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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01B
管理番号 1278638
審判番号 不服2011-25150  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-22 
確定日 2013-08-29 
事件の表示 特願2004-126090「三次元画像計測装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月4日出願公開、特開2005-308553〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、平成16年4月21日にされた特許出願である。そして、平成23年8月15日付けで拒絶査定がされ、同年同月23日に査定の謄本が送達され、同年11月22日に拒絶査定不服審判が請求された。
その後、平成25年2月28日付けで当審により拒絶の理由が通知され、これに対して、平成25年5月7日付け手続補正書により明細書及び特許請求の範囲についての補正がされるとともに、同日付け意見書が提出された。

第2 本願に係る発明
本願の請求項1から6までのそれぞれに係る発明は、特許請求の範囲の請求項1から6までのそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりのものである。特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
一対のステレオ画像の一方画像に基準エリアを設定し、前記ステレオ画像の他方画像に探索エリアを設定するエリア設定部と;
前記基準エリアと前記探索エリアにおけるマッチングウィンドウとにおいて、比較する画素における濃度差の二乗和が最小となるように、前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させる探索画像歪修正部と;
いずれか一つの画像が変形された、前記一方画像の基準エリアと、前記他方画像の探索エリアにおける前記基準エリアと対応関係にあるエリアとに基づき、前記ステレオ画像で撮影された被測定物の形状を測定するエリア形状測定部と;
前記ステレオ画像の一方画像と他方画像に、同一の地点を頂点とする単位幾何学形状で構成された単位幾何学形状網を形成する単位幾何学形状網形成部を備え;
前記エリア設定部で設定する基準エリア及び探索エリアは、前記単位幾何学形状を用いて構成され;
前記探索画像歪修正部は、前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させた後、前記基準エリアと対応関係にあるエリアを定める際の探索幅を各単位幾何学形状の傾斜により決定する、
三次元画像計測装置。」

第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由は、以下のとおりである。

「(理由1)
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(理由2)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(理由3)
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1.理由1(特許法第36条第4項第1号)について
(1)段落0030の記載から、探索画像歪修正部62は、対応点検出処理を行って基準エリア57と探索エリア58との位置関係を特定し、その位置関係に応じて他方画像54に画像修正を加えることが分かる。
ところが、発明の詳細な説明の記載からは、その画像修正が具体的にどのようなものであるかが分からない。
(2)…(略)…
(3)…(略)…
(4)探索画像歪修正部62及び対応エリア決定部64の機能に関する段落0048から0050までの記載は、段落0030、0031及び0035から0038までの記載と整合していない。
そのため、上記(2)で述べたとおり、探索画像歪修正部62と対応エリア決定部64との機能上の差異が理解できないこともあいまって、発明の詳細な説明の記載からは、探索画像歪修正部62及び対応エリア決定部64の機能を理解することができない。

以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1から8までのそれぞれに係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

2.理由2及び3(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について
請求項1から7までのそれぞれには、「探索画像歪修正部」及び「対応エリア決定部」がその機能とともに記載されている。
しかし、上記1.で述べたとおり、発明の詳細な説明の記載からは、「探索画像歪修正部」と「対応エリア決定部」とがどのような機能上の差異を有するのかを理解することができない。また、「探索画像歪修正部」及び「対応エリア決定部」の機能自体も理解することができない。
そのため、請求項1から7までのそれぞれに記載された「探索画像歪修正部」及び「対応エリア決定部」は、そのような機能を備えたものとして発明の詳細な説明に記載されているかどうかが不明である。したがって、請求項1から7までのそれぞれに係る発明は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものでない(理由2)。
また、発明の詳細な説明の記載を参照しても、請求項1から7までのそれぞれに記載された「探索画像歪修正部」及び「対応エリア決定部」の機能を明確に理解することができない。したがって、請求項1から7までのそれぞれに係る発明は、いずれも明確でもない(理由3)。
請求項8に係る発明は、請求項1から7までのそれぞれに係る発明を方法の発明として表現したものであるから、同様のことが当てはまる。」

第4 理由1(特許法第36条第4項第1号)について
1.「探索画像歪修正部」が行う処理操作の内容
(1)判断
ア.本願発明は、「前記基準エリアと前記探索エリアにおけるマッチングウィンドウとにおいて、比較する画素における濃度差の二乗和が最小となるように、前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させる探索画像歪修正部」を備えている。
したがって、当業者が本願発明を実施するためには、少なくとも「探索画像歪修正部」が行う処理操作の内容、具体的には、「前記基準エリアと前記探索エリアにおけるマッチングウィンドウとにおいて、比較する画素における濃度差の二乗和が最小となるように、前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させる」という処理操作の内容を理解する必要がある。
そこで、発明の詳細な説明の記載に基づいて上記の処理操作の内容を当業者が理解することができるか、以下に検討する。

