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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1278617
審判番号 不服2011-27880  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-26 
確定日 2013-08-30 
事件の表示 特願2010-128374「情報表示制御装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月 9日出願公開、特開2010-198640〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月4日の特許出願であって、特願2005-86345号(平成17年3月24日出願)の分割出願として出願されたものであり、平成22年12月3日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成23年3月18日付けで手続補正書の提出がなされ、同年5月11日付けで最後の拒絶理由の通知がなされ、同年7月25日付けで手続補正書の提出がなされ、同年8月26日付けで平成23年7月25日付け手続補正に対して補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して同年12月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされ、当審において、平成24年10月22日付けで前置報告書を利用した審尋がなされ、それに対する回答はなされなかったものである。



第2 平成23年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲、

「 【請求項1】
見出語と発音記号を含む説明情報とが対応づけて記憶されている辞書データ記憶部と、前記見出語と音声データとが対応づけて記憶されている音声データ記憶部をそれぞれ備えている第1および第2の辞書記憶部を有する辞書情報記憶手段と、
この辞書情報記憶手段における前記第1の辞書記憶部に記憶されている見出語の中から、ユーザ操作に従って一つの見出語を選択する見出語選択手段と、
この見出語選択手段により一つの見出語が選択されると、この選択された一つの見出語に対応づけて前記第1の辞書記憶部に記憶されている発音記号を含む説明情報を読み出して表示させる説明情報表示制御手段と、
この説明情報表示制御手段の制御により前記発音記号を含む説明情報が表示されている状態のもとで、音声キーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第1の音声の出力制御を行う第1の音声出力制御手段と、
前記説明情報表示制御手段の制御により表示されている説明情報に含まれている複数の単語の中から、ユーザ操作に従って一つの単語が見出語として前記見出語選択手段により選択されると、前記辞書情報記憶手段における前記第2の辞書記憶部から、当該選択された一つの単語、この単語に対応する発音記号、前記単語に対応する音声データを示す音声アイコンを読み出して、これら単語、発音記号および音声アイコンを表示させる発音記号表示制御手段と、
この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで、前記音声キーが操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御手段と、
を備えることを特徴とする情報表示制御装置。
【請求項2】
前記説明情報表示制御手段の制御により表示された説明情報に含まれている複数の単語の中から、ユーザ操作に従って一つの単語が選択された後に、前記発音記号表示制御手段による表示を行うことなしに、前記辞書情報記憶手段の第1の辞書記憶部から当該選択単語の見出語に対応する音声データを読み出し、この読み出された音声データに従った第3の音声の出力制御を行う第3の音声出力制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の情報表示制御装置。
【請求項3】
前記辞書情報記憶手段の前記第1の辞書記憶部には、特定言語の第1の国での方言の見出語、発音記号、音声データが記憶され、前記第2の辞書記憶部には、前記特定言語の第2の国での方言の見出語、発音記号、音声データが記憶されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の情報表示制御装置。
【請求項4】
前記第1の音声出力手段は、前記音声キーを押した後に、決定キーを操作すると、前記音声データに従った第1の音声の出力制御を行うことを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の情報表示制御装置。
【請求項5】
見出語と発音記号を含む説明情報とが対応づけて記憶されている辞書データ記憶部と、前記見出語と音声データとが対応づけて記憶されている音声データ記憶部をそれぞれ備えている第1および第2の辞書記憶部を有する辞書情報記憶手段と、この辞書情報記憶手段における前記第1の辞書記憶部に記憶されている見出語の中から、ユーザ操作に従って一つの見出語を選択する見出語選択手段と、この辞書情報記憶手段の前記第1の辞書記憶部に記憶されている見出語の中から、ユーザ操作に従って一つの見出語を選択する見出語選択手段と、この見出語選択手段により一つの見出語が選択されると、この選択された一つの見出語に対応づけて前記第1の辞書記憶部に記憶されている発音記号を含む説明情報を読み出して表示させる説明情報表示制御手段と、を備えるコンピュータに、
前記説明情報表示制御手段の制御により表示されている説明情報に含まれている複数の単語の中から、ユーザ操作に従って一つの単語が見出語として前記見出語選択手段により選択されると、前記辞書情報記憶手段における前記第2の辞書記憶部から、当該選択された一つの単語、この単語に対応する発音記号、前記単語に対応する音声データを示す音声アイコンを読み出して、これら単語、発音記号および音声アイコンを表示させる発音記号表示制御機能と、
この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで、前記音声キーが操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御機能と、
を実現させるためのプログラム。」

