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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1279428
審判番号 不服2010-27167  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-01 
確定日 2013-09-24 
事件の表示 特願2006-554218「デジタルカメラ用集積レンズ及びチップ・アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 9日国際公開、WO2005/081853、平成19年 8月16日国内公表、特表2007-523568〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯

[1]手続
本願は、2005年2月18日を国際出願日(優先権主張2004年2月20日 米国)とする国際特許出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

手続補正 :平成20年 2月 8日
拒絶理由通知 :平成21年12月 3日(起案日)
手続補正 :平成22年 6月 9日
拒絶査定 :平成22年 7月28日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成22年12月 1日

[2]査定の理由
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。
本願の請求項1ないし請求項68に係る発明(平成22年6月9日付け手続補正による)は、下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開2001-292365号公報
刊行物2:特開2002-252796号公報
刊行物3:特開2003-131112号公報
刊行物4:特開2003-78077号公報

第2 本願発明
本件出願の請求項1ないし68に係る発明は、本願明細書及び図面(平成22年6月9日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし68に記載した事項により特定されるとおりのもであるところ、そのうち、請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。

【請求項8】
カメラ集積回路と、
前記カメラ集積回路上に少なくとも部分的に形成されたホルダと、
前記カメラ集積回路上の保護カバーと、
レンズ・アセンブリとを備える集積カメラ回路及びレンズ・モジュールであって、
前記保護カバーが前記ホルダによって定位置に保持され、
前記レンズ・アセンブリが前記ホルダを介して前記カメラ集積回路に取り付けられ、
前記ホルダが前記レンズ・アセンブリの該ホルダへの挿入を可能にし、これによって前記カメラ集積回路に対する前記レンズ・アセンブリを位置決めし、
前記レンズ・アセンブリと前記保護カバーの間に間隙が設けられるように該レンズ・アセンブリが前記ホルダに取り付けられることを特徴とする集積カメラ回路及びレンズ・モジュール。

第3 引用刊行物の記載
(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2001-292365号公報(以下、刊行物1という)には、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、CCDイメージセンサ等の各種の撮像素子が用いられる撮像装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の撮像装置としては、例えば実願平2-46226号(実開平4-5660号)のマイクロフィルム(以下、公知資料という。)に記載されたものがあった。この公知資料には、撮像素子(半導体チップ)を筐体内に収納してその筐体内を撮像素子と共に透光性樹脂で充填することで、撮像素子を筐体と一体形成して筐体自体をパッケージとする一方、撮像素子の受光面に被写体像を結像する結象レンズ部を支持する鏡筒を筐体に固着する構成が開示されている。また、その公知資料には、筐体は撮像素子をボンデイングするリードフレームを収納する構成も開示されている。この公知資料に開示された構成では、被写体は結像レンズにより撮像素子上の受光面に結像され、その被写体の光学情報が光電変換されて撮像素子から電気信号として出力される。このとき、結像レンズにより結像される被写体情報が撮像素子上の受光面に結像されたときに、焦点が合っていないと正確な情報として出力されない。このため、従来の撮像装置では、鏡筒と筐体とを固着するためのねじ部を設け、結像レンズ部と撮像素子との距離を調整して組立てることにより焦点を合わせるように構成している。尚、その公知資料には、パッケージ、鏡筒、筐体は遮光性の材質とされ、組立後に、撮像装置の内部に不必要な外光が侵入しないようにされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の撮像装置では、結像レンズ部と撮像素子との距離を調整して焦点を合わせるために鏡筒及び筐体の部品が個別に必要であり、それらの部品コストやそれらを組立てる工程等のコストが発生していた。また、従来の撮像装置では、各部品の組み立て部分や組立公差等を撮像装置の設計時に考慮する必要があるため、撮像装置の小型化にも弊害があった。さらに、従来の撮像装置では、それらの鏡筒や筐体等の部品は部品コスト低減のために、一般的には成形により得られるが、一度成形部品の金型を設計すると頻繁にその形状を変更することが困難であり、撮像装置が組み込まれる本体側の機器の設計にも制限を与える場合もあった。一方、上述の公知資料に開示された従来の撮像装置では、撮像素子の封止機能を確実にするために、パッケージ内に光透過性樹脂を充填するが、この樹脂により微妙な光の屈折率の変化が生じて撮像性能に影響を及ぼすことから、撮像素子上を覆う封止樹脂は透光性に優れたものが必要である。また、封止後の光学的特性に歪みのない均一な樹脂技術が要求され、充填する封止樹脂材料の選定及び充填時の定量化技術が困難になるという課題もあった。
【0004】そこで、この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、部品点数を減少して小型化・低コスト化を実現しうる新規な撮像装置を提供することを目的とする。また、この発明はこのような新規な撮像装置を製造するための効率的な撮像装置の製造方法をも提供することを目的とする。