イ.まず、明細書の段落0006、0007及び0014には、「探索画像歪修正部62」が「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係に応じて、一方画像53又は他方画像54の何れか一方に画像修正を加えて、一対のステレオ画像46に含まれる光学系の歪に起因する画像歪みや、像のボケや被測定物41の影等を考慮して、位置対応が求めやすいようにする。」という記載がある。この記載から、「探索画像歪修正部62」は、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係」に応じて、「一方画像53又は他方画像54の何れか一方に画像修正を加え[る]」ことが分かる。
ここで、「一方画像53又は他方画像54の何れか一方に画像修正を加える」という処理操作が、「前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させる」という処理操作を意味することは明らかである。しかし、ここには、「探索画像歪修正部62」が加える「画像修正」の具体的な内容に関する記載は見当たらない。
段落0008、0010、0012及び0015にも「探索画像歪修正部62」に関する記載はあるが、「画像修正」の具体的な内容に関する記載は見当たらない。

ウ.次に、実施例1に関する記載のうち、段落0021から0037までの記載をみると、段落0023には、「画像測定装置50は、…探索画像歪修正部62…を備えている。」という記載がある。また、段落0030には、「探索画像歪修正部62」が「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係に応じて、他方画像54に画像修正を加えるものである。」という記載がある。これは、段落0007の記載(上記イ.)と同じ趣旨である。
段落0030には、さらに、「探索画像歪修正部62」が「対応点検出処理」を行う旨の記載がある。そして、その後に、「探索画像歪修正部62の対応点検出処理機能によって、基準エリア57と探索エリア58の濃度値が最も類似している位置を検出する。」という記載があることから、「探索画像歪修正部62」は、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係」を検出すると認められる。
段落0031には、「正規化相関係数によるマッチング法や最小二乗マッチング…による対応点検出処理」が好ましい旨の記載がある。

エ.段落0032から0034までには、「探索画像歪修正部62」が行う「正規化相関係数によるマッチング法」の詳細が記載されている。
その「正規化相関係数によるマッチング法」を行った結果、「探索エリア58中において、基準エリア57に最も類似した画像の場所を示す対応基準エリア59を探す事ができる。」(段落0033)のであるから、段落0032から0034までに記載されているのは、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係」を得るための「正規化相関係数によるマッチング法による対応点検出処理」である。

オ.一方、段落0035には、「続いて、最小二乗マッチングによる対応点検出処理を説明する。」という記載があるから、段落0035から0037までには、「最小二乗マッチングによる対応点検出処理」が記載されている。
その処理は、具体的には、「基準画像53」に設定したウィンドウ(テンプレート)内の画素と「探索画像54」に設定したマッチングウィンドウ内の画素との間で濃度差の二乗和を計算し、その二乗和が最小になるようにマッチングウィンドウの位置及び形状をアフィン変換で変化させるというものである。これは、要するに、「基準画像53」内のある領域の画像に最も類似した画像が、「探索画像54」内のどの位置のどのような形状の領域にあるかを探し出すということであるから、段落0035の「探索画像歪修正部62は、探索画像54のウィンドウの形状をアフィン変形させながら、基準画像53の基準エリア57に相当するウィンドウとのマッチング演算を行い、対応点をサブピクセル単位で計測する。」という記載は、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係」を得るという意味に理解することができる。
そうすると、段落0035から0037までに記載されているのは、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係」を得るための「最小二乗マッチングによる対応点検出処理」である。

カ.この「最小二乗マッチングによる対応点検出処理」は、濃度差の二乗和が最小になるようにしている点で、本願発明の「前記基準エリアと前記探索エリアにおけるマッチングウィンドウとにおいて、比較する画素における濃度差の二乗和が最小となるように、前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させる」という処理操作と関係するように思われる。
しかし、「最小二乗マッチングによる対応点検出処理」では、「探索画像54」に設定したマッチングウィンドウの位置及び形状がアフィン変換されて変化するだけで、「探索画像54」自体がアフィン変換されて変形されるわけではない(上記オ.)。すなわち、「最小二乗マッチングによる対応点検出処理」は、「前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させる」処理操作ではない。

キ.以上のことをまとめると、段落0021から0037までには、実施例1の「探索画像歪修正部62」が、どのようにして「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係」を検出するのかについての記載がある。しかし、その検出した「位置関係」に応じて「探索画像歪修正部62」が加える「画像修正」の具体的な内容については、記載がない。

