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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1279222
審判番号 不服2011-523  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-11 
確定日 2013-09-11 
事件の表示 特願2006-520730「顔料濃縮物用の水希釈可能な分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂の利用」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月10日国際公開、WO2005/012439、平成18年12月14日国内公表、特表2006-528251〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年7月13日(パリ条約による優先権主張 2003年7月23日 オーストリア(AT))を国際出願日とする特許出願であって、平成21年6月11日付けで拒絶理由が通知され、同年12月15日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成22年9月6日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成23年1月11日に拒絶査定に対する審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年3月9日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年7月29日付けで前置報告がなされ、当審において平成24年6月5日付けで審尋がなされ、同年11月30日に回答書が提出されたものである。

第2.補正の却下の決定
[結論]
平成23年1月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成23年1月11日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、平成21年12月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、補正前の特許請求の範囲の記載である
「【請求項1】
顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法であって、該方法は、該顔料および該縮合樹脂ABを混合することを含み、該縮合樹脂は20mg/g?180mg/gの酸価を有し、該縮合樹脂は、酸基を含有しかつ30mg/g?240mg/gの酸価を有する、オレフィン性不飽和モノマーと不飽和脂肪族カルボン酸の二量化またはオリゴマー化によって得られる化合物とのコポリマーから選択される成分Aと、ヒドロキシル基を含有しかつ20mg/g?300mg/gのヒドロキシル価および500g/mol?5,000g/molの数平均モル質量Mnを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%?90%であり、該成分Bの質量分率が70%?10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になるものとする、顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法。
【請求項2】
酸基を含有するモノマーA1と酸基を有しない不飽和モノマーA2との共(joint)重合により得られるコポリマーを、前記酸基を含有する成分Aとして使用することを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記酸基を含有するモノマーA1が、3?13個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1?20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項4】
前記モノマーA1とA2の混合物中における前記モノマーA1の質量分率が、10%?33%であることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項5】
前記ヒドロキシル基を含有するポリエステルBが、二価の脂肪族アルコールBlと脂肪族または芳香族カルボン酸B2との重縮合物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項6】
前記縮合樹脂ABが、顔料との混合前に、中和され、かつ水中に分散されることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項7】
前記縮合樹脂ABが、100gの前記縮合樹脂に対して顔料30g?300gの質量比で顔料と混合されることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項8】
顔料と、分散剤としての縮合樹脂ABとを含む水希釈可能な顔料濃縮物であって、
-無機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が40g?70gであり、前記分散剤の質量が5g?20gであり、溶媒が最大10gであり、
-有機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が20g?40gであり、前記分散剤の質量が5g?40gであり、溶媒が最大10gであり、
-顔料がカーボンブラックの場合、100gの前記顔料濃縮物中で、該カーボンブラックの質量が15g?30gであり、前記分散剤の質量が10g?30gであり、溶媒が最大10gであり、
各々の場合、残りは水であり、前記縮合樹脂は20mg/g?180mg/gの酸価を有し、かつ前記縮合樹脂は、酸基を含有し且つ30mg/g?240mg/gの酸価を有する、オレフィン性不飽和モノマーのコポリマーAと、ヒドロキシル基を含有し且つ20mg/g?300mg/gのヒドロキシル価及び500g/mol?5000g/molの数平均モル質量Mnを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%?90%であり、該成分Bの質量分率が70%?10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になることを特徴とする水希釈可能な顔料濃縮物。
【請求項9】
顔料と、分散剤としての縮合樹脂ABとを含む水希釈可能な顔料濃縮物であって、
-無機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が40g?70gであり、前記分散剤の質量が5g?20gであり、溶媒が最大10gであり、
-有機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が20g?40gであり、前記分散剤の質量が5g?40gであり、溶媒が最大10gであり、
-顔料がカーボンブラックの場合、100gの前記顔料濃縮物中で、該カーボンブラックの質量が15g?30gであり、前記分散剤の質量が10g?30gであり、溶媒が最大10gであり、
各々の場合、残りは水であり、前記縮合樹脂は20mg/g?180mg/gの酸価を有し、かつ前記縮合樹脂は、不飽和脂肪族カルボン酸からの二量体化又はオリゴマー化によって得られる、酸基を含有し且つ30mg/g?240mg/gの酸価を有する成分Aと、ヒドロキシル基を含有し且つ20mg/g?300mg/gのヒドロキシル価及び500g/mol?5000g/molの数平均モル質量Mnを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%?90%であり、該成分Bの質量分率が70%?10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になることを特徴とする水希釈可能な顔料濃縮物。」
から、
「【請求項1】
顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法であって、該方法は、該顔料および該縮合樹脂ABを混合することを含み、該縮合樹脂は20mg/g?180mg/gの酸価を有し、該縮合樹脂は、酸基を含有しかつ30mg/g?240mg/gの酸価を有する成分Aであって、3?13個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1?20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる、酸基を含有するオレフィン性不飽和モノマーA1と、酸基を有しないオレフィン性不飽和モノマーA2とのコポリマーである成分Aと、ヒドロキシル基を含有しかつ20mg/g?300mg/gのヒドロキシル価および500g/mol?5,000g/molの数平均モル質量Mnを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%?90%であり、該成分Bの質量分率が70%?10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になるものとする、顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法。
【請求項2】
前記モノマーA1とA2の混合物中における前記モノマーA1の質量分率が、10%?33%であることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシル基を含有するポリエステルBが、二価の脂肪族アルコールBlと脂肪族または芳香族カルボン酸B2との重縮合物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項4】
前記縮合樹脂ABが、顔料との混合前に、中和され、かつ水中に分散されることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項5】
前記縮合樹脂ABが、100gの前記縮合樹脂に対して顔料30g?300gの質量比で顔料と混合されることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項6】
顔料と、分散剤としての縮合樹脂ABとを含む水希釈可能な顔料濃縮物であって、
-無機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が40g?70gであり、前記分散剤の質量が5g?20gであり、溶媒が最大10gであり、
-有機顔料の場合、100gの前記顔料濃縮物中で、前記顔料の質量が20g?40gであり、前記分散剤の質量が5g?40gであり、溶媒が最大10gであり、
-顔料がカーボンブラックの場合、100gの前記顔料濃縮物中で、該カーボンブラックの質量が15g?30gであり、前記分散剤の質量が10g?30gであり、溶媒が最大10gであり、
各々の場合、残りは水であり、前記縮合樹脂は20mg/g?180mg/gの酸価を有し、かつ前記縮合樹脂は、酸基を含有し且つ30mg/g?240mg/gの酸価を有する、オレフィン性不飽和モノマーのコポリマーAであって、3?13個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1?20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる、酸基を含有するオレフィン性不飽和モノマーA1と、酸基を有しないオレフィン性不飽和モノマーA2とのコポリマーであるコポリマーAと、ヒドロキシル基を含有し且つ20mg/g?300mg/gのヒドロキシル価及び500g/mol?5000g/molの数平均モル質量Mnを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%?90%であり、該成分Bの質量分率が70%?10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になることを特徴とす
る水希釈可能な顔料濃縮物。」
へと変更するものである。

