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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1278023
審判番号 不服2012-2642  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-10 
確定日 2013-08-13 
事件の表示 特願2001-249239「超音波を使用した3次元的復元」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月16日出願公開,特開2002-113004〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成13年8月20日(パリ条約による優先権主張日 平成12年8月18日,米国,平成13年7月10日,米国)の出願であって,平成23年9月30日付けで同年6月17日付けの手続き補正についての補正却下の決定がなされると共に,同日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年2月10日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正(以下「本件補正」という)がなされたものである。さらに,同年10月15日付けで審尋がなされ,回答書が同年12月6日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1 補正後の請求項1に係る発明

本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりに補正された。(下線は補正箇所を示す)

「【請求項1】 対象物体内の腔の表面をマップ化する装置に於いて,
縦軸線を有し,該腔内への挿入に適合した遠位の部分を有する,細長いプローブと,
該プローブの該遠位の部分上に該縦軸線に沿って分布された,複数の音響変換器とを具備しており,
該変換器は該プローブが該腔内にある間に音波を放射するべく個別に駆動されるよう適合されており,そして更に該腔の該表面からの該波の反射後該音波を受信するよう,そして該受信波に応じて,該波の飛翔時間を示す電気信号を発生するように適合されており,
該プローブは,該身体内の該プローブの位置座標を示す信号を発生するよう適合された位置センサーを備え,
該変換器を順に駆動するよう,そして該飛翔時間に基づいて該腔の該表面の3次元的形状を復元するために該変換器により発生される該電気信号を受信し,処理するよう適合された制御回路を具備し,
該腔内の電気的活動に応じた電気信号を該回路に伝えるよう適合され,該プローブの該遠位の部分上に配置された1つ以上の電極を具備しており,該回路は該電極からの該信号に応じて,該表面の該3次元的形状の上に該電気的活動の指示を重畳させるよう適合されており,
該3次元的形状の画像を表示するために該回路によりドライブされるデイスプレーを具備し,
該身体内へ音波を送信するが,該送信は,該音波が該プローブ上の該音響変換器により受信され,該音響変換器に電気的基準信号を発生させるように送信するものであり,該送信に適合された複数の基準変換器を該身体外に具備しており,該回路は該プローブの位置座標を決定するために該基準信号を処理するよう適合されており,該決定された位置座標に応じて,該回路は該身体内の該3次元的形状の位置を規定するよう適合されていることを特徴とする装置。」

上記補正は,「該身体内へ音波を送信するが,該送信は,該音波が該プローブ上の該音響変換器により受信され,該音響変換器に電気的基準信号を発生させるように送信するものであり,該送信に適合された複数の基準変換器を該身体外に具備しており,該回路は該プローブの位置座標を決定するために該基準信号を処理するよう適合されており,該決定された位置座標に応じて,該回路は該身体内の該3次元的形状の位置を規定するよう適合されている」との限定事項を付加するものであるといえる。

そうすると,前記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成18年法改正前」という)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項

(1)本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-188100号公報(以下「刊行物1」という)には,「カテーテル局在化システム」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。なお,以下において,下線は当審にて付与したものである。

(1-ア)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 人間あるいは動物の身体の三次元写像に関する写像情報から該人間あるいは動物の身体の部位に関連するカテーテルヘッドの位置を定めるためのカテーテル局在化システムにして,該カテーテル局在化システムは,複数個の音響トランスデューサと,信号処理ユニットとを有しており,前記複数個の音響トランスデューサは,前記カテーテルヘッドのまわりに離隔された関係をなして配備されており,該カテーテルヘッドは,使用時,前記身体の部位の所定の場所に位置決めされており,前記信号処理ユニットは,音響信号源として作用する前記複数個の音響トランスデューサのうちの少なくとも1つにより発生され且つ音響レシーバとして作用する前記複数個の音響トランスデューサにより受領された音響信号のフライトの測定された回数に関する第1の組の測定データの結果として生ずる前記身体の部位の前記三次元写像を定めるよう作動しており,前記音響信号の前記フライトの回数は前記源音響トランスデューサと前記身体の部位から反射された前記レシーバ音響トランスデューサとの間で走行される距離を示しているカテーテル局在化システム。」

(1-イ)
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,人間の身体あるいは動物の身体の部位に関連してカテーテルのチップ即ち尖端の位置に関するデータを提供するよう作用するカテーテル局在化システムに係わる。」

(1-ウ)
「【0011】信号処理ユニットは,人間の身体の部位の三次元画像を示す写像データを定め,第2に,身体の部位の写像と組み合わせて測定データに関するカテーテルヘッドの位置を定めるよう作動してもよい。
【0012】カテーテルトラッキングシステムは,更に,表示手段を含んでもよく,該表示手段は,身体部位の三次元画像を示す前記写像データを表示するよう作用し,また,前記カテーテルヘッドも表示される。」

