ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T |
---|---|
管理番号 | 1278015 |
審判番号 | 不服2011-6562 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-03-28 |
確定日 | 2013-08-13 |
事件の表示 | 特願2007-502248「幾何学的特徴データを決定すること,および使用すること」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月15日国際公開,WO2005/086082,平成19年10月 4日国内公表,特表2007-528068〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は,2005年(平成17年)3月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,2004年(平成16年)3月8日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって,平成22年6月23日付けの拒絶理由の通知に対し,平成22年10月6日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,平成22年11月18日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年3月28日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成23年12月5日付けで審尋がなされ,これに対し,平成24年3月5日付けで回答書が提出され,平成24年6月27日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,平成24年11月28日付けで意見書とともに誤訳訂正書が提出されたものである。 2 本願発明について (1)本願発明 本願の請求項1ないし18に係る発明は,平成24年11月28日付けの誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項6に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項6に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「【請求項6】 コンピュータにより,k次元,但しk=2または3,の空間に位置する物体(o)の形状に関する情報を表す特徴ベクトルを決定する方法であって, 該方法は,前記コンピュータが 物体(o)が位置する空間に複数のセル(p)を定め,この際,該複数のセル(p)の二つ以上によって該物体(o)が完全に含まれ,かつ,該複数のセル(p)の少なくとも二つが少なくとも部分的に互いに重なり合うように定める分割スキームを決定するステップと, 該複数のセル(p)に含まれる該物体(o)の各部分の少なくとも一つのプロパティーに基づいて該物体(o)の特徴ベクトルを決定するステップと, 前記決定された特徴ベクトルに基づいて,前記物体(o)に関する類似性探索または類似性分類を行うステップと,を実行するものであり, 該複数のセル(p)が少なくとも一つの入れ子構造のセルのグループ(gn)を含んでおり,該入れ子構造のセルのグループ(gn)の全てのセルが互いに入れ子関係にあること,を特徴とする方法。」 (2)平成24年6月27日付けの拒絶理由の概要 当審において平成24年6月27日付けで通知した拒絶理由のうち,「理由2. 3)」は,概要,本願の平成24年11月28日付けの誤訳訂正書による補正前の請求項3に係る発明は,その出願前に頒布された特開昭63-14291号公報,特開平8-147469号公報に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。 前記(1)の本願発明(補正後の請求項6に係る発明)は,補正前の請求項3に係る発明に対応するものと認められるから,上記拒絶理由は,本願発明に該当する。なお,補正前後の請求項の対応関係について,請求人は,平成24年11月28日付けの意見書において,「新請求項6は,図4,6,段落0030,0035に記載の実施例に対応する旧請求項3に記載の特徴を,新請求項1と同様にして独立項としたものです。」と釈明している。 (3)引用例 ア 特開平8-147469号公報(以下,「引用例」という。)には,次の記載がある。 a 「【0001】【産業上の利用分野】本発明は,特定のカラー画像を認識する技術に関する。」 b 「【0020】<実施例1>図1を参照するに,処理すべきカラー画像はRBG信号101の形で小領域分割部102とエッジ強度算出部103に入力する。小領域分割部102は,入力したカラー画像を所定の大きさの小領域に分割する。・・・ 【0021】エッジ強度算出部103は,画素毎に,近傍画素の濃度差から,色(R,G,B)別に,方向別のエッジ強度を画素毎に求め,この各色の方向別エッジ強度を小領域別に集計し,集計したデータ(エッジ強度データ)をエッジ強度メモリ104に格納する(図2,ステップ200?215)。 【0022】・・・ 【0023】・・・以上の処理が入力画像の全体について終了すると,エッジ方向算出部105による処理(図2のステップ220,225)が開始する。 【0024】エッジ方向算出部105は,エッジ強度メモリ104内の各小領域毎に集計されたエッジ強度データを参照し,各小領域毎に,RGB各色別の各方向のエッジ強度を比較し,エッジ強度が最も大きい方向をエッジ方向とする処理を行ない,その結果をエッジ方向データとしてエッジ方向メモリ106に格納する。 