%以上の実施例13,14の墨汁組成物においてその洗濯消去および漂白消去の改善効果が顕著であることがわかる。 【0098】 また、前記表3に示すように保湿剤としてソルビトール、滲み改善剤としてキサンタンガムを選び、かつソルビトールの量を変えて配合した実施例15,16の墨汁組成物を比較すると、ソルビトールの配合量が多い実施例16の墨汁組成物はその配合量が少ない実施例15の墨汁組成物に比べて漂白消去の改善効果が高くなるものの、洗濯消去の改善効果はソルビトールの配合量が少ない実施例15の墨汁組成物の方が高くなることがわかる。 【0099】 さらに、前記表3に示すように保湿剤として水飴、滲み改善剤としてキサンタンガムを選び、かつ水飴の量を変えて配合した実施例17,18の墨汁組成物を比較すると、漂白消去の改善効果は水飴の配合量を多くしても目に見えて高くならず、一方、洗濯消去の改善効果は水飴の配合量が少ない実施例17の墨汁組成物の方が高くなることがわかる。 【0100】 なお、前記表3に示すように保湿剤としてエチレングリコール、滲み改善剤としてキサンタンガムを選んで配合した実施例19の墨汁組成物は保湿剤としてマルチトール、ソルビトールのようなデンプン糖類、水飴を選んだ実施例12?18に比べて洗濯消去および漂白消去の改善効果が劣ることがわかる。すなわち、保湿剤の中でデンプン糖類または砂糖の配合は同じ保湿剤であるエチレングリコールに比べて洗濯消去性および漂白消去性の改善にも寄与していることがわかる。 【0101】 以上の表2、表3から保湿剤としてデンプン糖類または砂糖を選び、滲み改善剤として天然ガム類を選ぶことが特定の三原色の酸性染料との組合せで水消去性、墨汁(書道液)の最適化の点で有効であることがわかる。 【0102】 特に、保湿剤としてマルチトールまたはソルビトールを選び、滲み改善剤としてキサンタンガムを選ぶと共に、それらを特定の量で配合することによって、特定の三原色の酸性染料との組合せで顕著に優れた水消去性、墨汁(書道液)の最適化を発揮できることがわかる。 【0103】 なお、実施例4?19では酸性染料の組合せを表1の実施例2を選び、これに防腐剤、消泡剤、保湿剤、滲み改善剤を配合して墨汁組成物を調製したが、酸性染料の組合せを表1の実施例1,3を選び、これに防腐剤、消泡剤、保湿剤、滲み改善剤を配合して墨汁組成物を調製しても、実施例4?19と同様な水消去性、書道液の適正化を図ることが可能であった。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 酸性染料および水媒体を含み、 前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種以上からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合されることを特徴とする水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項2】 酸性染料および水媒体を含み、 前記酸性染料は、構造中にスルホン酸塩基を2個以上有し、アゾ系(ただし、芳香族環がアルキル基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシル基で置換されているものを除く)またはトリフェニルメタン系の赤色系染料、黄色系染料および青色系染料を含む3種からなり、かつこれらの染料が赤色系染料28?65質量%、黄色系染料13?46質量%および青色系染料15?38質量%の割合で配合され、 前記酸性染料のスルホン酸塩基がナトリウム塩であり、 前記赤色系染料が下記構造式(D)で表され、前記黄色系染料が下記構造式(B)で表され、かつ前記青色系染料が下記構造式(E)で表されることを特徴とする繊維集合体に対する水消去性を有する水消去性書画用墨汁組成物。 【化1】 【化2】 【化3】 【請求項3】 前記黄色系染料はアゾ系の食用黄色4号(タートラジン、C.I.19140)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)から選ばれ、前記赤色系染料はアゾ系の食用赤色2号(アマランス、C.I.16185)、食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)から選ばれ、前記青色系染料はトリフェニルメタン系の食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.42090)であることを特徴とする請求項1記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項4】 デンプン糖類および砂糖から選ばれる少なくとも1つの保湿剤および/または天然ガム類からなる滲み改善剤がさらに含有されることを特徴とする請求項1または3記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項5】 前記デンプン糖類がマルチトール、ソルビトールおよび水飴の群から選択される1種または2種以上である請求項4記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項6】 前記天然ガム類がキサンタンガム、アラビアガムおよびローカストビーンガムの群から選択される1種または2種以上である請求項4記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項7】 アゾ系の食用赤色2号(アマランス、C.I.16185)、食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する赤色染料29?60質量%と、アゾ系の食用黄色4号(タートラジン、C.I.19140)、食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)から選ばれる構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する黄色系染料13?45質量%と、トリフェニルメタン系の食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.42090)である構造中にスルホン酸塩基を2個以上有する青色系染料17?38質量%との割合で配合される酸性染料1?40質量%; デンプン糖類または砂糖5?40質量%; 天然ガム類0.01?1質量%;および 残部が実質的に水媒体; の組成を有し、粘度が1?100mPa・s/20℃の範囲であることを特徴とする水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項8】 添加剤として防腐剤および泡消剤をさらに含有することを特徴とする請求項7記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項9】 前記黄色系染料はアゾ系の食用黄色5号(サンセットイエローFCF、C.I.15985)、前記赤色系染料はアゾ系の食用赤色102号(ニューコクシン、C.I.16255)、前記青色系染料はトリフェニルメタン系の食用青色1号(ブリリアントブルーFCF、C.I.42090)であることを特徴とする請求項2記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項10】 デンプン糖類および砂糖から選ばれる少なくとも1つの保湿剤および/または天然ガム類からなる滲み改善剤がさらに含有されることを特徴とする請求項2または9記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項11】 前記デンプン糖類がマルチトール、ソルビトールおよび水飴の群から選択される1種または2種以上である請求項10記載の水消去性書画用墨汁組成物。 【請求項12】 前記天然ガム類がキサンタンガム、アラビアガムおよびローカストビーンガムの群から選択される1種または2種以上である請求項10記載の水消去性書画用墨汁組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2013-07-03 |
出願番号 | 特願2006-353111(P2006-353111) |
審決分類 |
P
1
41・
853-
Y
(C09D)
P 1 41・ 851- Y (C09D) P 1 41・ 857- Y (C09D) P 1 41・ 856- Y (C09D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 桜田 政美 |
特許庁審判長 |
新居田 知生 |
特許庁審判官 |
松浦 新司 星野 紹英 |
登録日 | 2009-12-18 |
登録番号 | 特許第4426564号(P4426564) |
発明の名称 | 水消去性書画用墨汁組成物 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 鯵坂 和浩 |
代理人 | 岡崎 士朗 |
代理人 | 坂西 俊明 |
代理人 | 岡崎 士朗 |
代理人 | 黒川 朋也 |
代理人 | 中塚 岳 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 坂西 俊明 |
代理人 | 岡崎 士朗 |
代理人 | 中塚 岳 |
代理人 | 尾関 孝彰 |
代理人 | 鰺坂 和浩 |
代理人 | 黒川 朋也 |
代理人 | 中塚 岳 |
代理人 | 塚原 朋一 |
代理人 | 坂西 俊明 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 鰺坂 和浩 |
代理人 | 黒川 朋也 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 尾関 孝彰 |
代理人 | 尾関 孝彰 |
代理人 | 塚原 朋一 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 塚原 朋一 |