を、

「 【請求項1】
見出語と発音記号を含む説明情報とが対応づけて記憶されている辞書データ記憶部と、前記見出語と音声データとが対応づけて記憶されている音声データ記憶部とをそれぞれ備えている第1および第2の辞書記憶部を有するとともに、音声を出力する際に用いられる音声出力アイコンが記憶されているアイコンデータ記憶部を有する辞書情報記憶手段と、
前記第1の辞書記憶部に記憶されている複数の見出語の中から、ユーザ操作に従って一つの見出語を選択する見出語選択手段と、
この見出語選択手段により一つの見出語が選択されると、この選択された一つの見出語に対応づけて前記第1の辞書記憶部に記憶されている発音記号を含む説明情報を読み出して表示させる説明情報表示制御手段と、
この説明情報表示制御手段の制御により前記発音記号を含む説明情報が表示されている状態のもとで、ユーザ操作に従って音声キーが操作された後に、その操作の確定指示を行なうキーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第1の音声の出力制御を行う第1の音声出力制御手段と、
前記説明情報表示制御手段の制御により表示されている説明情報に含まれている複数の単語の中から、ユーザ操作に従って音声キーが操作された後に、カーソルキーの操作とその操作の確定指示を行なうキーが操作されて、一つの単語が見出語として選択されると、前記辞書情報記憶手段における前記第2の辞書記憶部から、当該選択された一つの単語、この単語に対応する発音記号、前記単語に対応する音声データを示す音声アイコンを読み出して、これら単語、発音記号および音声アイコンを表示させる一方で、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御手段と、
を備えることを特徴とする情報表示制御装置。
【請求項2】
前記辞書情報記憶手段の前記第1の辞書記憶部には、特定言語の第1の国での方言の見出語、発音記号、音声データが記憶され、前記第2の辞書記憶部には、前記特定言語の第2の国での方言の見出語、発音記号、音声データが記憶されていることを特徴とする請求項1に記載の情報表示制御装置。
【請求項3】
見出語と発音記号を含む説明情報とが対応づけて記憶されている辞書データ記憶部と、前記見出語と音声データとが対応づけて記憶されている音声データ記憶部とをそれぞれ備えている第1および第2の辞書記憶部を有するとともに、音声を出力する際に用いられる音声出力アイコンが記憶されているアイコンデータ記憶部を有する辞書情報記憶手段と、前記第1の辞書記憶部に記憶されている複数の見出語の中から、ユーザ操作に従って一つの見出語を選択する見出語選択手段と、この見出語選択手段により一つの見出語が選択されると、この選択された一つの見出語に対応づけて前記第1の辞書記憶部に記憶されている発音記号を含む説明情報を読み出して表示させる説明情報表示制御手段と、を備えるコンピュータに、
この説明情報表示制御手段の制御により前記発音記号を含む説明情報が表示されている状態のもとで、ユーザ操作に従って音声キーが操作された後に、その操作の確定指示を行なうキーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第1の音声の出力制御を行う第1の音声出力制御機能と、
前記説明情報表示制御手段の制御により表示されている説明情報に含まれている複数の単語の中から、ユーザ操作に従って音声キーが操作された後に、カーソルキーの操作とその操作の確定指示を行なうキーが操作されて、一つの単語が見出語として選択されると、前記辞書情報記憶手段における前記第2の辞書記憶部から、当該選択された一つの単語、この単語に対応する発音記号、前記単語に対応する音声データを示す音声アイコンを読み出して、これら単語、発音記号および音声アイコンを表示させる一方で、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御機能と、
を実現させるためのプログラム。」

