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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1279356
審判番号 不服2012-14880  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-02 
確定日 2013-09-19 
事件の表示 特願2011-270050号「空気調和機の室内機」拒絶査定不服審判事件〔平成24年4月12日出願公開、特開2012-73024号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年12月22日に出願した特願2005-370419号の一部を平成23年12月9日に新たな特許出願としたものであって、平成24年1月17日及び平成24年4月2日に手続補正がされ、平成24年5月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月2日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、平成25年4月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月21日に手続補正がされたものである。

2.平成25年4月22日付けで通知した拒絶の理由の概要
理由1:平成24年1月17日付け、平成24年4月2日付け及び平成24年8月2日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
(1)平成24年1月17日付けでした手続補正は、ア.請求項2を「前記クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置している、請求項1に記載の空気調和機の室内機。」と、イ.請求項6を「前記ディフューザ部の前記天面側壁面の延長線と前記スタビライザ部の延長線との交点は、前記クロスフローファンの下端よりも下側に位置している、請求項1から5のいずれかに記載の空気調和機の室内機。」と補正することを含むものである。
「クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置している」との事項は、当初明細書等に記載されていたとはいえず、また、当業者にとって自明の事項ともいえない。
「ディフューザ部の前記天面側壁面の延長線と前記スタビライザ部の延長線との交点は、前記クロスフローファンの下端よりも下側に位置している」との事項は、当初明細書等に記載されていたとはいえず、また、当業者にとって自明の事項ともいえない。
そして、上記事項を記載することは、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、請求項6を上記のように補正することは当初明細書等に記載した範囲内においてするものとはいえない。
したがって、平成24年1月17日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてするものとはいえない。
(2)平成24年4月2日付けでした手続補正は、ア.請求項1に「前記クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置している」との事項を追加すること及びイ.請求項5を「前記ディフューザ部の前記天面側壁面の延長線と前記スタビライザ部の延長線との交点は、前記クロスフローファンの下端よりも下側に位置している、請求項1から4のいずれかに記載の空気調和機の室内機。」と補正することを含むものである。
したがって、平成24年4月2日付けでした手続補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてするものとはいえない。
(3)平成24年8月2日付けでした手続補正は、ア.請求項1に「前記クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置し」ているとの事項を追加すること及びイ.請求項5を「前記ディフューザ部の前記天面側壁面の延長線と前記スタビライザ部の延長線との交点は、前記クロスフローファンの下端よりも下側に位置している、請求項1から4のいずれかに記載の空気調和機の室内機。」と補正することを含むものである。
そうすると、平成24年8月2日付けでした手続補正も、当初明細書等に記載した範囲内においてするものとはいえない。

理由2:省略

理由3:本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとし、以下の刊行物1及び2が引用された。
刊行物1:特開2001-336781号公報
刊行物2:特開平10-141754号公報

3.理由1について
本願の明細書、特許請求の範囲及び図面について、平成24年1月17日、同年4月2日、同年8月2日及び平成25年6月21日に手続補正がされ、請求項1は「吸込口から室内空気を吸い込み吹出口から吹き出すためのクロスフローファンと、前記クロスフローファンの上流側に位置し、主として前記吸込口の前面側から前記クロスフローファンに向かう空気の流れ中に配設された第1の熱交換器と、主として前記吸込口の背面側から前記クロスフローファンに向かう空気の流れ中に配設された第2の熱交換器と、前記クロスフローファンの近傍および下流側に位置し、スタビライザ部およびリアガイド部を有する送風ダクトとを有し、吸込開口角θが熱交換器取り囲み角ψより指向性をもって偏って吸い込む現象が発生する程度に小である空気調和機の室内機であって、
前記スタビライザ部のファンへの近接尖端部と前記クロスフローファンの軸中心とを結ぶ線分をLcとし、
前記第1の熱交換器の上端の延長線と前記第2の熱交換器の上端の延長線との交点Pと、前記クロスフローファンの軸中心とを結ぶ線分をLpとし、線分Lcと線分Lpとが成す角度が100度?140度であり、かつ、ディフューザ部の天面側壁面と底面側壁面とが成す開き角度の2等分線をLmとし、前記線分Lpと前記2等分線Lmとの成す角度が130度以下であり、
前記第1の熱交換器は、前面上側部分と前面下側部分とを有し、
前記前面上側部分の下端側は、上端側よりも前側に位置し、
前記前面下側部分の上端側は、下端側よりも前側に位置し、
前記クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置し、
前記クロスフローファンの軸中心は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端と、前記第2の熱交換器の下端とを結ぶ線分よりも上側に位置している、
空気調和機の室内機。」と、また、請求項5は「前記ディフューザ部の前記天面側壁面の延長線と前記スタビライザ部の延長線との交点は、前記クロスフローファンの下端よりも下側に位置している、請求項1から4のいずれかに記載の空気調和機の室内機。」と補正された。
請求項1に記載された「前記クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置し」ているとの事項(以下「事項1」という。)は、平成24年1月17日の手続補正により請求項2に記載されたものである。また請求項5に記載された「前記ディフューザ部の前記天面側壁面の延長線と前記スタビライザ部の延長線との交点は、前記クロスフローファンの下端よりも下側に位置している」のとの事項(以下「事項2」という。)は平成24年1月17日の手続補正により請求項6に記載されたものである。