【0025】・・・ 【0026】以上の処理が全小領域について終わると,特徴量算出部107及び認識部108による処理(図2のステップ230?250)が始まる。特徴量算出部107は,所定数の小領域からなる領域(大領域と呼ぶ)を小領域単位で入力画像上において移動させつつ(図2のステップ250),エッジ方向メモリ106を参照し,大領域に含まれる全小領域に関するRGB各色別のエッジ方向のヒストグラムを作成し,これを大領域の特徴量とする(図2のステップ235)。・・・ 【0027】・・・ 【0028】認識部108は,特徴量算出部107より渡された特徴量データと,同様の方法で一つまたは複数の特定のカラー画像について予め作成されて辞書109に登録されている特徴量データとのマッチングを行なう(図2のステップ245,250)。・・・」 c 「【0041】<実施例6>本実施例の処理内容は基本的には前記実施例1あるいは実施例2,3または4と同様である。相違点は次のとおりである。 【0042】特徴量算出部107の特徴量算出処理(図2のステップ235)において,例えば図12(A)に示すように,大領域の全体についての特徴量を求めるとともに,大領域の中心部についての特徴量をも求める。そして,特徴量データを,図12(B)に示すように,大領域全体の特徴量データと中心部の特徴量データとを並べた形式とする。当然,辞書109の特徴量データも同様の形式とする。 【0043】入力画像を小領域に分割する際に,入力画像と辞書とのずれが発生し,これはそのまま大領域のずれとなるが,大領域の中心部はその影響を受けにくい。したがって,本実施例のように大領域の中心部の特徴量もあわせて抽出すれば,入力画像と辞書とのずれによる影響を受け難くくなり,認識性能が向上する。」 d 「【図12】 (A)実施例6における大領域とその中央部の説明図である。 (B)実施例6における特徴量データを示す図である。」(【図面の簡単な説明】) e 実施例6の説明図である図12を参照すれば,大領域の全体部内に,その全体が前記全体部に重なるように中心部が設けられた状態が図示されている。 【図12】 イ 上記記載から,引用例には次の発明が記載されていると認められる。 「入力したカラー画像を所定の大きさの小領域に分割し,所定数の小領域からなる大領域について,当該大領域に含まれる全小領域に関するRGB各色別のエッジ方向のヒストグラムを作成して当該大領域の特徴量とし,当該特徴量データと,同様の方法で予め作成されて辞書に登録されている特徴量データとのマッチングを行なう方法において, 大領域の全体部内に,その全体が前記全体部に重なるように中心部が設けられており,大領域の全体部についての特徴量と,大領域の中心部についての特徴量を求め,大領域全体の特徴量データと中心部の特徴量データとを並べて特徴量データとする方法。」 (4)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明は,カラー画像に関する特徴量データを作成し,同様の方法で予め作成されて辞書に登録されている特徴量データとのマッチングを行なうための技術であって,カラー画像は,少なくとも「2次元の空間に位置する物体」ということができ,また「マッチング」が,画像(物体)の「類似性探索又は類似性分類」を目的としたものであることは自明である。 引用発明の「特徴量データ」は,「入力したカラー画像を所定の大きさの小領域に分割し,所定数の小領域からなる大領域について,当該大領域に含まれる全小領域に関するRGB各色別のエッジ方向のヒストグラムを作成して当該大領域の特徴量」としたデータであり,いわゆる「特徴ベクトル」ということができる。さらに,引用発明は,「大領域全体の特徴量データと中心部の特徴量データとを並べて特徴量データとする」ものであり,この結果得られた,図12(B)に示される形式の「特徴量データ」も,2種類の特徴量データから構成される「特徴ベクトル」ということができる。したがって,いずれにしても,引用発明における「特徴量データ」は,本願発明の「特徴ベクトル」に相当するものである。 また,引用発明において,マッチングがコンピュータにより実行されることは,技術常識である。 そうすると,本願発明と引用発明は,「コンピュータにより,k次元,ただしk=2,の空間に位置する物体の形状に関する情報を表す特徴ベクトルを決定する方法」であるとともに,「決定された特徴ベクトルに基づいて,物体に関する類似性探索又は類似性分類を行う」方法に係る技術である点で共通する。 イ 引用発明は,「入力したカラー画像を所定の大きさの小領域に分割し,所定数の小領域からなる大領域について,当該大領域に含まれる全小領域に関するRGB各色別のエッジ方向のヒストグラムを作成して当該大領域の特徴量」とすることを基本とし,「大領域の全体部内に,その全体が前記全体部に重なるように中心部が設けられており,大領域の全体部についての特徴量と,大領域の中心部についての特徴量を求め,大領域全体の特徴量データと中心部の特徴量データとを並べて特徴量データとする」ものであるところ,「大領域に含まれる全小領域に関するRGB各色別のエッジ方向のヒストグラム」は,本願発明における「少なくとも一つのプロパティー」に相当し,「大領域」,「大領域の全体部」及び「大領域の中心部」は,本願発明の「セル」に相当し,また,「大領域の全体部内に,その全体が前記全体部に重なるように中心部が設けられ」た構成は,本願発明における「複数のセルが互いに重なり合う」構成であって,「複数のセルが少なくとも一つの入れ子構造のセルのグループを含んでおり,該入れ子構造のセルのグループの全てのセルが互いに入れ子関係にある」構成に相当する。 