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審決分類 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  G09F
審判 全部無効 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  G09F
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G09F
審判 全部無効 発明同一  G09F
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G09F
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  G09F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G09F
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  G09F
審判 全部無効 2項進歩性  G09F
審判 全部無効 特174条1項  G09F
管理番号 1278000
審判番号 無効2011-800065  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-04-18 
確定日 2013-07-08 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4353660号「アクティブマトリクス型表示装置」の特許無効審判事件についてされた平成23年12月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成24年(行ケ)第10018号平成24年10月10日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許は、平成13年7月27日に出願された特願2001-228043号に係り、平成21年6月15日付け手続補正によって補正された願書に添付された明細書及び特許請求の範囲並びに図面の内容について、特許第4353660号として平成21年8月7日に設定登録されたものである。
本件特許無効審判事件は、請求人 シャープ株式会社(以下単に「請求人」という。)が、「本件特許の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効とする。審判請求費用は被請求人の負担とするとの審決を求める。」として、平成23年4月18日に請求したものであって、当該審判請求後の手続は以下のとおりである。

平成23年 7月15日 答弁書、訂正請求書
平成23年 8月25日 弁駁書
平成23年10月28日 答弁書(第2回)
平成23年10月28日 請求人 口頭審理陳述要領書
平成23年10月28日 被請求人 口頭審理陳述要領書
平成23年11月11日 第1回口頭審理
平成23年12月21日 第1次審決
平成24年 2月 6日 第1次審決のうち、「平成23年7月15日付け訂正請求において、特許請求の範囲についてする訂正のうち、請求項2(請求項1の訂正に起因するもの)の訂正を認める。特許第4353660号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との部分が確定
平成24年10月10日 第1次審決のうち、請求項1,3ないし6に係る発明についての特許を無効とする。」との部分を取り消すとの判決(知財高裁 平成24年(行ケ)第10018号)
平成25年 3月22日 本件上告を棄却する、本件を上告審として受理しないとの決定(最高裁 平成25年(行ツ)第9号、平成25年(行ヒ)第6号)

平成25年 4月12日 請求人 上申書


第2 平成23年7月15日付け訂正請求について
平成23年7月15日付け訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の適否について、以下に検討する。

1 本件訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件特許の願書に添付した明細書について、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。

(1)【請求項1】について、訂正前の、
「前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続される画素電極」
を、
「前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続され、液晶を駆動する画素電極」
と訂正する。

(2)【請求項1】について、訂正前の、
「前記アクティブマトリクス型表示装置は、赤、緑、青の三原色カラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置」

「前記アクティブマトリクス型表示装置は、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置」
と訂正する。

(3)【請求項1】において、
「前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではなく、」
という発明特定事項を追加する。

(4)【請求項1】について、訂正前の、
「前記補助容量連結ラインは、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され、」

「前記補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つに配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され、」
と訂正する。

(5)【請求項1】において、
「(補助容量連結ラインは、・・・)かつ画素電極と重畳する」
という発明特定事項を追加する。

(6)特許明細書の段落【0005】について、訂正前の、
「伝達するている。」

「伝達する。」
と訂正する。

(7)特許明細書の段落【0022】について、訂正前の、
「電気的に接続されている、TFT13に信号電圧を伝達する。」

「電気的に接続され、TFT13に信号電圧を伝達する。」
と訂正する。

(8)特許明細書の段落【0022】について、訂正前の「補助容量15は、TFT13の半導体層13sから延びてに一体化して形成された補助容量電極15a及びと、補助容量ライン11の幅を広げてに一体化して連結された補助容量電極15bとからなる容量であり、画素電極14とともにと共に供給された信号電圧を保持する。」

「補助容量15は、TFT13の半導体層13sから延びて一体化して形成された補助容量電極15aと、補助容量ライン11の幅を広げて一体化して連結された補助容量電極15bとからなる容量であり、画素電極14とともにと共に供給された信号電圧を保持する。」
と訂正する。

(9)特許明細書の段落【0023】について、訂正前の「TTF13のに接続された」、「次に選択されたされる」をそれぞれ、「TFT13に接続された」、「次に選択される」と訂正する。

(10)特許明細書の段落【0025】について、訂正前の「。ない一方で、」、「補助容量連結ライン1116」をそれぞれ、「。一方で、」、「補助容量連結ライン16」と訂正する。

(11)特許明細書の段落【0028】について、訂正前の、
「表示する色でありを、Rが(赤)、Gが(緑)、Bが(青)である示している。」

「表示する色であり、Rが(赤)、Gが(緑)、Bが(青)である」
と訂正する。

(12)特許明細書の段落【0028】について、訂正前の、
「なお、本実施形態において、画素領域12では、各画素領域12は、各画素領域12に対応して形成された図示しない赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタにより」

「なお、本実施形態において、各画素領域12は、各画素領域12に対応して形成された図示しない赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタにより」
と訂正する。

(13)特許明細書の段落【0028】について、訂正前の、
「いずれかの色を表示し、するストライプ状配列である。」

「いずれかの色を表示するストライプ状配列である。」
と訂正する。

(14)特許明細書の段落【0029】について、訂正前の、
「本実施形態の特徴的な点は、第1の実施形態とは異なり、各列に補助容量連結ライン16は配置されておらず、3本につき1本のドレインライン10の3本につき1本の隣に補助容量連結ライン16が配置され、」

「本実施形態の特徴的な点は、第1の実施形態とは異なり、各列に補助容量連結ライン16は配置されておらず、ドレインライン10の3本につき1本の隣に補助容量連結ライン16が配置され、」
と訂正する。

(15)特許明細書の段落【0035】について、訂正前の、
「本実施形態ではの特徴的な点は、」

「本実施形態での特徴的な点は、」
と訂正する。

(16)特許明細書の段落【0038】について、訂正前の「、、」を「、」に訂正する。

2 本件訂正請求の訂正の目的、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記(1)?(5)の訂正は、請求項1において、「画素電極」に関して、「液晶を駆動する」ものに限定し、「アクティブマトリクス型表示装置」の「赤、緑、青の三原色カラー表示を行う」ための手段に関して、「赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行う」と限定し、「補助容量」の電極構造に関して、「補助容量ラインに連結された補助容量電極と、スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」いと限定し、「補助容量連結ライン」の形成箇所に関して、「画素領域の列の3つにつき1つに配列され」ると限定し、「補助容量連結ライン」の配置に関して、「画素電極と重畳する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

上記(6)?(16)の訂正はいずれも、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、上記(1)?(16)の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 本件訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き各号に列挙された事項を目的としており、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。

よって、本件訂正請求による訂正を認め、以下、訂正後の請求項1,3?6に係る発明(以下「訂正特許発明1」,「訂正特許発明3」?「訂正特許発明6」という。)について、請求人の主張する無効理由を検討する。

なお、以下では、訂正後の全文訂正明細書を「訂正特許明細書」という。


第3 訂正特許発明
訂正特許発明1,3?6は、訂正特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,3?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
行方向に複数形成され、ゲート電圧を伝達するゲートラインと、列方向に複数形成され、信号電圧を伝達するドレインラインと、行方向に複数形成される補助容量ラインと、前記ゲートライン及び前記ドレインラインの交点に対応して配置されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続され、液晶を駆動する画素電極と、前記補助容量ラインに連結され、前記画素電極と共に信号電圧を保持する補助容量とを有するアクティブマトリクス型表示装置において、
前記補助容量ラインは、前記画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成される補助容量連結ラインによって、他の前記補助容量ラインと電気的に接続され、
前記アクティブマトリクス型表示装置は、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置であり、
前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではなく、
前記補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つ配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され、かつ、画素電極と重畳する
ことを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置。」
「【請求項3】
前記補助容量連結ラインは、全ての前記補助容量ラインに接続されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項4】
1本の前記補助容量ラインは少なくとも1本の前記補助容量連結ラインに接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項5】
前記補助容量ラインは、前記ゲートラインと同じ層に形成され、前記補助容量連結ラインは、前記ドレインラインと同じ層に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項6】
前記表示領域の外部に、前記補助容量ラインの端部に電気的に接続された補助容量バスラインを有し、前記補助容量連結ラインは、前記補助容量バスラインに電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアクティブマトリクス型表示装置。」


第4 請求人の主張する無効理由
1 無効理由1(訂正特許発明1,3?6について)
本件特許について、請求人が主張する無効理由1は、
「平成21年6月15日付け手続補正は、当初明細書等の記載の範囲を超える不適法なものであるから、本件特許のうち請求項1,3?6に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした出願についてされたものであり、同法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきものである。」
というものであって、概略、以下のとおり主張している。

(1)訂正特許発明1,3?6は、「補助容量連結ラインは・・・特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され」るとする発明特定事項を含むものである。
しかしながら、緑以外の赤や青を含む「特定の色を表示する画素電極を有する画素領域」に「補助容量連結ライン」を形成することは当初明細書等に記載がなく、訂正特許発明1,3?6は、当初明細書等に記載されていない事項を含むものとなっている。

(2)当初明細書の段落【0027】?【0032】および【0041】の記載は、全て『緑(G)を表示する画素領域12にのみ、補助容量連結ライン16を選択的に配置した』ものであって、「緑(G)」以外の「赤(R)」や「青(B)」を表示する画素領域に補助容量連結ライン16を選択的に配置することは記載がない。さらに、「赤(R)」や「青(B)」を表示する画素領域に補助容量連結ライン16を選択的に配置した場合、段落【0041】に記載の『緑を表示する画素領域にのみ補助容量連結ラインを選択的に形成して開口率を下げることで、緑の輝度を他の2色より低くすることにより、他の2色に比べて緑に対する感度が高い人間の目に自然なカラーバランスで認識されるカラー表示装置を提供することができる』という効果を奏することはできないから、補助容量連結ラインを配置する表示領域として、「赤(R)」や「青(B)」を表示する画素領域を除外している。

2 無効理由2(訂正特許発明1,3?6について)
本件特許について、請求人が主張する無効理由2は、
「本件特許のうち請求項1,3?6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。」
というものであって、概略、以下のとおり主張している。

訂正特許発明1,3?6は、当初明細書等に記載されていない事項を含むものとなっている。他方、訂正特許明細書の発明の詳細な説明や図面は、実質的な補正がなされておらず、当初明細書等の記載と実質的に同一の内容のものである。
そうすると、本件発明1,3?6は、訂正特許明細書の記載に裏付けられていない事項を含むものとなるから、本件特許は、発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載していることとなる。

3 無効理由3(訂正特許発明1?6について)
本件特許について、請求人が主張する無効理由3は、
「本件特許のうち請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」
というものであって、概略以下のとおり主張している。

(1)訂正特許発明1?6は、刊行物発明1(甲第4号証)、刊行物2(甲第5号証)及び刊行物3(甲第6号証)に開示された事項並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本件特許は、特許法第123号第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

(1-1)訂正特許発明1,3?6と刊行物発明1とは、訂正特許発明1は「補助容量連結ラインは・・・画素電極と重畳している」とし、「補助容量は、補助容量ラインに連結された補助容量電極と、スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」いとし、「アクティブマトリクス型表示装置は、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置であ」るとし、「補助容量連結ラインは、画素領域の列の3つにつき1つ配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され」るとするのに対して、刊行物発明1はそれらのように構成していない点で相違する。
しかし、それらの構成はいずれも、周知の技術に基づいて、当業者が容易に想到し得る事項である。
よって、訂正特許発明1,3?6は、刊行物発明1、刊行物2及び刊行物3に開示された事項並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(1-2)訂正特許発明2と刊行物発明1とを対比すると、上記相違点に加え、「前記特定の色は緑である」点において相違する。
当該相違点につき検討すると、刊行物1の記載に接した当業者であれば、間引きの単位を「3画素」と設定することは、通常試みる程度のことと認められ、格別の推考力を要することではない。その場合、補助容量連結ラインを配置する画素は、赤、緑,青のいずれかの色の画素に該当することから、そのいずれを選択するのが適切であるかを検討することは、当業者であれば通常試みる程度のことであるい。その際に、緑の画素が他の2色の画素に比べてカラーバランス等の面で優位性を持つことは、自ずと見出し得るものである。
よって、訂正特許発明2は、刊行物発明1、刊行物2及び刊行物3に開示された事項並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 無効理由4(訂正特許発明1,3?6について)
本件特許について、請求人が主張する無効理由4は、
「本件特許のうち請求項1,3?6に係る特許は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。」
というものであって、概略、以下のとおり主張している。

訂正特許発明1,3?6は、いずれも、特願2000-96413号(特開2001-281690号公報(甲第7号証))の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が先願明細書に記載された発明をした者と同一ではなく、また本件出願の出願時点において、その出願人が先願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

5 請求人の提示した証拠方法
請求人が提示した証拠方法は以下のとおりである。

甲第1号証:特許第4353660号公報(本件特許公報)、
甲第2号証:特開2003-43948号公報(本件出願の公開公報)、
甲第3号証の1:平成21年4月8日付け拒絶理由通知書、
甲第3号証の2:平成21年6月15日付け意見書、
甲第3号証の3:平成21年6月15日付け手続補正書、
甲第4号証:特開平5-241188号公報(無効理由3)、
甲第5号証:特開平10-239699号公報(無効理由3)、
甲第6号証:特開平9-160075号公報(無効理由3)、
甲第7号証:特開2001-281690号公報(無効理由4)、
甲第8号証:平成23年(ワ)第2417号事件における平成23年3月2日付け原告第1準備書面、
甲第9号証:特開平10-213812号公報(無効理由3,4)、
甲第10号証:特開平10-232412号公報(無効理由3,4)、
甲第11号証:特開平9-179127号公報(無効理由3,4)、
甲第12号証:特開平9-96837号公報(無効理由3,4)、
甲第13号証:特開昭62-10619号公報(無効理由3,4)、
甲第14号証:特開平6-35004号公報(無効理由3,4)、
甲第15号証:鷲塚諫監修・シャープ株式会社液晶事業本部著『液晶ディスプレイ その概要と応用市場』株式会社ラジオ技術社・平成3年9月1日発行(無効理由4)


第5 被請求人の主張
1 無効理由1について
請求人の主張する無効理由1について、被請求人は、概略、以下のとおり主張している。

(1)訂正特許発明1,3?6における、「補助容量連結ラインは・・・特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され」るとする発明特定事項は、本件特許の願書に最初に添付した明細書に記載された事項であり、請求人の主張は誤りである。
本件特許の当初明細書において、段落【0027】から第2の実施形態の説明が記載されており、その段落【0028】、【0029】の記載は、何色の画素領域の列に補助容量連結ライン16を設けるとは記載せずに、赤の画素領域の列、緑の画素領域の列、青の画素領域の列が繰り返し配置されたストライプ状配列における、その画素領域の列の3つにつき1つ補助容量連結ライン16を配置するとしており、これは赤、または緑、または青のいずれか特定の色の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置するとの記載である。これらの段落では、赤又は青の画素領域のみに補助容量連結ラインを設けるとの文言はないが、同様に緑の画素領域のみに補助容量連結ラインを設けるとの文言も無く、いずれかの色(特定の色)の画素領域に補助容量連結ラインを設けることを記載している。赤の画素領域の列、緑の画素領域の列、青の画素領域の列が繰り返し配置されたストライプ状配列における、その画素領域の列の3つにつき1つ補助容量連結ラインを配置するという事項は、そのまま特定の色の画素領域に補助容量連結ラインを配置することを意味しており、それ以外の解釈は到底考えられない。

(2)段落【0041】は、「赤、緑、青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置において、緑を表示する画素領域にのみ補助容量連結ラインを選択的に形成して」と記載されているとおり、特定の色が緑に限定された請求項2の発明の効果を記載しているものである。請求項2は出願当初の旧請求項8で、甲3の2の意見書でも、「特定の色」を「緑」に「限定」したのは旧請求項8であり、補正後の新請求項1にとっては「緑」は「特定の色」の「例示」であることを明記している。したがって、段落【0041】の存在によって、請求項1の発明が、「緑」の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置した例に限定されることはない。

(3)図3においては、緑の画素領域に補助容量連結ラインを配置した例を示しているが、複数の例がある場合においてその中の1つだけを取り上げて図示するのは特許出願の明細書、図面を作成する場合の常套手段であり、段落【0032】で緑の画素領域に補助容量連結ラインを配置した例を示す都合上、その例が図示されただけである。このような、図3の記載をもって、段落【0028】、【0029】の記載が緑に限定され、赤又は青の記載がないということにはならない。
そして、段落【0028】、【0029】に続く段落【0030】では、やはり何色かを限定しないまま、第2の実施形態における2つの効果を説明している。つまり、段落【0030】には、「本発明は、全ての画素領域に補助容量連結ラインが配置されている必要はなく、第1の実施形態より補助容量連結ライン補助容量連結ラインの本数が少なくても、近くに配置された補助容量連結ラインを介して他の補助容量連結ラインから電荷を補い、信号電圧を矯正することができる。」と記載され、補助容量連結ラインを少なくすることによっても第1の実施形態と同様の1つめの効果を奏することを述べている。さらに、「また、本実施形態では、第1の実施形態よりも補助容量連結ラインが少ないため、補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができる。」と記載され、補助容量連結ラインを少なくすることによって、開口率の低下を抑えることができるという2つめの効果を述べている。このように、段落【0030】には、段落【0028】、【0029】に記載された、特定の色の画素領域のみに補助容量連結ラインを配置した構成に対する効果が記載されている。

