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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1278621 |
審判番号 | 不服2010-14873 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-05 |
確定日 | 2013-09-11 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 24950号「LEDおよびLEDの組立方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月 8日出願公開、特開平11-274568〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成11年2月2日(パリ条約による優先権主張 1998年2月19日、アメリカ合衆国)に特許出願したものであって、平成18年9月14日及び平成22年2月10日に手続補正がなされたが、平成22年3月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされた後、当審において、平成23年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年11月30日に手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成23年11月30日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「上部表面を備えたサファイア基板と、 前記サファイア基板の前記上部表面上に堆積した半導体材料の第1の層と、 第1の層と共にp-nダイオードを形成する前記半導体材料の第2の層と、 前記第1と第2の層の間にあって、前記第1と第2の層の両端間に電位が印加されると、光を発生する発光領域と、 前記第2の層に堆積した導電層からなる第1の接点と、 前記第1の層に電気的に接続された第2の接点が含まれており、 前記サファイア基板の前記上部表面に、光を散乱または回折するための突出部及び/または陥凹部が含まれるように前記サファイア基板の前記上部表面が粗面にされ、突出部及び/または陥凹部はLEDによって生じる光の前記第1の層における波長より大きいか、あるいは、その程度の大きさであることを特徴とする、 LED。」 3 平成23年8月26日付けで通知された拒絶の理由 平成23年8月26日付けで通知された拒絶の理由の一つは、概略、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に接する当業者が、効率が改善されたLEDを組み立てることは困難といわざるを得ず、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1?5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない、というものである。 4 本願明細書の記載 本願明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【0003】 LEDの効率は、2つの効率、すなわち、電極に加えられる電力が光に変換される効率と、光がLEDから外部に結合される効率の積である。サファイア基板上に組立られたGaNベースのLEDの場合、ダイオードに生じる光の大部分は、結合効率が劣るために失われる。GaNは、屈折率が空気またはエポキシ・カプセル材料よりもはるかに大きい。従って、小さい頂角の光円錐角内でダイオード表面に入射する光しか、表面から出られない。残りの光の大部分は、反射によってGaN層に戻され、サファイア基板表面とGaN上部表面によって囲まれた導波路内に捕捉される。この捕捉された光の多くは、最終的にデバイス内で吸収される。従って、GaNダイオードの効率は、理想からほど遠い。」、 「【0007】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、一般に、改善されたLEDを提供することにある。 【0008】 本発明のもう1つの目的は、結合効率の改善されたLEDを提供することにある。」、 「【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明は、先行技術によるデバイス、とりわけ、GaNベースのデバイスに比べて光結合効率の高いLEDである。本発明によるLEDには、上部表面を備えた基板と、基板の上部表面上に堆積した半導体材料の第1の層と、発光層と、発光層上に堆積した半導体材料の第2の層が含まれている。電気接点が、第1と第2の層に接続されている。第1と第2の層は、p-nダイオードを形成している。本発明の実施例の1つでは、基板の上部表面には、発光領域で発生した光を散乱させる突出部/陥凹部が含まれている。」、 「【0015】 本発明では、導波路効果を杜絶する4つの方法が、個別にあるいは組み合わせて、利用される。第1の方法では、サファイア/GaN界面に粗面仕上げを施すことが必要になる。この方法は、GaNのエピタキシャル成長またはp-nダイオードの発光効率の妨げにならないように、GaNエピタキシャル成長の前に、粗面仕上げを施すことができるという驚くべき結果に基づくものである。・・・ 【0016】 次に、GaNベースのLED110の断面図である図2を参照する。図1に示す構成要素と同じ機能を果たす図2に示す構成要素には、同じ表示が施されているので、これ以上の説明は行わない。粗面仕上げによって、界面に当たる光を散乱させ、その結果、GaN/電極/空気、または、エポキシ界面の臨界角より小さい角度で、光の一部が反射するようにする特徴118及び119が形成される。上部表面の臨界角内に含まれる円錐内に散乱する光は、111で示すように、上部表面を通ってLEDから脱出する。浅い角度で散乱する光117は、GaN層の上部表面から反射されて、もう一度基板表面に当たる。この光の一部は、112で示すように、LEDの上部表面からの脱出を可能にする角度で散乱することになる。浅すぎる角度で散乱する光は、もう一度上部表面で跳ね返り、該プロセスが繰り返される。 【0017】 サファイア表面の散乱を生じる特徴は、陥凹部119または突出部118であり、LEDによって生じる光のGaNにおける波長より大きいか、あるいは、ほぼその程度であることが望ましい。特徴が光の波長よりあまりにも小さいと光は有効に散乱しない。特徴がGaN層の厚さに対し相対的に大きくなると、粗面仕上げによって、GaNの上部表面に欠陥を生じる可能性がある。これらの制限内において、LED表面の特徴を変更しなくても、粗面仕上げによって、光の結合効率が大幅に向上する。 