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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1279457
審判番号 不服2012-7161  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-19 
確定日 2013-09-18 
事件の表示 特願2009-510019「出版物におけるコンテンツと広告のカスタマイズ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月15日国際公開、WO2007/130959、平成21年10月 1日国内公表、特表2009-535749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2007年5月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年5月2日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年4月5日付けの拒絶理由通知に対して同年7月7日付けで手続補正がなされ,同年8月1日付けの拒絶理由通知に対して同年11月4日付けで手続補正がなされたが,同年12月13日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成24年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,さらに同年9月11日付けの審尋に対して同年12月14日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成24年4月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年4月19日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容について
平成24年4月19日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により,平成23年11月4日付けの手続補正による補正前の請求項1?26は,補正後の請求項1?23のとおりに補正された。
このうち,補正前の請求項1に係る発明は,補正後の請求項1に係る発明に対応するものと認められるところ,補正前の請求項1及び補正後の請求項1はそれぞれ以下のとおりである。(なお,下線は,補正の個所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)

<補正前>
「 【請求項1】
プロセッサにより実行される方法であって,
ユーザ入力に基づくコンテンツを,複数のコンテンツ供給元からネットワークを介して受け取り,1つ以上の記憶装置に前記コンテンツを記憶することと,
複数の広告供給元から前記ネットワークを介して受取られ,前記1つ以上の記憶装置に記憶された広告を,広告名,広告の主題,製品名,製品の主題または広告の作成日のうちの少なくともいずれか1つを含む個人向け広告検索クエリに基づき検索することと,
前記個人向け広告検索クエリに基づく広告検索の結果に基づいて得られた複数の広告をユーザ装置に前記ネットワークを介して送ることと,
前記複数の広告からの個人向け広告のユーザ選択を,前記ユーザ装置から前記ネットワークを介して受け取ることと備え,前記個人向け広告の前記ユーザ選択は,カスタム出版物に前記個人向け広告を含ませるためのユーザ要求に関連し,前記方法はさらに,
前記コンテンツと前記個人向け広告とを含む前記カスタム出版物を作成することとを備える,方法。」

<補正後>
「 【請求項1】
プロセッサにより実行される方法であって,
ユーザ入力に基づくコンテンツを,複数のコンテンツ供給元からネットワークを介して受け取り,1つ以上の記憶装置に前記コンテンツを記憶することと,
複数の広告供給元から前記ネットワークを介して受取られ,前記1つ以上の記憶装置に記憶された広告を,広告名,広告の主題,製品名,製品の主題または広告の作成日のうちの少なくともいずれか1つを含む個人向け広告検索クエリと,前記コンテンツとに基づき自動的に検索することと,
前記個人向け広告検索クエリと前記コンテンツとに基づく広告の自動検索の結果に基づいて得られた複数の広告をユーザ装置に前記ネットワークを介して送ることと,
前記複数の広告からの個人向け広告のユーザ選択を,前記ユーザ装置から前記ネットワークを介して受け取ることと備え,前記個人向け広告の前記ユーザ選択は,カスタム出版物に前記個人向け広告を含ませるためのユーザ要求に関連し,前記方法はさらに,
前記コンテンツと前記個人向け広告とを含む前記カスタム出版物を作成することとを備える,方法。」

2.補正の目的について
補正後の請求項1は,補正前の請求項1に対して,次の補正がなされたものである。
(a)補正前の「個人向け広告検索クエリに基づき検索すること」を補正後の「個人向け広告検索クエリと,前記コンテンツとに基づき自動的に検索すること」とする補正。
(b)補正前の「個人向け広告検索クエリに基づく広告検索」を補正後の「個人向け広告検索クエリと前記コンテンツとに基づく広告の自動検索」とする補正。

