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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1278336
審判番号 不服2011-5677  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-14 
確定日 2013-08-21 
事件の表示 特願2005-505321「コラゲナーゼ阻害剤及びチロシナーゼ阻害剤」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月21日国際公開、WO2004/089393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年4月8日を国際出願日とする出願であって、平成19年4月4日付けで自発的に補正がなされ、次いで、拒絶理由通知に応答し平成22年11月12日付けで手続補正がなされたが、平成22年12月3日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月14日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判請求と同時に手続補正がなされ、平成23年5月18日付けで請求理由の手続補正(方式)がなされたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋が通知されたが、それに対する回答はされなかったものである。

2.平成23年3月14日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年3月14日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、
補正前(平成22年11月12日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】
マイタケ乾燥粉末、及び/又は生マイタケ、乾燥マイタケ及びマイタケ乾燥粉末から選ばれる少なくとも1種を水、温水又は熱水で抽出して得られた抽出液に、沈殿が生じない程度にアルコールを加え放置後、液面もしくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質を除去した後に得られたマイタケ抽出物を、有効成分として含有することを特徴とするコラゲナーゼ阻害剤。」から、
補正後の
「【請求項1】
マイタケ乾燥粉末を、有効成分として含有することを特徴とするコラゲナーゼ阻害剤。」
とする補正を含むものである。

上記補正前後の発明特定事項を対比すると、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「有効成分」について、「マイタケ乾燥粉末」の選択肢を残し、「生マイタケ、乾燥マイタケ及びマイタケ乾燥粉末から選ばれる少なくとも1種を水、温水又は熱水で抽出して得られた抽出液に、沈殿が生じない程度にアルコールを加え放置後、液面もしくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質を除去した後に得られたマイタケ抽出物」との選択肢を削除するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」ともいう。)第17条の2第4項第2号の特許請求の減縮に相当する。

(2)補正の適否
しかし、本件補正は、特許法第121条第1項の拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判請求と同時になされたものであって、同法第17条の2第1項第4号の補正に該当するから、そのような補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項各号に規定する事項を目的にするものに限られているところ、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の減縮については、同条第5項の規定を満たす必要がある。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-1)引用例
原査定の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である、特開2003-2813号公報(以下、「引用例1」という。)と特開2001-163754号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の技術的事項が記載されている。なお、下線は、便宜的に当審で付した。

