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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1278330
審判番号 不服2010-25737  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-15 
確定日 2013-08-21 
事件の表示 特願2003-558064「接着剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年7月17日国際公開,WO2003/57753,平成17年5月19日国内公表,特表2005-514481〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は,2002年12月27日(パリ条約による優先権主張 2001年12月28日 米国)を国際出願日とする出願であって,その請求項1?15に係る発明は,平成22年6月22日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
コンクリートもしくはレンガに材料を固定するための硬化性接着剤組成物であって,
少なくとも1種の重合性エポキシ化合物を含むエポキシ樹脂,及び
少なくとも1種の脂肪族アミン及び少なくとも1種の3級アミンからなる硬化剤
を含み,0.5:1?10:1のエポキシ:アミンの質量比を有する接着剤組成物。」(以下,「本願発明」という。)

2.原査定の拒絶理由の概要
原査定における拒絶の理由の概要は,「この出願は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない」というものであって,より具体的には,「本願明細書には,本願発明に相当する接着剤組成物の具体的例が開示されておらず,コンクリートに適用した場合にどのような接着性能が得られるのかを確認できる実験データも開示されていないから,本願明細書に記載された発明の効果は十分に裏付けられたものとはいえないし,請求項に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものとすることもできない」というものである。

3.当審の判断
(3-1)本願発明の課題
本願明細書には,その【0007】に
「本発明は優れた耐熱変形性及び優れたダンプホール結合特性を有する接着剤組成物を提供することを目的とする。」
と記載されていることから,本願発明の課題は,
「優れた耐熱変形性及び優れたダンプホール結合特性を有する接着剤組成物の提供」
にあるものと解せられる。

(3-2)本願発明の背景
本願の発明の詳細な説明の記載を検討するに先立ち,まず,検討に際して考慮すべき技術常識について触れる。
一般に,エポキシ樹脂系接着剤は,エポキシ樹脂成分に対して硬化剤を作用させることにより硬化させて,それにより接着性を発現させるものであって,その際に使用される硬化剤としては,典型的には,脂肪族アミンや3級アミンを含むアミン化合物が汎用されており,このことは,例えば,コンクリートなどの接着・固着のために使用されるエポキシ樹脂でも同様である。
(例えば,特開平10-2020号公報【0034】等,特開平2-157347号公報の「実験例-4」等,及び,特開平8-128209号公報【請求項4】等,参照)
このような技術背景からすると,本願発明,すなわち請求項1に記載された特定事項を採用することにより,コンクリートもしくはレンガに材料を固定するための硬化性接着剤という用途において,「優れた耐熱変形性及び優れたダンプホール結合特性」を奏することを,発明の詳細な説明において,例えば,実際に使用した結果のデータを示すなどして,明確な技術的根拠とともに記載されていなければ,当業者にとって,本願発明により,上記(3-1)で認定した課題が解決できると認識し,惹いては本願発明の技術的意義を理解しうるものとはいえないというべきである。