上記事項1及び2を記載する補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でするものかについて検討する。
(1)事項1について
ア.事項1は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書」という。)に、何ら記載されていない。

イ.また、願書に最初に添付した図面(以下「当初図面」という。)の図1、2、8には、クロスフローファン4の下端と熱交換器3の前面下側31の下端Fとが、ほぼ同じ高さである態様が図示されるものの、一見してその高さに上下関係があると認めることはできない。つまり、クロスフローファン4の下端が熱交換器3の前面下側31の下端Fより低いことが明確に示されているとはいえない。

ウ.一方、図1に背面22が示され、これを垂直線として、定規を当てることでわずかな高さの上下関係を確認できる。
また、図8については天面側壁面28aについての水平面を示す一点鎖線が示されており、定規を当てることでわずかな高さの上下関係を確認できる。

エ.しかしながら、これらの図面は明細書とともに発明を説明するために添付されたものであって、設計図面のようなものではないから、当初明細書には何らの記載もない事項について、定規を当てることで確認できる程度のわずかな上下関係が確認できるとしても、当初明細書等に上記事項1が記載されていたとまではいえない。

オ.したがって、「前記クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置し」ているとの事項1は、当初明細書等に記載されていたとはいえず、また、当業者にとって自明の事項ともいえない。
そして、上記事項1を記載することは、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、請求項1に事項1を記載する補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてするものとはいえない。

(2)事項2について
ア.上記事項2は、当初明細書に、何ら記載されていない。

イ.また、当初図面の図1、2、8には、クロスフローファン4の下端とディフューザ部28の天面側壁面28aの延長線とスタビライザ部26の延長線との交点とが、ほぼ同じ高さである態様が図示されるものの、一見してその高さに上下関係があると認めることはできない。つまり、クロスフローファン4の下端がディフューザ部28の天面側壁面28aの延長線とスタビライザ部26の延長線との交点より低いことが明確に示されているとはいえない。

ウ.一方、図1に背面22が示され、これを垂直線として、定規を当てることでわずかな高さの上下関係を確認できる。
また、図8については天面側壁面28aについての水平面を示す一点鎖線が示されており、定規を当てることでわずかな高さの上下関係を確認できる。

エ.しかしながら、これらの図面は明細書とともに発明を説明するために添付されたものであって、設計図面のようなものではないから、当初明細書には何らの記載もない事項2について、定規を当てることで確認できる程度のわずかな上下関係が確認できるとしても、当初明細書等に上記事項2が記載されていたとはいえない。

オ.したがって、「ディフューザ部の天面側壁面の延長線とスタビライザ部の延長線との交点は、クロスフローファンの下端よりも下側に位置している」との事項2は、当初明細書等に記載されていたとはいえず、また、当業者にとって自明の事項ともいえない。
そして、上記事項2を記載することは、当初明細書等のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、請求項5に事項2を記載する補正は、当初明細書等に記載した範囲内においてするものとはいえない。

(3)まとめ
(1)及び(2)で述べたとおり、特許請求の範囲に事項1又は2を記載する補正は当初明細書等に記載した範囲内においてするものとはいえないから、本願の願書に添付した特許請求の範囲を補正する、平成24年1月17日、同年4月2日、同年8月2日及び平成25年6月21日にした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4.理由3について
(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成25年6月21日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(上記3.を参照。)