【0030】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態1.以下、この発明の実施の形態1について、図1、図2、図3を用いて説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る撮像装置の構成を説明する構成図である。図1において、1は基板、2は受光部2aを有する撮像素子、3は結像レンズ、4は結像レンズ3を支持する鏡筒で、取り付け用のねじ部ねじ溝4aを形成している。5はねじ部5bを側壁部5cに形成した封止樹脂である。撮像素子2は、D/B法等により基板1上の所定の位置に配置し、撮像素子2上の入出力端子(図示せず)及び基板1上の回路(導電)パターン(図示せず)は、W/B法等により金属線(図示せず)によって電気的に接続している。封止樹脂5は、この金属線による接続部及び撮像素子2の側面部に吸湿や異物の侵入を防止するために、又は外力等による破損防止のために形成している。また、この封止樹脂5は硬質で加工性のある材料、例えばホットメルト等により構成している。一方、撮像素子2の受光面2aは、その上部を開口させるために側壁部5cによって開口部5aを形成している。その側壁部5cの周縁部には、結像レンズ3を支持する鏡筒4に設けられた取り付けねじ4aと対応するねじ部5bを加工・形成して、鏡筒4を側壁部5cに螺着・固定している。
【0031】次に、この発明の実施の形態1に係る撮像装置の製造方法を図2(a)(b)(c)を用いて説明する。図2(a)(b)(c)において、図1と同一の符号は同一又は相当部分を示すためその説明は省略する。ここで、6は、封止樹脂5を形成するための金型である。但し、金型6は上側金型6のみ図示し、下側金型は図示していない。図2(a)は、金型6が基板1及び撮像素子2に当接する前の状態を示す当接前工程図である。図2(b)は、金型6が基板1及び撮像素子2上に当接時の状態を示す当接時工程図である。もっとも、以下の当接時工程にあっては、金型6が基板1又は撮像素子2と僅かな隙間を持たせる場合も含むものとする。さて、当接時工程図において、金型6はその一部が基板1の上面に当接した状態で、その中央部が撮像素子2上の受光面2aに不要な応力が加わることなく当接するように精度良く加工を施している。このとき、金型6は、基板1と撮像素子2とを電気的に接続する金属線を封止し、かつ、受光面2aを開口させる側壁部5cを形成するための形状を形成している。したがって、金型6と撮像素子2及び基板1との間には、図2(b)に示すように、空隙部が形成される。この当接時工程において、硬質で加工性のある封止樹脂5を射出し、連続して冷却することにより、図2(c)に示すように、瞬時に封止樹脂5の特定の形状を得ることができる。図2(c)は、封止樹脂5の形成後における金型6の開放状態を示す当接後工程図である。尚、金型6は一般には製品である撮像装置の表側と裏側の2つのパートによって構成されるが、図2(a)(b)(c)ではこの発明に係る撮像装置の表側の上側金型6のみを図示し、その裏側の下側金型は図示していない。
【0032】次に、図3(a)(b)(c)は、この実施の形態1に係る撮像装置の製造・組立方法について説明するための組立工程説明図である。図3(a)は、図2に示した各工程により、硬質で加工性のある側壁部5cを有する封止樹脂5を形成したときの構成図である。撮像素子2の受光面2aの上部には側壁部5cにより開口部5aを形成している。図3(b)に示すように、封止樹脂5の開口部5aを形成する側壁部5cの内壁部には鏡筒4に設けられたねじ部4aと対応するようにねじ部5bを形成する。次に、図3(c)に示すように、封止樹脂5の側壁部5cに結像レンズ3を支持するための鏡筒4を固着する。図3(a)(b)(c)において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すため説明は省略する。このようにこの発明の実施の形態1によれば、硬質で加工性のある材料を封止樹脂5に用いることにより、鏡筒4を封止樹脂5の側壁部5cに取り付けるためのねじ部5bを封止樹脂5の側壁部5cに加工して一体的に形成することができる。したがって、筐体等の別の部品は不要となり、部品点数を減らすことができるほか、筐体等の組立部分を設ける必要がないため、撮像装置の小型化が実現できる。また、この発明の実施の形態1において、赤外光除去機能を有するIRフィルター等の光学部品類(図示せず)を配設してもよい。尚、以下に説明する実施の形態においては、撮像素子2の入出力端子部、基板回路パターン、金属線等は図示しないものとする。
【0033】発明の実施の形態2.次に、この発明の実施の形態2について、図4、図5を用いて説明する。図4は、この発明の実施の形態2に係る撮像装置の断面構成を示す構成図である。図4において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すため説明は省略する。図4においては、この発明の実施の形態1に係る撮像装置とは鏡筒4のねじ部4aと封止樹脂5のねじ部5bの配置関係が相違する。図5は、この発明の実施の形態2に係る撮像装置において鏡筒4を封止樹脂5の側壁部5cに固着する前の状態を示す説明図である。図5において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すため説明は省略する。この実施の形態2における撮像装置では、図5に示すように、鏡筒4の取り付けねじ部4aを鏡筒4の内壁に設け、それに対応する封止樹脂5の側壁部5cにおけるねじ部5bを側壁部5c及び開口部5aの外側に形成している。したがって、この発明の実施の形態2に係る撮像装置によれば、前述の実施の形態1において説明した効果を奏するほか、硬質で加工性のある封止樹脂5のねじ部5bの加工時に発生する加工屑等が封止樹脂5の開口部5aの内部に落下して撮像素子2の受光面2a上に付着することを防止することでき、筐体4の組立時に筐体4のねじ部4aと封止樹脂5のねじ部5bの摺動により発生する塵埃等についても、封止樹脂5の開口部5aの内部に落下して撮像素子2の受光面2a上に付着することを防止することができ、さらに、撮像装置の生産工程における不良率を低減できるため生産コストを低減することもできる。