(1-エ)
「【0015】
【発明の実施の形態】図1はカテーテルを概略図示しており,該カテーテルは,本発明の一実施例に従ったカテーテル局在化システムの一部を形成している。図1において,カテーテル1は,内方の細長い部材2と,外方の鞘体4とからなっているとして示されている。カテーテル1は,更に,ヘッド6を概ね有しており,該ヘッド6には,離隔された関係をなして音響トランスデューサ8が配備されている。例えば,音響トランスデューサはペゾ(Pezo)電気装置であってもよい。細長い部材2は,鞘体4内で共軸線関係をなして移動するようにされている。図1に示されたカテーテルが心電図記録を遂行するべく用いられる構成は図2に示されており,該図2では,図1に関する部品も同じ数字の記号で示されている。
【0016】心電図記録法は,外部に施された電極,より具体的には,心臓内に挿入されるカテーテルの尖端に位置決めされた電極を用いて,心臓により作り出される電気信号を記録するためのプロセスである。かくて,本実施例においては,センサー12は電気センサーを代表しており,該電気センサーは,使用時,人間の心臓内の所望の場所に位置決めされるようにされていなければならない。この目的のため,カテーテル1はメイン動脈を介して身体内に導入され,また,患者の心臓に並置された場所まで,メイン動脈に沿って操縦される。音響信号源として作用する音響トランスデューサ8により発生され,且つ,音響信号のレシーバとして作用する音響トランスデューサ8により受領された信号の作動により,信号処理ユニット18は心臓の内側の三次元表示を発生するよう作用し,該心臓の内側は,導体22を介して信号処理ユニットに結合された表示手段即ちモニター20に表示されてもよい。
【0017】作動時,カテーテル局在化システムは,図3及び図4に関連して説明される以下のプロセスに従って心臓の三次元的表示を発生するよう作用し,該図3及び図4は心臓内のカテーテル1をより詳細に示しており,また,図4は音響信号の放出を図示している。図3及び図4の双方において,図1及び図2に示されている部品も同じ番号で示されている。心臓の三次元表示に関する写像データは,カテーテルヘッド6と心臓の壁との間の測定された距離から発生される。これらの距離は,音響信号源から音響センサーへの音響信号のフライト時間を定めることにより測定される。かくて,音響信号源から音響センサーへの音響信号のフライト時間を測定することにより,音響信号源として作用する音響トランスデューサ8により発生され且つセンサーとして作用する音響トランスデューサにより検出された各音響信号に対し距離は定められてもよい。それ故,各音響トランスデューサ8に対しては,音響信号が発生され,また,心臓の壁を介しての音響トランスデューサ8からの音響信号のフライトの時間は,音響トランスデューサ8の位置に対応する角度及び面での距離を定めるのに用いられる。かくて,カテーテル1のヘッドのまわりに音響トランスデューサを位置決めすることにより,カテーテル1の,ヘッド6からの複数個の距離をモニターすることができる。このことは距離D1,D2,D3及びD4により図3に示されており,該距離D1,D2,D3及びD4は,音響信号のフライトの方向を示す矢印に隣接して位置決めされているとして示されている。当業者には容易に理解される通り,本発明の例示実施例は異なるモードで,即ち,まず最初に信号源として,次いで,音響センサーとして作動する音響トランスデューサとともに記載されたけれども,別個の音響源及びセンサーを用いてカテーテルヘッドのまわりの異なる位置に位置させることができる。
【0018】本発明の実施例は,任意の数の音響トランスデューサで実施させることができる。カテーテルヘッドに配備されているトランスデューサが多くなると,これらのトランスデューサにより発生される距離測定によって得られる解像度即ち分解能の度合いが高くなる。例えば,カテーテルヘッドのまわりに均一に分布された64個のトランスデューサの場合,わずか25度だけ分離された距離測定が提供される。64個のビームを用いることは,ブリタニア インターネット マガジン (Britania Internet Magazine)1996 (http://www.britania.com/science/scanners. html)に発表された J.Newell による「世界の最も小さなカメラによりスキャンされた動脈(Arteries Scanned by World's Smallest Camera)」と題する刊行物に記録されている。しかし,電気接続部の数には実際的な限定があり,該電気接続部は,カテーテルヘッドへの反対側の端部のところでカテーテルになることができる。従って,より少ない数のトランスデューサが好ましいであろう。作業可能なシステムは,45度の角方向分離で測定音響ビームを提供する16個の素子に基づくことができる。
【0019】図1から理解される通り,音響トランスデューサ8は離隔された関係をなして配置されているとともにカテーテルヘッド6に隣接した細長い部材2の水膨れされた表面に,ある角度をなして位置決めされるよう配備されており,それにより,それにより発生される音響信号は半球形態に概ね似ている測定を提供するようにされた角度で指向されてもよい。かくて,音響トランスデューサ8の各々は信号を発生するよう配備されているとともに心臓の壁から戻ってくる信号のフライト時間を測定し,また,フライト時間に従って,細長い部材2の音響トランスデューサの形状及び位置によって定まる方向の距離を測定する。さて,心臓の三次元画像を示す写像データを定めるのに用いることができる例示技術を,図4,図5,図6及び図7を参照して説明する。
【0020】図4は,カテーテルヘッド6に配備されている音響トランスデューサにより発生された音響信号の例示的表示を示しており,トランスデューサの角度は音響信号の走行方向に従った距離のベクトル測定を提供している。かくて,カテーテルヘッド6が心臓14内に配備された状態で,第1の組の距離測定を発生させることができる。かような第1の組の例は図5に示されている。図5において,カテーテルヘッド6は位置24のところで心臓の壁内に位置決めされている。位置24も図3に示されている。位置24では,信号処理回路が18が作動して音響トランスデューサを付勢させるとともに,音響トランスデューサから心臓の壁に走行して該音響トランスデューサに戻る音響信号を発生する。それ故,音響信号のフライト時間は距離D1,D2,D3,D4,D5,D6,D7及びD8を定めるよう作用する。しかし,このことは心臓の壁の三次元写像を定めるには十分でないかも知れない。それ故,カテーテルヘッドは位置26のところに再位置決めされてもよい。このことは図3にも示されている。位置26において,測定プロセスは繰り返され,距離D9,D10,D11,D12,D13,D14,D15及びD16が,信号処理ユニット18との組み合わせで音響トランスデューサにより発生される。このことは図6に示されているダイアグラムに示されている。その後,信号処理ユニット18は,ポイント24及び26のところで定められた距離測定を重畳するよう作動し,そして,画像処理及び補間技術を用いて心臓の壁14の三次元写像を定める。このことは図7に概念的に示されており,該図7では,図5及び図6のポイント24及び26から測定された距離が重畳して且つ分解して示されていて心臓の壁の内側の面が三次元の形をなして分解されている。」

