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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1278098
審判番号 不服2012-13192  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-10 
確定日 2013-08-14 
事件の表示 特願2009-189498「有機発光表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月25日出願公開、特開2010- 67603〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年(2009年)8月18日(パリ条約による優先権主張 2008年9月12日 大韓民国)の出願(特願2009-189498号)であって、平成23年6月15日付けで拒絶理由が通知され、同年9月20日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年11月10日付けで拒絶理由が通知され、平成24年2月9日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年3月8日付けで、同年2月9日付けの手続補正に対する補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年11月12日付けで前置報告書の内容について請求人の意見を求める審尋がなされ、平成25年2月8日付けで回答書が提出された。

第2 本願の請求項1に係る発明
平成24年7月10日付けの手続補正による特許請求の範囲の補正は、請求項の削除を目的とする補正であり、適法な補正である。
よって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年7月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「基板部材と、
前記基板部材上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されて複数の結合補強孔を有する金属配線と、
前記金属配線上に形成されたシーラント(sealant)と、
前記シーラント上に付着した密封部材と
を含み、
前記絶縁膜と前記シーラントは、前記金属配線の結合補強孔を通じて互いに接触し、
前記絶縁膜及び前記シーラントは、全てセラミック系の素材を用いて作られている
ことを特徴とする、有機発光表示装置。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-200835号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
本発明は、有機電界発光表示装置に関し、特に、酸素及び水分などの浸透が防止されるようにフリットで封止された有機電界発光表示装置に関する。」

「【0008】
したがって、本発明の目的は、フリットと交差する電極ラインがレーザによって変形されることを防止し、電極ラインとフリットとの接着力を向上できるようにした有機電界発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の有機電界発光表示装置は、画素が形成される画素領域及び前記画素領域以外の非画素領域を含む第1基板と、前記画素領域を含む一領域で前記第1基板と対向するように接合される第2基板と、前記非画素領域と前記第2基板との間に位置し、前記第1基板及び第2基板を接合するフリットと、前記第1基板に形成され、前記フリットと一部重畳される少なくとも一つの電極ラインとを備え、前記電極ラインは、前記フリットと重畳される交差部領域で少なくとも一つの開口部を備える。
【0010】
好ましくは、前記電極ラインは、走査ライン、データライン及び電源供給ラインのうち少なくとも一つを含む。前記開口部は、電極ラインが所定の形状に一部除去されて形成される。前記開口部は、四角形、三角形、逆三角形及び円形のうち少なくとも一つの形状に形成される。前記交差部領域で前記電極ラインの幅は、前記交差部領域以外の幅と異なるように設定される。」

「【0013】
図1を参照すると、第1基板200は、画素領域210と、画素領域210を取り囲む非画素領域220とからなる。画素領域210には、走査線104b及びデータ線106cが形成され、走査線104b及びデータ線106cと接続されるように画素100が形成される。非画素領域220には、走査線104bと接続される走査駆動部410及びデータ線106cと接続されるデータ駆動部420が形成される。そして、非画素領域220には、画素100に電源を供給するための電源供給ライン(図示せず)及び外部駆動回路(図示せず)と接続されるパッド104c、106dが形成される。」