2.本件手続補正の目的の適否について
本件手続補正は、当初明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内でするものであり、補正前の請求項1、8の成分Aを限定する(成分Aを、補正前の請求項2及び3に記載のものに特定する)と共に、補正前の請求項2、3及び9を削除するものである。しかも、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であり、補正前の請求項8に記載された発明と補正後の請求項8に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「特許法」という。)第17条の2第4項第1号及び第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び請求項の削除を目的とするものである。

3.独立特許要件について
そこで、本件手続補正が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)を満足するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明
本件手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明1」という。)は、上記1.に記載のとおり、本件手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。

(2)引用文献
(2-1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献5として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭64-20274号公報(以下、「引用文献」という)には、次の事項が記載されている。

a 「1. 部分的または完全に中和することにより水溶性となるアルキド樹脂を基材とし、通常の顔料、充填剤、補助溶剤およびその他の塗料添加剤を含有する水希釈性刷毛塗り塗料において、その塗料バインダーが30ないし70%、好ましくは40ないし60%の不飽和脂肪酸を含有するアルキド樹脂であり、該アルキド樹脂の25ないし70mgKOH/gの酸価に相当する遊離カルボン酸基は、その少なくとも80%はメタクリル酸単位に由来するものであり、かつ該メタクリル酸単位は、生成するグラフト重合体に対して30ないし55重量%の、-C=C-二重結合以外には官能基を含有しない前記メタクリル酸とは別のビニルおよび/または(メタ)アクリル酸モノマーとともに、前記アルキド樹脂生成前に不飽和脂肪酸の一部にグラフト重合され、かつ前記メタクリル酸とともに該グラフト重合に使用されるコモノマーは、そのうち少なくとも80%がベンジン可溶性ホモポリマーを生成するモノマーであることを特徴とする塗料。
2. 2ないし6個のヒドロキシル基を有する多価アルコールを10ないし25重量%、芳香族および/または脂肪族ジカルボン酸を10ないし20重量%、環式および/または多環式モノカルボン酸を0ないし15重量%ならびにポリエチレングリコールを0ないし5重量%を含有し、かつ7ないし16ml/g(20℃、CHCl_(3)中で)の固有粘度を有する請求項1記載の水希釈性刷毛塗り塗料。
3. 脂肪酸-メタクリル酸共重合体が、30ないし50重量%の脂肪酸、10ないし25重量%のメタクリル酸、および30ないし55重量%のC-C二重結合以外には官能基を含有しないその他のモノマーからなり、かつその合計重量%が100である請求項1または2記載の水希釈性刷毛塗り塗料。」(特許請求の範囲 請求項1?3)

