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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1278672
審判番号 不服2010-25187  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-09 
確定日 2013-08-28 
事件の表示 特願2004-376436「体質改善剤」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月13日出願公開、特開2006-182678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年12月27日の出願であって、平成22年8月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年11月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、平成25年4月2日付けの当審の拒絶理由通知に応答して同年5月24日付けで手続補正がなされたものである。
そして、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成25年5月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「A.シムノールまたはシムノール硫酸エステル、
B.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体
のAB成分を含むことを特徴とする体質改善剤。」

2.当審の拒絶理由
当審において平成25年4月2日付けで通知した拒絶の理由のうち、理由4((3)イ.)の概要は、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件出願日前である平成14年9月11日に頒布された「特開2002-255823号公報」(以下、「引用例1」という。)、同平成11年8月24日に頒布された「特開平11-228430号公報」(以下、「引用例2」という。)、同平成16年7月2日に頒布された「特開2004-182599号公報」(以下、「引用例3」という。)、及び、同平成16年1月29日に頒布された「特開2004-26733号公報」(以下、「引用例4」という。)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用発明について
引用例1には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。)

(1-a)「【請求項1】 シムノールおよび/またはシムノールエステルを含むことを特徴とする栄養剤、消化器剤。
【請求項2】 イソフラボンおよび/またはイソフラボン配糖体を含むことを特徴とする請求項1に記載の栄養剤、消化器剤。
【請求項3】 イソフラボンおよびイソフラボン配糖体が大豆イソフラボンおよび大豆イソフラボン配糖体であることを特徴とする請求項2に記載の栄養剤、消化器剤。」(特許請求の範囲の請求項1?3)

(1-b)「シムノールエステルとしては、シムノール硫酸エステルあるいはその塩がとくに好ましい。」(段落【0004】)

(1-c)「また、さらに、この出願発明の両者併用の効果を立証するためにシムノール硫酸エステルナトリウム塩(表でSNaと略称する。)、大豆イソフラボンそれぞれの単独、シムノール硫酸エステルナトリウム塩と大豆イソフラボンを混合した3種のサンプルを準備して,各々30人の被験者に2か月間服用させた結果は以下の表のようであった。
【表1】
SNa 大豆イソフラボン SNaと大豆イソフラボン
酒が美味しくなった 5 2 26
二日酔いがなくなった 3 2 22
大便量が増加した 1 4 25
便通が改善した 3 5 28
疲労回復が著しかった 3 3 27
頭髪が良く伸びる 1 2 23
爪が良く伸び硬くなる 1 3 22
心臓の痛みが消えた 4 0 26
肝機能が改善した 5 0 28
腰痛が消えた 3 2 26
肌のつやが良くなった 2 5 27
また、シムノール、大豆イソフラボン配糖体についても大豆イソフラボンと同様の結果が得られた。
この表から明らかなように、大豆イソフラボンとシムノール硫酸Naとを混合した場合には、大部分が顕著な疲労回復を示しており、この結果は、大豆イソフラボンとシムノール硫酸Naとを混合した場合には、大豆イソフラボンとシムノール硫酸Naとを単独で使用した場合に比べて、各々の単独成分では見られなかった新しい効果があることを示している。」(段落【0025】?【0027】)

(1-d)「【発明の効果】 この出願発明により、病気の予防、自然治癒能力の増強、病後の回復促進を同時に達成することができる。」(段落【0030】)

上記(1-a)、(1-b)から、引用例1には、「シムノールおよび/またはシムノール硫酸エステル、及び、大豆イソフラボンおよび/または大豆イソフラボン配糖体を含むことを特徴とする栄養剤、消化器剤。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

4.対比
本願発明と引用発明を対比すると、両者は、「A.シムノールまたはシムノール硫酸エステル、B.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体のAB成分を含むことを特徴とする剤」の点で一致し、本願発明は「体質改善剤」であるのに対して、引用発明は「栄養剤、消化器剤」である点で相違する。