【0039】発明の実施の形態5.次に、この発明の実施の形態5に係る撮像装置の製造方法について、図13、図14を用いて説明する。図13は、この発明の実施の形態5に係る撮像装置の断面構成図である。この発明の実施の形態5に係る撮像装置は、基板1、撮像素子2及びそれらを電気的に接続する部分を封止する封止樹脂5を有し、この封止樹脂5の側壁部5cに形成されるねじ部5bが、封止樹脂5の成形用の金型6により形成するようにしたものである。図14(a)(b)(c)及び(d)は、この発明の実施の形態5に係る撮像装置を製造するための工程を説明する製造工程図である。図14(a)に示すように、金型6は、撮像素子2の受光面2aに対向する位置の開口部5aを形成するための金型6-1と封止樹脂5の側壁部5cの外側にねじ部5bを形成するための金型6-2とにより構成している。図14(a)は、金型6-1及び金型6-2が閉じた状態を示す工程図である。この状態で、図14(b)に示すように、樹脂を射出して封止樹脂5を成形する。ついで、封止樹脂5を成形後に、図14(c)(d)に示すように金型6-1及び6-2を開放する。こうして、図14(d)に示すように封止樹脂5の側壁部5cにねじ部5bが形成される。このねじ部5bは、図示しない鏡筒4のねじ部4aが固着される。尚、撮像素子2の受光面2aと鏡筒4に支持された結像レンズ3との距離は鏡筒4を回動することにより調整することができる。以上のように、この発明の実施の形態5によれば、結像レンズ3を支持する鏡筒4を取り付けるため、封止樹脂5の側壁部5cにねじ部5bを一体化して形成することから、製造工数が減り、前述の実施の形態1においても説明したように、筐体等の別部品が不要となって部品点数を減らすことができ、低コスト化が可能となる。

【0048】発明の実施の形態13.次に、この発明の実施の形態13について、図28を用いて説明する。図28は、この発明の実施の形態13に係る撮像装置を示す構成図である。この発明の撮像装置では、撮像素子2の上面に透光性板11を配置し、硬質で加工性のある材料の封止樹脂5により透光性板11、撮像素子2及び基板1を一体化し、また、撮像素子2上の受光面2aに対向する封止樹脂5の位置に開口部5aを設けたものである。尚、図28において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すためその説明は省略する。図29、図30は、それぞれこの発明の実施の形態13に係る撮像装置の構成を示す構成図及び製造工程を示す工程図である。図29に示すように、透光性板11を撮像素子2の受光面2a上における所定の位置に配置する。ここで、図30に示すように、撮像素子2及び透光性板11の側面部分に空隙を形成し、透光性板11との間に封止樹脂5の側壁部を形成するように、上側金型6を基板1に接するように閉じる。この段階で、封止樹脂5を空隙部に射出・成形する。このとき、金型6はその一部が基板1に当接した状態で、その中央部が透光性板11に不要な応力が加わることなく当接するように精度良く加工することにより、撮像素子2の受光面2aに対向する封止樹脂5の位置に開口部5aを形成することができる。尚、図29、図30において、図28と同一符号は同一又は相当部分を示すためその説明は省略する。このように、この発明の実施の形態13によれば、封止樹脂5が加工性を有することから、前述までの実施の形態に説明した省部品化・小型化の効果を有するとともに、透光性板11を封止樹脂5により容易に一体化することができる。また、受光面2aを含む撮像素子2を精度良く吸湿等から封止することができ、製造ラインにおいての取り扱いが容易になり、生産性向上による生産コスト低減を図ることもできる。ここで、透光性板11は赤外光遮断機能等の光学機能を有する透光性板としてもよい。尚、この発明の実施の形態13においても、金型6は製品の表側における上側金型だけを図示し、製品の裏側における下側金型の図示していない。

【0058】ところで、この発明の実施の形態17では、結像レンズが焦点調整機構を持たない撮像装置で説明したが、例えばこの発明の実施の形態1に示すような結像レンズが調整機構を有する撮像装置においても、同様の効果を得ることができる。さらに、赤外光遮断機能等の光学機能を有する透光性板等と一体化したものでもよく、封止樹脂5が遮光機能を有していてもよい。即ち、この発明の撮像装置の特徴が及ぶ範囲は、撮像装置の光学部品や撮像装置を構成する部品の構成、配置方法、実装方法を限定するものではない。また、硬質で加工性のある封止樹脂の取り付け部は、その形状及び数についても限定するものではない。

(2)刊行物1に記載された発明
以上の刊行物1の記載からみて、刊行物1には、次の構成を有する発明が記載されている。

(a)撮像素子
刊行物1の【0030】の記載によれば、「図1において、1は基板、2は受光部2aを有する撮像素子、・・・撮像素子2は、D/B法等により基板1上の所定の位置に配置し、撮像素子2上の入出力端子(図示せず)及び基板1上の回路(導電)パターン(図示せず)は、W/B法等により金属線(図示せず)によって電気的に接続している。」とあるから、刊行物1記載の発明は、導電パターンを有する基板1上の所定の位置に配置された受光部を有する撮像素子2を有しているということができる。

