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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B67D
管理番号 1279127
審判番号 不服2012-20058  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-11 
確定日 2013-09-04 
事件の表示 特願2008-515341「飲料メーカーで使用するためのポンプ・ユニットと使い捨てカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月14日国際公開,WO2006/131857,平成20年11月27日国内公表,特表2008-542145〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は,2006年(平成18年) 6月 1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2005年(平成17年) 6月 7日,欧州)を国際出願日とする特許出願であって,平成24年 6月12日付けで拒絶査定がなされ,この査定を不服として,同年10月11日に本件審判が請求された。
そして,この出願の請求項1?28に係る発明は,平成23年12月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項により特定されるものと認められるところ,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも第一の流体と第二の流体に基づいて飲料を調合する方法であって,
前記第一の流体と前記第二の流体の流れとを供給するステップと,
局所的に低圧を発生させることによって前記第二の流体の流れの影響下で前記第一の流体の流れを発生させるステップであって,この局所的な低圧は,前記第二の流体の流れから前記第一の流体への運動量の転送を可能とすることによって得られる,ステップと,
前記第二の流体の流れと前記第一の流体の流れとを合流させ,これによって前記第一の流体と前記第二の流体とに基づく合流流体が得られる,ステップと
前記合流流体の中で前記第一の流体と前記第二の流体とを相互作用させるステップとを,
備える,飲料の調合方法。」

2.引用例とその記載事項
原査定における拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である米国特許第5339725号明細書(以下,「引用例」という。)には,「DEVICE FOR EMULSIFYING STEAM AND MILK PARTICULARLY FOR CAPPUCCINOS」{特にカプチーノ用に蒸気とミルクを乳化するための装置}に関し,図面とともに次の事項が記載又は示されている(ここで{}内は当審による仮訳である。以下同様。)。

・「FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to a device for emulsifying steam and milk particularly for cappuccinos.」(第1欄第5行?第7行)
{発明の属する技術分野
本発明は,特にカプチーノ用に蒸気とミルクを乳化するための装置に関する。}

・「OBJECTS OF THE INVENTION
The principal object of the present invention is to provide an apparatus overcoming the problems of the known art.
Within the scope of this aim, an important object of the invention is to provide a device for emulsifying steam and milk particularly for cappuccinos and the like which allows the forming of abundant froth independently of the skill with which the operator performs this operation.
Yet another object of the present invention is to provide a device for emulsifying steam and milk which can be easily cleaned and inspected so as to allow the elimination of any milk residues from its surfaces.
A further object of the present invention is to provide a device for emulsifying steam and milk which avoids any burning of the milk on the walls of the steam dispensing spout.
Still another object of the invention is to provide a device for emulsifying steam and milk which is simple to manufacture, has a modest cost and can furthermore be applied, without particular modifications, to any coffee-making machine.」(第1欄第33行?第56行)
{発明の目的
本発明の主な目的は,公知技術の問題点を克服する装置を提供することである。
この目的の範囲内において,本発明の重要な目的は,オペレータがこの操作を実行するスキルと独立して豊富な泡の形成を可能にするような特にカプチーノとするため,蒸気とミルクを乳化するための装置を提供することである。
本発明のさらに別の目的は,簡単に洗浄し,その表面からあらゆるミルク残滓の除去を可能にするように検査することができる蒸気とミルクを乳化するための装置を提供することである。
本発明の更なる目的は,蒸気の注ぎ口の壁の上でミルクの燃焼を避けるように蒸気とミルクを乳化させるための装置を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は,製造が簡単で,適度なコストで,さらに,任意のコーヒーメーカーの機械に,特定の変更を加えることなく,適用することができる,蒸気やミルクを乳化するための装置を提供することである。}

