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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1278409
審判番号 不服2012-14077  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-23 
確定日 2013-08-19 
事件の表示 特願2008- 12902「バイオマスガス化ガス発電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月 6日出願公開、特開2009-174392〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本願は、平成20年1月23日の出願であって、平成23年12月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成24年2月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成24年4月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年7月23日に拒絶査定不服の審判が請求されたものであって、その請求項1ないし8に係る発明は、平成24年2月29日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲並びに本願の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
バイオマス燃料をガス化して得られるガス化ガスを燃料としてガスエンジンで発電するバイオマスガス化ガス発電システムであって、
バイオマスを部分燃焼させたガス化ガスを生成するガス化装置と、
前記ガス化装置で生成されたガス化ガスを除塵処理する第1集塵装置と、
前記第1集塵装置で除塵されたガス化ガスに空気を吹き込んで、当該ガス化ガス中の可燃性ガスの一部を部分燃焼させる発熱反応によってタール分を熱分解させる部分燃焼手段と、
前記部分燃焼されたガス化ガスを加熱源として用いるスターリングエンジンと、
前記スターリングエンジンによって駆動される発電機と、
前記スターリングエンジンの加熱源として用いられたガス化ガスを冷却する冷却装置と、
前記冷却装置で冷却されたガス化ガスを除塵する第2集塵装置と、
前記集塵設備で除塵されたガス化ガスを精製する湿式ガス精製装置と、
前記湿式ガス精製装置で精製されたガス化ガスを燃焼させて発電するガスエンジン発電装置と、を備え、
前記部分燃焼手段は、前記第1集塵装置で除塵されたガス化ガスの配管に接続された吹き込みノズルと、当該吹き込まれる空気の量を調節する空気量調節手段とを有する吹き込み装置で構成される、バイオマスガス化ガス発電システム。」


2 引用文献
(1)原査定の拒絶理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-212523号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、以下の記載がある。(なお、下線は、理解の一助のために当審で付したものである。)

(a)「【0001】
本発明は、有機系固形廃棄物を流動化ガスにより流動させながらガス化する流動層ガス化炉に関し、さらに該流動層ガス化炉を備えたガス化処理系統と、湿潤系廃棄物をメタン発酵処理するメタン発酵槽を備えたメタン発酵処理系統とからなる廃棄物複合ガス化処理システム及び方法に関する。」(段落【0001】)

(b)「【0002】
従来、都市ごみ、下水汚泥、バイオマス、産業廃棄物などの有機系固形廃棄物からエネルギ回収を図るために、廃棄物を加熱して熱分解するとともに改質し、可燃性ガス(ガス化ガス)を回収するガス変換技術が環境保全及び省資源の観点から注目されている。
このガス化処理は、廃棄物が供給されたガス化炉内に水蒸気、酸素、空気等のガス化剤を導入してガス化反応を行ってガス化ガスを生成するものである。ガス化ガスはガス化炉の後段でクラッキング装置等の改質炉にてCO、H_(2)リッチな改質ガスに改質される。このようにして得られた改質ガスは、発電機を駆動する蒸気タービンに蒸気を送るボイラに導入された後、バグフィルタ、ガス精製装置等にてガス中の不純物を取り除かれ、燃料ガスとして発電装置等に送給される。即ち、ガス化ガスはガスエンジン又はガスタービン等の内燃機関、熱サイクル機関、或いは熱源機器に利用され、ガス化ガスの熱エネルギは蒸気等の熱媒体又は電力等のエネルギ形態に変換されて有効利用される。
【0003】
このようなガス化処理としては様々な種類が提案、実用化されており、その一つとして、廃棄物を流動させながら部分燃焼により直接加熱してガス化する流動層ガス化炉がある(特許文献1参照)。
これは、酸素と水蒸気との混合ガスであるガス化剤を炉下方から導入し、廃棄物を流動させながら加熱してガス化する装置であり、撹拌効果が大きく効率良くガス化反応することができる。このとき、廃棄物は例えば400?800℃程度に加熱されながら熱分解されてガス状物質となり、前記ガス化剤の酸素及び水蒸気と接触するとともにその一部が炉内で燃焼される。また、改質炉(審決注;「ガス化炉」の誤記と認められる。)では、燃焼反応及び水性ガス化反応(改質反応)が行なわれ、一酸化炭素、水素、メタン、エタン、二酸化炭素等を含むガス化ガスと、タールや煤などの未燃固形物と、飛灰と、不燃物を生じる。
【0004】
前記不燃物は、ガス化炉の下部から系外へと排出される。一方、前記ガス化ガスと未燃固形物と飛灰はガス化炉の上部から後段の改質炉に送給される。改質炉では酸素(又は空気)と水蒸気の混合ガスであるガス化剤が炉内に供給されており、このガス化剤によりガス化ガスは水性ガス化反応がなされる。即ち、ガス化ガス中のメタン、エタン、タール、煤などの未燃固形物は低分子化されてクリーンなCO、H_(2)リッチガスを含む改質ガスが生成される。
このような流動層ガス化炉を利用した装置では流動層ガス化炉にガス化剤が供給されるが、ガス化剤は廃棄物をガス化するだけでなく炉内の廃棄物を流動させるための作用も担っており、その流動性を保つためにガス化に必要な量よりも過剰な量が導入されていた。その結果、廃棄物の部分燃焼率が高まり、ガス化ガスの有するカロリーを低下させるという問題があった。」(段落【0002】ないし【0004】)