「【0018】
図2a及び図2bは、第1基板と接合される第2基板を示す平面図及び断面図である。ここで、第2基板(封止基板)300は、第1基板200と接合されて内部に水分などが侵透することを防止する。
【0019】
図2a及び図2bを参照すると、第2基板300には、第1基板200との接合のためにフリット320が備えられる。
【0020】
フリット320の生成過程を簡略に説明すると、次のとおりである。一般的に、ガラス材料を高い温度に加熱し、温度を急激に下げると、ガラス粉末状のフリットが生成される。粉末状のフリットに酸化物粉末を含み、これに有機物を添加すると、ゲル状のペーストが生成される。このペーストを第2基板300の縁に塗布した後、所定の温度で焼成すると、有機物は空気中で消滅し、ゲル状のペーストは硬化されて固体状のフリット320として第2基板300に付着する。ここで、フリット320を焼成する温度は、略300℃ないし500℃の範囲とする。そして、フリット320は、第2基板300と第1基板200とが安定的に接合できるように14?15μm程度の高さ及び0.6?0.7mm程度の幅で形成される。
【0021】
第1基板200及び第2基板300の接合時に、フリット320は、画素領域210を封止させて酸素及び水分などの浸透を防止する。このために、第2基板300と第1基板200との接合時に、フリット320は、非画素領域220に位置する。そして、フリット320は、外部からレーザや赤外線などが照射される時に溶融し、第1基板200と第2基板300とを接合させる。
【0022】
図3は、第1基板及び第2基板が接合された状態を概略的に示す図である。図3では、フリット320が走査駆動部410の内側に位置するものとして示されたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、フリット320は、第2基板300が走査駆動部410と重畳されるように走査駆動部410の外部に位置することもできる。
【0023】
図3を参照すると、フリット320は、非画素領域220に位置し、第1基板200及び第2基板300を接合する。実際、フリット320が非画素領域220に配置された後、レーザまたは赤外線を照射することによりフリット320が第1基板200に溶融接着され、これにより、第1基板200及び第2基板300が接合される。このように、フリット320により第1基板200及び第2基板300が接合されれば、酸素及び水分などが画素領域210に侵透することを防止することができる。
【0024】
一方、図3のように、第1基板200及び第2基板300が接合される時、フリット320は、少なくとも一つの電極ラインと重畳されるようになる。例えば、フリット320は、走査線104b、データ線106c及び電源供給ラインなどの電極ラインと重畳される。ここで、電極ラインは、画素100に含まれる薄膜トランジスタ及び/または有機発光ダイオードが形成される時に形成される。つまり、電極ラインは、薄膜トランジスタが形成される時、ゲートメタル、ソース/ドレインメタル及びアノードメタルのうち少なくとも一つで形成されることができる。例えば、走査線104bは、ゲートメタルで形成され、データ線106c及び電源供給ラインは、ソース/ドレインメタルで形成されることができる。そして、電極ラインは、薄膜トランジスタが形成される時、半導体層と同一の物質で形成されることもできる。」

「【0028】
図5は、本発明の実施例によるフリットと電極ラインとの交差部領域を示す図である。
【0029】
図5を参照すると、フリット320と電極ライン400との交差部領域で電極ライン400には、少なくとも一つの開口部402が形成される。
【0030】
交差部領域で電極ライン400に形成された開口部402は、フリット320を経由して供給されるレーザを透過する。そのため、交差部領域における電極ライン400に直接供給されるレーザの量が減少し、これにより、電極ライン400の温度が急激に上昇することを防止することができる。すなわち、本発明においては、電極ライン400に形成された開口部402により交差部領域で電極ライン400に割れなどが発生することを防止することができる。
【0031】
また、開口部402がレーザを透過するため、フリット320に提供されるレーザの量が減るようになる。このように、電極ライン400からフリット320に再供給されるレーザの量が減るようになれば、フリット320の温度上昇を最小化することができ、これにより、フリット320と電極ライン400との間の接着力を向上させることができる。
【0032】
一方、交差部領域で電極ライン400に開口部402が形成されると、電極ライン400の抵抗が所望の値より小くなる恐れがある。これを防止するために、交差部領域で電極ライン400の幅L2は、交差部以外の領域で電極ライン400の幅L1より広く形成される。
【0033】
図5では、開口部402が四角形状に示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、開口部402は、図6a及び図6bに示されるように、円形、三角形または逆三角形などの形状に形成されることができる。実際、本発明において、開口部402は、電極ライン400が一部除去されて形成され、その形状は所定の形状に多様に設定されることができる。」