(3-3)明細書の記載の検討
上記(3-2)に記載した事項を踏まえつつ,本願発明により,(3-1)に記載した本願発明の課題,すなわち,「優れた耐熱変形性及び優れたダンプホール結合特性を有する接着剤組成物の提供」という課題が解決できると,当業者にとって認識されるように,本願の発明の詳細な説明が記載されているといえるかについて検討する。
本願の発明の詳細な説明には,例えば,明細書【0008】及び【0011】において,それぞれ次の記載がなされている。
「【0008】
本発明の一態様は,エポキシベース接着剤組成物,及びアミンを含む硬化剤の使用を含む方法を提供することによりこれら及び他の目的を達成する。この組成物は好ましくは,約2時間以下の硬化時間を示し,110°FにおいてICBOヒートクリープテスト(ICBOアクセプタンス基準AC58)に合格する十分な強度を達成する。本発明の好ましい組成物は75°FにおいてICBOダンプホールテストに合格することができる。さらに好ましい態様において,本発明の組成物は約2時間以下の硬化時間,ICBOヒートクリープテストに合格する能力及びICBOダンプホールテストに合格する能力を有する。」
「【0011】
本発明の広範な教示により優れた結果が達成されることが予想されるが,出願人は,少なくとも1種の脂肪族アミン及び少なくとも1種の3級アミンを含む硬化剤とビスフェノールA/エピクロロヒドリンより誘導される2官能性液体エポキシを含む接着剤組成物より非常に驚くべきかつ有利な結果が得られることを見出した。出願人は,好ましくは選ばれたエポキシ用の反応性希釈剤及び選ばれた硬化剤と組み合わせて,選ばれた種類の重合性エポキシ化合物より形成される組成物によって,本発明により予想外の結果が達成されることを見出した。さらに出願人は,重合性エポキシ化合物が約20wt%?約40wt%,好ましくは約25wt%?約35wt%の量で接着剤組成物中に存在する場合に優れた特性が可能であることを見出した。さらに出願人は,重合性エポキシ化合物が約70pbwa?約95pbwa,好ましくは約85pbwa?約95pbwa(このpbwaは活性成分を基準とした質量部を意味する)の量で接着剤組成物に存在する場合に優れた結果が達成されることを見出した。ここで「活性成分」とは,直接反応体として又は間接的に触媒として,組成物の硬化に関与する組成物の成分を意味する。好ましい態様において,接着剤組成物は約0?約5wt%の反応性希釈剤をさらに含む。」
しかしながら,これらの記載は,【0008】では,特定のテストに合格する旨の記載がなされているに過ぎず,そのテストの内容及び結果のデータについて具体的に示されていないし,また,【0011】では,「…非常に驚くべきかつ有利な結果が得られることを見出した。」,「…本発明により予想外の結果が達成されることを見出した。」,「…優れた特性が可能であることを見出した。」或いは「…優れた結果が達成されることを見出した。」といった定性的な記載に止まり,これを裏付ける客観的なデータ等は示されていないものである。
さらに,【0036】?【0038】には,以下の記載がなされている。
「【0036】
2成分エポキシ接着剤
好ましい2成分エポキシ接着剤は,エポキシを含む第一の成分(以後パートAとする)及びアミンベース硬化剤を含む第二の成分(以後パートBとする)を含む。充填材は好ましくはパートA及びパートBの一方又は両方に含まれる。このような2成分において,パートAは好ましくは約65?約90pbwのエポキシ樹脂,約0.5?約9pbwの反応性希釈剤及び約9?約34pbwの充填材,さらに好ましくは約70?約80pbwのエポキシ樹脂,約0.5?約5pbwの反応性希釈剤及び約15?約25pbwの充填材を含む。
【0037】
2成分接着剤組成物のパートBは,アミン,特にAir Products and Chemical Incorporatedにより販売されている商品名Ancamine 1856及びAncamine 2205として入手可能な,マンニッヒベース及び脂肪族アミンと触媒,好ましくは3級アミン,特にAir Products and Chemical Incorporatedより商品名Ancamine K54として入手可能な2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールとの組み合わせを含む。好ましい態様によれば,パートBは充填材も含む。パートBは好ましくは約20?約35pbwの脂肪族アミン,約0.5?約9pbwの3級アミン及び約65?約80pbwの充填材,さらに好ましくは約24?約30pbwの脂肪族アミン,約0.5?約3pbwの3級アミン及び約65?約75pbwの充填材を含む。
【0038】
本発明の組成物中のパートBの量は好ましくは,パートA100部あたり約100質量部及び/又は体積部である。」
しかしながら,ここでは,本願発明で特定された接着剤組成物に対応する2成分エポキシ接着剤の組成が示されているが,それに止まるものであって,かかる接着剤を使用することにより,「優れた耐熱変形性」や「優れたダンプホール結合特性」といった,目的とする性質が得られることを示すより具体的な記載はなされていないものである。
また,さらに,発明の詳細な説明の他の記載,或いは,技術常識を踏まえたとしても,そもそも,出願人自らが,「…を含む接着剤組成物により非常に驚くべきかつ有利な結果…」或いは「…本発明により予想外の結果…」(いずれも明細書【0011】)などと表現していることからも,通常,当業者が了知する知識では予想できないほどの効果を見出したものと解されるから,そのような結果が得られたことを裏付ける技術的に明確な根拠が伴わないのであれば,これらの記載に基づいて,「優れた耐熱変形性」や「優れたダンプホール結合特性」という性質が達せられたことを,当業者が認識しうるものとすることができないことは明らかである。
したがって,本願発明の詳細な説明の記載,及び,技術常識を踏まえても,なお,本願発明により,「優れた耐熱変形性及び優れたダンプホール結合特性を有する接着剤組成物の提供」という本願の発明の課題が解決できることを当業者が認識しうるものとすることができない。