(1-オ)
「【0025】更に,カテーテルヘッドは工具12を備えていてもよく,該工具12は心電図記録を定めるのに用いられてもよい。あるいは,工具12は別の形式のセンサーであってもよく,あるいは,心臓の内側に対していくつかの外科的作業を行うのに用いてもよい。」

(1-カ)図1には,カテーテル1のヘッド6に,カテーテル1の軸線に沿って,音響トランスデューサ8が複数設けられていること,および,カテーテル1の先端に,センサー12が設けられていることが記載されている。

上記記載事項(1-ア)?(1-カ)ならびに図1?4を総合すると,刊行物1には次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「人間あるいは動物の身体の三次元写像に関する写像情報から該人間あるいは動物の身体の部位に関連するカテーテルヘッドの位置を定めるためのカテーテル局在化システムにおいて,
該カテーテル局在化システムは,
内方の細長い部材2と外方の鞘体4とヘッド6からなるカテーテル1と,
複数個の音響トランスデューサ8と,
カテーテル1の先端に設けられたセンサー12と,
信号処理ユニットと,
前記信号処理ユニットに結合された表示手段即ちモニター20と,
を有しており,
前記複数個の音響トランスデューサ8は,前記カテーテル1の軸線に沿って,前記カテーテルヘッドのまわりに離隔された関係をなして配備されており,
該カテーテルヘッドは,使用時,前記身体の心臓内等の部位の所定の場所に位置決めされており,
前記信号処理ユニットは,音響信号源として作用する前記複数個の音響トランスデューサのうちの少なくとも1つにより発生され且つ音響レシーバとして作用する前記複数個の音響トランスデューサにより受領された音響信号のフライトの測定された回数に関する第1の組の測定データの結果として生ずる前記身体の部位の前記三次元写像を定めるよう作動しており,前記音響信号の前記フライトの回数は前記源音響トランスデューサと前記身体の部位から反射された前記レシーバ音響トランスデューサとの間で走行される距離を示している,
カテーテル局在化システム。」

(2)本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特許第2765738号公報(以下「刊行物2」という)には,「音響画像システムおよび方法」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。

(2-ア)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】生体の予め選択された部位における内部形体の情報を取得する装置であって,
長手軸線,近位端部および遠位端部を有するカテーテルであって,前記遠位端部が前記予め選択された部位に対して位置付けられ且つ前記内部形体の前記情報が前記遠位端部において取得され得るよう,前記生体内に部分的に挿入されるべく構成されているものと,
前記遠位端部において前記カテーテルに結合されるデータ取得手段であって,前記データ取得手段は,前記遠位端部において前記カテーテルの前記長手軸線を横切るデータ取得軸線の全体的方向で前記生体の前記情報を取得し,前記長手軸線周りの前記カテーテルの回転は,前記データ取得軸線を前記長手軸線周りに回転させる,ものと,
前記データ取得手段の前記生体内における空間位置と,前記空間位置に対する前記長手軸線周りの前記データ取得軸線の角度方向とを決定する位置検出手段であって,前記データ取得手段によって取得された,そのような空間位置及び角度方向の各々における前記生体の情報は,特定の円筒座標位置に関係付けられ得ると共に,複数の前記円筒座標位置について取得された前記生体の情報は,空間的にクロス相関させられ得る,ものと,
を具備する装置。
【請求項2】前記データ取得手段は,前記生体内に向けて前記データ取得軸線の全体的方向に音響信号を発生すると共に,前記音響信号に応じて前記データ取得軸線の全体的方向に前記生体によって反射されたエコー信号を受信するトランスデューサ手段を備えている請求項1記載の装置。」

(2-イ)
「第1図および第2図を参照すると,生体の予め選択された部位内の内部特徴を画像形成する好適な装置は一般に22で示した長手軸線を有するカテーテル20を備ている。このカテーテルは,近位端部23と遠位端部24え備えており,更に遠位端部24が冠状動脈28などの予め選択された部位における,或いはその部位内の予め選択された位置に配置されるように,一方近位端部23が,これが医師により把持可能な生体外に配置されるように生体26内に部分的に挿入されるように構成される。第1図に示したように,カテーテル20の遠位端部24は,この端部が冠状動脈の要部内に位置決めでき,動脈硬化の有無を知るためそれらの要部を画像処理し,更に血管壁から疾患組織を剥離するレーザ照射を行うように設計される。しかしながら,本発明は人体の他の要部を画像処理するために使用できるが,レーザ放射を特定部位に与えるように構成される必要はない点が認められるべきである。
第2図において,カテーテル20は動脈28内に配置され,遠位端部24の先端部分30が32で示した狭窄病変の要部の逆側に配置された状態を示している。先端部分30内に確保された電気音響トランスデューサ手段34は,カテーテル20内に配置された絶縁電気導体40に沿って送出された電気パルスに応じて,伝搬軸線38の一般方向で,カテーテル20の長手軸線22に対して横断するように,先端部分30から音響パルスのビームを送出するように配置される。トランスデューサ手段34は,一般に親出願に示されるように,送信および受信モードの間を任意に切り替えられる単一のトランスデューサを備えることができるが,好適には,一方が送信用に,他方が受信用に割当てられた2個のトランスデューサを備える。軸線38に沿って送出された音響パルスは動脈28の病変部32およびその下の動脈壁に達する。トランスデューサ手段に向けて異なる組織の各種表面のインピーダンス不整合により反射された音響エコーはトランスデューサ手段34により電気信号に再変換され,これらの電気信号は導体40に沿って(音響エネルギーの送受信に対して単一トランスデューサが使用される場合),または個別対の導体40aに沿って(1対のトランスデューサの場合,一方は音響エネルギーの送信用に,他方は受信用)返送される。音響エコーは,これらのエコーがトランスデューサ手段34により検出される各々の位置における1組のデータDを表わす。これらの信号により病変部および周囲組織の像が形成される。」(公報7頁13欄42行?14欄33行)

