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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
管理番号 1278789
審判番号 不服2011-5863  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-16 
確定日 2013-09-04 
事件の表示 特願2001-503941「水素添加ブロック共重合体からなる組成物及びその最終用途への利用」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月21日国際公開、WO2000/77094、平成15年 1月21日国内公表、特表2003-502470〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年5月19日(パリ条約による優先権主張 1999年6月11日、1999年7月28日 いずれもアメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成22年7月20日付けで拒絶理由が通知され、同年10月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成23年3月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年4月28日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年6月6日に前置報告がなされ、当審において平成24年4月17日付けで審尋がなされ、同年8月22日に回答書が提出され、当審において同年11月15日付けで拒絶理由が通知され、平成25年2月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、平成25年2月13日提出の手続補正書によって補正された明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)の記載からみて、本願明細書等の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下「本願発明」という。)

「水素添加ビニル芳香族重合体の少なくとも2個の異なるブロック及び水素添加共役ジエン重合体の少なくとも1個のブロックをもつ水素添加ブロック共重合体からなる組成物からつくられる単層又は多層の物品であって、該共重合体がさらに、a)水素添加ビニル芳香族重合体ブロック(A)に対し水素添加共役ジエン重合体ブロック(B)の重量比が(B):(A)=40:60から80:20の範囲内であって;b)合計数平均分子量(Mnt)が30,000から150,000であって、各水素添加ビニル芳香族重合体ブロック(A)が5,000から45,000のMnaをもちそして各水素添加共役ジエン重合体ブロック(B)が12,000から110,000のMnbをもち;そしてc)各水素添加ビニル芳香族重合体ブロックが90%以上の水素添加レベルをもちまた各水素添加共役ジエン重合体ブロックが95%以上の水素添加レベルをもつことを特徴とする単層又は多層物品。」

第3.当審において通知した拒絶理由の概要
当審において通知した平成24年11月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由1)の概要は、以下のとおりである。

「本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(1)刊行物
刊行物A:特公昭43-6636号公報」

第4.当審において通知した拒絶の理由の妥当性についての検討

(1)刊行物の記載事項
本願の優先日前に頒布されたことが明らかな特公昭43-6636号公報(以下、「引用文献A」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「本発明によれば加硫せずに優秀なエラストマー性質を有し、普通の重合体加工装置により成形され、そして上記装置の使用に必要な加工温度において、熱および酸化に安定な新規なエラストマー・ブロック共重合体が提供される。該新規のブロック共重合体はその不飽和度に関し、およびその組成物に関し臨界的に限定され、そして次の一般配置A-B-Aを有する。ただし上式中において、水素添加前各Aは独立に選ばれたアルケニル置換芳香族炭化水素の非エラストマー重合体ブロックで、該ブロックは平均分子量約4000乃至115000を有し、そしてBは共役ジエンのエラストマー重合体ブロックで、平均分子量約20000乃至450000を有し、上記ブロック共重合体は約30%以下の残留不飽和を有する。」(1頁右欄43行?2頁左欄14行)

イ.「上記のごとく重合体ブロックAの量は該ブロック共重合体の少くとも5重量%でなくてはならない。その理由は上記の量以下ではブロック共重合体の自己加硫性は失われ、そして該共重合体は未硬化あるいは未加硫ゴムのごとく作用する(下表II参照)。さらに重合体ブロックAの量はブロック共重合体の33重量%を超過してはならない。その理由は上記の量以上ではブロック共重合体はそのゴムよう性質を失ない、そして事実プラスチックな非エラストマー物質のごとく作用する(再び表II参照)。」(2頁左欄27?37行)

ウ.「同様の証拠により、末端ブロックAの分子量は4000と115000との間であるべきである。分子量が4000以下では、末端ブロックAの影響は非常に小さくブロック共重合体の”自己加硫”性は失われる。分子量が115000以上では、末端ブロックAの影響が事実支配的となり、ブロック共重合体は非エラストマープラスチック材料のごとく作用し、そして何等注目すべき程度にはゴム質特性を示さない。」(2頁左欄40行?右欄1行)