b 「グラフト重合は、必要があれば少量の不活性溶剤の存在下で過半量の脂肪酸を110ないし150℃に加熱し、適当な反応開始剤を添加した混合モノマーと残りの脂肪酸を数時間かけて添加して行われる。ついで反応温度を保ち、固形分測定による重合転換率が95%以上になれば反応を終了する。反応開始剤として適当なものは、例えばジ-t-ブチルペルオキシド、過安息香酸t-ブチルおよびクメンヒドロペルオキシドである。
上記のようにして調製した脂肪酸-メタクリル酸グラフト共重合体はさらに脂肪酸と反応させて水溶性アルキド樹脂とする。この反応段階に使用される脂肪酸としては、ヨウ素価が120以上の植物油または動物油脂肪酸で二重結合の一部が共役二重結合となっているものが好ましい。適当な脂肪酸としては、例えば大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸ならびに脱水ヒマシ油脂肪酸が挙げられる。
・・・
エステル化は全成分を一緒に加熱して行われる。ペンタエリトリトールやイソフタル酸のように高融点原料を使用する場合は、先ず脂肪酸、ポリオールおよびジカルボン酸を透明に溶解させてエステル化を行わせ、ついで脂肪酸-メタクリル酸共重合体を添加するのが有利である。エステル化は、最終生成物の酸価が、メタクリル酸の濃度が約90%に相当するようになるまで行う。」(第4頁右上欄第20行?右下欄第17行)

c 「本発明のアルキド樹脂成分は、オルトフタル酸、イソフタル酸またはトリメリト酸の部分エステルをベースとする従来技術による水希釈性アルキド樹脂の耐加水分解性に比し遙かに優れたものになっている。」(第5頁左上欄第9?13行)

d 「酸性基の中和にはアンモニアが好ましいが、これ以外にはトリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、KOH、NaOHおよびLiOHが使用される。
アルキド樹脂は、水相溶性溶剤の溶液中に中和した形または中和しない形のいずれでも使用することができる。」(第5頁右上欄第3?9行)

e 「 以下の実施例は、本発明を説明するものであって発明の範囲を何等制限するものではない。部および百分率は明記しない限り重量部および重量%である。固有粘度は、クロロホルムまたはジメチルホルムアミド(DMF)中で20℃で測定し、ml/gとして記録した。
実施例
(I)脂肪酸-メタクリル酸共重合体の調製
共重合体C1:アマ二油脂肪酸30部とキシレン5部とを135ないし140℃に加熱する。この温度を保ちながら、メタクリル酸イソブチル32部、ビニルトルエン6部およびメタクリル酸21部を混合した混合物と、アマニ油脂肪酸11部、過安息香酸t-ブチル3部、ジベンゾイルペルオキシド(50%)1部およびキシレン5部を混合した別の混合物を6ないし8時間かけて同時かつ連続的に添加する。添加が終ってからもこの温度を保ち、不揮発性分の測定により重合転換率が少なくとも95%になるまで反応を続ける。反応速度が遅すぎる場合は、過安息香酸t-ブチル1部を添加する。共重合体の酸価は209mgKOH/gで、固有粘度は5.5ml/g(DMF)である。」(第5頁左下欄下から第6行?右下欄第10行)

f「(II)アルキド樹脂の調製
第1表に掲げた成分に従い、下記の方法でアルキド樹脂を調製する。適当な反応器で第1成分を230℃で透明な溶融物が得られるまでエステル化する。これを1時間保持した後、第2成分を添加し、200℃で反応させて規定の値に達するまで反応を続ける。不活性溶剤(共重合体に含まれている)を除去後、反応生成物をエチレングリコールモノブチルエーテルで希釈して固形分を87%とし、希釈アンモニア水溶液により50℃で乳化させる。アンモニアおよび水の量は、pHが8.2ないし8.4、固形分が40%となるようにする。
樹脂溶液は乳白色ないし透明溶液で、顕著な構造粘性を有している。」(第5頁右下欄第11行?第6頁左上欄第5行)

g 「実施例1?4
(水希釈性刷毛塗り白色塗料の調製)
A1、A3、A4およびA6のアルキド樹脂エマルションを下記の処方に従い、ボールミル攪拌装置(ダイノミル型)により分散させて常法により顔料/バインダー比が約1:1の酸化チタン塗料を調製する。
樹脂エマルション(40%) 260部
アンモルア溶液(25%) 1.5部
TiO_(2)(ルチル型) 100部
水希釈性混合ドライヤー(Co、Ba、Zr) 1部
皮張り防止剤(オキシム系) 2部
消泡剤(シリコーンを含有せず) 1部
水 30部
塗料の固形分は約50%で、必要があればpHを8.5ないし9.0に調節して表面を磨いた木材パネルに刷毛塗りする。試験結果は第2表に掲げた。
・・・
試験は下記の方法で行った。
1.刷毛塗り性: 各塗料の刷毛塗り性を主観的に点数で評価した(1=非常に良い、5=非常に悪い)。
2.ウエット・エッジ・タイム: 木材パネルを半分だけ各塗料で塗布し、5分間経過ごとに、塗布した境界部分に対して各塗料を帯状を重ね塗りした。第2表の時間は、境界部に均展性が失われた時間を示す。
3.乾燥性: ガラス板上に厚さ150μmで未乾燥塗膜を塗り、乾燥性を20℃で記録計で調べた。
4.重ね塗り性: 第2表の時間は、その時間が経過した後に重ね塗りしても何等問題が生じない時間を示す。試験は12時間間隔で行った。
5.塗料の貯蔵安定性: 各塗料とも50℃で4週間貯蔵して後必要のあるものはpHを調節してから塗布を行ったが何等問題がみられなかった。」(第6頁左上欄第6行?第7頁左上欄第13行)

h 「第1表

」(第7頁 第1表)

i 「第2表

」(第7頁 第2表)