[引用例1]
(1-i)「【請求項1】アガリクス(Agaricus)属、・・・中略・・・、グリフォラ(Grifola)属に属するきのこの抽出物、リナム(Linum)属、・・・中略・・・、シトラス(Citrus)属に属する植物の抽出物の1種又は2種以上からなるコラゲナーゼ阻害剤を配合することを特徴とする化粧料。
【請求項2】アガリクス(Agaricus)属に属するきのこがアガリクス(Agaricusblazei murill)、・・・中略・・・、グリフォラ(Grifola)属に属するきのこがマイタケ(Grifola frondosa (Fr) Gray)、さらに、リナム(Linum)属植物が亜麻(Linum usitatissimum L.)、・・・中略・・・シトラス(Citrus)属に属する植物がレモン(Citrus limon B_(URM.))であることを特徴とする請求項1記載の化粧料。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】、【請求項2】参照)
(1-ii)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物抽出物類を配合した化粧料に関し、さらに詳しくは、コラゲナーゼ阻害作用を有し、皮膚のハリや弾力を保持し、若々しい肌の状態を維持することのできる抗老化化粧料に関する。本発明の化粧料は、基礎化粧品をはじめ、メーキャップ化粧品、などに好適に使用しうるものである。」(段落【0001】参照)
(1-iii)「【0003】コラーゲンについてはコラゲナーゼ、即ちMMP-1(マトリックスメタロプロテアーゼ)が皮膚の真皮マトリックスの主な構成成分であるタイプI,IIIコラーゲンを分解する酵素として知られている。その発現は紫外線の照射により大きく増加し、紫外線によるコラーゲンの減少、変性の原因の一つとなり、皮膚のシワ形成等の大きな要因の一つであると考えられる。コラゲナーゼ活性を阻害することはコラーゲンを保護し、線維を形成するマトリックスを保護することとなり、皮膚の老化を防ぐうえで重要である。ところが、従来の抗老化化粧料には線維芽細胞を活性化し、コラーゲンの産生量を増加させる機序を持ったものは多く認められるが、コラゲナーゼ活性の阻害に着目したものは存在していない。
【0004】したがって本発明はコラゲナーゼの活性を抑えて皮膚の線維成分を保護し、皮膚のハリ、弾力を回復・維持することで皮膚の老化を防止し、若々しい肌の状態を維持する効果を奏する抗老化剤を提供することを目的とする。」(段落【0003】?【0004】参照)
(1-iv)「【0031】本発明で用いることの出来るきのこ類、植物類の使用部位は特に限定されない。きのこ類であれば、子実体、胞子、或いは培養菌糸を生のまま或いは乾燥したものを用いて抽出することが出来る。就中、入手のしやすさから子実体が好適である。植物類は、葉、枝、茎、花、果実、根、種子等或いは全草を生のまま或いは乾燥したものを用いて抽出することが出来るが、就中、リナム(Linum)属、シナピス(Sinapis)属は、種子が好適である。
【0032】これらの抽出物の調製は特に限定されないが、例えば種々の適当な有機溶媒を用いて、低温下から加温下で抽出される。抽出溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール等の低級1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の液状多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチルなどのアルキルエステル;ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素;ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロルメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルカン等の1種または2種以上を用いることが出来る。就中、水、エチルアルコール、1,3-ブチレングリコールの1種または2種以上の混合溶媒が特に好適である。
