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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10L
管理番号 1279224
審判番号 不服2011-2839  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-08 
確定日 2013-09-10 
事件の表示 特願2007-511444「天然ガスの液化」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月17日国際公開、WO2005/108890、平成19年12月13日国内公表、特表2007-536404〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、特許法第184条の3第1項の規定により、2005年 4月28日(パリ条約による優先権主張2004年 5月 4日(US)米国)の国際出願日にされたものとみなされる特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成18年11月 6日 翻訳文(願書)提出
平成19年 1月 4日 翻訳文(願書以外)提出
平成19年 2月26日 出願審査請求
同日 手続補正書
平成19年 2月27日 手続補正書
平成22年 1月25日付け 拒絶理由通知
平成22年 5月26日 意見書・手続補正書
平成22年 6月14日付け 拒絶理由通知
平成22年 9月16日 意見書
平成22年10月 6日付け 拒絶査定
平成23年 2月 8日 本件審判請求
平成23年 2月16日付け 手続補正指令(方式)
平成23年 3月18日 手続補正書(審判請求理由補充書)

第2 本願に係る発明について
本願に係る発明は、平成22年 5月26日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるものである。
「メタン及びメタンより重質の炭化水素成分を含有する天然ガス流れを液化するための方法であって、
(a)前記天然ガス流れを加圧下で冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、凝縮流れを形成し;そして
(b)前記凝縮流れを低圧まで膨張させて、液化天然ガス流れを形成する
前記方法において、
(1)前記天然ガス流れを1つ又はそれより多い冷却工程において処理し;
(2)前記冷却した天然ガス流れを少なくとも第1の流れ及び第2の流れに分割し;
(3)前記第1の流れを冷却して実質的にそのすべてを凝縮させ、その後、中圧まで膨張させ;
(4)前記第2の流れを前記中圧まで膨張させ;
(5)前記膨張させた第1の流れ及び前記膨張させた第2の流れを、蒸留塔に送り、そこで、これらの流れを、揮発性の高い蒸気蒸留流れと、前記メタンより重質の炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い留分とに分離し;
(6)蒸気蒸留流れを前記蒸留塔の前記膨張させた第2の流れより低い領域から抜き出し、充分に冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、それによって、残りの蒸気流れと還流流れとを形成し;
(7)前記還流流れを前記蒸留塔にその頂部供給材料として送り;
(8)前記残りの蒸気流れを前記揮発性の高い蒸気蒸留流れと組み合わせて、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性の残留ガス流分を形成し;そして、
(9)前記揮発性の残留ガス流分を加圧下で冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、それにより、前記凝縮流れを形成する
という改良がなされた前記方法。」

第3 原審の拒絶査定の概要
原審において、平成22年6月14日付け拒絶理由通知書で概略以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1?10
・引用文献 国際公開第2002/101307号
米国特許出願公開第2003/0005722号明細書
(備考)
・・(後略)」

<拒絶査定>
「この出願については、平成22年 6月14日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
出願人は意見書において、上記拒絶理由通知書に示した引用文献に記載されている図15及び16の態様が、図1,3,6又は7の態様ではなく、特に図4及び10-14の態様に適応されるべきであることが明示されているから、図15及び16の技術的特徴を図1,3,6又は7に示される態様に組み入れる動機はない旨主張している。
しかしながら、引用文献にも記載されているように、当該技術分野において、天然ガス流れを効率よく液化するために、例えば消費動力や回収率レベル等を相互に勘案して工程を組み合わせることは、当業者が通常に行う創作の範囲内のことであり、引用文献に記載されている図15及び16の態様における技術的特徴を、図1,3,6又は7の態様に適用することを妨げる格別の理由も存しない。
そうすると、引用文献の図1,3,6,7に記載されているような方法において、図15及び16に記載されているような構成を採用することは、当業者が容易に為し得ることであり、このことによる消費動力の低減や回収率の向上という効果も当業者の予測し得る範囲内の効果であり、その程度が格別顕著であるとも認められない。
したがって、出願にの主張は採用することができず、本願の請求項1?10に係る発明は、上記拒絶理由通知書に示したとおり、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。」

第4 当審の判断
当審は、
上記拒絶査定の理由と同一の理由により、本願は、特許法第49条第2号に該当するから、拒絶すべきものである、
と判断する。以下詳述する。

1.刊行物に記載された事項
本審決で引用する刊行物は、以下のとおりである。

刊行物:
1.国際公開第2002/101307号(原査定における「引用文献」)
(国際公開日:2002年12月19日、以下、上記1.を「引用例」という。)

上記引用例には、以下の事項が記載されている。なお、引用例の記載事項の摘示にあたり、翻訳文として、引用例に係る国際出願の本邦における公表公報(特表2004-530858号公報)を用いて、同公報の記載内容及び記載箇所により行う。

(a)
「【請求項5】
メタンと重質炭化水素成分とを含有する天然ガスストリームの液化方法であって、
(a)前記天然ガスを加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させて凝縮ストリームを形成する;及び
(b)前記凝縮ストリームを膨張させて低圧とし前記液化天然ガスストリームを形成する、前記方法において、
(1)前記天然ガスストリームを一つ以上の冷却段階で処理して部分的に凝縮させる;
(2)この部分的に凝縮させた天然ガスストリームを分離して蒸気ストリームと液体ストリームとを提供する;
(3)前記蒸気ストリームを少なくとも第一のガスストリームと第二のガスストリームとに分割する;
(4)前記第一のガスストリームを前記液体ストリームの少なくとも一部と混合して、混合ストリームを形成する;
(5)前記混合ストリームを冷却して実質的にその全てを凝縮させ、その後膨張させて中間圧力とする;
(6)前記第二のガスストリームを膨張させて前記中間圧力とする;
(7)前記液体ストリームの残余部分を全て膨張させて前記中間圧力とする;
(8)膨張させた実質的に凝縮化混合ストリーム、膨張させたガスの第二のストリームと、前記液体ストリームの残余部分とを蒸留カラム内に方向付け、ここで前記ストリームを、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性残渣ガス画分と、前記重質炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い画分とに分離する;及び
(9)前記揮発性残渣ガス画分を加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させ、前記凝縮ストリームを形成する
ことを改良点とする。」(原文第51頁第14行?第52頁第20行)

(b)
「【請求項14】
メタンと重質炭化水素成分とを含有する天然ガスストリームの液化方法であって、
(a)前記天然ガスストリームを加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させて凝縮ストリームを形成する;及び
(b)前記凝縮ストリームを膨張させて低圧とし前記液化天然ガスストリームを形成する、前記方法において、
(1)前記天然ガスストリームを一つ以上の冷却段階で処理して部分的に凝縮させる;
(2)この部分的に凝縮させた天然ガスストリームを分離して第一の蒸気ストリームと第一の液体ストリームとを提供する;
(3)前記第一の蒸気ストリームを膨張させて中間圧力とし、その後接触デバイスへ方向付け、これによって第二の蒸気ストリームと第二の液体ストリームとを形成する;
(4)前記第一の液体ストリームを膨張させて前記中間圧力とする;
(5)前記第二の液体ストリームと前記膨張させた第一の液体ストリームとを蒸留カラムへ方向付け、ここで前記ストリームをより揮発性の高い蒸気蒸留ストリームと、前記重質炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い画分とに分離する;
(6)前記より揮発性の高い蒸気蒸留ストリームをその少なくとも一部を凝縮させるのに十分に冷却し、これによって第三の蒸気ストリームと第三の液体ストリームとを形成する;
(7)前記第三の液体ストリームの一部を前記蒸留カラムへの上部供給材料として前記蒸留カラムへ方向付ける;
(8)前記膨張させた第一の蒸気ストリームの少なくとも一部を、前記接触デバイス中、前記第三の液体ストリームの残余部分の少なくとも一部と完全に接触させる;
(9)前記第二の蒸気ストリームを前記第三の蒸気ストリームと混合して、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性残渣ガス画分を形成する;及び
(10)前記揮発性残渣ガス画分を加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させ、それによって前記凝縮ストリームを形成する
ことを改良点とする。」(原文第63頁第5行?第64頁第17行)