(2-2)引用発明
摘示aの記載から、引用文献には、「部分的または完全に中和することにより水溶性となるアルキド樹脂を基材とし、通常の顔料、充填剤、補助溶剤およびその他の塗料添加剤を含有する水希釈性刷毛塗り塗料において、その塗料バインダーが30ないし70%、好ましくは40ないし60%の不飽和脂肪酸を含有するアルキド樹脂であり、該アルキド樹脂の25ないし70mgKOH/gの酸価に相当する遊離カルボン酸基は、その少なくとも80%はメタクリル酸単位に由来するものであり、かつ該メタクリル酸単位は、生成するグラフト重合体に対して30ないし55重量%の、-C=C-二重結合以外には官能基を含有しない前記メタクリル酸とは別のビニルおよび/または(メタ)アクリル酸モノマーとともに、前記アルキド樹脂生成前に不飽和脂肪酸の一部にグラフト重合され、かつ前記メタクリル酸とともに該グラフト重合に使用されるコモノマーは、そのうち少なくとも80%がベンジン可溶性ホモポリマーを生成するモノマーであることを特徴とする塗料であって、脂肪酸-メタクリル酸共重合体が、30ないし50重量%の脂肪酸、10ないし25重量%のメタクリル酸、および30ないし55重量%のC-C二重結合以外には官能基を含有しないその他のモノマーからなり、かつその合計重量%が100である、水希釈性刷毛塗り塗料」が記載されている。
上記記載における「脂肪酸-メタクリル酸共重合体」と「生成するグラフト重合体」との関係についてみると、「該メタクリル酸単位は、生成するグラフト重合体に対して30ないし55重量%の、-C=C-二重結合以外には官能基を含有しない前記メタクリル酸とは別のビニルおよび/または(メタ)アクリル酸モノマーとともに、前記アルキド樹脂生成前に不飽和脂肪酸の一部にグラフト重合され」との記載から、「生成するグラフト重合体」が、メタクリル酸単位を不飽和脂肪酸の一部にグラフト重合したものであることは明らかであり、よって、上記記載における「生成するグラフト重合体」と「脂肪酸-メタクリル酸共重合体」とは同一の重合体を指すといえる。摘示bの「グラフト重合は、・・・混合モノマーと残りの脂肪酸を数時間かけて添加して行われる。・・・上記のようにして調製した脂肪酸-メタクリル酸グラフト共重合体はさらに脂肪酸と反応させて水溶性アルキド樹脂とする。」との記載、実施例の記載(摘示e、f及びh)からも、「脂肪酸-メタクリル酸共重合体」と「生成するグラフト重合体」とが同一の重合体を指すことは明らかである。
また、上記記載から、引用文献に、水希釈性刷毛塗り塗料に用いるアルキド樹脂の使用方法が記載されていることは明らかである。
よって、引用文献には、
「部分的または完全に中和することにより水溶性となるアルキド樹脂を基材とし、通常の顔料、充填剤、補助溶剤およびその他の塗料添加剤を含有する水希釈性刷毛塗り塗料において、その塗料バインダーが30ないし70%、好ましくは40ないし60%の不飽和脂肪酸を含有するアルキド樹脂であり、該アルキド樹脂の25ないし70mgKOH/gの酸価に相当する遊離カルボン酸基は、その少なくとも80%はメタクリル酸単位に由来するものであり、かつ該メタクリル酸単位は、生成する脂肪酸-メタクリル酸共重合体に対して30ないし55重量%の、-C=C-二重結合以外には官能基を含有しない前記メタクリル酸とは別のビニルおよび/または(メタ)アクリル酸モノマーとともに、前記アルキド樹脂生成前に不飽和脂肪酸の一部にグラフト重合され、かつ前記メタクリル酸とともに該グラフト重合に使用されるコモノマーは、そのうち少なくとも80%がベンジン可溶性ホモポリマーを生成するモノマーであることを特徴とする塗料であって、脂肪酸-メタクリル酸共重合体が、30ないし50重量%の脂肪酸、10ないし25重量%のメタクリル酸、および30ないし55重量%のC-C二重結合以外には官能基を含有しないその他のモノマーからなり、かつその合計重量%が100である、水希釈性刷毛塗り塗料
に用いるアルキド樹脂の使用方法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)対比
本件補正発明1と引用発明とを対比する。