(b)封止樹脂
刊行物1の【0030】の記載によれば、「5はねじ部5bを側壁部5cに形成した封止樹脂である。・・・一方、撮像素子2の受光面2aは、その上部を開口させるために側壁部5cによって開口部5aを形成している。その側壁部5cの周縁部には、結像レンズ3を支持する鏡筒4に設けられた取り付けねじ4aと対応するねじ部5bを加工・形成して、鏡筒4を側壁部5cに螺着・固定している。」とある。
また、刊行物1の【0031】には「図2(a)(b)(c)において、図1と同一の符号は同一又は相当部分を示すためその説明は省略する。ここで、6は、封止樹脂5を形成するための金型である。」、「図2(a)は、金型6が基板1及び撮像素子2に当接する前の状態を示す当接前工程図である。図2(b)は、金型6が基板1及び撮像素子2上に当接時の状態を示す当接時工程図である。もっとも、以下の当接時工程にあっては、金型6が基板1又は撮像素子2と僅かな隙間を持たせる場合も含むものとする。さて、当接時工程図において、金型6はその一部が基板1の上面に当接した状態で、その中央部が撮像素子2上の受光面2aに不要な応力が加わることなく当接するように精度良く加工を施している。このとき、金型6は、基板1と撮像素子2とを電気的に接続する金属線を封止し、かつ、受光面2aを開口させる側壁部5cを形成するための形状を形成している。したがって、金型6と撮像素子2及び基板1との間には、図2(b)に示すように、空隙部が形成される。この当接時工程において、硬質で加工性のある封止樹脂5を射出し、連続して冷却することにより、図2(c)に示すように、瞬時に封止樹脂5の特定の形状を得ることができる。図2(c)は、封止樹脂5の形成後における金型6の開放状態を示す当接後工程図である。」とある。また、図1、図2を参酌すると、封止樹脂は、基板から上方に向かって形成されているものであって、上記封止樹脂に設けられた側壁部は、封止樹脂が途中で屈曲することにより、封止樹脂が基板と接する位置よりも撮像素子の内側に配置され、撮像素子の上面に接し、撮像素子の上方に伸びる形状である。
以上のことから、刊行物1記載の発明は、封止樹脂は、基板から上方に向かって形成されているものであって、上記封止樹脂に設けられた側壁部は、封止樹脂が途中で屈曲することにより、封止樹脂が基板と接する位置よりも撮像素子の内側に配置され、撮像素子の上面に接し、撮像素子の上方に伸びる形状であって、その側壁部5cの周縁部には、結像レンズ3を支持する鏡筒4に設けられた取り付けねじ4aと対応するねじ部5bを加工・形成して、鏡筒4を側壁部5cに螺着・固定する封止樹脂、を有しているということができる。

(c)透光性板
刊行物1の【0048】(発明の実施の形態13)の記載によれば、「この発明の実施の形態13について、図28を用いて説明する。」、「尚、図28において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すためその説明は省略する。」とあり、「この発明の撮像装置では、撮像素子2の上面に透光性板11を配置し、硬質で加工性のある材料の封止樹脂5により透光性板11、撮像素子2及び基板1を一体化し、また、撮像素子2上の受光面2aに対向する封止樹脂5の位置に開口部5aを設けたものである。」とある。
すなわち、【0048】の記載から認定できる、刊行物1記載の発明は、図1の記載及び【0030】の記載にある「導電パターンを有する基板1上の所定の位置に配置された撮像素子2」と、封止樹脂5とを有し、その撮像素子2の上面に透光性板11を配置した構成を有しているということができ、言い換えると、撮像素子2の上に透光性板を備えているということができる。

(d)結像レンズを支持する鏡筒
刊行物1の【0030】の記載によれば、「3は結像レンズ、4は結像レンズ3を支持する鏡筒で、取り付け用のねじ部ねじ溝4aを形成している。」とあるから、刊行物1記載の発明は「結像レンズ3を支持する鏡筒4」を有している。

(e)撮像装置
【0048】の記載によれば、「この発明の撮像装置では、撮像素子2の上面に透光性板11を配置し、硬質で加工性のある材料の封止樹脂5により透光性板11、撮像素子2及び基板1を一体化し、また、撮像素子2上の受光面2aに対向する封止樹脂5の位置に開口部5aを設けたものである。」とあるから、刊行物1に記載の発明は「撮像素子2」、「透光性板11」、「封止樹脂5」、「基板1」等を有した撮像装置の発明であるということができる。