そうすると,本願発明と引用発明は,「物体が位置する空間に複数のセルを定め,該複数のセルが互いに重なり合うように定める分割スキームを決定」し,「複数のセルに含まれる物体の各部分の少なくとも一つのプロパティーに基づいて該物体の特徴ベクトルを決定する」ものであって,「複数のセルが少なくとも一つの入れ子構造のセルのグループを含んでおり,該入れ子構造のセルのグループの全てのセルが互いに入れ子関係にある」点で共通する。 ウ 以上のことから,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,実質的には,次のとおりである。 [一致点] 「コンピュータにより,k次元,ただしk=2,の空間に位置する物体の形状に関する情報を表す特徴ベクトルを決定する方法であって, 該方法は,前記コンピュータが 物体が位置する空間に複数のセルを定め,該複数のセルの少なくとも二つが少なくとも部分的に互いに重なり合うように定める分割スキームを決定するステップと, 該複数のセルに含まれる該物体の各部分の少なくとも一つのプロパティーに基づいて該物体)の特徴ベクトルを決定するステップと, 前記決定された特徴ベクトルに基づいて,前記物体に関する類似性探索又は類似性分類を行うステップと,を実行するものであり, 該複数のセルが少なくとも一つの入れ子構造のセルのグループを含んでおり,該入れ子構造のセルのグループの全てのセルが互いに入れ子関係にある, 方法。」 [相違点1] 本願発明は,「k次元,ただしk=2又は3」,すなわち,「2次元又は3次元」の空間に位置する物体を対象としているのに対し,引用発明は,少なくとも「2次元」の空間に位置する物体であるカラー画像を対象としており,「3次元」の空間に位置する物体を含むことは特定されていない点。 [相違点2] 「物体が位置する空間に複数のセルを定め,該複数のセルの少なくとも二つが少なくとも部分的に互いに重なり合うように定める分割スキーム」において,本願発明は,「複数のセルの二つ以上によって物体が完全に含まれる」のに対し,引用発明は,そのような特定がされていない点。 (5)判断 ア 相違点1について 本願発明は,「2次元又は3次元」の空間に位置する物体を対象としており,他方,引用発明におけるカラー画像も,少なくとも「2次元の空間に位置する物体」であるから,本願発明が対象とする物体に含まれるものである。また,2次元のカラー画像とともに3次元のカラー画像も周知であることに鑑みれば,引用発明が対象とするカラー画像に係る技術が,3次元のカラー画像においても適用可能であることは,当業者であれば容易に想到し得ることである。 イ 相違点2について 本願発明は,「複数のセルが少なくとも一つの入れ子構造のセルのグループを含んでおり,該入れ子構造のセルのグループの全てのセルが互いに入れ子関係にある」のであるから,相違点2に係る「複数のセルの二つ以上によって物体が完全に含まれる」状態とは,最も大きい領域を有するセルによって物体が完全に含まれる状態である。 引用発明は,「大領域の全体部内に,その全体が前記全体部に重なるように中心部が設けられて」いる,すなわち,大領域の全体部と中心部が互いに入れ子関係にあり,大領域全体の特徴量データと中心部の特徴量データとから構成される特徴量データと,同様の方法で予め作成されて辞書に登録されている特徴量データとのマッチングを行なうのであるから,大領域の全体部に含まれる画像は,それ自体がマッチング対象の画像(物体)であり,これは,「複数のセルの二つ以上によって物体が完全に含まれる」状態にほかならない。 仮に,相違点2に係る発明特定事項が,物体に応じて,「複数のセルの二つ以上によって物体が完全に含まれる」ように複数のセルを定めることを意味するとしても,例えば,当審の拒絶理由で引用された特開昭63-14291号公報に,「本発明は,文字パターンをメッシュ領域に分割する方式に関する。・・・文字パターンをメッシュ領域に分割し,各メッシュ領域毎に文字パターンの特徴量を集約して扱う文字認識方式が知られている。」(1ページ左下欄16行?右下欄1行)と記載されていることからも明らかなように,認識対象である物体(文字パターン)に応じて,複数のセル(メッシュ領域)により物体(文字パターン)が完全に含まれるように複数のセルを定めることは,当該技術分野における周知技術であり,引用発明において,セルに相当する大領域によってマッチング対象の画像が完全に含まれるように大領域を定めることは,当業者が容易に想到し得ることである。 したがって,相違点2は,格別のことではない。 ウ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本願発明は,上記拒絶理由のとおり,引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 むすび 以上のとおり,本願の請求項6に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-03-06 |
結審通知日 | 2013-03-13 |
審決日 | 2013-03-28 |
出願番号 | 特願2007-502248(P2007-502248) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06T)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 紀田 馨、野崎 大進 |
特許庁審判長 |
西山 昇 |
特許庁審判官 |
金子 幸一 井上 信一 |
発明の名称 | 幾何学的特徴データを決定すること、および使用すること |
代理人 | 高橋 佳大 |
代理人 | 星 公弘 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 矢野 敏雄 |