エ.「ブロック共重合体にゴムの性質を付与する部分は中央ブロック即ちブロックBでその分子量は上記のごとく少なくとも20000であるべきである。その理由は上記分子量以下では重合体はほとんど液体重合体となり、そして本発明のブロック共重合体の有用なゴムよう性質は失われる。さらに上記分子量は450000より大きくないことが必要である。その理由は上記分子量以上では、重合体は加工することが非常に困難であるらもはや大規模の応用には適しない。」(2頁右欄6?15行)

オ.「本発明方法により生成された水素添加ブロック共重合体は白色固体物質で、射出成形、圧縮成形、吹込成形、繊維押出、フイルム押出その他製造技術において公知の成形装置を包含する広範な熱塑性加工装置で加工することを得る。」(4頁右欄23?27行)

カ.「実施例 I
ブロック共重合体の生成
本例は分子量を調整するためにリチウム活性化剤を変化し、かつ末端ブロックの中央ブロックに対する割合を調節するため単量体の割合を変化し、ブロック共重合体を生成する方法を例示した。スチレン(60g)をベンゼン(1400g)に溶解し、40℃に加熱し、その後第2ブチルリチウム0.003モルを添加した。すべてのスチレンが重合体(固有粘度0.24dl/gを有する)に変化するまで反応器中で重合させた。その後イソプレン(450g)を上記反応混合物に添加し、イソプレン単量体が完全に利用されるまで重合を継続した。かくして生成されたスチレン-イソプレン・ブロック共重合体は1.32dl/g(トルエン溶剤温度25℃)の固有粘度および結合スチレン含量14重量%を有していた。単量体スチレン(60g)を添加し、単量体が残らなくなるまで重合を継続した。生成スチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体は固有粘度1.43dl/gおよび結合スチレン含量22%を有していた。
実施例 II
ブロック共重合体の水素添加
本例は本発明を行う過程において研究したブロック共重合体を水素添加する代表的方法を記述した。実施例Iにおいて生成したごときブロック共重合体の10%シクロヘキサン溶液を生成した。該溶液の水素添加は重合体1g当り0.5gのケイソウ土上のニッケル触媒を使用し、145?155℃で13時間、500 psig の水素圧で行った。水素添加前の代表的ブロック共重合体のヨウ素価(p-ジクロルベンゼン中で測定)は272I_(2)/100gであったが、水素添加後は該重合体のヨウ素化は3.6gI_(2)/100gであった。上に記載のごとく生成された水素添加ブロック共重合体の紫外線分析(結合スチレンは262ミリミクロンでシクロヘキサン中で測定)はポリスチレンブロックの98.0%が水素添加されていることを示した。以上は上記および類似触媒を使用して生成された水素添加重合体の大部分のものの代表的なものであった。分子量の比10000-50000-10000の単位ポリスチレンーポリイソプレンーポリスチレンを有するブロック共重合体の水素添加後の両方の破壊時における引張り強さの直接比較を行った。水素添加しない重合体の引張り強さは破壊時において975 psigであり、水素添加重合体の破壊時における引張り強さは3700psiであった。
上記重合体を含有する組成物にも上記の利益が引き入れられるものかどうかを測定するため、上記重合体100重量部、ジクシー(dixie)粘土75重量%、二酸化チタン10重量部および着色顔料1重量部から成る組成物につき比較試験を行った。試験用試料は160℃で10分間成形した。次の代表的性質を得た:

表 I
水素添加 水素添加
しない
破壊時における引張強さ、
p.s.i. 675 2545

300%延びにおけるモジ
ユラス 800 1335

破壊時における延び、% 445 660

残留歪み、% 19 55

ショアAかたさ 17 81
※ 試験の詳細はASTMゴム試験方法D
412-61T参照
上記組成物の屋外曝露試料を成形し、屋上に放置した。ASTM試験D-1171により、6日間の曝露後水素添加しない組成物は表面にひび割れを生じ、3に格付けされた( ASTM法では4が最低格付けである。)。水素添加重合体を含有する組成物は1と格付けされた。13日の曝露後は水素添加しない組成物は4に格付けされ、水素添加重合体を含有する組成物は依然1であった。」(4頁右欄44行?5頁右欄下から7行)

