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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1279132
審判番号 不服2012-22282  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-12 
確定日 2013-09-04 
事件の表示 特願2008-205222「放射型ディスプレイ装置の熱拡散方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月12日出願公開、特開2009- 31801〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年10月14日(パリ条約による優先権主張2003年10月14日、米国、2004年5月12日、米国)の出願である特願2004-300460号の一部を平成19年10月22日に新たな特許出願としたものである特願2007-273884号の一部を平成20年8月8日に新たな特許出願としたものであって、平成21年1月27日付けで拒絶理由が通知され、同年8月14日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、平成22年5月28日付けで拒絶理由が通知され、同年8月18日付けで意見書が提出され、平成23年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年8月31日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、その後、平成24年7月20日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、同年11月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年8月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「複数の放電セルを有する放射型ディスプレイ装置の熱拡散方法において、
前記装置の複数の放電セルがヒートスプレッダで覆われるように、該ヒートスプレッダの2つの主表面のうちの一つの主表面の全面を、前記装置に直接熱的に接触させる段階と、
該ヒートスプレッダを、前記装置に接着剤で接着させる段階と、
を有し、
前記ヒートスプレッダが、剥離グラファイトの圧縮粒子からなる少なくとも1枚のシートで構成され、
前記グラファイトのグラフェン層と前記ヒートスプレッダの主表面とが平行に配列されるように、前記剥離グラファイトの圧縮粒子からなる少なくとも1枚のシートが、前記ディスプレイ装置に接着剤で接着され、
前記ディスプレイ装置が何れの方向に向けられても、前記ヒートスプレッダと前記装置との間の熱的な接触が確保されるように、前記接着剤の接着強度を示すラップシェア接着強度の最小値が、少なくとも125g/cm^(2)とされ、そして、
前記ヒートスプレッダによって、前記ディスプレイ装置上の熱点間の温度差が低減される
ことを特徴とする放射型ディスプレイ装置の熱拡散方法。」

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平9-199040号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマディスプレイパネル、その製造方法およびディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】プラズマディスプレイパネルを用いたディスプレイ装置では、プラズマディスプレイパネルの各放電セルの電極に電圧を印加して所望の放電セルを発光させることで表示をするようになっている。放電セルは発光時には発熱する。パネル本体の基材はガラス等で作られている。セルで発生した熱は基材の材料の性質から横方向に伝わりにくいので、発光したセルは著しく温度上昇するのに、発光しないセルはあまり温度上昇しない。このため、放熱上の工夫をしないとパネルの温度が局部的に上昇し、一部のセルの熱劣化が早く進む。また、両セルの温度差が非常に大きいので本体に応力が生じて、本体がわれやすくなる。放電セルの電極への印加電圧を大きくすると、輝度が高まるのであるが、同時にセルの発熱量が増大し、セルの熱劣化やパネル本体のわれが一層ひどくなる。」

(b)「【0023】本発明に使用される高配向性のグラファイトは、グラファイト結晶の配向方向がそろった高結晶グラファイト、とくにロッキング特性が20度以下のグラファイトであればよく、・・・
【0031】可撓性を有する高配向性グラファイト素材は、可撓性がない高配向性グラファイト素材より比重が軽い(0.5?1.5)が、熱伝導性はあまり変化せず、本発明において、放熱部材の可撓性面状体および/または均熱層として使用できるので好ましい。なお、高配向性グラファイトを放熱部材の可撓性面状体および/または均熱層として使用する場合には、パネル本体の局部的な温度上昇を防いで温度分布を起こりにくくするという点を考慮すると、高配向性グラファイトフィルムの厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させておくのが好ましい。」

(c)「【0038】請求項6のプラズマディスプレイパネルは、本体と本体裏面に配置された放熱部材との間に配置された高配向性のグラファイト層を備えているので、グラファイト層は、本体から熱をうけると速やかに層中に熱が伝導されて全体的に均一な温度になる。この状態でグラファイト層から放熱部材へと熱伝導されて空気中に放熱されるため、本体の局部的な温度上昇を均一化するとともに、全体的な温度上昇を抑える。」

