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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1279235 |
審判番号 | 不服2011-18669 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-08-30 |
確定日 | 2013-09-11 |
事件の表示 | 特願2007-544398「メッセージベースの経費アプリケーション」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日国際公開、WO2006/060254、平成20年 6月26日国内公表、特表2008-522323〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成17年11月22日(優先権主張 平成16年12月3日 米国)を国際出願日とする特許出願であって,平成23年1月19日付けの拒絶理由通知に対して,平成23年4月12日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成23年5月9日付けの拒絶査定に対して平成23年8月30日に審判請求がなされ,平成25年1月25日付けで当審より拒絶理由を通知したところ,平成25年3月7日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年3月7日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「経費報告に対するメッセージを処理するためのシステムであって, 別個のトランザクションでユーザが発生させた少なくとも1つの経費に関連する経費情報を含むメッセージを送るように構成された第1のデバイスを含み,前記第1のデバイスはメッセージング通信路を通して通信するように構成され,前記経費情報は,どの経費報告にアクセスすべきかを示す情報および経費報告を更新するのに用いるべき情報を含み, さらに 前記メッセージング通信路を通して前記メッセージを受信するように構成された第2のデバイスを含み,前記第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへの前記第1のデバイスによる直接アクセスは不可能であり,前記第2のデバイスのプロセッサは, どの経費報告にアクセスすべきかを示す情報から,前記第2のデバイスの記憶システムに記憶されたリポジトリの中の,アクセスすべき経費報告を決定し, 経費報告を更新するのに用いるべき情報で前記経費報告を自動的に更新するように構成される,システム。」 (なお下線部は,平成25年3月7日の手続補正で補正された箇所を示すものとして,審判請求人が付したものを当審で援用したものである。) 第3 当審における拒絶の理由について 当審における平成25年1月25日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。 『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用文献等一覧> ・引用例1:特開2002-109328号公報 ・引用例2:(略) ・引用例3:(略) ・請求項1 ・引用例1 ・備考 1.引用例について(略) 2.対比(略) 3.判断(略) 4.結論 前記1.?3.のことから,請求項1発明は,引用例1発明及び周知の事項Aに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。』 第4 当審の判断 1.引用例について ア 引用例1について。 当審の拒絶理由通知で引用した引用例1には,以下のことが記載されている。 (以下「引用例1摘記事項」という。) (ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,顧客からの依頼によって派遣会社が派遣者を派遣する際に適用して好適な携帯端末を用いた人材派遣システム,携帯端末,Webサーバ,携帯端末を用いた人材派遣方法及び携帯端末を用いた人材派遣プログラムを記録した記録媒体に関するものである。」 (イ)「【0054】(第1の実施形態)まず,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第1の実施形態の全体概略図である。 【0055】図1に示されるように,本実施形態の携帯端末を用いた人材派遣システムには,Webブラウザからのレスポンスに応じて,ファイルなどのデータをダウンロードするWebサーバ101と,このWebサーバ101に管理されるファイルを格納するデータベース102とを備える。 【0056】上記Webサーバ101は,データベース102と共に,本発明の構成要素たるサーバとして機能する。 【0057】また,ネットワーク105と無線基地局106を介して接続される少なくとも1以上の,本発明に係る携帯端末として機能する携帯電話103と,ネットワークと接続された少なくとも1以上の,本発明の構成要素たる端末としてのパソコン104とを備える。 