(2)引用刊行物
ア.引用刊行物1
上記拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物1には、空気調和機に関して、図1?9とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「図1を参照して、室内ユニット本体1は、取付板(図示せず)により、居室に取付けられている。室内ユニット本体1は、室内ユニット1内に配置される部品を保護し、美観を保つためのカバー2を備えている。カバー2の前面に複数個の帯状の貫通孔が形成されており、裏面に室内を浮遊する塵芥をとるフィルタ(図示せず)を取付けられるようになっている。室内ユニット本体1には、室内の空気を循環させるクロスフローファン3が設けられている。クロスフローファン3のまわりに、熱交換器4が、複数個配設されている。クロスフローファン3の下方には、居室に空気を吹き出すときの上下方向を決定する風向ルーバ5が設けられている。
・・・(中略)・・・
熱交換器4は、複数枚の平板フィン6が、相互間を空気が流動するよう一定間隔で平行に並べられたものである。・・・(中略)・・・
熱交換器4の下方の位置に、熱交換器4を囲む略U字断面形状をしたドレンパン8が設けられている。」(段落【0022】?【0025】)
(イ)「このように構成される空気調和機によれば、クロスフローファン3が回転することにより、室内の空気は、カバー2のスリット部から入り熱交換器4に流入する。・・・(中略)・・・伝熱管7に圧接されている平板フィン6に平行に並べられたフィン6,6間を空気が通過する。冷媒と空気との間で、温度差により熱の授受が行なわれる。」(段落【0030】)
(ウ)図1には、上記(ア)の記載を参酌すると、
ほぼ箱状の室内ユニット1が、複数の貫通孔を有するカバー2を前面及び上面に備えること、
風向ルーバを有する居室に空気を吹き出す吹き出し口が室内ユニット1の前面下方に設けられること、
クロスフローファン3が室内ユニット1内に設けられ、熱交換器4がその前方斜め下方、前方斜め上方、後方斜め上方にクロスフローファン3を囲むように逆V字状に配置され、前方斜め下方の熱交換器4は上端が下端より前方に位置し、斜め上方の熱交換器4は下端が上端より前方に位置し、その下方に接して前記風向ルーバを有する吹き出し口へと続く、徐々に広がる通路が設けられること、
前方斜め下方の熱交換器4の下端はドレンパン8の載置され、ドレンパン8の下辺は吹き出し口の天面を形成するとともにクロスフローファン3側端から上方に伸びて先端がクロスフローファン3に近接すること、
通路の下壁は、後方において、湾曲しながら立ち上がり、クロスフローファン3に近づき、後方斜め上方の熱交換器4の途中まで覆う壁となること、
カバーの上方及び前面から複数の貫通孔に向かう複数の矢印、その後3つの熱交換器4をクロスフローファン3側へそれぞれ通過する矢印と後方斜め上方の熱交換器4おける通路の下壁に続く壁の後方では下側から壁の上方へと屈曲してクロスフローファン3側へ向かう矢印、通路をクロスフローファン3側から吹き出し口側へ向かう矢印、及び風向ルーバ5より外側で通路に沿う方向の矢印、及び、
クロスフローファン3の下端と、前方斜め下方の熱交換器4の下端と、ドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端の高さがほぼ同じであることが図示されている。
(エ)記載事項(イ)の「クロスフローファン3が回転することにより、室内の空気は、カバー2のスリット部から入り熱交換器4に流入する」ことから、カバー2の複数の貫通孔はスリット部であって、室内の空気の吸い込み口といえ、クロスフローファン3により空気が流動されるものと理解でき、さらに、記載事項(ア)も参酌すると、図1の矢印は空気の流れを示すものといえる。
そうすると、図1には、吹き出し口の矢印からみてクロスフローファン3により吹き出し口から空気を吹き出すこと、
熱交換器4の矢印からみて熱交換器4はクロスフローファン3の上流側に位置し吸い込み口からクロスフローファン3に向かう空気の流れ中に配設されること、
前方斜め下方及び前方斜め上方の熱交換器4には前面のカバー2のスリット部及び上面のカバー2のスリット部の前側から空気が流れこみ、後方斜め上方の熱交換器4には上面のカバー2のスリット部の後側から空気が流れこむこと、
後方斜め上方の熱交換器4おける通路の下壁に続く壁の後方では下側から壁の上方へと屈曲してクロスフローファン3側へ向かう矢印であることからみて空気が均等ではなく偏って流れていること、
クロスフローファン3の下方に接して設けられ、吹き出し口へと続く、徐々に広がる通路は送風ダクトであること、及び、
クロスフローファン3が空気を吸い込む角度といえる、ドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端から上方に伸びてクロスフローファン3に近接する先端から後方斜め上方の熱交換器4の途中まで覆う壁の上端までの角度より、3つの熱交換器4がクロスフローファン3を覆う角度である、前方斜め下方の熱交換器4の下端から後方斜め上方の熱交換器4の下端までの角度の方が大きいことが示されているといえる。
(オ)さらに、図1には、クロスフローファン3の中心が、前方斜め下方の熱交換器4の下端と後方斜め上方の熱交換器4の下端を結ぶ線分より上側に位置すること、
逆V字状に配置された、前方斜め上方及び後方斜め上方の熱交換器の接する点とクロスフローファン3の中心を結ぶ線が、ドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端から上方に伸びてクロスフローファン3に近接する先端とクロスフローファン3の中心を結ぶ線となす角度が鈍角であること、及び、
上記前方斜め上方及び後方斜め上方の熱交換器の接する点とクロスフローファン3の中心を結ぶ線と、徐々に広がる通路に続く吹き出し口における天面と下壁のほぼ2等分線とがなす角度が鈍角であることも図示される。
上記(ア)及び(イ)の記載事項、(ウ)及び(オ)の図示内容及び(エ)で検討した事項を総合すると、引用刊行物1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「カバー2のスリット部である吸い込み口から室内の空気を吸い込み、吹き出し口から吹き出すクロスフローファン3と、
クロスフローファン3の上流側に位置し、吸い込み口からクロスフローファン3に向かう空気の流れ中に配設される、前面のカバー2のスリット部及び上面のカバー2のスリット部の前側から空気が流れこむ前方斜め下方及び前方斜め上方の熱交換器4並びに上面のカバー2のスリット部の後側から空気が流れこむ後方斜め上方の熱交換器4と、
クロスフローファン3の下方に接して設けられ、吹き出し口へと続く、徐々に広がる通路は送風ダクトであって、吹き出し口の天面を形成するドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端から上方に伸びて先端がクロスフローファン3に近接する部分及び後方において通路の下壁から湾曲しながら立ち上がり、クロスフローファン3に近づき、後方斜め上方の熱交換器4の途中まで覆う壁を有する送風ダクトを有し、
クロスフローファン3が空気を吸い込む角度といえる、ドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端から上方に伸びてクロスフローファン3に近接する先端から後方斜め上方の熱交換器4の途中まで覆う壁の上端の角度より、3つの熱交換器4がクロスフローファン3を覆う角度である、前方斜め下方の熱交換器4の下端から後方斜め上方の熱交換器4の下端までの角度の方が大きく、後方斜め上方の熱交換器4おける通路の下壁に続く壁の後方では下側から壁の上方へと屈曲し、空気が均等ではなく偏って流れている、空気調和機の室内ユニットであって、
逆V字状に配置された、前方斜め上方及び後方斜め上方の熱交換器4の接する点とクロスフローファン3の中心を結ぶ線が、ドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端から上方に伸びてクロスフローファン3に近接する先端とクロスフローファン3の中心を結ぶ線となす角度が鈍角であり、前方斜め上方及び後方斜め上方の熱交換器4の接する点とクロスフローファン3の中心を結ぶ線と、徐々に広がる通路に続く吹き出し口における天面と下壁のほぼ2等分線とがなす角度が鈍角であり、
前方斜め下方の熱交換器4は上端が下端より前方に位置し、斜め上方の熱交換器4は下端が上端より前方に位置し、
クロスフローファン3の下端と、前方斜め下方の熱交換器4の下端の高さがほぼ同じであり、
クロスフローファン3の中心が、前方斜め下方の熱交換器4の下端と後方斜め上方の熱交換器4の下端を結ぶ線分より上側に位置している、
空気調和機の室内ユニット。」

