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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1278829
審判番号 不服2012-5746  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-29 
確定日 2013-09-04 
事件の表示 特願2009-163881「有機発光ディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月28日出願公開、特開2010- 20315〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年7月10日(優先権主張2008年7月11日、米国、2009年1月7日、米国)を出願日とする出願であって、平成23年11月2日付けで手続補正がなされた後に、同年11月21日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これを不服として、平成24年3月29日に請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、当審において同年9月5日付けで審尋を行ったところ、平成25年3月1日付けで回答書が提出された。

第2 平成24年3月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年3月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1の補正は、補正前の
「【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されるディスプレイ部と、
前記基板と対向する面を有する封止基板と、
前記封止基板のいずれか一面上に形成され、第1方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第1センサーと、前記第1方向と交差する第2方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第2センサーと、を備える静電容量タイプのタッチユニットと、
前記第1センサー及び第2センサーの少なくとも一部上に形成される絶縁層と、を備え、
前記第1センサーと前記第2センサーは前記封止基板上の同一ないずれか一面上に形成され、
前記複数の第1センサー及び前記複数の第2センサーは、ITOを含むとともに、前記封止基板の前記面上に形成され、かつタッチを感知して電気的信号を生成し、
前記タッチユニットの複数の第1センサー及び複数の第2センサーのぞれぞれで発生する電気的信号をデータラインを通じて出力し、
前記ディスプレイ部は、前記基板上に形成されている薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタと結合されている有機発光素子と、を備え、
前記有機発光素子は、対向電極、画素電極及び前記対向電極と前記画素電極との間に形成される中間層を備え、
前記画素電極は、前記薄膜トランジスタと接触しており、
前記中間層は、前記画素電極の少なくとも一部と接触し、
前記対向電極は、前記中間層の少なくとも一部と接触しており、 前記タッチユニットは、前記基板と前記封止基板との空間内に形成されることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置。」を
「【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されるディスプレイ部と、
前記基板と対向する面を有する封止基板と、
前記封止基板のいずれか一面上に形成され、第1方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第1センサーと、前記第1方向と交差する第2方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第2センサーと、を備える静電容量タイプのタッチユニットと、
前記第1センサー及び第2センサーの少なくとも一部上に形成される絶縁層と、を備え、
前記第1センサーと前記第2センサーは前記封止基板上の同一ないずれか一面上に形成され、
前記複数の第1センサー及び前記複数の第2センサーは、ITOを含むとともに、前記封止基板の前記面上に形成され、かつタッチを感知して電気的信号を生成し、
前記タッチユニットの複数の第1センサー及び複数の第2センサーのぞれぞれで発生する電気的信号をデータラインを通じて出力し、
前記ディスプレイ部は、前記基板上に形成されている薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタと結合されている有機発光素子と、を備え、
前記有機発光素子は、対向電極、画素電極及び前記対向電極と前記画素電極との間に形成される中間層を備え、
前記画素電極は、前記薄膜トランジスタと接触しており、
前記中間層は、前記画素電極の少なくとも一部と接触し、
前記対向電極は、前記中間層の少なくとも一部と接触しており、
前記タッチユニットは、前記基板と前記封止基板との空間内に形成され、前記複数の第1センサーと前記複数の第2センサーとを備え、前記封止基板の前記面上に形成される第1パターン層と、前記絶縁層の少なくとも一部上に形成される第2パターン層と、を備え、
前記第2パターン層は、前記第1パターン層上の前記複数の第2センサーのうち二つを連結する位置に形成され、かつ前記絶縁層は、複数のコンタクトホールを備え、該コンタクトホール及び前記第2パターン層を通じて前記複数の第2センサーを電気的に接続させることを特徴とする有機発光ディスプレイ装置。」と補正するものである。

