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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1279154 |
審判番号 | 不服2010-17862 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-06 |
確定日 | 2013-09-17 |
事件の表示 | 特願2005-127477「PCR法、プライマー及びPNA。」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 9日出願公開、特開2006-304611〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年4月26日の出願であって、拒絶理由に対して、平成22年4月12日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年4月27日付けで拒絶査定がされたところ、同年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 平成22年8月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年8月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成22年8月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。 補正前: 「【請求項1】 遺伝子DNAと、 この遺伝子DNA内の変異を検出する対象遺伝子DNAの一部の配列と相補配列を有して、当該対象遺伝子DNAの一部の配列に結合するPNAであって、 この変異を検出する対象遺伝子DNAは、「5’-GAGCTGGTGGCGT-3’」(以下「第1対象遺伝子DNA」という)及びこの「第1対象遺伝子DNA」と相補的な「3’-CTCGACCACCGCA-5’」(以下「第2対象遺伝子DNA」という)の何れか一方を少なくとも含む13乃至25(mer)の塩基配列部分であり、 上記第1または第2対象遺伝子DNAの一部を含み、上記対象遺伝子DNAから離れた塩基配列と相補配列を有して、当該塩基配列に結合するプライマーとを使用するPCR法であって、 当該プライマーは、 5’-…ACTGGTGGAGTATTTGAT…-3’及び 5’-…TCAAGGCACTCTTGCCTA…-3’のセット (…はこれらの塩基配列部分に繋がる上記遺伝子DNAの塩基配列) であることを特徴とする糞便の試料に対するPCR法。」 補正後: 「【請求項1】 遺伝子DNA内の変異を検出する対象遺伝子DNAの一部の配列と相補配列を有して、当該対象遺伝子DNAの一部の配列に結合するPNAと、 この変異を検出する対象遺伝子DNAは、「5’-GAGCTGGTGGCGT-3’」(以下「第1対象遺伝子DNA」という)及びこの「第1対象遺伝子DNA」と相補的な「3’-CTCGACCACCGCA-5’」(以下「第2対象遺伝子DNA」という)の何れか一方を少なくとも含む13乃至25(mer)の塩基配列部分であり、 上記第1または第2対象遺伝子DNAの一部を含み、上記対象遺伝子DNAから離れた塩基配列と相補配列を有して、当該塩基配列に結合するプライマーと、を使用するPCR法であって、 当該プライマーは、 5’-TACTGGTGGAGTATTTGATA-3’、 5’-TACTGGTGGAGTATTTGAT -3’、 5’- ACTGGTGGAGTATTTGATA-3’または 5’- ACTGGTGGAGTATTTGAT -3’及び 5’-GTCAAGGCACTCTTGCCTAC-3’、 5’-GTCAAGGCACTCTTGCCTA -3’、 5’- TCAAGGCACTCTTGCCTAC-3’または 5’- TCAAGGCACTCTTGCCTA -3’のセットであり、^( ) 上記PNAは、 …ACGCCACCAGCTC…の塩基配列を含み、 NH_(2)-TACGCCACCAGCTCCAACTACCACA-CONH_(2)から^( ) NH_(2)-CACTCTTGCCTACGCCACCAGCTCC-CONH_(2)までの13乃至25(mer)の塩基配列部分を有することを特徴とする糞便の試料に対するPCR法。」 (下線部は補正前からの補正箇所を示す。) 2.