「【図1】



「【図2a】



「【図2b】



「【図3】



「【図5】



2 引用例1に記載された発明の認定
【図5】【0023】の記載からフリット320は、開口部402を含む非画素領域220に配置された後、レーザまたは赤外線を照射することにより第1基板200に溶融接着されるのであるから、開口部402内に侵入し、その後開口部402内でも第1基板200と溶融接着するものであることは明らかである。
よって、上記記載(図面の記載も含む)を総合すれば、引用例1には、
「第1基板200及び第2基板300がフリット320によって接合され、フリット320は非画素領域220に位置し画素領域210を封止させて酸素及び水分などの浸透を防止する有機電界発光表示装置であって、
フリット320は、ガラス粉末から生成されたゲル状のペーストを所定の温度で焼成したものであり、焼成によってゲル状のペーストは硬化されて固体状のフリット320として第2基板300に付着し、
第1基板200及び第2基板300が接合される時、フリット320は、少なくとも一つの電極ライン400と重畳されるようになり、フリット320と電極ライン400との交差部領域で電極ライン400には、少なくとも一つの開口部402が形成され、
フリット320は開口部402内に侵入し、その後開口部402内でも第1基板200と溶融接着する有機電界発光表示装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-200887号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、有機電界発光表示装置及びその製造方法に関し、より詳細には、基板をガラスフリットで封止する際、接着力の低下を防止できる有機電界発光表示装置及びその製造方法に関する。」

「【0013】
従って、本発明は、前述のような従来技術の諸問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、基板をガラスフリットで封止する際、接着力の低下を防止できる構造の有機電界発光表示装置及びその製造方法を提供することにある。」

「【0045】
図2乃至図5は、本発明の第1実施形態に係る有機電界発光表示装置の製造方法を示す断面図である。
【0046】
図2を参照して、まず第1基板として画素領域I及び非画素領域IIを備えた基板300を用意する。前記基板300は、絶縁ガラス、プラスチックまたは導電性基板を使用することができる。
【0047】
次に、前記基板300全面にバッファ層310を形成する。前記バッファ層310は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層であってもよい。前記バッファ層310は、下部の基板から不純物が上部に上がらないように防止する保護膜の役割をする。
【0048】
次に、前記画素領域Iの前記バッファ層310上に半導体層320を形成する。前記半導体層320は、非晶質シリコン膜、またはこれを結晶化した多結晶シリコン膜であってもよい。次いで、前記基板300全面にゲート絶縁膜330を形成する。前記ゲート絶縁膜330は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層であってもよい。
【0049】
その後、前記ゲート絶縁膜330上に、前記半導体層320の一部領域と対応するようにゲート電極340aを形成する。前記ゲート電極340aは、Al、CuまたはCrを使用することができる。
【0050】
次に、前記基板300全面に層間絶縁膜350を形成する。前記層間絶縁膜350は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜またはこれらの多重層であってもよい。前記画素領域I上の前記層間絶縁膜350及びゲート絶縁膜330をエッチングして、前記半導体層320を露出させるコンタクトホール351、352を形成する。」