2 補正の目的についての検討
上記本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「タッチユニット」を「基板と前記封止基板との空間内に形成され、前記複数の第1センサーと前記複数の第2センサーとを備え、前記封止基板の前記面上に形成される第1パターン層と、前記絶縁層の少なくとも一部上に形成される第2パターン層と、を備え」る構成とする補正、及び、「第2パターン層は、前記第1パターン層上の前記複数の第2センサーのうち二つを連結する位置に形成され、かつ前記絶縁層は、複数のコンタクトホールを備え、該コンタクトホール及び前記第2パターン層を通じて前記複数の第2センサーを電気的に接続させる」構成を追加する補正である。
そして、これらの補正事項は、いずれも明らかに特許請求の範囲を限定して減縮するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

3 本件補正発明
本件補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された上記のとおりのものである。

4 引用刊行物
(1)引用刊行物1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前である2007年10月18日に頒布された「米国特許出願公開第2007/0242055号明細書」(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、ここでは当審による日本語訳を記載する。また、引用例1記載の発明の認定に関係する箇所に、当審において下線を付した。
a 明細書の記載
「[0001]1.発明の分野
[0002]本発明は、透明タッチパネルに関し、特に、透明タッチパネルを有する上面発光OLED(有機発光ダイオード)ディスプレイに関する。」
「[0021]図1は、本発明の第1の実施形態に係る透明タッチパネルを有する上面発光型OLEDディスプレイの断面模式図である。透明なタッチスクリーン10は、基板130、上部カバープレート110、OLEDデバイス120、静電容量式タッチ装置100、シーラント層150を含む。
[0022]OLEDデバイス120は、基板130上に積層されており、静電容量式タッチ装置100は、上部カバープレート110の表面上に積層されている。シーラント層150は、基板130と上部カバープレート110を組み合わせており、OLEDデバイス120は空間内に密封されている。
[0023]静電容量式タッチ装置100は、順次上部カバープレート110上に形成された第1の透明導電層101、絶縁層102、第2の透明導電層103を含む。しかし、静電容量式タッチデバイスの構造は、本実施の形態に限定されるものではなく、第2の透明導電層と第1の透明導電層を同時に上部カバープレート110の表面に形成することができる。」
「[0026]OLEDデバイス120は、順次基板130上に形成された陽極層121、発光層122、陰極層123を含む。
[0027]第1の透明導電層101と第2の透明導電層103の材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)またはアルミニウム酸化亜鉛(AZO)です。絶縁層102の材料は、エポキシ、ポリイミドまたはメチルメタクリレートである。」

b 図面の記載



上記引用例1のFIG.1のOLEDディスプレイの記載によると、引用例1のFIG.1には、静電容量式タッチ装置100は、上部カバープレート110の基板130側に積層されている構成が記載されているといえる。

c 引用例1記載の発明
上記a及びb記載事項によると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「OLEDデバイス120は、基板130上に積層されており、
シーラント層150は、基板130と上部カバープレート110を組み合わせており、
静電容量式タッチ装置100は、上部カバープレート110の表面上であって、上部カバープレート110の基板130側に積層されている、
上面発光OLEDディスプレイ。」