(c)「【0022】
図1に示されるように、本実施例に係る複合廃棄物ガス化処理システムは、固形廃棄物を処理するための流動層ガス化炉10を含むガス化処理系統と、湿潤廃棄物を処理するためのメタン発酵槽30を含むメタン発酵処理系統と、が組み合わされた構成となっている。
前記ガス化処理系統は、固形廃棄物を加熱してガス化する流動層ガス化炉10と、該流動層ガス化炉10に酸素を供給するPSA(圧力スイング吸着法)装置11と、該流動層ガス化炉10のガス出口と流路を介して接続される改質炉12と、該改質炉12のガス送出口と流路を介して接続されるボイラ13と、ボイラ13の蒸気送出口と流路を介して接続される蒸気タービン14と、蒸気タービン14の駆動軸に連結された発電機15と、ボイラ13のガス送出口と流路を介して接続される減温塔16と、該減温塔16の後段に順に設けられたバグフィルタ17及びガス精製装置18と、ガス精製装置18のガス送出口と流路を介して接続されるガスエンジン19と、ガスエンジン19に連結された発電機20と、から構成される。
【0023】
また、前記ガス化処理系統は、前記改質炉12、ボイラ13、減温塔16、バグフィルタ17にて発生、回収された灰を湿式洗浄して灰中の重金属類を除去する第1水洗装置21と、該水洗した灰に二酸化炭素を導入して灰中の塩素、重金属類を除去、無害化する第2水洗装置22と、水洗した灰を脱水する脱水機23と、脱水した灰を乾燥させる乾燥装置25と、脱水により発生した水分を処理する排水処理設備24と、からなる灰処理系統を備えている。
一方、前記メタン発酵処理系統は、湿潤系廃棄物をメタン発酵するメタン発酵槽30と、メタン発酵槽30にて発生した発酵ガスから二酸化炭素33を分離し、クリーンなメタンガス34と二酸化炭素33とを回収するVPSA(真空圧力スイング吸着法)装置31と、メタンガスを燃料ガスとして発電を行なうガスエンジン32と、から構成される。
【0024】
図2に前記ガス化処理系統のうち、前記流動層ガス化炉10と前記改質炉12の概略構成を示す。前記固形廃棄物は貯留ホッパ101に貯留され、スクリューフィーダ102を介して定量的に流動層ガス化炉10に供給される。該流動層ガス化炉10は、炉本体104の壁部に固形廃棄物供給口103が設けられ、下方に砂等の流動媒体が貯留した流動層105が形成されている。炉下方に設けられた流動化ガス導入口より流動化ガスが導入され、前記流動層105は流動化される。前記流動化ガスは、前記VPSA装置31にて回収された二酸化炭素を用いる。さらに、前記流動化ガスに加えて、ガス化剤として酸素と水蒸気を混合バルブ107により混合し、混合ガスとして炉底から導入する。この流動層内に供給された固形廃棄物は、浮遊流動する流動層内にて熱分解されてガス状物質になり、ガス化剤の酸素及び水蒸気と接触するとともにその一部が流動層ガス化炉で部分燃焼し、400?650℃の温度となる。このとき、必要に応じて助燃バーナ106にて炉内を加熱すると良い。
【0025】
この燃焼において前記流動化ガス化炉10では、主として下記式(1)で示す燃焼反応及び下記式(2)で示す水性ガス化反応(改質反応)を起こし、一酸化炭素、水素、メタン、エタン、二酸化炭素等を含むガス化ガスと、タールや煤などの未燃固形物と、飛灰と、不燃物とを生じる。また、メタン、エタン、タールなどの炭化水素や煤などの未燃固形分は、下記式(3)で示す改質反応を起こし、一酸化炭素、水素を生じる。
C+O_(2) → CO_(2)+熱 …(1)
C+H_(2)O → CO+H_(2) …(2)
C_(m)H_(m)+mH_(2)O → mCO+(m+n/2)H_(2) …(3)
また不燃物は、流動層ガス化炉10の下部から系外へ排出され、ガス化ガス、未燃固形物及び飛灰を含む流体は、その上部から流路を介して改質炉12に送られる。
【0026】
さらに、本実施例では流動化ガスとして二酸化炭素を導入しており、二酸化炭素は不活性ガスであるためその大部分は未反応で流動化のみに利用されるが、流動化ガス化炉10の後段の改質炉12にて反応熱が供給されることにより二酸化炭素の一部は下記式(4)の反応により一酸化炭素を生成する。
C+CO_(2) → 2CO …(4)
このように、流動化ガスとして二酸化炭素を導入することにより、水蒸気、酸素等のガス化剤を過剰に用いることなくガス化剤の使用量の適正化が可能となり、また二酸化炭素から燃料ガスを生成することもできる。
【0027】
また、これらの導入ガスは以下のように制御される。
即ち、流動化ガスとして利用される二酸化炭素導入量は、流動層の流動媒体量と炉内に投入される廃棄物投入量に基づき制御される。また、水蒸気導入量は、廃棄物中の炭素分を水性ガス化反応により一酸化炭素に転換させるため、廃棄物中の全炭素量に基づき制御される。さらに、酸素導入量は、廃棄物の部分燃焼に必要とされるため、廃棄物投入量に基づき制御される。従って、これらを制御する制御手段(不図示)を夫々独立して設け、この制御手段を独立制御することが好ましい。
【0028】
前記流動層ガス化炉10の上部のガス出口は、流路を介して改質炉12の下部受入口に接続されている。改質炉12では、ガス化ガスは1000℃程度の温度にて前記流動層ガス化炉10から送給された流体に含まれる水蒸気により式(2)と同様な水性ガス化反応がなされる。即ち、ガス化ガス中のメタン、エタン、場合によって浮遊して混入されたタールや煤などの未燃固形物は低分子化されて煤を含まないクリーンなCO、H_(2)のリッチな改質ガスが生成される。尚、改質炉での改質反応において水蒸気量、酸素量が不足する場合には、別途、水蒸気、酸素を供給しても良い。」(段落【0022】ないし【0028】)