(2)引用文献Aに記載された発明
引用文献Aには、上記摘示カの実施例IIとして記載されている水素添加された共重合体の引っ張り強さを測るための試験用試料として、
「結合スチレン含量が22%である生成スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を水素添加し、ポリスチレンブロックの98.0%が水素添加されていて水素添加後の共重合体の分子量の比10000-50000-10000の単位ポリスチレンーポリイソプレンーポリスチレンを有する水素添加ブロック共重合体の引っ張り強さの試験用試料。」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
上記摘示カにおける実施例Iの重合過程の記載において、まず1.32dl/g(トルエン溶剤温度25℃)の固有粘度および結合スチレン含量14重量%を有しているスチレン-イソプレン・ブロック共重合体を生成し、その後単量体スチレン(60g)を上記反応混合物に添加し、単量体が残らなくなるまで重合を継続して、スチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体を得ている。
一般に、スチレンーイソプレンースチレンブロック共重合体を水素添加するに際しては、スチレンブロックよりもイソプレンブロックの方が水素添加されやすいことは、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)の技術常識である。
してみると、引用発明の水素添加ブロック共重合体は、上記の方法で得られたスチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体を、水素添加しているのであるから、当然に、イソプレンブロックはそれ以上に水素添加されているといえ、引用発明の水素添加されたスチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体の2つの水素添加スチレンブロックは、本願発明における「水素添加ビニル芳香族重合体の少なくとも2個の異なるブロック」に相当し、また、引用発明の水素添加されたスチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体の水素添加イソプレンブロックは、本願発明における「水素添加共役ジエン重合体の少なくとも1個のブロック」に相当する。
引用発明の水素添加ポリスチレンブロックは、98.0%が水素添加されているから、本願発明における「水素添加ビニル芳香族重合体ブロックが90%以上の水素添加レベルをもち」を満足している。
引用発明における「引っ張り強さの試験用試料」は、本願発明における「水素添加ブロック共重合体からなる組成物からつくられる単層の物品」に相当することは明らかである。
そうすると、両者は、

「水素添加ビニル芳香族重合体の少なくとも2個の異なるブロック及び水素添加共役ジエン重合体の少なくとも1個のブロックをもつ水素添加ブロック共重合体からなる組成物からつくられる単層又は多層の物品であって、そしてc)各水素添加ビニル芳香族重合体ブロックが90%以上の水素添加レベルをもつ単層又は多層物品。」
で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点1>
水素添加された共重合体に関し、本願発明において「各水素添加共役ジエン重合体ブロックが95%以上の水素添加レベルをもつ」と特定されているのに対して、引用発明においては、この点について規定がない点。

<相違点2>
水素添加された共重合体に関し、本願発明において「a)水素添加ビニル芳香族重合体ブロック(A)に対し水素添加共役ジエン重合体ブロック(B)の重量比が(B):(A)=40:60から80:20の範囲内であって」と特定されているのに対して、引用発明においては、水素添加される前のスチレン-イソプレン-スチレン共重合体のスチレン含量が22%とされているものの、水素添加後の水素添加ビニル芳香族重合体ブロック(A)に対する水素添加共役ジエン重合体ブロック(B)の重量比についての規定がない点。

<相違点3>
水素添加された共重合体に関し、本願発明において「b)合計数平均分子量(Mnt)が30,000から150,000であって、各水素添加ビニル芳香族重合体ブロック(A)が5,000から45,000のMnaをもちそして各水素添加共役ジエン重合体ブロック(B)が12,000から110,000のMnbをもち」と特定されているのに対して、引用発明においては、「水素添加後の分子量の比10000-50000-10000の単位ポリスチレンーポリイソプレンーポリスチレンを有する」との規定である点。

(4)相違点についての検討
相違点1について
上記摘示カに記載の水素添加前のスチレン-イソプレン-スチレンブロック重合体におけるスチレンブロックを98.0%が水素添加されるように、ブロック共重合体を水素添加する処理を行えば、芳香族環であるスチレンブロックより、より水素添加されやすいイソプレンブロック部分は、スチレンブロック部分よりも水素添加される比率は高くなることは、当業者における技術常識であって、引用発明において、イソプレンブロック(本願発明の「共役ジエン重合体ブロック」に相当)の水素添加率は98%より高いといえるから、相違点1は実質上の相違点ではない。