(d)「【0051】-第3実施形態-
図5に示すプラズマディスプレイパネル100は、前記第1または第2実施形態と基本的な構造は共通するが、本体と放熱部材との間に高配向性のグラファイトフィルムを介在させていること、および放熱部材の構造が異なる。【0052】放熱部材4は、概ね断面凹形の底部内面41に多数のフィン42を有し、底部外面43が本体裏面11との接合面となっていて、外周縁の側部44外面がディスプレイ装置のキャビネットとの接合面となる。放熱部材4は、従来のアルミニウム製フィン型放熱器であり全体的に硬いため、本体裏面11の湾曲に沿って変形できず、該裏面11との間に従来と同様の大きな空間を生じる。この空間は、高配向性のグラファイト層を有する。すなわち、厚み0.2mmの可撓性を有する高配向性のグラファイトフィルム6を本体裏面11の外周縁(糊代となる)を除く全面に該裏面11の湾曲に沿って配置し、グラファイトフィルム6の上に厚み2mmのシリコーンシート7を積層してある。グラファイトフィルム6は、比重0.5?1.5の範囲内である。放熱部材4は、接着剤層50を介して本体裏面11の外周縁に接着されている。シリコーンシート7は、本体裏面11と放熱部材4との間の空間形状に合うように変形している。接着剤層50の接着剤としては、接着剤としては、ゴム弾性に優れた一液加熱硬化型シリコーン接着剤(例えば、信越化学工業社製FE-61)が用いられる。なお、放熱部材4の少なくとも底部外面43にも高配向性のグラファイトフィルムが積層されていると、全部のフィン42の温度のばらつきを少なくして放熱効果を高めることができる。
【0053】パネル10の使用時に本体1内部で発生する熱は、本体1の壁面を通して外部に放熱され、特に、裏面11からグラファイトフィルム6とシリコーンシート7、または接着剤層50を介して放熱部材4に伝熱されて、放熱部材4の表面、特にフィン42の表面から外気へと放熱される。本体裏面11にグラファイトフィルム6が配置されているので、本体1で局所的に発生した熱はグラファイトフィルム6を速やかに伝わって本体1の発熱していない部分を昇温させる。このため、本体1の局所的な温度上昇が起こりにくく、しかも、全体的な温度上昇が抑えられる。放熱部材4に伝わった熱は、フィン42から空気中に放熱される。放熱部材4は放熱性の良いアルミ材からなり、フィン42によって実質的な放熱面積が増大しているので、パネル100の放熱性を向上させることができる。
【0054】アルミニウム製フィン型放熱器の代わりに薄い波板を平行する2枚の薄い平板で挟んで接合した放熱部材、薄い平板の上にハニカム構造体を接合した放熱部材を使うことが可能である。材質は何れもアルミニウムなどの金属であり、溶接あるいは接着により接合されている。また、放熱部材を金属に代えて高配向性のグラファイトで作ってもよい。
【0055】シリコーンシート7は熱伝導性の良いものであるが、代わりに他の熱伝導性の良い合成樹脂シートを用いることができる。放熱部材4と本体裏面11との間の空間は、高配向性のグラファイトで埋められたり、高配向性のグラファイトを含むコンポジット体で埋められたり、高配向性のグラファイトフィルムと合成樹脂との積層体で埋められたりすることができる。高配向性のグラファイトで埋める場合には、該グラファイトを該空間と同じ形状のバルク体として作製したり、可撓性を有する高配向性のグラファイトフィルムを複数枚積層したりすることにより該空間が埋められる。
【0056】図5に一点鎖線で示すように、グラファイトフィルム6上にペルチェ素子60を設置しておき、ペルチェ素子60のフィルム6との接合面側に吸熱を生じる向きに電流を通じるための電気回路を接続しておくことが好ましい。この場合、ペルチェ素子60の反対側の面は放熱部材4と熱的に接触させておく。パネル100の表示時に、ペルチェ素子60の吸熱を生じさせれば、パネル本体1の熱が裏面11のほぼ全面からグラファイトフィルム6を通じてペルチェ素子60に吸収され、本体1を積極的に冷却することができる。ペルチェ素子60は、グラファイトフィルム6をパネル100の外部に延長してこの延長部に設置しておいてもよい。パネルのサイズが大きいときには、本体1の中央付近の裏側に位置するようにペルチェ素子60を設置しておくと、本体1の熱がより速くペルチェ素子60に伝わり、本体1の温度上昇をより効果的に防ぐことができる。
【0057】本体1と高配向性グラファイトフィルムと合成樹脂と放熱部材4を積層する場合、上記接着剤層を薄く(たとえば、0.1mm厚程度)介在させて接着してもよい。」