補正事項(a)は,「個人向け広告検索クエリに基づき」検索することから,「個人向け広告検索クエリと,前記コンテンツとに基づき」検索することに限定するととともに,「検索すること」を「自動的に検索すること」に限定するものである。
また,補正事項(b)は,補正事項(a)に対応して,「個人向け広告検索クエリに基づく広告検索」を「個人向け広告検索クエリと前記コンテンツとに基づく広告の自動検索」に限定するものである。
してみれば,補正後の請求項1に係る本件補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-222135号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の(ア)?(キ)の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)
(ア)「【0010】
【発明の実施の形態】図1は,本発明の一実施形態による革新的な文書送達システムのブロック図である。本発明の1つの実施によると,文書送達システム10は文書サーバ100を含む。好ましい実施形態では,文書サーバ100は,装置300と総称する,各種パーソナル・コンピュータ,印刷装置,および他の電子装置にネットワーク200を介して動作可能に結合されている。この第1の実施形態によると,文書送達サーバ100は,選択的にコンテンツを受信し/取り出して,出版物プロファイルに従って,他の点では共通性のないコンテンツ・オブジェクトからカスタマイズされた出版物を動的に生成する。下記でより詳しく説明する代替実施形態では,コンテンツの取り出しおよび出版プロセスは,文書送達システム10全体に分散される。」
(イ)「【0012】本明細書では,コンテンツ・プロバイダ50が広告を除く出版物コンテンツのすべてのプロバイダを含むものとし,一方広告プロバイダ80は広告題材を提供するものとする。出版物題材のこれら2つのソースは,金融的なビジネス・モデルとはかなり異なる(すなわち,コンテンツ・プロバイダ50には,文書サーバの事業者からロイヤリティが支払われ,一方,広告主80は料金を払って,生成される出版物に広告を掲載する)。だが,エンドユーザ(出版物受取人)から見ると,この2つはどちらも出版物にコンテンツを提供している。したがって,参照番号なしで用いる場合,一般的な用語「コンテンツ・プロバイダ」は,コンテンツ・プロバイダ50および広告プロバイダ80両方を含むものとする。区別したい場合は,適切な参照番号を具体的に示して,コンテンツのソースをさらに指定する。
【0013】第1の例示的実施形態によると,編集モジュール120は,1つまたは複数のコンテンツ・プロバイダ50,および/または1つまたは複数の広告プロバイダ80から入力されるコンテンツ・オブジェクトを受け取り,例えばユーザの関心事,季節,コンテンツ・プロバイダおよび広告プロバイダの配布基準,出版の時刻などを含む,複数の主要基準に少なくとも部分的に基づいて,個別化された文書を生成する。1つの実施によると,この主要基準は,下記でより詳しく説明するように,出版物プロファイル中でシステム要素(例えば編集モジュール120,出版エージェント500,および/またはフォーマット・エンジン600)に提供される。」
(ウ)「【0016】図1で,装置300は,多様な方式で構成することができることを示している。例えば図では,パーソナル・コンピュータ310は,ユーザ20320のために文書10320を印刷する印刷装置320に接続されている。パーソナル・コンピュータ310は,ネットワーク200に動作可能に結合されている。
(途中省略)
【0017】送信モジュール150は,文書サーバ100とともに配置することが好ましい。図1に示すように,印刷モジュール380は,ネットワーク200を介して文書サーバ100に動作可能に結合されたパーソナル・コンピュータ310,印刷装置330,あるいは電子装置340など,装置300のどれに配置しても,あるいは知識モジュール170内など文書サーバ100自体の中に配置してもよい。
(以下省略)」
(エ)「【0021】文書送達システム10を紹介したので,次いで図2?12を参照して,本発明の第1の実施形態による動作の例示的方法を説明する。図2?4を見ると,本発明の一実施形態による,送信モジュール150の動作,および印刷モジュール380の第1の動作モードを詳細に示す流れ図を提示している。図2?4では,左列に示す流れ図は文書サーバ100の送信モジュール150が実行するもので,右列の流れ図は印刷モジュール380が実行するものである。
【0022】図2を参照すると,送信モジュール150の流れ図は,ブロック1000で開始し,印刷モジュール380の流れ図はブロック2000で開始する。2つの列をつなぐ点線で表したように,この2つの流れ図間では多くの対話が行われるので,2つの流れ図の動作について同時に説明する。
【0023】ブロック2100で,ユーザ・プロファイル・データが文書サーバ100に送信され,ユーザ・プロファイル中に記憶される。このユーザ・プロファイル・データは,簡潔なものから非常に詳細なものまで,多様な形をとることができる。図5は,ユーザ・プロファイル・データの非常に簡潔な入手例である。これはHP(Hewlettt Packard)のInstant DeliveryProgramで使用されているものであるが,この最初のバージョンは,本特許出願の提出日から1年未満に公衆が一般に利用できるようになった。このプログラムでは,プリンタのタイプ,電子メール・アドレス,およびHPがユーザにコンタクトできるか,という3つの情報のみがユーザ・プロファイルに記憶される。図6は,現在HPのInstant Delivery Programで使用されているものより複雑なユーザ・プロファイルを示しているが,これには,ユーザ名,電子メール・アドレス,企業名,都市,州,国,ジップ・コードまたは郵便コード,電話番号,プリンタ情報,および興味分野が含まれる。当業者は,図5および6に示すものより多いまたは少ないユーザ・プロファイル・データを,ブロック2100で送信モジュール150に送信しても,これはなお本発明の趣旨および範囲内にあること,およびこの情報の少なくとも一部はユーザ以外のソースから得られる場合もあることを理解できよう。ユーザ・プロファイル・データは,諸事項の中でも,例えばユーザの世帯収入,年齢,および性別を含むこともできる。いずれにせよ,ブロック1100では,ブロック2100で送信したユーザ・プロファイル・データを受け取る。ブロック1200は,好ましくは知識モジュール170にそのユーザ・プロファイル・データを記憶する。あるいは,ユーザ・プロファイル・データは,装置300中に記憶しても,あるいは何らかの他のローカルまたはリモートの位置に記憶してもよい。
【0024】ブロック2200では,文書サーバ100から文書を受信すべきかどうかを調べる。これは,装置300または文書サーバ100に記憶することが好ましい印刷スケジュール390を確認することによって行われるが,このスケジュールは,他のローカルまたはリモートの位置に記憶してもよい。印刷スケジュール390は,文書の作成時,ユーザが要求する時刻,指定時間の経過時,および/または1つまたは複数の外部イベント時(例えば,株価または指数が指定の値に達した時,スポーツ・イベントの最終スコアなど)など,文書をいつ印刷装置で印刷するかを決定するのに使用できる情報を含むことが好ましい。印刷スケジュール390は,個々のユーザ,1装置,または1グループ,または複数のユーザおよび/または複数の装置と関連付けてよい。さらに,印刷スケジュール390のエントリごとに1つまたは複数の文書の印刷を行うことができる。