補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1の発明特定事項である「5’-…ACTGGTGGAGTATTTGAT…-3」を、 「 5’-TACTGGTGGAGTATTTGATA-3’、 5’-TACTGGTGGAGTATTTGAT -3’、 5’- ACTGGTGGAGTATTTGATA-3’または 5’- ACTGGTGGAGTATTTGAT -3’」と限定し、 補正前の請求項1の発明特定事項である「5’-…TCAAGGCACTCTTGCCTA…-3’」を、 「 5’-GTCAAGGCACTCTTGCCTAC-3’、 5’-GTCAAGGCACTCTTGCCTA -3’、 5’- TCAAGGCACTCTTGCCTAC-3’または 5’- TCAAGGCACTCTTGCCTA -3’」と限定し、 補正前の請求項1の発明特定事項である「PNA」を、 「 …ACGCCACCAGCTC…の塩基配列を含み、 NH_(2)-TACGCCACCAGCTCCAACTACCACA-CONH_(2)から NH_(2)-CACTCTTGCCTACGCCACCAGCTCC-CONH_(2)までの13乃至25(mer)の塩基配列部分を有する」ものに限定する補正事項を含むものであって、補正前後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 よって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記1.に「補正後」として記載したとおりのものである。 (2)引用例の記載事項 本願の出願日前に頒布された刊行物であるNucleic Acids Research,1996,Vol.24, No.5,p.983-984(以下、「引用例1」という。原査定の拒絶理由で引用された「文献1」に同じ。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。また、下線は当審で付与した)。 (ア)「PNAを介したPCRクランピングを用いたrasプロトオンコジーン中の変異の簡易かつ高感度な検出法」(表題) (イ)「ここで、我々は最近記載されたPNAを介したPCRクランピング法に基づいた、ras点変異の検出のための新たなアプローチを示す。PNAは、ホスホリボース主鎖が(2- アミノエチル)-グリシン単位のペプチド様リピートで置き換えられたDNA-模倣物である。・・・原理は、コドン12及び13周辺の野生型(wt)Ki-ras配列に相補的な15merのPNAを染色体ヒトDNAにハイブリダイズさせることであった(模式的に図1に示す。)。我々は、野生型のKi-rasの場合は、PNA/DNAハイブリッドの形成が優先されるであろうことを結論付けた。結合したPNAは、部分的に重複した一般的なオリゴヌクレオチドのアニーリングを立体的に妨げ、ひいては、通常のKi-ras配列の十分なPCR増幅を排除するだろう。変異アレルの場合には、PNA/DNAハイブリッドの融解温度が減少し、23merのオリゴヌクレオチドがPNAのアニーリングに競り勝つことができ、変異配列を優先的に増幅することができる。」(983頁左欄7行?下から7行) (ウ)「 図2 PNA仲介PCRクランプ法を使用したコドン12及び13における異なるKi-rasの変異の検出 ・・・PCRは、100μMのデオキシヌクレオシド-3リン酸、0.001%ゼラチン、50mMのKCl、1.5mMのMgCl_(2)、10mMのトリス-HCl(pH8.3)、0.25μMのKRAS-1(5’-GTACTGGTGG AGTATTTGATAGTG-3’)及びKRAS-2(5’-ATCGTCAAGG CACTCTTGCCTAC-3’)プライマー、0.12μMのHGH-s(5’-GCCTTCCCAA CCATTCCCTTA-3’)及びHGH-as(5’-TCACGGATTT CTGTTGTGTTTC-3’)プライマー、2.84μMのPNA-1(H_(2)N-TACGCCACCAGCTCC-CON_(2)H;パーセプティブバイオシステムズ、フライブルク、ドイツ)、7.5%グリセロール(v / v)及び0.15μgの鋳型DNAを含む50μl中で実行された。」(984頁左欄図2) 引用例1には、塩基配列が「H_(2)N-TACGCCACCAGCTCC-CON_(2)H」であるPNA-1が記載されており(記載事項(ウ))、PNAは変異を検出する対象遺伝子DNAにハイブリダイズするものであるから(記載事項(イ))、引用例1における対象遺伝子DNAの塩基配列は、PNA-1と相補的な「5’-GGAGCTGGTGGCGTA-3’」であるといえる。 