相違点2について
まず、引用発明における「結合スチレン含量が22%である」の「22%」が重量%であるのか、モル%であるのかについて検討すると、上記摘示カには、2度目のスチレン添加前の「スチレン-イソプレン・ブロック共重合体」について、「1.32dl/g(トルエン溶剤温度25℃)の固有粘度および結合スチレン含量14重量%を有していた。」(下線については、当審において付与した。)と記載され、この重合体にさらにスチレンを添加して重合して得たものについて「結合スチレン含量22%」と記載しているのであるから、当該「22%」は、「22重量%」を意味すると解するのが自然である。
次に、引用発明の「結合スチレン含量が22%である」は、水素添加される前のスチレンーイソプレン-スチレンブロック共重合体のスチレンブロック全体の重量%といえるから、水素添加前のスチレンブロック部分と水素添加前のイソプレンブロック部分のモル比は、22/104:78/68=0.2115:1.1471となる。これを踏まえて、ポリスチレンブロックの98%を水素添加された後のブロック共重合体のスチレンブロック部分の重量%について検討すると、水素添加により増加する分子量は、スチレンブロック部分については各スチレン単位(分子量104)当たり98%が水素原子6個分増加しているから、104+6×0.98と計算され、イソプレンブロック部分については、上記相違点1の検討から、イソプレンブロックは完全に水素添加されているといえるから、68+2と計算され、この結果から、ポリスチレンブロック部分の重量%は、{(104+6×0.98)×0.2115×100}/{(104+6×0.98)×0.2115+(68+2)×1.1471}=22.4重量%と計算されるから、水素添加後の結合スチレン含量の重量%の値は、本願発明における「水素添加ビニル芳香族重合体ブロック(A)に対し水素添加共役ジエン重合体ブロック(B)の重量比が(B):(A)=40:60から80:20の範囲内であ」るといえる。
したがって、相違点2は実質上の相違点ではない。

相違点3について
引用文献Aの上記摘示ア、イ、ウ、エの記載からみて、引用発明における「水素添加後の分子量の比10000-50000-10000の単位ポリスチレンーポリイソプレンーポリスチレンを有する水素添加ブロック共重合体」は、ポリスチレンブロックの平均分子量が10000、ポリイソプレンブロックの平均分子量が50000、ポリスチレンブロックの平均分子量が10000であることを意味していることは、明らかである。当該平均分子量が、数平均分子量であるか、重量平均分子量であるかは、引用文献Aには明記されていないが、引用文献Aと同一出願人の同一技術分野における出願である特開昭52-150464号公報の7頁に「平均分子量・・・これらの分子量はトリチウム計量法または浸透圧測定によってもっとも正確に測定される」との記載があること、ここで「浸透圧測定によって」測定される分子量は数平均分子量であること(日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<新版>」1352頁?1353頁、昭和54年4月1日 第2版発行参照)。また、引用文献Aと同一出願人の同一技術分野における出願である特開昭52-96695号公報において、平均分子量として、数平均分子量が利用されていると認められることから、引用発明の平均分子量は、数平均分子量と解するのが自然である。
そうすると、数平均分子量の比が10000:50000:10000の単位ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンを有する水素添加ブロック共重合体であって、スチレン含量が22重量%を超える程度の共重合体の合計数平均分子量は、当然に30000?150000を満足し、水素添加ビニル芳香族重合体ブロックに相当するポリスチレンブロックの数平均分子量が10000、水素添加共役ジエン重合体ブロックに相当するポリイソプレンブロックの数平均分子量が50000であるから、それぞれ本願発明の数値範囲を満足しているから、相違点3は、実質上の相違点ではない。
また、仮に引用発明の平均分子量が、重量平均分子量であったとしても、引用発明の共重合体の重合は有機リチウムを用いたリビング重合で行われているものであり、リビング重合でのゴム等の共重合体の分子量分布であるMw/Mnは大きくとも2未満であること(特公昭62-21002号公報の比較例である13頁26欄20?27行、特開昭49-42784号公報の従来技術参照)から、引用発明の共重合体が、重量平均分子量の比が10000:50000:10000であったとしても、本願発明の相違点3に係る数値範囲に包含されているといえる。よって、この場合においても、相違点3は実質上の相違点ではない。
さらに、仮に引用発明の分子量の比である10000:50000:10000が、水素添加前の共重合体について特定したものであったとしても、水素添加により増加する分子量を計算すると、スチレンブロック部分については各スチレン単位(分子量104)あたり98%が水素原子6個分増加しているから、{(104+6×0.98)/104}×10000=10565と計算されるし、イソプレンブロック部分についてみると、イソプレン単位(分子量68)あたり、上記で述べたとおりほとんどすべてが水素原子2個分増加しているから、(68+2)/68×50000=51470と計算され、水素添加により共重合体全体の分子量が大きく増加するものではないから、この場合においても、上記と同様に相違点3は実質的な相違点ではない。

