• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1278674
審判番号 不服2011-11339  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-31 
確定日 2013-08-28 
事件の表示 特願2006-523835「侵入を最小にするファイバ識別のための方法、装置、およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月 3日国際公開、WO2005/020478、平成19年 2月15日国内公表、特表2007-503015〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年6月24日(パリ条約による優先権主張2003年8月20日、同年12月31日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年3月29日付け及び同年12月21日付けで手続補正がなされたところ、平成23年1月25日付けで前記平成22年12月21日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年5月31日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成24年9月11日付けで前記平成23年5月31日付け手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶理由が通知され、平成25年3月13日付けで手続補正がなされたものである。

そして、本願の請求項に係る発明は、平成25年3月13日付け手続補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のものである。

「単一の光ファイバを識別する方法であって、
前記単一の光ファイバを伝搬している現行の光信号であって、顧客へ又は顧客からの信号を含んでいる該伝搬している現行の光信号に経時的に変化する変調を機械的に与える工程と、
正確な振幅なしに前記経時的に変化する変調の一貫した存在の検出により、前記単一の光ファイバを識別するために、前記与えられた経時的に変化する変調の存在を検出する工程とを含み、
前記与える工程および前記検出する工程が前記単一の光ファイバに沿った前記伝搬している現行の光信号の伝搬を中断しないことを特徴とする方法。」(以下「本願発明」という。)


2 引用刊行物の記載事項
当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-250604号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。

(1)「この発明は、複数本の光ファイバ心線を活線状態において心線対照する方法に関する。」(1頁左下欄下から4行?下から3行)

(2)「第1図はこの発明の対照方法に使用される対照装置の一例を示すもので、図中符号1は光ケーブルである。光ケーブル1内には複数本の光ファイバ心線2…が収容され、これらの光ファイバ心線2には通信用の伝送光が伝送され、活線状態となっている。この光ケーブル1の一端部において各心線2が口出しされ、その1本の心線2が心線対照装置3の駆動部4に装着されている。この駆動部4は変形付与部材5とアクチュエータ6とから構成されている。また、変形付与部材5は凹曲面部を有する固定部材7と、この固定部材7の凹曲面部に嵌合する凸曲面部を有する可動部材8とからなり、固定部材7の凹曲面部と可動部材8の凸曲面部との間に1本の光ファイバ心線2を挟み、心線2に曲げ変形を加えることができるようになっている。また、変形付与部材5の可動部材8は、アクチュエータ6の駆動軸9に連結されて進退自在になっており、駆動軸9を周期的に、例えば1秒間に10?30回程度の周期で進退させ、光ファイバ心線2に周期的に曲げ変形を与えることができるように構成されている。…
一方、光ケーブル1の他端側においても光ファイバ心線2が口出され、これに心線対照装置3の検出部11が装置されている。この検出部11は1本または複数本の光ファイバ心線2を曲げ、曲げられた光ファイバ心線2の曲げ部分から漏れて出射される漏れ光を検出するものである。…このような検出部11としては、例えば昭和60年度電子通信学会総合全国大会、講演番号2276において発表された光心線対照器用低挿入損失センサがある。このセンサは、第1図に示すように2個の板状の上側および下側支持体12a,12bを所定の間隔を配して設け、この支持体12a,12b間の空隙に3本の棒状の曲げ部材13,13,13を下側支持体12aに1本、下側支持体12bに2本交互に設け、上側支持体12aの内面に線状のホトダイオートなどの受光器14を設け、この受光器14に対向する下側支持体12bの内面に鏡面を形成したものである。…そして、上側支持体12aと下側支持体12bとの間に光ファイバ心線2を挿むことにより、心線2が曲げられ、この部分から伝送光が漏れ、この漏れ光を受光器14で受光するようになっている。この検出部11の受光器14からの電気信号は、判別部15に送られるようになっている。判別部15には、アクチュエータ6から介在通信線10を経て送られる周期信号が同時に入力されるようになっており、アクチュエータ6からの周期信号と受光器14からの受光信号との時間的変化を測定し、周期信号の周期と受光信号の信号レベルの増減の周期とを比較するようになっている。」(2頁左上欄9行?同頁右下欄下から5行)

(3)「次に、この心線対照装置3を用いた対照方法を説明する。
光ケーブル1の一端側の複数の光ファイバ心線2…のうちの活線状態にある1本を駆動部4の変形付与部材5にセットし、アクチュエータ6を作動させ、10?30Hzの周期で心線2に曲げ変形を加え、0.3?0.4dB程度の損失を伝送光に付加する。この時のアクチュエータ6からの周期信号は介在通信線10を経て判別部15に送られる。
この時、光ケーブル1の他端側では、全部の光ファイバ心線2…もしくは1本ないし数本の心線2…を検出部11の上側支持体12aと下側支持体11bとの間に挿んで、それぞれの心線2からの漏れ光をそれぞれの受光器14で検出する。それぞれの受光器14からの電気信号は判別部15に送られ、ここでそれぞれの電気信号の時間的変化が観測され、信号レベルに周期的変化がある信号が選択される。ついで、この選択された信号の周期が検出され、この周期がアクチュエータ6からの周期信号の周期と比較して周期が一致すると、その信号を発している受光器14に対応する心線2と駆動部4にセットされている心線2とが同一であることが判別され、心線対照が行われる。」(2頁右下欄下から4行?3頁左上欄下から2行)