(4)段落【0027】?【0030】には、特定の色を表示する画素領域にのみ選択的に補助容量連結ラインを形成することによる効果として、上述した2つの効果が記載されているだけで、表示ムラの課題の解決については、当初明細書等には明記されていないが、段落【0027】?【0030】の記載から把握できる。
表示ムラは、補助容量連結ラインを赤、青、緑の三原色のストライプ状配列を無視して、無作為に配置することによって、また、規則的であったとしても、画素領域の列の3つにつき1つ以外の例えば、2つにつき1つや6つにつき1つ配置することによって生じる。
そして、段落【0027】?【0030】に記載のように、ストライプ状配列の画素領域の列の3つにつき1つ、即ち赤、緑、青のいずれかの色(特定の色)の画素領域にのみ選択的に補助容量連結ラインを配置する構成であれば、同じ色の画素の間で輝度差は変化せず、「表示ムラ」の発生は防止することができる。つまり、段落【0027】?【0030】に記載されている上記構成によって、当然に、上記「表示ムラ」を防止しており、緑を含め赤または青における表示ムラの課題の解決は、段落【0027】?【0030】の記載から把握できる。

(5)段落【0032】では、「従って、表示装置の使用者に開口率の低下を認識させることなく、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。そのため本実施形態は、表示領域の一部における開口率及び輝度の低下を利用して、良好なカラーバランスを得ることができる」という効果を述べている。段落【0032】の上記記載のうち、人間の緑に対する高い視覚特性によって、表示装置の使用者に開口率の低下を認識させないという部分が、緑特有の効果である。一方、「表示装置の使用者に開口率の低下を認識させない」という部分以外の、特に「表示領域の一部における開口率及び輝度の低下を利用して、良好なカラーバランスを得ることができる」の記載は、緑の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置した具体例について述べているが、緑ではない、特定の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置した場合についてもあてはまる内容である。
ここで、カラーバランスとは、画面全体の赤色と緑色と青色とのバランスであり、画面全体を見た場合の色合いのことを意味し、同じ色の画素領域間での局所的なバランスのことを意味していない。同じ色の画素領域間での局所的なバランスを失った状態が上記の「表示ムラ」である。この「表示ムラ」が生じていない状態においては、画面全体の色合いは、例えば画面全体の赤色や緑色や青色の輝度を一様に上げたり下げたりすることによって、調整することができる。
一方で、「表示ムラ」が生じている状態では、画面全体の赤色や緑色や青色の輝度を一様に上下させても、「表示ムラ」は解消できず、画面全体の色合いも調整できない。その調整をするには、表示ムラの原因となっている個別の画素毎に信号電圧等を調整する必要があり、その調整は非常に難しい。つまり、「良好なカラーバランス」とは、上述の「表示ムラ(同色の画素領域の中でのムラ)」が発生していないことによって、画面全体の色合い、つまりカラーバランスを所望のバランスに調整できる状態のことを意味する。
したがって、段落【0032】で、「良好なカラーバランスを得ることができる」とは、カラーバランスを所望のバランスに調整できる状態の「良好なカラーバランス」を得ることができるということを意味している。その効果を記載する前提としては、同じ色の画素領域間でのバランスについては、既に問題となっておらず、即ち、同じ色の画素領域間でのバランスが崩れた場合に生じる「表示ムラ」は、発生していないことを前提としている。
言い換えれば、緑の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置する構成及び効果を記載した段落【0031】、【0032】において「良好なカラーバランスを得ることができる」と記載されていることは、それより前に、同じ色の画素領域間でのバランスが崩れておらず、「表示ムラ」の発生という課題が解決されていることを当然の前提としている。しかも、同じ色の画素領域間での「表示ムラ」の問題の解決は、緑に特有の効果ではなく、特定の色の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置する、段落【0027】?【0030】に記載の基本的な構成によって解決される課題である。
以上のとおり、緑の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置した実施例について記載された「良好なカラーバランスを得ることができる」という効果の記載は、前提として、同じ色の画素領域間での「表示ムラ」がないことを意味しており、しかもそれは緑に特有の効果ではなく、特定の色の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置した、段落【0027】?【0030】に明記されている構成の効果でもある。つまり、表示ムラの課題の解決は段落【0032】の「良好なカラーバランスを得ることができる」との記載によっても示唆されている。

(6)段落【0032】の「良好なカラーバランスを得ることができる」という効果の記載が赤や青の場合にもあてはまることが、当業者にとって自明であることを説明する。
本件特許の出願以前から、カラーテレビには、映像(画質)調整機能として、カラーバランス(色合い)を調整する機能が搭載されていたり、カラーテレビの製造時に、信号電圧の変換比や、色毎のカラーフィルタの濃度や厚みを調整することで、カラーバランスを調整することが、ごく当然に行われていた。つまり、赤や緑や青の輝度を調整することで、カラーバランスの調整を行うことは、本件特許の出願当時は、技術常識であった。そうすると、そのような技術常識を有する当業者が、段落【0032】の記載を見れば、緑と同様、赤や青の一色を選択して補助容量連結ラインを形成した場合にも、カラーバランスを所望のバランスに調整できる状態の「良好なカラーバランス」を得ることができると考えるであろう。したがって、段落【0032】の「良好なカラーバランスを得ることができる」という効果の記載が赤や青の場合にもあてはまることが、当業者にとって自明である。それによって、赤や青の場合における表示ムラの課題の解決も自明である。

2 無効理由2について
請求人の主張する無効理由2について、被請求人は、概略、以下のとおり主張している。

請求人は、無効理由1での補正が新規事項の追加に該当することに基づき、請求項1に係る発明が、当初明細書に記載されていない事項を含むと主張しているが、上述のとおり、訂正前及び訂正後の請求項1が、当初明細書等に記載されていたことは明らかである。
従って、本件特許に無効理由2が存在しないことは明らかである。

3 無効理由3について
請求人の主張する無効理由2について、被請求人は、概略、以下のとおり主張している。

(1)刊行物1の記載を訂正特許発明1と比較すると、刊行物1には、訂正特許発明1の以下の構成が開示されていない。

《1》刊行物1において、接続電極(補助容量連結ラインに相当する)の配置箇所は、いずれも2つの隣接する画素の間隙部に設けるものとして記載されており、訂正特許発明1の「補助容量連結ラインは、画素電極と重畳している」との構成は開示も示唆もされていない。
《2》刊行物1において、蓄積容量(補助容量)は、画素電極と蓄積容量バスラインに接続された電極との間に形成されることが記載されており、本件訂正発明の「補助容量は、補助容量ラインに一体化して連結された補助容量電極と、スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではない」との構成は開示も示唆もされていない。
《3》刊行物1には、訂正特許発明1の「アクティブマトリクス型表示装置は、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置である」との構成は全く記載されていない。
《4》刊行物1には、訂正特許発明1の「補助容量連結ラインは、画素領域の列の3つにつき1つに配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され」との構成は開示も示唆もされていない。

(2)刊行物1には、容量結合に起因する画像のムラを防ぐために隣接する蓄積容量バスライン間を電気的に接続する接続部(接続電極)についての開示はあるが、画素部の光の透過特性に影響を与えないために、補助容量連結ラインに相当する接続部を画素電極の間に配置することになっている。
これに対し、訂正特許発明1は、補助容量連結ラインを画素電極と重畳させており、画素部の光の透過特性に影響が生じることを受け入れた上で、それによって生じる技術課題を解決するものである。
刊行物1では、接続部を画素電極間に配置することで、「画素部の光の透過特性に影響を与えないようにすると同時に、接続電極(71)と画素電極(41),(42)間の近接や重畳による寄生容量の発生を防いで」おり、わざわざ遮光性の接続部を画素電極と重畳するように配置することは、当業者であれば当然試みる程度のことではなく、阻害要因がある。
したがって、刊行物1は、補助容量連結ラインを画素電極に重畳させる訂正特許発明1の技術思想とは基本的に別の技術であり、訂正特許発明1は刊行物1から容易に想到できない。

(3)刊行物2は、上下画素の共通配線を列方向で網目用配線によって接続することで、静電容量を形成するための共通配線が、行方向及び列方向の両方向において互いに接続された網目状とすることを開示するのみであり、網目用配線は明らかに画素電極の間に形成されており、網目用配線を画素電極と重畳させることや数画素ごとに配置することについては、開示も示唆もされていないので、「補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つに配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成」を採用する理由がない。

(4)請求人は、訂正特許発明1の「補助容量連結ラインは、画素電極と重畳している」との構成は、甲第9号証、甲第10号証に示されるように周知の構成に過ぎず、格別の特徴といえるものではないと主張するが、上述のとおり、刊行物1では、光の透過特性や画素電極との間に生じる寄生容量を考慮して、接続部を画素電極間に配置するものであるから、刊行物1に甲9,甲10の公知文献を組み合わせることはできない。

(5)請求人は、訂正特許発明1の補助容量の構成が、甲9?12に示されるように周知の構成に過ぎないと主張しているが、訂正特許発明1は、それぞれの構成要件の有機的な結合に特徴があるので、刊行物1及び甲9?12のように訂正特許発明1の構成をバラバラに開示している公知文献をいくら集めても訂正特許発明1の進歩性は否定されない。

(6)以上のとおりであるから、訂正特許発明1は、刊行物1,2から容易に想到できたものではないことは明らかであり、訂正特許発明2?6は、訂正特許発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、訂正特許発明2?6に係る発明も刊行物1?3から容易に発明できたものではない。

4 無効理由4について
請求人の主張する無効理由4について、被請求人は、概略、以下のとおり主張している。

(1)先願には、以下の訂正特許発明1の構成が開示されていない。

《1》先願には、蓄積容量が画素電極30と蓄積容量バスライン26,28との間に形成されており、訂正特許発明1の「補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではなく」との構成は開示も示唆もされていない。
《2》先願には、訂正特許発明1の「アクティブマトリクス型表示装置は、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス形表示装置である」との構成は全く記載されていない。
《3》先願には、蓄積容量バスライン28を特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成することについては記載されていないから、訂正特許発明1の「補助容量連結ラインは、画素領域の列の3つにつき1つに配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され』との構成は開示も示唆もされていない。」

(2)先願発明では、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素において、蓄勢容量バスライン26の幅を太くしたり、保護膜34の膜厚を薄くしたりして、蓄積容量バスライン28が設けられた画素と蓄積容量の大きさが異ならないようにしている。
これに対して、訂正特許発明1では、特定の画素に画素電極と重畳する補助容量連結ラインを配置しても、画素電極と補助容量連結ラインの距離を充分離すことによって、補助容量を十分に小さくすることが可能である。
したがって、先願発明では、訂正特許発明1とは異なる方法で、画素間の補助容量が異ならないようにしており、訂正特許発明1の技術思想は認められない。

(3)先願発明には、3画素おきに蓄積容量バスライン28を設けることは開示されているが、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列したものであることは開示も示唆もされていないから、先願発明には、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列した上で、3画素おきに蓄積容量バスライン28を設けるという技術思想は開示されていない。

(4)以上のように、訂正特許発明1は先願発明と同一でも実質同一でもない。また、訂正特許発明3?6は、訂正特許発明1の発明特定事項のすべてを含むものであるから、先願発明と同一でも実質同一でもない。

5 被請求人の提示した証拠方法
被請求人の提示した証拠方法は 以下のとおりである。

乙第1号証:「カラーTFT液晶ディスプレイ」、216?219頁、1996年7月20日、共立出版株式会社発行


第6 当審の判断
1 無効理由1について
特許法第17条の2第3項に規定する補正の要件である「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」における「明細書又は図面に記載した事項」とは、当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものということができるから、訂正特許発明1,3?6に係る補正がこれに該当するか否か、以下に検討する。

(1)訂正特許発明1,3?6について
訂正特許発明1,3?6は、
「・・・赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置であり、
・・・補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つ配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され、かつ、画素電極と重畳する」
という発明特定事項を有するものであり、「特定の色」が「緑」に限定されず、「赤」、「青」も含まれるものであることは、請求人の主張(答弁書第9頁第14?16行「・・・段落【0041】の存在によって、請求項1の発明が、「緑」の画素領域にのみ補助容量連結ラインを配置した例に限定されることはない。」)からも明らかである。
そうすると、訂正特許発明1,3?6は、当該発明特定事項から、
『補助容量連結ラインは、赤、緑、青の三原色のうちの緑に限定されない特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成される、カラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置』
という技術的事項(以下、「技術的事項A」という。)を含む発明であることが把握できる。

(2)平成21年6月15日付け手続補正書
平成21年6月15日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、明細書の特許請求の範囲を補正するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項8には、赤、緑、青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス形表示装置において、補助容量連結ラインを、緑を表示する画素電極を有する画素領域のみに形成することについての記載はあるものの、緑に限定されない「特定の色を表示する画素電極を有する画素領域のみに選択的に形成する」という記載はないから、本件補正は、前述の技術的事項Aを導入する補正であるといえる。
そして、前記「特定の色を表示する画素電極を有する画素領域のみに選択的に形成する」という事項について、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に直接的な記載を認めることができないことは、請求人、被請求人ともに首肯することであるから、以下、技術的事項Aが、当初明細書等の記載から把握できる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものか否かについて検討する。

(3)当初明細書等の記載事項
当初明細書等には、次の記載がある。
(3a)「【0027】次に、第2の実施形態について図3及び図4を用いて説明する。図3は、第2の実施形態にかかるアクティブマトリクス型カラー液晶表示装置の平面図であり、図4は、その等価回路図である。図3は、配線をわかりやすくするため、図1に比べ、画素領域の構成を省略しているが、これは図1と同様である。その他の構成も、第1の実施形態と同じものについては、図に同じ番号を付し、説明を省略している。
【0028】アクティブマトリクス型液晶表示装置1は、ビデオデータライン2R、2G、2Bと、ゲートドライバ3及びドレインドライバ4と、補助容量バスライン5と、表示領域6で構成されており、ドレインドライバ4は、シフトレジスタ7及び列選択スイッチ8で構成され、表示領域6は、ゲートライン9、ドレインライン10、補助容量ライン11及び画素領域12で構成されていることは、第1の実施形態と同様である。図3に示されるR、G、Bは、それぞれの列の画素領域12が表示する色でありを、Rが(赤)、Gが(緑)、Bが(青)である示している。なお、本実施形態において、画素領域12では、各画素領域12は、各画素領域12に対応して形成された図示しない赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタにより、列単位で赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色を表示し、するストライプ状配列である。
【0029】本実施形態の特徴的な点は、第1の実施形態とは異なり、各列に補助容量連結ライン16は配置されておらず、3本につき1本のドレインライン10の3本につき1本の隣に補助容量連結ライン16が配置され、コンタクトを介して全ての補助容量ライン11を連結している点である。
【0030】本発明は、全ての画素領域に補助容量連結ラインが配置されている必要はなく、第1の実施形態より補助容量連結ラインの本数が少なくても、近くに配置された補助容量連結ラインを介して他の補助容量ラインから電荷を補い、信号電圧を矯正することができる。また、本実施形態では、第1の実施形態よりも補助容量連結ラインが少ないため、補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができる。
【0031】ところで、赤(R)、緑(G)、青(B)という光の3原色のうち、人間の目は緑に対する感度が特に高く、他の2色に対する感度は低い。即ち、緑の輝度を他の2色に比べて多少低くしても、人間の目には暗いと認識されない。また、補助容量連結ライン16が形成され、画素電極14の開口率が低下すると、その画素領域12で表示される部分の輝度が低下してしまう。
【0032】従って、図3に示すように、本実施形態では、緑(G)を表示する画素領域12にのみ、補助容量連結ライン16を選択的に配置した。これによって、緑(G)の輝度のみが低下するが、赤(R)及び青(B)の輝度は低下しない。従って、表示装置の使用者に開口率の低下を認識させることなく、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。そのため本実施形態は、表示領域の一部における開口率及び輝度の低下を利用して、良好なカラーバランスを得ることができるため、透過型の表示装置であっても、本発明をより効果的に実施することができるものである。」

(3b)「【0041】さらに、赤、緑、青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置において、緑を表示する画素領域にのみ補助容量連結ラインを選択的に形成して開口率を下げることで、緑の輝度を他の2色より低くすることにより、他の2色に比べて緑に対する感度が高い人間の目に自然なカラーバランスで認識されるカラー表示装置を提供することができる。」