と補正するものである。

本件補正では、本件補正前の請求項1は本件補正後の請求項1に、本件補正前の請求項3は本件補正後の請求項2に、本件補正前の請求項5は本件補正後の請求項3にそれぞれ対応し、本件補正前の請求項1と本件補正後の請求項1を比較すると、本件補正後の請求項1に係る本件補正には、以下の補正事項が含まれる。

(補正事項1)
補正前の請求項1の「見出語と発音記号を含む説明情報とが対応づけて記憶されている辞書データ記憶部と、前記見出語と音声データとが対応づけて記憶されている音声データ記憶部をそれぞれ備えている第1および第2の辞書記憶部を有する辞書情報記憶手段」を「見出語と発音記号を含む説明情報とが対応づけて記憶されている辞書データ記憶部と、前記見出語と音声データとが対応づけて記憶されている音声データ記憶部とをそれぞれ備えている第1および第2の辞書記憶部を有するとともに、音声を出力する際に用いられる音声出力アイコンが記憶されているアイコンデータ記憶部を有する辞書情報記憶手段」とする補正。

(補正事項2)
補正前の請求項1の「前記第1の辞書記憶部に記憶されている見出語の中から」を「前記第1の辞書記憶部に記憶されている複数の見出語の中から」とする補正。

(補正事項3)
補正前の請求項1の「この説明情報表示制御手段の制御により前記発音記号を含む説明情報が表示されている状態のもとで、音声キーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第1の音声の出力制御を行う第1の音声出力制御手段」を「この説明情報表示制御手段の制御により前記発音記号を含む説明情報が表示されている状態のもとで、ユーザ操作に従って音声キーが操作された後に、その操作の確定指示を行なうキーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第1の音声の出力制御を行う第1の音声出力制御手段」とする補正。

(補正事項4)
補正前の請求項1の「前記説明情報表示制御手段の制御により表示されている説明情報に含まれている複数の単語の中から、ユーザ操作に従って一つの単語が見出語として前記見出語選択手段により選択されると、前記辞書情報記憶手段における前記第2の辞書記憶部から、当該選択された一つの単語、この単語に対応する発音記号、前記単語に対応する音声データを示す音声アイコンを読み出して、これら単語、発音記号および音声アイコンを表示させる発音記号表示制御手段と、この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで、前記音声キーが操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御手段」を「前記説明情報表示制御手段の制御により表示されている説明情報に含まれている複数の単語の中から、ユーザ操作に従って音声キーが操作された後に、カーソルキーの操作とその操作の確定指示を行なうキーが操作されて、一つの単語が見出語として選択されると、前記辞書情報記憶手段における前記第2の辞書記憶部から、当該選択された一つの単語、この単語に対応する発音記号、前記単語に対応する音声データを示す音声アイコンを読み出して、これら単語、発音記号および音声アイコンを表示させる一方で、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御手段」とする補正。


2.補正の目的の適否についての検討
(1)補正事項1について
補正前の請求項1の「辞書情報記憶手段」において、「音声を出力する際に用いられる音声出力アイコンが記憶されているアイコンデータ記憶部」を有する点を限定するものである。
したがって、補正事項1についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)(以下「請求項の限定的減縮」ということがある。)を目的とするものである。

(2)補正事項2について
補正前の請求項1の「第1の辞書記憶部に記憶されている見出語」について、該「見出語」が複数であることを限定するものである。
したがって、補正事項2についての補正は、請求項の限定的減縮を目的とするものである。

(3)補正事項3について
補正前の請求項1には、「音声キーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し」を行うことが記載されているのに対し、補正後の請求項1には、「音声キーが操作された後に、その操作の確定指示を行なうキーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し」を行うことが記載されているので、「音声キー」の操作だけで「音声データ」を読み出す構成から、「音声キー」の操作の後に「その操作の確定指示を行なうキー」を操作して「音声データ」を読み出す構成に変更されているので、このような構成を変更する補正を含む本件補正は、技術的事項を変更するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。また、請求項の削除、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明の何れかを目的としたものでもない。
よって、補正事項3についての補正は、請求項の限定的減縮を目的とするものに該当しない。また、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号以外の各号に掲げる事項を目的とするものでもない。
したがって、補正事項3についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものではない。