【0033】本発明に用いることの出来る抽出物の抽出方法は特に限定されないが、例えば乾燥したものであれば重量比で1?1000倍量、特に10?100倍量の溶媒を用い、常温抽出の場合には、0℃以上、特に20℃?40℃で1時間以上、特に3?7日間行うのが好ましい。また、60?100℃で1時間、加熱抽出しても良い。
【0034】以上のような条件で得られる上記各抽出物は、抽出された溶液のまま用いても良いが、さらに必要により、濾過等の処理をして、濃縮、粉末化したものを適宜使い分けて用いることが出来る。」(段落【0031】?【0034】参照)
(1-v)「【0037】
【実施例】以下、本発明による各種抽出物のコラゲナーゼ抑制効果にかかわる試験実施例を示すと共にその素材を用いた化粧料への応用処方例等について述べるが、ここに記載された実施例に限定されないのは言うまでもない。
【0038】(1)溶液及び培養液の調製
試料溶液としては、きのこ類のアガリクス、ハラタケ、サンゴハリタケ、ヤマブシタケ、白樺茸、マイタケは子実体を、さらに、亜麻、白介は種子を、ローズマリー、グアバ、エバーラスティング、コーンフラワー、ヒソップ、エーデルワイス、チャービル、ローレル、ホワイトウォーターリリー、ライラック、ポットマリーゴールド、プライムローズ、ダミアナ、スカビーグラス、レッドクローバー、リリーオブザバリー、ヒエンソウ、クチナシ、レモンは全草を乾燥したものを粉末にし、50%エタノール水溶液で37℃にて一週間侵漬抽出した。抽出物を乾燥し、これら乾燥エキス100mgにジメチルスルホキシド(DMSO)を500μl、PBS(-)9.5mlを加えて溶解し、試料溶液とした。さらに、アガリクス、ハラタケ、サンゴハリタケ、ヤマブシタケ、白樺茸、マイタケについては、乾燥した子実体粉末を沸騰水浴中で30分間抽出した。抽出物を乾燥し、これら乾燥エキス100mgにPBS(-)10mlを加えて溶解し、試料溶液とした。
【0039】1.細胞の培養 細胞は人胎児皮膚ケラチノサイト(Clonetic社)を用い、培地はGIBCO社のケラチノサイトSFM合成培地にて培養した。直径8cmのシャーレ(50cm^(2))に人皮膚ケラチノサイト細胞をコンフルーエントになるまで培養した。コンフルーエントになった細胞に各種抽出液を添加し、24時間培養した。培養後、培養液を捨てUV-B 20 mJ/cm^(2)照射した。その後、増殖因子添加物無添加のケラチノサイトSFM培地10mlで4時間培養し、その培養液を回収した。次に牛胎児血清15%を加えたHam’s F-12培地で正常人皮膚線維芽細胞を12wellシャーレに培養する。線維芽細胞がコンフルーエントになった時に培地を捨て回収した増殖因子添加物無添加のケラチノサイトSFM培地で48時間培養し、培養液のMMP-1活性を測定した。
2.MMP-1活性の測定
MMP-1活性の測定は、12wellシャーレ(培地1ml)で48時間培養した線維芽細胞の培養液400μlを取り、4M-NaCl、40μlを添加し (株)ヤガイI型コラゲナーゼ活性測定キットにて活性型MMP-1の測定を行った。
【0040】
【表1】および
【表2】に各種試料のMMP-1活性測定の結果を示す。
【表1】および
【表2】に示したようにアガリクス、ハラタケ、サンゴハリタケ、ヤマブシタケ、白樺茸、マイタケさらに、亜麻、白介の種子、ローズマリー、グアバ、エバーラスティング、コーンフラワー、ヒソップ、エーデルワイス、チャービル、ローレル、ホワイトウォーターリリー、ライラック、ポットマリーゴールド、プライムローズ、サクラソウ、ユキワリソウ、ダミアナ、スカビーグラス、レッドクローバー、リリーオブザバリー、ヒエンソウ、クチナシ、レモンの全草の抽出物はいずれも高いMMP-1活性抑制効果を示した。
【0041】【表1】