(2-ウ)
「トランスデューサ手段34の特定位置および軸線38の角度方向を決定するために,本発明の装置は更に,人体の外部から,人体26内のトランスデューサ手段の位置および長手方向軸線22周りの軸線38の角度方向を決定する位置検出手段を備えている。この位置検出手段は好適には,(a)生体外に配置され,対応する所定基準周波数の基準信号を発生する手段と,(b)カテーテル上に配置されデータ検出軸線に対してほぼ固着されて基準信号の各々を検出する手段と,(c)この検出手段により受信された信号を処理してトランスデューサ手段34の相対位置および軸線38の角度方向を決定する手段とを備える。 好適には,第1図に示したように,上記基準信号を発生する手段は,トランスデューサ手段34の位置を決定するための予め選択された周波数(図にはf3で示した)の超音波基準信号を発生する,トランスデューサ60の形態の,手段を備える。超音波信号の周波数f3は生体26を容易に伝搬するのに十分高く,また超音波信号の位相差が画像形成される生体部分内でトランスデューサ手段の相対位置を表わすように,画像形成される生体部分,例えば,動脈28の部分に対して十分な長波長を与えるべきである。例えば,2cmの断面積の冠状動脈を0.5mmの増分で画像形成する場合,超音波信号は100KHzの周波数では約1.5cmの波長を与えるものであればよい。トランスデューサ60は,これを,好適には以下で説明する画像形成手順の間にカテーテル20の遠位端部24が配置される領域の近傍で,生体26の外表皮に直接テープで留めて,または確保することにより容易に適切に配置することができる。
上記基準信号を発生する手段は更に,カテーテル20の遠位端部24の方向に1対の基準磁場を送出すると供に長手軸線22に対してデータ検出軸線38の角度方向を決定するために使用される「電磁放射イルミネータ」70を備えている。第1図に示したように,このイルミネータ70は1対のコイル72aと72bを備え,各々は2つの交流基準磁場(それぞれ,H1およびH2として示された)を発生するように,磁気的に導電性の材料,例えば,フェライトの個別コア要素74周りに巻回される。これらの磁場は,互いに横行し,好適には互いに直行する平面内で,図面でf1,f2で示した2つの異なる周波数で発生される。一方,これらの2つの磁場は,周波数は同じだが,位相を互いにずらして発生させることができる。周波数f1およびf2は,第4図により以下に図示,説明するように,これらの周波数が,生体運動からの妨害に対して感度が低いようにかなり大きく,無線周波数に対して感度が低いように十分小さく,更に比較的小形のアンテナにより,好適にはカテーテルの遠位端部24に配置されたループ100の形態をなすアンテナにより容易に検出されるように一定の周波数範囲以内にあるように選択される。f1およびf2は,例えば,それぞれ,16KHzおよび20KHzであるが,これらの周波数は変化させることができる。好適には,コイル72a,72bおよびコア要素74は,適切に支承され(例えば支承体76に),磁場の面が互いに垂直になるように互いに垂直に配向される。2つの磁場の偏光面H1,H2が交差する部分に形成される交差線により定められるイルミネータ70の方向は,装置の動作に実質的に影響を与えずに20度程度の角度を許容できるが,遠位端部においてカテーテルの長手軸線22とほぼ同軸をなしてカテーテル20の遠位端部24の近似的な位置に向けられるべきである。
第3図を参照すると,信号発生器90により音響信号S1を発生することができる。この信号発生器90はトランスデューサ60に適切に接続され,周波数f3のAC信号を発生する。磁場H1,H2は,それぞれの周波数f1,f2のAC信号を発生するそれぞれの信号発生器92a,92bにコイル72a,72bを接続することにより容易に発生させることができる。
第4図に最良に示したように,音響信号S1および磁場H1とH2を検出する手段は,好適には,S1を検出するトランスデューサ手段34および磁場H,H2を検出するアンテナワイヤループ100により与えられる。トランスデューサ手段34は,このトランスデューサ手段により発生された音響信号に応じて信号S1およびサウンディング組織からの音響反射を受信することができる。アンテナワイヤループ100はループの平面を通過する磁場H1,H2の成分を検出するように形状が定められる。ループ100は,磁場の成分を適切に検出できるように十分大きくなされ,しかも外装54内に容易に嵌合すると共に,ループがカテーテル20の,その遠位端部24での屈曲に起因してその平面から曲げられたとき形成される歪を最小にできるように十分小さく形成される。ループの寸法は例えば長さ方向が約20mm(カテーテルの長手方向軸線22の方向に沿う)で幅が約0.7mm(約14×10-6m2の受容面積を定めるように長手軸線に対して直角をなして)になされる。トランスデューサ手段34は好適にはループ内に位置づけられると共にループに対して固着され,データ検出軸線38は,ループがデータ検出軸線に対して常にほぼ固着された状態にするようにループの平面に垂直に延在する。」(公報8頁15欄5行?16欄42行)

(3)本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表平9-503677号公報(以下「刊行物3」という)には,「像形成,電位検出型及び切除カテーテル」に関して,図面とともに,次の事項が記載されている。

(3-ア)
「【特許請求の範囲】
1.生物の体内で使用する音響式像形成システムにして,
前記生物の前記体内に挿入し得る構造とされた細長い可撓性のカテーテルと,
前記細長い可撓性のカテーテル内に組み込まれた超音波装置と,
前記細長い可撓性のカテーテルの末端部分に取り付けられた電極と,
前記細長い可撓性のカテーテルの基端から前記末端部分まで伸長する複数の導電体とを備え,該複数の導電体の少なくとも二つが,前記超音波装置に接続され,前記複数の導電体の少なくとも一つが前記電極に接続され,
前記超音波装置が,前記生物の前記体内の内部構造体の超音波像を形成する目的にて,該内部構造体に向けて超音波信号を導入し得るように配置され,
前記電極が,前記超音波装置により像を形成した前記内部構造体と電気的に接触し得るように配置されることを特徴とする音響式像形成システム。
2.請求の範囲第1項に記載の音響式像形成システムにして,前記内部構造体が心臓組織を含むことを特徴とする音響式像形成システム。
3.請求の範囲第1項に記載の音響式像形成システムにして,前記電極が,該電極が前記内部構造体と電気的に接触するように配置されたとき,前記内部構造体内の電位を検出し得る構造とされた電気生理学的電極を備えることを特徴とする音響式像形成システム。」