(f)透光性板の取付け
刊行物1の【0048】の記載によれば、「撮像素子2の上面に透光性板11を配置し、硬質で加工性のある材料の封止樹脂5により透光性板11、撮像素子2及び基板1を一体化し」、「図29に示すように、透光性板11を撮像素子2の受光面2a上における所定の位置に配置する。ここで、図30に示すように、撮像素子2及び透光性板11の側面部分に空隙を形成し、透光性板11との間に封止樹脂5の側壁部を形成するように、上側金型6を基板1に接するように閉じる。この段階で、封止樹脂5を空隙部に射出・成形する。」の記載からみて、透光性板を受光面の所定の位置に配置した後、封止樹脂の側壁を形成するように金型を閉じ、封止樹脂を射出・成形することで、封止樹脂により、透光性板は、撮像素子及び基板と一体になっていることが理解できるから、透光性樹脂は、封止樹脂により、所定の位置に配置された状態で撮像素子2及び基板1と一体化されているということができる。

(g)まとめ
刊行物1には、【0030】の記載から認定できる発明と、【0048】の記載から認定できる発明とが記載されているが、このうち【0048】の記載から認定できる発明として、以下のとおりの発明(以下、引用発明という。)を認定することができる。

導電パターンを有する基板1上の所定の位置に配置された受光部を有する撮像素子2と、
封止樹脂5と、
撮像素子2の上に透光性板を備え
透光性樹脂は、封止樹脂により、所定の位置に配置された状態で撮像素子2及び基板1と一体化された、
撮像装置。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比してみると、次のことが認められる。

(a)「カメラ集積回路」について
本願明細書の発明の詳細な説明には、「カメラ集積回路」なる表現がない。請求人は、平成22年6月9日付け意見書で『補正後請求項8の「カメラ集積回路と、前記カメラ集積回路上に少なくとも部分的に形成されたホルダと、前記カメラ集積回路上の保護カバーと、レンズ・アセンブリとを備える集積カメラ回路及びレンズ・モジュールであって、前記保護カバーが前記ホルダによって定位置に保持され、」との記載は、出願時明細書(0008)の「本発明の実施例はレンズ・アセンブリを有する。レンズ・アセンブリは成形された部品を使用して、カメラ・チップに強固に接着されている。成形された部品は、カメラ・チップがすでに取り付けられているプリント回路基板上の定位置で形成される。その後、レンズ・アセンブリは成形品に挿入され接着剤によって定位置に保持される。」との記載、・・・平成20年2月8日付で提出した手続補正書の明細書(0030)の「第1に、「保護カバーの配置」工程(108)において、保護カバー(33)がカメラ・チップ(図10中の(12))の上に配置される。必要に応じて、保護カバーの配置は、レンズ・マウントのオーバーモールド工程(103)中に行われてもよく、カメラ・チップの取り付け工程(102)中に別の時点に行われてもよく、又は省略されてもよい。」との記載』に基づく補正であると主張している。
上記主張によれば、「カメラ集積回路上の保護カバー」の根拠が、「保護カバー(33)がカメラ・チップ(図10中の(12))の上に配置される。」であるといえるから、発明の詳細な説明の「カメラ・チップ」が「カメラ集積回路」であるといえる。そして、発明の詳細な説明には、「カメラ・チップにはセンサーアレイ領域(14)を有し、センサーアレイ(14)に画像を取得させるのに必要又は所望の多くの追加的な要素(時間、及び類似のもの)をも有することを、当業者は認識するであろう。図1の例において、プリント回路基板(PCB、printed circuit board)(16)にカメラ・チップ(12)が装着される(以下に詳述する)。カメラ・チップ(12)が複数のワイヤ接合により(図1においては2つだけが示される)PCB(16)に対して電気的に接続される。」とあるから、本願発明の「カメラ集積回路」は、「センサーアレイ領域(14)を有し、センサーアレイ(14)に画像を取得させるのに必要な要素を有する」カメラ・チップであるといえる。
これに対して、引用発明の撮像素子は、「受光部」を有し、この受光部から、被写体像を取得していることは明らかであって、撮像素子は、【0001】の記載によれば「CCDイメージセンサ等の各種の撮像素子」であって、CCDイメージセンサは、光を検知するセンサアレイということができるから、引用発明の撮像素子は、「センサーアレイ領域(14)を有し、センサーアレイ(14)に画像を取得させるのに必要な要素を有する」点で、本願発明の「カメラ集積回路」と相違がない。

(b)「前記カメラ集積回路上に少なくとも部分的に形成されたホルダ」について
引用発明は「封止樹脂5」を有している。
引用発明の封止樹脂5について、図28を参酌すると、図1の封止樹脂5と同様の形状をしており、【0048】の「尚、図28において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すためその説明は省略する。」の記載も考慮すれば、上記第3(2)(b)で検討した【0030】等の記載から認定できる封止樹脂と形状において一致するということができる。
すなわち、引用発明の封止樹脂は、基板から上方に向かって形成されているものであって、上記封止樹脂に設けられた側壁部は、封止樹脂が途中で屈曲することにより、封止樹脂が基板と接する位置よりも撮像素子の内側に配置され、撮像素子の上面に接し、撮像素子の上方に伸びる形状であるということができる。
上記形状により、引用発明の封止樹脂は、封止樹脂の一部(側壁部)が、撮像素子の上部に形成されているということができ、また、封止樹脂は、開口部を有することから、撮像素子の一部に(開口部ではない部分)に形成されているということができる。
引用発明の撮像素子が、本願発明のカメラ集積回路といえることは上記(a)にて検討したとおりであるから、引用発明は「前記カメラ集積回路上に少なくとも部分的に形成されたホルダ」である点で、本願発明と相違がない。
以上のことから、引用発明は、「前記カメラ集積回路上に少なくとも部分的に形成されたホルダ」を有しているということができる。