5.判断
上記相違点について検討する。
(1)上記(1-c)、(1-d)には、引用発明の栄養剤、消化器剤を服用した被験者において、顕著な疲労回復を含む、上記(1-c)の表1中に挙げられている各評価項目の改善が見られ、引用発明の栄養剤、消化器剤により、病気の予防、自然治癒能力の増強、病後の回復促進を同時に達成できることが記載されている。
一方、「体質」が「(1)からだの性質。からだのたち。(2)個人のもつ身体的・精神的性質の全体」(「広辞苑」第三版、第六刷、昭和63年10月11日発行)を意味するものであることは、一般的な技術常識であると認められるところ、病気のかかりにくさ、自然治癒能力、病後の回復のしやすさは、いずれも体質といえるし、また、疲労回復のしやすさを含む上記(1-c)の表1中に挙げられている各評価項目も体質に関連する事項といえる。
そうしてみると、これらの体質または体質に関連する事項の改善が体質改善に他ならないことは、当業者にとって明らかであるから、体質または体質に関連する事項を改善する効果を有する引用発明の栄養剤、消化器剤を体質改善剤とすることは、引用例1に記載された発明及び技術常識から、当業者にとって容易である。

次に、本願発明の奏する効果について検討すると、本願明細書には、本願発明の体質改善剤がAB成分の併用によって単独成分よりも優れた効果を奏したことが、ネズミを使用した実験における遊泳時間の延長等によって示されている(段落【0003】、【0046】)。
しかし、上記(1-c)には、被験者におけるAB成分の併用によって、単独成分では見られなかった顕著な疲労回復という効果が奏されたことが記載されているから、本願発明の前記効果は、引用例1に記載された発明から、当業者が容易に予想できる効果である。

(2)本願明細書には、「体質改善の事例としては、
1.朝食を抜く:結果として肥満を防止しアトピー性皮膚炎を改善することがある。
2.冷水浴:結果としてリュウマチ、パーキンソン病、アトピー、花粉症を治し栄養改善をすることがある。又、風邪を引かない、引いても鼻水ぐらいですむ。
などが発表されている。」(段落【0002】)、及び、「この出願発明により、肥満の防止、アトピー性皮膚炎の改善、リュウマチ、パーキンソン病、アトピー、花粉症などの治療 栄養改善、風邪を引かない、風邪を引いても鼻水などの軽い症状で済むなど体質改善を達成することができる。」(段落【0005】)と記載されていることから、本願発明の「体質改善剤」には、肥満の防止剤、リュウマチ、パーキンソン病、アトピーおよび花粉症の治療剤が含まれていると認められる。
そこで、「肥満の防止剤」、「リュウマチ、アトピーおよび花粉症の治療剤」の態様についても、検討する。

ア.「肥満の防止剤」について
上記(1-c)には、引用発明の栄養剤、消化器剤を服用した被験者において、大便量の増加、便通の改善といった便通を良好にする効果が見られたことが記載されているところ、便通が良好な方が便通が滞っているより太りにくいことは広く知られている技術常識である。
また、引用例2には、次の事項が記載されている。(下線は当審による。)

(2-a)「大豆由来のイソフラボンを有効成分として含んでなる脂肪分解促進剤。」(特許請求の範囲の請求項2)

(2-b)「【発明の効果】本発明は、安全性の高い、天然由来の優れた新規脂肪分解促進剤であり、脂肪組織において明らかな脂肪分解促進作用を有し、肥満の抑制、防止および改善に優れた効果を有する。」(段落【0009】)

(2-c)「表2に示すようにイソフラボンであるダイゼインは強い脂肪分解促進作用を有し、濃度依存的にグリセロールを遊離させた。これらの結果から、大豆エキスには脂肪分解促進作用があることが明らかとなった。」(段落【0015】)

上記(2-a)?(2-c)には、大豆イソフラボンを有効成分として含んでなる脂肪分解促進剤が肥満の防止に優れた効果を有することが記載されている。
そうしてみると、大豆イソフラボンを含有しかつ便通を良好にする効果を有する引用発明の栄養剤、消化器剤を、引用例2に記載の肥満防止の用途に用いることは、引用例1?2に記載された発明及び技術常識から、当業者にとって容易である。