成分Aについて
摘示eには、引用発明に係る実施例として、アマニ油脂肪酸、メタクリル酸イソブチル、ビニルトルエン、メタクリル酸を反応させて、その酸価が209mgKOH/gの脂肪酸-メタクリル酸共重合体C1を得たことが記載されている。脂肪酸-メタクリル酸共重合体C1のモノマーの1つである「メタクリル酸」は、4個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸であり、酸基を含有し、かつ、オレフィン性不飽和モノマーであるから、本件補正発明1の「3?13個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1?20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる、酸基を含有するオレフィン性不飽和モノマーA1」に対応し、脂肪酸-メタクリル酸共重合体C1におけるメタクリル酸とは異なるモノマーである「メタクリル酸イソブチル」及び「ビニルトルエン」は、本件補正発明1の「酸基を有しないオレフィン性不飽和モノマーA2」に対応している。(なお、上記実施例における「アマニ油脂肪酸」は、本願明細書(【0008】?【0012】)に、コポリマーAの「モノマーA3として任意に使用し得る」と記載されている成分である。)
そうすると、引用発明の「脂肪酸-メタクリル酸共重合体」は、本件補正発明1の「酸基を含有しかつ30mg/g?240mg/gの酸価を有する成分Aであって、3?13個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1?20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる、酸基を含有するオレフィン性不飽和モノマーA1と、酸基を有しないオレフィン性不飽和モノマーA2とのコポリマーである成分A」を満足する態様を包含している。
したがって、引用発明の「脂肪酸-メタクリル酸共重合体が、30ないし50重量%の脂肪酸、10ないし25重量%のメタクリル酸、および30ないし55重量%のC-C二重結合以外には官能基を含有しないその他のモノマーからなり、かつその合計重量%が100であ」り、「メタクリル酸単位は、生成する脂肪酸-メタクリル酸共重合体に対して30ないし55重量%の、-C=C-二重結合以外には官能基を含有しない前記メタクリル酸とは別のビニルおよび/または(メタ)アクリル酸モノマーとともに、前記アルキド樹脂生成前に不飽和脂肪酸の一部にグラフト重合され、かつ前記メタクリル酸とともに該グラフト重合に使用されるコモノマーは、そのうち少なくとも80%がベンジン可溶性ホモポリマーを生成するモノマーである」という事項は、本件補正発明1における「酸基を含有しかつ30mg/g?240mg/gの酸価を有する成分Aであって、3?13個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1?20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる、酸基を含有するオレフィン性不飽和モノマーA1と、酸基を有しないオレフィン性不飽和モノマーA2とのコポリマーである成分A」に相当する。

成分Bについて
引用文献の実施例(摘示f及びh)には、第1成分である脂肪酸、ポリオール、ジカルボン酸をエステル化して得たエステル化物が記載されており、該エステル化物がポリエステルであることは明らかである。また、実施例において、アルキド樹脂(多価アルコールと多塩基酸の重縮合によって得られる樹脂)の調製が、上記エステル化物と酸価を有する脂肪酸-メタクリル酸共重合体とのエステル化反応により行われていることから、上記エステル化物が複数のヒドロキシル基を含有することは明らかである。
よって、上記「第1成分である脂肪酸、ポリオール、ジカルボン酸をエステル化して得たエステル化物」は、本件補正発明1の「ヒドロキシル基を含有するポリエステルB」に対応している。
引用発明は、アルキド樹脂の原料となる多価アルコールに関する発明を特定するための事項を有していないが、引用発明が、該多価アルコールが上記エステル化物である態様を包含していることから、上記「第1成分である脂肪酸、ポリオール、ジカルボン酸をエステル化して得たエステル化物」は、本件補正発明1の「ヒドロキシル基を含有するポリエステルB」に相当している。

成分Aと成分Bとの縮合について
上記のエステル化物と脂肪酸-メタクリル酸共重合体との反応は、本件補正発明1のポリエステルBと成分Aとの縮合に対応し、得られた「アルキド樹脂」は本件補正発明1の「縮合樹脂AB」に対応しているから、引用発明の「アルキド樹脂」は、本件補正発明1の「縮合樹脂AB」に相当する態様を包含している。
よって、引用発明の「アルキド樹脂」という事項は、本件補正発明1の「縮合樹脂は」「成分Aと」「ポリエステルBとの縮合によって得られるものであり」との事項に相当している。

縮合樹脂ABの酸価について
引用発明における「アルキド樹脂の25ないし70mgKOH/gの酸価」との事項は、本件補正発明1の縮合樹脂ABの酸価と重複一致し、摘示hには、実施例として、本件補正発明1の縮合樹脂ABの酸価と重複一致する酸化を有するアルキド樹脂が記載されているから、本件補正発明1の「縮合樹脂は20mg/g?180mg/gの酸価を有し」に相当している。

成分AとBの質量分率について
摘示hには、実施例として、アルキド樹脂の第一成分(第1成分)、第二成分(第2成分)のそれぞれの重量部が記載されている。アルキド樹脂A1の、第一成分、第二成分のそれぞれの質量分率は、39.3質量%(=(200+110+115+100)/((200+110+115+100)+340]*100)、60.7質量%(=340/((200+110+115+100)+340]*100)である。同様に計算を行うと、アルキド樹脂A1?A6における第一成分、第二成分のそれぞれの質量分率は、下記の表

のとおりであり、それぞれ、本件補正発明1で特定される、ポリエステルB、成分Aの合成用反応混合物中の質量分率と重複一致している。また、アルキド樹脂が、第一成分(第1成分)、第二成分(第2成分)以外の成分を含まないことから、アルキド樹脂の第一成分(第1成分)、第二成分(第2成分)の合計は100質量%であり、本件補正発明1の「この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になるものとする」に相当している。