イ.引用刊行物2
同じく引用され、本願出願前に頒布された刊行物2には、図1?10とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「請求項2記載の発明は、本体台枠と、一定の長さを有する複数のブレードを円柱状に配列した羽根車単体を回転軸方向に組み合わせてなるクロスフローファンと、このクロスフローファンに近接・対向して位置するスタビライザと、流路を形成するリアガイダと、熱交換器と、前面カバーと、風向制御手段として流路の吹き出し口における風向を垂直方向に変化させる上下羽根は、風向を水平方向に変化させる左右羽根とを具備した空気調和機」(段落【0011】)
(イ)「(実施例2)図2は、空気調和機の室内ユニットの横断面図、図3は外観斜視図である。図2および図3において概略の流れ及び構成を説明すると、前面カバー1に設けられた吸い込み口2から室内空気が吸い込まれ、前面カバー1の内面に沿わせて設けられている着脱自在なエアーフィルター14を、さらに熱交換器3を通過して、ファン4に吸い込まれる。さらにファン4に吸い込まれた空気はファン4の周囲のリアガイダ5とスタビライザ6とで形成される送風路7を通過して吹き出し口8から放出される。9は吹き出し口8における風向を垂直方向に変化させる上下羽根、10は吹き出し口8における風向を左右方向に変化させる複数からなる左右羽根である。」(段落【0017】)
(ウ)図2には、送風路7に続く吹き出し口8の天面のクロスフローファン4側端から上方に伸びて近接・対向し、その先端にクロスフローファン4に近接する突出部を備えるスタビライザ6や、送風路7の下壁が湾曲して立ち上がり、クロスフローファン4に近接するリアガイダ5、さらには上下2つからなる前面側及び後面側からなる熱交換器3の前面側下方の熱交換器3の下端よりもクロスフローファン4の下端が下側に位置することが図示される。