【0058】Webサーバ101は,例えば携帯電話103やパソコン104に具備されたWebブラウザからのアクセスに基づき,データベース102に格納されたファイルを,これら携帯電話103やパソコン104にダウンロードする。 【0059】Webサーバ101と携帯電話103及びパソコン104との間のプロトコルとしては,httpやhttpsが用いられるのが一般的であるが,これらに限定されるものではない。」 (ウ)「【0094】上記メールが送信された場合,例えば,派遣者へのメールに,仕事を引き受けるか否かを入力可能なWebページへのリンクを張っておき,派遣者がこのリンクをクリックすることにより,派遣者の有する携帯電話103の表示画面に選択画像データにより構成される登録者返答ページ512が表示されるとして良い。 【0095】派遣者308は,自己の携帯電話103に表示された登録者返答ページ512に表示された画面に基づいてWebサーバアプリケーション303に返答を行なう(ステップS406)。」 (エ)「【0103】また,Webサーバアプリケーション303により検索された派遣者308は,メールによって,その派遣依頼が自己の携帯電話103に表示されるため,携帯電話にてネットワークとアクセスできる状況であれば,何時,どのような場所にいても,かつ,他人に知られることなく,派遣依頼を確認することができると共に,その返答も,携帯電話103からメールを用いて行なうことができるため,迅速な処理を行なうことができる。」 (オ)「【0104】(第2の実施形態)次に,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第2の実施形態について,図6から図10を参照して説明する。」 (カ)「【0108】本実施形態の携帯端末を用いた人材派遣システムは,顧客からの要望やクレームに応じて,派遣会社が派遣者の評価を行なうと共に,派遣者が容易に自己の出勤退勤状況を記録することを可能とするシステムである。 【0109】まず,上記本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第2の実施形態の動作について図7のフローチャートを参照しつつ説明する。 【0110】まず,派遣先に赴任した派遣者は,自己の携帯電話を用いて,Webサーバアプリケーション603に対して出勤の報告を行なう(ステップS701)。 【0111】そして,ID及びパスワードを入力して(認証),Webサーバアプリケーション603にアクセスした派遣者606の携帯電話の画面には,図8に示されるような出勤ページ801が表示される。 【0112】派遣者606は,このページから自己の出勤状況をWebサーバアプリケーション603に送信し,結果ページ802を自己の携帯電話に表示させる。 【0113】また,派遣者は,勤務を終えて退勤する場合も,上記動作と同様にして,退勤ページ803及び結果ページ804を表示して,自己の退勤をWebサーバアプリケーション603に送信する。 【0114】ここで,上記派遣者606の携帯電話に出勤,退勤のページを表示させる際に,予めパスワードとIDを入力する認証ページ805を介して表示させるとしても良い。」 (キ)「【0115】次に,上記出勤及び退勤に関する情報を受信したWebサーバアプリケーション603は,仕事DB605に派遣者の勤怠情報を記録する(ステップS702)。ここで,本発明の勤怠情報としては,出勤,退勤に関する情報のみならず,例えば遅刻,早退,特別労働,欠勤,残業,休日出勤などに関する情報も任意に選択して含み得るものである。」 (ク)「【0117】一方,顧客601は,派遣者の労働状況に応じて,派遣会社602に要望やクレームを与える(ステップS704)。 【0118】この場合,顧客601は,例えば図9に示されるように,自己のパソコン104から認証ページ904を介してWebサーバアプリケーション603にアクセスして,自己のパソコン104に派遣労働者管理ページ901を表示させ,特定の派遣者を指定して結果ページ902として表示し,要望及びクレームなどを書き添えた上で,メール若しくはhttpにより派遣会社に送信して結果ページ903を表示させるとして良い。」 (ケ)「【0123】(第3の実施形態)次に,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第3の実施形態について図11から図15を参照して説明する。 【0124】本実施形態は,派遣者として登録を希望するものが,容易に派遣登録を実行できるようにした実施形態である。 【0125】なお,本実施形態の全体概略図については,前述の図1を参照して説明した,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第1の実施形態の場合と同様であるため,その詳細な説明を省略する。」 (コ)「【0141】(第4の実施形態)次に,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第4の実施形態について図16から図19を参照して説明する。 