顔料用分散剤としての水希釈可能な樹脂の使用方法について
引用発明における「部分的または完全に中和することにより水溶性となるアルキド樹脂を基材とし、通常の顔料、充填剤、補助溶剤およびその他の塗料添加剤を含有する水希釈性刷毛塗り塗料において、その塗料バインダーが30ないし70%、好ましくは40ないし60%の不飽和脂肪酸を含有するアルキド樹脂であり」との事項に関し、塗料バインダーであるアルキド樹脂が、塗料中で顔料を分散させていることは明らかであり、摘示gには、実施例として、顔料とアルキド樹脂とを混合して塗料を調製することが記載されている。また、水溶性であることから、引用発明に係るアルキド樹脂が水希釈可能な樹脂であることは明らかである。よって、引用発明における「部分的または完全に中和することにより水溶性となるアルキド樹脂を基材とし、通常の顔料、充填剤、補助溶剤およびその他の塗料添加剤を含有する」「水希釈性刷毛塗り塗料に用いるアルキド樹脂の使用方法」は、本件補正発明1における「顔料用分散剤としての水希釈可能な樹脂の使用方法であって、該方法は、該顔料および該樹脂を混合することを含」むことに相当している。

一致点と相違点
引用発明は、
「顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法であって、該方法は、該顔料および該縮合樹脂ABを混合することを含み、該縮合樹脂は20mg/g?180mg/gの酸価を有し、該縮合樹脂は、酸基を含有しかつ30mg/g?240mg/gの酸価を有する成分Aであって、3?13個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1?20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれる、酸基を含有するオレフィン性不飽和モノマーA1と、酸基を有しないオレフィン性不飽和モノマーA2とのコポリマーである成分Aと、ポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%?90%であり、該成分Bの質量分率が70%?10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になるものとする、顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法。」
である点で、本件補正発明1と重複一致し、下記の相違点で一応相違している。

相違点:本件補正発明1は、ポリエステルBが「20mg/g?300mg/gのヒドロキシル価および500g/mol?5,000g/molの数平均モル質量Mnを有する」ことが特定されているのに対し、引用発明にはそのような特定がなされていない点。

(4)判断
引用発明では「アルキド樹脂の酸価が酸価が25ないし70mgKOH/g」と特定され、「エステル化は、最終生成物の酸価が、メタクリル酸の濃度が約90%に相当するようになるまで行う」(摘示b)と記載されていること、及び、アルキド樹脂を得るためのエステル化は、酸基とヒドロキシル基との反応であることから、酸価の判明している酸基含有成分とヒドロキシル基を含有する成分とをエステル化させて所期の酸価を有するアルキド樹脂を得るために、ヒドロキシル価を所期の酸価のアルキド樹脂を得ることのできる値とすることは、当業者が当然に行う事項である。
そして、上記(3)に記載のとおり、引用発明の脂肪酸-メタクリル酸共重合体の酸価が本件補正発明1のアルキド樹脂の酸価と重複一致し、引用発明のアルキド樹脂の酸価が本件補正発明1の縮合樹脂ABの酸価と重複一致している以上、脂肪酸、ポリオール、ジカルボン酸のエステル化物のヒドロキシル価についても、本件補正発明1のポリエステルBのヒドロキシル価と重複一致していると解するのが相当である。
数平均モル質量について、本件補正発明1では、ポリエステルBの数平均モル質量Mnを500g/mol?5,000g/molと特定している。しかし、顔料分散剤としてのアルキド樹脂やそのポリエステル成分に関して、分子量が小さすぎると顔料同士の凝集を防ぐ立体反発層が不十分となり、分子量が大きすぎると、高粘度化によって高濃度化ができなくなる、顔料が分散されにくくなる、分散他の樹脂や溶剤との相溶性が低下するなどの問題が生じることは、本件補正発明1の分野における周知の事項であり(必要であれば、例えば、特開平9-157538号公報(特許請求の範囲、【0022】、【0031】)、特開2002-53628号公報(特許請求の範囲、【0080】、表2?表4)、特開平9-302259号公報(特許請求の範囲、【0127】)参照。上記特開平9-157538号公報には、アルキド樹脂のポリエステル成分に関して、本件補正発明1と重複する数平均分子量が記載されている。)、最終的に得られるアルキド樹脂やそのポリエステル成分の分子量が、顔料分散剤として適した値となるように、ポリエステル成分の数平均分子量を設定することは、当業者が当然に行う事項である。また、本願明細書には、単に、上記範囲が「好適である」(【0015】)と記載されているのみで、上記範囲に特定する理由、根拠を示す記載、推測が可能な記載は一切なされていない。実施例のポリエステルBについては、上記条件を満たしているか否かすら不明である。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点ではない。

(5)小括
以上のとおり、上記相違点は実質的な相違点ではないから、本件補正発明1は、引用文献に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)審判請求人の主張について
審判請求人は、平成23年3月9日提出の審判請求書の手続補正書(方式)(以下、「請求書」という。)、平成24年11月30日提出の審尋に対する回答書(以下、「回答書」という。)において、概略、次の主張をしている。