(c)
「【請求項22】
メタンと重質炭化水素成分とを含有する天然ガスストリームの液化方法であって、
(a)前記天然ガスストリームを加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させて凝縮ストリームを形成する;及び
(b)前記凝縮ストリームを膨張させて低圧とし前記液化天然ガスストリームを形成する、前記方法において、
(1)前記天然ガスストリームを一つ以上の冷却段階で処理して部分的に凝縮させる;
(2)前記部分的に凝縮させた天然ガスストリームを分離して、第一の蒸気ストリームと第一の液体ストリームとを提供する;
(3)前記第一の蒸気ストリームと前記第一の液体ストリームとを膨張させて中間圧力とする;
(4)前記膨張させた第一の蒸気ストリームと前記膨張させた第一の液体ストリームとを蒸留カラムの中間カラム供給材料位置に方向付け、ここで前記ストリームをより揮発性の高い蒸気蒸留ストリームと、前記重質炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い画分とに分離する;
(5)蒸気蒸留ストリームを、前記膨張させた第一の蒸気ストリームより下の前記蒸留カラムの領域から抜き出し、その一部を凝縮させるのに十分に冷却し、それによって第二の蒸気ストリームと第二の液体ストリームとを形成する;
(6)前記蒸気蒸留ストリームを抜き出すのと実質的に同一領域の供給位置で、前記液体ストリームの一部を前記蒸留カラムへのもう一つの供給材料として前記蒸留カラムに供給する;
(7)前記膨張させた第一の蒸気ストリームの少なくとも一部を、前記蒸留カラム中で前記第二の液体ストリームの残余部分の少なくとも一部と完全に接触させる;
(8)前記第二の蒸気ストリームを前記より揮発性の高い蒸気蒸留ストリームと混合して、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性残渣ガス画分を形成する;及び
(9)前記揮発性残渣ガス画分を加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させ、それによって前記凝縮ストリームを形成する
ことを改良点とする。」(原文第73頁第22行?第75頁第12行)

(d)
「【背景技術】
【0001】
発明の背景
本発明は、高純度のメタンの液化天然ガス(LNG)ストリームとメタンより重い炭化水素を主に含む液体ストリームとを製造するために天然ガスまたは他のメタンリッチなガスストリームを処理する方法に関する。」(原文第1頁第4行?第8行)

(e)
「【0005】
本発明は、通常、天然ガスを液化すると同時に、メタンより重い炭化水素類から主になる液体ストリーム、たとえばエタン、プロパン、ブタン及び重質炭化水素成分から構成される天然ガス液体(NGL)、プロパン、ブタン及び重質炭化水素成分から構成される液化石油ガス(LPG)、またはブタン及び重質炭化水素成分から構成される凝縮物などを副産物として製造することに関する。副産物の液体ストリームの製造には二つの重要な利点:生成したLNGが高メタン純度であること、そして副生成物の液体は、他の多くの目的に関して使用し得る有用な生成物であるという点がある。本発明に従って処理すべき天然ガスストリームの典型的な分析結果は、モル%概算で、約84.2%メタン、7.9%エタン及び他のC_(2)成分、4.9%プロパン及び他のC_(3)成分、1.0%イソブタン、1.1%ノルマルブタン、0.8%ペンタンと、残余は窒素と二酸化炭素であろう。硫黄を含有するガスも含まれることがある。」(原文第2頁第19行?第3頁第10行)

(f)
「【0007】
天然ガスストリームを液化するのに使用する方法にもかかわらず、メタンリッチなストリームを液化する前に、通常、メタンよりも重い炭化水素の大部分を除去しなければならない。この炭化水素除去段階の理由は非常に多く、LNGストリームの発熱量を制御しなければならないこと、それ自体生成物としてその重質炭化水素成分の価値があることなどがある。意外にも、今日までこの炭化水素除去段階の効率については殆ど注目されてこなかった。
【0008】
本発明に従って、LNG液化プロセスに炭化水素除去段階を注意深く集約させることによって、従来プロセスよりもかなり少ないエネルギーでLNGと個々の重質炭化水素液体生成物とを生産することができる。低圧でも適用可能であるが、本発明は400?1500psia[2,758?10,342kPa(a)]以上の範囲で供給ガスを処理すると特に都合がよい。」(原文第4頁第13行?第25行)