【0142】なお,本実施形態の全体概略図については,前述の図1を参照して説明した,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第1の実施形態の場合と同様であるため,その詳細な説明を省略する。」 (サ)「【0157】(第5の実施形態)次に,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第5の実施形態について図20から図25を参照して説明する。 【0158】図20は,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第5の実施形態の動作概略図,図21から図25は,図20に示されるシステムのパソコン及び携帯電話に表示される画面の概略図である。 【0159】なお,本実施形態の全体概略図については,前述の図1を参照して説明した,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第1の実施形態の場合と同様であるため,その詳細な説明を省略する。」 (シ)「【0175】(第6の実施形態)次に,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第6の実施形態について図26及び図27を参照して説明する。 【0176】図26は,本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第6の実施形態の動作概略図,図27は,図26に示されるシステムの動作のフローチャートである。 【0177】図26に示されるように,本実施形態の携帯端末を用いた人材派遣システムにおいては,前述の第1の実施形態と同様に,顧客2601と,派遣会社2602と,Webサーバアプリケーション2603と,仕事DB2604と,派遣者2605とを備えている。これら図26に示される構成要素については,前述の図3を参照して説明した第1の実施形態の説明を当てはめることができる。 【0178】次に,本実施形態の動作について説明する。本実施形態は,前述の第1から第5の実施形態のいずれかに加えられて使用される実施形態であり,前述の第1から第5の実施形態のいずれかの動作と共に,派遣者に支払う給与の明細をWebサーバアプリケーションが計算し,これを仕事DBに格納しておくことで,顧客からの支払請求の依頼に応じて,派遣会社が迅速に請求書を発行することが可能なシステムである。 【0179】したがって,本実施形態の構造及び動作は,派遣者に支払う給与の明細をWebサーバアプリケーションが計算し,これを仕事DBに格納する構造及び動作以外,前述の第1から第5の実施形態と同様である。 【0180】すなわち,図27のフローチャートにも示されるように,派遣者は自己の携帯電話から,交通費などの必要経費に関する情報をWebサーバアプリケーションに送信する(ステップS2701)。ここで,必要経費には,交通費の他に,食費やユニホーム費等も含めることができる。 【0181】次に,Webサーバアプリケーションは,受信した必要経費や派遣者の時給や勤怠情報に基づいて,派遣者の給与を計算し,この計算した結果を仕事DBに格納する(ステップS2702,2703)。 【0182】次に,顧客は,派遣会社に対して,派遣者の使用に伴う支払金額がいくらになるのかを知るため,請求書の発行を依頼する(ステップS2704)。 【0183】上記依頼を受けた派遣会社はWebサーバアプリケーションに,派遣者に支払うべき給与の明細書の発行を依頼する(ステップS2705)。 【0184】上記依頼を受けたWebサーバアプリケーションは,仕事DBを参照し,給与の明細書を派遣会社に発行する(ステップS2706)。 【0185】上記明細書を受けた派遣会社は,この明細書に基づいて請求書を作成し,これを顧客に送付する(ステップS2707,2708)。 【0186】このように,本実施形態によれば,前述の本発明に係る携帯端末を用いた人材派遣システムの第1から第5の実施形態と同様の効果を得ることができると共に,派遣者は携帯電話から必要経費などを送信することができ,この必要経費に関する情報は直ちに派遣者の給与に反映されるため,顧客からの依頼に対して迅速かつ正確に請求書を発行することができるシステムとすることができる。」 イ 引用例1発明について。 上記引用例1摘記事項(ア),(シ)によれば,引用例1には以下の発明が開示される。 (以下「引用例1発明」という。) 「必要経費に関する情報を派遣者の給与に反映するシステムであって, 派遣者は,自己の携帯電話から,交通費,食費,ユニホーム費等の必要経費に関する情報をWebサーバアプリケーションに送信すると,Webサーバアプリケーションは,受信した必要経費と時給と勤怠情報に基づいて,派遣者の給与を計算し,この計算した結果を仕事DBに格納するものであり, 派遣者が携帯電話から必要経費を送信すると,必要経費に関する情報が派遣者の給与に反映されるシステム。」 2.対比 ア 引用例1発明と本願発明とを対比する。 (ア)引用例1発明は,派遣者が,必要経費に関する情報を,携帯端末からサーバに送信するものであり,必要経費に関する情報は,給与へ反映される。 つまり,携帯端末から送信される必要経費の情報は,どの経費報告として給与へ反映すべきかが分かる情報である。 さらに,交通費,食費,ユニホーム費は,労務管理上,交通費,食費,雑費等区分して計上されることから,経費のカテゴリと金額とが分かる情報である。 してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「別個のトランザクションでユーザが発生させた少なくとも1つの経費に関連する経費情報を含むメッセージを送るように構成された第1のデバイスを含み,第1のデバイスはメッセージング通信路を通して通信するように構成され,経費情報は,どの経費報告にアクセスすべきかを示す情報および経費報告を更新するのに用いるべき情報を含む」という点で共通する。 (イ)引用例1発明のサーバは,携帯端末から,必要経費に関する情報を受信すると,その必要経費に関する情報を給与へ反映しDBに格納する。 してみると,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「メッセージング通信路を通してメッセージを受信するように構成された第2のデバイスを含み,第2のデバイスのプロセッサは,どの経費報告にアクセスすべきかを示す情報から,第2のデバイスの記憶システムに記憶されたリポジトリの中の,アクセスすべき経費報告を決定し,経費報告を更新するのに用いるべき情報で経費報告を自動的に更新する」という点で共通する。 (ウ)これらのことから,引用例1発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「経費報告に対するメッセージを処理するためのシステム」である点で一致する。 イ してみると,引用例1発明と本願発明との一致点と相違点とは,以下のとおりである。 [一致点] 「経費報告に対するメッセージを処理するためのシステムであって, 別個のトランザクションでユーザが発生させた少なくとも1つの経費に関連する経費情報を含むメッセージを送るように構成された第1のデバイスを含み,第1のデバイスはメッセージング通信路を通して通信するように構成され,経費情報は,どの経費報告にアクセスすべきかを示す情報および経費報告を更新するのに用いるべき情報を含み, さらに メッセージング通信路を通してメッセージを受信するように構成された第2のデバイスを含み,第2のデバイスのプロセッサは,どの経費報告にアクセスすべきかを示す情報から,第2のデバイスの記憶システムに記憶されたリポジトリの中の,アクセスすべき経費報告を決定し,経費報告を更新するのに用いるべき情報で経費報告を自動的に更新するように構成される,システム。」 [相違点1] 本願発明の経費が,頻繁な出張や長期の出張の場面での経費を想定しているのに対して,引用例1発明は,派遣者の経費に係るものである点。 [相違点2] 本願発明では,「第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへの第1のデバイスによる直接アクセスは不可能」であるのに対し,引用例1発明がそのようなものであるのか明確ではない点。 3.判断 以上の相違点について,以下に判断する。 [相違点1]について。 (a)営業員が顧客訪問後に経費の清算が必要になることはよく知られている(以下「周知の事項A」という。)。 例えば,特開2002-99707号公報(以下「周知例」という。)には,以下のことが記載されている。 「【0027】上記の営業活動支援システムに関し,図3の点線で示した部分が,上記の追加した部分であり,経費精算データ転送手段13が新たに設けられている。図3において,携帯端末4を携行して営業活動を行なっている営業員が,顧客を訪問の後,営業経費精算データ36を携帯端末4に入力すると,これが経費精算データ転送手段13へ送信され,経費精算データ転送手段13はこれを受信して(T7),営業情報コンピュータ2の一部を構成している経費管理処理部21へ送信し(T8),そこで受信されて処理される。」 (b)引用例1発明と周知の事項Aとは,出張先や派遣先で経費の清算をする点で共通することから,引用例1発明に周知の事項Aを適用することにより,経費を,頻繁な出張や長期の出張の場面での経費として想定することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。 [相違点2]について。 ア 相違点2に係る事項が,メッセージングサーバに係る事項を特定するものである場合について。 (ア)「第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへの第1のデバイスによる直接アクセスは不可能」であるとの事項は,どのような事項を特定するものなのか,かならずしも明確ではないことから,発明の詳細な説明の記載を参酌する。 (イ)第1のデバイスからアプリケーションへのアクセスに関して,発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 (以下,引用する段落は審判請求人が補正の根拠とした段落と同じである。) 