(3-イ)
「一又は複数の電極が取り付けられ,操縦性があるカテーテルにより心臓を検査し,また,心臓内の電圧の測定及び波形を観察することにより心臓の機能の異常を検出することが可能であることを医者は知見している。医者が心臓の電気的活性の作用状態を理解したならば,次に,望むならば,切除(ablation)法により心臓の特定の一部を電気的に「切り離す」ことが可能である。多数の電極を使用する場合,該カテーテルは,心臓内で湾曲したとき,多数の測定を同時に行うことが可能である。このため,多数の電極を使用することは,心臓の状態を把握するのに必要な時間を短縮する。
心臓内の副経路に異常があるか否かを判断するため,心臓の電気的活性は,マッピング法により検出し且つ測定する。典型的なマッピング法は,心臓内の各種の位置を検査する遠隔制御式の電圧試験プローブとして,カテーテルに取り付けられた電気生理学的検出電極を利用する段階を含む。」(公報29頁9?20行)

(3-ウ)
「発明の概要
一つの形態において,本発明は,生物の体内で使用される音響式像形成装置であって,身体内に挿入し得る構造とした細長い可撓性のカテーテルと,該細長い可撓性のカテーテル内に組み込まれた超音波装置と,該細長い可撓性のカテーテルの末端部分に取り付けられた電極とを備える音響式像形成装置を特徴とする。細長い可撓性のカテーテルの基端部分から末端部分まで伸長する複数の導電体がある。その複数の導電体の少なくとも二つは,超音波装置に接続され,また,複数の導電体の少なくとも一つは電極に接続される。該超音波装置は,体内構造体の超音波像を形成する目的のため超音波信号を体内の内部構造体に導入し得るように配置され,電極は,該超音波装置により像が形成される内部構造体に電気的に接触し得るように配置される。
本発明は,心臓の解剖学的形態及び心臓の各種の室,弁,弁の環状体及び心臓のその他の領域に関するカテーテル及び電極の位置を表示する高解像度の像を利用して,電気生理学的方法で使用されるカテーテルの精密な制御及び方向の設定を可能にするものである。…」(公報32頁7?21行)

(3-エ)
「図34には,図13に示した型式の音響式像形成電子生理学的カテーテル368と,経食道プローブ370と,カテーテル368又は経食道プローブ370からデータを受け取って,ビデオ超音波像データを超音波ディスプレイ374に伝達する中央処理装置372と,図形的に,概略図的に,又はワイヤーフレームにより心臓の特定の領域を表示する,もう一つのディスプレイ装置376とを備え,該装置が,瞬間的な電圧,又は心臓周期の全体に亙る電圧の何れかを図形,概略図又はワイヤーフレーム・ディスプレイの特定の位置に記録し且つ表示する電気生理学的装置のシステムが示してある。 一つの実施例において,ディスプレイ装置376は,HIS束の領域のような心臓の重要な機能部分を示す心臓の二次元的な断面像を表示する。この断面像は,カテーテル368又は経食道プローブ370から受け取った超音波像に基づき,又は経口スコープ382からのX線像に基づく。この断面像のその他の可能な供給源は,MRI,CT及びシンティグラフィを含む。超音波像形成機能のため,確実に行い得るが,カテーテル368を心臓の特定の領域に配置したとき,カテーテル368により検出された電圧電位が中央処理装置372により瞬間的に記録され,次に,図形中の特定の位置に表示される。心臓の電気生理学的マップが極めて迅速に形成される迄,心臓内の各種の位置にて多数の電圧電位が検出される。 ユーザ又は臨床医がデータの取得,情報の書き込み又は番号の読み上げではなくて,カテーテルの操作に集中することを望むため,足踏みペダル378が設けられており,このため,カテーテル368が特定の位置にあるとき,臨床医は,この足踏みペダル378を踏み込んで,中央処理装置372に対して電圧電位の情報を記録するように命令することが出来る。中央処理装置372は,超音波像形成データを受け取るため,中央処理装置372は,各電気生理学的電極の位置の特定の位置を把握し,これにより,ディスプレイ装置376により表示された像の上に電圧データを重ね合わせるべく位置を知る。これと代替的に,臨床医は,ディスプレイ装置374により表示された像を観測し,中央処理装置372に対しその電極の具体的な位置を表示することが出来る。
このように,中央処理装置372は,特定の時点における超音波像と,その瞬間及び特定の位置における電圧値との双方を記録する。このように,臨床医は,後の時点で検出電極をその特定の位置に戻して,その後の時点で検出された電圧をその前の記録した電圧と比較することが出来る。」(公報78頁22行?79頁25行)

3 対比・判断

(1)対比

補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明は「カテーテル局在化システム」であって,「人間あるいは動物の身体の三次元写像」を定めるものである。ここで,(1-エ)に「【0016】…信号処理ユニット18は心臓の内側の三次元表示を発生するよう作用し,該心臓の内側は,導体22を介して信号処理ユニットに結合された表示手段即ちモニター20に表示されてもよい。」とあるように,引用発明では,心臓の内側の三次元表示を発生するものであるから,引用発明においても,「対象物体内の腔の表面」の三次元表示を発生しているといえる。
また,本願明細書には,「【発明の詳細な説明】【0001】【産業上の利用分野】本発明は一般的には3次元的マップ化(three-dimensional mapping)及び復元(reconstruction)に関し,特に,心臓の様な,身体器官の内部のマップ化及び復元に関する。」と記載されていることから,補正発明における「マップ化」とは,「3次元的マップ化」のことであり,引用発明は「三次元写像」を定めるものであるから,引用発明と補正発明とは,「対象物体内の腔の表面をマップ化する装置」である点で一致する。