【0042】【表2】 省略 」(段落【0037】?【0042】参照)

[引用例2]
(2-i)「【請求項1】 マイタケ乾燥粉末又は/及びマイタケ抽出物を含有することを特徴とする老化防止剤。
【請求項2】 マイタケ乾燥粉末が、生マイタケを50?90℃で乾燥したものであることを特徴とする請求項1記載の老化防止剤。
【請求項3】 ・・・中略・・・
【請求項4】 マイタケ抽出物が、生マイタケ、乾燥マイタケ又は/及びマイタケ乾燥粉末を水又は熱水で抽出して得られる抽出液にアルコールを加え、放置後液面若しくは液中に浮遊、又は容器の壁面に付着する物質を除去したものであることを特徴とする請求項1記載の老化防止剤。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】?【請求項4】参照)
(2-ii)「【0002】
【従来の技術】従来より、太陽紫外線によって加速される肌荒れやシワ形成あるいは頭皮・毛髪の損傷などの光老化に対しては、それを防止する目的で様々な老化防止剤が利用されてきた。老化防止剤の有する作用には、皮膚細胞の活性を高める細胞賦活作用や紫外線によって生じる活性酸素を捕捉する抗酸化作用等があり、これらの作用によって皮膚や頭皮・頭髪は健常な状態が維持できたり、老化状態が改善されたりする。
【0003】詳細には、細胞賦活作用により頭皮を含む皮膚細胞(角質細胞や線維芽細胞)が活性化され、古い角質は剥がれ落ち、同時に肌の弾力を司るコラーゲンが増加するため、肌はみずみずしくハリのある状態となる。また、頭髪においては・・・(中略)・・・。一方、抗酸化作用については皮膚表面での過酸化物の生成が抑制され、特に過酸化脂質による細胞障害が回避でき、併せて炎症反応も抑えられることから、肌荒れやシワ形成が防止できる。さらに、頭髪においてはキューティクルの損傷が抑制されるため、枝毛や切れ毛の発生を防止することができる。」(段落【0002】?【0003】参照)
(2-iii)「【0009】マイタケ乾燥粉末は製粉機で乾燥品を粉末にしたものである。マイタケ乾燥粉末を直接使用する場合は、大体100 メッシュ以上の粒度にして使用することが好ましい。なお、マイタケ抽出物としては、これらの1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。マイタケ抽出物としては、水及び/又は親水性有機溶媒の抽出物が使用しうる。水としては、蒸留水、精製水、イオン交換水、水道水、天然水のいずれも使用でき、親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールが使用できる。
【0010】 ・・・中略・・・。
【0011】このようにして得られた水抽出液は必要に応じてアルコールを加え、放置後液面若しくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質を除去する。この際アルコールとしてはメタノール、エタノール等が使用しうる。水抽出液にアルコールを最終容量濃度が、20?70%の範囲になるまで添加する。添加後は1?25℃の温度で、1?20時間放置する。液面若しくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質が現れるので除去する。除去は濾過、ピペッティングあるいは網状のもので掬う等適宜行いうる。」(段落【0009】?【0011】参照)
(2-iv)「【0013】本発明で言う老化防止剤は、特に限定されるものではなく、内用、外用いずれによる適用もできる。例えば、内用として使用する場合は、単独若しくは賦形剤を加えて錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤等とすることができる。外用として使用する場合、その形状は液状、固形状、半固形状である。また、本発明の老化防止剤を配合した製剤の用途は任意であり、医薬品、医薬部外品、化粧品等の化粧料及びトイレタリー製品等に広く用いられる。例えば化粧料としては化粧水、クリーム・乳液、パック、化粧油、軟膏、ジェル、防臭消臭剤、養毛トニック、ヘアミスト、ヘアジェル、ヘアシャンプー、ヘアリンス、洗顔料、ボディソープ等が挙げられる。」(段落【0013】参照)
(2-v)「【0027】
【発明の実施の形態】次に実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〕<老化防止剤の製造>
(1)マイタケ乾燥粉末
人工栽培で作った生マイタケの枝部、傘部を棚型乾燥室の棚に並べ、約60?80℃の熱風を送り乾燥した。60℃から段階的に温度を上げ最終的に80℃でほぼ1日かけて乾燥した。次いで乾燥マイタケを製粉機で粉砕し、微粉末を得た。
【0028】(2)マイタケ抽出物A
生マイタケ5kgを適当な大きさにスライスし、20リットルの湯浴中(90℃以上)に1時間浸漬して抽出を行った後、濾過して黒褐色の抽出液を得た。この抽出液を減圧?常圧下で濃縮してBrix値30%の濃縮液を得、次いでスプレードライ装置を用いて噴霧乾燥し、灰茶褐色を呈するマイタケ抽出エキス乾燥粉末 122gを得た。
【0029】(3)マイタケ抽出物B
マイタケ子実体乾燥粉末1kgをイオン交換水10リットルで加圧下、120℃で30分間処理した後、濾過して黒褐色の抽出液 6.2リットルを得た。該液を減圧下で2リットルまで濃縮して、室温で95%エタノール2リットルを加え、10℃以下で数時間放置すると、液面、液中に浮遊、又は壁面に付着する茶褐色の物質が生成した。これらの物質を金網を用いて除去し、褐色の溶液を得た。該溶液を減圧下でアルコールを除去し、更に減圧下Brix値約30%になるまで濃縮し、黒褐色の濃厚な液を得た。該溶液をスプレードライ装置を用いて噴霧乾燥し、マイタケ特有の甘い香りの微細な褐色粉末185gを得た。」(段落【0027】?【0029】参照)
(2-vi)「【0044】〔実施例4〕<マイタケ抽出物含有化粧料の使用試験>
(1)肌質・小ジワ改善効果(モニターテスト)
健常な成人女性(25?35歳)10名を被験者とし、以下に示す実施例4-1及び比較例2の化粧水を調製し、これを顔面の皮膚に連日(朝夕使用)1ヶ月間使用した後、a)肌にハリを与える効果、b)くすみ,しみの改善効果、c)小ジワの改善効果を調査した。これらの効果は全て皮膚の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に準じて評価した。
<評価基準>
A:非常に効果があった。
B:効果があった。
C:変化がなかった。
D:少し悪くなった。
E:悪くなった。
【0045】【表4】