(c)「前記カメラ集積回路上の保護カバー」について
引用発明は、「撮像素子2の上に透光性板を備え」ている。
引用発明の「透光性板」は、【0048】の記載によれば、「透光性板11を封止樹脂5により容易に一体化することができる。また、受光面2aを含む撮像素子2を精度良く吸湿等から封止することができ、」とあるから、受光面を含む撮像素子を、吸湿(すなわち湿度)から保護する部材(すなわち、保護カバー)ということができる。
引用発明の撮像素子が、本願発明の「カメラ集積回路」に相当することは、上記(a)にて検討したとおりであるから、引用発明は「前記カメラ集積回路上の保護カバー」を有しているということができる。

(d)「レンズ・アセンブリとを備える集積カメラ回路及びレンズ・モジュール」
引用発明について説明する、発明の詳細な説明(【0048】)には「結像レンズ」に関する記載はない。
したがって、引用発明は、「レンズ・アセンブリ」、「レンズ・モジュール」を有しているということができない。
引用発明の撮像装置は、上記(a)ないし(c)で検討したとおり、「カメラ集積回路」、「ホルダ」、「保護カバー」を有し、「透光性樹脂は、封止樹脂により、所定の位置に配置された状態で撮像素子2及び基板1と一体化された、撮像装置。」であるから、撮像のための集積回路等を一体化した回路ということができ、集積カメラ回路ということができる。
以上のことから、引用発明は、「集積カメラ回路」に関する発明である点で本願発明と相違がない。
もっとも、引用発明は、「レンズ・アセンブリ」、「レンズ・モジュール」を有していない点で本願発明と異なる。

(e)「前記保護カバーが前記ホルダによって定位置に保持され」について
引用発明は、「透光性樹脂は、封止樹脂により、所定の位置に配置された状態で撮像素子2及び基板1と一体化され」ている。
引用発明の「一体化」は、【0048】の「透光性板11を撮像素子2の受光面2a上における所定の位置に配置する。ここで、図30に示すように、撮像素子2及び透光性板11の側面部分に空隙を形成し、透光性板11との間に封止樹脂5の側壁部を形成するように、上側金型6を基板1に接するように閉じる。この段階で、封止樹脂5を空隙部に射出・成形する。」ことによりなされるものであるから、透光性板と封止樹脂の間は隙間無く接しており、そのため、透光性板は移動することができないことは明らかであり、透光性板は所定の位置に配置された状態が、封止樹脂により保持されているということができる。
引用発明の「封止樹脂」、「透光性板」は、本願発明の「ホルダ」、「保護カバー」に相当することは、上記(b)、(c)で検討したとおりであるから、引用発明は「前記保護カバーが前記ホルダによって定位置に保持され」ているということができる。

(f)「前記レンズ・アセンブリが前記ホルダを介して前記カメラ集積回路に取り付けられ」について
引用発明が「レンズ・アセンブリ」を有していないことは、上記(d)にて検討したとおりである。
したがって、引用発明は、「前記レンズ・アセンブリが前記ホルダを介して前記カメラ集積回路に取り付けられ」の構成を有していない。

(g)「前記ホルダが前記レンズ・アセンブリの該ホルダへの挿入を可能にし、これによって前記カメラ集積回路に対する前記レンズ・アセンブリを位置決めし」について
引用発明が「レンズ・アセンブリ」を有していないことは、上記(d)にて検討したとおりである。
したがって、引用発明は、「前記ホルダが前記レンズ・アセンブリの該ホルダへの挿入を可能にし、これによって前記カメラ集積回路に対する前記レンズ・アセンブリを位置決めし」の構成を有していない。

(h)「前記レンズ・アセンブリと前記保護カバーの間に間隙が設けられるように該レンズ・アセンブリが前記ホルダに取り付けられる」について
引用発明が「レンズ・アセンブリ」を有していないことは、上記(d)にて検討したとおりである。
したがって、引用発明は、「前記レンズ・アセンブリと前記保護カバーの間に間隙が設けられるように該レンズ・アセンブリが前記ホルダに取り付けられる」の構成を有していない。

第5 一致点・相違点
以上(a)ないし(h)の対比結果によれば、本願発明と引用発明とは、以下の[一致点]で一致し、[相違点]で相違する。

[一致点]
カメラ集積回路と、
前記カメラ集積回路上に少なくとも部分的に形成されたホルダと、
前記カメラ集積回路上の保護カバーと、
を備える集積カメラ回路であって、
前記保護カバーが前記ホルダによって定位置に保持される、
集積カメラ回路。

[相違点]
(相違点1)
引用発明は、「レンズ・アセンブリ」、「レンズ・モジュール」を有していない点。

(相違点2)
引用発明は「前記レンズ・アセンブリが前記ホルダを介して前記カメラ集積回路に取り付けられ」の構成を有しない点。

(相違点3)
引用発明は「前記ホルダが前記レンズ・アセンブリの該ホルダへの挿入を可能にし、これによって前記カメラ集積回路に対する前記レンズ・アセンブリを位置決めし」の構成を有しない点。