(2)引用刊行物2
また、本願の優先日前である平成19年11月15日に頒布された「特開2007-299385号公報 」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
a 発明の詳細な説明の記載
「【0001】
本発明は、透明タッチパネル、さらに詳しく述べると、容量式タッチデバイスおよびディスプレイ装置を備えた透明タッチパネルに関する。」
「【0012】
図1?4は、本発明の第一の態様に従った容量タッチパネル10を表す。容量式タッチパネル10は、透明基板12、透明基板12上に積層された容量式タッチデバイス20、容量式タッチデバイス20上に積層された界面構造50、界面構造50上に積層されたディスプレイ装置40、接着剤によって透明基板12に接着されたキャップ14(図には示されていない)、および吸収剤16を備える。透明基板12はガラス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルおよびメチルメタクリレートなどの透明材を含んで差し支えなく、ディスプレイ装置40はELディスプレイ装置、有機発光ディスプレイ装置もしくは液晶ディスプレイ装置であって構わない。
【0013】
図2を参照すると、ディスプレイ装置40は、陽極層42、発光層44および陰極層46を含む。界面構造50は、容量式タッチデバイス20上に積層された絶縁ポリマー層52、および絶縁ポリマー層52上に積層された酸化ケイ素層54を含む。絶縁ポリマー層52は、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、およびメチルメタクリレートなどの透明材を含んで差し支えない。図3に示すように、電磁波を遮断するため、界面構造50が、さらに、絶縁ポリマー層52と酸化ケイ素層54の間に位置する導電層56を備えることが好ましい。導電層56は、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、およびアルミニウム亜鉛酸化物などの透明導電材を含んでもよい。
【0014】
図3および図4を参照すると、本発明の第一の態様に従った容量式タッチデバイス20は、透明基板12上に積層された第一導電パターン22、透明基板12上に積層された多数の第一配線23、第一導電パターン22および第一配線23を被覆する誘電体層24、誘導体層24上に積層された第二導電パターン26、ならびに誘電体層24の上に積層された多数の第二配線27が含まれる。第一導電パターン22には、第一検出ブロック25Aがアレイ方式に従って多数配置され、第二導電パターン26には、第二検出ブロック25Bがアレイ方式に従って多数配置される。
【0015】
第一導電パターン25Aと第二導電パターン25Bが組み合わされ、第一配線23のそれぞれが同じ縦列の第一検出ブロック25Aと接続し、第二配線27のそれぞれが同じ横列の第二検出ブロック25Bと接続することが好ましい。第一検出ブロック25Aおよび第二検出ブロック25Bは、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、およびアルミニウム亜鉛酸化物などの透明導電材を含んでも差し支えなく、誘電体層24は、エポキシ樹脂、ポリイミドもしくはメチルメタクリレートを含んでもよい。
【0016】
図5は、本発明の第二の態様に従った容量式タッチデバイス20’を表す。容量式タッチデバイス20’は、透明基板12上に積層された第一導電パターン22’、透明基板12上に積層された多数の第一配線23’、透明基板12上に積層された第二導電パターン26’、第一導電パターン22’、第一配線23’および第二導電パターン26’を被覆する誘電体層24’、ならびに誘電体層24’の上に積層された多数の第二配線27’が含まれる。第一導電パターン22’には、第一検出ブロック25A’がアレイ方式に従って多数配置され、第二導電パターン26’には、第二検出ブロック25B’がアレイ方式に従って多数配置される。第一配線23’のそれぞれが同じ縦列の第一検出ブロック25A’と接続し、誘電体層24’を通っている多数の導電プラグ28を介して、第二配線27’のそれぞれが同じ横列の第二検出ブロック25B’と接続する。」

b 図面の記載
「【図1】


「【図5】



5 本件補正発明と引用発明との対比
ここで、本件補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「OLEDデバイス120」は本件補正発明の「ディスプレイ部」に相当する。
そうすると、引用発明の「OLEDデバイス120は、基板130上に積層されて」いる構成は、本件補正発明の「基板と、前記基板上に形成されるディスプレイ部と、」を備える構成に相当する。

(2)引用発明の「上部カバープレート110」は、本件補正発明の「封止基板」に相当する。
そうすると、引用発明の「シーラント層150は、基板130と上部カバープレート110を組み合わせて」いる構成は、本件補正発明の「基板と対向する面を有する封止基板」を備えている構成に相当する。

(3)引用発明の「静電容量式タッチ装置100」は、本件補正発明の「静電容量タイプのタッチユニット」に相当する。
そうすると、引用発明の「静電容量式タッチ装置100は、上部カバープレート110の表面上であって、上部カバープレート110の基板130側に積層されて」いる構成は、本件補正発明の「封止基板のいずれか一面上に形成され」た「静電容量タイプのタッチユニット」を備え、「タッチユニットは、前記基板と前記封止基板との空間内に形成され」る構成に相当する。