(e)「



上記引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明が記載されている。

「本体1と放熱部材4との間に高配向性グラファイトフィルム6を介在させたプラズマディスプレイパネル100の放熱方法において、
高配向性のグラファイトフィルム6を本体裏面11の外周縁(糊代となる)を除く全面に該裏面11の湾曲に沿って配置し、グラファイトフィルム6の上に合成樹脂シートを積層し、
本体1と高配向性グラファイトフィルム6と合成樹脂シートと放熱部材4を積層する際には、接着剤層を薄く介在させて接着し、
高配向性グラファイトフィルムは、厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させたものであり、
本体裏面11にグラファイトフィルム6が配置されているので、本体1で局所的に発生した熱はグラファイトフィルム6を速やかに伝わって本体1の発熱していない部分を昇温させ、このため、本体1の局所的な温度上昇が起こりにくく、しかも、全体的な温度上昇が抑えられる、
プラズマディスプレイパネル100の放熱方法。」(以下「引用発明」という。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特公昭44-23966号公報(以下「引用文献2」という)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

(a)「本発明はまた所定厚さおよび少なくとも80kg/m^(3)の密度につき原粒子に対し少なくとも80倍の前記”C”方向寸法を有する圧縮性の膨張黒鉛粒子を含む可撓黒鉛シート材料の製造方法を提供するものである。
一般外観が芋虫状または蠕虫状の膨張黒鉛粒子は、これが一度圧縮されると圧縮された固化状態を維持することは注意を要する。シート材の密度および厚さは圧縮度の制御によって変化することが出来る。シート材の密度は80-219kg/m^(3)の範囲内にある。可撓黒鉛シート材は可成りの異方性を有し、異方性の度合は密度の増大と共に増加する。接着剤を使用しない可撓性黒鉛シート材の生成において、圧縮作業により、その大きな容積に膨張された黒鉛粒子を相互係合の形状に扁平化する。尨大な数の炭素層と黒鉛の有効な固有の凝集力または接着性によつて形成される強力な機械的接合により、充分な強度を有する可撓性の一体化された黒鉛を得ることが出来る。」(公報第2頁右欄第22?40行)

(b)「可撓性を有する黒鉛シート材は化学的の不活性、熱安定性、高い純度および非湿潤性を有する。これはまた流体に対する不透過性を与えることも出来る。これはまた定位に従って低度または高度の熱伝導性を有する。黒鉛シート材の予備試験により”C”方向の熱伝導度1.488Kcal-m/時m^(2)℃(538℃にて)を示し、これは熱分解黒鉛または任意その他の入手し得る高温絶縁物のものより低い。このように本発明による黒鉛材料は独特の可撓性を有する他に、低温学的温度から3700℃範囲において優れた熱絶縁性を有する。このように非常小さい空間において非常に有効な絶縁障壁が得られる。”a”方向の熱伝導度は208?223Kcal-m/時m^(2)℃(538℃にて)の範囲にあり、これは熱分解黒鉛のものとほぼ等しい。異方性熱特性の他に、このシート材はまた異方性電気的特性をも有する。」(公報第8頁左欄第16?32行)

(c)「本発明による可撓性黒鉛材料は広範な用途を有する。例えば、黒鉛材料は絶縁材料または熱伝導材料またはこの両方に使用される。」(公報第8頁左欄第43?45行)

3.対比
(1)本願発明と引用発明との対比
(a)引用発明の「プラズマディスプレイパネル100」が本願発明の「複数の放電セルを有する放射型ディスプレイ装置」に相当することは明らかであるから、引用発明の「本体1と放熱部材4との間に高配向性グラファイトフィルム6を介在させたプラズマディスプレイパネル100の放熱方法」は、本願発明の「複数の放電セルを有する放射型ディスプレイ装置の熱拡散方法」に相当する。
(b)引用発明の「高配向性のグラファイトフィルム6を本体裏面11の外周縁(糊代となる)を除く全面に該裏面11の湾曲に沿って配置」することにおいて、「高配向性のグラファイトフィルム6」は「本体1」からの熱を伝導するものであるから、「高配向性のグラファイトフィルム6」が「本体裏面11」に直接熱的に接触していることは明らかである。すると、引用発明の「高配向性のグラファイトフィルム6を本体裏面11の外周縁(糊代となる)を除く全面に該裏面11の湾曲に沿って配置」することは、本願発明の「前記装置の複数の放電セルがヒートスプレッダで覆われるように、該ヒートスプレッダの2つの主表面のうちの一つの主表面の全面を、前記装置に直接熱的に接触させる段階」に相当する。
(c)引用発明の「本体1と高配向性グラファイトフィルム6と合成樹脂シートと放熱部材4を積層する際には、接着剤層を薄く介在させて接着」することは、本願発明の「該ヒートスプレッダを、前記装置に接着剤で接着させる段階」に相当する。
(d)引用発明の「本体裏面11にグラファイトフィルム6が配置されているので、本体1で局所的に発生した熱はグラファイトフィルム6を速やかに伝わって本体1の発熱していない部分を昇温させ、このため、本体1の局所的な温度上昇が起こりにくく、しかも、全体的な温度上昇が抑えられる」ことは、本願発明の「前記ヒートスプレッダによって、前記ディスプレイ装置上の熱点間の温度差が低減される」ことに相当する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「複数の放電セルを有する放射型ディスプレイ装置の熱拡散方法において、
前記装置の複数の放電セルがヒートスプレッダで覆われるように、該ヒートスプレッダの2つの主表面のうちの一つの主表面の全面を、前記装置に直接熱的に接触させる段階と、
該ヒートスプレッダを、前記装置に接着剤で接着させる段階と、
を有し、
前記ヒートスプレッダによって、前記ディスプレイ装置上の熱点間の温度差が低減される、
放射型ディスプレイ装置の熱拡散方法。」で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
(イ)ヒートスプレッダが、本願発明では「剥離グラファイトの圧縮粒子からなる少なくとも1枚のシートで構成され、前記グラファイトのグラフェン層と前記ヒートスプレッダの主表面とが平行に配列されるように、前記剥離グラファイトの圧縮粒子からなる少なくとも1枚のシート」であるのに対して、引用発明では「厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させた」「高配向性グラファイトフィルム6」である点。