(4)補正事項4について
補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「発音記号表示制御手段」は、補正後の請求項1には記載されていない。また、補正前の請求項1では、単語、発音記号および音声アイコンの表示は「発音記号表示制御手段」が行い、音声データに従った第2の音声の出力制御は「第2の音声出力制御手段」が行うことが記載されていたが、補正後の請求項1は、単語、発音記号および音声アイコンの表示と音声データに従った第2の音声の出力制御を「第2の音声出力制御手段」で行うことが記載されている。してみると本件補正は、発明特定事項を削除するものであり、かつ、技術的事項を変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められない。
また、明細書の段落【0088】には、「アイコンデータ845に基づいて、例えば図20のI18に示すような音声出力辞書に設定された辞書による音声出力アイコンを表示部40に表示させる」ことが記載され、図4には該「アイコンデータ845」が辞書DBとは別個に設けられたものであることが記載されていることから、音声出力アイコンは「アイコンデータ845」から読み出されるものであり、辞書DBから読み出されるものではないことは明らかである。そして、補正後の請求項1の「音声アイコン」と「第2の辞書記憶部」は明細書の段落【0088】に記載された「音声出力アイコン」といずれかの「辞書DB」に相当するものと認められるが、補正後の請求項1の記載では、「音声アイコン」は「第2の辞書記憶部」から読み出されるものとなっているため、明細書の記載と対応していない。してみると、「本来その意であることが明細書、図面の記載などから明らかな字句・語句の誤りを、その意味内容の字句・語句に正す」ことが誤記の訂正であるところ、本件補正は、補正により意味内容が正しくなるものではないので、誤記の訂正を目的とするものとは認められない。
さらに、請求項の削除、或いは、明りょうでない記載の釈明の何れかを目的としたものでもない。
よって、補正事項4についての補正は、請求項の限定的減縮を目的とするものに該当しない。また、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号以外の各号に掲げる事項を目的とするものでもない。
したがって、補正事項4についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものではない。


3.新規事項の追加の有無についての検討
(1)補正事項4の音声アイコン表示について
補正後の請求項1には、「辞書情報記憶手段における前記第2の辞書記憶部から、当該選択された一つの単語、この単語に対応する発音記号、前記単語に対応する音声データを示す音声アイコンを読み出し」と記載されていることから、「音声アイコン」は「第2の辞書記憶部」から読み出すものとなっている。
これに対して、出願当初の明細書には、段落【0088】には、「アイコンデータ845に基づいて、例えば図20のI18に示すような音声出力辞書に設定された辞書による音声出力アイコンを表示部40に表示させる」ことが記載され、図4には該「アイコンデータ845」が辞書DBとは別個に設けられたものであることが記載されていることから、「音声出力アイコン」は「アイコンデータ845」から読み出されるものであり、辞書DBから読み出されるものではないことは明らかである。
そして、補正後の請求項1の「音声アイコン」は明細書に記載された「音声出力アイコン」に相当し、補正後の請求項1の「第2の辞書記憶部」は明細書に記載された複数の「辞書DB」のうちのいずれかに相当するものと認められる。
してみると、補正後の請求項1では、「音声アイコン」が「第2の辞書記憶部」から読み出されるものであるが、そのような構成は出願当初の明細書には記載も示唆もされていない事項であり、また、このことは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると認められる。