(g)
「【0010】
・・(中略)・・
発明の詳細な説明
実施例1
図1を参照して、本発明に従ったプロセスの説明から始める。この図では、天然ガス供給ストリーム中の大部分のエタンと重質成分とを含むNGL副生成物を製造するのが望ましい。本発明のこのシミュレーションにおいて、入口ガスはストリーム31として90゜F[32℃]及び1285psia[8,860kPa(a)]でプラントに入る。もし入口ガスが生成物ストリームを妨げて規格に合わせないようにするある濃度の二酸化炭素及び/または硫黄化合物を含む場合、これらの化合物は、供給ガスを好適に予備処理(示されていない)することによって除去する。さらにこの供給ストリームは、通常、極低温条件下で水和物(氷)が形成しないように脱水する。この目的に関しては、通常、固体乾燥剤が使用されてきた。
【0011】
供給ストリーム31を、-68゜F[-55℃]で冷媒ストリームとデメタナイザー・サイド・リボイラー(demethanizer side reboiler)液で熱交換によって熱交換器10で冷却する。全ての場合において、熱交換器10は個々の熱交換器の群であるか、単一のマルチパス熱交換器、またはその任意の組合せの代表例であることに留意されたい。(表示の冷却設備に関し二つ以上の熱交換器を使用するかどうかの判断は、入口ガス流速、熱交換器のサイズ、ストリーム温度などを含む多くの因子に依存するが、これらに限定されない)冷却ストリーム31aは-30゜F[-34℃]及び1278psia[8,812kPa(a)]で分離器11に入り、ここで蒸気(ストリーム32)は凝縮液体(ストリーム33)から分離される。
【0012】
分離器11からの蒸気(ストリーム32)を二つのストリーム34と36に分割する。全蒸気の約20%を含むストリーム34を凝縮液体、ストリーム33と混合してストリーム35を形成する。混合ストリーム35は冷媒ストリーム71eと一緒に熱交換関係にある熱交換器13を通過し、ストリーム35aを冷却し、実質的に凝縮させる。次いで実質的に凝縮されたストリーム35aを-120゜F[-85℃]で、膨張弁14などの適当な膨張デバイスを通してフラッシュ膨張させて分留塔19の操作圧力(約465psia[3,206pKa(a)])にする。膨張させている間に、ストリームが一部蒸発して、ストリーム全体が冷却される。図1に示されているプロセスでは、膨張弁14を離れる膨張ストリーム35bは-122゜F[-86℃]の温度に到達し、分留塔19の脱メタン化区画19bの中間供給位置に供給される。
【0013】
分離器11からの蒸気の残り80%(ストリーム36)は、膨張仕事機械15に入り、そこで機械的エネルギーが高圧供給材料のこの部分から取り出される。機械15はこの蒸気を約1278psia[8,812kPa(a)]から塔の操作圧力まで実質的に等エントロピー的に膨張させ、膨張ストリーム36aを約-103゜F[-75℃]の温度に膨張仕事によって冷却する。通常利用可能なエキスパンダーは、理想の等エントロピー膨張で理論的に利用可能な仕事の80?85%のオーダーで回復可能である。回復された仕事は、たとえば塔頂部ガス(ストリーム38)を再圧縮するのに使用し得る延伸圧縮機(たとえばアイテム16)を駆動するのによく使用される。膨張され、部分的に凝縮されたストリーム36aを、下部の中間カラム供給点で蒸留カラム19に供給材料として供給する。
【0014】
分留塔19内のデメタナイザーは、複数の垂直に配置されたトレー、1つ以上の充填床、またはトレーと充填材との組合せを含む慣用の蒸留カラムである。天然ガス処理プラントによく見られるように、この分留塔は二つの区画から構成されていてもよい。上部区画19aは分離器であり、ここで上部供給材料をそれぞれ蒸気と液体部分とに分割し、下部蒸留区画または脱メタン化区画19bから上昇する蒸気を(もしあれば)上部供給材料の蒸気部分と混合して、冷デメタナイザー塔頂部蒸気(ストリーム37)を形成し、これは-135゜F[-93℃]で塔頂部を出る。下部の脱メタン化区画19bはトレー及び/または充填材を含み、下降する液体と上昇する蒸気との間に必要な接触をもたらす。この脱メタン化区画は一つ以上のリボイラ(たとえばリボイラ20)も含み、これはカラムを降流する液体の一部を加熱且つ気化させて、カラムを昇流するストリッピング蒸気を提供する。液体生成物ストリーム41は、底部生成物のモルベースでメタン:エタン比が0.020:1の典型的な規格(specification)をベースとして、115゜F[46℃]で塔の底部を出る。
【0015】
デメタナイザー塔頂部蒸気(ストリーム37)を熱交換器24で90゜F[32℃]に温め、温暖デメタナイザー塔頂部蒸気の一部を抜き取ってプラント用の燃料ガス(ストリーム48)として供給する。(抜き取らなくてはならない燃料ガスの量は、たとえばこの実施例での冷媒圧縮機64、66及び68等のプラントのガス圧縮機を駆動させるエンジン及び/またはタービンに必要な燃料によって主に決定される)温暖デメタナイザー塔頂部蒸気の残余(ストリーム38)は、膨張機械15、61及び63によって駆動される圧縮機16によって圧縮される。流出冷却器(discharge cooler)25で100゜F[38℃]に冷却した後、ストリーム38bを冷デメタナイザー塔頂部蒸気、ストリーム37で相互交換(cross exchange)によって熱交換器24で-123゜F[-86℃]に冷却する。
【0016】
次いでストリーム38cは熱交換器60に入り、冷媒ストリーム71dによりさらに冷却される。中間温度に冷却した後、ストリーム38cを二つの部分に分割する。第一の部分、ストリーム49を熱交換器60内で-257゜F[-160℃]にさらに冷却して凝縮させ過冷却させて、そしてストリームは膨張仕事機械61に入り、ここで機械的エネルギーがストリームから取り出される。この機械61は液体ストリーム49を約562spia[3,878kPa(a)]の圧力からLNG貯蔵圧力(15.5psia[107kPa(a)])、やや大気圧より上に実質的に等エントロピー的に膨張させる。膨張仕事によって膨張させたストリーム49aを約-258゜F[-161℃]の温度に冷却して、LNG貯蔵タンク62に方向付け、LNG生成物(ストリーム50)を保持する。
【0017】
ストリーム39、ストリーム38cのもう一つの部分を-160゜F[-107℃]で熱交換器から抜き出し、膨張弁17等の適当な膨張デバイスで分留塔19の操作圧力にフラッシュ膨張させる。図1に示されているプロセスでは、膨張ストリーム39aでは蒸発はないので、その温度はほんの少し-161゜F[-107℃]に下がって、膨張弁17を出る。次いで膨張ストリーム39aを分留塔19の上部領域の分離器区画19aに供給する。そこで分離された液体は脱メタン化区画19bへの上部供給材料になる。
【0018】
ストリーム35と38cの冷却は全て、閉鎖循環式冷却ループによって提供する。このサイクル用の作動流体(working fluid)は炭化水素と窒素との混合物であり、この混合物の組成は、利用可能な冷却媒体を使用して適正な圧力で凝縮させつつ必要な冷媒温度を提供するのに必要に応じて調節される。この場合、冷却水を使用して凝縮すると想定されたので、窒素、メタン、エタン、プロパンと重質炭化水素とから構成される冷媒混合物を図1のプロセスのシミュレーションで使用する。ストリームの組成は、おおよそのモルパーセントで、7.5%窒素、41.0%メタン、41.5%エタン及び10.0%プロパンで、残余は重質炭化水素である。
【0019】
冷媒ストリーム71は100゜F[38℃]及び607psia[4,185kPa(a)]で流出冷却器69を離れる。このストリームは熱交換器10に入り、-31゜F[-35℃]に冷却され、部分的に温められた膨張冷媒ストリーム71fと他の冷媒ストリームによって部分的に凝縮される。図1のシミュレーションに関しては、これらの他の冷媒ストリームは種々の温度及び圧力レベルの市販品の品質のプロパン冷媒であることを前提とした。次いで、部分的に凝縮された冷媒ストリーム71aは、部分的に温められた膨張冷媒ストリーム71eによってさらに-114゜F[81℃]に冷却し、凝縮させ、冷媒(ストリーム71b)を部分的に過冷却するために熱交換器13に入る。この冷媒は、膨張冷媒ストリーム71dによって熱交換器60で-257゜F[-160℃]にさらに過冷却される。この過冷却液体ストリーム71cは膨張仕事機械63に入り、そこでストリームが約586psia[4,040kPa(a)]?約34psia[234kPa(a)]の圧力へ実質的に等エントロピー的に膨張するにつれて、機械的エネルギーがストリームから取り出される。膨張している間、ストリームの一部が気化して、ストリーム全体を-263゜F[-164℃](ストリーム71d)に冷却する。次いで膨張ストリーム71dは熱交換器60、13及び10に入り、そこで気化し過熱されるにつれて、ストリーム38c、ストリーム35と冷媒(ストリーム71、71a及び71b)を冷却する。
【0020】
過熱冷媒蒸気(ストリーム71g)は93゜F[34℃]で熱交換器10を離れ、三段階で617psia[4,254kPa(a)]に圧縮される。三つの圧縮段階(冷媒圧縮機64、66及び68)はそれぞれ予備電源により駆動され、冷却器(流出冷却器65、67及び69)に進んで圧縮熱を除去する。流出冷却器69からの圧縮ストリーム71は熱交換器10に戻って、サイクルが完了する。
【0021】
図1に示されたプロセスのストリーム流速とエネルギー消費の概要を以下の表に示す。
【0022】
【表1】


【0023】
LNG製造プロセス効率は、通常、全冷却圧縮動力対全液体製造速度の比である、必要な「比動力消費(specific power consumption)」を使用して比較する。LNGを製造するための従来プロセスに関し比動力消費の公開情報では、0.168HP-Hr/Lb[0.276kW/-時間/kg]?0.182HP-Hr/Lb[0.300kW/-時間/kg]の範囲を示しており、これはLNG製造プラントの年間340日の操業因子に基づくものと考えられる。これと同一ベースで、本発明の図1の態様の比動力消費は0.161HP-Hr/Lb[0.265kW/-時間/kg]であり、これは従来プロセスよりも4?13%も効率が改良している。さらに、従来プロセスの比動力消費は、本発明のこの実施例で示されているようにNGL(C_(2)及び重質炭化水素)液体ストリームではなく、比較的低い回収レベルでLPG(C_(3)及び重質炭化水素)または凝縮物(C_(4)及び重質炭化水素)液体ストリームだけを同時に製造することをベースとしていることに留意しなければならない。従来プロセスは、LPGストリームまたは凝縮物ストリームの代わりにNGLストリームを同時に製造するためにかなりの冷却動力が必要である。」(原文第8頁第17行?第16頁第14行)