ク.さらに、実施例1に関する記載の残りの部分、すなわち、段落0038から0054までの記載をみると、以下のとおりである。
段落0049には、「探索画像歪修正部62は、探索画像54をS110で求めた探索画像歪修正量で補正する(S112)。」という記載があり、「探索画像歪修正部62によって、ステレオ画像46の基準画像53と探索画像54との間の位置関係を、非整形三角形網から求めた変形量によって、画像の全体的配慮からみた探索画像54の修正がなされ、各画素を含む非整形三角形の傾斜によって個別画素での局所的な探索画像54の修正がなされる。」という記載がある。また、段落0054には、「第1の実施の形態においては、探索画像歪修正部62は、基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係に応じて、他方画像54に画像修正を加える場合を示しているが、変形実施例として、他方画像54に代えて基準画像53に画像修正を加えてもよい。」という記載がある。
これらの記載から、「探索画像歪修正部62」が「探索画像54」又は「基準画像53」の「補正」又は「修正」を行うことは分かる。しかし、「補正」又は「修正」の具体的な内容は、これらの記載からは分からないし、ほかに「補正」又は「修正」の具体的な内容に関する記載も見当たらない。

ケ.段落0055から0064までには、実施例2に関する記載がある。しかし、実施例2の「探索画像歪修正部62」についての記載(段落0055、0057、0061及び0062)も、「探索画像歪修正部62」が加える「画像修正」の具体的な内容を明らかにするものではない。

コ.以上に検討したとおり、また、当審が拒絶の理由で指摘したとおり(上記「第3」1.(1))、発明の詳細な説明の記載からは、「探索画像歪修正部62」が加える「画像修正」の具体的な内容を理解することができない。
したがって、発明の詳細な説明の記載に基づいて、本願発明の「探索画像歪修正部」が行う処理操作の内容、具体的には、「前記基準エリアと前記探索エリアにおけるマッチングウィンドウとにおいて、比較する画素における濃度差の二乗和が最小となるように、前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させる」という処理操作の内容を当業者が理解することができると認めることはできない。

(2)請求人の主張について
請求人は、意見書の(3-1)で、段落0035の「探索画像歪修正部62は、探索画像54のウィンドウの形状をアフィン変形させながら、基準画像53の基準エリア57に相当するウィンドウとのマッチング演算を行い、対応点をサブピクセル単位で計測する。」という記載を引用し、「探索画像歪修正部62」が加える「画像修正」とは、「マッチング演算の際に、基準エリア53をアフィン変形して得られるマッチングウィンドウを設定し、探索エリア内を探索する、その場合のアフィン変形が画像修正であります。」と主張している。
しかし、上記(1)カ.で述べたとおり、「最小二乗マッチングによる対応点検出処理」では、「探索画像54」に設定したマッチングウィンドウの位置及び形状がアフィン変換されて変化するだけで、「探索画像54」自体がアフィン変換されて変形されるわけではない。
請求人の主張は、採用することができない。

2.実施例1の「探索画像歪修正部62」に関する記載の不整合
(1)判断
ア.明細書の段落0030に記載されているとおり、実施例1の「探索画像歪修正部62」は、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係に応じて、他方画像54に画像修正を加えるものである」。また、段落0030から0037までに記載されているとおり、「探索画像歪修正部62」は、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係」を得るための「対応点検出処理」を行う(上記1.(1)ウ.からオ.まで)。
そうすると、実施例1の「探索画像歪修正部62」は、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係」を検出し、その「位置関係」に応じて「他方画像54」に「画像修正」を加えるものである。

イ.一方、段落0048から0050までには、実施例1の「探索画像歪修正部62」について以下の記載がある。

「【0048】
次に、対応エリア決定部64によって、探索画像の探索画像歪修正量の初期値が非整形三角形網より最小二乗法で定められる(S110)。…(略)…探索画像の探索画像歪修正量の初期値は、最小二乗マッチングによる対応点検出処理におけるアフィン変形式の係数a1?a6により得られる。…(略)…
【0049】
そして、探索画像歪修正部62は、探索画像54をS110で求めた探索画像歪修正量で補正する(S112)。そして、探索画像歪修正部62は、探索画像54の探索画像歪修正後における各点の探索幅を、各非整形三角形の傾斜により決定する(S114)。…(略)…即ち、探索画像歪修正部62によって、ステレオ画像46の基準画像53と探索画像54との間の位置関係を、非整形三角形網から求めた変形量によって、画像の全体的配慮からみた探索画像54の修正がなされ、各画素を含む非整形三角形の傾斜によって個別画素での局所的な探索画像54の修正がなされる。
【0050】
そして、画像探索エリア設定部56によって、一対のステレオ画像46の基準画像53に基準エリア57が設定され、ステレオ画像46の探索画像54の基準エリア57に対応した位置に探索エリア58が設定される(S116)。次に、探索画像歪修正部62によって、探索画像の各点の探索範囲について、探索画像歪修正量で補正した探索画像を用いて、探索エリア58の探索が行なわれる(S118)。このようにして、基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係を、基準画像53と画像歪修正量で修正された探索画像54とを用いて求めることができる。…(略)…」