(2)補正事項3及び4について
補正後の請求項1の記載では、説明情報が表示されている状態のもとで音声キーが操作された後にその操作の確定指示を行うキーが操作されると、第1の音声出力制御手段が第1の辞書記憶部から音声データを読み出し、説明情報に含まれている複数の単語の中から、音声キーが操作された後にカーソルキーの操作とその操作の確定指示を行なうキーが操作されて一つの単語が見出語として選択されると、第2の音声出力制御手段が第2の辞書記憶部から音声データを読み出すこと、換言すれば、「音声キー」と「その操作の確定指示を行うキー」が操作されると「第1の辞書記憶部」が特定され、「音声キー」の後の「カーソルキー」と「その操作の確定指示を行うキー」が操作されると「第2の辞書記憶部」が特定される構成が記載されている。
これに対して、出願当初の明細書の段落【0088】乃至【0090】、及び段落【0109】乃至【0123】、及び図12?15には、説明情報が表示されている状態で音声キーが操作され後にその操作の確定指示を行うキー(訳/決定キー)が操作された場合でも、説明情報に含まれている複数の単語の中から、音声キーが操作された後にカーソルキーの操作とその操作の確定指示を行なうキー(訳/決定キー)が操作されて一つの単語が見出語として選択された場合でも、音声出力辞書決定処理が実施される。そしてこの音声出力辞書決定処理は、ユーザの選択した単語の音声データがユーザ選択辞書に存在していればユーザ選択辞書から音声データを読み出し、ユーザ選択辞書に存在していなければ他の辞書から音声データを読み出しを行うものである。
してみると、補正後の請求項1は、「音声キー」と「その操作の確定指示を行うキー」が操作されると「第1の辞書記憶部」が特定され、「音声キー」の後の「カーソルキー」と「その操作の確定指示を行うキー」が操作されると「第2の辞書記憶部」が特定されるものであるが、そのような構成は出願当初の明細書には記載も示唆もされていない事項であり、また、このことは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると認められる。

(3)新規事項の追加の有無のまとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.むすび
上記2.で検討したとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮にそうでないとしても、上記3.で検討したとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 補正却下の決定を踏まえた検討

1.本願の請求項1に係る発明
平成23年12月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成23年3月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。

「 【請求項1】
見出語と発音記号を含む説明情報とが対応づけて記憶されている辞書データ記憶部と、前記見出語と音声データとが対応づけて記憶されている音声データ記憶部をそれぞれ備えている第1および第2の辞書記憶部を有する辞書情報記憶手段と、
この辞書情報記憶手段における前記第1の辞書記憶部に記憶されている見出語の中から、ユーザ操作に従って一つの見出語を選択する見出語選択手段と、
この見出語選択手段により一つの見出語が選択されると、この選択された一つの見出語に対応づけて前記第1の辞書記憶部に記憶されている発音記号を含む説明情報を読み出して表示させる説明情報表示制御手段と、
この説明情報表示制御手段の制御により前記発音記号を含む説明情報が表示されている状態のもとで、音声キーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第1の音声の出力制御を行う第1の音声出力制御手段と、
前記説明情報表示制御手段の制御により表示されている説明情報に含まれている複数の単語の中から、ユーザ操作に従って一つの単語が見出語として前記見出語選択手段により選択されると、前記辞書情報記憶手段における前記第2の辞書記憶部から、当該選択された一つの単語、この単語に対応する発音記号、前記単語に対応する音声データを示す音声アイコンを読み出して、これら単語、発音記号および音声アイコンを表示させる発音記号表示制御手段と、
この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで、前記音声キーが操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御手段と、
を備えることを特徴とする情報表示制御装置。」


2.原査定の拒絶理由の概要

(1)平成23年5月11日付けの拒絶理由通知
平成23年5月11日付けで審査官が通知した拒絶理由は、次の内容を含むものである。

「[理由A]
平成23年 3月18日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
[理由B]




[理由Aについて]
請求項1-5に記載された「音声キー」に対応する事項が、当初明細書等には記載されていない。
発明の詳細な説明には「単語音声キー3g」が記載されているが、「単語音声キー3g」は、これを押下することにより音声モードに移行するものであって(段落【0085】,【0012】、図12,17など)、「この説明情報表示制御手段の制御により前記発音記号を含む説明情報が表示されている状態のもとで……操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出」すものではなく、「この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで……操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出」すものでもない。