(h)
「【0038】
・・(中略)・・
実施例3
LNG生成物に関する規格によって供給ガス中に含まれるエタンが全てLNG生成物中に回収できるならば、またはエタンを含有する液体副生成物の市場がないならば、図4に示されているような本発明の別の態様を使用してLPG副生成物ストリームを製造することができる。図4に示されているプロセスで検討された入口ガス組成及び条件は、図1及び3のものと同一である。従って図4のプロセスは、図1及び3に示された態様と比較することができる。
【0039】
図4のプロセスのシミュレーションにおいて、入口ガスはストリーム31として90゜F[32℃]及び1285psia[8,860kPa(a)]でプラントに入り、-46゜F[-43℃]で冷媒ストリーム及びフラッシュ分離器液体と熱交換により熱交換器10で冷却される(ストリーム33a)。この冷却ストリーム31aは-1゜F[-18℃]及び1278psia[8,812kPa(a)]で分離器11に入り、ここで蒸気(ストリーム32)を凝縮液体(ストリーム33)から分離する。
【0040】
分離器11からの蒸気(ストリーム32)は膨張仕事機械15に入り、ここで機械的エネルギーが高圧供給材料のこの部分から取り出される。この機械15は約1278psia[8,812kPa(a)]の圧力から約440psia[3,034kPa(a)]の圧力(分離器/吸着塔18の操作圧力)へ蒸気を実質的に等エントロピー的に膨張させ、膨張仕事によって膨張ストリーム32aを約-81゜F[-63℃]の温度に冷却する。膨張し部分的に凝縮されたストリーム32aは、分離器/吸着塔18の下部領域の吸着区画18bに供給される。膨張ストリームの液体部分は、吸着区画から下降する液体と混ざって、混合液体ストリーム40は分離器/吸着塔18の底部を-86゜F[-66℃]で出る。膨張ストリームの蒸気部分は吸着区画を通って上昇し、下降する冷液体と接触してC3成分と重質成分とを凝縮且つ吸収する。
【0041】
分離器/吸着塔18は、垂直に間隔を開けた複数のトレーと、一つ以上の充填床と、またはトレーと充填材との組合せを含む慣用の蒸留カラムである。天然ガス処理プラントでよく見られることであるが、分離器/吸着塔は二つの区画からなっていてもよい。上部区画18aは分離器であり、ここで上部供給材料中に含まれる全ての蒸気がその対応する液体部分から分離され、ここで下部蒸留または吸着区画18bから上昇する蒸気は上部供給材料の蒸気部分(もしあれば)と混合して冷蒸留ストリーム37を形成し、これは塔の上部を出る。下部の吸着区画18bはトレー及び/または充填材を含み、下降する液体と上昇する蒸気との間に必要な接触を提供して、C_(3)成分と重質成分とを凝縮且つ吸着する。
【0042】
分離器/吸着塔18の底部からの混合液体ストリーム40をポンプ26によって熱交換器13に輸送し、そこでデエタナイザー(deethanizer)塔頂部(ストリーム42)と冷媒(ストリーム71a)とを冷却するに連れて、それ(ストリーム40a)は加熱される。混合液体ストリームは-24゜F[-31℃]に加熱され、部分的にストリーム40bを気化したあと、中間カラム供給材料としてデエタナイザー19に供給される。分離器液体(ストリーム33)を膨張弁12によってデエタナイザー19の操作圧力よりもやや上にフラッシュ膨張させ、ストリーム33を-46゜F[-43℃]に冷却してから、上記の如く入ってくる供給材料ガスを冷却する。いまは85゜F[29℃]のストリーム33bは下方の中間カラム供給点でデエタナイザー19に入る。デエタナイザーでは、ストリーム40bと33bはそのメタンとC_(2)成分とがストリッピングされる。約453psia[3,123kPa(a)]で操作する塔19のデエタナイザーは、垂直に間隔を開けた複数のトレー、一つ以上の充填床、またはトレーと充填材との組合せを含む慣用の蒸留カラムでもある。このデエタナイザー塔は上部の分離器区画19aと下部の脱エタン化区画19bとからなっていてもよく、上部の分離器区画19aでは、上部供給材料中に含まれる全ての蒸気をその対応する液体部分から除去し、下部蒸留または脱エタン化区画19bから上がってくる蒸気を上部供給材料の(もしあれば)蒸気部分と混合して、塔の上部を出る蒸留ストリーム42を形成する;下部の脱エタン化区画19はトレー及び/または充填材を含み、下降する液体と上昇する蒸気との間に必要な接触を提供する。脱エタン化区画19bは、一つ以上のリボイラ(たとえばリボイラ20)も含み、これはカラム底部で液体の一部を加熱且つ気化させて、ストリッピング蒸気を提供し、これはカラムを昇流してメタンとC_(2)成分との液体生成物、ストリーム41をストリッピングする。底部液体生成物の典型的な規格は、モルベースでエタン対プロパン比0.020:1である。液体生成物ストリーム41は214゜F[101℃]でデエタナイザーの底部を出る。
【0043】
デエタナイザー19内の操作圧力は、分離器/吸着塔18の操作圧力よりもやや上に保持する。これによってデエタナイザー塔頂部蒸気(ストリーム42)が熱交換器13内を、次いで分離器/吸着塔18の上部区画に流れることができる。熱交換器13では、-19゜F[-28℃]でデエタナイザー塔頂部は分離器/吸着塔18の底部からの混合液体ストリーム(ストリーム40a)と熱交換関係に導かれ、冷媒ストリーム71eをフラッシュし、ストリームを-89゜F[-67℃]に冷却し(ストリーム42a)、部分的に凝縮させる。この部分的に凝縮させたストリームは還流ドラム22に入り、ここで凝縮液体(ストリーム44)は未凝縮蒸気(ストリーム43)から分離される。ストリーム43は分離器/吸着器の上部領域を離れる蒸留蒸気ストリーム(ストリーム37)と混合して、冷残渣ガスストリーム47を形成する。凝縮液体(ストリーム44)はポンプ23によって高圧に汲み上げられ、同時にストリームは二つの部分に分割される。一方の部分ストリーム45は分離器/吸着塔18の上部分離器区画に輸送されて、吸着区画内を上昇する蒸気と接触する冷液体として機能する。もう一方は還流ストリーム46としてデエタナイザー19に供給されて、-89゜F[-67℃]で上部供給点に流れる。
【0044】
冷残渣ガス(ストリーム47)は熱交換器24内で-94゜F[-70℃]から94゜F[34℃]に温められ、一部(ストリーム48)が抜き出されてプラント用燃料ガスとして機能する。温暖残渣ガスの残余(ストリーム49)は圧縮機16によって圧縮される。流出冷却器25内で100゜F[38℃]に冷却された後、ストリーム49bを熱交換器24内で冷残渣ガス、ストリーム47で相互交換によりさらに-78゜F[-61℃]に冷却する。
【0045】
次いでストリーム49cは熱交換器60に入り、冷媒ストリーム71dにより-255゜F[-160℃]にさらに冷却されて、ストリームを凝縮且つ過冷却し、それでストリームは膨張仕事機械61に入り、そこで機械的エネルギーがストリームから取り出される。この機械61は液体ストリーム49dを約648psia[4,465kPa(a)]の圧力から、大気圧よりもやや上のLNG貯蔵圧力(15.5psia[107kPa(a)])に実質的に等エントロピー的に膨張させる。この膨張仕事によって膨張ストリーム49cを約-256゜F[-160℃]の温度に冷却し、LNG生成物(ストリーム50)を保持するLNG貯蔵タンク62に向ける。
【0046】
図1及び図3のプロセスと同様に、閉鎖サイクル冷却ループによって、ストリーム42の冷却の大部分とストリーム49cの冷却の全てが提供される。図4のプロセスに関するサイクルで作動流体として使用したストリームの組成は、おおよそのモルパーセントで、8.7%窒素、30.0%メタン、45.8%エタン及び11.0%プロパンで、残余は重質炭化水素である。冷媒ストリーム71は100゜F[38℃]及び607psia[4,185kPa(a)]で流出冷却器69を離れる。これは熱交換器10に入り、-17゜F[-27℃]に冷却され、部分的に温められた膨張冷媒71fにより及び他の冷媒ストリームによって部分的に凝縮される。図4のシミュレーションに関しては、これら他の冷媒ストリームは三つの異なる温度及び圧力レベルで市販品質のプロパン冷媒であると仮定される。次いで部分的に凝縮された冷媒ストリーム71aは熱交換器13に入り、部分的に温められた膨張冷媒ストリーム71eによってさらに-89゜F[-67℃]に冷却され、さらに冷媒を凝縮させる(ストリーム71b)。この冷媒は完全に凝縮され、膨張冷媒ストリーム71dによって熱交換器60内で-255゜F[-160℃]に過冷却される。過冷却液体ストリーム71cは膨張仕事機械63に入り、そこで約586psia[4,040kPa(a)]から約34psia[234kPa(a)]の圧力に実質的に等エンタルピー的に膨張するに連れて、機械的エネルギーがストリームから取り出される。膨張の間に、ストリームの一部が気化し、ストリーム全体を-264゜F[-164℃]に冷却する(ストリーム71d)。次いで膨張ストリーム71dは熱交換器60、13及び10に再び入って、気化且つ過熱されるにつれて、ストリーム49c、ストリーム42及び冷媒(ストリーム71、71a及び71b)を冷却する。
【0047】
過熱冷媒蒸気(ストリーム71g)は90゜F[32℃]で熱交換器10を離れ、三段階で617psia[4,254kPa(a)]に圧縮される。三つの圧縮段階(冷媒圧縮機64、66及び68)はそれぞれ追加の電源により駆動され、冷却器(流出冷却器65、67及び69)に続き圧縮熱を除去する。流出冷却器69からの圧縮ストリーム71は熱交換器10に戻って系は完了する。
【0048】
図4に示したプロセスのストリーム流速及びエネルギー消費の概要を以下の表に示す。
【0049】
【表3】