(d)「【0033】
本実施例の作用を説明すると、まず固形廃棄物は乾燥機等により所定の含水率まで乾燥された後に流動層ガス化炉10に投入される。該流動層ガス化炉10では、流動化ガスとして二酸化炭素、及びガス化剤として水蒸気、酸素が導入されて上記したガス化反応、燃焼反応等により一酸化炭素、水素を主成分とするガス化ガスが生成される。このガス化ガスは後段の改質炉12に送給され、該改質炉12にて煤等を含まないクリーンな一酸化炭素、水素リッチな改質ガスに改質される。
改質ガスは、改質炉12からボイラ13に送給され、ここで熱回収される。ボイラ13は、改質ガスから回収された熱で水を加熱して蒸気を発生させる。該蒸気は蒸気タービン14に送給され、このタービンを回転させ、発電機15を駆動させることにより発電を行なう。蒸気タービン14から排出された蒸気は、復水器に送給され、ここで水に戻されボイラに再び供給される。
【0034】
前記ボイラ13を通過した改質ガスは減温塔16に送給され、後段のバグフィルタ17に送給できる温度まで水噴霧等により減温される。減温された改質ガスはバグフィルタ17に送給され、ここでダストや塩酸分が除去された後、ガス精製装置18にて触媒との接触等により不純物が除去され、ガスエンジン19に送給され、発電機20が駆動される。前記発電機は、上記したガスエンジンの他、ガスタービン式発電装置、燃料電池式発電装置、ガスエンジン-蒸気タービン式発電装置、ガスタービン-蒸気タービン式発電装置、燃料電池-スチームタービン式発電装置、燃料電池-ガスエンジン-スチームタービン式発電装置等にすることも可能である。」(段落【0033】及び【0034】)