(相違点4)
引用発明は「前記レンズ・アセンブリと前記保護カバーの間に間隙が設けられるように該レンズ・アセンブリが前記ホルダに取り付けられる」の構成を有していない点。

第6 判断
上記相違点について検討する。

(相違点1)について
本願発明の「レンズ・モジュール」について、発明の詳細には、「レンズ・モジュール」の表記がない。補正前の請求項9には『カメラ集積回路と、レンズ・アセンブリとを備える集積カメラ回路及びレンズ・モジュールであって、前記レンズ・アセンブリが前記集積回路に取り付けられることを特徴とする集積カメラ回路及びレンズ・モジュール。』とある。モジュールとは、通常複数の構成を一つにまとめたものをいうから、本願発明の「レンズ・モジュール」は、レンズ・アセンブリとレンズアセンブリを集積カメラ回路に取り付けるための手段とをあわせて、「レンズ・モジュール」と称しているといえる。
引用発明の撮像装置は、「レンズ・アセンブリ」を有していない。
しかし、撮像装置において、結像レンズを採用することは、普通に行われており、引用発明の撮像装置において、結像レンズを配置することは、当業者であれば普通に想起し得たことである。
引用発明の撮像装置に結像レンズを配置する際、採用しうる構成として、【0048】には「尚、図28において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すためその説明は省略する。」の記載があるのであるから、当業者であれば、まず、引用発明に上記第1図にある構成(実施例1の構成ともいう。)を採用しようとすることは、普通のことである。
引用発明を説明するための図28と、刊行物1に記載された実施例1の構成を説明するための図1とを対比すれば、引用発明と実施例1の構成とが共に有する封止樹脂は、基板から、上方に延びるものであって、撮像素子の受光面と接する部分で屈曲しさらに上方に伸びる側壁部を有していることは明らかであり、実施例1の構成では、当該側壁部にねじ部を設け、側壁部のねじ部と、鏡筒に設けられたねじ(溝)を対応させることにより、側壁部に鏡筒を螺着・固定しているのであるから、引用発明に実施例1の構成を付加すること、すなわち、引用発明の(封止樹脂の)側壁部に、結像レンズを配置した鏡筒(本願発明のレンズ・アセンブリに相当)と対応するねじ部を設け、これに鏡筒を螺着・固定する構成を採用することは、当業者であれば、容易に想到し得たことであるといえる。
よって、引用発明の撮像装置に、レンズ・アセンブリとレンズ・アセンブリを撮像素子に取り付けるための手段と(レンズモジュール)を設けることは当業者が容易になし得たことであるということができる。