また、KRAS-2プライマーは、「5’-ATCGTCAAGG CACTCTTGCCTAC-3’」であり(記載事項(ウ))、これは、3’末端から順に3つの塩基配列「CAT」が、対象遺伝子DNAの3’末端の「GTA」と相補的な塩基配列「CAT」と一致するものであるから、対象遺伝子DNAと相補的なDNAの一部を含むものであるといえる。 そして、KRAS-1プライマーは、「5’-GTACTGGTGG AGTATTTGATAGTG-3’」であり(記載事項(ウ))、これは、上記対象遺伝子DNAと相補的なDNAから離れた塩基配列と相補配列を有して、当該塩基配列に結合するプライマーである。 そうすると、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「遺伝子DNA内の変異を検出する対象遺伝子DNAの一部の配列と相補配列を有して、当該対象遺伝子DNAの一部の配列に結合するPNAと、 この変異を検出する対象遺伝子DNAは、「5’-GGAGCTGGTGGCGTA-3’」である15(mer)の塩基配列部分であり、 上記対象遺伝子DNAと相補的なDNAから離れた塩基配列と相補配列を有して、当該塩基配列に結合するKRAS-1プライマー:5’-GTACTGGTGG AGTATTTGATAGTG-3’、及び 上記対象遺伝子DNAと相補的なDNAの一部を含むKRAS-2プライマー:5’-ATCGTCAAGG CACTCTTGCCTAC-3’のセットを使用するPCR法であって、 上記PNAは、 H_(2)N-TACGCCACCAGCTCC-CON_(2)Hの15(mer)の塩基配列部分を有するものであるPCR法。」(以下、「引用発明」という。) (3)対比 本願補正発明において、プライマーセットを構成する2つのプライマーはそれぞれ選択肢で記載されているところ、最初の選択肢である「5’-TACTGGTGGAGTATTTGATA-3’」(以下、本願明細書の段落【0054】の記載に従い「(C-1)」ともいう。)及び「5’-GTCAAGGCACTCTTGCCTAC-3’」(同じく段落【0059】の記載に従い「(D-1)」ともいう。)を選択した場合に係る発明と引用発明を対比する。 引用発明の「対象遺伝子DNA」である15(mer)の「5’-GGAGCTGGTGGCGTA-3’」は、本願補正発明の「5’-GAGCTGGTGGCGT-3’」(第1対象遺伝子DNA)を少なくとも含む13乃至25(mer)の塩基配列部分」に含まれる(「第1対象遺伝子」と一致する部分に下線を付した。)。 また、本願補正発明における 「上記PNAは、 …ACGCCACCAGCTC…の塩基配列を含み、 NH_(2)-TACGCCACCAGCTCCAACTACCACA-CONH_(2)から NH_(2)-CACTCTTGCCTACGCCACCAGCTCC-CONH_(2)までの13乃至25(mer)の塩基配列部分を有する」という記載は、本願明細書の段落【0044】及び【0045】によれば、ACGCCACCAGCTC(B-1)の塩基配列を含み、5’側に最高11(mer)までの塩基が含まれていてもよいし、3’側に最高11(mer)の塩基が含まれていてもよい、13乃至25(mer)の塩基配列部分を有するPNAを意味すると解することができるから、引用発明のPNAである15(mer)の「H_(2)N-TACGCCACCAGCTCC-CON_(2)H」((B-1)と一致する部分に下線を付した。)は、本願補正発明のPNAに含まれる。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のようになる。 一致点:「遺伝子DNA内の変異を検出する対象遺伝子DNAの一部の配列と相補配列を有して、当該対象遺伝子DNAの一部の配列に結合するPNAと、 この変異を検出する対象遺伝子DNAは、「5’-GAGCTGGTGGCGT-3’」(以下「第1対象遺伝子DNA」という)を少なくとも含む15(mer)の塩基配列部分であり、 上記「第1対象遺伝子DNA」と相補的な「3’-CTCGACCACCGCA-5’」(以下「第2対象遺伝子DNA」という)の一部を含むプライマーと、 上記第2対象遺伝子DNAから離れた塩基配列と相補配列を有して、当該塩基配列に結合するプライマーと、を使用するPCR法であって、 上記PNAは、 …ACGCCACCAGCTC…の塩基配列を含み、 NH_(2)-TACGCCACCAGCTCCAACTACCACA-CONH_(2)から NH_(2)-CACTCTTGCCTACGCCACCAGCTCC-CONH_(2)までの15(mer)の塩基配列部分を有することを特徴とするPCR法。」 