・「With particular reference to the above figures, the device according to the invention, generally designated by the reference numeral 1, includes a first duct 2 and a second duct 3 which are respectively suitable to convey milk and steam to a means, generally designated by the reference numeral 4, for mixing and emulsifying the milk with the steam.
Advantageously, the mixing and emulsifying means 4 is formed by a single chamber, generally designated by the reference numeral 5, which is connected to the atmosphere and to which a conveyance element 6 is connected; said conveyance element allows the first duct 2 to merge into the second duct 3 and obtain the simultaneous delivery, from a single outlet 7 of the conveyance element 6, of the milk and of the steam at a preset distance "H" from the bottom 8 of the chamber 5.
Particularly, the first duct 2 merges into the second duct 3 proximate to the outlet 7 with an angle from 15 to 45 degrees.
It is critical thererfore that the first duct 2 has a smaller diameter than the second duct 3 for the conveyance of steam.
By virtue of the above, the flow of steam in the second duct 3 produces a partial vacuum which is suitable to draw, through the first duct 2, the milk 10 contained inside a container 11.
In this manner, every time the steam generator 12 is activated, the flow of steam through the duct 3 draws the milk 10 from the container 11 in a preset amount by virtue of the presence of a draft regulator 13 which can be for example a tap for the complete opening or partial and complete closure of the duct 2.
Variation in the passage section of the draft regulator 13 allows to vary the amount of milk drawn from the container 11 according to the type of froth (abundant or scarce) to be obtained when emulsifying the milk with the steam.
Obviously, to prevent the milk from continuing to flow inside the duct 2 once the flow of steam inside the duct 3 has ceased, the container 11 and particularly the inlet of the duct 2 must be at a lower level than the bottom 8 of the chamber 5.
As shown in FIGS. 1 and 2, the chamber 5 is connected to the atmosphere by means of an opening 20 which is formed on a lateral wall 21 thereof and is spaced from the bottom 8 of the chamber 5.」(第2欄第17行?第63行)
{上記図に特に関連して,一般的に参照符号1によって表示された本発明に係る装置は,蒸気でミルクを混合し,乳化するための参照符号4で一般的に表示された手段にそれぞれミルクと蒸気を運ぶのに適している第一ダクト2と第二ダクト3を含む。
有利には,混合乳化手段4は,大気中へと接続され,搬送要素6が接続されている一般的に参照符号5で表示された単一のチャンバによって形成され,前記搬送要素は,第一ダクト2を第2ダクト3に開口させて,チャンバ5の底部8から所定の距離 ”H”において搬送要素6の単一の出口7からの,ミルクと蒸気の同時搬送を得ることを許容する。
特に,15?45度の角度で,出口7に隣接させて第二ダクト3に第一ダクト2を合わせている。
第一ダクト2は,蒸気の搬送のための第二ダクト3より小さい直径を有することが重要である。
上記の利点によって,第二ダクト3内の蒸気の流れは,容器11の内部に含まれるミルク10を,第一ダクト2を通して,吸引するのに適した部分的な真空を作り出す。
このように,毎回,蒸気発生器12が作動し,ダクト3を通る蒸気の流れは,例えばダクト2の完全な開口又は部分的および完全な閉鎖のための栓としてのドラフトレギュレータ13の存在によって予め決められた量で容器11からミルク10を吸引する。
ドラフトレギュレータ13の通路の断面のバリエーションにより,蒸気でミルクを乳化する時に得られる泡のタイプ(豊富なまたは不足)にしたがって,容器11から吸引されたミルクの量を変化させることができる。
明らかに,ひとたび,ダクト3内の蒸気の流れが止まると,ダクト2の内部にミルクが流れ続けるのを妨げるために,容器11と,特にダクト2の入口は,チャンバの底部8よりも低いレベルである必要がある。
図1と図2に示されるように,チャンバ5は,チャンバ5の底部8から離間された側壁21によって形成された開口部20により大気に接続されている。}