「【0066】
次に、図5に示すように、前記基板300に対向させる第2基板として封止基板420を用意する。前記封止基板420には、エッチングされた絶縁ガラスまたはエッチングしない絶縁ガラスを使用する。
【0067】
次に、前記封止基板420の外側、正確には基板の面内外側部にガラスフリット430を形成する。すなわち、前記基板300に対向させる封止基板420の面内外側部にガラスフリット430を塗布する。
【0068】
前記ガラスフリット430は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化リチウム(LI_(2)O)、酸化ナトリウム(Na_(2)O)、酸化カリウム(K_(2)O)、酸化ホウ素(B_(2)O_(3))、酸化バナジウム(V_(2)O_(5))、酸化亜鉛(ZnO)、酸化テルル(TeO_(2))、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))、二酸化シリコン(SIO_(2))、酸化鉛(PbO)、酸化スズ(SnO)、酸化リン(P_(2)O_(5))、酸化ルテニウム(Ru_(2)O)、酸化ロジウム(Rh_(2)O)、酸化フェライト(Fe_(2)O_(3))、酸化銅(CuO)、酸化チタニウム(TIO_(2))、酸化タングステン(WO_(3))、酸化ビスマス(BI_(2)O_(3))、酸化アンチモン(Sb_(2)O_(3))、ホウ酸鉛ガラス、リン酸スズガラス、バナジン酸ガラス、及びホウケイ酸ガラスよりなる群から選ばれた1種の物質またはこれらの組合よりなるものを使用することができ、ディスペンシング法またはスクリーン印刷法を用いて塗布することができる。
【0069】
前記ガラスフリット430の幅は、前記メタル配線360dの幅より広く形成する。これは、前記ガラスフリット430が接着される面積が広いほど接着力を向上させることができ、外部の水分や酸素の侵入から有機電界発光素子を保護することができるからである。
【0070】
本実施形態では、前記封止基板420上にガラスフリット430を形成したが、前記基板300上に形成してもよい。
【0071】
次に、前記基板300と封止基板420を整列させた後、接合する。この際、前記ガラスフリット430は、有機平坦化膜370、画素定義膜390及び第2電極410の存在しない領域に在るので、有機平坦化膜370と非接触状態で、基板300の前記非画素領域II上のメタル配線360d及び層間絶縁膜350と接触するようになる。
【0072】
次に、前記ガラスフリット430にレーザーを照射して、前記ガラスフリット430を溶融し、固状化し、前記基板及び封止基板に接着することによって、本発明の有機電界発光表示装置を完成する。このレーザー照射に際し、前記ガラスフリット430は、前記メタル配線360d上に、前記有機平坦化膜370に接することなく位置しているので、レーザーの高熱により有機平坦化膜が損傷されることが防止される。
【0073】
以上のように、従来、基板を封止するガラスフリットの下部に有機平坦化膜が位置し、ガラスフリットにレーザーを照射する時、レーザーの高熱により有機物からなる有機平坦化膜が損傷され、ガラスフリットが有機平坦化膜と接着する界面において剥離し、接着力が低下するという短所があったが、前記ガラスフリットの下部に位置する有機平坦化膜を除去することによって、前記ガラスフリットの接着力が低下するという短所を防止することができる。」

「【図5】



4 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-171440号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルに関し、特に電極と外部電源を電気的に接続する配線部に抵抗率の低い金属材料を用いてなる有機ELパネル及びその製造方法に関するものである。」

「【0014】
本発明は、有機ELパネルに関し、特に電極と外部電源とを電気的に接続する配線部に抵抗率の低い金属材料を用いてなる有機ELパネル及びその製造方法に関し、気密性を低下させることなく封止部材と基板とを接着することが可能となる。」