【0025】図7は,機能強化型バージョンのHPのInstant DeliveryProgramで使用される可能性のあるタイプの印刷スケジュール390の一例を示す。この例では,送達のタイトル,送達スケジュール,次の送達の日および時刻,および最後の送達状態が示されている。文書を何時に印刷すべきか,一週間あるいは月のうち特定の日に印刷するのか,平日あるいは週末に印刷するのか,および印刷スケジュールを一定の期間後に満了させるのか,あるいは無期限に継続させるのかをユーザが選択できることが好ましい。
【0026】再び図2を参照すると,印刷モジュール380は,印刷スケジュール390を監視して,文書サーバ100または他のソースに文書を要求すべきかどうかを判断する。ブロック2200で,文書サーバ100あるいは他のソースに文書を要求すべきであると判断した場合,ブロック2200の答は肯定であり,ブロック2300で,下記でより詳細に説明するように,ユーザの介入なしに,サーバ100または他のソースに自動的に文書を要求する。印刷モジュール380が装置300上に位置する場合は,ブロック2200は「プル」モードで動作し,すなわち文書を文書サーバ100または他のソースから装置300まで「引き出される」ことに留意されたい。ただし,印刷モジュール380が,文書サーバ100など装置300からリモートに位置する場合,ブロック2200は「プッシュ」モードで動作し,すなわち文書を文書サーバ100または他のソースから装置300まで「押し出」す。ブロック2300で,文書がネットワーク200を介してアクセス可能な文書サーバ100または他のソースに位置すると判断した場合,および装置300が現在ネットワーク200に動作可能に結合されていない切断状態にある場合は,ブロック2300で,ネットワーク200にサインオンし,または他の方法で,ネットワーク200に接続された状態に入ることにより,装置300をネットワーク200と動作可能に結合する。
【0027】一方,ブロック1300では,ブロック2300で印刷モジュール380から文書が要求されているかどうかを調べる。そのような文書が要求されていると判定すると,ブロック1400で,印刷モジュール380に対して文書を生成する。次いでブロック1500で,その文書を印刷モジュール380に送信する。ブロック2400で,文書サーバ100からブロック1500を介して文書を受信しているかどうかを調べる。そのような文書を受信すると,ブロック2500で,ユーザの介入なしに,印刷装置でその文書を自動的に印刷する。用語「ユーザの介入なしに」とは,ユーザが印刷動作には直接関係せず,文書を自動的に装置300に送信して,印刷装置で印刷することを意味する。この動作モードによると,ユーザは「どの」印刷ボタンも押さず,あるいはその他の形でも印刷プロセスには直接関わらない。実際,ユーザは,印刷動作中に装置300と同じ部屋,都市,州,あるいは国にさえいなくともよい。印刷動作は,無人の状態で,すなわちユーザがその場にいるかいないかには関係なく自動的に行われる。さらに,印刷スケジュール390が,文書サーバ100など,装置に依存しない方式で記憶されている場合,移動ユーザは文書サーバ100に「ログ・イン」して,カスタマイズされた自分の文書を,ユーザの現在位置にとって都合のよい装置300に送信させることも可能である。」
(オ)「【0034】再度図7の印刷スケジュール390を参照すると,多様なタイプの文書の印刷を要求できることが見て取れよう。例えば,文書11000のタイトルは,印刷する文書のネットワーク位置を含むインターネットURL(ユニフォーム・リソース・ロケータ)などのネットワーク・アドレスを指定する。文書15000のURLのように,このURLは部分的または完全にユーザから隠してもよいことに留意されたい。この場合は,文書サーバ100の編集モジュール120は単に,インターネットの指示URL(図1に示すコンテンツ・プロバイダ50の1つである)に行き,指示される文書を取り込み,この文書は次いで,先に説明したように,送信モジュール150および印刷モジュール380を介して印刷装置に送信される。あるいは,装置300は,文書サーバ100の支援なしに直接URL自体に行くこともできる。すなわち,この場合はブロック2300(図2)で,別のソースに,すなわちネットワーク200を介して(指示URLの)コンテンツ・プロバイダ50に直接文書11000を要求する。」
(カ)「【0036】再び図7を参照すると,文書13000の印刷スケジュールを示している。文書13000は,「個別化された(personalized)文書」と呼ばれる。「個別化された文書」とは,知識モジュール170に記憶されるユーザ・プロファイルに含まれる情報に基づいて,文書サーバ100の編集モジュール120が,各種コンテンツ・プロバイダ50および広告プロバイダ80から集めた文書である。例えば,文書13000が「個別化された文書」である。我々のユーザは,文書13000,すなわち自分の個別化された新聞を毎午後1時半に印刷するように要求している。編集モジュール120は,知識モジュール170に記憶されているユーザ・プロファイルで指定されるユーザの興味を調べて,ユーザが興味を示した,選択されたコンテンツ・プロバイダ50から文書を集める。編集モジュール120は,この場合も知識モジュール170に記憶されているユーザ・プロファイルに基づいて,選択した広告プロバイダ80からの広告も挿入する。
【0037】図8は,図7の印刷スケジュール390をどのようにしてユーザが編集できるかを示している。ユーザは,出版人の推薦するスケジュールを使用するか,ユーザが設定したデフォルト・スケジュールを使用するか,またはカスタムの送達スケジュールを使用することができる。カスタム・スケジュールを選択する場合,ユーザは,毎日1回,毎週1回,あるいは毎月1回の送達を選択することができ,または指定した日数ごとの送達を選択するか,あるいは全平日を指定することができる。さらに,指定の時刻に1度,1日に複数回,あるいは指定の時間を空けた複数回などの時刻も指定することができる。図には示していないが,ユーザは印刷スケジュール390を編集して,文書の作成時,あるいは外部イベントの発生時に文書を送信するように要求することもできる。」
(キ)「【0040】図11A?Dは,本発明の一実施形態により,印刷装置で印刷した文書13000を示している。この文書は,知識モジュール170中のユーザ・プロファイルに記憶された,ユーザが明確な興味を示した情報を含む,ユーザの個別化新聞であることに留意されたい。また,この文書は,この場合も知識モジュール170に記憶されているユーザ・プロファイルに含まれる情報に基づき,ユーザが同じく興味を示すであろうと編集モジュール120が判断した広告を含んでいることにも留意されたい。すでに説明したように,ユーザは,このような「好ましい」文書を十分な数印刷すると,印刷消耗品または他の製品の形で製品補助を受け取ることができる。」