(3c)「



(3d)「



(4)検討・判断
まず、当初明細書等の段落【0027】、【0028】、図3及び図4の記載によれば、本件特許に係る発明の第2の実施形態として、赤、緑、青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型カラー液晶表示装置であって、各画素領域12が、列単位で赤、緑、青のいずれかの色を表示するストライプ状配列となっており、赤、緑、青の各色が3列おきに繰り返し配置されているものが記載されていることが認められる。
次に、段落【0029】及び図3には、第2の実施形態は、各列に補助容量連結ライン16を配置した第1の実施形態の変形例であって、ドレインライン10の3本につき1本の補助容量連結ライン16を配置するものであることが記載され、また、段落【0030】には、第2の実施形態は、第1の実施形態より補助容量連結ラインの本数が少なくても、近くに配置された補助容量連結ラインを介して他の補助容量ラインから電荷を補い、信号電圧を矯正することができ、さらに、第1の実施形態よりも補助容量連結ラインが少ないため、補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができるという効果を奏するものであることが記載されているといえる。
そうすると、第2の実施形態は、赤、緑、青の各色が3列おきに繰り返し配置されている画素領域の3列につき1列に補助容量連結ラインを設けることによって、上記効果が得られるものであって、その効果は、補助容量連結ラインを赤、緑、青のいずれの画素領域の列に設けても得られるものであるということができる。そして、補助容量連結ラインによる開口率の低下が問題となっていることから、透過型の表示装置について記載したものであると認めることができる。
以上より、当初明細書等には、補助容量連結ラインが、赤、緑、青の三原色のうちの緑に限定されない特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成される、カラー表示を行う透過型のアクティブマトリクス型表示装置、すなわち、技術的事項Aが記載されているものと認められる。したがって、本件補正によって導入された技術的事項Aは、当初明細書等の記載から把握できる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。

(5)請求人の主張について
請求人は、当初明細書の段落【0027】?【0032】及び【0041】の記載は、すべて「緑(G)を表示する画素領域12にのみ、補助容量連結ライン16を選択的に配置した」ものであって、「緑(G)」以外の「赤(R)」や「青(B)」を表示する画素領域に補助容量連結ライン16を選択的に配置することは記載がない、「赤(R)」や「青(B)」を表示する画素領域に補助容量連結ライン16を選択的に配置した場合には、段落【0041】に記載の「緑を表示する画素領域にのみ補助容量連結ラインを選択的に形成して開口率を下げることで、緑の輝度を他の2色より低くすることにより、他の2色に比べて緑に対する感度が高い人間の目に自然なカラーバランスで認識されるカラー表示装置を提供することができる」という効果を奏することはできないから、補助容量連結ライン16を配置する表示領域として、「赤(R)」や「青(B)」を表示する画素領域を除外しているものであると主張する。
確かに、当初明細書等の段落【0031】、【0032】及び【0041】には、赤、緑、青のうち人間の目には緑に対する感度が特に高く、他の2色に対する感度は低いため、緑の輝度を他の2色に比べて多少低くしても、人間の目には暗いと認識されないこと、また、補助容量連結ライン16が形成され、画素電極14の開口率が低下すると、その画素領域12で表示される部分の輝度が低下してしまうことから、緑を表示する画素領域にのみ補助容量連結ラインを選択的に配置して開口率を下げることで、緑の輝度を他の2色より低くすることにより、他の2色に比べて緑に対する感度が高い人間の目に自然なカラーバランスで認識されるカラー表示装置を提供することができるという効果を奏することが記載されている。
しかし、上記のとおり、当初明細書等の段落【0028】?【0030】、図2及び図3の記載から、第2の実施形態では、赤、緑、青の各色が3列おきに繰り返し配置されている画素領域の3列につき1列に補助容量連結ラインを設けることによって、第1の実施形態より補助容量連結ラインの本数が少なくても、信号電圧を矯正することができ、また、第1の実施形態よりも補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができるという効果(以下「任意の色の効果」という。)を奏するものであり、その効果は、補助容量連結ラインを赤、緑、青のいずれの画素領域の列に設けても得られることは明らかであるところ、その次の段落【0031】は、最初に「ところで、・・・」で始まっており、話題が切り替わっているから、段落【0031】、【0032】及び【0042】には、【0028】?【0030】の記載を受けて、赤、緑、青のうち、特に緑を表示する画素領域のみに補助容量連結ラインを選択的に配置することで、上記任意の色の効果に加えて、さらに緑特有の効果を奏することが記載されているものと認められる。
したがって、当初明細書等の記載は、補助容量連結ライン16を選択的に配置する表示領域として、「赤(R)」や「青(B)」を表示する画素領域を除外しているとはいえない。よって、請求人の上記主張は採用することができない。

(6)無効理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正特許発明1,3?6に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものとすることはできないから、訂正特許発明1,3?6についての特許は、同法第123条第1項第1号の規定によっては、無効とすることはできない。

2 無効理由2について
前記のとおり、技術的事項Aは当初明細書等から把握することができるところ、技術的事項Aは訂正特許明細書にも記載されている。
よって、訂正特許発明1,3?6は、発明の詳細な説明に記載したものである。

したがって、訂正特許発明1,3?6は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとすることはできないから、訂正特許発明1,3?6についての特許は、同法第123条第1項第4号の規定によっては、無効とすることはできない。

3 無効理由3について
〔訂正特許発明1,3?6〕
訂正特許発明1,3?6は、上記「第3 訂正特許発明」に記載したとおりのものである。

3-1 甲号各証の記載内容
上記無効理由3の根拠として挙げられた甲第4?6号証、甲第9?12号証には、概略以下の技術的事項が開示されている。

(1)甲第4号証(特開平5-241188号公報)の記載事項
甲第4号証には、「アクティブマトリクス形表示装置」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一方の絶縁基板上に設けられた複数のスキャンバスラインと、これと交叉するように設けられたデータバスラインと、マトリクス状に配置された画素電極と、前記バスラインと画素電極とに接続されたスイッチング素子と、画素電極に一方の端子が接続された電荷蓄積用の蓄積容量と、前記蓄積容量の他方の端子が接続されスキャンバスラインと平行に設けられた蓄積容量バスラインと、他方の絶縁基板上に設けた共通電極と、前記画素電極と共通電極に電気的に接続され、当該スイッチング素子によって制御される電気光学素子とからなるアクティブマトリクス形表示装置において、隣接する蓄積容量バスライン間を、画素マトリクスの形成領域内で少なくとも一箇所以上の接続部によって電気的に接続したことを特徴とするアクティブマトリクス形表示装置。
・・・(中略)・・・
【請求項4】 請求項1記載のアクティブマトリクス形表示装置において、蓄積容量バスライン間の接続部をスキャンバスラインと交叉する接続電極を用いて行い、当該交叉部の接続電極をスキャンバスライン電極層より基板面側に形成したことを特徴とするアクティブマトリクス形表示装置。」

(1b)「【0003】
【従来の技術】図5は、従来のアクティブマトリクス形表示装置の模式図を示すもので、対向配置した一方のガラス基板上に、薄膜トランジスタ(以下、TFTと略記する。)(3)と、データバスライン(2)、スキャンバスライン(1)の2本のバスラインと、画素電極(4)、さらに蓄積容量(5)と、これに接続された蓄積容量用バスライン(6)とを形成し、図示していない他方のガラス基板上に、共通電極を液晶セルの対向電極として形成したものである。TFTの制御電極(31)はスキャンバスライン(1)に、一方の被制御電極(32)は画素電極(4)に、他方の被制御電極(33)はデータバスライン(2)に接続されている。
【0004】このアクティブマトリクス形表示装置の動作原理を説明すると、まずスキャンバスライン(1)にアドレスパルスが印加され、これによってオン状態となったTFT(3)を通じてアドレスパルスに同期してデータバスライン(2)に印加されるデータ電圧が画素電極(4)に加えられる。このとき画素電極(4)と図示していない共通電極間に形成される液晶セル容量および蓄積容量(5)はデータ電圧まで充電される。アドレスパルス印加の後、スキャンバスラインはオフバイアス電位に戻されTFT(3)はオフ状態となって液晶セル容量と蓄積容量(5)に充電された電荷が保持される結果、画素電圧は次のアドレスパルスが印加されるまで書き込まれたデータ電圧に保たれる。このように画素部の液晶セルの実効値電圧は書き込まれたデータ電圧にほぼ等しくすることができる結果、クロストークやコントラスト低下などの単純マトリクス形の欠点を無くすことができる。
【0005】蓄積容量(5)は画素電圧の保持特性を改善するためのものであり、液晶抵抗などによる電荷のリークによる画素電圧低下や画素電極とバスライン間の寄生容量による画素電圧の変動の影響を小さくするために液晶セル容量と等価的に並列に設けられるものである。」

(1c)「【0013】
【作用】図1に本発明の原理を示す。図6では画素行として2行分の等価回路を示したが図1では3行分の等価回路を示している。図1に示すように、マトリクス状画素の形成領域内で隣接する蓄積容量バスライン(61,62,63)間を一本の蓄積容量バスラインにつきn箇所(図では2箇所)の接続部(7)により接続する。この接続部の一箇所あたりの接続電極抵抗(71)をrC とすると、このrC が(n+1)分割された蓄積容量バスライン抵抗に比較して大きくない場合には、蓄積容量バスラインが接続された電圧源(9)からの電流の供給は、他の蓄積容量バスラインと接続電極抵抗を通じて、図に矢印で示したパスにより同時に行われることとなる。
【0014】その結果、書き込み動作を行っている画素行に対応する蓄積容量バスラインを通じて流れる電流が接続電極の無い場合よりも低減し、バスライン抵抗の両端に発生する電圧降下が抑制され、蓄積容量バスライン電圧の変動が図1のVCSB の波形に示すように減少することとなる。」

(1d)「【0015】
【実施例】第一の実施例を図2に基づいて説明する。図2は本発明によるアクティブマトリクス形表示装置の画素マトリクスの一部を示したもので、蓄積容量バスライン(6)間の接続部(7)とその配置を示したものである。この実施例では各蓄積容量バスライン(6)上の同じ位置に接続部(7)を形成しており、接続電極(71)が縦方向に連なる構成としたものである。接続電極(71)は隣接する画素電極(41),(42)の間隙に配置することにより、画素部の光の透過特性に影響を与えないようにすると同時に、接続電極(71)と画素電極(41),(42)間の近接や重畳による寄生容量の発生を防いでいる。また、図2に示すように、接続部では接続電極(71)とスキャンバスライン(1)との交叉部(72)が生じるが、この交叉部(72)での下側に配置する電極による段差の発生を防ぐためも接続電極に膜厚の薄い電極層を用い、下側に配置させることが望ましい構成である。」

(1e)「【0016】第二の実施例を図3に基づいて説明する。本実施例は図2に示した第1の実施例とは、接続部(7)の蓄積容量バスライン(6)上の位置を異ならせたもので、他は同一の構成である。接続部(7)は隣接する蓄積バスラインの対〔(63)と(61),(61)と(62),(62)と(64)〕毎に位置を変えてあり、接続電極(71)が隣接して設置された画素(4)の光透過特性や画素部の寄生容量が、接続電極(71)の存在により影響を受け、他の接続電極が(71)が隣接しない画素と僅かに異なる表示特性を示す場合でも、表示上目立つことを防止することが出来るものである。接続部(7)の位置は、本実施例のように、基準バスラインの対毎にランダムに変える方法の他、規則的に位置をずらす方法、あるいは周期的に繰り返すような配置でも良い。」

(1f)「



(1g)「



(1h)「



〔摘記事項から認定できる事項〕
(1i)摘記事項(1c)の「接続部の一箇所あたりの接続電極抵抗(71)をrCとすると、このrCが(n+1)分割された蓄積容量バスライン抵抗に比較して大きくない場合には・・・」との記載からして、接続部の接続箇所により蓄積容量バスラインが等分割されることが示唆されており、かつ、摘記事項(1d)、(1e)、(1g)、(1h)の記載からして、接続部(接続電極)を画素内に配置する形態が記載されていることから、実質的に、接続電極を数画素毎に等間隔で形成するという技術的事項が認められる。

(1j)摘記事項(1f)、(1g)の図示内容及び技術常識からして、蓄積容量は、蓄積容量バスラインに接続された蓄積容量電極と画素電極とで形成されているものと認められる。

〔甲第4号証に記載された発明〕
上記甲第4号証の摘記事項及び図示内容の技術事項を総合すると、甲第4号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)の記載が認められる。

「アドレスパルスが印加される複数のスキャンバスラインと、
スキャンバスラインと交叉するように設けられ、データ電圧が印加される複数のデータバスラインと、
スキャンバスラインと平行に設けられた複数の蓄積容量バスラインと、
画素内に設けられ、スキャンバスライン及びデータバスラインに接続されたスイッチング素子と、
スイッチング素子を介してデータバスラインに接続される画素電極と、
蓄積容量バスラインに接続され、データバスラインから印加されるデータ電圧を、画素電極と共通電極間に形成される液晶セル容量と共に保持する蓄積容量とを有するアクティブマトリクス形表示装置であって、
マトリクス状画素の形成領域内で隣接する蓄積容量バスライン間を一本の蓄積容量バスラインにつきn箇所の接続電極で接続し、
蓄積容量は、蓄積容量バスラインに接続された蓄積容量電極と画素電極とで形成されており、
接続電極は数画素ごとに等間隔で形成されている、
アクティブマトリクス形表示装置。」

(2)甲第5号証(特開平10-239699号公報)の記載事項
甲第5号証には、「液晶表示装置」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラス基板上に配列された画素電極と、該画素電極に印加する電圧をスイッチングする薄膜トランジスタと、前記画素電極とのあいだで静電容量を形成するための共通配線とを有する液晶表示装置であって、前記共通配線が、行方向および列方向の両方向において互いに接続された網目状共通配線である液晶表示装置。
・・・(中略)・・・
【請求項4】 請求項1記載の液晶表示装置の製法であって、該製法が
a)ガラス基板上につの部を有する共通配線とゲートラインとを形成する工程、
b)前記共通配線、前記ゲートラインおよびガラス基板を覆って、ゲート絶縁膜を形成する工程、
c)前記つの部の先端部と、該先端部に近接する次段の共通配線とにコンタクトホールを設ける工程、
d)前記先端部に設けたコンタクトホールと、前記次段の共通配線に設けたコンタクトホールとを接続する網目用配線を形成して網目状共通配線を形成する工程、
e)前記ゲート絶縁膜上にソースラインを形成する工程、および
f)画素電極を形成する工程からなる製法。
【請求項5】 前記d)工程およびe)工程において、前記ゲート絶縁膜の上に、前記網目用配線と同時にソースラインを形成する請求項4記載の製法。」

(2b)「【0015】本発明によれば、表示領域内でも上下画素の共通配線が互いに接続されることによって、たとえ表示領域内で共通配線の断線が発生したとしても上下画素間での駆動条件の差はほとんどなくなり、共通配線の断線が線欠陥の発生につながらない。」

(2c)「



(2d)「



(3)甲第6号証(特開平9-160075号公報)の記載事項
甲第6号証には、「液晶表示素子」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(3a)「【0015】上記した補助容量配線ユニット12は、側方に位置する1列の画素電極13とそれぞれ対向する補助容量電極部12Aで補助容量を形成するように形成されたものであるが、行方向の相隣接する補助容量配線ユニット12どうしは、図1(A)に示すように接続配線部20を介して電気的に接続されている。即ち、同図に示すように、相隣接する補助容量配線ユニット12どうしは、一方の補助容量電極部12Aの先端部と接続配線部20の一端部とがコンタクトホール20Aを介して接続され、この接続配線部20の他端部と、補助容量配線ユニット12の補助容量電極部12Aの基端部と、がコンタクトホール20Bを介して接続されている。図1(B)は、この接続配線部20が形成された部分の断面を示すものであり、補助容量配線ユニット12どうしがゲートライン11を跨いで接続されていることを示している。なお、図1(B)中、接続配線部20は、ソース電極17、ドレイン電極18Aと同一材料膜を一括してパターニングしてなり、また符号21はガラスなどでなる透明基板を示している。
【0016】図2は、上記した補助容量配線ユニット12と、液晶表示領域の周縁に形成された列方向リング配線22と、の接続構造を示している。同図中、23は、液晶表示領域に存在する画素電極13のうち最も外側に位置する画素電極13の補助容量配線ユニット12とを接続する接続配線部を示している。列方向リング配線22は、ゲートライン11や補助容量配線ユニット12と同一材料膜で同時に形成されたものである。この列方向リング配線22と、最も外側の補助容量配線ユニット12の補助容量電極部12Aの先端部と、は接続配線部23を介して接続されているが、この接続配線部23と補助容量電極部12Aの先端部とは、コンタクトホール23Aを介して接続されている。また、列方向リング配線22と、接続配線部23とは、コンタクトホール23Bを介して接続されている。なお、コンタクトホール23A、23Bは、ゲート絶縁膜14およびシリコン窒化膜15を貫通して形成されている。
【0017】図3は、上記した補助容量配線ユニット12と、液晶表示領域の周縁に形成された行方向リング配線24と、列方向リング配線22と、の接続構造を示す平面説明図である。なお、図3においては画素電極、ゲートライン、TFTなどを省略して示している。同図に示すように、行方向リング配線24は、列方向リング配線22の端部とコンタクトホール24Aを介して接続されている。これら行方向リング配線24と列方向リング配線22とは、図1(B)に示したゲート絶縁膜14およびシリコン窒化膜15が介在されている。このためコンタクトホール24Aは、これらの膜を貫通して形成されている。なお、行方向リング配線24の端部は、液晶表示領域におけるコーナ部に位置する補助容量配線ユニット12との接続配線部25と一体的に設けられている。また、列方向リング配線24と、それぞれの補助容量配線ユニット12の端部とは、コンタクトホール24Bを介して接続されている。
【0018】本実施形態は、このような構成としたことにより、補助容量配線ユニット12に対して行方向リング配線24からだけでなく、列方向リング配線22から接続配線部23、20、25を介して電圧印加が行えるため電気抵抗値を下げることができる。これに伴い、補助容量電極部12Aどうしの間での電位差を小さくすることが可能となる。さらに、本実施形態では、補助容量配線ユニット12に断線が発生した場合でも、補助容量配線全体が網目状(または格子状)に形成されているため、断線の悪影響を最小限に抑えることができる。」