これらの記載と図6に示されたフローチャートとを照らし合わせると、まず、「対応エリア決定部64」が「最小二乗マッチングによる対応点検出処理」を行って「探索画像の探索画像歪修正量の初期値」を決定し、次いで、「探索画像歪修正部62」が「探索画像54を…探索画像歪修正量で補正」し、「探索画像歪修正量で補正した探索画像を用いて、探索エリア58の探索」を行い、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係を…求める」ことになる。
そうすると、実施例1の「探索画像歪修正部62」は、「探索画像54を…探索画像歪修正量で補正」した後、「基準エリア57と基準エリア57に対応する探索エリア58との位置関係を…求める」ものである。

ウ.以上に述べたとおり、また、当審が拒絶の理由で指摘したとおり(上記「第3」1.(4))、実施例1の「探索画像歪修正部62」に関する段落0030から0037までの記載と段落0048から0050まで及び図6の記載とは、互いに整合していない。
すなわち、実施例1の「探索画像歪修正部62」は、段落0030から0037までの記載においては、「位置関係」を検出した後で「他方画像54」に「画像修正」を加えるとされているのに対し、段落0048から0050まで及び図6の記載においては、「探索画像54」を「補正」した後で「位置関係」を求めるとされており、「位置関係」の検出と「画像修正」との順序が逆になっている。
そのため、発明の詳細な説明の記載からは、実施例1の「探索画像歪修正部62」の機能を理解することができず、この点からも、発明の詳細な説明の記載に基づいて、本願発明の「探索画像歪修正部」が行う処理操作の内容を当業者が理解することができると認めることはできない。

(2)請求人の主張について
請求人は、意見書の(3-4)で、「段落0048から0050、および、段落0030、0031、0035から0038までに記載された、三次元画像計測装置を構成する各部の機能は、図6および図16に示すフローチャートに示す機能を実行するものであります。もし、これらの記載が、図6および図16に示すフローチャートと矛盾を生じる場合は、図6および図16に示すフローチャートが正しいものであります。」と主張している。
しかし、発明の詳細な説明の記載と図面の記載とが矛盾する場合に、図面の記載が正しいとすべき理由が不明であるから、請求人の主張は、採用することができない。
なお、請求人が主張するように、図6の記載(及び段落0048から0050までの記載)が正しく、段落0030から0037までの記載が誤りであるとすると、段落0030の記載と同じ趣旨の段落0007の記載(上記1.(1)イ.)も誤りということになる。ところが、段落0007に記載されているのは、課題を解決するための手段であるから、請求人の主張は、課題を解決するための手段がそもそも誤りであるということになり、不合理である。

3.理由1についてのまとめ
以上に検討したとおり、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

第5 理由2及び3(特許法第36条第6項第1号及び第2号)について
1.理由2について
(1)上記「第4」で述べたとおり、発明の詳細な説明の記載からは、「探索画像歪修正部」が行う処理操作の内容を理解することができない。
そのため、本願発明の「前記基準エリアと前記探索エリアにおけるマッチングウィンドウとにおいて、比較する画素における濃度差の二乗和が最小となるように、前記一方画像または前記他方画像のうちいずれか一つの画像を変形させる探索画像歪修正部」は、そのような処理操作を行うものとして発明の詳細な説明に記載されていると認めることができない。

(2)本願発明は、「探索画像歪修正部」を備え、「対応エリア決定部」を備えていない「三次元画像計測装置」を含んでいる。
しかし、発明の詳細な説明には、「探索画像歪修正部」と「対応エリア決定部」とを備える「三次元画像計測装置」は記載されているものの、「探索画像歪修正部」を備え、「対応エリア決定部」を備えていない「三次元画像計測装置」は記載されていないし、そのような「三次元画像計測装置」が当業者にとって自明のものとも認められない。

(3)したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2.理由3について
上記「第4」で述べたとおり、発明の詳細な説明の記載からは、「探索画像歪修正部」が行う処理操作の内容を理解することができないので、本願発明の「探索画像歪修正部」がどのようなものであるかを理解することができない。
したがって、本願発明は、明確でない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。また、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-26 
結審通知日 2013-07-02 
審決日 2013-07-16 
出願番号 特願2004-126090(P2004-126090)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G01B)
P 1 8・ 536- WZ (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲うし▼田 真悟  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 飯野 茂
中塚 直樹
発明の名称 三次元画像計測装置及び方法  
代理人 金子 美代子  
代理人 宮川 貞二  

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