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「吸い込み口」は、その機能・構成からみて、前者の「吸込口」に相当し、以下同様に、後者の「室内の空気」は前者の「室内空気」に、後者の「吹き出し口」は前者の「吹出口」に、後者の「前方斜め下方及び前方斜め上方の熱交換器4」は前者の「第1の熱交換器」に、後者の「後方斜め上方の熱交換器4」は前者の「第2の熱交換器」に、後者の「空気調和機の室内ユニット」は前者の「空気調和機の室内機」にそれぞれ相当する。
後者の「吸い込み口から室内の空気を吸い込み、吹き出し口から吹き出すクロスフローファン3」は前者の「吸込口から室内空気を吸い込み吹出口から吹き出すためのクロスフローファン」に相当し、
後者の「前面のカバー2のスリット部及び上面のカバー2のスリット部の前側」は「吸い込み口」が「カバー2のスリット部である」から、前者の「吸込口の前面側」に相当し、
後者の「上面のカバー2のスリット部の後側」は同様に前者の「吸込口の背面側」に相当し、
後者の「クロスフローファン3の上流側に位置し、吸い込み口からクロスフローファン3に向かう空気の流れ中に配設され、前面のカバー2のスリット部及び上面のカバー2のスリット部の前側から空気が流れこむ前方斜め下方及び前方斜め上方の熱交換器4」は前者の「クロスフローファンの上流側に位置し、主として前記吸込口の前面側から前記クロスフローファンに向かう空気の流れ中に配設された第1の熱交換器」に相当し、
後者の「クロスフローファン3の上流側に位置し、吸い込み口からクロスフローファン3に向かう空気の流れ中に配設され、」「上面のカバー2のスリット部の後側から空気が流れこむ後方斜め上方の熱交換器4」は前者の「クロスフローファンの上流側に位置し、」「主として前記吸込口の背面側から前記クロスフローファンに向かう空気の流れ中に配設された第2の熱交換器」に相当する。
後者の「前方斜め下方及び前方斜め上方の熱交換器4」は前者の「第1の熱交換器」に相当するから、前者の「前記第1の熱交換器は、前面上側部分と前面下側部分とを有」することと同様の構成といえ、後者の「前方斜め下方」「の熱交換器4」は前者の「第1の熱交換器」の「前面下側部分」に相当し、後者の「前方斜め上方の熱交換器4」は前者の「第1の熱交換器」の「前面上側部分」に相当し、後者の「前方斜め下方の熱交換器4は上端が下端より前方に位置し、斜め上方の熱交換器4は下端が上端より前方に位置している」態様は前者の第1の熱交換器の「前記前面上側部分の下端側は、上端側よりも前側に位置し、前記前面下側部分の上端側は、下端側よりも前側に位置」している態様に相当する。
後者の送風ダクトについての「吹き出し口の天面を形成するドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端から上方に伸びて先端がクロスフローファン3に近接する部分」は、その形状及び配置からみてスタビライザとして機能することは当業者にとって明らかであるから、前者の「スタビライザ部」に相当する。なお、スタビライザは例えば引用刊行物2や特開2002-276976号公報等にも示されるように当該技術分野において周知である。また、後者の「後方において通路の下壁から湾曲しながら立ち上がり、クロスフローファン3に近づき、後方斜め上方の熱交換器4の途中まで覆う壁」は例えば引用刊行物2にもリアガイダが示されるように、前者の「リアガイド部」に相当する。そうすると、後者の「クロスフローファン3の下方に接して設けられ、吹き出し口へと続く、徐々に広がる通路は送風ダクトであって、吹き出し口の天面を形成するドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端から上方に伸びて先端がクロスフローファン3に近接する部分及び後方において通路の下壁から湾曲しながら立ち上がり、クロスフローファン3に近づき、後方斜め上方の熱交換器4の途中まで覆う壁を有する送風ダクト」は前者の「クロスフローファンの近傍および下流側に位置し、スタビライザ部およびリアガイド部を有する送風ダクト」に相当する。
後者の「クロスフローファン3が空気を吸い込む角度といえる、ドレンパン8の下辺のクロスフローファン3側端から上方に伸びてクロスフローファン3に近接する先端から後方斜め上方の熱交換器4の途中まで覆う壁の上端の角度より、3つの熱交換器4がクロスフローファン3を覆う角度である、前方斜め下方の熱交換器4の下端から後方斜め上方の熱交換器4の下端までの角度の方が大き」いことは、前者の「吸込開口角θが熱交換器取り囲み角ψより」「小である」ことに対応し、後者の「後方斜め上方の熱交換器4おける通路の下壁に続く壁の後方では下側から壁の上方へと屈曲し、空気が均等ではなく偏って流れている」との現象は、当業者であれば「後方斜め上方の熱交換器4の途中まで覆う壁」が流れに影響を与えていると当業者が直ちに想到することであって、前者の「指向性をもって偏って吸い込む現象」と同様であるといえる。
後者の「クロスフローファン3の中心が、前方斜め下方の熱交換器4の下端と後方斜め上方の熱交換器4の下端を結ぶ線分より上側に位置している」態様は、前者の「クロスフローファンの軸中心は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端と、前記第2の熱交換器の下端とを結ぶ線分よりも上側に位置している」態様に相当する。
したがって、両者は、
「吸込口から室内空気を吸い込み吹出口から吹き出すためのクロスフローファンと、前記クロスフローファンの上流側に位置し、主として前記吸込口の前面側から前記クロスフローファンに向かう空気の流れ中に配設された第1の熱交換器と、主として前記吸込口の背面側から前記クロスフローファンに向かう空気の流れ中に配設された第2の熱交換器と、前記クロスフローファンの近傍および下流側に位置し、スタビライザ部およびリアガイド部を有する送風ダクトとを有し、吸込開口角θが熱交換器取り囲み角ψより指向性をもって偏って吸い込む現象が発生する程度に小である空気調和機の室内機であって、
前記第1の熱交換器は、前面上側部分と前面下側部分とを有し、
前記前面上側部分の下端側は、上端側よりも前側に位置し、
前記前面下側部分の上端側は、下端側よりも前側に位置し、
前記クロスフローファンの軸中心は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端と、前記第2の熱交換器の下端とを結ぶ線分よりも上側に位置している、
空気調和機の室内機。」である点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。