(e)「【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に係る複合廃棄物ガス化処理システムの全体構成図である。
【図2】図1に示した流動層ガス化炉の概略構成を示す図である。
【図3】図1に示したVPSAの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10 流動層ガス化炉
11 PSA装置
12 改質炉
13 ボイラ
14 蒸気タービン
16 減温塔
17 バグフィルタ
18 ガス精製装置
19 ガスエンジン
21 第1水洗装置
22 第2水洗装置
30 メタン発酵槽
31 VPSA装置
32 ガスエンジン
33 二酸化炭素
34 メタンガス 」(【図面の簡単な説明】及び【符号の説明】)

(2)上記(1)(a)ないし(e)及び図1ないし3の記載から、以下のことが分かる。

(ア)上記(1)(a)ないし(e)及び図1ないし3の記載から、引用文献には、バイオマスなどの有機系固形廃棄物をガス化して得られるガス化ガスを燃料としてガスエンジン19で発電するガス化ガス発電システムが記載されていることが分かる。

(イ)上記(1)(a)ないし(e)及び図1ないし3の記載から、引用文献に記載された発電システムは、バイオマスなどの有機系固形廃棄物に、燃焼反応及び水性ガス化反応(改質反応)を起こし、ガス化ガスと未燃固形物と飛灰と不燃物とを生じる流動層ガス化炉10を備えていることが分かる。したがって、上記発電システムは、バイオマスを部分燃焼させたガス化ガスを生成する流動層ガス化炉10を備えているといえる。

(ウ)上記(1)(a)ないし(e)及び図1ないし3の記載から、引用文献に記載された発電システムは、改質炉12を有し、改質炉12では、ガス化ガスは1000℃程度の温度にて水蒸気及び酸素と反応し、ガス化ガス中のメタン、エタン、タール、煤等を低分子化して煤を含まないクリーンなCO、H_(2)のリッチな改質ガスが生成されることが分かる。また、上記(1)(c)の段落【0026】の記載から、改質炉12において反応熱が供給されること、つまり発熱反応が生じることが分かる。したがって、引用文献に記載された発電システムは、ガス化ガスに酸素を含むガスを供給して、ガス化ガスの一部を部分燃焼させる発熱反応によって、タール分を低分子化させる部分燃焼手段を備えているといえる。

(エ)上記(1)(d)及び図1ないし3の記載から、引用文献に記載された発電システムは、上記部分燃焼されたガス化ガスである改質ガスを加熱源として用いるボイラ13及び蒸気タービン14と、該蒸気タービン14によって駆動される発電機15を備えていることが分かる。