(3b)「



(3c)「



(4)甲第9号証(特開平10-213812号公報参照)の記載事項
甲第9号証には、「アクティブマトリクス型液晶表示装置」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(4a)「【0023】
【発明の実施の形態】図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係わる液晶表示装置を構成するアクティブマトリクス基板の主要部を示す平面図、図2は図1のA-A線における断面図である。
【0024】図1及び図2に示すように、絶縁性基板1上にゲート配線2及び補助容量配線3を形成し、ゲート配線2及び補助容量配線3上にゲート絶縁膜4を形成する。そして、データ配線5、ドレイン電極6及びシールド電極7を形成する。補助容量配線3とシールド電極7とは、ゲート絶縁膜4に設けたシールド電極用コンタクトホール8を介して電気的に接続する。さらに、層間絶縁膜9を形成し、層間絶縁膜9上に絵素電極10を形成する。絵素電極10とドレイン電極6とは、層間絶縁膜9に設けた絵素電極用コンタクトホール11を介して電気的に接続する。尚、12はTFTである。
【0025】シールド電極7は、ゲート配線2と絵素電極10との間に、それぞれゲート絶縁膜4と層間絶縁膜9とを介して形成されており、シールド電極7の電位を一定に保つ、または補助容量配線3に入力する信号と同じ信号を入力することにより、ゲート配線2と絵素電極10との間の静電容量を低減することができ、高開口率構造のアクティブマトリクス型液晶表示装置の表示品位を向上させることができる。
【0026】本実施の形態では、シールド電極7は、ゲート絶縁膜4に設けたシールド電極用コンタクトホール8を介して補助容量配線3と電気的に接続しているため、シールド電極7には、補助容量配線3と同じ信号を入力することとなり、シールド電極7が浮遊容量を持つことによって静電シールド効果が減少することを防いでいる。
【0027】また、シールド電極7は、シールド電極用コンタクトホール8を介して補助容量配線3と電気的に接続しなくても、アクティブマトリクス型液晶表示装置の表示領域外で電気的に接続しておいてもよく、シールド電極7と補助容量配線3とを電気的に接続せずに、シールド電極7と補助容量配線3とに別々に同じ信号を入力してもよい。シールド電極7と補助容量配線3とに別々に同じ信号を入力すれば、補助容量配線3にかかる容量を増加させることがない。
【0028】このことにより、ゲート配線2と絵素電極10との間の電気力線は、シールド電極7の静電シールド効果により減少し、ゲート配線2と絵素電極10との間の静電容量を低減することができる。
【0029】シールド電極7が十分な静電シールド効果を示すためには、ゲート配線2上に形成するシールド電極7の線幅をゲート配線2の線幅と同等以上にすることが望ましい。シールド電極7の線幅をゲート配線2の線幅よりも太くし、ゲート配線2をシールド電極7で十分に覆うようにすることにより、ゲート配線2と絵素電極10との間の静電容量を十分に低減することができる。
・・・(中略))・・・
【0032】また、すべての補助容量配線3とすべてのシールド電極7とを、シールド電極用コンタクトホール8を介して電気的に接続しているため、補助容量配線3の一部が欠落して断線した場合であっても、シールド電極7を介してすべての補助容量配線3に信号が入力されるため、補助容量配線3が断線したときに生じる一列の絵素すべてが欠陥となる所謂線状欠陥を防止することができ、良品の状態を保つことができる。
【0033】尚、本実施の形態においては、シールド電極が補助容量冗長配線を兼ねた構成について説明したが、シールド電極と補助容量冗長配線とを別々に形成してもかまわない。」

(4b)「



(4c)「



(5)甲第10号証(特開平10-232412号公報)の記載事項
甲第10号証には、「アクティブマトリクス型液晶表示装置」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(5a)「【0037】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕本発明の第1の実施の形態について図1ないし図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0038】本実施の形態に係るアクティブマトリクス型液晶表示装置(以下、液晶表示装置と称する)は、図1に示すように、複数のゲート線1…、複数のデータ線2…、複数の補助容量線(以下、Cs線と称する)3…等を有する配線基板を備えている。本液晶表示装置は、この配線基板を含む液晶パネルを有している。この液晶パネルは、上記の配線基板と図示しない共通電極が設けられた対向基板とが間隔をおいて貼り合わされ、その間に液晶が封入された構成である。
【0039】ゲート線1…、データ線2…およびCs線3…は、それぞれ後述する基板8(図4(b)参照)上に一定の間隔をおいて互いに平行に設けられている。信号線としてのデータ線2…は、走査線としてのゲート線1…と直交して配され、Cs線3…は、全画素に共通して設けられており、ゲート線1…と平行に配されている。隣り合うゲート線1・1と隣り合うデータ線2・2とで囲まれる領域には、画素電極4がそれぞれ設けられている。
【0040】画素電極4…の下側には、予備線5…が設けられている。予備線5は、データ線2と平行に、隣り合うデータ線2・2の間に1本ずつ形成されている。予備線5は、データ線2の幅より広い一定の幅でデータ線2と同種の金属材料により形成されている。なお、予備線5…をインジウム錫酸化物(ITO)のような透明の導電膜により形成することで、開口率の向上が図れる。
【0041】ゲート線1とデータ線2との交差部の近傍には、スイッチング素子としてのTFT6が設けられている。TFT6は、半導体層6aを有している。この半導体層6aは、ゲート線1上に後述するゲート絶縁膜9(図4(b)参照)を介して形成され、両端部がそれぞれデータ線2とドレイン電極7とに接続されている。半導体層6aの中間部は、チャネル領域として形成されている。
【0042】ドレイン電極7は、接続線13により補助容量の一方の電極となる補助容量電極10(以下:Cs電極と称する)に接続されており、このCs電極10を介して画素電極4と接続されている。その接続は、画素電極4に窪んで形成されたコンタクト部4aにてなされている。
【0043】TFT6は、ゲート線1にON電圧(走査電圧)が印加されることによりONし、データ線2に印加される電圧を画素電極4に与えて画素容量を充電するようになっている。
【0044】Cs線3は、隣り合うゲート線1・1の間に1本ずつ配されている。また、図4(b)に示すように、Cs線3は、ガラスのように透光性かつ絶縁性を有する材料からなる基板8上に形成されている。なお、ゲート線1は、図5に示すように、Cs線3と同層に設けられている。
【0045】Cs線3上には、ゲート絶縁膜9を介して前述のCs電極10が1画素当たり1個の割合で形成されている。また、ゲート絶縁膜9上には、Cs電極10の両脇に予備線5と下層データ線11が形成されるとともに、予備線5のさらに脇に下層データ線11がさらに形成されている。下層データ線11・11上には、データ線2・2が形成されている。
【0046】そして、上記の予備線5はこのCs線3と、予備線5とCs線3との交差部においてゲート絶縁膜9に設けられたコンタクトホールを介してコンタクト部5aにて電気的に接続されている。本実施の形態の液晶表示装置においては、Cs線3が、予備線5とゲート線2の両方と交差する電極線としての機能を兼ねるようになっている。
【0047】さらに、これらは層間絶縁膜12で覆われており、この層間絶縁膜12上に上記画素電極4が形成されている。画素電極4は、前述したコンタクト部4aを有しており、このコンタクト部4aでCs電極10と接触している。
・・・(中略)・・・
【0049】上記の構成は、Cs電極10…が全ての画素に共通するCs線3…上に配されている。補助容量は、Cs線3、Cs電極10およびこれらの間に挟持されるゲート絶縁膜9により形成されるCs on Common構造である。」

(5b)「



(6)甲第11号証(特開平9-179127号公報)の記載事項
甲第11号証には、「液晶表示素子」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(6a)「【0028】
【発明の実施の形態】先ず、本発明の概要について説明する。
【0029】本発明の液晶表示素子に用いる、スイッチング素子を有する側のアクティブマトリクス基板の一例の構造につき、図1に基づいて説明する。この図1に示すアクティブマトリクス基板は、図示しないもう一方の対向基板に対して間に、液晶を有する表示媒体を挟んで対向配設される。構造は、以下の通りである。基板1の上に、走査線としてのゲートバスライン2と信号線としてのソースバスライン3とが形成され、両バスライン2、3に接続されたスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)4が形成されている。TFT4は、ゲートバスライン2から分岐したゲート電極2aと、ソースバスライン3から分岐し、ゲート電極2aに先端部がゲート絶縁膜5を介して重畳されたソース電極3aと、一端部がゲート電極2aにゲート絶縁膜5を介して重畳され、他端部が両バスライン2、3で矩形に囲まれた領域の中央部に位置するドレイン電極4aとからなる。ドレイン電極4aの他端部はゲートバスライン2に平行になっており、その平行となったドレイン電極4a部分の下方であって、前記ゲート絶縁膜の下側には、ゲートバスライン2に平行に金属からなる付加容量配線6が設けられている。この付加容量配線6は、図示しない共通配線に接続される。
【0030】更に、上記両バスライン2、3およびTFT4の上に、これらを覆って層間絶縁膜7が形成され、層間絶縁膜7におけるドレイン電極4aの他端部上にコンタクトホール8が形成されている。この層間絶縁膜7の上には、一部をコンタクトホール8に充填して、ITOなどの透明電極材料からなる絵素電極9が形成され、絵素電極9とドレイン電極4aとはコンタクトホール8を介して電気的に接続されている。つまり、この絵素電極9は、Pixel On Passivation構造となっている。また、絵素電極9は、両バスライン2、3の上に周縁部を重畳させ、かつ、図2に示すように隣合う絵素電極9同士の間には両者が接触しないように若干の隙間が存在するようになっている。
【0031】従って、かかるPixel On Passivation構造のアクティブマトリクス基板においては、両バスライン2、3と絵素電極9とを異なる平面上に配する構造であり、バスライン2、3上を絵素電極9が覆っている。このため、両バスラインと絵素電極とを同一平面上に配する従来構造のアクティブマトリクス基板よりも、本発明のアクティブマトリクス基板にあっては、表示に使用する絵素電極の面積を大きくでき、開口率を大幅に向上させ得る。また、バスライン2、3上を絵素電極9が覆う構造であっても、層間絶縁膜7によりバスライン2、3と絵素電極9とがショートすることがない。」

(6b)「



(7)甲第12号証(特開平9-96837号公報)の記載事項
甲第12号証には、「透過型液晶表示装置」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(7a)「【0076】(実施形態3)図3は、本発明の実施形態3の透過型液晶表示装置におけるアクティブマトリクス基板の1画素部分の構成を示す平面図であり、図4は図3の透過型液晶表示装置におけるアクティブマトリクス基板のB-B’断面図である。なお、図1および図2と同様の作用効果を奏する部材には同一の符号を付けてその説明を省略する。
【0077】本実施形態3のアクティブマトリクス基板では、TFT24のドレイン電極36bに接続される接続電極25の先端部である、画素の付加容量の一方電極25aに対向する他方電極27が、図9の付加容量共通配線6を通じて対向基板上に形成された対向電極に接続される構成となっているが、層間絶縁膜38を貫くコンタクトホール26Aの形成位置を、この付加容量共通配線6の一端である他方電極27および一方電極25aの上部に形成している。つまり、このコンタクトホール26Aは、遮光性の金属膜で構成されている付加容量配線上部に設けられている。
【0078】これにより、以下のような利点を有する。
【0079】例えば、層間絶縁膜38の膜厚を3μmにすると、液晶セルの厚みである4.5μmと比較しても無視できない厚みであるので、コンタクトホール26Aの周辺に液晶の配向乱れによる光漏れが発生する。したがって、透過型液晶表示装置の開口部にこのようなコンタクトホール26Aを形成した場合には、この光漏れによるコントラストの低下が生じる。これに対して、本実施形態3のアクティブマトリクス基板では、付加容量共通配線6の一端である他方電極27および一方電極25aの遮光性の金属膜上部にコンタクトホール26Aが形成されているので、このような問題は生じない。つまり、このコンタクトホール26Aが、遮光性の金属膜である付加容量配線上部に設けられていると、液晶の配向乱れによる光漏れが発生しても、開口部以外の遮光部であってコントラストの低下は生じない。これは、隣接するゲート信号線22の一部を一方電極として付加容量を形成する場合にも同様であり、この場合には、隣接するゲート信号線22上にコンタクトホール26Aを形成することにより、ゲート信号線22で遮光してコントラスト低下を防ぐことができる。
【0080】また、このアクティブマトリクス基板は、TFT24のドレイン電極36bと、コンタクトホール26Aとを接続する接続電極25として透明導電膜37a’を形成しているので、コンタクトホール26Aを付加容量上に形成しても開口率の低下は生じない。」

(7b)「



(7c)「



3-2 訂正特許発明1,3?6についての当審の判断
訂正特許発明1,3?6が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないかについて検討する。

3-2-1 訂正特許発明1について
(1)対比
訂正特許発明1と引用発明とを対比する。

<対応関係a>
引用発明の「アドレスパルスが印加される複数のスキャンバスライン」、「スキャンバスラインと交叉するように設けられ、データ電圧が印加される複数のデータバスライン」、「スキャンバスラインと平行に設けられた複数の蓄積容量バスライン」、「画素内に設けられ、スキャンバスライン及びデータバスラインに接続されたスイッチング素子」、「スイッチング素子を介してデータバスラインに接続される画素電極」及び「蓄積容量バスラインに接続され、データバスラインから印加されるデータ電圧を、画素電極と共通電極間に形成される液晶セル容量と共に保持する蓄積容量とを有するアクティブマトリクス形表示装置」は、それぞれ、訂正特許発明1の「行方向に複数形成され、ゲート電圧を伝達するゲートライン」、「列方向に複数形成され、信号電圧を伝達するドレインライン」、「行方向に複数形成される補助容量ライン」、「前記ゲートライン及び前記ドレインラインの交点に対応して配置されるスイッチング素子」、「前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続され、液晶を駆動する画素電極」及び「前記補助容量ラインに連結され、前記画素電極と共に信号電圧を保持する補助容量とを有するアクティブマトリクス型表示装置」に相当する。

<対応関係b>
引用発明の「マトリクス状画素の形成領域内で隣接する蓄積容量バスライン間を一本の蓄積容量バスラインにつきn箇所の接続電極で接続」することと、訂正特許発明1の「補助容量ラインは、画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成される補助容量連結ラインによって、他の前記補助容量ラインと電気的に接続され」ることとは、「補助容量ラインは、画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成される補助容量連結ラインによって、他の前記補助容量ラインと電気的に接続され」る点で共通する。

<対応関係c>
引用発明の「蓄積容量は、蓄積容量バスラインに接続された蓄積容量電極と画素電極とで形成されて」いることと、訂正特許発明1の「補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」いこととは、「補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され」る点で共通する。

<対応関係d>
引用発明の「接続電極は数画素ごとに等間隔で形成されている」ことと、訂正特許発明1の「補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つ配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され、かつ、画素電極と重畳する」こととは、「補助容量連結ラインは、画素領域の列の複数につき1つ配列され」る点で共通する。

以上の対応関係からして、訂正特許発明1と引用発明とは、
「行方向に複数形成され、ゲート電圧を伝達するゲートラインと、
列方向に複数形成され、信号電圧を伝達するドレインラインと、
行方向に複数形成される補助容量ラインと、
前記ゲートライン及び前記ドレインラインの交点に対応して配置されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続され、液晶を駆動する画素電極と、
前記補助容量ラインに連結され、前記画素電極と共に信号電圧を保持する補助容量とを有するアクティブマトリクス型表示装置において、
前記補助容量ラインは、前記画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成される補助容量連結ラインによって、他の前記補助容量ラインと電気的に接続され、
前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、
前記補助容量連結ラインは、画素領域の列の複数につき1つ配列される
アクティブマトリクス型表示装置。」
の発明である点で一致し、以下の各点で相違する。

(相違点1)
表示装置の基本構造に関して、訂正特許発明1は、「赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置」と限定しているのに対して、引用発明はそのような限定をしておらず、同時に、「補助容量連結ライン」に関して、訂正特許発明1は、「画素領域の列の3つにつき1つ配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され」るのに対して、引用発明は、接続電極を形成する間隔を限定せず、接続電極を特定の色の画素領域に形成するともしていない点。

(相違点2)
「補助容量連結ライン」と「画素電極」との位置関係に関して、訂正特許発明1は、「補助容量連結ライン」は「画素電極と重畳する」のに対して、引用発明は、接続電極と画素電極とを重畳させるとはしていない点。

(相違点3)
「補助容量」の構造に関して、訂正特許発明1は、「信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」いと限定しているのに対して、引用発明は、蓄積容量を構成するデータ電圧が印加される電極が画素電極である点。