【0046】【表5】

【0047】上記の表5から明らかなように、実施例4-(1)の化粧水、すなわちマイタケ抽出物B(粉末)が添加された化粧水を使用すると、肌のハリが良くなり、くすみ・しみ及び小ジワが改善されることがわかる。なお、モニターテスト中に皮膚に異常が生じた被験者は1名もなかった。」(段落【0044】?【0047】参照)
(2-vii)「【0052】
〔実施例5〕<マイタケ乾燥粉末、マイタケ抽出物含有の化粧料>
(1)スキンローション
1.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
2.グリセリン 3.0
3.ジプロピレングリコール 2.0
4.エタノール 5.0
5.マイタケ抽出物A(老化防止剤) 0.1
6.メチルパラベン 0.2
7.精製水 残 部
製法:成分1?7を均一に混合溶解してスキンローションとする。
【0053】
(2)エモリエントクリーム
1.ポリオキシエチレン(10)アルキルエーテルリン酸ナトリウム 4.5
2.ポリオキシエチレン(3)アルキルエーテル 2.0
3.親油型モノステアリン酸グリセリン 2.0
4.セタノール 2.0
5.スクワラン 5.0
6.流動パラフィン 10.0
7.1,3-ブチレングリコール 5.0
8.加水分解大豆タンパク 0.5
9.ヒアルロン酸ナトリウム液(1%) 1.0
10.メチルパラベン 0.2
11.プロピルパラベン 0.1
12.マイタケ乾燥粉末(老化防止剤) 10.0
13.精製水 残 部
製法:成分1?7及び10,11を80#Cにて加熱混合し、これに同温度に加熱した13を徐々に加えて乳化する。40#Cまで冷却し、成分8、9及び12を加えて攪拌し、さらに室温付近まで冷却してエモリエントクリームとする。
【0054】
(3)ミルキーローション
1.ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテル 1.2
2.テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット 1.2
3.親油型モノステアリン酸グリセリン 1.0
4.セトステアリルアルコール 0.5
5.1,3-ブチレングリコール 6.0
6.流動パラフィン 8.0
7.植物性スクワラン 3.0
8.ミリスチン酸イソセチル 2.0
9.フェノキシエタノール 0.5
10.メチルパラベン 0.3
11.プロピルパラベン 0.1
12.カルボキシビニルポリマー 0.1
13.キサンタンガム(1%水溶液) 10.0
14.水酸化カリウム(10%水溶液) 0.47
15.マイタケ抽出物B(老化防止剤) 0.01
16.精製水 残 部
製法:成分1?11を80℃にて均一に加熱混合し、同温度の成分16を徐々に加えて乳化する。これに成分12を加え混合した後、成分14を加えて均一にする。次いで50℃まで冷却し、成分13及び15を加え、室温付近まで冷却してミルキーローションとする。」(段落【0052】?【0054】)

(2-2)対比、判断
引用例1には、上記「(2)(2-1)」の[引用例1]の摘示(特に、(1-i)参照)からみて、次の発明(以下、「引用例1発明」ともいう。)が記載されている認められる。
<引用例1発明>
「グリフォラ(Grifola)属に属するきのこであるマイタケ(Grifola frondosa (Fr) Gray)の抽出物からなるコラゲナーゼ阻害剤。」

ここで、本願補正発明と引用例1発明を対比する。
(a)引用例1発明の「グリフォラ(Grifola)属に属するきのこであるマイタケ(Grifola frondosa (Fr) Gray)の抽出物」は、本願補正発明の「マイタケ乾燥粉末」に対応するものであり、いずれも「マイタケ由来物」である点で共通する。
(b)引用例1発明の「・・・抽出物からなるコラゲナーゼ阻害剤」は、該抽出物がコラゲナーゼ阻害剤の有効成分であることを意味すると言えることから、本願補正発明の「有効成分として含有するコラゲナーゼ阻害剤」に相当する。

してみると、両発明は、
「マイタケ由来物を、有効成分として含有するコラゲナーゼ阻害剤。」
で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
マイタケ由来物について、本願補正発明では「マイタケ乾燥粉末」と特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されずマイタケの抽出物とされている点