イ 引用発明における「カテーテル1」は,「内方の細長い部材2と外方の鞘体4とヘッド6」から成るものであり,(1-エ)に「【0016】…カテーテル1はメイン動脈を介して身体内に導入され,また,患者の心臓に並置された場所まで,メイン動脈に沿って操縦される。」とあることから,引用発明における「ヘッド6」および「カテーテル1」は,補正発明における「腔内への挿入に適合した遠位の部分」および「プローブ」に相当する。また,引用発明における「カテーテル1」が縦軸線を有することは明らかであるから,引用発明と補正発明とは,「縦軸線を有し,該腔内への挿入に適合した遠位の部分を有する,細長いプローブ」を具備した点で一致する。

ウ (1-カ)のとおり,引用発明における「カテーテル1」の「ヘッド6」には,「カテーテル1の軸線に沿って,音響トランスデューサ8が複数設けられて」おり,ここで,引用発明における「音響トランスデューサ8」が補正発明における「音響変換器」に相当することは明らかであるから,引用発明と補正発明とは,「該プローブの該遠位の部分上に該縦軸線に沿って分布された,複数の音響変換器」を具備する点で一致する。

エ (1-エ)に「【0017】…心臓の三次元表示に関する写像データは,カテーテルヘッド6と心臓の壁との間の測定された距離から発生される。これらの距離は,音響信号源から音響センサーへの音響信号のフライト時間を定めることにより測定される。かくて,音響信号源から音響センサーへの音響信号のフライト時間を測定することにより,音響信号源として作用する音響トランスデューサ8により発生され且つセンサーとして作用する音響トランスデューサにより検出された各音響信号に対し距離は定められてもよい。それ故,各音響トランスデューサ8に対しては,音響信号が発生され,また,心臓の壁を介しての音響トランスデューサ8からの音響信号のフライトの時間は,音響トランスデューサ8の位置に対応する角度及び面での距離を定めるのに用いられる。」とあることから,引用発明においても,音響トランスデューサが音響信号を発生し,心臓の壁からの前記音響信号の反射後,前記音響信号を受信していることは明らかである。
したがって,引用発明と補正発明とは,「該変換器は該プローブが該腔内にある間に音波を放射するべく」「駆動されるよう適合されており,そして更に該腔の該表面からの該波の反射後該音波を受信するよう,そして該受信波に応じて,該波の飛翔時間を示す電気信号を発生するように適合されて」いる点で共通する。

オ 上記エのとおり,引用発明においても,音響信号のフライトの時間に基づいて音響トランスデューサから心臓の壁までの距離を測定しており,さらに,(1-エ)に「【0020】…位置24では,信号処理回路が18が作動して音響トランスデューサを付勢させるとともに,音響トランスデューサから心臓の壁に走行して該音響トランスデューサに戻る音響信号を発生する。…このことは図3にも示されている。位置26において,測定プロセスは繰り返され,距離D9,D10,D11,D12,D13,D14,D15及びD16が,信号処理ユニット18との組み合わせで音響トランスデューサにより発生される。このことは図6に示されているダイアグラムに示されている。その後,信号処理ユニット18は,ポイント24及び26のところで定められた距離測定を重畳するよう作動し,そして,画像処理及び補間技術を用いて心臓の壁14の三次元写像を定める。」とあることから,引用発明においても,信号処理ユニット18が,音響トランスデューサを駆動し,前記フライトの時間に基づいて心臓の壁の三次元写像を定めているといえる。
したがって,引用発明における「信号処理ユニット18」と補正発明における「制御回路」とは,「該変換器を」「駆動するよう,そして該飛翔時間に基づいて該腔の該表面の3次元的形状を復元するために該変換器により発生される該電気信号を受信し,処理するよう適合された」点で共通する。

カ (1-エ)に「【0016】心電図記録法は,外部に施された電極,より具体的には,心臓内に挿入されるカテーテルの尖端に位置決めされた電極を用いて,心臓により作り出される電気信号を記録するためのプロセスである。かくて,本実施例においては,センサー12は電気センサーを代表しており…」とあることから,引用発明における「センサー12」は,心臓により作り出される電気信号を記録する電極であるといえる。そして,前記「センサー12」は「カテーテル1の先端に設けられた」ものであるから,「カテーテル1」の遠位の部分上に配置されているといえる。
したがって,引用発明と補正発明とは,「該腔内の電気的活動に応じた電気信号を」測定する,「該プローブの該遠位の部分上に配置された1つ以上の電極を具備」する点で共通する。

キ 引用発明は,「前記信号処理ユニットに結合された表示手段即ちモニター20」を有しており,(1-エ)に「…信号処理ユニット18は心臓の内側の三次元表示を発生するよう作用し,該心臓の内側は,導体22を介して信号処理ユニットに結合された表示手段即ちモニター20に表示されてもよい。」とあるように,「モニター20」は,心臓の内側の三次元表示を発生させるものであるから,引用発明と補正発明とは,「3次元的形状の画像を表示するために該回路によりドライブされるデイスプレーを具備」する点で一致する。