相違点1:本願補正発明におけるプライマーセットは、「5’-TACTGGTGGAGTATTTGATA-3’」(C-1)及び「5’-GTCAAGGCACTCTTGCCTAC-3’」(D-1)であるのに対し、引用発明は、「5’-GTACTGGTGGAGTATTTGATAGTG-3’」及び「5’-ATCGTCAAGGCACTCTTGCCTAC-3’」であり、1つ目のプライマーは5’末端側に1塩基、3’末端側に3塩基長く、2つ目のプライマーは5’末端側に3塩基長いものである点(本願補正発明のプライマーと相違する塩基配列に下線を付した。)。 相違点2:本願補正発明は、糞便の試料に対するPCR法であるのに対し、引用発明では、特にそのようなことは記載されていない点。 (4)判断 ア.相違点1について 鋳型DNAとの特異的なアニーリングのためには、プライマーの長さは、15?30塩基長程度が適切であり、一般的には20塩基前後のプライマーがよく使われていることは、本願出願日前における技術常識である(要すれば、標準技術集(核酸の増幅及び検出)【技術分類】1-1 プローブ・プライマーとして適した配列の選択方法、【技術の名称】長さの調整、特許庁、インターネット、平成13年掲載、URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/kakusan/0001.html参照)。 そして、引用発明の2つのプライマーの長さは、それぞれ24塩基又は23塩基であるところ、上記の技術常識を考慮して、5’及び/又は3’末端側の塩基を1又は3塩基短くして、本願補正発明のC-1プライマー及びD-1プライマーを設計することは、当業者が適宜なし得ることである。 イ.相違点2について k-ras遺伝子の変異を糞便を試料として検出することは当業者に周知の事項であるから(要すれば、拒絶査定で示した文献3(Medical Practice,2003,Vol.20, No.2,p.298-299)、文献4(日本大腸肛門病会誌,1997,Vol.50,p.33-40)及び文献5(癌の臨床,1996,Vol.42, No.13,p.1594-1600)参照)、引用発明において、PCR法の対象試料を糞便からのものに特定することは当業者が容易に想到し得ることである。 ウ.効果について 本願明細書において「実験結果」(段落【0188】?【0144】)として示された図5?図10の結果は、具体的にいかなる配列のプライマー及びPNAのセットを用いたことによるものなのか明記されていないため、本願補正発明の効果であるかどうか不明であって、本願補正発明の効果を本願明細書の記載から確認することはできない。 仮に、本願明細書の図5?図10の結果が、本願補正発明の効果であるとしても、対象遺伝子DNAの変異を正確に検出することができたことは、引用発明からは予期できない格別顕著な効果であるとは認められない。 エ.審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、本願補正発明のPCR法、プライマー及びPNAは、特許請求の範囲に記載の塩基配列にこそ特徴があるのであり、糞便というPCRの阻害物質が高濃度で多種類存在する中でも、遺伝子変異を誤判定/偽陽性無く正確に検査・検出できるという顕著な効果を奏するものであり、その一例が本願の図5乃至図10に示すとおりである旨主張する。 しかしながら、上記ウ.にて述べたとおり、本願補正発明は、引用発明と比べて格別顕著な効果を奏するものとは認められない。 そもそも、本願明細書の段落【0053】?【0060】には、プライマーセットの片方は、(C-1)?(C-4)(本願補正発明において、1つ目のプライマーとして選択肢で記載されたプライマーに相当)のうちいずれかが選択されるが、これより3’側または5’側にさらに塩基配列が多くてもよく、また、他のプライマーは、(D-1)?(D-4)(本願補正発明において、2つ目のプライマーとして選択肢で記載されたプライマーに相当)のうちいずれかが選択されるが、これより3’側または5’側にさらに塩基配列が多くてもよい旨が記載されている。 このような請求人の認識に従えば、他の塩基配列からなるプライマーセットとの比較実験を示すことなく、本願補正発明の特定の塩基配列からなるプライマーセットは格別顕著な効果を奏する旨の主張は、採用できるものではない。 3.小括 以上検討したところによれば、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成22年8月6日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成22年4月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1、10及び18に係る発明は、以下のとおりである。 