(オ)上記(1)(d)及び図1ないし3の記載から、引用文献に記載された発電システムは、上記ボイラ13で熱回収された改質ガスを減温する減温塔16と、該減温塔16で減温された改質ガスからダストを除去する(すなわち除塵する)バグフィルタ17と、該バグフィルタ17で除塵された改質ガスから不純物を除去するガス精製装置18と、該ガス精製装置18で不純物を除去された改質ガスを燃焼させて発電するガスエンジン19及び発電機20とを備えることが分かる。

(3)上記(1)、(2)及び図面の記載から、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「バイオマスをガス化して得られるガス化ガスを燃料としてガスエンジン19で発電するガス化ガス発電システムであって、
バイオマスを部分燃焼させたガス化ガスを生成する流動層ガス化炉10と、
前記流動層ガス化炉10で生成されたガス化ガスに酸素を含むガスを供給して、当該ガス化ガスの一部を部分燃焼させる発熱反応によってタール分を低分子化させる部分燃焼手段である改質炉12と、
改質ガスを加熱源として用いるボイラ13及び蒸気タービン14と、
前記蒸気タービン14によって駆動される発電機15と、
前記ボイラ13で熱回収された改質ガスを減温する減温塔16と、
前記減温塔16で減温された改質ガスを除塵するバグフィルタ17と、
前記バグフィルタ17で除塵された改質ガスから不純物を除去するガス精製装置18と、
前記ガス精製装置18で不純物を除去された改質ガスを燃焼させて発電するガスエンジン19及び発電機20と、を備え、
前記部分燃焼手段は、ガス化ガスに酸素を含むガスを供給する装置で構成される、ガス化ガス発電システム。」


3 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ガスエンジン19」は、その機能、作用又は技術的意義からみて、本願発明における「ガスエンジン」に相当し、以下同様に、「改質炉12」は「部分燃焼手段」に、「改質ガス」は「部分燃焼されたガス化ガス」に、「減温する」は「冷却する」に、「減温塔16」は「冷却装置」に、「バグフィルタ17」は「第2集塵装置」に、「不純物を除去する」は「精製する」に、「ガスエンジン19及び発電機20」は「ガスエンジン発電装置」に、「供給する」は「吹き込む」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「ガス化ガス発電システム」は、バイオマス等をガス化して、そのガス化ガスにより発電するシステムであるから、本願発明における「バイオマスガス化ガス発電システム」に相当し、引用発明における「流動層ガス化炉10」は、バイオマス燃料をガス化する装置であるから、本願発明における「ガス化装置」に相当する。
また、本願発明における「空気」には酸素が含まれ、その酸素が部分燃焼反応に寄与するものであるから、引用発明における「酸素を含むガス」は、「酸素を含むガス」という限りにおいて本願発明における「空気」に相当する。
また、引用発明における「低分子化させる」は、1000℃程度の温度においてタール等をCO、H_(2)等に分解させることであるから、本願発明における「熱分解させる」に相当する。
また、引用発明における「ボイラ13」は「熱回収装置」という限りにおいて、本願発明における「スターリングエンジン(の熱交換器部分)」に相当し、同様に、「ボイラ13及び蒸気タービン14」は、「熱エネルギーを回収して駆動される機関」という限りにおいて、本願発明における「スターリングエンジン」に相当し、「ボイラ13で熱回収された改質ガス」は、「熱回収装置で熱回収されたガス化ガス」という限りにおいて、本願発明における「スターリングエンジンの加熱源と用いられたガス化ガス」に相当する。
また、引用発明における「ガス精製装置18」は「ガス精製装置」という限りにおいて、本願発明における「湿式ガス精製装置」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「バイオマスをガス化して得られるガス化ガスを燃料としてガスエンジンで発電するバイオマスガス化ガス発電システムであって、
バイオマスを部分燃焼させたガス化ガスを生成するガス化装置と、
前記ガス化装置で生成されたガス化ガスに酸素を含むガスを吹き込んで、当該ガス化ガスの一部を部分燃焼させる発熱反応によってタール分を熱分解させる部分燃焼手段と、
前記部分燃焼されたガス化ガスを加熱源として用いる熱エネルギーを回収して駆動される機関と、
前記熱エネルギーを回収して駆動される機関によって駆動される発電機と、
前記熱回収装置で熱回収されたガス化ガスを冷却する冷却装置と、
前記冷却装置で冷却されたガス化ガスを除塵する第2集塵装置と、
前記第2集塵装置で除塵されたガス化ガスを精製するガス精製装置と、
前記ガス精製装置で精製されたガス化ガスを燃焼させて発電するガスエンジン発電装置と、を備え、
前記部分燃焼手段は、ガス化ガスに酸素を含むガスを吹き込む装置で構成される、バイオマスガス化ガス発電システム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
(1)本願発明においては、「ガス化装置で生成されたガス化ガスを除塵処理する第1集塵装置」を備えるのに対し、引用発明においては、「ガス化装置で生成されたガス化ガスを除塵処理する第1集塵装置」を備えるかどうか明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