「【0023】 図2は,本発明の1つの実施例に従う,経費アプリケーションに対するメッセージを処理するための方法の簡略化されたフローチャート200を示す。ステップ202で,メッセージングサーバ104は,メッセージングデバイス102から経費情報とともにメッセージを受信する。メッセージは,上述のいずれのメッセージング通信路を通して受信してもよい。1つの実施例ではユーザは移動可能である。たとえば,ユーザは,コンピューティングデバイスにインストールされたアプリケーション106への直接アクセスが不可能に移動可能状態であり得る。したがって,ユーザはメッセージングデバイス102を用いてメッセージを生成してアプリケーション106に送り得る。」 (ウ)上記(イ)の記載を参照すれば,「第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへの第1のデバイスによる直接アクセスは不可能」であるとの事項は,つまり,携帯電話などの「メッセージングデバイス」が,ユーザが,「コンピューティングデバイスにインストールされたアプリケーション106への直接アクセスが不可能に移動可能状態」であっても「メッセージを生成してアプリケーション106に送り得る」ことを特定すると理解できる。 (エ)他方,本願発明のシステム構成を示す図1に関して,発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 「【0014】 発明の詳細な説明 図1は,本発明の1つの実施例に従う,経費報告を管理するためのシステム100を示す。1つの実施例では,システム100は,1つ以上のメッセージングデバイス102と,メッセージングサーバ104と,1つ以上のアプリケーション106とを含む。」 (オ)ここで,メッセージングデバイス102と,メッセージングサーバ104と,アプリケーション106の役割に関して,以下の記載がある。 「【0019】 1つの実施例では,メッセージングサーバ104およびメッセージングデバイス102は会話し得る。たとえば,メッセージングデバイス102,メッセージングサーバ104およびアプリケーション106の間で複数のメッセージがやり取りされ得る。メッセージを用いて,(経費報告の更新などの)実行すべき行為を決定し得る。たとえば,ユーザは,経費報告を更新すべきことを示す第1のメッセージをメッセージングデバイスからメッセージングサーバ104に送り得る。次にメッセージングサーバ104は,どのタイプの経費が発生したかを尋ねるメッセージを送り得る。また,メッセージングサーバ104は,アプリケーション106にコンタクトして,次にアプリケーション106は,メッセージングデバイス102から,必要な付加情報(たとえば,距離に応じた経費については移動距離,またはレンタカー経費についてはレンタル契約番号)があるかを尋ねるメッセージを送り得る。このプロセスは,アプリケーション106が必要とする情報が決定されるまで継続し得る。繰返しの量は,メッセージ当りに与えられ得る情報量および通信路に大きく依存して異なり得る。たとえば,MMS,電子メールおよび音声では,すべての情報が与えられ得るが,ダイアログは,情報が正しくないまたは理解不能な場合しか必要とされない。しかしSMS経由では,情報は,複数のメッセージの形で,より小さなデータ入力の塊にされ得る。」 (カ)上記(エ),(オ)の記載を参照すれば,本願発明の,「第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへの第1のデバイスによる直接アクセスは不可能」であるとの事項は,ユーザが「移動可能状態」であっても「メッセージングサーバ104」を介して「メッセージを生成してアプリケーション106に送り得る」ので,「コンピューティングデバイスにインストールされたアプリケーション106への直接アクセスが不可能」であってもメッセージを送信しうることを特定するものと理解できる。 (キ)ここで,引用例1摘記事項(カ)によれば,引用例1の,第2の実施形態である出勤退勤の管理の場面では,Webサーバアプリケーシにアクセスした派遣者の携帯電話の画面に出勤ページが表示され,このページから自己の出勤状況をWebサーバアプリケーションに送信し,結果ページを自己の携帯電話に表示させることが開示される。 (ク)ここで,出勤退勤の管理の携帯電話の画面が図8に開示される。 図8には,出勤ページ801に仕事IDや氏名等を記入し,「出勤」を選択すると携帯電話がメッセージをWebサーバアプリケーションに送信し,Webサーバアプリケーションは送信記録結果を携帯電話に表示することが開示される。 (以下,(キ),(ク)の開示事項を「引用例1開示事項ア」という。) 引用例1開示事項アによれば,引用例1発明の,Webサーバアプリケーションの,携帯電話とメッセージを送受信する機能は,本願のメッセージングサーバ104の機能に相当する部分の機能にとどまる。 そして,引用例1発明の,Webサーバアプリケーションの,その他勤怠を管理し給与を計算する機能などが,本願のアプリケーション106に相当すると言える。 (ケ)してみると,引用例1開示事項アによれば,引用例1発明の「携帯電話」は,「Webサーバアプリケーション」にメッセージを送信し,メッセージを受信するものではあるが,「Webサーバアプリケーション」の,その他勤怠を管理し,給与を計算する機能の部分への直接アクセスはできないのであって,「携帯電話」は,「Webサーバアプリケーション」のメッセージを送受信する機能の部分にアクセスできるにとどまると言える。 そして,このメッセージの送受信の機能は,携帯電話が移動可能状態であってもメッセージを生成して送信しうるものであることが明らかである。 (コ)以上のことから,「引用例1開示事項ア」を参照すれば,「引用例1発明」の携帯電話を,「Webサーバアプリケーションの,勤怠を管理し給与を計算するなどの機能の部分への直接アクセスはできず,Webサーバアプリケーションのメッセージを送受信する機能の部分にアクセスできる」ように構成すること,つまり,「第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへの第1のデバイスによる直接アクセスは不可能」であるよう構成することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。 以上(ア)?(コ)のことから,相違点2に係る事項が,メッセージングサーバに係る事項を特定するものであって,「第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへの第1のデバイスによる直接アクセスは不可能」であることを特定するものであるとすると,相違点2に係る発明特定事項の構成とすることは,「引用例1開示事項ア」を参照すれば,「引用例1発明」から当業者が容易に想到することができたものである。 イ 仮に,相違点2に係る事項が,電子メールなどによりメッセージを送信することを特定している場合 (ア)発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 「【0017】 メッセージングサーバ104は,メッセージングデバイス102からメッセージを受信するように構成される。1つの実施例では,メッセージングサーバ104は,複数のメッセージング通信路から受信されるメッセージを処理することができる。たとえば,メッセージングサーバ104は,SMS,MMS,音声,電子メール,IM,ファックス,SOAPなどのフォーマットでメッセージを処理し得る。当業者は,メッセージングサーバ104が処理できる他のメッセージングフォーマットを認めるであろう。」 (イ)そこで,仮に,相違点2に係る事項が,電子メールなどによりメッセージを送信することを特定しているものとして,以下に検討する。 (a)引用例1摘記事項の「第1の実施形態」に係る摘記事項(イ),(ウ)の記載によれば,引用例1には,メールを受信した派遣者等がWebページへのリンクをクリックすることにより画面に選択画像データ等が表示され,派遣者等がこの画面でWebサーバアプリケーションへ返答する事例が開示される。 (以下「引用例1開示事項A」という。) (なお,審判請求人が引用する勤怠情報の送信に係る【0111】段落なども同様の事例である。) (b)しかし,引用例1には,図1の人材派遣システムの,Webサーバと携帯電話及びパソコンとの間はhttpに限定されないこと(摘記事項(イ)の【0059】段落参照。)が記載され,さらに,「第1の実施形態」の派遣者が携帯電話で返答する場面に関する摘記事項(エ)の「その返答も,携帯電話103からメールを用いて行なうことができる」との記載や,「第2の実施形態」で,(派遣者の勤怠情報の送信(摘記事項(オ),(カ),(キ))に引き続く,)顧客が要望などを送信する場面に関する摘記事項(ク)の「メール若しくはhttpにより派遣会社に送信する」との記載によれば,引用例1の人材派遣システムは,携帯電話やパソコンから送信されるメッセージを電子メールで送信することをも開示する。 (以下「引用例1開示事項B」という。) (c)ここで,「第3の実施形態」,「第4の実施形態」,「第5の実施形態」は,それぞれの摘記事項(ケ),(コ),(サ)に記載されるとおり,「第1の実施形態」と同様のシステムであることが開示される。 (以下「引用例1開示事項C」という。) (d)してみると,第1の実施形態から第5の実施形態までのいずれかに加えられて使用される実施形態(摘記事項(シ)の【0178】,【0179】段落参照。)である「第6の実施形態」において,携帯電話からサーバへのメッセージを電子メールで送信するよう構成することには,何ら困難性がない。 (e)そして,電子メールを送受信する機能をメールサーバとし,受信したメッセージをさらに処理するアプリケーションサーバの機能と切り離すことも,よく知られている。 (以下「周知の事項B」という。) (f)してみると,引用例1発明に引用例1開示事項A?C及び周知の事項Bを適用することにより,引用例1発明のメッセージを電子メールで送信させるよう構成し,「第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへの第1のデバイスによる直接アクセスが不可能」であるよう構成することには何ら困難性がなく,当業者が容易に想到することができたものである。 (ウ)なお,さらに仮に,メールの送受信の機能と,アプリケーションの機能との間を連係するための何らかの仕組みがあるのであれば,さらに進んで進歩性の判断が必要となる。 ちなみに,前記「アの(オ)」で指摘した,【0019】段落の記載などは,その仕組みを示唆する。 (エ)しかし本願発明はそのような仕組みを特定するものではないことから,さらに進んで上記の進歩性の判断をする必要がない。 以上判断したとおり,本願発明における上記[相違点1]?[相違点2]に係る発明特定事項は,いずれも当業者が容易に想到することができたものであり,上記各相違点を総合しても,想到することが困難な格別の事項は見いだせない。 また,本願発明の作用効果も,引用例1発明,周知の事項A及び引用例1開示事項アから当業者が予測できる範囲のものであり,又は,引用例1発明,周知の事項A,引用例1開示事項A?C,及び周知の事項Bから当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明は,引用例1発明,周知の事項A及び引用例1開示事項アに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,又は,引用例1発明,周知の事項A,引用例1開示事項A?C,及び周知の事項Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許を受けることができない。 4.審判請求人の主張について (1)審判請求人は,平成25年3月7日の意見書において,以下のことを主張している。 「請求項1に係る発明は,要するに,『第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへ直接アクセスすることができない第1のデバイスが,経費情報を含むメッセージを第2のデバイスに送る』ものであります。 一方,引用例1は,[0111],[0111](当審注:[0112]の誤記。)段落に記載のように,携帯電話からWebサーバアプリケーションにアクセスし,携帯電話の画面に表示されたページから出勤状況をWebサーバアプリケーションに送信するものであります。 したがって,引用例1は『経費情報を含むメッセージを送信する』ものではなく,本願の請求項1の上記の構成を開示するものでも示唆するものでもないと思料致します。」 (2)審判請求人の上記主張について検討する。 (ア)審判請求人の主張はつまり,引用例1の第2の実施形態は,携帯電話からWebサーバアプリケーションにアクセスし,携帯電話の画面に表示されたページから出勤状況をWebサーバアプリケーションに送信するものであるから,本願発明の『第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへ直接アクセスすることができない第1のデバイスが,経費情報を含むメッセージを第2のデバイスに送る』ものではないこと,そして,そのようにして『経費情報を含むメッセージを送信する』という構成を開示するものでもないことを主張していると理解できる。 (イ)確かに,引用例1の第2の実施形態は,そのような事例を開示する。 しかし,引用例1発明が,「経費情報を含むメッセージを送信する」ものであることは,前記「2.ア,イ」で認定したとおりであり,仮に,引用例1の第2の実施形態がそのようなものであったとしても,「第2のデバイスにインストールされたアプリケーションへ直接アクセスすることができない第1のデバイスが,経費情報を含むメッセージを第2のデバイスに送る」ことが当業者想到容易であることは,前記「[相違点2]について。」で判断したとおりである。 以上のことから,審判請求人の主張を採用することはできない。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,周知の事項A及び引用例1開示事項アに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,又は,引用例1発明,周知の事項A,引用例1開示事項A?C,及び周知の事項Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-03-29 |
結審通知日 | 2013-04-02 |
審決日 | 2013-05-01 |
出願番号 | 特願2007-544398(P2007-544398) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮下 浩次 |
特許庁審判長 |
清田 健一 |
特許庁審判官 |
金子 幸一 須田 勝巳 |
発明の名称 | メッセージベースの経費アプリケーション |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 荒川 伸夫 |
代理人 | 堀井 豊 |
代理人 | 野田 久登 |