相違点A:本願発明は、「前記スタビライザ部のファンへの近接尖端部と前記クロスフローファンの軸中心とを結ぶ線分をLcとし、
前記第1の熱交換器の上端の延長線と前記第2の熱交換器の上端の延長線との交点Pと、前記クロスフローファンの軸中心とを結ぶ線分をLpとし、線分Lcと線分Lpとが成す角度が100度?140度であり、かつ、ディフューザ部の天面側壁面と底面側壁面とが成す開き角度の2等分線をLmとし、前記線分Lpと前記2等分線Lmとの成す角度が130度以下であ」るのに対して、引用発明は図面から一応「逆V字状に配置された、前方斜め上方及び後方斜め上方の熱交換器の接する点とクロスフローファン3の中心を結ぶ線が、ドレンパン8のクロスフローファン3側端から上方に伸びてクロスフローファン3に近接する先端とクロスフローファン3の中心を結ぶ線となす角度が鈍角であり、上記前方斜め上方及び後方斜め上方の熱交換器の接する点とクロスフローファン3の中心を結ぶ線と、徐々に広がる通路に続く吹き出し口における天面と下壁のほぼ2等分線とがなす角度が鈍角であ」るといえる程度のものである点。
相違点B:「前記クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置し」ているのに対して、引用発明は「クロスフローファン3の下端と、前方斜め下方の熱交換器4の下端の高さがほぼ同じであ」る点。

そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点Bについて
相違点Bに係る本願発明の構成については、3.(1)ウ.で述べたように、図1及び8で定規を当てることでわずかな高さの上下関係を確認できるにすぎず、ほぼ同じ高さであるといえるものであり、段落【0010】に特許請求の範囲に対応した記載があるのみで、明細書中にその位置関係や技術的意義について何ら説明されていない。
一方、引用発明は、わずかな高さの上下関係は不明ながら、「クロスフローファン3の下端と、前方斜め下方の熱交換器4の下端の高さがほぼ同じであ」り、本願明細書に「クロスフローファンの下端は、前記第1の熱交換器の前記前面下側部分の下端よりも下側に位置し」ていることについての何らの説明がないことを参酌すると、クロスフローファンや第1及び第2の熱交換器の配置に関して、引用発明は、大略、本願発明と同様であるといえる。
そして、クロスフローファンの下端を前面の熱交換器の前面下側部分の下端より低くすることは、例えば特開2004-156880号公報や引用刊行物2、特開2005-77072号公報、特開2004-183954号公報等に示されるように空気調和機の室内機として周知のことでもあるから、引用発明のほぼ同じ高さであるクロスフローファン3の下端と前方斜め下方の熱交換器4の下端の高さについて、全体的な配置やデザインから、上記周知の配置に倣って、クロスフローファン3の下端を、ほぼ同じ高さである前方斜め下方の熱交換器4の下端の下側に位置させる程度のことは、当業者が適宜なし得た設計的事項といわざるを得ない。
そしてそのことにより大きく空気の流れが変わるとはいえず、格別の効果を奏するとはいえない。
なお、引用発明だけでなく、上記特開2004-156880号公報にも本願発明と同様の型式の室内機が記載されているといえる。

(2)相違点Aについて
ア.スタビライザ部のファンへの近接尖端部について
スタビライザにクロスフローファンに近接する先端部を設けることは、例えば引用刊行物2に記載されるように、当該技術分野において慣用手段にすぎないことから、当業者が適宜なし得たことである。

イ.本願明細書の段落【0035】?【0037】及び【0041】等には、線分Lcと線分Lpとが成す角度(吸込方向角φ)を100度?140度とすること及び線分Lpと2等分線Lmとの成す角度(吹出方向角ω)を130度以下とすることについて、吸込開口角θが約150度、熱交換器取り囲み角ψが約220度である図1及び2の実施形態1において、それぞれ、吸込方向角φを変えて風量を調べた図3、及び吹出方向角ωを変えて風量を調べた図5から、上記範囲とする旨が記載されている。
一方、風量は、種々の条件により変化するものである。例えば、吸込口の配置、送風ダクトの具体的形状、リアガイド部と第2の熱交換器との重なり具合や間隔・形状等の具体的配置、第1の熱交換器とスタビライザ部との重なり具合や間隔・形状等の具体的配置、第1及び第2の熱交換器それぞれの具体的構造やそれらの上流側における空気が流れる部分の構造、ファンコイルの送風量等と種々の要件があり、それらが総合的に風量に作用することは当該技術分野の技術常識である。
そうすると、特定の条件である実施形態1のものにおいて、吸込方向角φ及び吹出方向角ωをそれぞれ個別に変えて風量を調べても、例えば第1と第2の熱交換器に流れる風量やその風路に対する通風抵抗が異なったり、第2の熱交換器とリアガイドとの関係が異なる等の、種々の室内機に対しては、吸込方向角φ及び吹出方向角ωのそれぞれにおいて同じ風量のグラフとなるとは限らない。
さらにいえば、請求人は平成25年6月21日付けの意見書において、「吸込方向角φは前面側熱交換器と背面側熱交換器の通過風量を同時に考察するパラメータ」と説明しているが、例え熱交換機器とクロスフローファン等の関連構成が図2の実施態様1と同様であるとしても、上記したように他の種々の構成が異なるとき、吸込方向角φに対する風量が図3と同じになるとは限らない。
同じく吹出方向角ωについても「この角度によって送風系の流路抵抗が増減し、送風系を通過する風量が増減します。」としているが、送風路の形状やクラスフローファンの形状、それらの関連構成や吸い込み側の構成が異なるとき、吹出方向角ωに対する風量が図5のようになるとは限らない。
そうすると、例え、「吸込口から室内空気を吸い込み吹出口から吹き出すためのクロスフローファンと、前記クロスフローファンの上流側に位置し、主として前記吸込口の前面側から前記クロスフローファンに向かう空気の流れ中に配設された第1の熱交換器と、主として前記吸込口の背面側から前記クロスフローファンに向かう空気の流れ中に配設された第2の熱交換器と、前記クロスフローファンの近傍および下流側に位置し、スタビライザ部およびリアガイド部を有する送風ダクトとを有し、吸込開口角θが熱交換器取り囲み角ψより指向性をもって偏って吸い込む現象が発生する程度に小である空気調和機の室内機」であっても、上記したように種々の構成が想定できるものであるから、上記100度?140度及び130度という数値が、上記の室内機の全てに対応しているとはいえず、かつ、臨界的意義を有しているともいえない。