【0018】 粗面仕上げは、いくつかあるうちの任意の技法によって実施することが可能である。例えば、比較的粗い研磨粗粒を用いて研磨することによって、機械的に表面の粗面仕上げを施すことが可能である。例えば、砥石車に付着させた金属パックにサファイア・ウェーハを取り付けることが可能である。次に、ダイヤモンド研磨粗粒を用いて、所望の粗さになるようにサファイアに「かき傷」がつけられる。3?5ミクロンの範囲のダイヤモンド粗粒サイズで十分であることが分かっている。 【0019】 留意すべきは、サファイア基板は、通常、切削後、LED基板に利用する前に、かなりの程度まで研磨されるという点である。従って、粗面仕上げは、従来の基板製造プロセスにおける最終研磨プロセスを省略することによって実施可能である。この場合、本発明によって、実際に、基板の製造コストが低下し、同時に、LEDの総合効率が改善される。 【0020】 エッチングで、表面に粗面仕上を施して、サファイア表面の反射率を変更することも可能である。サファイア基板の粗面仕上げは、上部電極におけるp-n接合またはアイランドの妨げにならないので、LEDの上部表面のエッチングに関して上述のランダム・エッチング・プロセスは、上述の悪影響を生じることなく、サファイア基板に利用することが可能である。このエッチングは、フォトレジストを用いて、リソグラフィ技法で開口部を形成し、さらに、フォトレジストをエッチング・マスクとして利用することによって実施可能である。エッチングは、イオン・エッチング、イオン・ミリング、または、H_(3)PO_(4)などのいくつかある従来方法から任意の方法を選んで実施することが可能である。」 5 判断 (1)前記2のとおり、本願発明は、光を散乱または回折するための突出部及び/または陥凹部(LEDによって生じる光の、後記半導体材料の第1の層における波長より大きいか、あるいは、その程度の大きさである。)が含まれるようにサファイア基板の上部表面が粗面にされ、かかる上部表面に半導体材料の第1の層が堆積され、この層の上に半導体材料の第2の層が形成されたものであって、発光領域が第1と第2の層の間にあるものと認められ、上記4(【0007】を参照。)によれば、本願発明は、改善されたLEDを提供することを目的とするものと認められ、本願明細書(【0016】【0017】を参照。)には、サファイア表面の陥凹部または突出部によって界面に当たる光を散乱させ、上部表面の臨界角内に含まれる円錐内に散乱する光が上部表面を通ってLEDから脱出する旨説明されていることが認められる。 (2)また、上記4によれば、本願明細書(【0017】?【0020】を参照。)には、サファイア表面の散乱を生じる特徴である陥凹部または突出部は、LEDによって生じる光のGaNにおける波長より大きいか、あるいは、ほぼその程度であることが望ましく、特徴が光の波長よりあまりにも小さいと光は有効に散乱しないこと、特徴がGaN層の厚さに対し相対的に大きくなると、粗面仕上げによって、GaNの上部表面に欠陥を生じる可能性があることが説明されるとともに、サファイア基板の上部表面が粗面にされる方法について、3?5ミクロンの範囲のダイヤモンド研磨粗粒を用いること、従来の基板製造プロセスにおける最終研磨プロセスを省略すること、任意のエッチングによることなどが紹介されていることが認められる。 (3)しかるに、サファイア基板の上部表面が粗面にされ、かかる上部表面に半導体材料の第1の層が堆積されるときには、上記半導体材料の第1の層、第2の層又は発光領域の層にLEDの効率に影響を与え得る欠陥が生じるものと推測されるところであって、かかる事情のもとでは、どのような設計に基づけば改善されたLEDを得ることができるのか、当業者にとって予測の限りでなく(ちなみに、本願明細書においても、サファイア基板は、通常、LED基板に利用する前にかなりの程度まで研磨されるものであり、GaNのエピタキシャル成長またはp-nダイオードの発光効率の妨げにならないように、GaNエピタキシャル成長の前に、粗面仕上げを施すことができることは、「驚くべき結果である」として当業者が予測困難であることが示唆されるところである。【0019】及び【0015】を参照。)、当業者が改善されたLEDを得るためには、例えば改善の結果を確認できる実施例を示すことなどにより、相当程度具体的な設計上の指針が開示されることを要するものというべきである。 (4)そして、本願明細書には、サファイア基板の粗面仕上げに関して上記(2)の一般的な説明があるにとどまり、改善の結果を確認できる実施例はもとより、上記(2)のように形成した粗面の上に半導体材料を積層してLEDが得られると認めるに足る具体的な説明は見当たらない。 (5)してみれば、本願明細書の開示に接した当業者が、改善されたLEDを得ることができるものと認めるには至らず、本願明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。 (6)請求人は、平成23年11月30日提出の意見書において、「本願発明の要点の1つは、光抽出を改善させるために、従来研磨されていた基板の表面に対して、散乱を生じる特徴を含む粗面を設けることです。そして、例えば当初明細書段落0017には、粗面の特徴の大きさがGaN層の厚さより相対的に大きくしない制限内で設けることが記載されております。したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1?7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものです。」と主張するが、上記主張は、本願明細書の開示に接した当業者が、改善されたLEDを得ることができるものと認めるに足る具体的な根拠を明らかにするものではなく、上記判断を左右するものではない。 6 むすび 以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明が、特許法(平成14年法律第24号による改正前のもの。)第36条第4項に規定する要件を満たしていないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-12-21 |
結審通知日 | 2011-12-22 |
審決日 | 2012-01-06 |
出願番号 | 特願平11-24950 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬川 勝久 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 岡▲崎▼ 輝雄 |
発明の名称 | LEDおよびLEDの組立方法 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 津軽 進 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 箱田 篤 |