(2)「熱回収装置」及び「熱エネルギーを回収して駆動される機関」について、本願発明においては「スターリングエンジン」であるのに対し、引用発明においては、「ボイラ及び蒸気タービン」である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)「ガス精製装置」について、本願発明においては「湿式ガス精製装置」であるのに対し、引用発明においては「ガス精製装置」が「湿式」であるかどうか明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

(4)「酸素を含むガス」について、本願発明においては「空気」を吹き込むものであるのに対し、引用発明においては「酸素を含むガス」を供給するものである点(以下、「相違点4」という。)。

(5)「部分燃焼手段」を構成する「ガス化ガスに酸素を含むガスを吹き込む装置」について、本願発明においては「第1集塵装置で除塵されたガス化ガスの配管に接続された吹き込みノズルと、吹き込まれる空気の量を調節する空気量調節手段とを有する吹き込み装置」で構成されるのに対し、引用発明においては、部分燃焼手段は、ガス化ガスに酸素を含むガスを供給する装置で構成されるものの、「吹込みノズル」及び「空気量調節手段」を有する「吹き込み装置」であるのかどうか不明である点(以下、「相違点5」という。)。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
「ガス化装置で生成されたガス化ガスを除塵処理する第1集塵装置」を設ける技術は、周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、平成23年12月26日付け拒絶理由通知書において引用された特開2007-9045号公報[例えば、段落【0030】、【0038】、図1及び2に記載された「高温集塵設備2」を参照。]、同じく特開2005-274123号公報[例えば、段落【0041】及び図1ないし6に記載された「集塵装置2」を参照。]、同じく特開2002-206092号公報[例えば、図1ないし5に記載された「サイクロン14」及び「高温集塵装置46」を参照。]、平成24年4月26日付け拒絶査定において引用された特開2004-75740号公報[例えば、図1ないし7に記載された「サイクロン3」を参照。]、特開2004-76968号公報[例えば、特許請求の範囲の請求項1、2及び8に係る発明及び段落【0059】等の記載を参照。])である。
してみれば、引用発明において、上記周知技術1を適用して、「ガス化装置で生成されたガス化ガスを除塵処理する第1集塵装置」を設けることにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
「熱回収装置」及び「熱エネルギーを回収して駆動される機関」として、スターリングエンジンを設けることは、周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、平成23年12月26日付け拒絶理由通知書において引用された上記特開2005-274123号公報[例えば段落【0004】、【0019】ないし【0023】等の記載及び図面を参照。]、特開2006-118406号公報[例えば、特許請求の範囲、段落【0001】ないし【0004】及び【0024】等の記載を参照。]、特開2004-76968号公報[例えば、特許請求の範囲の請求項1、2及び8に係る発明を参照。]、特開平11-304123号公報[例えば、特許請求の範囲、段落【0021】、【0036】ないし【0040】及び図1を参照。]、特開平11-264524号公報[例えば、特許請求の範囲及び段落【0001】ないし【0011】を参照。]、特開平11-159718号公報[例えば、段落【0032】等の記載を参照。]、特開平8-94050号公報[例えば、特許請求の範囲及び段落【0001】ないし【0041】を参照。]、特開平4-121503号公報[例えば、第4ページ左上欄第1ないし15行等の記載を参照。]等の記載を参照。)である。
なお、上記特開平11-159718号公報[例えば、段落【0032】等の記載を参照。]及び上記特開平8-94050号公報[例えば、特許請求の範囲及び段落【0005】ないし【0013】を参照。]には、「熱回収装置として、ボイラや蒸気タービンに代えて、スターリングエンジンを設ける」という技術思想も記載されている。