上記の記載を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数本の光ファイバ心線を活線状態において心線対照する方法であって、
光ケーブル1内には複数本の光ファイバ心線2が収容され、これらの光ファイバ心線2には通信用の伝送光が伝送され、活線状態となっており、この光ケーブル1の一端部において各心線2が口出しされ、その1本の心線2が心線対照装置3の駆動部4に装着されており、この駆動部4は変形付与部材5とアクチュエータ6とから構成されており、変形付与部材5は凹曲面部を有する固定部材7と、この固定部材7の凹曲面部に嵌合する凸曲面部を有する可動部材8とからなり、固定部材7の凹曲面部と可動部材8の凸曲面部との間に1本の光ファイバ心線2を挟み、心線2に曲げ変形を加えることができるようになっており、変形付与部材5の可動部材8は、アクチュエータ6の駆動軸9に連結されて進退自在になっており、駆動軸9を周期的に、例えば1秒間に10?30回程度の周期で進退させ、光ファイバ心線2に周期的に曲げ変形を与えることができるように構成されており、
一方、光ケーブル1の他端側においても光ファイバ心線2が口出され、これに心線対照装置3の検出部11が装置されており、この検出部11は、1本または複数本の光ファイバ心線2を曲げ、曲げられた光ファイバ心線2の曲げ部分から漏れて出射される漏れ光を検出するものであって、2個の板状の上側および下側支持体12a,12bを所定の間隔を配して設け、この支持体12a,12b間の空隙に3本の棒状の曲げ部材13,13,13を下側支持体12aに1本、下側支持体12bに2本交互に設け、上側支持体12aの内面に線状のホトダイオートなどの受光器14を設け、この受光器14に対向する下側支持体12bの内面に鏡面を形成したものであり、上側支持体12aと下側支持体12bとの間に光ファイバ心線2を挿むことにより、心線2が曲げられ、この部分から伝送光が漏れ、この漏れ光を受光器14で受光するようになっており、この検出部11の受光器14からの電気信号は、判別部15に送られるようになっており、
光ケーブル1の一端側の複数の光ファイバ心線2のうちの活線状態にある1本を駆動部4の変形付与部材5にセットし、アクチュエータ6を作動させ、10?30Hzの周期で心線2に曲げ変形を加え、0.3?0.4dB程度の損失を伝送光に付加し、この時のアクチュエータ6からの周期信号は介在通信線10を経て判別部15に送られ、この時、光ケーブル1の他端側では、全部の光ファイバ心線2もしくは1本ないし数本の心線2を検出部11の上側支持体12aと下側支持体11bとの間に挿んで、それぞれの心線2からの漏れ光をそれぞれの受光器14で検出し、それぞれの受光器14からの電気信号は判別部15に送られ、ここでそれぞれの電気信号の時間的変化が観測され、信号レベルに周期的変化がある信号が選択され、ついで、この選択された信号の周期が検出され、この周期がアクチュエータ6からの周期信号の周期と比較して周期が一致すると、その信号を発している受光器14に対応する心線2と駆動部4にセットされている心線2とが同一であることが判別され、心線対照が行われる、複数本の光ファイバ心線を活線状態において心線対照する方法。」


3 対比
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明は、「固定部材7の凹曲面部と可動部材8の凸曲面部との間に(通信用の伝送光が伝送され、活線状態となっている複数本の光ファイバ心線2のうちの)1本の光ファイバ心線2を挟み、心線2に曲げ変形を加え」るものであって、前記「可動部材8」が「アクチュエータ6の駆動軸9に連結されて進退自在になっており」、「駆動軸9を周期的に、例えば1秒間に10?30回程度の周期で進退させ、光ファイバ心線2に周期的に曲げ変形を与え」、「10?30Hzの周期で心線2に曲げ変形を加え、0.3?0.4dB程度の損失を伝送光に付加」するものである。そして、前記「1本の光ファイバ心線2」に伝送される伝送光は、顧客へ又は顧客からの信号を含んでいるといえ、また、該伝送光には、経時的に変化する変調が機械的に与えられる、といえるから、
ア 引用発明の「(通信用の伝送光が伝送され、活線状態となっている複数本の光ファイバ心線2のうちの)1本の光ファイバ心線2」及び「通信用の伝送光」は、それぞれ、本願発明の「単一の光ファイバ」及び「単一の光ファイバを伝搬している現行の光信号であって、顧客へ又は顧客からの信号を含んでいる該伝搬している現行の光信号」に相当し、
イ 引用発明は、本願発明の「単一の光ファイバを伝搬している現行の光信号であって、顧客へ又は顧客からの信号を含んでいる該伝搬している現行の光信号に経時的に変化する変調を機械的に与える工程を含み」との事項を備える。