【0050】
LNG製造プラントが1年に340日の操業因子と仮定すると、本発明の図4の態様の比動力消費は0.143HP-Hr/Lb[0.236kW-Hr/Kg]である。従来プロセスと比較して、改善効率は図4の態様に関しては17?27%である。
【0051】
図1及び図3の態様と比較して、本発明の図4の態様は生成した液体の単位当たり6%?11%低い動力が必要である。かくして、利用可能な圧縮動力の所定量に関しては図4の態様は、LPG副生成物としてC_(3)及び重質炭化水素を回収することにより、図1の態様よりも約6%多い天然ガス、または図3の態様よりも約11%多い天然ガスを液化することができる。特定の適用に関して本発明の図4の態様と図1または図3の態様との選択は、(図1と図3の態様によって生成したLNGの発熱量は図4の態様によって生成したものよりも低いので)通常、NGL生成物中の重質炭化水素の金銭的価値対LNG生成物中のその対応する値により、またはLNG生成物に関する発熱量規格により決定される。」(原文第24頁第7行?第33頁第12行)

(i)
「【0063】
・・(中略)・・
他の態様
当業者は、所定のプラントの場所での需要に最も合うように、NGLストリーム、LPGストリームまたは凝縮物ストリームを同時に製造できるように全てのタイプのLNG液化プラントで使用するために本発明を適合させ得ることを理解するだろう。さらに、液体副生成物ストリームを回収するために、種々のプロセス配置を使用できることを理解するだろう。たとえば図1及び図3の態様は、実施例1及び2に記載したようなNGLストリームよりもむしろ、液体副生成物ストリームとしてLPGストリームまたは凝縮物ストリームを回収するために適合させることができる。図4の態様は、実施例3に記載の如くLPG副生成物を製造するよりも供給材料ガスに含まれるC_(2)成分のかなりの画分を含むNGLストリームを回収するため、または供給材料ガス中に含まれるC4及び重質成分だけを含有する凝縮物ストリームを回収するために適合させることができる。図5の態様は、実施例4に記載の如く凝縮物副生成物を製造するよりも供給材料ガスに含まれるC_(2)成分のかなりの画分を含むNGLストリームを回収するため、または供給材料中に含まれるC_(3)成分のかなりの画分を含有するLPGストリームを回収するために適合させることができる。
【0064】
図1、3、4及び5は、示された処理条件に関する本発明の好ましい態様を示す。図6?図21は、特定の適用に関して検討され得る本発明の別の態様を表す。図6及び7に示されているように、分離器11からの凝縮液体(ストリーム33)の全てまたは一部を、熱交換器13に流れる分離器蒸気(ストリーム34)の一部と一緒に混合するよりも、むしろ別々に下部中間カラム供給材料位置で分留塔19に供給することができる。図8は、その比動力消費が幾らか高いが、図1及び図6の態様よりも装置が少なくてよい本発明の別の態様を示す。同様に、図9は、高い比動力消費を犠牲にして図3及び図7の態様よりも装置が少なくてよい本発明の別の態様を示す。図10?14は、その比動力消費が高いが、図4の態様よりも装置が少なくてよい本発明の別の態様を示す。(図10?図14に示されているように、たとえばデエタナイザー19などの蒸留カラムまたは系は、再沸騰吸着材塔デザインと還流再沸騰塔デザインの両方を含むことに留意されたい)図15及び図16は、図4と図10?図14の分離器/吸着材塔18とデエタナイザー19の機能を一つの分留カラム19に組み合わせる本発明の別の態様を示す。供給材料ガス中の重質炭化水素の質と供給材料ガス圧とに依存して、熱交換器10を離れる冷却供給材料ストリーム31aは全く液体を含んでいないので[露点より上であるか、またはクリコンデンバー(criocondenbar)を超えているので]、図1及び3?16に示されている分離器11は必要ではなく、冷却供給材料ストリームは膨張仕事機械15などの適当な膨張デバイスに直接流れることができる。
【0065】
凝縮及び過冷却用に熱交換器60に供給する前に、液体副生成物ストリーム(図1、3、6?11、13及び14のストリーム37、図4、12、15及び16のストリーム47、並びに図5のストリーム43)を回収した後に残存するガスストリームの処置は多くの方法で実施することができる。図1及び3?16のプロセスにおいて、ストリームは加熱され、一つ以上の膨張仕事機械から誘導されたエネルギーを使用して高圧に圧縮され、流出冷却器で部分的に冷却され、次いで元のストリームとの相互交換によりさらに冷却される。図17に示されているように、幾つかの応用では、たとえば外部電源により駆動される追加の圧縮機59を使用して、ストリームを高圧に圧縮するのが好ましい。図1及び3?16の破線の装置(熱交換器24及び流出冷却器25)により示されているように、状況によっては、熱交換器60に入る前に(冷媒圧縮機64、66及び68の動力消費が増加し、熱交換器60の冷却負荷が多くなるのを犠牲にして)圧縮ストリームの予備冷却を減らしたり、省略することによって設備の資本コストを軽減させることが好ましい。そのような場合、圧縮機を離れるストリーム49aは、図18に示されるように熱交換器24に直接流れるか、または図19に示されているように熱交換器60に直接流れることができる。膨張仕事機械を高圧供給材料ガスのどの部分の膨張にも使用しない場合、図20により示されている圧縮機59などの外部電源により駆動される圧縮機を圧縮機16の代わりに使用することができる。他の場合ではストリームの圧縮を全く妥当と考えられないので、ストリームは図21に示されている熱交換器60並びに図1及び3?16に示されている破線の装置(熱交換器24、圧縮機16及び流出冷却器25)に直接流れる。プラント燃料ガス(ストリーム48)が抜き出される前にストリームを加熱するために熱交換器24が備えられない場合、図19?21に示されているように、必要な熱を供給するためにユーティリティーストリーム(utility stream)またはもう一つのプロセスストリームを使用して、燃料ガスを消費する前に燃料ガスを温めるために追加のヒーター58が必要かもしれない。ガス組成、プラントのサイズ、所望の副生成物ストリーム回収率レベル、及び利用可能な装置などの因子を全て考慮に入れなければならないので、これらのような選択は通常、適用毎に評価しなければならない。
【0066】
本発明に従って、LNG製造区画への供給材料ストリーム及び入口ガスストリームの冷却は多くの方法で実施することができる。図1、3及び6?9のプロセスでは、入口ガスストリーム31は、分留塔19からの塔液体と外部冷媒ストリームにより冷却且つ凝縮される。図4、5及び10?14では、フラッシュ分離器液体を外部冷媒ストリームと一緒にこの目的に関して使用する。図15及び16では、外部冷媒ストリームと一緒にこの目的に関して塔液体及びフラッシュ化分離器液体を使用する。図17?21では、外部冷媒ストリームのみを使用して入口ガスストリーム31を冷却する。しかしながら、図4、5、10及び11に示されているように、冷プロセスストリームを使用して高圧冷媒(ストリーム71a)を幾らか冷却することもできよう。さらに、単数または複数のストリームよりも冷たい任意のストリームを使用することができる。たとえば、分離器/吸着塔19または分留塔19からの蒸気側流(side draw)を冷却用に抜き出し使用することができよう。プロセス熱交換用の塔の液体及び/または蒸気の使用及び分配、並びに入口ガス及び供給材料ガス冷却用の熱交換器の特定の配置は、それぞれ特定の用途に関して、並びに具体的な熱交換操作用のプロセスストリームの選択に関して評価しなければならない。冷却源の選択は、供給ガス組成及び条件、プラントのサイズ、熱交換器のサイズ、潜在的冷却源温度などを含む多数の因子に依存しようが、これらに限定されない。当業者は、上記冷却源または冷却方法の任意の組合せを使用して、単数または複数の所望の供給材料ストリーム温度を得ることができる。
【0067】
さらに、LNG製造区画に入口ガスストリーム及び供給材料ストリームを供給する追加の外部冷却は、種々の方法で実施することもできる。図1及び3?21では、高レベルの外部冷却に関しては単一成分の冷媒の沸騰が想定され、低レベルの外部冷却に関しては多成分の冷媒の沸騰が想定され、単一成分の冷媒を使用して多成分冷媒ストリームを予備冷却する。あるいは高レベル冷却と低レベル冷却のいずれをも、順に低い沸点をもつ単一成分冷媒(則ちカスケード冷却)または、順に低い蒸発圧力で単一成分冷媒を使用して実施することができる。もう一つには、高レベル冷却と低レベル冷却のいずれをも使用して、必要な冷却温度を提供するように調節されたそれぞれの組成をもつ多成分冷媒ストリームを使用して実施することができる。外部冷却を提供するための方法の選択は、供給ガス組成及び条件、プラントのサイズ、圧縮機ドライバーのサイズ、熱交換器のサイズ、周囲ヒートシンク温度などの多くの因子に依存しようが、これらに限定されない。当業者は、上記の外部冷却を提供するための方法の任意の組合せを使用して、単数または複数の所望の供給材料ストリーム温度を得ることができる。
【0068】
熱交換器60を離れる凝縮液体ストリーム(図1、6及び8のストリーム49、図3、4、7及び9?16のストリーム49d、図5、19及び20のストリーム49b、図17のストリーム49e、図18のストリーム49c並びに図21のストリーム49a)の過冷却によって、LNG貯蔵タンク62の操作圧力にストリームを膨張させる間に発生し得るフラッシュ蒸気の量を軽減または省略する。これは通常、フラッシュガス圧縮の必要性を省略することによってLNGを製造するための比動力消費を軽減する。しかしながら、状況によっては、発生し得る全てのフラッシュガスを処分するためにフラッシュガス圧縮または他の手段を使用して、及び熱交換器60のサイズを小さくすることによって設備の資本コストを軽減するのが好ましい。
【0069】
個々のストリーム膨張を特定の膨張デバイスで表現したが、それぞれの場合に応じて別の膨張手段を使用することができる。たとえば、条件によっては実質的に凝縮された供給材料ストリーム(図1、3、6及び7のストリーム35a)または中間圧力還流ストリーム(図1、6及び8のストリーム39)の膨張仕事を保証することができる。さらに、熱交換器60を離れる過冷却液体ストリーム(図1、6及び8のストリーム49、図3、4、7及び9?16のストリーム49d、図5、19及び20のストリーム49b、図17のストリーム49e、図18のストリーム49c並びに図21のストリーム49a)の膨張仕事の代わりに等エンタルピー的フラッシュ膨張を使用することができるが、膨張の間にフラッシュ蒸気が形成するのを防ぐために熱交換器60内でもっと過冷却するか、または発生したフラッシュ蒸気を処理するためにフラッシュ蒸気圧縮または他の手段を加えることが必要であろう。同様に、熱交換器60を離れる過冷却高圧冷媒ストリーム(図1及び3?21のストリーム71c)の膨張仕事の代わりに等エンタルピー的フラッシュ膨張を使用することができ、これによって冷媒を圧縮するために動力消費が増大する。」
(原文第40頁第18行?第46頁第18行)