引用例1の図2には,文書送達システム10に含まれる送信モジュール150と印刷モジュール380とにより実行される動作が記載されていることから,引用例1には,「文書送達システム10において実行される方法」が記載されているということができる。

上記の点を踏まえ,上記摘記事項(ア)?(キ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「コンテンツを受信してカスタマイズされた出版物を動的に生成する文書サーバ100と,文書サーバ100にネットワーク200を介して結合されたパーソナル・コンピュータ310と,パーソナル・コンピュータ310に接続され,ユーザのために文書を印刷する印刷装置320とを含む文書送達システム10において実行される方法であって,
文書サーバ100の編集モジュール120は,広告を除く出版物コンテンツのプロバイダであるコンテンツ・プロバイダ50と接続されるととともに,広告題材を提供する広告プロバイダ80とも接続されており,
編集モジュール120は,複数のコンテンツ・プロバイダ50,および複数の広告プロバイダ80から入力されるコンテンツ・オブジェクトを受け取り,ユーザの関心事を含む,複数の主要基準に基づいて,個別化された文書を生成するものであり,
送信モジュール150は,文書サーバ100とともに配置されており,
印刷モジュール380は,ネットワーク200を介して文書サーバ100に動作可能に結合されたパーソナル・コンピュータ310に配置されており,
印刷モジュール380から,ユーザのユーザ名,電子メール・アドレス,電話番号,興味分野,年齢,および性別などを含むユーザ・プロファイル・データが文書サーバ100に送信されると,
送信モジュール150は,ユーザ・プロファイル・データを知識モジュール170に記憶し,
印刷モジュール380は,印刷スケジュール390を監視して,文書サーバ100に文書を要求すべきかどうかを判断し,
ここで,印刷スケジュール390には,送達スケジュールなどが含まれており,これをユーザが編集して,文書を何時に印刷すべきか等を選択できるものであり,
印刷モジュール380が文書サーバ100に文書を要求すべきであると判断した場合,サーバ100に自動的に文書を要求し,
送信モジュール150が,印刷モジュール380から文書が要求されていると判定すると,文書サーバ100の編集モジュール120が,知識モジュール170に記憶されているユーザ・プロファイルで指定されるユーザの興味を調べて,ユーザが興味を示した,選択されたコンテンツ・プロバイダ50から文書を集めるとともに,同じく知識モジュール170に記憶されているユーザ・プロファイルに基づいて,選択した広告プロバイダ80からの広告を挿入した文書を生成して印刷モジュール380に送信し,
印刷モジュール380は,文書を受信すると,印刷装置でその文書を自動的に印刷するものであり,
これにより,例えば,知識モジュール170中のユーザ・プロファイルに記憶された,ユーザが明確な興味を示した情報を含み,かつ,知識モジュール170に記憶されているユーザ・プロファイルに含まれる情報に基づき,ユーザが興味を示すであろうと編集モジュール120が判断した広告を含んだユーザの個別化新聞を作成することができる,
方法。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-135558号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面とともに,次の(ク)?(サ)の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