ウ.一方、一般的に室内機の風量を大きくすることは当業者がその設計時に通常考慮する筈のことである。
そして、風量を考慮するに際し、クロスフローファンに関してみると、その吸い込み側と吹き出し側それぞれに着目することは、当業者が設計時に適宜なし得たことである。
(ア)クロスフローファンの吸い込み側について
引用発明は、上記(1)で述べたように、クロスフローファンや第1及び第2の熱交換器の配置に関して、大略、本願発明と同様であるとともに、クロスフローファンの下端を前面の熱交換器の前面下側部分の下端より低くすることも当業者にとって容易であって、そのような室内機において、上記したようの風量を考慮してクロスフローファンの吸い込み側の詳細を設計するとき、吸い込み側の流れについて前側がスタビライザ部に後側がリアガイダ部に大きく影響されることは明らかであるから、そのスタビライザ部に着目し、設計上基本となる位置について、上記した風量との関係で、試験を繰り返して設計することは当業者が通常なし得た事項である。
また、送風に関するものであるから、その影響が大きい熱交換器に着目して、逆V字状の熱交換器のほぼ中央であり、鉛直方向に近い、前方斜め上方及び後方斜め上方の熱交換器の接する逆V字状の頂点とクロスフローファンの軸中心を結ぶ線分との関係で、スタビライザ部の位置を角度で表すことも当業者が適宜採用できたことといえる。
さらに上記ア.で述べたように100度?140度という数値が全ての室内機において同じであるとはいえず、臨界的意義を有するものでもないことや、引用発明もほぼ同様の鈍角であることから、上記したようにスタビライザ部の設計上基本となる位置について風量との関係で試験を繰り返して設計し、吸込方向角φを100度?140度とすることは当業者が適宜なし得た設計的事項といわざるを得ない。

(イ)クロスフローファンの吹き出し側について
また、クロスフローファンの吹き出し側については、その吹き出す方向が設計上の基本的事項であり、風量に影響するものである。
一方、室内機における吹出方向は、冷房時に水平方向に吹き出すとともに、暖房時も下方又は斜め下方に吹き出すものであるから、斜め下方に向かわせることが通常である。
そうすると、斜め下方に向かう方向において風量を大きくするように、設計時に、試験を繰り返しその吹き出す方向を決定することは、当業者が容易になし得たことである。
そしてその方向についても上記(ア)と同様に逆V字状の頂点とクロスフローファンの軸中心を結ぶ線分との関係で、徐々に広がる通路に続く吹き出し口における天面と下壁のほぼ2等分線となす角度で、吹き出す方向の角度を表すことも当業者が適宜採用できたことといえる。
そうすると、上記ア.でも述べたように、130度以下という数値が全ての室内機において同じであるとはいえず、臨界的意義を有するものでもないことや、引用発明もほぼ同様の鈍角であることから、上記したように吹き出し側の設計上基本となる吹き出し方向について風量との関係で試験を繰り返して設計し、吹出方向角ωを130度以下とすることは当業者が適宜なし得た設計的事項といわざるを得ない。

エ.まとめ
以上ア.?ウ.で述べたようであるから、相違点Aに係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことであって、そのことによる格別の効果もない。

また、上記相違点A及びBを合わせ考えても、本願発明の効果が格別であるとはいえない。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用発明、引用刊行物2に記載の事項、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上、3.及び4.で述べたとおり、本願の明細書又は特許請求の範囲についてした補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、同法第49条第1項第1号に該当し、また、本願発明が同法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであって、同法第49条第1項第2号に該当するので、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-17 
結審通知日 2013-07-23 
審決日 2013-08-08 
出願番号 特願2011-270050(P2011-270050)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
P 1 8・ 55- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤原 直欣山崎 勝司  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 鳥居 稔
平上 悦司
発明の名称 空気調和機の室内機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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