「【請求項1】 遺伝子DNAと、 この遺伝子DNA内の変異を検出する対象遺伝子DNAの一部の配列と相補配列を有して、当該対象遺伝子DNAの一部の配列に結合するPNAであって、 この変異を検出する対象遺伝子DNAは、「5’-GAGCTGGTGGCGT-3’」(以下「第1対象遺伝子DNA」という)及びこの「第1対象遺伝子DNA」と相補的な「3’-CTCGACCACCGCA-5’」(以下「第2対象遺伝子DNA」という)の何れか一方を少なくとも含む13乃至25(mer)の塩基配列部分であり、 上記第1または第2対象遺伝子DNAの一部を含み、上記対象遺伝子DNAから離れた塩基配列と相補配列を有して、当該塩基配列に結合するプライマーとを使用するPCR法であって、 当該プライマーは、 5’-…ACTGGTGGAGTATTTGAT…-3’及び 5’-…TCAAGGCACTCTTGCCTA…-3’のセット (…はこれらの塩基配列部分に繋がる上記遺伝子DNAの塩基配列) であることを特徴とする糞便の試料に対するPCR法。」(以下、「本願発明1」という。) 「【請求項10】 上記PNAは、 …ACGCCACCAGCTC…の塩基配列を含み、 NH_(2)-TACGCCACCAGCTCCAACTACCACA-CONH_(2)から NH_(2)-CACTCTTGCCTACGCCACCAGCTCC-CONH_(2)までの13乃至25(mer)の塩基配列部分を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の糞便の試料に対するPCR法。」 「【請求項18】 上記請求項10の糞便の試料に対するPCR法で使用される請求項10記載のPNA。」(以下、「本願発明18」という。) 2.引用例の記載事項 引用例1の記載事項、及び引用例1に記載された発明(引用発明)は、上記「第2 2.(2)」に記載したとおりである。 3.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比する。 引用発明のPCR法は、反応液中に鋳型DNAを含むものであり(記載事項(イ))、この「鋳型DNA」は、本願発明1の「遺伝子DNA」に相当する。 また、上記「第2 2.(3)」で述べたように、引用発明の「対象遺伝子DNA」である15(mer)の「5’-GGAGCTGGTGGCGTA-3’」は、本願補正発明の「5’-GAGCTGGTGGCGT-3’」(第1対象遺伝子DNA)を少なくとも含む13乃至25(mer)の塩基配列部分」に含まれる。 そして、引用発明の「KRAS-1プライマー:5’-GTACTGGTGG AGTATTTGATAGTG-3’」は、本願発明1の「5’-…ACTGGTGGAGTATTTGAT…-3’(…はこれらの塩基配列部分に繋がる上記遺伝子DNAの塩基配列)」に含まれ、引用発明の「KRAS-2プライマー:5’-ATCGTCAAGG CACTCTTGCCTAC-3’」は、本願発明1の「5’-…TCAAGGCACTCTTGCCTA…-3’(…はこれらの塩基配列部分に繋がる上記遺伝子DNAの塩基配列)」に含まれる。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のようになる。 一致点:「遺伝子DNAと、この遺伝子DNA内の変異を検出する対象遺伝子DNAの一部の配列と相補配列を有して、当該対象遺伝子DNAの一部の配列に結合するPNAであって、 この変異を検出する対象遺伝子DNAは、「5’-GAGCTGGTGGCGT-3’」(以下「第1対象遺伝子DNA」という)を少なくとも含む15(mer)の塩基配列部分であり、 上記「第1対象遺伝子DNA」と相補的な「3’-CTCGACCACCGCA-5’」(以下「第2対象遺伝子DNA」という)の一部を含むプライマーと、 上記第2対象遺伝子DNAから離れた塩基配列と相補配列を有して、当該塩基配列に結合するプライマーとを使用するPCR法であって、 当該プライマーは、 5’-…ACTGGTGGAGTATTTGAT…-3’及び 5’-…TCAAGGCACTCTTGCCTA…-3’のセット (…はこれらの塩基配列部分に繋がる上記遺伝子DNAの塩基配列) であることを特徴とするPCR法。」 相違点:本願発明1は、糞便の試料に対するPCR法であるのに対し、引用発明では、特にそのようなことは記載されていない点。 (2)判断 上記「第2 2.(4)イ.