(4)引用発明は「OLEDデバイス120」を備える「上面発光OLEDディスプレイ」であるから、本件補正発明の「有機発光素子」に相当する構成を有するものである。

(5)引用発明の「上面発光OLEDディスプレイ」は、本件補正発明の「有機発光ディスプレイ装置」に相当する。

上記(1)?(5)の点から、本件補正発明と引用発明は、
「基板と、
前記基板上に形成されるディスプレイ部と、
前記基板と対向する面を有する封止基板と、
前記封止基板のいずれか一面上に形成された静電容量タイプのタッチユニットと、を備え、
前記ディスプレイ部は、有機発光素子を備え、
前記タッチユニットは、前記基板と前記封止基板との空間内に形成された
有機発光ディスプレイ装置。」
で一致し、以下のa及びbの点で相違する。

(相違点)
a 本件補正発明は、第1方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第1センサーと、第1方向と交差する第2方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第2センサーと、を備える静電容量タイプのタッチユニットと、第1センサー及び第2センサーの少なくとも一部上に形成される絶縁層と、を備え、第1センサーと第2センサーは封止基板上の同一ないずれか一面上に形成され、複数の第1センサー及び複数の第2センサーは、ITOを含むとともに、封止基板の基板と対向する面上に形成され、かつタッチを感知して電気的信号を生成し、タッチユニットの複数の第1センサー及び複数の第2センサーのぞれぞれ(「それぞれ」の誤記であると認める。)で発生する電気的信号をデータラインを通じて出力し、タッチユニットは、封止基板の基板と対向する面上に形成される第1パターン層と、絶縁層の少なくとも一部上に形成される第2パターン層と、を備え、第2パターン層は、第1パターン層上の複数の第2センサーのうち二つを連結する位置に形成され、かつ絶縁層は、複数のコンタクトホールを備え、該コンタクトホール及び第2パターン層を通じて複数の第2センサーを電気的に接続させるのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

b 有機発光素子が、本件補正発明は、基板上に形成されている薄膜トランジスタと結合されており、対向電極、画素電極及び対向電極と画素電極との間に形成される中間層を備え、画素電極は、薄膜トランジスタと接触しており、中間層は、画素電極の少なくとも一部と接触し、対向電極は、中間層の少なくとも一部と接触しているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