そうすると,両者は,

(一致点)
「対象物体内の腔の表面をマップ化する装置に於いて,
縦軸線を有し,該腔内への挿入に適合した遠位の部分を有する,細長いプローブと,
該プローブの該遠位の部分上に該縦軸線に沿って分布された,複数の音響変換器とを具備しており,
該変換器は該プローブが該腔内にある間に音波を放射するべく駆動されるよう適合されており,そして更に該腔の該表面からの該波の反射後該音波を受信するよう,そして該受信波に応じて,該波の飛翔時間を示す電気信号を発生するように適合されており,
該変換器を駆動するよう,そして該飛翔時間に基づいて該腔の該表面の3次元的形状を復元するために該変換器により発生される該電気信号を受信し,処理するよう適合された制御回路を具備し,
該腔内の電気的活動に応じた電気信号を測定する,該プローブの該遠位の部分上に配置された1つ以上の電極を具備し,
該3次元的形状の画像を表示するために該回路によりドライブされるデイスプレーを具備した,装置」

である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
補正発明では,「複数の音響変換器」が「個別に」および「順に」駆動されるよう適合されているのに対し,引用発明は,「音響トランスデューサ8」が「個別に」かつ「順に」駆動されるかどうか不明である点。

(相違点2)
補正発明では,「プローブ」が,「該身体内の該プローブの位置座標を示す信号を発生するよう適合された位置センサーを備え」ているのに対し,引用発明では,そのような構成を備えているか不明である点。

(相違点3)
補正発明では,「電極」が「該腔内の電気的活動に応じた電気信号」を「制御回路」に伝えるよう適合されており,「該回路は該電極からの該信号に応じて,該表面の該3次元的形状の上に該電気的活動の指示を重畳させるよう適合されて」いるのに対し,引用発明では,そのような構成を備えているか不明である点。

(相違点4)
補正発明では,「該身体内へ音波を送信するが,該送信は,該音波が該プローブ上の該音響変換器により受信され,該音響変換器に電気的基準信号を発生させるように送信するものであり,該送信に適合された複数の基準変換器を該身体外に具備しており,該回路は該プローブの位置座標を決定するために該基準信号を処理するよう適合されており,該決定された位置座標に応じて,該回路は該身体内の該3次元的形状の位置を規定するよう適合されている」のに対し,引用発明では,そのような構成を備えていない点。

(2)判断

上記相違点について検討する。

(相違点1について)
複数の音響変換器を個別にかつ順に駆動させることは,プローブを用いた超音波診断装置の分野においてよく知られた常套手段である。例えば特開平11-299781号公報には,「【0049】…超音波プローブ20の超音波振動子23a,23b,・・・,23nに個別に高電圧の駆動パルス信号を印加する。超音波振動子23a,23b,・・・,23nは,印加された駆動パルス信号により振動して超音波を発生する。発生した超音波は被検体に送信される。」と記載され,特開平9-276274号公報には,「【0027】…そして,複数の電子リニアスキャン型振動子素子を順次電子的に駆動して図1の2点鎖線で示す超音波観測領域46に対して電子リニアスキャンによる超音波断層画像28を得るようにしている。」と記載され,特開平9-108219号公報には,「【0004】…電子式走査にあっては,超音波トランスデューサとして,多数の超音波振動子を所定の方向に配列し,このように配列した超音波振動子を順次駆動することによって,所定の範囲にわたって走査される。」と記載されている。
そして,引用発明に上記常套手段を適用し,引用発明においても,「複数個の音響トランスデューサ8」を個別にかつ順に駆動するように為すことは,当業者であれば適宜為し得る設計的事項である。

(相違点2及び4について)
刊行物2には,(2-ウ)に「トランスデューサ手段34の特定位置および軸線38の角度方向を決定するために,本発明の装置は更に,人体の外部から,人体26内のトランスデューサ手段の位置および長手方向軸線22周りの軸線38の角度方向を決定する位置検出手段を備えている。…
好適には,第1図に示したように,上記基準信号を発生する手段は,トランスデューサ手段34の位置を決定するための予め選択された周波数(図にはf3で示した)の超音波基準信号を発生する,トランスデューサ60の形態の,手段を備える。…
上記基準信号を発生する手段は更に,カテーテル20の遠位端部24の方向に1対の基準磁場を送出すると供に長手軸線22に対してデータ検出軸線38の角度方向を決定するために使用される「電磁放射イルミネータ」70を備えている。…周波数f1およびf2は,第4図により以下に図示,説明するように,これらの周波数が,生体運動からの妨害に対して感度が低いようにかなり大きく,無線周波数に対して感度が低いように十分小さく,更に比較的小形のアンテナにより,好適にはカテーテルの遠位端部24に配置されたループ100の形態をなすアンテナにより容易に検出されるように一定の周波数範囲以内にあるように選択される。…
第4図に最良に示したように,音響信号S1および磁場H1とH2を検出する手段は,好適には,S1を検出するトランスデューサ手段34および磁場H,H2を検出するアンテナワイヤループ100により与えられる。」とあるように,「カテーテル20に設けられたトランスデューサ手段34の特定位置および軸線38の角度方向を決定するための位置検出手段として,生体外に配置され,前記トランスデューサ手段34に対して基準信号を発生するトランスデューサ60と,1対のコイル72a,72bを備えた電磁放射イルミネータ70と,前記電磁放射イルミネータ70からの交流基準磁場を検知する,カテーテル20に設けられたループ100の形態をなすアンテナ」が記載されているといえる。

また,基準磁場をコイルで検知することによって,前記コイルの3次元位置を決定することは,例えば特表平8-500441号公報または特表平11-510406号公報等に記載されているとおり周知の技術である。

そして,引用発明では,(1-ウ)のとおり,カテーテルヘッドの位置を定めるカテーテルトラッキングシステムが示唆されているから,前記カテーテルトラッキングシステムとして,刊行物2に記載の位置検出手段を採用し,その際,位置検出の精度向上のために,電磁放射イルミネータ70およびループ100の形態をなすアンテナに代えて前記周知の技術を適用することは,十分動機付けもあり,当業者であれば容易に想到し得ることである。