(j)【図1】(公報第64頁左上欄、原文図面頁第1/21頁)




(k)【図4】(公報第64頁右下欄、原文図面頁第4/21頁)




(l)【図15】(公報第67頁左下欄、原文図面頁第15/21頁)




2.本願発明についての検討

(1)引用例に記載された発明
上記引用例には、
「メタンと重質炭化水素成分とを含有する天然ガスストリームの液化方法であって、
(a)前記天然ガスを加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させて凝縮ストリームを形成する;及び
(b)前記凝縮ストリームを膨張させて低圧とし前記液化天然ガスストリームを形成する、前記方法において、
(1)前記天然ガスストリームを一つ以上の冷却段階で処理して部分的に凝縮させる;
(2)この部分的に凝縮させた天然ガスストリームを分離して蒸気ストリームと液体ストリームとを提供する;
(3)前記蒸気ストリームを少なくとも第一のガスストリームと第二のガスストリームとに分割する;
(4)前記第一のガスストリームを前記液体ストリームの少なくとも一部と混合して、混合ストリームを形成する;
(5)前記混合ストリームを冷却して実質的にその全てを凝縮させ、その後膨張させて中間圧力とする;
(6)前記第二のガスストリームを膨張させて前記中間圧力とする;
(7)前記液体ストリームの残余部分を全て膨張させて前記中間圧力とする;
(8)膨張させた実質的に凝縮化混合ストリーム、膨張させたガスの第二のストリームと、前記液体ストリームの残余部分とを蒸留カラム内に方向付け、ここで前記ストリームを、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性残渣ガス画分と、前記重質炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い画分とに分離する;及び
(9)前記揮発性残渣ガス画分を加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させ、前記凝縮ストリームを形成する
ことを改良点とする」「液化天然ガスストリームを形成する方法」が記載されている(摘示(a)参照)。
してみると、上記引用例には、上記(a)の摘示事項からみて、
「メタンと重質炭化水素成分とを含有する天然ガスストリームの液化方法であって、
(a)前記天然ガスを加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させて凝縮ストリームを形成する;及び
(b)前記凝縮ストリームを膨張させて低圧とし前記液化天然ガスストリームを形成する、前記方法において、
(1)前記天然ガスストリームを一つ以上の冷却段階で処理して部分的に凝縮させる;
(2)この部分的に凝縮させた天然ガスストリームを分離して蒸気ストリームと液体ストリームとを提供する;
(3)前記蒸気ストリームを少なくとも第一のガスストリームと第二のガスストリームとに分割する;
(4)前記第一のガスストリームを前記液体ストリームの少なくとも一部と混合して、混合ストリームを形成する;
(5)前記混合ストリームを冷却して実質的にその全てを凝縮させ、その後膨張させて中間圧力とする;
(6)前記第二のガスストリームを膨張させて前記中間圧力とする;
(7)前記液体ストリームの残余部分を全て膨張させて前記中間圧力とする;
(8)膨張させた実質的に凝縮化混合ストリーム、膨張させたガスの第二のストリームと、前記液体ストリームの残余部分とを蒸留カラム内に方向付け、ここで前記ストリームを、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性残渣ガス画分と、前記重質炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い画分とに分離する;及び
(9)前記揮発性残渣ガス画分を加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させ、前記凝縮ストリームを形成する
ことを改良点とする上記方法」
に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものといえる。

(2)対比・検討

ア.対比
本願発明と上記引用発明とを対比すると、引用発明における「重質炭化水素成分」、各「ストリーム」、「揮発性残渣ガス画分」及び「比較的揮発性の低い画分」は、それぞれ、本願発明における「メタンより重質の炭化水素成分」、各「流れ」、「揮発性の高い蒸気蒸留流れ」及び「比較的揮発性の低い留分」に相当することが明らかである。
してみると、引用発明における
「メタンと重質炭化水素成分とを含有する天然ガスストリームの液化方法」、
「(a)前記天然ガスを加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させて凝縮ストリームを形成する」、
「(b)前記凝縮ストリームを膨張させて低圧とし前記液化天然ガスストリームを形成する」、
「(1)前記天然ガスストリームを一つ以上の冷却段階で処理して部分的に凝縮させる」、
「(2)この部分的に凝縮させた天然ガスストリームを分離して蒸気ストリーム・・を提供する;(3)前記蒸気ストリームを少なくとも第一のガスストリームと第二のガスストリームとに分割する」、
「(4)前記第一のガスストリームを前記液体ストリーム・・と混合して、混合ストリームを形成する;(5)前記混合ストリームを冷却して実質的にその全てを凝縮させ、その後膨張させて中間圧力とする」、
「(6)前記第二のガスストリームを膨張させて前記中間圧力とする」、
「(8)膨張させた実質的に凝縮化混合ストリーム、膨張させたガスの第二のストリームと・・を蒸留カラム内に方向付け、ここで前記ストリームを、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性残渣ガス画分と、前記重質炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い画分とに分離する」、
「(9)前記揮発性残渣ガス画分を加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させ、前記凝縮ストリームを形成する」及び
「・・を改良点とする上記方法」は、それぞれ、本願発明における、
「メタン及びメタンより重質の炭化水素成分を含有する天然ガス流れを液化するための方法」、
「(a)前記天然ガス流れを加圧下で冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、凝縮流れを形成し」、
「(b)前記凝縮流れを低圧まで膨張させて、液化天然ガス流れを形成する」、
「(1)前記天然ガス流れを1つ又はそれより多い冷却工程において処理し」、
「(2)前記冷却した天然ガス流れを少なくとも第1の流れ及び第2の流れに分割し」、
「(3)前記第1の流れを冷却して実質的にそのすべてを凝縮させ、その後、中圧まで膨張させ」、
「(4)前記第2の流れを前記中圧まで膨張させ」、
「(5)前記膨張させた第1の流れ及び前記膨張させた第2の流れを、蒸留塔に送り、そこで、これらの流れを、揮発性の高い蒸気蒸留流れと、前記メタンより重質の炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い留分とに分離し」、
「(8)・・前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性の残留ガス流分を形成し;そして、(9)前記揮発性の残留ガス流分を加圧下で冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、それにより、前記凝縮流れを形成する」及び
「という改良がなされた前記方法。」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「メタン及びメタンより重質の炭化水素成分を含有する天然ガス流れを液化するための方法であって、
(a)前記天然ガス流れを加圧下で冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、凝縮流れを形成し;そして
(b)前記凝縮流れを低圧まで膨張させて、液化天然ガス流れを形成する
前記方法において、
(1)前記天然ガス流れを1つ又はそれより多い冷却工程において処理し;
(2)前記冷却した天然ガス流れを少なくとも第1の流れ及び第2の流れに分割し;
(3)前記第1の流れを冷却して実質的にそのすべてを凝縮させ、その後、中圧まで膨張させ;
(4)前記第2の流れを前記中圧まで膨張させ;
(5)前記膨張させた第1の流れ及び前記膨張させた第2の流れを、蒸留塔に送り、そこで、これらの流れを、揮発性の高い蒸気蒸留流れと、前記メタンより重質の炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い留分とに分離し;
(8)前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性の残留ガス流分を形成し;
(9)前記揮発性の高い残留ガス流分を加圧下で冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、それにより、前記凝縮流れを形成する
という改良がなされた前記方法。」
に係る点で一致し、下記の点で相違している。