(2)相違点についての検討
(2-1)相違点1について
表現能力向上のため、表示装置でカラー表示を行うことは極めてよく知られた技術的課題であり、その解決手段として、赤、緑、青の三原色の画素領域を赤、緑、青の一定周期で列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うことは、例示するまでもなく、周知慣用の構成である(乙第1号証にも記載されている。)。
また、引用発明において、接続電極を形成する間隔は、当業者が適宜に設定し得る設計的事項にすぎず、3画素ごとに1つ形成するようにすることも、当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。
そして、単に上記周知慣用の構成を採用し、かつ、設計的事項である接続電極を形成する間隔について3画素ごとに1つとすれば、結果として、赤、緑、青のうちの特定の色の画素領域に接続電極が配置された状態となることは自明である。
そうすると、引用発明に周知技術を適用することにより、相違点1に係る訂正特許発明1の構成を得ることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(2-2)相違点2について
(2-2-1)引用発明は、アクティブマトリクス形表示装置に関するものであるところ、甲第4号証の記載によれば、引用発明について次のとおり認めることができる。
蓄積容量を有するアクティブマトリクス方式では、蓄積容量バスラインに接続された比較的大きな容量値を持つ蓄積容量が、線順次の書き込み動作時にオン状態となったTFTを通じて同時にデータバスラインに接続されることとなり、各画素の蓄積容量への充電電流が1本の蓄積容量バスラインに集中する結果、電圧降下によりバスライン電圧の変動が生じやすく、この電圧変動は各蓄積容量に書き込まれる電圧の変動となり、横方向の縞状の模様となって現れ、表示品質を著しく低下させる原因となっていた(段落【0006】?【0007】)。
引用発明は、この問題を解決するために、「マトリクス状画素の形成領域内で隣接する蓄積容量バスライン間を一本の蓄積容量バスラインにつきn箇所の接続電極で接続」することによって、書き込み動作を行っている画素行に対応する蓄積容量バスラインを通じて流れる電流を接続電極の無い場合よりも低減し、バスライン抵抗の両端に発生する電圧降下を抑制して、蓄積容量バスライン電圧の変動を減少させることを目的とするものである(段落【0009】?【0014】)。

(2-2-2)
訂正特許発明1と引用発明の相違点2において、引用発明は接続電極と画素電極とを重畳させるものとはいえないところ、甲第4号証の段落【0015】には、「接続電極(71)は隣接する画素電極(41)、(42)の間隙に配置することにより、画素部の光の透過特性に影響を与えないようにすると同時に、接続電極(71)と画素電極(41)、(42)間の近接や重畳による寄生容量の発生を防いでいる。」と記載されているように、接続電極と画素電極は重畳されておらず、引用発明においては、段落【0015】に記載された問題(光の透過特性への悪影響と画素電極と接続電極間の寄生容量)が解決されない限り、接続電極を画素電極と重畳させる構成を予定していないと解される。なお、甲第4号証の段落【0016】の「画素(4)の光透過性や画素部の寄生容量が、接続電極(71)の存在により影響を受け」との記載からもそのように認めることはできないと解される。

(2-2-3)請求人は、この相違点につき周知例として甲第9号証、甲第10号証を挙げているところ、甲第9号証、甲第10号証の記載から理解される技術内容は以下のとおりである。

ア 甲第9号証(特開平10-213812号公報)の記載(特に段落【0006】、【0011】、【0023】?【0029】、【0032】、【0033】、【図1】、【図2】)によれば、甲第9号証のシールド電極は、アクティブマトリクス型液晶表示装置において、絵素電極とゲート配線間の静電容量を低減することを目的として設けられたものであって、すべての補助容量配線と電気的に接続して、シールド電極が浮遊容量を持つことによって静電シールド効果が減少することを防ぐとともに、補助容量配線の一部が欠落して断線した場合でも、シールド電極を介してすべての補助容量配線に信号が入力されるので、補助容量配線が断線したときに生じる一列の絵素すべてが欠陥となる線状欠陥を防止するものである。そして、甲第9号証のシールド電極は、絵素電極と重畳する位置に配置されていることが認められる。
前記のとおり、引用発明の「接続電極」は、書き込み動作を行っている画素行に対応する蓄積容量バスラインを通じて流れる電流を接続電極の無い場合よりも低減し、バスライン抵抗の両端に発生する電圧降下を抑制して、蓄積容量バスライン電圧の変動を減少させることを目的として設けられているものであるから、甲第9号証のシールド電極は、引用発明の「接続電極」とは、設けられた目的が異なるものである。

イ 甲第10号証(特開平10-232412号公報)の記載(特に、段落【0020】、【0037】?【0047】、【0068】、【0079】?【0081】、【図1】、【図4】、【図5】)の記載によれば、甲第10号証の予備線は、アクティブマトリクス型液晶表示装置において、小型化を阻止することも、表示品位を低下させることもなく、信号線断線時の修正を可能とすることを目的として設けられたものであって、すべてのCs線と電気的に接続することによって、信号線に断線不良が生じたときは、予備線と電極線とを介して断線箇所を迂回するようにして信号線にデータ電圧を印加することができるようにするものであり、画素電極に重畳する位置に配置されていることが認められる。
そして、前記のとおり、引用発明の「接続電極」は、書き込み動作を行っている画素行に対応する蓄積容量バスラインを通じて流れる電流を接続電極の無い場合よりも低減し、バスライン抵抗の両端に発生する電圧降下を抑制して、蓄積容量バスライン電圧の変動を減少させることを目的として設けられているものであるから、甲第10号証の予備線は、引用発明の「接続電極」とは、設けられた目的が異なるものである。

(2-2-4)上記のとおり、甲第9号証のシールド電極及び甲第10号証の予備線は引用発明の「接続電極」とは、設けられた目的が異なるものであり、光の透過特性への悪影響と画素電極と接続電極間の寄生容量の問題を解決するものではない。
そして、甲第4号証において相違点2に係る構成が、接続電極と画素電極を重畳させるものとされていないことは前記(2-2-2)のとおりである以上、引用発明に甲第9号証のシールド電極及び甲第10号証の予備線の構成を適用することが容易に想到し得るとはいえない。

(2-2-5)請求人は、甲第4号証、甲第9、10号証の他に、甲第5号証、甲第6号証、甲第11号証、甲第12号証をも提示しているから、これら甲第5、6、11、12号証に記載された事項についても検討する。

ア 甲第5号証(特開平10-239699号公報:特に段落【0004】、【0005】、【0007】、【0018】?【0022】、【図1】、【図2】)には、共通配線5(訂正特許発明1の「補助容量ライン」及び引用発明の「蓄積容量バスライン」に相当)が断線した場合の不具合に備えて、つの部8(訂正特許発明1の「補助容量ラインに連結された補助容量電極」及び引用発明の「蓄積容量バスラインに接続された蓄積容量電極」に相当)の先端部と次段の共通配線とを橋渡しするように網目用配線9(訂正特許発明1の「補助容量連結ライン」及び引用発明の「接続電極」に相当)を設けるという事項が記載されているが、網目用配線9は画素電極7とは重畳していない。

イ 甲第6号証(特開平9-160075号公報:特に段落【0002】、【0003】、【0007】、【0013】?【0015】、【図1】)には、補助容量配線ユニット12(訂正特許発明1の「補助容量ライン」及び引用発明の「蓄積容量バスライン」に相当)が断線した場合の不具合に備えて、補助容量電極部12A(訂正特許発明1の「補助容量ラインに連結された補助容量電極」及び引用発明の「蓄積容量バスラインに接続された蓄積容量電極」に相当)の先端部と行方向に相隣接する補助容量電極部12Aの基端部とを接続する接続配線部20(訂正特許発明1の「補助容量連結ライン」及び引用発明の「接続電極」に相当)を設けるという事項が記載されているが、接続配線部20は画素電極13とは重畳していない。

ウ 甲第11号証(特開平9-179127号公報:特に段落【0029】、【図1】)には、ドレイン電極4a(訂正特許発明1の「スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極」に相当)と付加容量配線6(訂正特許発明1の「補助容量ライン」及び引用発明の「蓄積容量バスライン」に相当)とで付加容量(訂正特許発明1の「補助容量」及び引用発明の「蓄積容量」に相当)を形成した構成において、ドレイン電極4aが絵素電極9(訂正特許発明1の「画素電極」及び引用発明の「画素電極」に相当)を構成するものではないという事項が記載されているが、訂正特許発明1の「補助容量連結ライン」及び引用発明の「接続電極」に相当する構成は記載されていない。

エ 甲第12号証(特開平9-96837号公報:特に段落【0058】、【図1】)には、電極25a(訂正特許発明1の「スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極」に相当)と電極27(訂正特許発明1の「補助容量ライン」及び引用発明の「蓄積容量バスライン」に相当)とで付加容量(訂正特許発明1の「補助容量」及び引用発明の「蓄積容量」に相当)を形成した構成において、電極25aが画素電極21を構成するものではないという事項が記載されているが、訂正特許発明1の「補助容量連結ライン」及び引用発明の「接続電極」に相当する構成は記載されていない。

そうすると、甲第5号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項、甲第11号証に記載された事項及び甲第12号証に記載された事項を参酌しても、相違点2に係る構成を当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(2-3)相違点3について
蓄積容量(補助容量)を構成する電極を画素電極とは別体に構成することは、周知の技術(例えば、甲第9号証?甲第12号証参照)にすぎないから、引用発明に当該周知の技術を採用することは、当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。
そうすると、引用発明に周知技術を適用することにより、上記相違点3に係る訂正特許発明1の構成を得ることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(3)作用効果についての検討
訂正特許発明1は、画素電極と重畳する補助容量連結ラインをすべての画素領域に配置するのではなく、画素領域の列の3つにつき1つ配列し、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成するので、画素電極と補助容量連結ラインが重畳することによる開口率の低下を抑えることができるという効果を奏するものである。そして、この効果については、甲第4?6号証、甲第9?12号証には記載も示唆もないから、引用発明、甲第5号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項、甲第11号証に記載された事項、甲第12号証に記載された事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものとはいえない。

(4)訂正特許発明1についての小括
よって、訂正特許発明1は、引用発明、甲第5号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項、甲第11号証に記載された事項、甲第12号証に記載された事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-2-2 訂正特許発明3?6について
訂正特許発明3?6は、訂正特許発明1のすべての発明特定事項を有するものであるから、訂正特許発明1と同様、引用発明、甲第5号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項、甲第11号証に記載された事項、甲第12号証に記載された事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3-3 無効理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正特許発明1,3?6は、引用発明、甲第5号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項、甲第11号証に記載された事項、甲第12号証に記載された事項及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、同法第123条第1項第2号の規定によっては無効とすることはできない。

4 無効理由4について
〔訂正特許発明1,3?6〕
訂正特許発明1,3?6は、上記「第3 訂正特許発明」に記載したとおりのものである。

4-1 甲号各証の記載内容
上記無効理由4の根拠として挙げられた甲第7号証、甲第9?15号証には、概略以下の技術的事項が開示されている。

(1)甲第7号証(特開2001-281690号公報)の記載事項
甲第7号証には、「液晶表示装置」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(1a)「【0007】このような液晶表示装置では、蓄積容量バスライン326がデータバスライン318に交差しているため、蓄積容量バスライン326とデータバスライン318との間に容量C_(dcsb)が存在する。
【0008】この容量C_(dcsb)は、データ信号の変動によるノイズを蓄積容量バスライン326に発生させ、液晶に印加される電圧に影響を及ぼす。特に蓄積容量バスライン326の抵抗が高く、時定数が十分に小さくない場合には、水平方向の表示パターンに依存して輝度が変調してしまう。このような輝度の変調は、横クロストークと称される。」

(1b)「【0041】
【課題を解決するための手段】上記目的は、ゲートバスラインと、前記ゲートバスラインに沿って延在する第1の蓄積容量バスラインと、前記ゲートバスラインに交差するデータバスラインと、前記データバスラインに沿って延在し、前記第1の蓄積容量バスラインに電気的に接続された第2の蓄積容量バスラインとを有し、前記第1の蓄積容量バスラインは、前記ゲートバスライン又は前記データバスラインと同一の導電膜により構成され、前記第2の蓄積容量バスラインは、前記ゲートバスライン又は前記データバスラインと同一の導電膜により構成されていることを特徴とする液晶表示装置により達成される。これにより、蓄積容量バスラインが網目状に形成されているため、電源側から見た蓄積容量バスラインのインピーダンスを極めて低くすることができる。従って、蓄積容量バスラインの時定数を小さくすることができるので、横クロストークの発生を防止することができるので、表示品位を低下することなく、液晶表示装置の大型化・高精細化を実現することができる。」

(1c)「【0046】
【発明の実施の形態】[第1実施形態]本発明の第1実施形態による液晶表示装置を図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態による液晶表示装置の全体構成を示す平面図である。図1の紙面左側は液晶表示装置の全体構成を示した平面図であり、紙面右側は液晶表示装置の一部を拡大して示した概念図である。図2は、本実施形態による液晶表示装置を示す平面図及び断面図である。
【0047】図1に示すように、ガラス基板10上には、紙面左右方向に延在する複数のゲートバスライン12が形成されている。ガラス基板10の紙面左側には、ゲートドライバ(図示せず)が形成されたゲートTAB14が接着されている。ゲートバスライン12は、ゲートTAB14に形成されたゲートドライバの出力側に接続されている。
【0048】また、ゲートTAB14の他方の端部は、プリント基板16に接着されている。ゲートドライバの入力側は、プリント基板16に形成された配線(図示せず)に接続されている。
【0049】また、ガラス基板10上には、ゲートバスライン12に交差するように、紙面上下方向に延在する複数のデータバスライン18が形成されている。ガラス基板10の紙面上側には、データドライバ(図示せず)が形成されたデータTAB20が接着されている。データバスライン18は、データTAB20に形成されたデータドライバの出力側に接続されている。
【0050】また、データTAB20の他方の端部は、プリント基板22に接着されている。データドライバの入力側は、プリント基板22に形成された配線(図示せず)に接続されている。
【0051】また、連絡ケーブル24により、プリント基板16、22に形成された配線(図示せず)が相互に接続されている。
【0052】また、ガラス基板10上には、ゲートバスライン12に平行に、複数の蓄積容量バスライン26が形成されている。また、ガラス基板10上には、データバスライン18に平行に、複数の蓄積容量バスライン28が形成されている。蓄積容量バスライン26と蓄積容量バスライン28とは、互いに交差しており、交差している領域において互いに電気的に接続されている。
【0053】また、図1の紙面右側の図に示すように、ガラス基板10上には、マトリクス状に画素電極30が形成されている。画素電極30と蓄積容量バスライン26との間には、蓄積容量C_(s1)が形成されている。一方、画素電極30と蓄積容量バスライン28との間には、蓄積容量C_(s2)が形成されている。
【0054】蓄積容量バスライン26は表示領域11の外側で一括され、配線27によりデータTAB20を介してコモン電圧電源に接続されている。また、蓄積容量バスライン28も表示領域11の外側で一括され、配線29によりゲートTAB14を介してコモン電圧電源に接続されている。
【0055】次に、本実施形態による液晶表示装置を図2を用いて更に詳細に説明する。図2(a)は本実施形態による液晶表示装置の平面図であり、図2(b)は図2(a)のA-A′線断面図であり、図2(c)は図2(a)のB-B′線断面図である。
【0056】図2(b)に示すように、ガラス基板10上には、蓄積容量バスライン26が形成されている。なお、蓄積容量バスライン26は、ゲートバスライン12と同一導電膜より成るものである。
【0057】蓄積容量バスライン26上には、SiNより成るゲート絶縁膜32が形成されている。ゲート絶縁膜32上には、データバスライン18及び蓄積容量バスライン28が形成されている。なお、蓄積容量バスライン28はデータバスライン18と同一導電膜より成るものである。
【0058】データバスライン18及び蓄積容量バスライン28が形成されたゲート絶縁膜32上には、SiNより成る保護膜34が形成されている。
【0059】保護膜34及びゲート絶縁膜32には、蓄積容量バスライン26に達するコンタクトホール36が形成されている。また、保護膜34には、蓄積容量バスライン28に達するコンタクトホール38が形成されている。
【0060】コンタクトホール36、38が形成された保護膜34上には、コンタクトホール36、38を介して蓄積容量バスライン26と蓄積容量バスライン28とを互いに電気的に接続する接続電極40が形成されている。なお、接続電極40は、画素電極30と同一導電膜より成るものである。こうして、蓄積容量バスライン26と蓄積容量バスライン28とが互いに電気的に接続されている。
【0061】一方、図2(c)に示すように、ガラス基板10上には、ゲートバスライン12が形成されている。ゲートバスライン12が形成されたガラス基板10上には、SiNより成るゲート絶縁膜32が形成されている。ゲート絶縁膜32上には、アモルファスシリコンより成る半導体層42が形成されている。半導体層42上には、SiNより成るエッチングストッパ膜44が形成されている。
【0062】エッチングストッパ膜44が形成された半導体層上42には、n+-アモルファスシリコンより成る不純物ドープ半導体層46が形成されている。不純物ドープ半導体層46上には、ソース電極48a及びドレイン電極48bが形成されている。ソース/ドレイン電極48a、48bが形成されたゲート絶縁膜32上には、全面に、SiNより成る保護膜34が形成されている。こうして、TFT50が構成されている。
【0063】図2(a)に示すように、TFT50のソース電極48aは、コンタクトホール52を介して画素電極30に接続されている。また、TFT50のドレイン電極48bは、データバスライン18に接続されている。また、ゲートバスライン12は、TFT50のゲート電極を兼ねている。
【0064】本実施形態による液晶表示装置は、ゲートバスライン12と平行に蓄積容量バスライン26が形成されており、データバスライン18と平行に蓄積容量バスライン28が形成されており、これら蓄積容量バスライン26及び蓄積容量バスライン28が交差する領域において互いに電気的に接続されていることに主な特徴の一つがある。本実施形態では、蓄積容量バスライン26と蓄積容量バスライン28とにより網目状に蓄積容量バスラインが形成されているので、電源側から見た蓄積容量バスラインのインピーダンスを極めて低くすることができる。このため、時定数を小さくすることができ、横クロストークの発生を防止することができる。従って、表示品位を低下することなく、液晶表示装置の大型化・高精細化を実現することができる。」