そこで、この相違点について検討する。
引用例1のマイタケの抽出物は、マイタケの「乾燥した子実体粉末」を用いて抽出したものである(摘示(1-v)参照)ところ、当然にそのマイタケ「乾燥した子実体粉末」(即ち、マイタケ乾燥粉末)に含有されている成分が抽出されたものである。そうすると、マイタケ乾燥粉末の抽出物に奏される活性作用は、程度の差はあれマイタケ乾燥物にもあると考えるのが自然である。
ところで、引用例1発明のコラーゲ阻害剤が、「コラゲナーゼの活性を抑えて皮膚の線維成分を保護し、皮膚のハリ、弾力を回復・維持することで皮膚の老化を防止し、若々しい肌の状態を維持する効果を奏する抗老化剤を提供する」(摘示(1-iii)参照)ことをも目的としているものであるのに対し、引用例2は、老化防止を作用効果としている(老化防止剤としている)点で共通するものであるところ、その引用例2では、「マイタケ乾燥粉末」と「マイタケ乾燥粉末の抽出物」を同等の選択肢としていること(摘示(2-i)など参照)を勘案すると、「マイタケ乾燥粉末の抽出物」の代わりに「マイタケ乾燥粉末」を用いることに、格別の創意工夫が必要であったとは言えない。
そして、本願明細書に記載されたコラゲナーゼ活性阻害率のデータ(表3)を検討するに、「マイタケ乾燥粉末」は、マイタケ子実体乾燥粉末を水で抽出(加圧下、120℃、30分間)して濃縮、精製、噴霧乾燥して得た粉末である「マイタケ抽出物B」に比べて活性の程度が劣っていることが理解できる(例えば、濃度0.1mg/mlの場合の阻害率%について、マイタケ抽出物Bが55.0であるのに対しマイタケ乾燥粉末が35.8と劣っている。)ところ、当然に予想されることといえる。

なお、請求人は、(イ)「抽出という手間のかかる工程を経なくてもすむ」との点や、(ロ)「原料から高い歩留りで有効成分を得て」、「経済的価値が高いと言える」との点を主張している(審判請求理由参照)。
しかし、(イ)の点については、予想できる程度のことというべきであり、現に引用例2において「マイタケ乾燥粉末の抽出物」と同列に「マイタケ乾燥粉末」が採用されていることからも、格別のことではない。
(ロ)の点については、上記表3のデータで検討したように、抽出(即ち濃縮)しない乾燥粉末は、抽出物に比べてそれなりに劣っていることが明らかであって、それは予想されることに過ぎないところ、請求人からは、何をもって予想を超えて高い歩留りと言えるのか具体的根拠は何も示されておらず、また経済的価値が予想を超えて高いと解すべき理由も示されていないから、それらは根拠のない主張という他無い。
したがって、前記請求人の主張は採用できるものではない。

(2-3)まとめ
よって、本願補正発明は、引用例2に記載された事項を勘案し、引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するもので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成23年3月14日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成22年11月12日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
マイタケ乾燥粉末、及び/又は生マイタケ、乾燥マイタケ及びマイタケ乾燥粉末から選ばれる少なくとも1種を水、温水又は熱水で抽出して得られた抽出液に、沈殿が生じない程度にアルコールを加え放置後、液面もしくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質を除去した後に得られたマイタケ抽出物を、有効成分として含有することを特徴とするコラゲナーゼ阻害剤。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用される引用例1,2およびその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比、判断
引用例1には、上記「2.(2)(2-2)」で認定したように、引用例1発明が記載されている。再掲すると次のとおり。
<引用例1発明>
「グリフォラ(Grifola)属に属するきのこであるマイタケ(Grifola frondosa (Fr) Gray)の抽出物からなるコラゲナーゼ阻害剤。」

ここで、本願発明と引用例1発明を対比する。
(a)引用例1発明の「グリフォラ(Grifola)属に属するきのこであるマイタケ(Grifola frondosa (Fr) Gray)の抽出物」は、本願発明の「マイタケ抽出物」で共通する。
(b)引用例1発明の「・・・抽出物からなるコラゲナーゼ阻害剤」は、該抽出物がコラゲナーゼ阻害剤の有効成分であることを意味すると言えることから、本願発明の「有効成分として含有するコラゲナーゼ阻害剤」に相当する。

してみると、両発明は、
「マイタケ抽出物を、有効成分として含有するコラゲナーゼ阻害剤。」
で一致し、次の点で相違する。
<相違点>
マイタケ抽出物について、本願発明では「生マイタケ、乾燥マイタケ及びマイタケ乾燥粉末から選ばれる少なくとも1種を水、温水又は熱水で抽出して得られた抽出液に、沈殿が生じない程度にアルコールを加え放置後、液面もしくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質を除去した後に得られた」マイタケ抽出物と特定されているのに対し、引用例1発明ではそのように特定されていない点