相違点:本願発明では、「(6)蒸気蒸留流れを前記蒸留塔の前記膨張させた第2の流れより低い領域から抜き出し、充分に冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、それによって、残りの蒸気流れと還流流れとを形成し;(7)前記還流流れを前記蒸留塔にその頂部供給材料として送り;(8)前記残りの蒸気流れを前記揮発性の高い蒸気蒸留流れと組み合わせて」揮発性の残留ガス流分を形成するのに対して、引用発明では、そのような工程につき付加特定されていない点

イ.検討

(ア)引用例の他の記載事項について
上記相違点につき検討するにあたり、引用例に記載された摘示(a)以外の事項につき検討する。

(ア-1)他の態様について
上記引用例には、引用発明に係るものとは異なる態様として、
「メタンと重質炭化水素成分とを含有する天然ガスストリームの液化方法であって、
(a)前記天然ガスストリームを加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させて凝縮ストリームを形成する;及び
(b)前記凝縮ストリームを膨張させて低圧とし前記液化天然ガスストリームを形成する、前記方法において、
(1)前記天然ガスストリームを一つ以上の冷却段階で処理して部分的に凝縮させる;
(2)この部分的に凝縮させた天然ガスストリームを分離して第一の蒸気ストリームと第一の液体ストリームとを提供する;
(3)前記第一の蒸気ストリームを膨張させて中間圧力とし、その後接触デバイスへ方向付け、これによって第二の蒸気ストリームと第二の液体ストリームとを形成する;
(4)前記第一の液体ストリームを膨張させて前記中間圧力とする;
(5)前記第二の液体ストリームと前記膨張させた第一の液体ストリームとを蒸留カラムへ方向付け、ここで前記ストリームをより揮発性の高い蒸気蒸留ストリームと、前記重質炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い画分とに分離する;
(6)前記より揮発性の高い蒸気蒸留ストリームをその少なくとも一部を凝縮させるのに十分に冷却し、これによって第三の蒸気ストリームと第三の液体ストリームとを形成する;
(7)前記第三の液体ストリームの一部を前記蒸留カラムへの上部供給材料として前記蒸留カラムへ方向付ける;
(8)前記膨張させた第一の蒸気ストリームの少なくとも一部を、前記接触デバイス中、前記第三の液体ストリームの残余部分の少なくとも一部と完全に接触させる;
(9)前記第二の蒸気ストリームを前記第三の蒸気ストリームと混合して、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性残渣ガス画分を形成する;及び
(10)前記揮発性残渣ガス画分を加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させ、それによって前記凝縮ストリームを形成する
ことを改良点とする」方法(摘示(b)参照)という「接触デバイス」と「蒸留カラム」とを直列的に接続して使用する【図4】(摘示(k)参照)で図示できる方法が記載されており、さらに、
「メタンと重質炭化水素成分とを含有する天然ガスストリームの液化方法であって、
(a)前記天然ガスストリームを加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させて凝縮ストリームを形成する;及び
(b)前記凝縮ストリームを膨張させて低圧とし前記液化天然ガスストリームを形成する、前記方法において、
(1)前記天然ガスストリームを一つ以上の冷却段階で処理して部分的に凝縮させる;
(2)前記部分的に凝縮させた天然ガスストリームを分離して、第一の蒸気ストリームと第一の液体ストリームとを提供する;
(3)前記第一の蒸気ストリームと前記第一の液体ストリームとを膨張させて中間圧力とする;
(4)前記膨張させた第一の蒸気ストリームと前記膨張させた第一の液体ストリームとを蒸留カラムの中間カラム供給材料位置に方向付け、ここで前記ストリームをより揮発性の高い蒸気蒸留ストリームと、前記重質炭化水素成分の大部分を含有する比較的揮発性の低い画分とに分離する;
(5)蒸気蒸留ストリームを、前記膨張させた第一の蒸気ストリームより下の前記蒸留カラムの領域から抜き出し、その一部を凝縮させるのに十分に冷却し、それによって第二の蒸気ストリームと第二の液体ストリームとを形成する;
(6)前記蒸気蒸留ストリームを抜き出すのと実質的に同一領域の供給位置で、前記液体ストリームの一部を前記蒸留カラムへのもう一つの供給材料として前記蒸留カラムに供給する;
(7)前記膨張させた第一の蒸気ストリームの少なくとも一部を、前記蒸留カラム中で前記第二の液体ストリームの残余部分の少なくとも一部と完全に接触させる;
(8)前記第二の蒸気ストリームを前記より揮発性の高い蒸気蒸留ストリームと混合して、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性残渣ガス画分を形成する;及び
(9)前記揮発性残渣ガス画分を加圧下で冷却してその少なくとも一部を凝縮させ、それによって前記凝縮ストリームを形成する
ことを改良点とする」方法(摘示(c)参照)という上記【図4】における「接触デバイス」から「蒸留カラム」への直列的組合せを単一の「蒸留カラム」に代えて行う【図15】(摘示(l)参照)で図示できる方法が記載されている。
そして、上記【図4】及び【図15】につき検討すると、【図4】では、「接触デバイス」から「蒸留カラム」への直列的組合せにおいて、第一の蒸気ストリーム32aが流入する接触デバイスである「分離器/吸着材塔18」からみて第二の液体ストリーム40の流下方向にある蒸留カラム(「デエタナイザー19」)の頂部から第三の蒸気ストリーム42を流出させ、冷却手段(「熱交換器13」)による部分的凝縮、分離器(「還流ドラム22」)による凝縮液体44と未凝縮蒸気ストリーム43への分離及び凝縮液体44の分離器/吸着材塔18の頂部への還流と未凝縮蒸気ストリーム43の第二の蒸気ストリーム37への合流を行うことが記載され、【図15】では、蒸留カラム19における第一の蒸気ストリーム32aの流入部より下の部位から混合蒸気ストリーム42を流出させ、冷却手段(「熱交換器13」)による部分的凝縮、分離器(「還流ドラム22」)による凝縮液体44と未凝縮蒸気ストリーム43への分離及び凝縮液体44の分離器/吸着材塔18の頂部への還流と未凝縮蒸気ストリーム43の第二の蒸気ストリーム37への合流を行うことが記載されている。
そして、上記の各図におけるそれぞれの工程を各図から抜粋して整理すると下図のとおりであり、これら2つの工程が実質的に同一の工程であることは当業者に自明である。(以下、【図15】における上記工程を「工程X」という。)