(1d)「【0133】[第2実施形態]本発明の第2実施形態による液晶表示装置を図18を用いて説明する。図18は、本実施形態による液晶表示装置の構成を示す概念図である。図19は、本実施形態による液晶表示装置を示す平面図である。図1乃至図17に示す第1実施形態による液晶表示装置と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0134】本実施形態による液晶表示装置は、3画素おきに蓄積容量バスライン28が設けられている点に主な特徴がある。
【0135】即ち、図18に示すように、蓄積容量バスライン26cはすべての画素に対して設けられている一方、蓄積容量バスライン28は3画素おきに設けられている。
【0136】また、図19に示すように、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素において、蓄積容量バスライン26cの幅が太くなっている。
【0137】蓄積容量バスライン28が設けられていない画素において蓄積容量バスライン26cの幅が太くなっているのは、蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量と蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量とをほぼ等しくするためである。
【0138】即ち、本実施形態のように3画素おきに蓄積容量バスライン28が設けられた液晶表示装置において、蓄積容量バスライン26cの幅を均一にした場合には、蓄積容量バスライン28が設けられている画素では蓄積容量が大きくなり、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素では蓄積容量が小さくなる。そして、蓄積容量が画素によって相違すると、輝度が相違し、ひいては表示ムラが生じることとなる。
【0139】そこで、本実施形態では、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素において蓄積容量バスライン26cの幅を太くし、蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量と蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量とをほぼ等しくし、これにより表示ムラを防止している。
【0140】蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量と蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量との差は、蓄積容量バスラインが設けられていない画素における蓄積容量又は蓄積容量バスラインが設けられている画素における蓄積容量の、例えば10%以下に設定する。
【0141】蓄積容量の差を10%以下に設定すれば、表示特性の良好な液晶表示装置を提供することができる。なお、蓄積容量の差は10%以下に限定されるものではなく、所望の表示特性を実現し得るよう適宜設定すればよい。
【0142】蓄積容量の差を上記のように設定するためには、例えば、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量バスライン26cの幅を、蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量バスライン26cの幅の3倍程度に設定すればよい。
【0143】次に、本実施形態による液晶表示装置で用いられる遮光体パターンについて図20及び図21を用いて説明する。図20(a)は本実施形態による液晶表示装置のTFTパターンを示す概略図であり、図20(b)は本実施形態による液晶表示装置の遮光体パターンを示す平面図であり、図20(c)はTFTパターンに遮光体パターンを重ね合わせた状態を示す平面図である。また、図21(a)は遮光体パターンの比較例を示す平面図であり、図21(b)はTFTパターンに比較例による遮光体パターンを重ね合わせた状態を示す平面図である。
【0144】図20(b)に示すように、本実施形態で用いられる遮光体パターン76には、均一な大きさの開口部78が形成されており、しかも開口部78の大きさは、蓄積容量バスライン28が設けられた開口率の小さい画素に対応している。
【0145】本実施形態でこのような遮光体パターン76を用いているのは、蓄積容量バスライン28が設けられた画素と蓄積容量バスライン28が設けられていない画素とで、輝度を等しくするためである。
【0146】即ち、図21(a)に示す遮光体パターン80のように、蓄積容量バスライン28が設けられている画素に対応する開口部82aを小さく形成し、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素に対応する開口部82bを大きく形成した場合には、蓄積容量バスライン28が設けられている画素では輝度が低くなり、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素では輝度が高くなり、表示ムラが生じてしまう。
【0147】これに対し、本実施形態では、開口率の小さい画素、即ち蓄積容量バスライン28が設けられている画素に対応して小さく開口部78を形成しているので、均一な輝度で表示することが可能となる。
【0148】このように本実施形態によれば、蓄積容量バスライン28を間引くことにより、蓄積容量バスライン28の本数を少なくすることができるので、製造過程で短絡不良等が生じる可能性を低くすることができ、製造歩留りの向上に寄与することができる。
【0149】しかも、本実施形態では、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素において蓄積容量バスライン26cの幅を太くしているため、蓄積容量バスライン28が設けられている画素の蓄積容量と蓄積容量バスライン28が設けられていない画素の蓄積容量とを等しくすることができる。そして、開口率の小さい画素に対応して均一な大きさの開口部を遮光パターンに形成しているので、蓄積容量バスライン28が設けられている画素の輝度と蓄積容量バスライン28が設けられていない画素の輝度とを均一にすることができ、良好な表示特性を有する液晶表示装置を提供することができる。
【0150】(変形例(その1))次に、本実施形態による液晶表示装置の変形例(その1)を図22を用いて説明する。図22(a)は本変形例による液晶表示装置を示す平面図であり、図22(b)は図22(a)のA-A′線断面図である。
【0151】本変形例による液晶表示装置は、蓄積容量バスライン28が設けられている画素においてSiNより成る誘電体層84を設け、これにより蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量と、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量とを、ほぼ等しく設定していることに主な特徴がある。
【0152】即ち、紙面右側の画素では、蓄積容量バスライン28が設けられている分だけ蓄積容量が大きくなる傾向があるため、誘電体層84を形成することにより、蓄積容量の低減を図っている。これにより、紙面右側の画素における蓄積容量と紙面左側の画素における蓄積容量とをほぼ等しく設定している。
・・・(中略)・・・
【0157】このように本変形例によれば、蓄積容量バスライン28が設けられている画素に誘電体層84を設けることにより、蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量と蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量とをほぼ等しく設定することができるので、各画素の輝度をほぼ均一に設定することができ、ひいては表示品位の高い液晶表示装置を提供することができる。
【0158】(変形例(その2))次に、本実施形態による液晶表示装置の変形例(その2)を図23を用いて説明する。図23(a)は本変形例による液晶表示装置を示す平面図であり、図23(b)は図23(a)のA-A′線断面図である。
【0159】本変形例による液晶表示装置は、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素において保護膜34の膜厚を薄く設定し、これにより蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量と、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量とをほぼ等しく設定していることに主な特徴がある。
【0160】即ち、紙面右側の画素では、蓄積容量バスライン28が設けられている分だけ蓄積容量が大きくなる。このため、紙面左側の画素において保護膜34の厚さを薄く設定し、紙面左側の画素における蓄積容量の増加を図っている。
【0161】蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量と、蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量との差は、蓄積容量バスライン28が設けられていない画素における蓄積容量又は蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量の、例えば10%以下に設定する。なお、10%以下に限定されるものではなく、所望の表示特性を実現し得るよう適宜設定すればよい。
【0162】本変形例によれば、図22に示す変形例(その1)のような誘電体層84を形成しない場合であっても、蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量と蓄積容量バスライン28が設けられている画素における蓄積容量とをほぼ等しくすることができる。」

(1e)「



(1f)「



(1g)「



(1h)「



(1i)「



(1j)「



(1k)「



(1l)「



上記甲第7号証の記載を参照すると、特願2000-96413号(特開2001-281690号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「紙面左右方向に延在する複数のゲートバスライン12と、
紙面上下方向に延在する複数のデータバスライン18と、
ゲートバスライン12に平行に形成された複数の蓄積容量バスライン26と、
データバスライン18と平行に形成された複数の蓄積容量バスライン28と、
TFT50と、
TFT50のソース電極48aに接続された画素電極30と、
蓄積容量C_(s1)と蓄積容量C_(s2)と、
遮光体パターン76とを有する液晶表示装置において、
蓄積容量バスライン26と蓄積容量バスライン28とは,表示領域11内で互いに交差しており、交差している領域において互いに電気的に接続されており、
蓄積容量C_(s1)は、画素電極30と蓄積容量バスライン26とで形成されており、
蓄積容量C_(s2)は、画素電極30と蓄積容量バスライン28とで形成されており、
蓄積容量バスライン28は3画素おきに設けられており、
遮光体パターン76は、蓄積容量バスライン28が設けられた開口率の小さい画素に対応する、均一な大きさの開口部78が設けられている
液晶表示装置。」

(2)甲第9?12号証の記載事項
甲第9?12号証には、上記「第6」「3」「3-1」「(4)」?「(7)」で摘記した技術的事項が記載されている。

(3)甲第13号証(特開昭62-10619号公報)の記載事項
甲第13号証には、「アクティブマトリクスパネル」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(3a)「本発明は、TFTによって液晶を駆動して成るアクティブマトリクスパネルにおいて、前記液晶より成るキャパシタを並列に、前記TFTと同一の構造を有するMOSキャパシタを設けることによって、液晶容量を見かけ上増大させ、表示性能を向上させるものである。」(公報第1頁右下欄第16行?第2頁左上欄第1行)

(3b)「第1図のアクティブマトリクスパネルの断面構造の一例を第3図に示す。第3図において、26は透明基板、27,28は第1のシリコン薄膜、29,30はゲート絶縁膜、31,32は第二のシリコン薄膜、33は層間絶縁膜、34は透明導電膜、35は液晶、36は対向電極である。27,29,31は、それぞれ、薄膜トランジスタ21のサブストレート,ゲート絶縁膜,ゲートであり、28,30,32は、それぞれ、MOSキャパシタ23のサブストレート、ゲート絶縁膜,ゲートである。」(公報第3頁左上欄第1?11行)

(3c)「



(3d)「



(4)甲第14号証(特開平6-35004号公報)の記載事項
甲第14号証には、「アクティブマトリクス型液晶表示装置」に関し、図面の図示と共に次の技術的事項が記載されている。

(4a)「【0011】
【実施例】以下図面を参照して本発明の好適な実施例を詳細に説明する。図1は本発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の一実施例を示す模式的な断面図である。石英基板1の表面には半導体層2が島状にパタニング形成されている。この半導体層2はポリシリコン薄膜あるいはアモルファスシリコン薄膜からなる。この半導体層2には画素トランジスタ3及び補助容量4が半導体プロセスにより集積形成されている。これらの素子はPSG等からなる第一層間絶縁層5により被覆されており、その上に金属等からなる配線層6が成膜されている。さらに第二層間絶縁層7を介してITO等からなる画素電極8がパタニング形成されている。かかる積層構造を搭載した石英基板1は所定の間隙を介して対向基板(図示せず)に接着されており、間隙内に液晶層9を充填封入してアクティブマトリクス型液晶表示装置が構成される。個々の画素電極8と対向基板に形成された対向電極(図示せず)との間に挟持された液晶層9により液晶画素が構成できる。」

(4b)「【0013】補助容量4は半導体層2の延長部分からなる第一電極41を備えている。この第一電極41の上には誘電体膜42を介してポリシリコン等からなる第二電極43がパタニング形成されている。この第二電極43はゲート電極36と同一材料からなり同一工程で加工できる。又、誘電体膜42もゲート絶縁膜35と同一の3層構造複合膜からなる。この複合膜の第一層421、第二層422及び第三層423は補助容量部及び画素トランジスタ部の両者に渡って共通の材料から構成されている。但し、補助容量部の複合膜の少なくとも1層が、画素トランジスタ部の複合膜の1層より薄くなっている。図示の例では、第一層421の膜厚が削られている一方、第二層422及び第三層423の膜厚は画素トランジスタ部と補助容量部で同一となっている。」

(4c)「



(5)甲第15号証(鷲塚諫監修・シャープ株式会社液晶事業本部著『液晶ディスプレイ その概要と応用市場』株式会社ラジオ技術社・平成3年9月1日発行)の記載事項

甲第15号証には、「液晶ディスプレイ」に関し、図3・23にTFTカラーLCDの構造図が記載されている。

4-2 訂正特許発明1、3?6についての当審の判断
訂正特許発明1,3?6が、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないかについて検討する。

4-2-1 訂正特許発明1について
(1)対比
訂正特許発明1と先願発明とを対比する。

<対応関係a>
先願発明の「紙面左右方向に延在する複数のゲートバスライン12」、「紙面上下方向に延在する複数のデータバスライン18」、「ゲートバスライン12に平行に形成された複数の蓄積容量バスライン26」、「TFT50」、「TFT50のソース電極48aに接続された画素電極30」、「蓄積容量C_(s1)」、「液晶表示装置」は、それぞれ、訂正特許発明1の「行方向に複数形成され、ゲート電圧を伝達するゲートライン」、「列方向に複数形成され、信号電圧を伝達するドレインライン」、「行方向に複数形成される補助容量ライン」、「前記ゲートライン及び前記ドレインラインの交点に対応して配置されるスイッチング素子」、「前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続され、液晶を駆動する画素電極」、「前記補助容量ラインに連結され、前記画素電極と共に信号電圧を保持する補助容量」、「アクティブマトリクス型表示装置」に相当する。

<対応関係b>
先願発明の「データバスライン18と平行に形成された複数の蓄積容量バスライン28」が、「蓄積容量バスライン26」と「表示領域11内で互いに交差しており、交差している領域において互いに電気的に接続されて」いることは、訂正特許発明1の「補助容量連結ライン」が、「画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成され」、「補助容量ライン」を「他の補助容量ラインと電気的に接続」することに相当する。
先願発明の「データバスライン18と平行に形成された複数の蓄積容量バスライン28」は、「画素電極30」とで「蓄積容量C_(s2)」を形成するものであるが、訂正特許発明1の「補助容量連結ライン」は、「補助容量」を形成するものであるか否かが不明である。しかし、訂正特許発明1の「補助容量連結ライン」は「画素電極と重畳する」ものであるから、「補助容量連結ライン」も「画素電極」とで何らかの容量を形成するものであることが明らかであることを考慮すれば、先願発明の「データバスライン18と平行に形成された複数の蓄積容量バスライン28」は、訂正特許発明1の「補助容量連結ライン」に相当するといえる。
また、先願発明の「データバスライン18と平行に形成された複数の蓄積容量バスライン28」は、「画素電極30」とで「蓄積容量C_(s2)」を形成することから、「蓄積容量バスライン28」は「画素電極30」に重畳することは明らかである。
したがって、先願発明の「データバスライン18と平行に形成された複数の蓄積容量バスライン28」「とを有」し、「蓄積容量バスライン26と蓄積容量バスライン28とは,表示領域11内で互いに交差しており、交差している領域において互いに電気的に接続されて」いることは、訂正特許発明1の「前記補助容量ラインは、前記画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成される補助容量連結ラインによって、他の前記補助容量ラインと電気的に接続され」、「前記補助容量連結ラインは、」「画素電極と重畳する」ことに相当する。

<対応関係c>
先願発明の「蓄積容量バスライン28は3画素おきに設けられている」ことは、訂正特許発明1の「前記補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つ配列され」ることに相当する。

以上の対応関係からして、訂正特許発明1と先願発明とは、
「行方向に複数形成され、ゲート電圧を伝達するゲートラインと、列方向に複数形成され、信号電圧を伝達するドレインラインと、行方向に複数形成される補助容量ラインと、前記ゲートライン及び前記ドレインラインの交点に対応して配置されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続され、液晶を駆動する画素電極と、前記補助容量ラインに連結され、前記画素電極と共に信号電圧を保持する補助容量とを有するアクティブマトリクス型表示装置において、
前記補助容量ラインは、前記画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成される補助容量連結ラインによって、他の前記補助容量ラインと電気的に接続され、
前記補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つ配列され、かつ、画素電極と重畳する
アクティブマトリクス型表示装置。」
の発明である点で一致し、以下の各点で相違する。

(相違点1)
「表示装置」に関して、訂正特許発明1は、「赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置」と限定しているのに対して、先願発明はそのような限定をしておらず、かつ、「補助容量連結ライン」に関して、訂正特許発明1は、「特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され」るのに対して、先願発明は、接続電極を特定の色の画素領域に形成するとはしていない点。

(相違点2)
「補助容量」の構造に関して、訂正特許発明1は、「前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」いと限定しているのに対して、先願発明は「蓄積容量C_(s1)は、画素電極30と蓄積容量バスライン26とで形成されて」いる点。

(相違点3)
先願発明は、「蓄積容量バスライン28が設けられた開口率の小さい画素に対応する、均一な大きさの開口部78が設けられている」「遮光パターン76」を有するのに対して、訂正特許発明1は、そのような遮光パターンを有するか否かが不明である点。