してみれば、引用発明において、上記周知技術2を適用して、「熱回収装置」及び「熱エネルギーを回収して駆動される機関」として、「ボイラ13及び蒸気タービン14」に代えて、スターリングエンジンを設けることにより、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
ガス化ガス発電システムにおいて、湿式ガス精製装置を設ける技術は、周知技術(以下、「周知技術3」という。例えば、特開2003-20486号公報[例えば、段落【0018】等の記載及び図面を参照。]、特開2001-254086号公報[例えば、段落【0003】、【0039】等の記載及び図面を参照。]、特開平11-347348号公報[例えば、段落【0003】、【0014】等の記載及び図面を参照。]、特開平11-294186号公報[例えば、段落【0003】、【0014】等の記載及び図面を参照。])である。
してみれば、引用発明において、上記周知技術3を適用して、引用発明における「ガス精製装置」を「湿式ガス精製装置」とすることにより、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)相違点4について
本願の明細書(段落【0016】を参照。)には、「部分燃焼手段としては、部分燃焼用の空気(大気に限定されず高酸素含有ガスでもよい)を吹き込む吹込み装置が例示され」と記載されていることから、本願発明における「空気」は、「高酸素含有ガス」(引用発明における「酸素を含むガス」に相当する。)であってもよいものである。
また、ガス化ガス発電システムにおいて、「部分燃焼手段」(改質炉等)に「空気」を吹き込むようにする技術は、周知技術(以下、「周知技術4」という。例えば、特開2005-247992号公報[例えば、段落【0016】等の記載を参照。]、特開2007-177106号公報[例えば、段落【0029】等の記載を参照。]、上記特開2005-274123号公報[例えば、特許請求の範囲の請求項10、段落【0038】、【0073】及び【0087】ないし【0092】等の記載を参照。]、国際公開第2007/077685号[例えば、段落[0022]等の記載を参照。])である。
してみれば、引用発明において、上記周知技術4を適用して、「部分燃焼手段」を、「空気」を吹き込むものとすることにより、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)相違点5について
燃焼装置等において、燃焼のための空気の供給を、「吹込みノズル」及び「空気量調節手段」とを有する「吹き込み装置」により行う技術は、周知技術(以下、「周知技術5」という。例えば、上記特開2005-247992号公報[例えば、段落【0016】等の記載を参照。]、特開2004-286413号公報[例えば、段落【0018】等の記載を参照。]、特開平10-311520号公報[例えば、特許請求の範囲、段落【0008】等の記載を参照。]、特開平8-270931号公報[例えば、特許請求の範囲の請求項13及び段落【0055】及び【0056】等の記載を参照。]、特開平6-58510号公報[例えば、特許請求の範囲の請求項1ないし3等の記載を参照。]、特開昭61-272509号公報[例えば、特許請求の範囲の請求項1及び第3ページ左上欄第19行ないし左下欄第2行の記載を参照。])である。
してみれば、引用発明において、上記周知技術5を適用して、「吹き込みノズル」及び「空気量調節手段」とを有する「吹き込み装置」により空気の吹込みを行う構成とすることにより、上記相違点5に係る本願発明の発明特定事項をなすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、その奏する効果は、引用発明及び周知技術1ないし5から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1ないし5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-12 
結審通知日 2013-06-21 
審決日 2013-07-08 
出願番号 特願2008-12902(P2008-12902)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島倉 理  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
金澤 俊郎
発明の名称 バイオマスガス化ガス発電システム  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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