請求項1には、「この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで、前記音声キーが操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御手段」との発明特定事項が記載されている。
また、請求項5には、「この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで、前記音声キーが操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う第2の音声出力制御機能」との発明特定事項が記載されている。
しかし、発明の詳細な説明の段落【0089】,【0090】、図13のステップA31-A37などには、ユーザにより訳/決定キー3eが押下された場合に、音声出力辞書の辞書DBの見出語音声データにおける音声出力単語の音声データを再生して音出力部50から出力させ、音声出力処理と同時に、ユーザ選択辞書でなかったと判定した場合には、音声出力辞書に設定された辞書名と、音声出力単語と、発音記号と、音声出力アイコンとを含むウィンドウを表示部40に所定時間表示させることが記載されているものの、前記発明特定事項に対応する事項は記載されていない。
したがって、前記発明特定事項を追加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でする補正とはいえない。

請求項1には、「この説明情報表示制御手段の制御により前記発音記号を含む説明情報が表示されている状態のもとで、音声キーが操作されると、前記一つの見出語に対応する音声データを前記第1の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第1の音声の出力制御を行う第1の音声出力制御手段」との発明特定事項が記載されている。
また、請求項4には、「前記第1の音声出力手段は、前記音声キーを押した後に、決定キーを操作すると、前記音声データに従った第1の音声の出力制御を行うこと」との発明特定事項が記載されている。
発明の詳細な説明の段落【0060】などには、見出語と当該見出語の複数の単語を含む説明情報とが表示されている状態でユーザにより単語音声キー3gが押下された場合であって、当該見出語又は説明情報中の一の単語が選択された場合に(以下、「音声出力単語」と呼ぶ。)、音声出力辞書決定処理を実行することが記載されているものの、前記発明特定事項に対応する事項は記載されていない。すなわち、前記発明特定事項は、例えば、キーを操作することにより、ユーザが単語を選択することなく見出語の音声を出力するとの事項を含むものであるが、そのような事項は当初明細書等には記載されていない。
したがって、前記発明特定事項を追加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でする補正とはいえない。

以下略 」


(2)平成23年8月26日付けの拒絶査定の概要
平成23年8月26日付けの拒絶査定は、次の内容を含むものである。

「この出願については、平成23年 5月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由Aによって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
平成23年 7月25日付けの手続補正書でした明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は、却下されている。」


3.当審の判断

請求項1には、「第2の音声出力制御手段」が、「この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで、前記音声キーが操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し、この読み出された音声データに従った第2の音声の出力制御を行う」こと、換言すれば、音声キーを操作する前に「単語、発音記号および音声アイコンが表示」されており、該表示された状態で「音声キー」が操作されると音声データが第2の辞書記憶部から読み出されることが記載されている。
これに対して、出願当初の明細書には、段落【0083】乃至【0090】、及び図12?13には、図17に記載されているように見出語と説明情報が表示されている状態のもとで「単語音声キー」が押下されると音声モードへ移行されるものの、「単語音声キー」の押下時に「音声アイコン」が表示されていることは記載されておらず、また、「単語音声キー」の押下により音声データを読み出すことも記載されていない。
してみると、請求項1の「この発音記号表示制御手段の制御より前記単語、発音記号および音声アイコンが表示されている状態のもとで、前記音声キーが操作されると、」及び「前記音声キーが操作されると、前記発音記号に対応する音声データを前記第2の辞書記憶部から読み出し」するような構成は出願当初の明細書には記載も示唆もされていない事項であり、また、このことは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると認められる。

したがって、平成23年3月18日付けでした手続補正は、当初明細書等に開示されていない新規事項を追加する補正であって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反する。


4.むすび
以上のとおり、平成23年3月18日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に違反してなされたものである。
したがって、本件審判に係る出願は、他の特許要件について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-21 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-24 
出願番号 特願2010-128374(P2010-128374)
審決分類 P 1 8・ 573- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F)
P 1 8・ 574- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 打出 義尚  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 長島 孝志
金子 幸一
発明の名称 情報表示制御装置及びプログラム  

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