(2)引用発明は、「光ケーブル1の他端側においても光ファイバ心線2が口出され、これに心線対照装置3の検出部11が装置されており、この検出部11は、1本または複数本の光ファイバ心線2を曲げ、曲げられた光ファイバ心線2の曲げ部分から漏れて出射される漏れ光を検出」し、「この検出部11の受光器14からの電気信号は、判別部15に送られるようになっており」、「…受光器14からの電気信号は判別部15に送られ、ここでそれぞれの電気信号の時間的変化が観測され、…この選択された信号の周期が検出され、この周期がアクチュエータ6からの周期信号の周期と比較して周期が一致すると、その信号を発している受光器14に対応する心線2と駆動部4にセットされている心線2とが同一であることが判別され、心線対照が行われる」ものであるから、引用発明は、本願発明の「前記単一の光ファイバを識別するために、前記与えられた経時的に変化する変調の存在を検出する工程とを含み」との事項を備える。

(3)引用発明は、「複数の光ファイバ心線2のうちの活線状態にある1本を駆動部4の変形付与部材5にセットし、アクチュエータ6を作動させ、10?30Hzの周期で心線2に曲げ変形を加え、0.3?0.4dB程度の損失を伝送光に付加し、…この時、光ケーブル1の他端側では、…1本ないし数本の心線2を検出部11の上側支持体12aと下側支持体11bとの間に挿んで、それぞれの心線2からの漏れ光をそれぞれの受光器14で検出し、それぞれの受光器14からの電気信号は判別部15に送られ、ここでそれぞれの電気信号の時間的変化が観測され、信号レベルに周期的変化がある信号が選択され、ついで、この選択された信号の周期が検出され、この周期がアクチュエータ6からの周期信号の周期と比較して周期が一致すると、その信号を発している受光器14に対応する心線2と駆動部4にセットされている心線2とが同一であることが判別され、心線対照が行われる」ものであるから、
ア 引用発明は、本願発明の「単一の光ファイバを識別する方法」に相当し、
イ 引用発明は、本願発明の「前記与える工程および前記検出する工程が前記単一の光ファイバに沿った前記伝搬している現行の光信号の伝搬を中断しない」との事項を備える。

よって、本願発明と引用発明とは、
「単一の光ファイバを識別する方法であって、
前記単一の光ファイバを伝搬している現行の光信号であって、顧客へ又は顧客からの信号を含んでいる該伝搬している現行の光信号に経時的に変化する変調を機械的に与える工程と、
前記単一の光ファイバを識別するために、前記与えられた経時的に変化する変調の存在を検出する工程とを含み、
前記与える工程および前記検出する工程が前記単一の光ファイバに沿った前記伝搬している現行の光信号の伝搬を中断しない方法。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

与えられた経時的に変化する変調の存在を検出する工程が、本願発明では、正確な振幅なしに経時的に変化する変調の一貫した存在の検出により行うのに対し、引用発明では、それぞれ、判別部15に送られる、光ファイバ心線2に曲げ変形を加えるアクチュエータ6からの周期信号及び光ファイバー心線2からの漏れ光を検出する受光器14からの電気信号の周期信号の周期を比較して心線対照を行う点(以下「相違点」という。)。


4 判断
上記相違点につき検討する。
引用発明は、「(光ファイバ)心線2からの漏れ光をそれぞれの受光器14で検出し、それぞれの受光器14からの電気信号は判別部15に送られ、ここでそれぞれの電気信号の時間的変化が観測され、信号レベルに周期的変化がある信号が選択され、ついで、この選択された信号の周期が検出され、この周期がアクチュエータ6からの周期信号の周期と比較して周期が一致すると、その信号を発している受光器14に対応する心線2と駆動部4にセットされている心線2とが同一であることが判別され、心線対照が行われる」ものであって、光ファイバ心線2からの漏れ光の周期的変化と、アクチュエータ6からの周期信号の周期とを比較して、当該光ファイバ心線2の心線対照を行うものである。
しかるところ、光ファイバ心線2の心線対照のためには、前記アクチュエータ6からの周期信号との比較を行わなくても、該光ファイバ心線2からの漏れ光の周期的変化が一貫した存在のものであることを検出、確認すれば、当該光ファイバ心線2の心線対照を行うことができることは当業者において明らかである。したがって、心線対照を目的とする上記引用発明において、光ファイバ心線2の漏れ光を検出するに際し、その周期的変化が経時的に変化する変調の一貫した存在のものであることを検出するようになすことは、当業者が容易になし得ることである。そして、その際、当該漏れ光の正確な振幅の検出まで行わないようになすことは、当業者が必要に応じて適宜になし得ることである。

よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。


5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-03 
結審通知日 2013-04-04 
審決日 2013-04-16 
出願番号 特願2006-523835(P2006-523835)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 小松 徹三
松川 直樹
発明の名称 侵入を最小にするファイバ識別のための方法、装置、およびシステム  
代理人 岡部 讓  
代理人 朝日 伸光  
代理人 岡部 正夫  
代理人 吉澤 弘司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