(ク)「【0004】本発明は,上記実情に鑑みてなされたもので,低廉なコストで高度な画像処理サービスの提供を可能とするシステムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記従来例の問題点を解決するための本発明は,画像処理サービス提供システムであって,広告画像を蓄積する広告画像データベースと,電気通信網を介して,端末装置からの指示を受信し,当該指示に基づいて画像処理を行う画像処理装置と,前記画像処理装置での画像処理に対する課金金額を演算する課金装置と,を含み,前記画像処理装置が,前記広告画像データベースから所定の広告画像データを取得して,画像処理の対象となった画像データに合成することを特徴とする。このように,所定の広告画像データが処理される画像データに合成されるため,広告画像データの広告料に基づく課金割引を行って,低廉なコストで画像処理サービスを提供できる。
【0006】ここで前記画像処理装置が,端末装置のユーザに対し,合成対象となる広告画像データを広告画像データベースから選択させる手段を備えることが好ましい。これにより,ユーザは好みの広告画像データを選択できる。」
(ケ)「【0013】広告画像データベース12は,図2に示すように,広告主を特定する情報(A)と,選択基準に関する情報(B)と,広告画像データまたはそれに対する参照情報(C)とを関連づけて蓄積している。ここで,選択基準に関する情報とは,当該広告画像データの分野の情報(「食品分野」,「インテリア分野」など)や種別(単なる広告であるか,割引特典付きの広告(すなわちクーポン券)であるかなど)および広告対象者に関連する情報(当該対象者の年齢,住所,現在位置,性別,趣味,職業など)や,広告画像データの有効期限の情報がある。(以下省略)」
(コ)「【0018】[画像処理]ここで,画像処理サーバ11の具体的処理について説明する。画像処理サーバ11は事前に端末装置3のユーザの識別子(ユーザ名)とユーザの年齢や住所などのプライベート情報とパスワードとを記録しており,インターネットを介してアクセスを受けると,まずユーザ名とパスワードとを要求してユーザを認証する。(以下省略)」
(サ)「【0036】画像処理や事後処理に伴う課金金額を節約したいと考えるユーザは,ここで「広告画像の合成」メニューを選択して図4に示すようなレイアウト設定画面を表示させる。ここで,ユーザはレイアウト候補をブラウズして適切と考えるレイアウトを選択し,当該レイアウトでの広告合成位置をクリックして,その位置に合成する広告画像データを選択する指示を画像処理サーバ11に送信する。すると,画像処理サーバ11が事前に設定されているユーザのプライベート情報や広告合成位置の形状を検索キーとして広告画像データベース12の選択基準に関する情報を参照して広告画像データを予備的に選抜し,この選抜した広告画像データの一覧を端末装置3に提供する。ユーザは,この一覧から広告画像データを選択する。すると,画像処理サーバ11がその広告画像データを広告画像データベース12から取得して,画像処理している画像データに対し,レイアウトに従って合成する。」

上記摘記事項(ク)?(サ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例2には次の技術的事項(以下,「引用例2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「広告画像データベースから所定の広告画像データを取得して,画像処理の対象となった画像データに合成することにより,広告画像データの広告料に基づく課金割引を行って,低廉なコストで高度な画像処理サービスを提供できるシステムにおいて,
ユーザが合成する広告画像データを選択する指示を画像処理サーバ11に送信すると,画像処理サーバ11が,事前に設定されているユーザの年齢や住所などのプライベート情報を検索キーとして広告画像データベース12の選択基準に関する情報(広告対象者に関連する当該対象者の年齢,住所,現在位置,性別,趣味,職業などの情報)を参照して広告画像データを予備的に選抜し,この選抜した広告画像データの一覧を端末装置3に提供し,ユーザが,この一覧から好みの広告画像データを選択すると,画像処理サーバ11がその広告画像データを広告画像データベース12から取得して,画像処理している画像データに対し,レイアウトに従って合成すること。」

(3)引用例3
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-269441号公報(以下,「引用例3」という。)には,図面とともに,次の(シ)?(ソ)の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

(シ)「【0008】本発明の課題は,画像情報を安価に出力することができ,更に,利用者及び広告主双方とって有益な広告情報を記録物として永続的に保存することができる形態で出力する,画像情報の出力システムを提供することである。」
(ス)「【0022】ICカード1は,ICチップを内蔵したカードであり,通信方式は,接触式でもよいし,非接触式であってもよい。本実施形態におけるICカード1は,本出力システム専用の接触式ICカードである。ICカード1に入力されている個人情報には,前述のIDナンバーの他に,利用者にどのような広告が有益であるかを絞り込むために必要な情報(顧客情報)として,利用者の生年月日,性別,子供の有無,職業,趣味等が入力されており,そのほかに,利用者の任意入力項目として,住所,氏名等,個人を特定することができる項目も入力することができる。また,ICカード1には,利用者が本システムを利用した利用履歴が記録されている。」
(セ)「【0028】広告選択部13は,個人情報処理部11が得た個人情報及び利用履歴(以下,まとめて利用者情報とする)に基づいて,広告記憶部12に記憶されている広告データの中から,利用者に合った広告,広告の候補,アンケート用データを選択する部分である。尚,広告選択部13の具体的な動作は,後の動作の説明において行う。」
(ソ)「【0041】S80では,利用者は,印刷される広告を自分で選択するか自動選択とするかを指定する。尚,自分で選択するときのみ,そのための操作を必要とし,この操作を行わないときには自動選択となるようにしてもよい。自動選択の場合には,S90に進み,自分で選択する場合には,S100に進む。
【0042】S90では,広告選択部13は,個人情報処理部11が得た利用者情報に基づいて,広告記憶部12に記憶されている広告データの中から,利用者に合った広告を自動で選択する。広告を選択したらS120に進む。
【0043】S100では,広告選択部13は,個人情報処理部11が得た利用者情報に基づいて,広告記憶部12に記憶されている広告データの中から,利用者に合った広告の候補を複数選択し,表示・操作画面21にこれらの広告を表示する。
【0044】S110では,利用者は,表示・操作画面21に表示された複数の広告の候補から印刷する広告を1つ選択する。また,複数の広告の候補の中で,商品の購入等をすることができる広告がある場合であって,利用者が希望するときには,購入操作をすることによって,商品の購入等を行うこともできる。
【0045】S120では,選択された広告を広告領域3bに付して,印刷物3を印刷出力する。S130では,個人情報処理部11は,利用者が利用したコンテンツ,購入した商品,選択した広告等の情報を,ICカードリーダライタ25を介してICカード1に書込み,S140に進んで終了する。」