さらに加えて付言するならば,例えば,原審で引用された引用文献1(特開2001-240837号公報)には,以下に記載するように,新旧コンクリート打継ぎ用という,特定の使用態様におけるコンクリート用の接着剤として,本願発明に相当する接着剤が適さない旨の記載がなされているものである。
すなわち,上記引用文献1には,その比較例2(【表2】)として次の組成の接着剤が記載されている。
「メタキシリレンジアミン 34質量部
DMP-30 2質量部
(【0046】に「トリス(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール」である旨の記載がある)
エピコート828 190質量部
(【0046】にエポキシ樹脂である旨の記載がある)」
ここで,メタキシリレンジアミンは,本願明細書【0028】でも例示されている(なお,該【0028】には「m-キシレンジアミン」と記載されているが,原文明細書の記載に照らし,「m-キシリレンジアミン」の誤記と認められる。)ように,本願発明の「脂肪族アミン」に相当するもので,また,DMP-30は,「3級アミン」に相当するものであって,両アミンの合計量とエポキシ樹脂との質量比も,エポキシ:アミン=(190:36=)5.28:1となって,本願発明で特定された範囲内のものである(参考ながら,脂肪族アミンと3級アミンの比も,17:1となって本願請求項5で特定される範囲内のものである。)ことから,引用文献1の比較例2に係る接着剤組成物は,本願発明の特定事項を全て充足するものといえる。(なお,この点からすると,原審において直接的な指摘はなされていないものの,本願発明の新規性は,引用文献1により否定されるものとも判断されうる。)
そして,かかる比較例2の接着剤組成物については,引用文献1において求められる「新旧コンクリート打継ぎ用接着剤」としては満足な性能を備えていないものとされている。
このように,「新旧コンクリート打継ぎ用」という特定の態様における使用であるとしても,少なくともコンクリートに対する接着剤という点では共通する用途において,本願発明と同一組成を有する接着剤が,満足する性能を奏し得ないとするデータが示されていることをも考慮すると,本願発明に係る接着剤が,コンクリートもしくはレンガに材料を固定するための硬化性接着剤という用途において,「優れた耐熱変形性及び優れたダンプホール結合特性」を奏することを,発明の詳細な説明において,例えば,実際に使用した結果のデータを示すなどして,明確な技術的根拠とともに記載されていなければ,当業者にとって,本願発明により,(3-1)で認定した課題が解決できると認識しうるものとはいえないというべきである。
すなわち,このような観点からも,本願発明については,当業者が本願発明の課題を解決できるものと認識できるように発明の詳細な説明において記載されているとは,到底いい得ないものである。

以上,要するに,本願発明,すなわち,請求項1に記載された特定事項を採用することにより,本願発明の課題が解決できることについて,当業者が認識しうるように,本願の発明の詳細な説明の記載はなされているとはいえないものである。

4.むすび
以上のとおり,本出願は,その請求項1に係る発明について,発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものとすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-18 
結審通知日 2013-03-26 
審決日 2013-04-08 
出願番号 特願2003-558064(P2003-558064)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C09J)
P 1 8・ 537- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 宏樹  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 新居田 知生
目代 博茂
発明の名称 接着剤組成物  
代理人 古賀 哲次  
代理人 出野 知  
代理人 石田 敬  
代理人 永坂 友康  
代理人 青木 篤  
代理人 蛯谷 厚志  
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