(相違点2)について
引用発明において、実施例1の構成を採用すれば、引用発明の(封止樹脂の)側壁部に、結像レンズを配置した鏡筒(本願発明のレンズ・アセンブリに相当)と対応するねじ部を設け、これに鏡筒を螺着・固定する構成となることは、上記「(相違点1)について」で検討したとおりである。
引用発明の封止樹脂は、上記第3(2)(f)で検討したように、「封止樹脂を射出・成形することで、封止樹脂により、透光性板は、撮像素子及び基板と一体になっている」のであるから、封止樹脂は撮像素子に対して、固定されているといえる。
そして、実施例1のレンズを配置した鏡筒(レンズアセンブリに相当)は、撮像素子(カメラ集積回廊に相当)に対して固定された封止樹脂(ホルダに相当)に固定されるのであるから、「前記レンズ・アセンブリが前記ホルダを介して前記カメラ集積回路に取り付けられ」ということができる。
したがって、相違点2の構成は、引用発明に実施例1の構成を採用することにより、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3)について
本願発明の「カメラ集積回路に対する前記レンズ・アセンブリを位置決め」について検討する。
本願明細書【発明を実施するための最良の形態】以下にある
【0019】には「図2は、レンズ・アセンブリ(24)が取り付けられる前の、図1の集積カメラ・モジュール(10)の上面図である。図2に示される如く、X座標(34)及びY座標(36)におけるレンズ・アセンブリ(24)の配置は成形部品(26)の凹部(29)の位置及び公差により決定される。成形部品(26)内の開口部(38)は、開口部(38)を通してセンサーアレイ領域(14)が見られるように提供される。」とあり、
【0034】には「図15は、方法(100)におけるレンズの取り付け工程(105)を実行するある特定の方法(139)を要約したフローチャートである。「レンズの取り付け」工程(140)において、レンズ・アセンブリ(24a)のうち1つが各成形部品(図10の26)の中に挿入される。「焦点合わせ及び試験」工程(142)においては、レンズ・アセンブリ(24a)が(図1のZ軸(32)に沿って)上下に移動して、レンズ・アセンブリ(24a)の焦点を、カメラ・チップ(12)のセンサーアレイ領域(14)を基準として完全に合わせる。正確な焦点は、従来の一般的な自動式試験装置により決定される。」とある。
この構成においては、レンズ・アセンブリのX軸、Y軸の位置決めは、成形部品(の凹部)にレンズ・アセンブリ挿入することにより実現され、Z軸の位置決めは、成形部品の中で、レンズ・アセンブリを上下に移動させることによりなされるから、成形部品がレンズアセンブリを保持すること(それのみ)により位置決めされるのは、X軸、Y軸方向であって、Z軸方向の位置決めは、レンズの取付け工程において、レンズアセンブリを上下方向に移動して基準と合わせた後、レンズを保持することによりなされることであるといえる。
すなわち、本願発明の「カメラ集積回路に対する前記レンズ・アセンブリを位置決め」の構成は、実施の形態として、X軸、Y軸方向の位置決めは、レンズ・アセンブリを成形部品(ホルダ)に挿入することによりなされ、Z軸方向の位置決めは、レンズ取付け工程において、レンズ・アセンブリを上下させ基準と合わせた後、レンズを保持することによりなされる、ことを含むものということができる。
引用発明の撮像装置において、結像レンズを設けることは、当業者が容易に想起し得たことであり、結像レンズを設ける際に、刊行物1に記載された実施例1の構成を採用することは容易になし得たことであるのは、上記「(相違点1)について」で検討したとおりである。
上記実施例1の構成について検討する。
実施例1の構成は、側壁部に鏡筒と対応するねじ部を設け、これに(レンズを配置した)鏡筒を螺着・固定する構成であって、(レンズを配置した)鏡筒は、側壁部の内側に挿入されている。
上記の構成であれば、鏡筒に配置されたレンズは、鏡筒の外側が側壁部により囲まれているため、少なくとも水平方向に移動することは不可能であり、撮像素子に対して、水平方向(X軸、Y軸)に(移動しないように)位置決めされているということができる。
Z軸方向について、実施例1に関する説明の部分には記載がないが、刊行物1の、
【0039】(実施の形態5、「封止樹脂5の側壁部5cに形成されるねじ部5bが、封止樹脂5の成形用の金型6により形成するようにしたもの」)に「このねじ部5bは、図示しない鏡筒4のねじ部4aが固着される。尚、撮像素子2の受光面2aと鏡筒4に支持された結像レンズ3との距離は鏡筒4を回動することにより調整することができる。」の記載が、
【0058】に「この発明の実施の形態17では、結像レンズが焦点調整機構を持たない撮像装置で説明したが、例えばこの発明の実施の形態1に示すような結像レンズが調整機構を有する撮像装置においても、同様の効果を得ることができる。」の記載が、
それぞれあることから、実施例1の構成は、結像レンズが焦点調整機構を有する撮像装置であって、当該調整は、封止樹脂のねじ部と、鏡筒のねじ(溝)を対応させて、(レンズを配置した)鏡筒を回動することにより、結像レンズと受光面との距離の調節を行う調整であることが理解できる。
上記実施例1の構成の結像レンズと受光面との距離の調整は、本願発明のZ軸方向の位置決めに相当することは明らかであるから、実施例1の構成は、Z軸方向の位置決めにおいて、(レンズを配置した)鏡筒を(回動することにより)上下させ基準と合わせ、鏡筒を側壁部に螺着・固定しているということができ、本願発明の実施の形態である、「Z軸方向の位置決めは、レンズ取付け工程において、レンズ・アセンブリを上下させ基準と合わせた後、レンズを保持することによりなされる」ことに対応しているということができる。
実施例1の構成の「(レンズを配置した)鏡筒」、「撮像素子(の受光面)」、「(側壁部を有する)封止樹脂」が、本願発明の「レンズ・アセンブリ」、「カメラ集積回路」、「ホルダ」に相当することは、先に検討したとおりであるから、実施例1の「封止樹脂」は、本願発明の「前記ホルダが前記レンズ・アセンブリの該ホルダへの挿入を可能にし、これによって前記カメラ集積回路に対する前記レンズ・アセンブリを位置決めし」と相違が無く、相違点2に係る構成は、引用発明の撮像装置に実施例1の構成を採用することにより、容易になし得たことであるということができる。

(相違点4)について
引用発明の撮像装置において、刊行物1に記載された実施例1の構成を採用することにより、レンズ・アセンブリ(レンズを配置した鏡筒)を設けることが容易になし得たことであることは、上記「(相違点1)について」で検討したとおりである。
そして、上記「(相違点3)について」で検討したとおり、実施例1の構成において、鏡筒は封止樹脂の側壁面(内側)に沿って上下することが前提としてあるから、鏡筒が自由に動く間隙が必要であることは明らかであり、引用発明の封止樹脂の内側に配置された透光性板(保護カバー)と鏡筒(レンズ・アセンブリ)との間に間隙が必要であることは、明らかである。
したがって、相違点4に係る構成は、引用発明の撮像装置に実施例1の構成を採用することにより、容易になし得たことであるということができる。

<効果等について>
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

第7 まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本願は請求項1ないし7、9ないし68に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-05-22 
結審通知日 2012-05-23 
審決日 2012-06-05 
出願番号 特願2006-554218(P2006-554218)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榎 一  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 松尾 淳一
千葉 輝久
発明の名称 デジタルカメラ用集積レンズ及びチップ・アセンブリ  
代理人 清原 義博  

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