上記摘記事項(シ)?(ソ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例3には次の技術的事項(以下,「引用例3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「画像情報を安価に出力することができ,更に,利用者及び広告主双方とって有益な広告情報を記録物として永続的に保存することができる形態で出力する,画像情報の出力システムにおいて,
利用者が,印刷される広告を自分で選択することを指定すると,広告選択部13が,利用者にどのような広告が有益であるかを絞り込むために必要な個人情報(利用者の生年月日,性別,子供の有無,職業,趣味等)に基づいて,広告記憶部12に記憶されている広告データの中から,利用者に合った広告の候補を複数選択し,表示・操作画面21にこれらの広告を表示し,
利用者が,表示・操作画面21に表示された複数の広告の候補から印刷する広告を1つ選択すると,選択された広告が広告領域3bに付されて,印刷物3が印刷出力されること。」

4.対比
本件補正発明と引用例1発明とを対比する。

(a)引用例1発明の文書送達システム10は,文書サーバ100と,文書サーバ100にネットワーク200を介して結合されたパーソナル・コンピュータ310と,パーソナル・コンピュータ310に接続された印刷装置320とを含むシステムであるから,引用例1発明の文書送達システム10が「プロセッサ」を含むコンピュータシステムであることは明らかである。
してみれば,引用例1発明の「文書送達システム10において実行される方法」が本件補正発明の「プロセッサにより実行される方法」に相当する。
(b)引用例1発明では,ユーザの興味分野を含むユーザ・プロファイル・データに基づいて,ユーザが興味を示した情報をコンテンツ・プロバイダ50から集めており,当該ユーザ・プロファイル・データが,「ユーザ入力」されたものであることは自明のことであるから,引用例1発明の,「ユーザ・プロファイル・データに基づいて集められた,ユーザが興味を示した情報」が本件補正発明の「ユーザ入力に基づくコンテンツ」に相当する。
引用例1発明の「コンテンツ・プロバイダ50」は,出版物コンテンツを供給する「供給元」であるといえるから,引用例1発明の「複数のコンテンツ・プロバイダ50」が本件補正発明の「複数のコンテンツ供給元」に相当する。
引用例1発明において,文書サーバ100の編集モジュール120がコンテンツ・プロバイダ50と「ネットワーク」を介して接続されていることは自明のことであるから,引用例1発明において,編集モジュール120が,「複数のコンテンツ・プロバイダ50から入力されるコンテンツ・オブジェクトを受け取る」ことが,本件補正発明の「コンテンツを,複数のコンテンツ供給元からネットワークを介して受け取」ることに相当する。
引用例1発明では,「編集モジュール120は,複数のコンテンツ・プロバイダ50,および複数の広告プロバイダ80から入力されるコンテンツ・オブジェクトを受け取り,ユーザの関心事を含む,複数の主要基準に基づいて,個別化された文書を生成」しているから,明示的に「記憶装置」との記載は無いものの,何らかの「記憶装置」に「受け取」ったコンテンツ・オブジェクトを「記憶」していることは自明のことである。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,「ユーザ入力に基づくコンテンツを,複数のコンテンツ供給元からネットワークを介して受け取り,1つ以上の記憶装置に前記コンテンツを記憶すること」を備える点で一致している。
(c)引用例1発明の「広告プロバイダ80」は,広告題材を供給する「供給元」であるといえるから,引用例1発明の「複数の広告プロバイダ80」が本件補正発明の「複数の広告供給元」に相当する。
また,引用例1発明において,編集モジュール120が広告プロバイダ80から受け取る「コンテンツ・オブジェクト」が本件補正発明の「広告」に相当する。
また,引用例1発明において,文書サーバ100の編集モジュール120が広告プロバイダ80と「ネットワーク」を介して接続されていることは自明のことであるから,引用例1発明において,編集モジュール120が,「広告プロバイダ80から入力されるコンテンツ・オブジェクトを受け取る」ことが,本件補正発明の「複数の広告供給元から広告をネットワークを介して受け取」ることに相当する。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「複数の広告供給元から広告をネットワークを介して受け取ること」を備える点で共通している。
(d)引用例1発明の「知識モジュール170中のユーザ・プロファイルに記憶された,ユーザが明確な興味を示した情報」が本件補正発明の「コンテンツ」に相当し,また,引用例1発明の「知識モジュール170に記憶されているユーザ・プロファイルに含まれる情報に基づき,ユーザが興味を示すであろうと編集モジュール120が判断した広告」は,ユーザ・プロファイルに応じて「個人向け」に選択された「広告」であるから,これが本件補正発明の「個人向け広告」に相当する。
また,引用例1発明の「ユーザの個別化新聞」は,「カスタマイズされた出版物」であるから,これが,本件補正発明の「カスタム出版物」に相当する。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,「コンテンツと個人向け広告とを含むカスタム出版物を作成すること」を備える点で一致している。