主張1:引用文献5(当審注:本審決の「引用文献」)では、不飽和脂肪酸と、グラフト重合脂肪酸、ポリオール及びジカルボン酸との混合物から作製されたアルキド樹脂が開示されており、グラフト重合脂肪酸の形成においても、アルキド樹脂の形成においても、2つの別々に合成されたポリマー(1つはヒドロキシル官能性であり、1つは酸官能性である)を含む、エステル結合を形成する本発明の縮合反応のような反応はない。引用文献5には、予め形成された脂肪酸グラフトコポリマーA及び予め形成されたヒドロキシ官能性のポリエステルBを縮合工程に付するプロセスが記載されていない。(請求書第2頁B.、回答書第3頁下から第1?3行)

主張2:本願発明の酸官能性成分は、脂肪酸とは異なる、ある種の酸官能性オレフィン性不飽和モノマーと非酸官能性オレフィン性不飽和モノマーのコポリマーであり、補正された請求項1及び6の文言は不飽和脂肪酸のグラフトコポリマーを明確に排除している。(請求書第2頁C.)

主張3:引用文献には、引用文献5のアルキド樹脂分散体を、本願発明により製造される縮合樹脂ABで置き換えることについての開示や示唆や動機付けは一切ない。(請求書第2頁C.)

主張4:引用文献5の「透明な溶融物が形成されるまで」という条件では、エステル交換度だけでなく最終的な酸価も制御することができない。本発明では、グラフト重合した脂肪酸コポリマーAの酸価、及び本発明のポリエステルBのヒドロキシル価を選択し、かつそれらの質量を選ぶことにより最終的な酸価を確実に制御し、その最終的な酸価を、単純な方法で予測することができる。予め形成されたポリエステルBが使用される場合にのみこの制御が可能であるが、引用文献5のプロセスでは不可能である。(回答書第2?3頁)

主張5:顔料用分散剤としての使用目的では、選ばれた顔料に応じて得られる縮合樹脂の酸価を調整することが極めて重要である。引用文献5の表1の酸価はごくわずかしか変動せず、異なる種類の各顔料に対する分散剤としては有用ではない。(回答書第2頁下から第10?11行、第4頁第2?4行)

以下、上記主張1?5について、検討する。

ア.主張1について
摘示bには、アルキド樹脂の調製におけるエステル化に関し、先ず脂肪酸、ポリオールおよびジカルボン酸を透明に溶解させてエステル化を行わせ、ついで脂肪酸-メタクリル酸共重合体を添加するのが有利であることとが記載され、摘示e、f及びhには、第1成分である脂肪酸、ポリオール、ジカルボン酸をエステル化して得たエステル化物(本件補正発明1の「成分B」に対応)を、さらに第2成分である脂肪酸-メタクリル酸共重合体C1(本件補正発明1の「成分A」に対応)と反応させることにより、アルキド樹脂を調製する実施例が記載されている。よって、引用文献には、2つの別々に合成されたポリマーである、予め形成されたポリエステルである第1成分のエステル化物(本件補正発明1の「成分B」に対応)と、予め形成された脂肪酸グラフトコポリマーである脂肪酸-メタクリル酸共重合体C1(本件補正発明1の「成分A」に対応)とを、エステル化させる縮合反応が記載されている。なお、脂肪酸-メタクリル酸共重合体が酸官能性であることは、酸価を有することから明らかであり、第1成分のエステル化物がヒドロキシル基を含有する、すなわち、ヒドロキシル官能性であることは、(3)「成分Bについて」に記載したとおりである。
したがって、上記主張1は採用できない。

イ.主張2について
(ア)本件補正発明1には、成分Aとして、不飽和脂肪酸のグラフトコポリマーを排除するとの特定はなされていないから、上記主張2は、特許請求の範囲に基づく主張ではなく、採用できない。
そして、引用発明の実施例における「メタクリル酸」が、本件補正発明1に係る「A-1」の条件を満たし、「メタクリル酸イソブチル」及び「ビニルトルエン」が、本件補正発明1に係る「A-2」の条件を満たしていることは、上記(3)「成分Aについて」に記載したとおりである。
(イ)本願明細書における実施例の「コポリマーAI」の調製に関する記載(【0027】?【0031】)と引用文献の「脂肪酸-メタクリル酸共重合体C1」の調製に関する記載(摘示e)とを比較すると、tert-ブチル過安息香酸(重合開始剤)の使用量が本願明細書では6部、引用文献では3部である以外、用いた成分及び量、反応温度、反応時間、重合変換率、コポリマーの酸価、固有粘度がすべて同一であることから、本願実施例の「コポリマーAI」と引用文献の「脂肪酸-メタクリル酸共重合体C1」とは、同一の化合物であると認められる。したがって、上記主張2は採用できない。(なお、上記【0027】?【0031】の記載のうち、コポリマーAIに使用した成分に関して、【0028】の記載と表1の記載とが一致していないが、【0028】には酸基を含有するオレフィン性不飽和モノマーA1となる成分が記載されていないため、【0028】の記載に誤りがあることは明らかであり、表1の記載が正しい記載であると解するのが自然である。)
(ウ)平成24年11月30日提出の審尋に対する回答書において、審判請求人は自ら、本件補正発明1のコポリマーAを、「本発明のグラフト重合した脂肪酸コポリマーA」、「脂肪酸グラフトコポリマーA」と記載している。