(相違点3について)
刊行物3には,(3-エ)に「図34には,図13に示した型式の音響式像形成電子生理学的カテーテル368と,経食道プローブ370と,カテーテル368又は経食道プローブ370からデータを受け取って,ビデオ超音波像データを超音波ディスプレイ374に伝達する中央処理装置372と,図形的に,概略図的に,又はワイヤーフレームにより心臓の特定の領域を表示する,もう一つのディスプレイ装置376とを備え,該装置が,瞬間的な電圧,又は心臓周期の全体に亙る電圧の何れかを図形,概略図又はワイヤーフレーム・ディスプレイの特定の位置に記録し且つ表示する電気生理学的装置のシステムが示してある。
一つの実施例において,ディスプレイ装置376は,HIS束の領域のような心臓の重要な機能部分を示す心臓の二次元的な断面像を表示する。この断面像は,カテーテル368又は経食道プローブ370から受け取った超音波像に…基づく。…カテーテル368を心臓の特定の領域に配置したとき,カテーテル368により検出された電圧電位が中央処理装置372により瞬間的に記録され,次に,図形中の特定の位置に表示される。心臓の電気生理学的マップが極めて迅速に形成される迄,心臓内の各種の位置にて多数の電圧電位が検出される。
…中央処理装置372は,超音波像形成データを受け取るため,中央処理装置372は,各電気生理学的電極の位置の特定の位置を把握し,これにより,ディスプレイ装置376により表示された像の上に電圧データを重ね合わせるべく位置を知る。」とあるように,心臓の電圧データと,超音波像の双方を検出し,前記電圧データを超音波像に重ねて表示することが記載されている。

そして,引用発明と刊行物3に記載の技術事項とは,共に,心臓の電気信号を検出する電極と,心臓内の超音波像を取得する超音波装置を備えたカテーテルを用いて,心臓の超音波像を表示手段に表示するものであるから,引用発明に刊行物3に記載の技術事項を適用し,引用発明においても,心臓の電気信号を,心臓の三次元写像に重畳表示させるようにすることは,十分動機付けがあり,当業者であれば容易に為し得ることである。

また,本願明細書に記載された相違点により奏する作用・効果も,刊行物1?3に記載された事項,前記常套手段,および上記周知の技術から予測し得る範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

4 請求人の主張について

請求人は,上記回答書において,「上述するように,本願の先に補正された特許請求の範囲の請求項1記載の発明の如く構成することについては,上記の引用文献1及び引用文献2においても,本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されるように構成することについては,何等記載しておらず,示唆もしていない。
更に,上記の引用文献3には,本願の先に補正された特許請求の範囲の請求項1記載の発明の如く構成することについては,何等記載しておらず,且つ示唆もしていない。本願の特許請求の範囲の請求項1記載の発明と,引用文献3記載のものとは構成が相違するものであり,本願発明は引用文献3記載のものから容易に推考し得るものではない。」と主張している。
しかしながら,上記したとおり,本願発明は,引用発明,刊行物2および3に記載された技術事項,前記常套手段,および上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。
したがって,請求人の主張は採用できない。

ゆえに,補正発明は,引用発明,刊行物2および3に記載された技術事項,前記常套手段,および上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ

以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1に係る発明は,平成23年3月2日付け手続補正書に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められ,その請求項1は次のとおりのものである。

「【請求項1】 対象物体内の腔の表面をマップ化する装置に於いて,
縦軸線を有し,該腔内への挿入に適合した遠位の部分を有する,細長いプローブと,
該プローブの該遠位の部分上に該縦軸線に沿って分布された,複数の音響変換器とを具備しており,
該変換器は該プローブが該腔内にある間に音波を放射するべく個別に駆動されるよう適合されており,そして更に該腔の該表面からの該波の反射後該音波を受信するよう,そして該受信波に応じて,該波の飛翔時間を示す電気信号を発生するように適合されており,
該プローブは,該身体内の該プローブの位置座標を示す信号を発生するよう適合された位置センサーを備え,
該変換器を順に駆動するよう,そして該飛翔時間に基づいて該腔の該表面の3次元的形状を復元するために該変換器により発生される該電気信号を受信し,処理するよう適合された制御回路を具備し,
該腔内の電気的活動に応じた電気信号を該回路に伝えるよう適合され,該プローブの該遠位の部分上に配置された1つ以上の電極を具備しており,該回路は該電極からの該信号に応じて,該表面の該3次元的形状の上に該電気的活動の指示を重畳させるよう適合されており,
該3次元的形状の画像を表示するために該回路によりドライブされるデイスプレーを具備することを特徴とする装置。」(以下「本願発明」という)

2 引用刊行物の記載事項

原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1?3およびその記載事項は,上記「第2 2 引用刊行物およびその記載事項」に記載したとおりである。

3 判断

本願発明は,補正発明において,「該身体内へ音波を送信するが,該送信は,該音波が該プローブ上の該音響変換器により受信され,該音響変換器に電気的基準信号を発生させるように送信するものであり,該送信に適合された複数の基準変換器を該身体外に具備しており,該回路は該プローブの位置座標を決定するために該基準信号を処理するよう適合されており,該決定された位置座標に応じて,該回路は該身体内の該3次元的形状の位置を規定するよう適合されている」との限定事項を省くものである。

そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加し限定したたものに相当する補正発明が,前記「第2 3(2)」にて述べたとおり,引用発明,刊行物2および3に記載された技術事項,前記常套手段,および上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明,刊行物2および3に記載された技術事項,前記常套手段,および上記周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ

以上のとおり,本願発明は,引用発明,刊行物2および3に記載された技術事項,前記常套手段,および上記周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-11 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-03-26 
出願番号 特願2001-249239(P2001-249239)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五閑 統一郎  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 小野寺 麻美子
後藤 時男
発明の名称 超音波を使用した3次元的復元  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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