(ロ)ヒートスプレッダと装置との接着において、本願発明では「前記ディスプレイ装置が何れの方向に向けられても、前記ヒートスプレッダと前記装置との間の熱的な接触が確保されるように、前記接着剤の接着強度を示すラップシェア接着強度の最小値が、少なくとも125g/cm^(2)とされ」るのに対して、引用発明では接着強度が不明である点。

4.判断
まず、上記相違点(イ)について検討する。
引用文献2に記載された「圧縮性の膨張黒鉛粒子を含む可撓黒鉛シート材料」は、本願発明の「剥離グラファイトの圧縮粒子からなる少なくとも1枚のシートで構成され、前記グラファイトのグラフェン層と前記ヒートスプレッダの主表面とが平行に配列されるように、前記剥離グラファイトの圧縮粒子からなる少なくとも1枚のシート」に相当することは明らかである。(なお、引用文献2は、本願の明細書中に、本願発明の「ヒートスプレッダ」を製造する一般的な方法を記載したものとして挙げられた、特許文献3(米国特許第3404061号明細書)のファミリー文献である。)
また、引用文献2には、「圧縮性の膨張黒鉛粒子を含む可撓黒鉛シート材料」が炭素層(本願発明の「グラフェン層」に相当する。)に平行な方向(「”a”方向」)の熱伝導度が炭素層に垂直な方向(「”C”方向」)の熱伝導度よりも高く、熱伝導材料として使用されることが記載されている。
すると、引用発明の 「厚み方向の熱伝導性よりも横方向の熱伝導性の方が良好となるようにグラファイト結晶を配向させた」「高配向性グラファイトフィルム6」として、引用文献2に記載された「圧縮性の膨張黒鉛粒子を含む可撓黒鉛シート材料」を採用して、上記相違点(イ)に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。

次に、上記相違点(ロ)について検討する。
引用発明の「高配向性のグラファイトフィルム6」は「本体1」からの熱を伝導するものであるから、「高配向性のグラファイトフィルム6」が「本体裏面11」に直接熱的に接触している必要があることは自明であり、引用発明の「本体1」と「高配向性グラファイトフィルム6」との接着において、「プラズマディスプレイパネル100」の製造中や使用中に考え得るあらゆる状態で、「本体1」と「高配向性グラファイトフィルム6」とが剥がれないような接着強度とすることは、当業者であれば、設計時に当然に考慮することである。
また、本願発明の「前記接着剤の接着強度を示すラップシェア接着強度の最小値が、少なくとも125g/cm^(2)」という数値に臨界的意味も認められないことも勘案すれば、引用発明の「本体1」と「高配向性グラファイトフィルム6」との接着強度を、「前記接着剤の接着強度を示すラップシェア接着強度の最小値が、少なくとも125g/cm^(2)」として、上記相違点(ロ)に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明が奏し得る効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-03 
結審通知日 2013-04-09 
審決日 2013-04-22 
出願番号 特願2008-205222(P2008-205222)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 浩一小野 博之  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 土屋 知久
神 悦彦
発明の名称 放射型ディスプレイ装置の熱拡散方法  
代理人 川崎 隆夫  

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