そこで、この相違点について検討する。
引用例1では、「【0033】本発明に用いることの出来る抽出物の抽出方法は特に限定されないが、例えば乾燥したものであれば重量比で1?1000倍量、特に10?100倍量の溶媒を用い、常温抽出の場合には、0℃以上、特に20℃?40℃で1時間以上、特に3?7日間行うのが好ましい。また、60?100℃で1時間、加熱抽出しても良い。【0034】以上のような条件で得られる上記各抽出物は、抽出された溶液のまま用いても良いが、さらに必要により、濾過等の処理をして、濃縮、粉末化したものを適宜使い分けて用いることが出来る。」(摘示(1-iv)参照)と説明され、また、その調製とし、「マイタケについては、乾燥した子実体粉末を沸騰水浴中で30分間抽出した。抽出物を乾燥し、これら乾燥エキス100mgにPBS(-)10mlを加えて溶解し、試料溶液とした。」(摘示(1-v)参照)と実施されている。
そうすると、引用例1発明は、本願発明の「生マイタケ、乾燥マイタケ及びマイタケ乾燥粉末から選ばれる少なくとも1種を水、温水又は熱水で抽出して得られた抽出液」の点では一致しているものの、「抽出液に、沈殿が生じない程度にアルコールを加え放置後、液面もしくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質を除去した後に得られた」との点については言及していない。
しかし、必要により濾過や濃縮を行うことは明示されている。
そして、引用例1発明のコラーゲ阻害剤が「コラゲナーゼの活性を抑えて皮膚の線維成分を保護し、皮膚のハリ、弾力を回復・維持することで皮膚の老化を防止し、若々しい肌の状態を維持する効果を奏する抗老化剤を提供する」(摘示(1-iii)参照)ことを目的ともしているものであって、その老化防止を作用効果としている点で共通するものである引用例2では、そのような濾過や濃縮の一環として、マイタケの抽出液に対し、「マイタケ抽出物が、生マイタケ、乾燥マイタケ又は/及びマイタケ乾燥粉末を水又は熱水で抽出して得られる抽出液にアルコールを加え、放置後液面若しくは液中に浮遊、又は容器の壁面に付着する物質を除去したものである」(摘示(2-i)の請求項4参照)とされ、「【0011】このようにして得られた水抽出液は必要に応じてアルコールを加え、放置後液面若しくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質を除去する。この際アルコールとしてはメタノール、エタノール等が使用しうる。水抽出液にアルコールを最終容量濃度が、20?70%の範囲になるまで添加する。添加後は1?25℃の温度で、1?20時間放置する。液面若しくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質が現れるので除去する。除去は濾過、ピペッティングあるいは網状のもので掬う等適宜行いうる。」(摘示(2-iii)参照)とされていることを勘案すると、本願発明で特定する「抽出液に、・・・アルコールを加え放置後、液面もしくは液中に浮遊又は容器の壁面に付着する物質を除去した後に得られた」とすることは、適宜に、少なくとも格別の創意工夫を必要とせずに採用し得る付加的な手段というべきである。
ところで、アルコールを加えるに際し「沈殿が生じない程度に」とすることは、引用例2には明示されていないけれども、引用例2ではアルコールを加えて物質が液面もしくは液中に浮遊することが明示されているにもかかわらずアルコールを加えて沈殿物が生じることは記載されていないことに鑑み、当然に「沈殿が生じない程度に」アルコールを加えていると理解するのが相当であると言える。

したがって、前記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、引用例2の記載を勘案し、当業者が容易に想到し得たものであり、それを採用したこにより格別予想外の作用効果を奏していると解すべき理由も見いだせない。

よって、本願発明は、引用例2に記載された事項を勘案し、引用例1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-12 
結審通知日 2013-06-17 
審決日 2013-07-01 
出願番号 特願2005-505321(P2005-505321)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 川口 裕美子
前田 佳与子
発明の名称 コラゲナーゼ阻害剤及びチロシナーゼ阻害剤  
代理人 箱田 篤  
代理人 大塚 裕子  
代理人 箱田 篤  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 浅井 賢治  
代理人 浅井 賢治  
代理人 大塚 裕子  
代理人 熊倉 禎男  

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