そうすると,本件補正発明と引用例1発明とは,

「プロセッサにより実行される方法であって,
ユーザ入力に基づくコンテンツを,複数のコンテンツ供給元からネットワークを介して受け取り,1つ以上の記憶装置に前記コンテンツを記憶することと,
複数の広告供給元から広告を前記ネットワークを介して受け取ることと,
前記コンテンツと個人向け広告とを含むカスタム出版物を作成することとを備える,方法。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
カスタム出版物に含ませる個人向け広告を選択するために,本件補正発明では,「前記1つ以上の記憶装置に記憶された広告を,広告名,広告の主題,製品名,製品の主題または広告の作成日のうちの少なくともいずれか1つを含む個人向け広告検索クエリと,前記コンテンツとに基づき自動的に検索」しているのに対して,引用例1発明では,「知識モジュール170に記憶されているユーザ・プロファイルに含まれる情報に基づき,ユーザが興味を示すであろうと編集モジュール120が判断」している点。
[相違点2]
カスタム出版物に含ませる個人向け広告を決定するために,本件補正発明では,「広告の検索の結果に基づいて得られた複数の広告をユーザ装置に前記ネットワークを介して送ることと」,「前記複数の広告からの個人向け広告のユーザ選択を,前記ユーザ装置から前記ネットワークを介して受け取ることと」を備えているのに対して,引用例1発明は,そのような手順を備えていない点。
[相違点3]
本件補正発明では,「前記個人向け広告の前記ユーザ選択は,カスタム出版物に前記個人向け広告を含ませるためのユーザ要求に関連し」ているのに対して,引用例1発明では,そのようになっていない点。

5.当審の判断
上記各相違点について検討する。

[相違点1]について
原査定の拒絶査定に引用された特開2003-196540号公報の【0066】【0086】【0096】段落には,「利用者が取得を望んでいる広告を提供するために,利用者が入力したジャンルを検索キーとして広告情報保持手段から広告情報を選択する。」との技術的事項が記載されている。
また,例えば特開2001-209722号公報の【0119】?【0121】段落や,特開2002-354547号公報の【0015】段落にも,「ユーザが指定したジャンルの広告を配信する。」との技術的事項が記載されている。
そして,ここでの広告の「ジャンル」は,広告の「主題」であるということができ,また,広告を選択するための「検索クエリ」であるといえるから,本件補正発明の「広告の主題を含む検索クエリ」に相当するものである。
してみれば,ユーザに提供するための個人向け広告を選択する際に,「1つ以上の記憶装置に記憶された広告を,広告の主題を含む検索クエリに基づいて検索すること」は周知技術(以下,「周知技術1」という。)である。
また,例えば特開2004-199241号公報の【0028】段落には,「広告データ選定手段12は,表示コンテンツ選定手段13から選定された前記表示コンテンツの情報を受取り,広告データが表示コンテンツと対応付けて保存されてある広告データベース31から,前記表示コンテンツに対応する広告データを検索,特定及び抽出する機能を有する。」と記載され,また,特開2002-49840号公報の【0009】段落には,「配信対象となる非広告コンテンツ及びその属性を保持するコンテンツDBと,配信対象となる広告コンテンツ及びその属性を保持する広告DBと,前記サービス要求手段からのサービス要求を受け付けるとともにサービス要求に対応するサービスを提供するサービス提供手段とを設け,合成手段は,サービス提供手段から渡されたサービス要求手段からの要求内容に応じた非広告コンテンツをコンテンツDBから選択するとともに,選択した非広告コンテンツに関連する広告コンテンツを広告DBから選択し,該選択した非広告コンテンツと広告コンテンツとを合成ルールに基づいて合成した合成コンテンツをサービス提供手段を通じてサービス要求手段へ送付する」と記載されているように,ユーザに提供するための広告を選択する際に,「1つ以上の記憶装置に記憶された広告を,コンテンツに基づいて検索すること」も周知技術(以下,「周知技術2」という。)である。
そして,これらの周知技術1及び2を組み合わせて検索すること,また,この検索を「自動的に」行うように構成することにも何ら困難性は認められないから,引用例1発明に上記周知技術1及び周知技術2を適用して,ユーザに提供するためのカスタム出版物に含ませる個人向け広告を選択する際に,「1つ以上の記憶装置に記憶された広告を,広告の主題を含む個人向け広告検索クエリと,コンテンツとに基づき自動的に検索」するように構成することには何ら困難性が無く,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点2]について
引用例2(特開2002-135558号公報)には,
「広告画像データベースから所定の広告画像データを取得して,画像処理の対象となった画像データに合成することにより,広告画像データの広告料に基づく課金割引を行って,低廉なコストで高度な画像処理サービスを提供できるシステムにおいて,
ユーザが合成する広告画像データを選択する指示を画像処理サーバ11に送信すると,画像処理サーバ11が,事前に設定されているユーザの年齢や住所などのプライベート情報を検索キーとして広告画像データベース12の選択基準に関する情報(広告対象者に関連する当該対象者の年齢,住所,現在位置,性別,趣味,職業などの情報)を参照して広告画像データを予備的に選抜し,この選抜した広告画像データの一覧を端末装置3に提供し,ユーザが,この一覧から好みの広告画像データを選択すると,画像処理サーバ11がその広告画像データを広告画像データベース12から取得して,画像処理している画像データに対し,レイアウトに従って合成すること。」との事項(引用例2記載事項)が記載されている。
また,引用例3(特開2002-269441号公報)には,
「画像情報を安価に出力することができ,更に,利用者及び広告主双方とって有益な広告情報を記録物として永続的に保存することができる形態で出力する,画像情報の出力システムにおいて,
利用者が,印刷される広告を自分で選択することを指定すると,広告選択部13が,利用者にどのような広告が有益であるかを絞り込むために必要な個人情報(利用者の生年月日,性別,子供の有無,職業,趣味等)に基づいて,広告記憶部12に記憶されている広告データの中から,利用者に合った広告の候補を複数選択し,表示・操作画面21にこれらの広告を表示し,
利用者が,表示・操作画面21に表示された複数の広告の候補から印刷する広告を1つ選択すると,選択された広告が広告領域3bに付されて,印刷物3が印刷出力されること。」との事項(引用例3記載事項)が記載されている。
上記引用例2記載事項及び引用例3記載事項によれば,ユーザに提供する個人向け広告を決定する際に,「1つ以上の記憶装置に記憶された広告の中から,所定の検索を行ってユーザに提示する広告の候補を絞り込み,絞り込まれた広告の候補をユーザ装置にネットワークを介して送り,提示された広告の候補の中からユーザが選択した結果を,前記ユーザ装置から前記ネットワークを介して受け取る」との手順を採用することは周知技術(以下,「周知技術3」という。)である。
そして,引用例1発明において,上記周知技術1及び周知技術2を適用して,ユーザに提供するためのカスタム出版物に含ませる個人向け広告を選択した際に,さらに上記周知技術3の手順を採用して,最終的にユーザに提供する広告を決定するように構成することにも何ら困難性はないことから,引用例1発明の方法に,「広告の検索の結果に基づいて得られた複数の広告をユーザ装置に前記ネットワークを介して送ることと」,「前記複数の広告からの個人向け広告のユーザ選択を,前記ユーザ装置から前記ネットワークを介して受け取ることと」を備えるように構成することにも何ら困難性はなく,当業者が適宜なし得たことである。