6 当審の判断
以下、上記a及びbの相違点について検討する。
<相違点aについて>
第1方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第1検出パターン(引用例2の図5に記載された、第1電極パターン22’の略正方形状のパターン1つ1つがこれに相当。本件補正発明では「第1センサー」に相当。)と、第1方向と交差する第2方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第2検出パターン(引用例2の図5に記載された、第1電極パターン26’の略正方形状のパターン1つ1つがこれに相当。本件補正発明では「第2センサー」に相当。)と、を備える容量式タッチデバイス20’(本件補正発明の「静電容量タイプのタッチユニット」に相当。)と、第1検出パターン及び第2検出パターン上に形成される誘電体層24’(本件補正発明の「絶縁層」に相当。)と、を備え、複数の第1検出パターン及び複数の第2検出パターンはITOを含むとともに、容量式タッチデバイス20’は、第1検出パターン、第2検出パターン(第1検出パターン及び第2検出パターンで、本件補正発明の「第1パターン層」に相当。)及び誘電体層24’上に形成される第二配線27’(本件補正発明では、「第2パターン層」に相当。)と、を備えるように構成することが、引用例2に記載(引用例2では、【0012】?【0016】、図5参照。)されている。
そして、引用例2に記載された容量式タッチデバイス20’は、特定パターンの電極を並べた、所謂投影型静電容量方式のタッチデバイスであるから、当然、タッチを感知して電気的信号を生成し、タッチユニットの複数の第1センサー及び複数の第2センサーのそれぞれで発生する電気的信号をデータラインを通じて出力するものといえる。
また、引用例2に記載された容量式タッチデバイス20’は、誘電体層24’上の第二配線27’が、隣同士の2つの導電プラグ28を連結するものであり、言い換えれば、隣同士の2つの第2検出パターンを連結する位置に形成されているものであるといえる。
さらに、引用発明におけるタッチ装置及び引用例2に記載されたタッチデバイスは、いずれも静電容量方式のタッチユニットであることで共通するものであるから、引用発明において、その静電容量式タッチ装置に代えて、引用例2に記載されたタッチデバイスを採用し、第1方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第1センサーと、第1方向と交差する第2方向に沿って互いに並んで形成されている複数の第2センサーと、を備える静電容量タイプのタッチユニットと、第1センサー及び第2センサーの少なくとも一部上に形成される絶縁層と、を備え、第1センサーと第2センサーは封止基板上の同一ないずれか一面上に形成され、複数の第1センサー及び複数の第2センサーは、ITOを含むとともに、封止基板の基板と対向する面上に形成され、かつタッチを感知して電気的信号を生成し、タッチユニットの複数の第1センサー及び複数の第2センサーのそれぞれで発生する電気的信号をデータラインを通じて出力し、タッチユニットが、封止基板の基板と対向する面上に形成される第1パターン層と、絶縁層の少なくとも一部上に形成される第2パターン層と、を備え、第2パターン層は、第1パターン層上の複数の第2センサーのうち二つを連結する位置に形成され、かつ絶縁層は、複数のコンタクトホールを備え、該コンタクトホール及び第2パターン層を通じて複数の第2センサーを電気的に接続させるように構成して、上記相違点aに係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。

<相違点bについて>
ディスプレイに用いる有機発光素子が、基板上に形成されている薄膜トランジスタと結合し、対向電極、画素電極及び対向電極と画素電極との間に形成される中間層を備え、画素電極が薄膜トランジスタと接触しており、中間層が画素電極と接触し、対向電極が中間層と接触するように構成することは、引用例を挙げるまでもなく周知技術である。
そして、引用発明も上記周知技術もいずれもディスプレイに用いる有機発光素子に関する技術である点で共通するものであるから、引用発明において、上記周知技術を採用して、上記相違点bに係る本件補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になしえたことである。

相違点a及びbについては上記のとおりであり、本件補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知技術から当業者が当然に予測できる範囲内のものと認められる。
よって、本件補正発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

7 本件補正についての補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成24年3月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年11月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記「第2」[理由]「1」参照。)

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された引用例1、2及びその記載事項、ならびに引用発明は、上記「第2」[理由]「4」に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、上記「第2」[理由]「1」及び「2」で検討したとおり、本件補正発明の構成要素である「タッチユニット」が「基板と前記封止基板との空間内に形成され、前記複数の第1センサーと前記複数の第2センサーとを備え、前記封止基板の前記面上に形成される第1パターン層と、前記絶縁層の少なくとも一部上に形成される第2パターン層と、を備え」る構成を除き、本件補正発明の構成要素である「第2パターン層は、前記第1パターン層上の前記複数の第2センサーのうち二つを連結する位置に形成され、かつ前記絶縁層は、複数のコンタクトホールを備え、該コンタクトホール及び前記第2パターン層を通じて前記複数の第2センサーを電気的に接続させる」構成を除いたものである。
ここで、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに、上記構成要素で限定した本件補正発明が、上記「第2」[理由]「6」に記載したとおり、引用発明、引用例2記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用例2記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-27 
結審通知日 2013-04-02 
審決日 2013-04-15 
出願番号 特願2009-163881(P2009-163881)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 久則  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 土屋 知久
伊藤 昌哉
発明の名称 有機発光ディスプレイ装置  
代理人 渡邊 隆  
代理人 佐伯 義文  

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