(2)相違点についての検討
(2-1)相違点1について
液晶表示装置でカラー表示を行うことは極めてよく知られたことであり(甲第15号証にも記載されている)、その具体的手段として、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うことも、乙第1号証に記載されるように周知である。
しかし、先願明細書等には、カラー表示についての記載は一切なく、かつ、カラー表示を示唆する記載も一切ないから、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うことが周知であるということを参酌しても、液晶表示装置においてカラー表示であるか否かは大きな違いであって、具体化手段における微差とはいえないから、相違点1が実質的な相違点ではないとすることはできない。
したがって、訂正特許発明1と先願発明とは、相違点1により実質的に相違する。

(2-2)相違点2について
請求人は、「前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成は、甲第9?12号証、並びに、甲第13号証、甲第14号証に示されるように周知の構成にすぎないから、実質的な相違点ではないと主張する。
そこで、甲第9?14号証に記載された事項を検討する。
甲第9号証には、補助容量配線3とドレイン電極6により補助容量を形成するという事項が記載されている。
すると、甲第9号証には、訂正特許発明1の「前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成に相当する構成は記載されているものの、「前記補助容量ラインに連結された補助容量電極」に相当する構成は記載されていない。

甲第10号証には、補助容量線(Cs線)3と補助容量電極(Cs電極)10により補助容量を形成するという事項が記載されている。
すると、甲第10号証には、訂正特許発明1の「前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成に相当する構成は記載されているものの、「前記補助容量ラインに連結された補助容量電極」に相当する構成は記載されていない。

甲第11号証には、付加容量線6とドレイン電極4aにより付加容量を形成するという事項が記載されている。
すると、甲第11号証には、訂正特許発明1の「前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成に相当する構成は記載されているものの、「前記補助容量ラインに連結された補助容量電極」に相当する構成は記載されていない。

甲第12号証には、電極25aと電極27により付加容量を形成するという事項が記載されている。
すると、甲第12号証には、訂正特許発明1の「前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成に相当する構成は記載されているものの、「前記補助容量ラインに連結された補助容量電極」に相当する構成は記載されていない。

甲第13号証には、第1のシリコン薄膜28と第2のシリコン薄膜によりMOSキャパシタを形成するという事項が記載されている。
すると、甲第13号証には、訂正特許発明1の「前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成に相当する構成は記載されているものの、「前記補助容量ラインに連結された補助容量電極」に相当する構成は記載されていない。

甲第14号証には、第二電極43と第一電極41により補助容量を形成するという事項が記載されている。
すると、甲第14号証には、訂正特許発明1の「前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成に相当する構成は記載されているものの、「前記補助容量ラインに連結された補助容量電極」に相当する構成は記載されていない。

したがって、請求人の提示した甲第9?14号証の記載からは、「前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成は、周知の構成であるとはいえない。

ただし、請求人が提示したものではない、特開平10-148843号公報(段落【0027】、図1,2、「付加容量下部電極」、「付加容量上部電極」参照)、特開2000-2889号公報(段落【0024】、図1?3、「ドレイン電極8」、「Cs配線3」参照)、特開2000-214464号公報(段落【0023】?【0024】、図1、「SC電極1」、「SC線2」参照)に示されるように、「前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成は、周知の構成であると認められる。
しかし、先願明細書等には、蓄積容量を形成する具体的手段としては、蓄積容量バスライン26及び蓄積容量バスライン28と、画素電極30とで形成する構成が記載されるのみであるから、「前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではな」い構成が周知であるということを参酌しても、補助容量を具体的にどのような電極構造で実現するかは、表示領域内の各素子の平面配置や層構成に大きな影響を与えるものであって、具体化手段における微差とはいえないから、相違点1が実質的な相違点ではないとすることはできない。
したがって、訂正特許発明1と先願発明とは、相違点2により実質的に相違する。

(2-3)相違点3について
先願発明は、先願明細書等の段落【0143】?【0149】を参照すると、「蓄積容量バスライン28は3画素おきに設けられて」いるから、蓄積容量バスライン28が設けられた画素と設けられない画素とでは開口率が異なり、輝度が異なることになるので、「蓄積容量バスライン28が設けられた開口率の小さい画素に対応する、均一の大きさの開口部が設けられている」、すなわち、蓄積容量バスライン28が設けられた開口率の小さい画素に対応する大きさの開口部を、蓄積容量バスライン28が設けられない開口率の大きい画素にも設けるというものである。
すると、先願発明では、蓄積容量バスライン28をすべての画素に設けた構成(「第1実施形態」)と開口率が同じであって、「蓄積容量バスライン28は3画素おきに設けられて」いる構成により、開口率の低下を抑えるという技術思想は存在しないと解するのが相当である。
これに対して、訂正特許発明1では、遮光パターンを有するか否かが不明であるが、当業者の技術常識に照らせば、カラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置では遮光パターン(ブラックマトリクス)を設けることが通常であるから、訂正特許発明1においても、遮光パターンを設けることは、当然に想定されていると認められる。
しかし、訂正特許発明1は、「前記補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つ配列され」る構成により、補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができるという効果を奏し得るのであるから、遮光パターンを設けるとしても、補助容量連結ラインが設けられない画素の開口率を、補助容量連結ラインが設けられた画素の開口率に合わせて小さくするような遮光パターンとすることは想定していないと解するのが相当である。
すると、訂正特許発明1は、先願発明の「遮光体パターン76は、蓄積容量バスライン28が設けられた開口率の小さい画素に対応する、均一な大きさの開口部78が設けられている」構成に相当する構成は含み得ないと認められる。
したがって、訂正特許発明1と先願発明とは、相違点3により実質的に相違する。

(3)訂正特許発明1についての小括
以上のとおり、訂正特許発明1は先願発明と実質的に同一とはいえない。

4-2-2 訂正特許発明3?6について
訂正特許発明3?6は、訂正特許発明1のすべての発明特定事項を有するものであるから、訂正特許発明1と同様、先願発明と実質的に同一とはいえない。