[相違点3]について
上記「[相違点2]について」で検討したように,引用例1発明において,ユーザに提供する個人向け広告を決定する際に,上記周知技術3の手順を採用することには,何ら困難性がない。
そして,当該周知技術3の手順を採用すれば,ユーザが「個人向け広告のユーザ選択」を行うと,個人向け広告が決定され,決定された個人向け広告が含まれるカスタム出版物が作成されるようになることは明らかであるから,引用例1発明に上記周知技術3の手順を採用することにより,結果として,「個人向け広告のユーザ選択」が,「カスタム出版物に前記個人向け広告を含ませるためのユーザ要求に関連し」たものとすることも,当業者であれば適宜なし得たことである。

そして,本件補正発明の作用効果も,引用例1発明及び周知技術1?3から当業者が予測できる範囲のものである。

よって,本件補正発明は,引用例1発明及び周知技術1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成24年4月19日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成23年11月4日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,「本願発明」という。)

「 【請求項1】
プロセッサにより実行される方法であって,
ユーザ入力に基づくコンテンツを,複数のコンテンツ供給元からネットワークを介して受け取り,1つ以上の記憶装置に前記コンテンツを記憶することと,
複数の広告供給元から前記ネットワークを介して受取られ,前記1つ以上の記憶装置に記憶された広告を,広告名,広告の主題,製品名,製品の主題または広告の作成日のうちの少なくともいずれか1つを含む個人向け広告検索クエリに基づき検索することと,
前記個人向け広告検索クエリに基づく広告検索の結果に基づいて得られた複数の広告をユーザ装置に前記ネットワークを介して送ることと,
前記複数の広告からの個人向け広告のユーザ選択を,前記ユーザ装置から前記ネットワークを介して受け取ることと備え,前記個人向け広告の前記ユーザ選択は,カスタム出版物に前記個人向け広告を含ませるためのユーザ要求に関連し,前記方法はさらに,
前記コンテンツと前記個人向け広告とを含む前記カスタム出版物を作成することとを備える,方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1,4,5(それぞれ,上記引用例1,2,3に対応する。)には,上記「第2 [理由]3.」に記載したとおりの事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明は,上記「第2 [理由]」で検討した本件補正発明から,上記「第2 [理由]2.」に記載した補正事項(a)及び補正事項(b)に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「第2 [理由]5.」に記載したとおり,引用例1発明及び周知技術1?3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1発明及び周知技術1,3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明及び周知技術1,3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-22 
結審通知日 2013-04-23 
審決日 2013-05-08 
出願番号 特願2009-510019(P2009-510019)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 清田 健一
須田 勝巳
発明の名称 出版物におけるコンテンツと広告のカスタマイズ  
代理人 深見 久郎  
代理人 野田 久登  
代理人 森田 俊雄  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 仲村 義平  
代理人 堀井 豊  

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