イ.「リュウマチ、アトピーおよび花粉症の治療剤」について
引用例3及び4のそれぞれには、以下の事項が記載されている。(下線は当審による。)

(引用例3)
(3-a)「【請求項1】イソフラボンおよび/またはイソフラボン配糖体、および/または辛味物質、苦味物質又は酸味物質、および/またはコール酸、および/またはシムノールおよび/またはシムノールエステルを含むことを特徴とする強筋肉剤、抗炎症剤、抗脳梗塞後遺症剤、抗運動麻痺剤、抗喘息剤、抗視力減退剤、抗肝炎剤、抗炎症性腸疾患剤、抗機能性腸障害剤、抗機能性心臓障害剤、抗機能性肝臓障害剤、抗機能性腎臓障害剤、抗下痢剤、抗痴呆症剤。
【請求項2】イソフラボンおよびイソフラボン配糖体が大豆イソフラボンおよび大豆イソフラボン配糖体であることを特徴とする請求項1に記載の強筋肉剤、抗炎症剤、抗脳梗塞後遺症剤、抗運動麻痺剤、抗喘息剤、抗視力減退剤、抗肝炎剤、抗炎症性腸疾患剤、抗機能性腸障害剤、抗機能性心臓障害剤、抗機能性肝臓障害剤、抗機能性腎臓障害剤、抗下痢剤、抗痴呆症剤。」(特許請求の範囲の請求項1?2)

(3-b)「この出願発明で強筋肉剤とは筋肉疲労回復、筋肉増強等の筋肉に働く薬剤であることをいい、抗炎症剤とは、炎症用の薬剤とくに関節炎、神経痛、リウマチなどの炎症用の薬剤であることをいう。」(段落【0004】)

(3-c)「実施例1
散剤
クルクミン 30mg
シムノール 1mg
大豆イソフラボン 125mg
乳糖 800mg
トウモロコシデンプン 適量
ステアリン酸マグネシウム 10mg
合計 2000mg
(1包1g 1日2回)
同様に、大豆イソフラボンの代わりに大豆イソフラボン配糖体を使用して散剤を製造した。」(段落【0020】)

(3-d)「実施例6
ソフトカプセル
クルクミン 25mg
シムノール硫酸エステルNa 1mg
大豆イソフラボン 125mg
タラ肝油 80mg
酢酸トコフェロール 5mg
人参エキス 200mg
ミツロウ 55mg
食用油 適量
合計 1200mg
(1日分 4カプセル)
同様に、大豆イソフラボンの代わりに大豆イソフラボン配糖体を使用してソフトカプセルを製造した。」(段落【0025】)

(3-e)「76才と83才の高齢者に実施例1のクルクミンの代わりにカプサイシン30mgを使用して、1日1回投与により服用させた。数日後、効果は劇的に現れ1週間後には筋肉の衰え、関節炎、リウマチに有効であった。また、同様につぎのような効果があった。・・・56才の女性に投与したところ、リウマチ関節炎が1週間で治った。
《中略》
実施例6のカプセル剤を1日1回服用した。この服用によりつぎのような効果が得られた。・・・喘息の64才の女性が4週間服用することにより改善された。」(段落【0051】)

(引用例4)
(4-a)「アトピー性皮膚炎の湿疹が形成される機序は、不明な点が多いが、I型アレルギーおよびIV型アレルギー反応が関わっていることが明らかとなっている。I型アレルギーは主にIgE抗体が関与した即時型アレルギーで、マスト細胞や好塩基球上のIgEとアレルギーの原因物質(アレルゲン)が反応すると、ヒスタミンやロイコトリエン等の化学伝達物質や酵素が遊離し、皮膚に炎症反応が起こる。」(段落【0003】)

(4-b)「本発明者らは、上記目的を達成するため食品成分中に免疫調整作用を有する物質を探索した。その結果、大豆などに含まれるイソフラボンに、アレルギー抑制効果、特に、IgE抗体産生抑制効果とアトピー性皮膚炎抑制作用、さらには、免疫賦活作用であるIgG抗体産生増強作用ならびにIgA抗体産生増強作用があることを見出し、本発明にいたった。」(段落【0006】)