ウ.主張3について
上記(3)に記載したとおり、引用文献(引用文献5)には、顔料と混合して塗料とする水溶性のアルキド樹脂の使用方法が記載されている。

エ.主張4について
引用発明においては、特定の最終的な酸価となるよう制御が行われ、最終的な酸価が本件補正発明1で特定する酸価と重複一致していること、酸価の判明している酸基含有成分とヒドロキシル基を含有する成分とをエステル化させて所期の酸価を有するアルキド樹脂を得るために、ヒドロキシル価を所期の酸価のアルキド樹脂を得ることのできる値とすることが、当業者が当然に行う事項であることは、上記(3)、(4)に記載したとおりである。
コポリマーAの酸価、ポリエステルBのヒドロキシル価の選択、それらの質量を選ぶことにより最終的な酸価を制御し、単純な方法で予測可能との主張は、明細書の記載に基づく主張ではないから採用できない。仮に、当業者の技術常識の範囲内であって、本願明細書から当業者が把握できる事項であるとしても、その場合は、引用文献から当業者が把握できる範囲の事項であるといえるから、実質的な相違点ではない。
予め形成されたポリエステルの使用については、上記ア.に記載のとおりである。

オ.主張5について
(ア)引用発明に係るアルキド樹脂の酸価は、本件補正発明1の酸価として特定される条件と重複一致しており、上記(3)に記載の一致点及び相違点、及び、(4)に記載の判断を左右するものではない。
(イ)本願明細書には、異なる種類の顔料に対する分散剤としての有用性と縮合樹脂の酸価との関係についての記載はないから、上記主張5は、本願明細書の記載に基づく主張ではなく、採用することはできない。

カ.小括
以上のとおりであるから、平成23年3月9日提出の審判請求書の手続補正書(方式)及び平成24年11月30日提出の回答書における審判請求人の主張は、採用することができない。

(7)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記第2.の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
上記第2.のとおり、平成23年1月11日付けの手続補正は、決定をもって却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成21年12月15日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、そのうち、請求項1?3に係る発明(以下、「本願発明1?3」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法であって、該方法は、該顔料および該縮合樹脂ABを混合することを含み、該縮合樹脂は20mg/g?180mg/gの酸価を有し、該縮合樹脂は、酸基を含有しかつ30mg/g?240mg/gの酸価を有する、オレフィン性不飽和モノマーと不飽和脂肪族カルボン酸の二量化またはオリゴマー化によって得られる化合物とのコポリマーから選択される成分Aと、ヒドロキシル基を含有しかつ20mg/g?300mg/gのヒドロキシル価および500g/mol?5,000g/molの数平均モル質量Mnを有するポリエステルBとの縮合によって得られるものであり、該縮合樹脂ABの合成用反応混合物中の該成分Aの質量分率が30%?90%であり、該成分Bの質量分率が70%?10%であり、ただし、この2つの成分の質量分率の合計は常に100%になるものとする、顔料用分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂ABの使用方法。
【請求項2】
酸基を含有するモノマーA1と酸基を有しない不飽和モノマーA2との共(joint)重合により得られるコポリマーを、前記酸基を含有する成分Aとして使用することを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
前記酸基を含有するモノマーA1が、3?13個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸、およびアルキル基中に1?20個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の使用方法。」
なお、請求項3において引用する請求項1には「前記酸基を含有するモノマーA1」の記載がなく、請求項1を引用する請求項2に「酸基を含有するモノマーA1」が記載されていることから、請求項3の「請求項1に記載の使用方法。」は「請求項2に記載の使用方法。」の誤記であると解するのが相当である。

第4.原査定における拒絶の理由の概要
原審において拒絶査定の理由とされた、平成21年6月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由1は、この出願の請求項1?7に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものであり、引用文献5として、以下の刊行物が提示されている。
特開昭64-20274号公報

第5.当審の判断
1.引用文献 特開昭64-20274号公報

2.引用文献の記載事項
平成21年6月11日付け拒絶理由通知書における引用文献5であって、上記第2.3.の引用文献である特開昭64-20274号公報の記載事項は、上記第2.3.(2)(2-1)において、記載した事項と同じである。

3.対比・判断
本願発明3と上記第2.で検討した本件補正発明1との相違は、成分Aに関して、前者が、A1とA2とのコポリマー「である」と特定しているのに対し、後者がA1とA2とのコポリマー「から選択される」と特定している点のみであり、両者に実質的な差違はない。
してみると、本件補正発明1が、上記第2.のとおり、引用文献に記載された発明であれば、本願発明3も同様の理由により、引用文献に記載された発明である。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明3は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-09 
結審通知日 2013-04-15 
審決日 2013-04-26 
出願番号 特願2006-520730(P2006-520730)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米村 耕一  
特許庁審判長 渡辺 仁
特許庁審判官 富永 久子
蔵野 雅昭
発明の名称 顔料濃縮物用の水希釈可能な分散剤としての水希釈可能な縮合樹脂の利用  
代理人 木村 克彦  
代理人 岡部 正夫  
代理人 小林 恒夫  
代理人 岡部 讓  
代理人 齋藤 正巳  
代理人 臼井 伸一  
代理人 高梨 憲通  

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