・これらの記載事項と,FIG.1からみて,第1ダクト2と第二ダクト3との接続部において,蒸気の流れとミルクの流れとを合流させることは明らかである。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ミルクと蒸気を混合し,乳化することによってカプチーノに用いる方法であって,
前記ミルクと前記蒸気を運び,
部分的な真空を作り出すことによって前記蒸気の流れは,前記ミルクを吸引し,
前記蒸気の流れと前記ミルクの流れとを合流させ,
前記ミルクと前記蒸気を混合し乳化する,
前記ミルクと前記蒸気を混合し,乳化することによってカプチーノに用いる方法。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「ミルク」は前者の「第一の流体」に相当し,以下同様に,「蒸気」は「第二の流体」に,「カプチーノ」は「飲料」に,「部分的に真空を作り出す」態様は「局所的に低圧を発生させる」態様に,それぞれ相当する。
また,後者の「ミルクと蒸気を混合し,乳化することによってカプチーノに用いる方法 」は,前者の「少なくとも第一の流体と第二の流体に基づいて飲料を調合する方法」及び「飲料の調合方法」に相当し,後者の「ミルクと蒸気を運」ぶ態様は,前者の「第一の流体と第二の流体の流れを供給するステップ」に相当し,後者の「部分的な真空を作り出すことによって蒸気の流れは,ミルクを吸引」する態様は,前者の「局所的に低圧を発生させることによって第二の流体の流れの影響下で第一の流体の流れを発生させるステップ」に相当する。
そして,蒸気の流れとミルクの流れを合流させることにより「合流流体が得られること」は明らかであり,合流することで混合し,乳化されるから,ミルクと蒸気とを「相互作用させる」ことも明らかであるから,後者の「蒸気の流れとミルクの流れとを合流させ,前記ミルクと前記蒸気を混合し乳化する」態様は,前者の「第二の流体の流れと第一の流体の流れとを合流させ,これによって前記第一の流体と前記第二の流体とに基づく合流流体が得られる,ステップと
前記合流流体の中で前記第一の流体と前記第二の流体とを相互作用させるステップとを,備える」態様に相当する。
そうすると,両者は,
「少なくとも第一の流体と第二の流体に基づいて飲料を調合する方法であって,
前記第一の流体と前記第二の流体を流れを供給するステップと,
局所的に低圧を発生させることによって前記第二の流体の流れの影響下で前記第一の流体の流れを発生させるステップと,
前記第二の流体の流れと前記第一の流体の流れとを合流させ,これによって前記第一の流体と前記第二の流体とに基づく合流流体が得られる,ステップと
前記合流流体の中で前記第一の流体と前記第二の流体とを相互作用させるステップとを,
備える,飲料の調合方法。」
の点で一致し,以下の点で相違すると認められる。

<相違点>
局所的に低圧を発生させることによって第二の流体の流れの影響下で第一の流体の流れを発生させるステップであって,「この局所的な低圧は,」本願発明では,「第二の流体の流れから第一の流体への運動量の転送を可能とすることによって得られる」とされているのに対して,引用発明では,部分的な真空を作り出すことによって蒸気の流れは,ミルクを吸引し,前記蒸気の流れと前記ミルクの流れとを合流させるものの,それ以上の特定はなされていない点。

4.相違点の検討・当審の判断
引用発明においても,蒸気の流れにより,ミルクが吸引され,前記蒸気の流れと前記ミルクの流れが合流するから,蒸気の流れによってミルクの流れが増速する,つまり,本願発明で言うのと同様な意味で,第二の流体の流れから第一の流体の運動量の転送を可能としているものと認められる。
そして,一般に,流体の流れが増速すれば,局所的な低圧が発生することは,技術常識である。
そうすると,かかる技術常識に鑑みれば,引用発明において,相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

そして,本願発明の作用効果について検討しても,引用発明から予測されるものであって,格別のものとはいえない。

したがって,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,このような特許を受けることができない発明を包含する本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-08 
結審通知日 2013-04-09 
審決日 2013-04-22 
出願番号 特願2008-515341(P2008-515341)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B67D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 義彦  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 槙原 進
藤井 昇
発明の名称 飲料メーカーで使用するためのポンプ・ユニットと使い捨てカートリッジ  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 津軽 進  

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