(4-c)「「結果および結果の説明」
皮膚炎スコアのデータを図1?2に示した。コントロールと比較して、大豆イソフラボン配糖体投与群(図1)および大豆イソフラボンアグリコン投与群(図2)は皮膚炎スコアの悪化が有意に抑制され、アトピー性皮膚炎の予防効果が明確に認められた。また、即時型(I型)アレルギーの原因抗体であるIgEについて、血中の総IgE濃度を測定したところ、コントロールと比較して、大豆イソフラボン配糖体、大豆イソフラボンアグリコン投与群でともに有意にIgE濃度が減少した(図3:IgE)。このことから、大豆イソフラボンにアレルギー抑制作用があることが明らかとなった。」(段落【0012】)

上記(3-a)?(3-e)には、シムノールまたはシムノール硫酸エステルNa、大豆イソフラボンを含む薬剤が、リウマチ及び喘息の治療効果を有することが記載されている。
上記(4-a)?(4-c)には、大豆イソフラボンが、I型アレルギーに関連するIgE抗体の産生抑制効果及びアトピー性皮膚炎の抑制効果を有することが記載されている。

そうしてみると、引用例3及び4に記載された薬剤の成分と共通する、大豆イソフラボン、シムノールまたはシムノール硫酸エステルNaを含有する引用発明の栄養剤、消化器剤を、引用例3及び4に記載されたリュウマチ、アトピーの治療の用途に用いることは、引用例1、3?4に記載された発明から、当業者にとって容易である。

加えて、
「I型過敏症反応を伴う疾患 I型過敏症反応に含まれる疾患とは,アトピー性疾患(アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,アトピー性皮膚炎,およびアレルギー性[外因性]喘息・・・),ならびにじんま疹と胃腸管の食物反応のいくつかの症例,そして全身性アナフィラキシーである。」(要すれば、「メルクマニュアル 第17判 日本語版」、1999年12月10日、日経BP社発行、(以下、「参考文献1」という。)の1040頁左欄24?30行を参照。下線は当審による。(以下同様。))、
「アレルギー性鼻炎 IgE媒介の鼻炎で,季節性または通年性のくしゃみ,鼻漏,鼻のうっ血,かゆみ,そしてしばしば結膜炎と咽頭炎によって特徴づけられる。」(要すれば、参考文献1の1044頁右欄19?22行を参照。)、
「枯草熱(花粉症) アレルギー性鼻炎の急性季節性型。 枯草熱は一般に風に運ばれる花粉により誘導される。」(要すれば、参考文献1の1044頁右欄23?27行を参照。)
という当該技術分野における技術常識からみて、花粉症が、アレルギー性(外因性)喘息やアトピー性皮膚炎と同様のI型過敏症反応に含まれる疾患であることは当業者に周知であると認められる。
そうしてみると、喘息の治療効果を有する引用例3に記載の薬剤及びI型アレルギーと関連するIgE抗体の産生抑制効果を有する引用例4に記載の薬剤の成分と共通する、大豆イソフラボン、シムノールまたはシムノール硫酸エステルNaを含有する引用発明の栄養剤、消化器剤を、花粉症の治療の用途に用いることは、引用例1、3?4に記載された発明及び技術常識から、当業者にとって容易である。

ウ.小括
そして、前記各態様における本願発明の効果は、引用例1?4に記載された発明及び技術常識から当業者が予測できる範囲を超えるものであるとは認められない。
したがって、本願発明の「体質改善剤」のうち、「肥満の防止剤」、「リュウマチ、アトピーおよび花粉症の治療剤」の態様は、引用例1?4に記載された発明及び技術常識から、当業者にとって容易である。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基いて、または、引用例1?4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-14 
結審通知日 2013-06-25 
審決日 2013-07-08 
出願番号 特願2004-376436(P2004-376436)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 天野 貴子
渕野 留香
発明の名称 体質改善剤  
代理人 熊田 和生  

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