「【0028】
次に、有機ELパネル1の製造方法について説明する。
【0029】
まず、支持基板2上にITO等からなる透光性の導電層12をスパッタリング法等の手段によって形成し、さらに導電層12上に層状の金属層13をスパッタリング法等の手段によって形成する(図5(a))。
【0030】
次に、フォトリソグラフィー法等によって、金属層13を所定の形状にパターニングを行い、第一の金属層10bを形成する(図5(b))。このとき、第一,第二の金属層10b,11bには、それぞれ第一,第三の開口部10c,11cが形成される。なお、図5(b)には図示していないが、第一の金属層10bと同様に第二の金属層11bが形成され、第二の金属層11bに第三の開口部11cが形成される。
【0031】
次に、導電層12をフォトリソグラフィー法等によって複数のライン状にパターニングを行う。導電層12は、陽極4と、第一のベース部10aとに分割形成される(図5(c))。このとき、第一のベース部10aには、それぞれ第一の開口部10cとの対向個所に第二の開口部10dが形成される。なお、図5(c)には図示していないが、第一のベース部10aと同様に第二のベース部11aが形成され、第二のベース部11aには第二の開口部11cとの対向個所に第四の開口部11dが形成される。したがって、第一のベース部10aと第一の金属層10bとを積層形成してなる第一の配線部10が得られ、第二のベース部11aと第二の金属層11bとを積層形成してなる第二の配線部11が得られる。
【0032】
次に、フォトリソグラフィー法等によって絶縁層5及び隔壁6を陽極4間及び一部陽極上に形成する。さらに、有機層7及び陰極8を蒸着法等によって順次積層形成し、所定の発光形状の有機EL素子3を得る(図5(d))。このとき、陰極8は隔壁6によって段切れが生じて複数のライン状に形成される。また、陰極6は、第二の配線部11と接続される。
【0033】
次に、凹形状の封止部材9を、有機EL素子3を取り囲むように支持基板2,第一の配線部10及び第二の配線部11上に紫外線硬化性の接着剤9cを介して配設する(図5(e))。このとき、封止部材9に所定の圧力を加え、第一の配線部10の第一の開口部10c及び第二の開口部10dとが形成された個所において、接着剤9cを露出する支持基板2に直接接触させる。なお、図5(e)には図示しないが、第二の配線部11の第三の開口部11c及び第四の開口部11dとが形成された個所においても、同様に接着剤9cを露出する支持基板2に直接接触させる。さらに紫外線を支持基板2側から照射して接着剤9cを硬化させ、支持基板2と封止部材9とを気密的に接着させて有機ELパネル1を得る。なお、接着剤9cと第一,第二の配線部10,11との対向個所においては、紫外線が第一,第二の開口部10c,10d及び第三,第四の開口部11c,11dを通して接着剤9c全体に照射され、接着剤9cを良好に硬化させることが可能となっている。
【0034】
かかる有機ELパネル1及びその製造方法は、両電極4,8と前記外部電源とを電気的に接続する第一,第二の配線部10,11として抵抗率の低い金属材料からなる第一,第二の金属層10b,11bを用いるものであって、第一,第二の金属層10b,11bの接着剤9cと対向する領域に紫外線を導入するための少なくとも1つ以上の第一,第三の開口部10c,11cを形成し、さらに第一,第二のベース部10a,11aの第一,第三の開口部10c,11cと対向する個所に第二,第四の開口部10d,10dを形成して、接着剤9cを第一,第二の開口部10c,10d及び第三,第四の開口部11c,11dを通して支持基板2と接着させることにより、接着性の低い第一,第二のベース部10a,11aと接着剤9cとの接触面積を減少させることで接着性を向上させることができ、気密性を低下させることなく封止部材9と支持基板2とを接着することが可能となる。」

第4 本願発明と引用発明の対比
1 ここで、本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明における「第1基板200」、「第2基板300」、「フリット320」及び「電極ライン400」が、それぞれ、本願発明の「基板部材」、「密封部材」、「シーラント」及び「金属配線」に相当し、また、引用発明の「電極ライン400」に形成される「少なくとも一つの開口部402」と本願発明の「金属配線」が有する「複数の結合補強孔」は、「金属配線が有する複数の孔」である点で一致するから、引用発明の「第1基板200及び第2基板300がフリット320によって接合され、フリット320は非画素領域220に位置し画素領域210を封止させて酸素及び水分などの浸透を防止する有機電界発光表示装置」であって、「第1基板200及び第2基板300が接合される時、フリット320は、少なくとも一つの電極ライン400と重畳されるようになり、フリット320と電極ライン400との交差部領域で電極ライン400には、少なくとも一つの開口部402が形成され」る「有機電界発光表示装置」と、本願発明の「基板部材と、前記基板部材上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されて複数の結合補強孔を有する金属配線と、前記金属配線上に形成されたシーラント(sealant)と、前記シーラント上に付着した密封部材とを含」む「有機発光表示装置」とは、「基板部材と、前記基板部材より上に形成されて複数の孔を有する金属配線と、前記金属配線上に形成されたシーラント(sealant)と、前記シーラント上に付着した密封部材とを含む有機発光表示装置」である点で一致する。