相違点2について」で述べたように、 k-ras遺伝子の変異を糞便を試料として検出することは当業者に周知の事項であるから、引用発明において、PCR法の対象試料を糞便からのものに特定することは当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願発明1は、引用発明と比して、格別顕著な効果を奏するものとも認められない。 よって、本願発明1は、引用例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.本願発明18について (1)本願発明18 本願発明18は、請求項10を引用し、さらに請求項10において請求項1を引用している。本願発明18を請求項1及び10を引用しない形式で書き下すと以下のようになる。 「 遺伝子DNAと、 この遺伝子DNA内の変異を検出する対象遺伝子DNAの一部の配列と相補配列を有して、当該対象遺伝子DNAの一部の配列に結合するPNAであって、 この変異を検出する対象遺伝子DNAは、「5’-GAGCTGGTGGCGT-3’」(以下「第1対象遺伝子DNA」という)及びこの「第1対象遺伝子DNA」と相補的な「3’-CTCGACCACCGCA-5’」(以下「第2対象遺伝子DNA」という)の何れか一方を少なくとも含む13乃至25(mer)の塩基配列部分であり、 上記第1または第2対象遺伝子DNAの一部を含み、上記対象遺伝子DNAから離れた塩基配列と相補配列を有して、当該塩基配列に結合するプライマーとを使用するPCR法であって、 当該プライマーは、 5’-…ACTGGTGGAGTATTTGAT…-3’及び 5’-…TCAAGGCACTCTTGCCTA…-3’のセット (…はこれらの塩基配列部分に繋がる上記遺伝子DNAの塩基配列) であり、 上記PNAは、 …ACGCCACCAGCTC…の塩基配列を含み、 NH_(2)-TACGCCACCAGCTCCAACTACCACA-CONH_(2)から NH_(2)-CACTCTTGCCTACGCCACCAGCTCC-CONH_(2)までの13乃至25(mer)の塩基配列部分を有することを特徴とする糞便の試料に対するPCR法で使用されるPNA。」 (2)対比・判断 引用例1には、塩基配列が「H_(2)N-TACGCCACCAGCTCC-CON_(2)H」であるPNA-1が記載されている(記載事項(ウ))。 本願発明18と引用例1に記載されたPNA-1を対比する。 両者は、 「遺伝子DNA内の変異を検出する対象遺伝子DNAの一部の配列と相補配列を有して、当該対象遺伝子DNAの一部の配列に結合するPNAであって、 上記PNAは、 …ACGCCACCAGCTC…の塩基配列を含み、 NH_(2)-TACGCCACCAGCTCCAACTACCACA-CONH_(2)から NH_(2)-CACTCTTGCCTACGCCACCAGCTCC-CONH_(2)までの15(mer)の塩基配列部分を有する」点で一致する。 一方、本願発明18において、PNAは、どのような方法で使用されるものであるのか特定されているのに対し、引用例1に記載された発明では、特にそのようなことが記載されていない点で一見相違する。 しかしながら、本願発明18は、PNAという化学物質に係る発明である。したがって、本願発明18におけるPNAを使用する方法についての発明特定事項は、本願発明18に係る物質自体の発明に関しては構成上の相違とはなり得ない。 したがって、この点は実質的な相違点とはいえない。 よって、本願発明18は、引用例1に記載された発明である。 5.小括 よって、本願発明1は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願発明18は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 第4 まとめ 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項18に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-11 |
結審通知日 | 2013-06-12 |
審決日 | 2013-06-25 |
出願番号 | 特願2005-127477(P2005-127477) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C12N)
P 1 8・ 575- Z (C12N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 北村 悠美子 |
特許庁審判長 |
今村 玲英子 |
特許庁審判官 |
植原 克典 冨永 みどり |
発明の名称 | PCR法、プライマー及びPNA。 |
代理人 | 若原 誠一 |