4-3 無効理由4についてのまとめ
以上のとおり、訂正特許発明1,3?6は先願発明と実質的に同一とはいえず、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、同法第123条第1項第2号の規定によっては無効とすることはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、訂正特許発明1,3?6についての特許は、いずれも特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものではなく、また、訂正特許発明1,3?6についての特許は、いずれも同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではなく、また、訂正特許発明1,3?6についての特許は、いずれも同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、また、訂正特許発明1,3?6についての特許は、いずれも同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではないから、訂正特許発明1,3?6についての特許は、同法第123条第1項第1、2、4号の各号に該当せず、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
アクティブマトリクス型表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向に複数形成され、ゲート電圧を伝達するゲートラインと、列方向に複数形成され、信号電圧を伝達するドレインラインと、行方向に複数形成される補助容量ラインと、前記ゲートライン及び前記ドレインラインの交点に対応して配置されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続され、液晶を駆動する画素電極と、前記補助容量ラインに連結され、前記画素電極と共に信号電圧を保持する補助容量とを有するアクティブマトリクス型表示装置において、
前記補助容量ラインは、前記画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成される補助容量連結ラインによって、他の前記補助容量ラインと電気的に接続され、
前記アクティブマトリクス型表示装置は、赤、緑、青の三原色の画素領域を列単位でストライプ状に配列してカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置であり、
前記補助容量は、前記補助容量ラインに連結された補助容量電極と、前記スイッチング素子を介して信号電圧が供給される補助容量電極とで形成され、前記信号電圧が供給される補助容量電極は画素電極を構成するものではなく、
前記補助容量連結ラインは、前記画素領域の列の3つにつき1つに配列され、特定の色を表示する画素電極を有する画素領域にのみ選択的に形成され、かつ画素電極と重畳する
ことを特徴とするアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項2】
前記特定の色は緑であることを特徴とする請求項1に記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項3】
前記補助容量連結ラインは、全ての前記補助容量ラインに接続されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項4】
1本の前記補助容量ラインは少なくとも1本の前記補助容量連結ラインに接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項5】
前記補助容量ラインは、前記ゲートラインと同じ層に形成され、前記補助容量連結ラインは、前記ドレインラインと同じ層に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【請求項6】
前記表示領域の外部に、前記補助容量ラインの端部に電気的に接続された補助容量バスラインを有し、前記補助容量連結ラインは、前記補助容量バスラインに電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアクティブマトリクス型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクティブマトリクス型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、「TFT」と称する。)等をスイッチング素子として用いたアクティブマトリクス型表示装置は、画素領域ごとに設けられた光学的変換素子に信号電圧を加え、輝度を変化させることによって映像を表示する表示装置であり、光学的変換素子には、例えば液晶やエレクトロルミネッセンス素子が用いられている。
【0003】
図7及び図8に、従来のアクティブマトリクス型液晶表示装置を示す。図7は、従来のアクティブマトリクス型液晶表示装置の平面図であり、図8は、その等価回路図である。
【0004】
アクティブマトリクス型液晶表示装置1は、ビデオデータライン2R、2G、2Bと、ゲートドライバ3及びドレインドライバ4と、補助容量バスライン5と、表示領域6で構成されている。ドレインドライバ4は、シフトレジスタ7及び列選択スイッチ8で構成されている。表示領域6は、ゲートドライバ3から延びるゲートライン9と、ドレインドライバ4から延びるドレインライン10と、補助容量バスライン5から行方向に延びる補助容量ライン11と、画素領域12で構成されている。画素領域12は、ゲートライン9及びドレインライン10に囲まれた領域であり、1つの画素領域12につき、TFT13と、画素電極14と、補助容量15が設けられている。補助容量15は、半導体層13sに一体化して形成される補助容量電極15a及び補助容量ライン11に一体化して連結される補助容量15bで構成されている。
【0005】
ビデオデータライン2R、2G、2Bは、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の信号電圧をドレインドライバ4に伝達する配線である。ゲートドライバ3は、時分割的に一定の電圧(ゲート電圧)を供給するゲートライン9を選択する回路である。ドレインドライバ4は、シフトレジスタ7及び列選択スイッチ8からなり、ビデオデータライン2R、2G、2Bによって伝達された信号電圧を、シフトレジスタ7により選択されたドレインライン10の列選択スイッチ8をONにして、そのドレインライン10に信号電圧を伝達する。補助容量バスライン5は、アルミニウム(Al)からなり、表示領域6の外部において、補助容量ライン11の端部とコンタクトを介して接続され、全ての補助容量ライン11を連結する。表示領域6は、複数の画素領域12を有し、画像を表示する領域である。シフトレジスタ7は、ドレインライン10を選択し、ビデオデータライン2R、2G、2Bによって伝達された信号電圧を供給する回路である。列選択スイッチ8は、シフトレジスタ7の選択の有無によってドレインライン10の電流を制御するスイッチである。ゲートライン9は、クロム(Cr)からなり、ゲートドライバ3から行方向に延びる配線であり、ゲートライン9から分岐してTFT13のゲート13gが形成されている。ゲートドライバ3に選択されたゲートライン9は、選択されたゲートライン9それから分岐したTFT13のゲート13gにゲート電圧を伝達する。ドレインライン10は、補助容量バスライン5と同じ層のアルミニウム(Al)で形成されてドレインドライバ4から列方向に延びる配線であり、コンタクトを介してTFT13のドレインに電気的に接続され、信号電圧をTFT13に伝達する。補助容量ライン11は、ゲートライン9と同じ層のクロム(Cr)から形成され、行方向に並ぶ補助容量電極15bに一体化して連結されている。画素領域12は、1つの画素を表示する領域であり、TFT13及び画素電極14及び補助容量15が配置されている。TFT13は、ゲートライン9から分岐したゲート13g及び半導体層13sからなり、画素電極14及び補助容量15へ信号電圧を供給する電流のON/OFFを切り換える。画素電極14は、供給された信号電圧によって液晶を駆動し、映像を表示させる。補助容量15は、TFT13の半導体層13sに一体化して形成された補助容量電極15aと、補助容量ライン11に一体化して連結された補助容量電極15bとからなる容量であり、画素電極14とともにと共に供給された信号電圧を保持する。
【0006】
画像を表示する際、ゲートドライバ3により、ゲートライン9に対し、順次選択的にゲート電圧が印加される。あるゲートライン9にゲート電圧が印加されている間に、シフトレジスタ7によって、ドレインライン10の列選択スイッチ8が順次選択的にON状態になり、信号電圧を伝達していく。そして、ゲートライン9及びドレインライン10共に電圧が印加されている画素領域12内のTFT13に接続された画素電極14及び補助容量15にのみ、信号電圧が印加される。一定時間を経過すると選択されていたドレインライン10の列選択スイッチ8がOFF状態になり、次に選択されるドレインライン10の列選択スイッチ8がON状態になり、同様の動作が行われる。次に、画素電極14は、供給された信号電圧によって液晶を駆動し、信号電圧に応じた輝度で表示を行う。また、画素電極14は、信号電圧の印加が終わっても、次に信号電圧が印加されるとき、即ち、次のフレームまで、補助容量15と共に信号電圧を保持する。
【0007】
画素の増加に伴って、現在、複数のドレインライン10の列選択スイッチ8を同時にON状態にして、同時に複数の画素電極14に対して信号電圧を印加する方法が行われている。これにより、ドレインライン10が画素電極14に信号電圧を印加する時間を十分確保することができる。図8においては、3本のドレインライン10の列選択スイッチ8が同時にON状態になっている。
【0008】
特に、大型または高精細の表示パネルを点順次駆動するときには、数十本のドレインライン10を同時にON状態にして、数十の画素電極14に対して同時に信号電圧を印加する。このように、数十本のドレインライン10の列選択スイッチ8が同時にON状態になると、選択されているドレインライン10と、補助容量ライン11とが交差する部分において、大きな容量結合が発生する。この容量結合によって、補助容量ライン11やゲートライン9の電圧が、ドレインライン10の電圧の影響を受けて変動してしまう。この電圧変化により、同時に列選択スイッチ8がON状態になるドレインライン10を単位に画像のムラが発生することがある。このムラを解消するため、ドット反転駆動及び垂直反転駆動により、行方向に隣り合う画素電極14若しくはドレインライン10に互いに逆極性の電圧を印加するようにして、補助容量ライン11やゲートライン9の電圧が容量結合の影響を受けにくい回路構造にしていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ドット反転駆動及び垂直反転駆動は、行方向に隣り合う画素に同じ極性の電圧を印加する水平反転駆動や、対向電極の電圧の極性を一定時間毎に逆転させる対極AC(交流)駆動においては、原理上実施することができないため、画像のムラを解消することができない。特に、対極AC駆動は表示パネルの低消費電力化に有効であるため、行方向に隣り合う画素に同じ極性の電圧を印加する方式においても、画像のムラの解消が求められている。また、ドット反転駆動及び垂直反転駆動は回路構成が複雑となるため、不良品や故障の発生率が高く、歩留まりの低下を招いていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、行方向に複数形成され、ゲート電圧を伝達するゲートラインと、列方向に複数形成され、信号電圧を伝達するドレインラインと、行方向に複数形成される補助容量ラインと、前記ゲートライン及び前記ドレインラインの交点に対応して配置されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子を介してドレインラインに接続される画素電極と、前記補助容量ラインに連結され、前記画素電極と共に信号電圧を保持する補助容量とを有するアクティブマトリクス型表示装置において、前記補助容量ラインは、前記画素電極が配置される表示領域内において列方向に形成される補助容量連結ラインによって、他の前記補助容量ラインと電気的に接続されるアクティブマトリクス型表示装置である。
【0011】
さらに、前記補助容量連結ラインは、隣り合う前記ドレインラインの間に形成されているアクティブマトリクス型表示装置である。
【0012】
さらに、前記補助容量連結ラインは、全ての前記画素領域に形成されているアクティブマトリクス型表示装置である。
【0013】
さらに、前記補助容量連結ラインは、全ての前記ドレインラインの隣に形成されているアクティブマトリクス型表示装置である。
【0014】
または、前記補助容量連結ラインは、複数本の前記ドレインラインにつき1本の前記ドレインラインの隣に形成されているアクティブマトリクス型表示装置である。
【0015】
さらに、前記補助容量連結ラインは、全ての前記補助容量ラインに接続されるアクティブマトリクス型表示装置である。
【0016】
または、1本の前記補助容量ラインは少なくとも1本の前記補助容量連結ラインに接続されているアクティブマトリクス型表示装置である。
【0017】
さらに、前記アクティブマトリクス型表示装置は、赤、緑、青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置であり、前記補助容量連結ラインは、緑を表示する画素電極を有する画素領域にのみ形成されるアクティブマトリクス型表示装置である。
【0018】
さらに、前記補助容量ラインは、前記ゲートラインと同じ層に形成され、前記補助容量連結ラインは、前記ドレインラインと同じ層に形成されるアクティブマトリクス型表示装置である。
【0019】
さらに、前記表示領域の外部に、前記補助容量ラインの端部に電気的に接続された補助容量バスラインを有し、前記補助容量連結ラインは、前記補助容量バスラインに電気的に接続されるアクティブマトリクス型表示装置である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、第1の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の平面図であり、図2は、その等価回路図である。
【0021】
アクティブマトリクス型液晶表示装置1は、ビデオデータライン2R、2G、2Bと、ゲートドライバ3及びドレインドライバ4と、補助容量バスライン5と、表示領域6で構成されている。ドレインドライバ4は、シフトレジスタ7及び列選択スイッチ8で構成されている。表示領域6は、ゲートドライバ3から行方向に延びるゲートライン9と、ドレインドライバ4から列方向に延びるドレインライン10と、補助容量バスライン5から行方向に伸びる補助容量ライン11と、画素領域12で構成されている。画素領域12は、ゲートライン9及びドレインライン10に囲まれた領域であり、1つの画素領域12につき、TFT13と、画素電極14と、補助容量15が設けられている。補助容量15は、半導体層13sに一体化して形成される補助容量電極15a及び補助容量ライン11に一体化して連結される補助容量電極15bで構成されている。本実施形態では、全ての画素領域12に形成された補助容量ライン11が、コンタクトを介して補助容量連結ライン16に接続され、大きな網目状の容量を形成している。
【0022】
ビデオデータライン2R、2G、2Bは、それぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の信号電圧をドレインドライバ4に伝達する配線である。ゲートドライバ3は、時分割的にゲート電圧を供給するゲートライン9を選択する回路である。ドレインドライバ4は、シフトレジスタ7及び列選択スイッチ8からなり、ビデオデータライン2R、2G、2Bによって伝達された信号電圧を、シフトレジスタ7により選択されたドレインライン10の列選択スイッチ8をONにして、そのドレインライン10に接続されたTFT13に信号電圧を伝達する。補助容量バスライン5は、アルミニウム(Al)からなり、表示領域6の外部において、補助容量ライン11の端部とコンタクトを介して接続され、全ての補助容量ライン11を連結する。表示領域6は、複数の画素領域12を有し、画像を表示する領域である。シフトレジスタ7は、ドレインライン10を選択し、ビデオデータライン2R、2G、2Bによって伝達された信号電圧を供給する回路である。列選択スイッチ8は、シフトレジスタ7の選択の有無によってドレインライン10の電流を制御するスイッチである。ゲートライン9は、クロム(Cr)からなり、ゲートドライバ3から行方向に延びる配線であり、ゲートライン9から分岐してTFT13のゲート13gが形成されている。ゲートドライバ3に選択されたゲートライン9は、選択されたゲートライン9それから分岐したTFT13のゲート13gにゲート電圧を伝達する。ドレインライン10は、補助容量バスライン5と同じ層のアルミニウム(Al)で形成されてドレインドライバ4から列方向に延びる配線であり、コンタクトを介してTFT13のドレインに電気的に接続され、TFT13に信号電圧を伝達する。補助容量ライン11は、ゲートライン9と同じ層のクロム(Cr)から形成され、行方向に並ぶ補助容量電極15bに一体化して連結されている。画素領域12は、1つの画素を表示する領域であり、TFT13及び画素電極14及び補助容量15が配置されている。TFT13は、ゲートライン9から分岐したゲート13g及び半導体層13sからなり、画素電極14及び補助容量15へ信号電圧を供給する電流のON/OFFを切り換える。画素電極14は、供給された信号電圧に応じて、例えば液晶やELを駆動し、映像を表示させる。補助容量15は、TFT13の半導体層13sから延びて一体化して形成された補助容量電極15aと、補助容量ライン11の幅を広げて一体化して連結された補助容量電極15bとからなる容量であり、画素電極14と共に供給された信号電圧を保持する。補助容量連結ライン16は、ドレインライン10及び補助容量バスライン5と同じ層のアルミニウム(Al)で形成され、コンタクトを介して補助容量ライン11に接続され、全ての補助容量ライン11を連結している。
【0023】
画像を表示する際、ゲートドライバ3により、ゲートライン9に対し、順次選択的にゲート電圧が印加される。あるゲートライン9にゲート電圧が印加されている間に、シフトレジスタ7によって、ドレインライン10の列選択スイッチ8が順次選択的にON状態になり、信号電圧を供給する伝達していく。ゲートライン9及びドレインライン10共に対して同時に電圧が印加されている画素領域12内のTFT13に接続された画素電極14及び補助容量15に対してのみ、信号電圧が印加される。なお、図2本実施形態においても、従来と同様、3本のドレインライン10の列選択スイッチ8が同時にON状態となっている。ドレインライン10は、一定時間を経過するとその選択されていたドレインライン10の列選択スイッチ8がOFF状態になり、次に選択されるドレインライン10の列選択スイッチ8がON状態になってなり、同様の動作を行うが行われる。そして次に、画素電極14は、印加された信号電圧によって、例えば液晶やELを駆動し、信号電圧に応じた輝度で表示を行う。また、画素電極14は、信号電圧の印加が終わっても、次に信号電圧が印加されるとき、即ち、次のフレームまで、補助容量15と共に信号電圧を保持する。
【0024】
ところで、上述したように、従来、電極や信号線が重なる領域には容量結合が発生する。この容量結合は、画素電極14及び補助容量15に信号電圧が印加されている画素領域12に対応するゲートライン9及びドレインライン10の交差部分で最も大きく発生する。そして、この容量結合は、信号電圧が印加されている画素電極14及び補助容量15を有する画素領域12にある内の補助容量15及びそれに連結された補助容量ライン11及び補助容量15に対して最も大きな影響を与える。の電位を最も大きく変動させる。これに対し、本実施形態のアクティブマトリクス型液晶表示装置1は、表示領域6の内部において、容量結合の影響を受け、信号電圧が変動した補助容量ライン11及び補助容量15に対して、補助容量連結ライン16を介して他の補助容量ライン11からも電荷を補い、信号電圧を矯正することができるため、容量結合に起因する画像のムラを解消することができる。
【0025】
本実施形態では別層として、補助容量ライン11とコンタクトを介して接続されているが、補助容量連結ライン16は、補助容量ライン11と同層の網目状に形成してもよい。ただし、補助容量連結ライン16は、ゲートライン9との交差が避けられないため、ゲートライン9と同じ層に形成される補助容量ライン11と同じクロム(Cr)の層に形成することができない。一方で、補助容量ライン11もまたドレインライン10との交差が避けられない。従って、補助容量ライン11と補助容量連結ライン16とを同じ層に形成しようとすると、ゲートライン9ともドレインライン10とも同じ層にできないため、新たな層を別に形成しなければならず、新たな工程及び製造コストが増加する。それに比較して、それに比べ、本実施形態では、補助容量連結ライン16は、補助容量ライン11とは別の層である。即ち、補助容量ライン11はゲートライン9と同じクロム(Cr)、補助容量ライン16はドレインライン10と同じアルミニウム(Al)の層として形成し、コンタクトを介して補助容量ライン11に接続されている。補助容量連結ライン16は、ドレインライン10と同時に形成されているため、補助容量連結ライン16を形成するために特別な工程を増やす必要がない。補助容量連結ライン16は、補助容量ライン11とは別の層、即ち、ドレインライン10と同じアルミニウム(Al)の層として形成し、コンタクトを介して補助容量ライン11に接続されている。ところで、別の層に形成され、コンタクトによって連結される配線は、一般的に、コンタクトによって大きな抵抗が加わり、同じ層に形成される配線よりも電荷の移動が遅くなってしまう。しかし、本実施形態における補助容量連結ライン16は、低抵抗のアルミニウム(Al)で形成されているため、補助容量ライン11及びゲートライン9と同じクロム(Cr)の層で形成される場合よりも電荷の移動が速い。そのため、本実施形態の補助容量ライン11と補助容量連結ライン16は、これらが同じクロム(Cr)の層に形成される場合に比較して、電荷の移動が速い。補助容量連結ライン16は、容量結合の影響を受け、信号電圧が変動した補助容量15及び補助容量ライン11に対して、他の補助容量ライン11からすばやく電荷を補い、信号電圧を矯正することができる。
【0026】
本実施形態は、透過型及び反射型の表示装置に用いても同様の効果を奏するが、補助容量連結ライン16は、金属であるアルミニウム(Al)で形成されるため、画素電極14の補助容量連結ライン16が形成された領域では、図示しないバックライトから入射した光が遮光され、開口率が低下してしまうことから、反射型の表示装置で実施するのが好ましい。
【0027】
次に、第2の実施形態について図3及び図4を用いて説明する。図3は、第2の実施形態にかかるアクティブマトリクス型カラー液晶表示装置の平面図であり、図4は、その等価回路図である。図3は、配線をわかりやすくするため、図1に比べ、画素領域の構成を省略しているが、これは図1と同様である。その他の構成も、第1の実施形態と同じものについては、図に同じ番号を付し、説明を省略している。
【0028】
アクティブマトリクス型液晶表示装置1は、ビデオデータライン2R、2G、2Bと、ゲートドライバ3及びドレインドライバ4と、補助容量バスライン5と、表示領域6で構成されており、ドレインドライバ4は、シフトレジスタ7及び列選択スイッチ8で構成され、表示領域6は、ゲートライン9、ドレインライン10、補助容量ライン11及び画素領域12で構成されていることは、第1の実施形態と同様である。図3に示されるR、G、Bは、それぞれの列の画素領域12が表示する色であり、Rが(赤)、Gが(緑)、Bが(青)である。なお、本実施形態において、各画素領域12は、各画素領域12に対応して形成された図示しない赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタにより、列単位で赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色を表示するストライプ状配列である。
【0029】
本実施形態の特徴的な点は、第1の実施形態とは異なり、各列に補助容量連結ライン16は配置されておらず、ドレインライン10の3本につき1本の隣に補助容量連結ライン16が配置され、コンタクトを介して全ての補助容量ライン11を連結している点である。
【0030】
本発明は、全ての画素領域に補助容量連結ラインが配置されている必要はなく、第1の実施形態より補助容量連結ラインの本数が少なくても、近くに配置された補助容量連結ラインを介して他の補助容量ラインから電荷を補い、信号電圧を矯正することができる。また、本実施形態では、第1の実施形態よりも補助容量連結ラインが少ないため、補助容量連結ラインによる開口率の低下を抑えることができる。
【0031】
ところで、赤(R)、緑(G)、青(B)という光の3原色のうち、人間の目は緑に対する感度が特に高く、他の2色に対する感度は低い。即ち、緑の輝度を他の2色に比べて多少低くしても、人間の目には暗いと認識されない。また、補助容量連結ライン16が形成され、画素電極14の開口率が低下すると、その画素領域12で表示される部分の輝度が低下してしまう。
【0032】
従って、図3に示すように、本実施形態では、緑(G)を表示する画素領域12にのみ、補助容量連結ライン16を選択的に配置した。これによって、緑(G)の輝度のみが低下するが、赤(R)及び青(B)の輝度は低下しない。従って、表示装置の使用者に開口率の低下を認識させることなく、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。そのため本実施形態は、表示領域の一部における開口率及び輝度の低下を利用して、良好なカラーバランスを得ることができるため、透過型の表示装置であっても、本発明をより効果的に実施することができるものである。
【0033】
次に、第3の実施形態について図5及び図6を用いて説明する。図5は、第3の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の平面図であり、図6は、その等価回路図である。図5は、配線をわかりやすくするため、図1に比べ、画素領域の構成を省略しているが、これは図1と同様である。第1の実施形態と同じものについては、図に同じ番号を付し、説明を省略する。
【0034】
アクティブマトリクス型液晶表示装置1は、ビデオデータライン2R、2G、2Bと、ゲートドライバ3及びドレインドライバ4と、補助容量バスライン5と、表示領域6で構成されており、ドレインドライバ4は、シフトレジスタ7及び列選択スイッチ8で構成され、表示領域6は、ゲートライン9、ドレインライン10、補助容量ライン11及び画素領域12で構成されていることは、第1の実施例と同様である。
【0035】
本実施形態での特徴的な点は、第1の実施形態において、表示領域6の外側に列方向に形成され、コンタクトを介して補助容量ライン11を連結していた補助容量バスライン5が、行方向にも補助容量連結ライン16と連続して形成されていることである。
【0036】
一般的に、補助容量バスライン5は、表示領域6の外部に、ドレインライン10と同じ低抵抗のアルミニウム(Al)の層に形成され、全ての補助容量ライン11の一端とコンタクトを介して接続されている。そのため、補助容量バスライン5自体の抵抗が低くても、それに接続され、表示領域6の内部に配置される補助容量ライン11は、補助容量バスラインに比較して幅が細く、抵抗の高いクロム(Cr)で形成されているため抵抗が高く、信号電圧の保持に必要な電荷の伝達が遅いという欠点があった。
【0037】
しかし、本実施形態における補助容量バスライン5は、低抵抗のアルミニウム(Al)により、表示領域6の内部で補助容量ライン11を連結する補助容量連結ライン16と一体化して形成されている。そのため、本実施形態の補助容量バスライン5及び補助容量連結ライン16は、全ての補助容量ライン11に対して、第1の実施形態より多くの電荷をより速く伝達することができる。
【0038】
本発明にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置は、電圧が印加されているゲートライン及びドレインラインの容量結合によって信号電圧が変動した補助容量及び補助容量ラインが、複数の補助容量ラインを連結する補助容量連結ラインを介して他の補助容量ラインから電荷を補って信号電圧を矯正することができるため、画像のムラを解消することができる。容量結合による信号電圧の変動を防ぐことにより、行方向に隣り合う画素電極に同じ極性の信号電圧を印加する水平反転駆動や対極AC駆動を用いる表示装置においても、画像のムラを解消することができる。また、回路の構成が複雑になるドット反転駆動や垂直反転駆動を用いる必要がなく、簡単な回路構成ですむため、不良品の発生を抑えて歩留まりを向上させることができる。また、補助容量連結ラインは、ドレインラインと同じ層として、ドレインラインと同時に形成されるため、新たな工程を増やす必要がない。
【0039】
なお、各実施形態において、アクティブマトリクス型液晶表示装置を例示したが、本発明はこれに限定されず、アクティブマトリクス型のEL表示装置や、TFTアレイを用いた指紋センサにも適用することができる。
【0040】
【発明の効果】
本発明にかかるアクティブマトリクス型表示装置は、表示領域内において、補助容量ラインを連結する補助容量ラインが、補助容量連結ラインによって他の補助容量ラインと電気的に接続されることにより、ドレインラインと補助容量ラインやゲートラインとの容量結合に起因する補助容量及び補助容量ラインの電圧変化を抑制し、この電圧変化が原因で発生する画像のムラを防ぐことができる。そして、補助容量連結ラインが、表示領域の外部に形成される補助容量バスラインに電気的に接続されることにより、抵抗の低い補助容量バスラインを介して、他の補助容量連結ラインからより多くの電荷を速く補い、信号電圧を矯正することができるため、より効果的に画像のムラを防ぐことができる。また、本発明にかかる表示装置には、回路構成が複雑になる垂直ライン反転駆動やドット反転駆動を用いる必要がなく、簡単な回路構成で足りるため、不良品の発生を抑えて歩留まりを向上させることができる。また、補助容量連結ラインは、ドレインラインと同じ層として、ドレインラインと同時に形成されるため、新たな工程を増やす必要がない。
【0041】
さらに、赤、緑、青の三原色によるカラー表示を行うアクティブマトリクス型表示装置において、緑を表示する画素領域にのみ補助容量連結ラインを選択的に形成して開口率を下げることで、緑の輝度を他の2色より低くすることにより、他の2色に比べて緑に対する感度が高い人間の目に自然なカラーバランスで認識されるカラー表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の平面図である。
【図2】第1の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の等価回路図である。
【図3】第2の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の平面図である。
【図4】第2の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の等価回路図である。
【図5】第3の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の平面図である。
【図6】第3の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶表示装置の等価回路図である。
【図7】従来のアクティブマトリクス型液晶表示装置の平面図である。
【図8】従来のアクティブマトリクス型液晶表示装置の等価回路図である。
【符号の説明】
1:アクティブマトリクス型液晶表示装置
2:ビデオデータライン
3:ゲートドライバ
4:ドレインドライバ
5:補助容量バスライン
6:表示領域
7:シフトレジスタ
8:列選択スイッチ
9:ゲートライン
10:ドレインライン
11:補助容量ライン
12:画素領域
13:薄膜トランジスタ(TFT)
14:画素電極
15:補助容量
16:補助容量連結ライン
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-05-09 
結審通知日 2013-05-14 
審決日 2013-05-28 
出願番号 特願2001-228043(P2001-228043)
審決分類 P 1 113・ 841- YA (G09F)
P 1 113・ 161- YA (G09F)
P 1 113・ 121- YA (G09F)
P 1 113・ 853- YA (G09F)
P 1 113・ 854- YA (G09F)
P 1 113・ 852- YA (G09F)
P 1 113・ 851- YA (G09F)
P 1 113・ 537- YA (G09F)
P 1 113・ 855- YA (G09F)
P 1 113・ 55- YA (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横井 巨人  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 北川 清伸
土屋 知久
登録日 2009-08-07 
登録番号 特許第4353660号(P4353660)
発明の名称 アクティブマトリクス型表示装置  
代理人 尾崎 英男  
代理人 上野 潤一  
代理人 永島 孝明  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
代理人 磯田 志郎  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
代理人 安國 忠彦  
代理人 上田 忠  
代理人 上野 潤一  
代理人 尾崎 英男  

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