そして、上記工程Xは、上記相違点に係る「(6)蒸気蒸留流れを前記蒸留塔の前記膨張させた第2の流れより低い領域から抜き出し、充分に冷却して、少なくともその一部を凝縮させ、それによって、残りの蒸気流れと還流流れとを形成し;(7)前記還流流れを前記蒸留塔にその頂部供給材料として送り;(8)前記残りの蒸気流れを前記揮発性の高い蒸気蒸留流れと組み合わせて、前記メタンの大部分と軽質成分とを含有する揮発性の残留ガス流分を形成」する工程に相当することも当業者に自明である。

(ア-2)工程Xの存否による差異について
上記引用例の実施例に係る記載(摘示(g)及び(h)参照)に基づき、工程Xの存否による差異につき以下検討する。
両者とも同一組成の原料ガスを使用する、引用発明に係る実験例であるものと認められる【図1】(摘示(j)参照)で図示される実施例1及び【図4】で図示される実施例3につき結果を対比すると、以下のとおりである。


この対比結果からみて、工程Xを含む実施例3の場合、工程Xを含まない実施例1の場合に比して、LNG生成物の純度(メタン濃度)及びNGL/LPGの生産速度の点では劣るものの、その他のLNGの生産速度及び低位発熱量並びに比動力消費につき優れ、また、原料ガスに対するLNG回収率及び燃料ガス消費量においても優れていると当業者が認識することができるものと認められる。

(イ)相違点に係る検討
上記(ア)で説示した引用例の記載事項に基づき上記相違点について検討すると、引用発明において、LNGの純度の低下を勘案しつつ、LNGの液化についての比動力消費などの改善(低減化)を行うことを意図して、上記引用例において別の態様として記載された工程X、すなわち上記相違点に係る工程を付加して本願発明に係る方法を構成することは、当業者が適宜なし得ることである。

(ウ)本願発明の効果について
本願発明の効果について、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき検討する。
本願発明の解決しようとする課題は、本願明細書の発明の詳細な説明の
「【0004】
天然ガスの液化が好都合である別の状況は、自動車燃料として使用する場合である。大都市圏では、利用できる経済的なLNG源があるならば、LNGで動くことができるバス、タクシー及びトラック群がある。そのようなLNGを燃料とする輸送手段は、より高分子量の炭化水素を燃焼するガソリン及びディーゼルエンジンで動く類似の輸送手段と比較したとき、天然ガスの燃焼はクリーンであるため、大気汚染が著しく少ない。さらに、LNGが高純度(すなわち、95モル%以上のメタン純度)のものであるならば、生成される二酸化炭素(温室効果ガス)の量は、他のすべての炭化水素燃料と比較してメタンの炭素:水素比が低いためかなり少ない。
【0005】
本発明は一般に、例えば、エタン、プロパン、ブタン、及び重質炭化水素成分からなる天然ガス液(NGL)、プロパン、ブタン、及び重質炭化水素成分からなる液化石油ガス(LPG)、又は、ブタン及び重質炭化水素成分からなる縮合生成物といった、主として、メタンよりも重い炭化水素からなる液体流れを同時生成物として生成しながら、天然ガスを液化することに関する。同時生成物である液体流れを生成することには2つの重要な利点がある:生成されるLNGは高いメタン純度を有し、同時生成物である液体は、多くの他の目的に用いうる有用な生成物である。本発明にしたがって処理すべき天然ガス流れの典型的な分析は、およそのモル%で、メタンが84.2%、エタン及び他のC_(2)成分が7.9%、プロパン及び他のC_(3)成分が4.9%、イソ-ブタンが1.0%、n-ブタンが1.1%、ペンタン+が0.8%、残りは窒素と二酸化炭素である。硫黄含有ガスも時々存在する。
・・(中略)・・
【0007】
天然ガス流れを液化するために用いられる方法に関係なく、メタンに富む流れを液化する前に、メタンよりも重い炭化水素のかなりの部分を除去する必要があるのが一般的である。この炭化水素除去工程の理由には、LNG流れの発熱量及びこれらの重質炭化水素成分の生成物としての価値を調節する必要性を含めた多くの理由がある。あいにく、これまで炭化水素除去工程の効率についてはほとんど注目されてこなかった。
【0008】
本発明によれば、炭化水素除去工程をLNG液化プロセスに注意深く組み込むと、従来技術の方法よりもかなり少ない使用エネルギーで、LNG及び個々の重質炭化水素液体生成物の両方を生成できることを見出した。本発明は、より低圧で適用することができるが、供給材料ガスを400?1500psia[2,758?10,342kPa(a)]以上で処理するとき特に有利である。」
との記載からみて、
「95モル%以上の高いメタン純度のLNG及びメタンより重質の炭化水素成分からなるNGL又はLPGなどの液体流れを同時生成物として効率的に製造することができる天然ガスの液化方法」を提供することにあるものと認められる。
しかるに、引用例には、引用発明に係る実施例1の場合において、99.52%という極めて高いメタン濃度のLNGが生成され、さらに「比動力消費は0.161HP-Hr/Lb[0.265kW/-時間/kg]であり、これは従来プロセスよりも4?13%も効率が改良」されていることが記載されている(摘示(g)参照)とともに、工程Xを含む実施例3なる別態様の場合、LNGのメタン濃度は91.43%に低下するものの「比動力消費は0.143HP-Hr/Lb[0.236kW-Hr/Kg]であ」り、「従来プロセスと比較して、改善効率は図4の態様に関しては17?27%である」ことが記載されている(摘示(h)参照)。
してみると、引用発明において工程Xを付加した場合に、引用発明における99.52%というLNGの極めて高いメタン濃度は例えば95%程度に低下するが、引用発明により改善された「比動力消費」で表される効率が更に改善されるであろうことは、当業者が予期し得ることと認められる。
したがって、本願発明が、上記引用発明に比して、当業者が予期し得ない程度の格別顕著な効果を奏しているものではない。

(エ)小括
したがって、本願発明は、上記引用発明(及び引用例記載の技術)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)審判請求人の主張について
なお、審判請求人は、平成23年3月18日付け手続補正書(審判請求理由補充書)において、種々の事項につき、るる主張し、「引用文献1・・の記載において、図4、15又は16を図1と組み合わせることを示唆するものは存在しない」とともに、「本発明は、引用文献1・・の実施例1及び3と超える改善を提供する・・。すなわちエタン回収率、プロパン回収率、及びLNG製品の純度が全て引用文献1・・の実施例3を超えて高くなり、同時に引用文献1及び2の実施例3及び実施例1の両方に対して電力消費を減じる」と主張している(「(3)引用文献1及び2」の欄)。
しかるに、上記(2)イ.の(ア)(ア-2)及び(ウ)でもそれぞれ説示したとおり、引用例には、引用発明の「LNGの液化方法」が、生成するLNGのメタン濃度が極めて高く、その比動力消費で表される効率も従来技術に比べて一定の改善が見られることが記載され、他の態様である実施例3のものであれば、生成するLNGのメタン濃度は一定の低下が見られるものの、比動力消費で表される効率は従来技術に比べて格段の改善が見られることがそれぞれ記載されているのであるから、引用発明において、LNGのメタン濃度は一定以上(例えば95%程度)を維持しつつ、比動力消費で表される効率を更に改善するために、実施例3(又はその派生形である【図15】)の知見を組み合わせるべき積極的動機が存するものと認められる。
(なお、更に本願明細書の実施例(【図1】の場合)に係る記載を確認すると、比動力消費で表される効率は0.139HP-Hr/Lbと低い消費電力(すなわち効率としては高い)となり改善されているものの、LNGの純度(メタン濃度)は94.84%と95%を割り込む程度まで低下しているのであるから、引用発明に実施例3(又はその派生形である【図15】)の知見を組み合わせた場合に想定できる程度の結果となっていることも明らかである。)
してみると、審判請求人の上記手続補正書における主張は、根拠を欠くものであって、当を得ないものであるから、採用する余地がないものであり、当審の上記(2)の検討結果を左右するものではない。

(4)当審の判断のまとめ
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではない。

第5 むすび
したがって、本願は、他の請求項に係る各発明につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-16 
結審通知日 2013-04-17 
審決日 2013-05-01 
出願番号 特願2007-511444(P2007-511444)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 敏康森 健一  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 小石 真弓
橋本 栄和
発明の名称 天然ガスの液化  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小林 泰  
代理人 野矢 宏彰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  

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