引用発明の「フリット320は開口部402内に侵入し、その後開口部402内でも第1基板200と溶融接着する」ことと、本願発明の「絶縁膜」が「前記基板部材上に形成され」ること及び「前記絶縁膜と前記シーラントは、前記金属配線の結合補強孔を通じて互いに接触」することとは、「前記金属配線の下面に隣接する層と前記シーラントとは、前記金属配線の孔を通じて互いに接触する」点で一致する。

引用発明の「フリット320」についての「ガラス粉末から生成されたゲル状のペーストを所定の温度で焼成したもの」は、セラミック系の素材であるといえるから、引用発明の「フリット320は、ガラス粉末から生成されたゲル状のペーストを所定の温度で焼成したもの」であることと、本願発明の「前記絶縁膜及び前記シーラントは、全てセラミック系の素材を用いて作られている」こととは、「前記シーラントは、セラミック系の素材を用いて作られている」点で一致する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明とは、
「基板部材と、
前記基板部材より上に形成されて複数の孔を有する金属配線と、
前記金属配線上に形成されたシーラント(sealant)と、
前記シーラント上に付着した密封部材と
を含み、
前記金属配線の下面に隣接する層と前記シーラントとは、前記金属配線の孔を通じて互いに接触し、
前記シーラントは、セラミック系の素材を用いて作られている有機発光表示装置。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

3 相違点
本願発明は、基板部材と金属配線の間に「セラミック系の素材を用いて作られている」「絶縁膜」が形成され、絶縁膜とシーラントが接触することにより結合を補強しているのに対して、引用発明では、第1基板上に直接電極ライン(金属配線)が設けられ、フリット(シーラント)と第1基板が溶融接着している点。

第5 当審の判断
1 相違点の検討
有機電界発光表示装置において、基板上に駆動用の電極や回路等を実装するに当たり、基板上に絶縁膜を積層して、当該絶縁膜上に電極や回路等を設けることは周知技術であり、また、当該絶縁膜をセラミック系材料(引用例2においてはシリコン酸化膜、シリコン窒化膜)で形成することは、引用例2にも記載されているように周知技術である。
有機電界発光表示装置である引用発明においても、基板上に駆動用の電極や回路等を実装するにあたり、上記周知技術を適用することは当業者が容易になし得ることである。
さらに引用例2には、上下の基板の接着用封止部材としてセラミック系材料である金属酸化物のガラスフリットを用いるものにおいて、上記のセラミック系材料の絶縁膜上に金属酸化物(セラミック材料)のガラスフリットを形成することによって、有機平坦化膜上にガラスフリットを形成する場合に比べて接着力が向上することも記載されているといえる(【0073】参照)。
そうすると、封止材としてガラスフリットを用いた引用発明において、基板上にセラミック系材料の絶縁膜を形成して当該絶縁膜上に駆動用の電極や回路等を作り込むようにすることにより、接着力の点で有利となるという作用効果は、上記引用例2の記載から予測し得ることにすぎない。
一方で、引用例3には、金属層(引用発明の「電極ライン」に相当)に開口部を設けることにより、接着剤を開口部を通じて露出する基板に直接接触させ、接着剤と基板の結合を補強することが記載されているといえる。
そうすると、引用発明に上記周知技術を適用して基板上にセラミック系材料の絶縁膜を形成したものも、フリット(接着剤)が電極ライン(金属層)に設けられた孔(開口部)を通じて絶縁膜に接触するものであり、この場合、孔(開口部)を通じてフリット(シーラント)と絶縁膜の結合が補強されるという作用効果は、上記引用例3から予測し得ることにすぎない。

2 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2に記載された周知技術並びに引用例3に記載された技術的事項から当業者が予測し得る程度のものである。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された周知技術並びに引用例3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 結言
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された周知技術並びに引用例3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-12 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-04-01 
出願番号 特願2009-189498(P2009-189498)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野田 洋平濱野 隆  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 伊藤 昌哉
北川 清伸
発明の名称 有機発光表示装置  
代理人 伊藤 正和  
代理人 辻 徹二  
代理人 松永 宣行  
代理人 三好 秀和  

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