そうすると、本願発明は、引用発明と同一である。

(5)まとめ
よって、本願発明は、引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

第5.審判請求人の主張についての検討
審判請求人は、平成25年2月13日提出の意見書において、以下の点を主張している。

「(1)引用文献Aと請求項1との比較
審判長殿は、引用文献Aに記載された発明(引用発明A)と、本願請求項1に記載された発明(本願発明1)とが同一である、と認定されています。
・・・
ここで、引用発明Aは「結合スチレン含量が22%である」とのみ規定しているのに対して、本願発明1においては「重量比が(B):(A)=40:60から80:20の範囲内」と明確に規定しています。すなわち、「結合スチレン含量が22%である」という記載では、重量%なのか、体積%なのか、或いは他のパーセンテージであるのかが明らかでなく、本願発明1の範囲内に入るとは言えません。
しかも、引用発明Aが「22%である」と規定しているのは、水素添加される前のスチレン含量です。これに対して、本願発明1においては「水素添加ビニル芳香族重合体ブロック(A)に対し水素添加共役ジエン重合体ブロック(B)の重量比が(B):(A)=40:60から80:20の範囲内」と明確に規定しています。したがって、仮に引用発明Aの「結合スチレン含量が22%である」という記載が重量%を意味していたとしても、水素添加後の重量比が(B):(A)=40:60から80:20の範囲内に入るとは言えません。」(以下、「主張1」という。)

「また、引用発明Aは「ポリスチレンブロックの98.0%が水素添加されている」とのみ規定しており、ポリイソプレンブロックの何%が水素添加されているかについては、一切規定していません。これに対して、本願発明1においては「各水素添加ビニル芳香族重合体ブロックが90%以上の水素添加レベルをもちまた各水素添加共役ジエン重合体ブロックが95%以上の水素添加レベルをもつ」と明確に規定しています。」(以下、「主張2」という。)

「さらに、引用発明Aは「分子量の比10000-50000-10000」と規定していますが、「分子量」が数平均分子量なのか、重量平均分子量であるのか、明確でありません。これに対して、本願発明1においては「数平均分子量(Mnt)」と明確に規定しています。しかも、「分子量の比」が「10000-50000-10000」である、というのは意味不明な表現であります。したがって、引用発明Aにかかる組成物が、本願発明1の「合計数平均分子量(Mnt)が30,000から150,000であって、各水素添加ビニル芳香族重合体ブロック(A)が5,000から45,000のMnaをもちそして各水素添加共役ジエン重合体ブロック(B)が12,000から110,000のMnbをもち」という要件を満たすとは到底言えません。」(以下、「主張3」という。)

しかしながら、審判請求人の上記主張1?3については、上記第4.(4)で検討したとおり、いずれの主張も採用することはできない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての当審において通知した平成24年11月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由1)は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2013-04-02 
結審通知日 2013-04-09 
審決日 2013-04-23 
出願番号 特願2001-503941(P2001-503941)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 大島 祥吾
小野寺 務
発明の名称 水素添加ブロック共重合体からなる組成物及びその最終用途への利用  
代理人 毛受 隆典  
代理人 木村 満  
代理人 畑 泰之  
代理人 森川 泰司  
代理人 雨宮 康仁  
代理人 桜田 圭  
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